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技術 毛包を再生するための組成物、方法及び再生された毛包を担持する動物

出願人 株式会社資生堂
発明者 岸本治郎江浜律子出田立郎矢野喜一郎相馬勤
出願日 2004年2月24日 (16年10ヶ月経過) 出願番号 2004-048322
公開日 2005年5月26日 (15年7ヶ月経過) 公開番号 2005-132813
状態 特許登録済
技術分野 家畜、動物の飼育(3)(その他の飼育) 動物,微生物物質含有医薬 化合物または医薬の治療活性 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖
主要キーワード 表皮部位 司令塔 検出設定 核染色法 一般染色 後表皮 ガラスリング 表皮部分
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

本発明の課題は、活性毛乳頭細胞及び活性上皮系細胞毛包再生に適した比率で含有する毛包再生系を提供することにある。

解決手段

従って、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成り、当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1であることを特徴とする毛包を再生するための組成物を提供する。好ましくは、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成る毛包を再生するための組成物であって、皮膚組織から表皮組織を取り除くことで得た真皮組織画分をコラーゲン処理して細胞懸濁物を調製し、次いで当該細胞懸濁物を凍結保存することで毛包上皮細胞死滅させることで調製された毛乳頭細胞調製品及び上皮系細胞を含んで成り、ここで当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1である、毛包を再生するための組成物を提供する。

概要

背景

毛包成熟した生体自己再生をほぼ一生涯を通じて繰り返す例外的な器官である。その自己再生の仕組みを解明することは、組織細胞移植による脱毛治療、毛包や皮脂腺を含有する自然に近い機能的にも優れた皮膚シート構築など、ニーズの高い臨床応用に繋がるものと期待される。近年、幹細胞研究への関心の高まりと共に毛包上皮幹細胞上皮細胞)の研究が急速に進展し、また毛包特異的な間葉系細胞たる毛乳頭細胞についてもその性質が少しずつ判ってきた。毛乳頭細胞は毛包の自己再生のために毛包上皮幹細胞に活性化シグナルを送るいわば司令塔役割を担い、毛包再構成評価系においては毛包上皮幹細胞と共に欠くことのできない細胞であることが判っている(Kishimoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), Vol.96, pp. 7336-7341;非特許文献1)。

毛包の再生を目指して、動物モデルでの毛包再構成実験がこれまで様々な方法で行われている。Weinberg et al., J. Invest. Dermatol. (1993), Vol.100, pp. 229-236(非特許文献2)には細胞移植法による毛包再構成方法が記載されている。Weinbergらの移植系は毛乳頭細胞、新生仔上皮系細胞(毛包上皮幹細胞を含む)のほかにマウス3T3細胞の加えられて複雑な構成を有する。Weinbergらの方法によれば毛包上皮幹細胞を含む新生仔上皮系細胞を移植系に加えなくても毛包が再生するとのことである。しかしながら、これは毛乳頭細胞画分から未分化上皮系細胞(毛包上皮幹細胞)や毛包原基を完全に除去することが困難なために起きた現象であると考えられる。その後、Kishimotoら(前掲)は毛乳頭細胞の単離精製にはじめて成功し、単離精製した毛乳頭細胞を用い、動物モデルでの細胞移植法による毛包再構成実験を行った結果、毛乳頭細胞と上皮細胞との組み合わせを含む細胞画分移植すると毛包が再構成され、発毛が認められるが、毛乳頭細胞又は上皮細胞のいずれかしか含まない細胞画分を移植した場合、発毛が認められないことを見出している。

しかしながら、Kishimotoらによる毛乳頭細胞の精製方法は、毛乳頭細胞がバーシカンコンドロイチン硫酸プロテオグリカン類)を特異的に発現する性質を有することを利用し、バーシカン遺伝子にリポーター遺伝子を繋げたDNAを用いて作製したトランスジェニックマウスモデルによってバーシカン発現を指標とし、単離・濃縮を行うものである。従って、この方法はトランスジェニックマウスの作製、セルソーターによる毛乳頭細胞の純化を要する。特に、毛包再構成方法において毛包を実際に再生させ、発毛を起こさせるには大量の毛乳頭細胞が必要であり(例えば、1移植当たり500万個の細胞)、そのためこの方法では大量のトランスジェニックマウスの作製、長時間の高速セルソーターの使用を要し、経済的にも、また作業時間、労力の面においても問題があった。毛乳頭細胞の単離は例えばProuty et al., American J. Pathol. (1996) Vol.148, No.6, pp.1871-1885(非特許文献3)にも記載されているが、遠心分離により分画を繰り返す複雑で、純度が低く且つ収量の低い方法である。

従って、これまでの毛乳頭細胞精製法では単離精製された活性毛乳頭細胞を、例えば移植のために十分な量で獲得することが困難であり、毛包再生系における活性毛乳頭細胞の役割を完全に解明することができなかった。特に、毛包を再生する毛包再構成系における毛乳頭細胞と上皮系細胞の適切な割合を決定することは、従来技術による精製法では事実上不可能であった。
Kishimoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), Vol.96, pp. 7336-7341
Weinberg et al., J. Invest. Dermatol. (1993), Vol.100, pp. 229-236
Prouty et al., American J. Pathol. (1996) Vol.148, No.6, pp.1871-1885

概要

本発明の課題は、活性毛乳頭細胞及び活性上皮系細胞を毛包の再生に適した比率で含有する毛包再生系を提供することにある。 従って、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成り、当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1であることを特徴とする毛包を再生するための組成物を提供する。好ましくは、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成る毛包を再生するための組成物であって、皮膚組織から表皮組織を取り除くことで得た真皮組織画分をコラーゲン処理して細胞懸濁物を調製し、次いで当該細胞懸濁物を凍結保存することで毛包上皮細胞死滅させることで調製された毛乳頭細胞調製品及び上皮系細胞を含んで成り、ここで当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1である、毛包を再生するための組成物を提供する。 なし

目的

本発明の課題は、活性毛乳頭細胞及び活性上皮系細胞を毛包の再生に適した比率で含有する毛包再生系を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
1件

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請求項1

毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成り、ここで当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1であることを特徴とする、毛包再生するための組成物

請求項2

毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が約1:1である、請求項1記載の組成物。

請求項3

皮膚組織から表皮組織を取り除くことで得た真皮組織画分をコラーゲン処理して細胞懸濁物を調製し、次いで当該細胞懸濁物を凍結保存することで毛包上皮細胞死滅させることで調製された毛乳頭細胞調製品及び上皮系細胞を含んで成り、ここで当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1である、毛包を再生するための組成物。

請求項4

毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が約1:1である、請求項3記載の組成物。

請求項5

前記細胞懸濁物の細胞密度を1×105〜1×108/mlに調整してから凍結保存を行う、請求項3又は4記載の組成物。

請求項6

前記凍結保存を−80℃以下の温度で行う、請求項3〜5のいずれか1項記載の組成物。

請求項7

前記凍結保存を液体窒素の中で行う、請求項3〜6のいずれか1項記載の組成物。

請求項8

前記凍結保存を1週間以上の期間にわたって行う、請求項3〜7のいずれか1項記載の組成物。

請求項9

毛乳頭細胞及び上皮系細胞が共にマウス由来する、又は共にラットに由来する、又は共にヒトに由来する、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。

請求項10

毛乳頭細胞及び上皮系細胞が異種細胞であり、各々がマウス、ラット又はヒトに由来する、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。

請求項11

上皮系細胞がヒト包皮に由来する、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。

請求項12

ヒトに請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を移植し、毛包を再生する方法。

請求項13

レシピエント動物に請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を移植し、毛包を再生する方法。

請求項14

レシピエント動物が免疫系の抑制された動物である、請求項13記載の方法。

請求項15

レシピエント動物がヌードマウススキッドマウスヌードラットからなる群より選ばれる免疫系が抑制された動物である、請求項13又は14記載の方法。

請求項16

前記組成物を、毛乳頭細胞が1×106〜108個/cm2の移植量で移植されるように移植する、請求項12〜15のいずれか1項記載の方法。

請求項17

前記組成物を、毛乳頭細胞が1.0〜1.5×107個/cm2の移植量で移植されるように移植する、請求項12〜15のいずれか1項記載の方法。

請求項18

請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含む皮膚三次元モデルを作製し、毛包を再生する方法。

請求項19

毛乳頭細胞を1×106〜108個/cm2の量で前記皮膚三次元モデルに含ませる、請求項18記載の方法。

請求項20

毛乳頭細胞を1.0〜1.5×107個/cm2の量で前記皮膚三次元モデルに含ませる、請求項18記載の方法。

請求項21

レシピエント動物に請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を移植し、こうして再構成毛包を担持することになったキメラ動物

請求項22

レシピエント動物が免疫系の抑制された動物である、請求項21記載のキメラ動物。

請求項23

レシピエント動物がヌードマウス、スキッドマウス、ヌードラットからなる群より選ばれる免疫系が抑制された動物である、請求項21又は22記載のキメラ動物。

請求項24

前記組成物を、毛乳頭細胞が1×106〜108個/cm2の移植量で移植されるように移植した、請求項21〜23のいずれか1項記載のキメラ動物。

請求項25

前記組成物を、毛乳頭細胞が1.0〜1.5×107個/cm2の移植量で移植されるように移植した、請求項21〜23のいずれか1項記載のキメラ動物。

請求項26

請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含む皮膚三次元モデルを作製し、こうして再構成毛包を担持することになった皮膚三次元モデル。

請求項27

毛乳頭細胞を1×106〜108個/cm2の量で含む、請求項26記載の皮膚三次元モデル。

請求項28

毛乳頭細胞を1.0〜1.5×107個/cm2の量で含む、請求項26記載の皮膚三次元モデル。

技術分野

0001

本発明は毛包再生するための毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含有する組成物、それを用いて毛包を再生する方法、さらにはそのような方法により再生された毛包を担持する動物又は3次元皮膚モデルを提供する。

背景技術

0002

毛包は成熟した生体自己再生をほぼ一生涯を通じて繰り返す例外的な器官である。その自己再生の仕組みを解明することは、組織細胞移植による脱毛治療、毛包や皮脂腺を含有する自然に近い機能的にも優れた皮膚シート構築など、ニーズの高い臨床応用に繋がるものと期待される。近年、幹細胞研究への関心の高まりと共に毛包上皮幹細胞上皮細胞)の研究が急速に進展し、また毛包特異的な間葉系細胞たる毛乳頭細胞についてもその性質が少しずつ判ってきた。毛乳頭細胞は毛包の自己再生のために毛包上皮幹細胞に活性化シグナルを送るいわば司令塔役割を担い、毛包再構成評価系においては毛包上皮幹細胞と共に欠くことのできない細胞であることが判っている(Kishimoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), Vol.96, pp. 7336-7341;非特許文献1)。

0003

毛包の再生を目指して、動物モデルでの毛包再構成実験がこれまで様々な方法で行われている。Weinberg et al., J. Invest. Dermatol. (1993), Vol.100, pp. 229-236(非特許文献2)には細胞移植法による毛包再構成方法が記載されている。Weinbergらの移植系は毛乳頭細胞、新生仔上皮系細胞(毛包上皮幹細胞を含む)のほかにマウス3T3細胞の加えられて複雑な構成を有する。Weinbergらの方法によれば毛包上皮幹細胞を含む新生仔上皮系細胞を移植系に加えなくても毛包が再生するとのことである。しかしながら、これは毛乳頭細胞画分から未分化上皮系細胞(毛包上皮幹細胞)や毛包原基を完全に除去することが困難なために起きた現象であると考えられる。その後、Kishimotoら(前掲)は毛乳頭細胞の単離精製にはじめて成功し、単離精製した毛乳頭細胞を用い、動物モデルでの細胞移植法による毛包再構成実験を行った結果、毛乳頭細胞と上皮細胞との組み合わせを含む細胞画分移植すると毛包が再構成され、発毛が認められるが、毛乳頭細胞又は上皮細胞のいずれかしか含まない細胞画分を移植した場合、発毛が認められないことを見出している。

0004

しかしながら、Kishimotoらによる毛乳頭細胞の精製方法は、毛乳頭細胞がバーシカンコンドロイチン硫酸プロテオグリカン類)を特異的に発現する性質を有することを利用し、バーシカン遺伝子にリポーター遺伝子を繋げたDNAを用いて作製したトランスジェニックマウスモデルによってバーシカン発現を指標とし、単離・濃縮を行うものである。従って、この方法はトランスジェニックマウスの作製、セルソーターによる毛乳頭細胞の純化を要する。特に、毛包再構成方法において毛包を実際に再生させ、発毛を起こさせるには大量の毛乳頭細胞が必要であり(例えば、1移植当たり500万個の細胞)、そのためこの方法では大量のトランスジェニックマウスの作製、長時間の高速セルソーターの使用を要し、経済的にも、また作業時間、労力の面においても問題があった。毛乳頭細胞の単離は例えばProuty et al., American J. Pathol. (1996) Vol.148, No.6, pp.1871-1885(非特許文献3)にも記載されているが、遠心分離により分画を繰り返す複雑で、純度が低く且つ収量の低い方法である。

0005

従って、これまでの毛乳頭細胞精製法では単離精製された活性毛乳頭細胞を、例えば移植のために十分な量で獲得することが困難であり、毛包再生系における活性毛乳頭細胞の役割を完全に解明することができなかった。特に、毛包を再生する毛包再構成系における毛乳頭細胞と上皮系細胞の適切な割合を決定することは、従来技術による精製法では事実上不可能であった。
Kishimoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), Vol.96, pp. 7336-7341
Weinberg et al., J. Invest. Dermatol. (1993), Vol.100, pp. 229-236
Prouty et al., American J. Pathol. (1996) Vol.148, No.6, pp.1871-1885

発明が解決しようとする課題

0006

本発明の課題は、活性毛乳頭細胞及び活性上皮系細胞を毛包の再生に適した比率で含有する毛包再生系を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、驚くべきことに、皮膚組織から採取した真皮組織画分の細胞懸濁物凍結保存すると、その懸濁物中に夾雑した毛包上皮細胞が特異的に死滅し、毛乳頭細胞は大半が活性であり続けることを見出した。このようにして得た細胞調製品は活性細胞成分として毛乳頭細胞のみを含有するため、毛包を再生するのに有効な毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の割合を決定するのに利用できる。その結果、本発明者は毛包の再生に最適とされる毛包再構成系における毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の割合を決定することができた。

0008

従って、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成り、当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1であることを特徴とする毛包を再生するための組成物を提供する。

0009

更に好ましくは、本発明は、毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含んで成る毛包を再生するための組成物であって、皮膚組織から表皮組織を取り除くことで得た真皮組織画分をコラーゲン処理して細胞懸濁物を調製し、次いで当該細胞懸濁物を凍結保存することで毛包上皮細胞を死滅させることで調製された毛乳頭細胞調製品及び上皮系細胞を含んで成り、ここで当該毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比が1:10〜10:1である、毛包を再生するための組成物を提供する。

0010

好ましくは、上記毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比は1:3〜10:1、更に好ましくは1:1〜10:1、更により好ましくは1:1〜3:1、最も好ましくは1:1である。

0011

本発明は更に、上記組成物を用いて動物又は3次元皮膚モデルに毛包を再生する方法、及びこのようにして毛包の再生された動物又は3次元皮膚元モデルを提供する。

発明の効果

0012

トランスジェニックマウスを使用せず、簡単に、活性細胞成分として毛乳頭細胞のみを含有する毛乳頭細胞調製品を調製する方法が提供された。この毛乳頭細胞調製品は毛包再生のための移植手術や、毛包再構成の研究・開発に利用できる。特に、当該毛乳頭細胞調製品には活性上皮幹細胞の夾雑がないため、毛包の再生に使用する活性毛乳頭細胞と活性上皮毛幹細胞の細胞数の割合を精密に調整することが必要であり、しかも細胞を大量に必要とする状況において、有利である。

発明を実施するための最良の形態

0013

本発明は、毛包を再生するための毛乳頭細胞及び上皮系細胞を含有する組成物、それを用いて毛包を再生する方法、さらにはそのような再生された毛包を担持する動物又は3次元皮膚モデルを提供する。

0014

「毛乳頭細胞」とは、間葉系細胞として毛包最底部に位置し、毛包の自己再生のために毛包上皮幹細胞に活性化シグナルを送る、いわば司令塔の役割を担っている細胞をいう。活性化毛乳頭細胞のみを含有する毛乳頭細胞調製品は、例えばトランスジェニックマウスを使用したKishimoto(前掲)の方法に調製できる。しかしながら、収量などの点で好ましくは、例えば皮膚組織から表皮組織を取り除くことで得た真皮組織画分をコラーゲン処理して細胞懸濁物を調製し、次いで当該細胞懸濁物を凍結保存することで毛包上皮細胞を死滅させることで調製することができる。

0015

上記凍結保存による方法は、具体的には、例えば以下の通りにして実施できる。
1.哺乳動物表皮を用意する。
2.この表皮を、必要ならタンパク質分解酵素溶液、例えばトリプシン溶液の中に適当な時間、例えば一晩静置し、その後表皮部分をピンセットなどで取り除き、残った真皮コラゲナーゼで処理し、細胞懸濁液を調製する。
3.必要ならセルストレーナーにより懸濁液をろ過し、静置により沈殿物を除去する。
4.細胞数を計測し、適当な細胞密度、好ましくは1x105〜1x108/ml程度の細胞密度にて凍結保護液再懸濁し、必要なら小分け分注し、通常の細胞保存方法に従い、凍結保存する。
5.適当な期間保存後、融解し、使用する。

0016

凍結方法は特に限定されることはないが、−20℃以下、好ましくは−50℃以下、より好ましくは−80℃以下の超低温冷凍庫中で、又は液体窒素中で保存する。凍結保存期間も特に限定されることがないが、上皮細胞が死滅するよう、例えば1日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは1週間以上の期間とする。尚、液体窒素中で4ヶ月保存しても、毛乳頭細胞は生存し続けていることが確認された。凍結保護液としては細胞の保存において使用されている通常の保存液、例えばセルバンカー2細胞凍結保存液カタログNo.BLC−2)(日本全薬工業製)が使用できる。

0017

細胞数の計測は当業者周知の方法により実施することができる。例えば、細胞数の計測は血球計算盤(SLGC社製、EOSINOPHILCOUNTER)に等量の0.4%トリパンブルー染色液(No.15250-061、インビトロジェン)で希釈した細胞懸濁液を供して血球計算盤付属取扱説明書記載の方法に従って算出することができる。

0018

本発明の毛乳頭細胞はあらゆる哺乳動物、例えばヒト、チンパンジー、その他の霊長類家畜動物、例えばイヌネコウサギウマヒツジヤギウシブタ、他に実験用動物、例えばラット、マウス、モルモット、より好ましくはヌードマウススキッドマウスヌードラットの表皮に由来し得る。

0019

「上皮系細胞」は、皮膚の表皮または上皮の大部分を構成する細胞であり、真皮に接する1層の基底細胞から生じる。マウスを例にすると、上皮系細胞としては新生仔(もしくは胎児)に由来する上皮系細胞が好ましく使用できるが、成熟した皮膚、例えば休止期毛の表皮又は成長期毛の表皮に由来する細胞でも、ケラチノサイトの形態にある細胞の培養物であってもよい。かような細胞は、当業者周知の方法により所望のドナー動物の皮膚から調製することができる。

0020

好適な態様において、上皮系細胞は以下のとおりにして調製できる。
1.哺乳動物の表皮を用意する。
2.この表皮を、必要なら0.25%トリプシンPBS中で4℃下で一晩静置することでトリプシン処理する。
3.ピンセットなどにより表皮部分のみ剥離し、細切後、適当な培養液(例えばケラチノサイト用培養液)中で4℃で約1時間懸濁処理する。
4.この懸濁物を適当なポアサイズを持つセルストレーナーに通し、次いで遠心分離器にかけて上皮系細胞を回収する。
5.この細胞調製品をKGMあるいはSF培地に所望の細胞密度で懸濁し、使用直前まで上に静置しておく。

0021

本発明の上皮系細胞は毛乳頭細胞と同様、あらゆる哺乳動物、例えばヒト、チンパンジー、その他の霊長類、家畜動物、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、他に実験用動物、例えばラット、マウス、モルモット、より好ましくはヌードマウス、スキッドマウス、ヌードラットの表皮に由来し得る。また、その表皮部位有毛部位、例えば頭皮でも、無毛部位、例えば包皮であってもよい。

0022

本発明者は、上記凍結保存により獲得した、活性細胞として毛乳頭細胞のみを含有し、上皮系細胞の死滅した毛乳頭細胞調製品を、毛乳頭細胞の除かれた活性上皮系細胞のみを含有する上皮系細胞調製品と様々な細胞比率で混合し、レシピエント動物に移植して毛包の再生を検討したところ、毛乳頭細胞、対、上皮系細胞の細胞数の比と毛包の再生との間で一定の関係があることが見出された。即ち、毛包をより多く再生させることが所望される場合、活性毛乳頭細胞、対、活性上皮系細胞の細胞数の比を1:3〜10:1、更に好ましくは1:1〜10:1、更により好ましくは1:1〜3:1、最も好ましくは1:1とすべきことが見出された。換言すれば、活性毛乳頭細胞と活性上皮系細胞の比率を適宜調整してレシピエント動物に移植すれば、毛包の再生を調整できる。

0023

毛乳頭細胞と上皮系細胞との組み合わせは同種系でも、異種系でもよい。例えば、毛乳頭細胞調製品がマウスに由来する場合、上皮系細胞はマウスに由来するか(同種系)、又はその他の種、例えばラット、ヒトに由来してもよい(異種系)。従って、本発明の毛包を再生するための組成物は、例えば、毛乳頭細胞及び上皮系細胞が共にマウスに由来する組み合わせ、共にラットに由来する組み合わせ、もしくは共にヒトに由来する組み合わせでも(以上、同種)、又は毛乳頭細胞がマウスに由来し、上皮系細胞がラットに由来する組み合わせ、毛乳頭細胞がラットに由来し、上皮系細胞がマウスに由来する組み合わせ、毛乳頭細胞がマウスに由来し、上皮系細胞がヒトに由来する組み合わせ、毛乳頭細胞がラットに由来し、上皮系細胞がヒトに由来する組み合わせ、毛乳頭細胞がヒトに由来し、上皮系細胞がマウスに由来する組み合わせ、毛乳頭細胞がヒトに由来し、上皮系細胞がラットに由来する組み合わせ(以上、異種)、等であってよい。

0024

本発明に係る毛包の再生のための組成物をレシピエント動物に移殖する方法は、それ自体公知の移殖方法によることができる。例えば、Weinberg et al, J. Invest. Dermatol. Vol.100(1993), pp.229-236を参照のこと。例えばヌードマウスに移植を行う場合、用意された細胞を移植直前〜1時間前に混合し、遠心(9000×g,10min.)により培養液を取り除き、50〜100μL程度の細胞塊にした後、すみやかにヌードマウス背部皮膚に埋め込んだシリコン製のドーム型チャンバー内に流し込む。1週間後にチャンバーを注意深く取りはずし、さらに2週間目以降に移植部位毛髪形成の有無の肉眼観察を行うことができる。ヒトを含む動物に発毛を目的に移植を行う場合も似たようにして行うことができ、適切な方法は医師獣医により適宜決定されるであろう。
移植は、例えば直径約1cmの円に対し、毛乳頭細胞が1×106〜108個/cm2、好ましくは1.0〜1.5×107個/cm2の移植量、より好ましくは1.27×107個/cm2の移植量で移植されるように行うのが好ましい。

0025

上記組成物をレシピエント動物に移植する場合、その移植は同種移植、即ち自己移植、同種同系移植もしくは同種異系移植であっても、異種移植であってもよい。同種移植の場合、毛乳頭細胞調製品及び上皮系細胞は共にレシピエントと同種である。異種移植では、毛乳頭細胞調製品又は上皮系細胞のいずれか一方がレシピエントと異種であり、他方がレシピエントと同種である場合と、双方がレシピエントと異種の場合がある。レシピエント動物としてはあらゆる哺乳動物、例えばヒト、チンパンジー、その他の霊長類、家畜動物、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、他に実験用動物、例えばラット、マウス、モルモット、より好ましくはヌードマウス、スキッドマウス、ヌードラットが挙げられる。

0026

また、本発明に係る上記組成物を適当なレシピエント動物に移植することで、再生毛包を担持するキメラ動物を提供することができる。かかるキメラ動物は、例えば毛包の再生の機構を研究・解明するため、あるいは毛包再生又は発毛もしくは脱毛に有効な薬剤生薬スクリーニングを行うための有力な動物モデルを担うことができるであろう。レシピエント動物は、該動物に移植される系に含まれる各細胞の起源に拘わりなく、免疫系が抑制された動物であることが好ましい。また動物種としては、実験動物として使用しうるものであり、本発明の目的に沿うものである限り、いかなる動物であってもよいが、好ましくは、マウス、ラット等を挙げることができる。このような動物のうち、免疫系が抑制されているものとしては、マウスを例にすれば、ヌードマウスのように、胸腺欠損のごとき形質をもつものが挙げられる。なお、本発明の目的を考慮すれば、特に好ましいレシピエント動物としては、市販のヌードマウス(例えば、Balb−c nu/nu系統)、スキッドマウス(例えば、Balb/c−SCID)、ヌードラット(例えば、F344/N Jcl−rnu)を挙げることができる。

0027

更に、本発明に係る組成物を三次元皮膚モデル含包させることで、再生毛包を担持する三次元皮膚モデルを提供することができる。三次元皮膚モデルは当業者周知の方法(Exp.Cell Res. Amano S. et al., (2001), Vol.271, pp.249-262)により、例えば下記のようにして作製することができる。三次元皮膚モデルは毛乳頭細胞を1×106〜108個/cm2、好ましくは1.0〜1.5×107個/cm2、より好ましくは約1.27×107個/cm2の量で含む。

0028

三次元皮膚モデル作製方法
ヒト線維芽細胞を0.1%コラーゲン溶液/DMEM/10%FBSに適当量分散させ、シャーレに分注し、ただちに37℃のCO2インキュベータに静置する。ゲル化後、シャーレ壁面および底面よりゲルを剥がし、シャーレの中で浮遊するようにさせる。コラーゲンゲルを揺らせながら培養し、ゲルを約5分の1に収縮させ真皮モデルとする。真皮モデルをステンレスグリッドの上に置き、その上にガラスリングをセットし、KGM(表皮細胞培養用培地)に分散したヒト培養表皮細胞(1.0X106細胞数/ml)を0.4ml、ガラスリング内に注入し、培養する。このとき、毛乳頭細胞画分を同時に混合して注入する。ヒト培養表皮細胞の代替としてマウス新生児表皮細胞を用いることもできる。シャーレ内にDMEM—KGM—5%FBS+Ca2+の培地を、真皮モデルの上部が空気に晒される程度に入れ、培養し、約一週間後に皮膚モデルを観察し、毛包原基形成の有無と再現性を判定する。

0029

再構成毛包を担持した3次元皮膚モデルは、上記再生毛包を担持するキメラ動物と同様、毛包の再生の機構を研究・解明や発毛・脱毛に有効な薬剤・生薬のスクリーニングに利用できる。

0030

以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。

0031

真皮細胞画分の凍結保存により、上皮細胞が死滅し、活性細胞として毛乳頭細胞のみを含有する細胞調製品が得られることを確認するため、バーシカン(Versican)プロモーター下流にマーカータンパク、LacZ、の構造遺伝子をつないだ発現ベクターを導入したトランスジェニックマウス(以下「バーシカン−LacZTGマウス」)より採取した皮膚組織より得られた細胞画分を凍結保存し、融解した細胞調製品についてフローサイトメトリー解析した。

0032

(1)バーシカン−LacZTGマウスの真皮細胞からの「凍結保存」毛乳頭細胞調製品の調製
(1−1) バーシカン−LacZ TGマウスから生まれた新生仔(生後4日以内に使用)のうち、LacZ陽性の個体を選別した。バーシカン−LacZ TGマウスは、例えばKishimotoら(前掲)に記載の方法により作製することができる。
(1−2) 各個体をエタノールリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」)で洗浄後、背部皮膚を剥離し、0.25%トリプシン/PBS中で4℃下で一晩静置した。
(1−3) 翌日、ピンセットなどにより表皮と真皮を分離し、真皮側を0.35%コラゲナーゼ/DMEM(ダルベッコ変法イーグル最少培地。以下「DMEM」)により37℃下で約1時間ほど処理した。
(1−4) (1−3)の細胞を念入りに懸濁操作を行ったのち、セルストレーナーに通し、次いで遠心分離器(900g、10分)によって細胞を集めた。
(1−5)細胞数を計測し、1x105〜 1x108/mlの細胞密度にて細胞凍結保護液(セルバンカ−2(BLC−2)、日本全薬工業製)で再懸濁し、凍結チューブに分注、通常の細胞保存方法に従い、液体窒素内で保存した。
(1−6) 約1週間後に融解し、これを以下のフローサイトメトリー解析に用いた。

0033

(2)フルオロレポーターLacZフローサイトメトリー解析
実験材料
・フルオロレポーター LacZフローサイトメトリーキット(FluoroReporter lacZ flow cytometry kits) Molecular Probe社、カタログNo.F-1930(50反応分)/F-1931(250反応分))
試薬の準備:
反応液:キット中のFDG試薬(Component A)をMiliQ水で1:10に希釈した。1サンプ当り50μLを使用した。
停止液:キット中のPI試薬(Component D)をキット付属緩衝液で1:100に希釈した。1サンプル当り0.9mlを使用した。使用するまで氷中において4℃に冷やしておいた。染色媒体としては、上皮細胞を特異的に染色する特的抗体であるCD49fモノクローナル抗体セロテック社製、MCA699)、死細胞を特異的に染色する7-ADDベックマンコールター製、PN-IM3422)を用いた。

0034

(2−1)バーシカン−LacZTGマウス由来の真皮細胞の懸濁液を〜1x107細胞数までの細胞数に調整して、750ulの染色媒体を加えて、1.5mlのエッペンチューブに移した。
(2−2) 3000回転で5分間遠心し、上澄みを捨てた。細胞ペレットを100μLの染色媒体に再懸濁した。この懸濁物を37℃の恒温槽で10分間プレインキュベーションした。
(2−3) 37℃の恒温槽で10分間プレインキュベーションしておいた反応液を50μL加えて、正確に1分間、37℃で反応を行った。
(2−4) 0.9ml の停止液を加え、氷中に保存した。
(2−5) 10分後に40μLの50mM PETG(Component B)を加えて反応を完全に阻害した。
(2−6) すみやかにFACS蛍光強度を測定した。フローサイトメーター(FACS)の操作方法メーカーの取扱説明書によった。FACSの測定装置は例えば、ベックマン・コールター社のXL−MCLを用いることができる。本キットに使用されている蛍光色素Fluorescein(フルオロセイン)に適した検出設定で細胞の蛍光強度の分布を測定した。

0035

(3)解析結果
LacZ及び7-AADに基づくFACS解析は、凍結融解した細胞中のLacZ+細胞の大半が、凍結融解を経ても生細胞であることを示した(図1)。従って、毛乳頭細胞は凍結融解によって死滅しないこと明らかとなった。また、CD-49及び7-AADに基づくFACS解析では、CD-49+細胞(上皮系細胞)の大半が凍結融解後、7-AAD+画分(死画分)に存在することが示された(図2)。従って、凍結融解した細胞調製品中の生細胞はLacZ+、CD-49-、7-AAD-、即ち、毛乳頭細胞(LacZ+)且つ非上皮系細胞(CD-49-)であり、しかも生細胞(7-AAD-)である。以上の結果をまとめると、生細胞は大半が上皮系細胞ではなく、毛乳頭細胞であることが明らかとなった。よって、凍結融解により上皮系細胞を特異的に死滅させることができ、活性細胞として毛乳頭細胞のみ含む毛乳頭細胞調製品を調製できることが明らかとなった。

0036

凍結融解毛乳頭細胞と上皮系細胞の混合移植により毛包再生を試みた。
I.各種細胞の調製
(1)マウス由来上皮細胞
(1−1)手術前日、ICR系統マウスの新生仔より各個体をエタノールとリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」)で洗浄後、背部皮膚を剥離し、0.25%トリプシン/PBS中で4℃下で一晩静置することで皮膚をトリプシン処理した。
(1−2)ピンセットにより表皮部分のみ剥離し、細切後、ケラチノサイト用培養液(以下「KGM」)中で4℃で約1時間懸濁処理した。
(1−3)セルストレーナーに通した(1−2)の懸濁物を遠心分離器(×900g、10分)にかけて上皮系細胞を回収した。
(1−4)レシピエント動物1個体あたり、2匹の新生仔由来に相当する量の上皮系細胞(細胞数として約1x107)を手術に用いた。相当量の細胞をKGMあるいはSFM培地で懸濁して、使用直前まで氷上に静置した。これを「マウス由来上皮細胞」調製品とする。

0037

(2)「用時調製」マウス由来真皮細胞調製品(比較例)の調製
(2−1)手術前日、ICR系統マウスの新生仔より上記(1−1)、(1−2)と同様の方法により皮膚をトリプシン処理した。
(2−2)ピンセットにより表皮部分を剥離し、残った真皮を細切後、0.35%のコラゲナーゼを含んだ適当な培養液DMEM+10%FBS中で37℃で約1時間懸濁処理した。
(2−3)セルストレーナーに通した懸濁物(2−2)を遠心分離器にかけて真皮細胞を回収した。
(2−4)レシピエント動物1個体あたり、細胞数として約1x107の真皮細胞を手術に用いた。相当量の細胞をDMEM+10%FBSなどで懸濁して、使用直前まで氷上に静置した。これを「用時調製」マウス由来真皮細胞調製品とする。

0038

(3)毛乳頭細胞画分を含む「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品の調製
(3−1)新生仔ICR系統マウス背部皮膚を剥離し、表皮を採取した。
(3−2)トリプシン溶液で一晩静置し、翌日表皮をピンセットで取り除き、残った真皮をコラゲナーゼで処理、細胞懸濁液を調製した。
(3−3)セルストレーナーにより上記懸濁物をろ過し、そして静置により沈殿物を除去した。
(3−4)細胞数を計測し、1x105〜 1x108/mlの細胞密度に凍結保護液で再懸濁し、凍結チューブに分注、通常の細胞保存方法に従い、液体窒素内で保存した。
(3−5) 約1週間後に融解し、移植実験に1x107個/移植を用いた。これを「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品とする。

0039

II.毛包再構成方法(動物への移植方法
上記マウス由来上皮細胞調製品(1−4)を「用時調製」マウス由来真皮細胞調製品(2−4)又は「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品(3−5)と混合した。これらの混合物を以下の「再構成毛包作成手順」の「細胞懸濁液」として用いた。

0040

<再構成毛包作成手順>
用意するもの:
レシピエント動物(Balb−c nu/un系統ヌードマウス。5週齢以上)、
シリコーン製の直径1センチ程度ドームキャップ(以下バルブ呼称)、
麻酔薬
手術用ハサミ、ピンセット、縫合器
マイクロピペッター
細胞懸濁液(培養液DMEM+10%FBS約150μlに懸濁)

0041

<手順>
(i)ヌードマウスを麻酔した。
(ii)背部皮膚を直径1センチ弱に切り取った。
(iii)傷口にバルブを挿入し、縫合器で固定した。
(iv) バルブ内に、細胞懸濁液をピペッターを用いて注入した。
(v) そのまま約1週間飼育し、バルブをはずした。
(vi) バルブをはずした後、1〜6週間後(通常は2週間後)、かさぶたが取れた跡に、再構成毛包の生育を観察した。

0042

毛包再構成実験の結果を以下の表1及び図3に示す。「用時調製」マウス由来真皮細胞調製品のみを移植した場合でも毛包再生が認められるのに対し、「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品のみを移植した場合には毛包再生は認められなかった。この結果は、Kishimotoら(前掲)のトランスジェニックマウス由来の真皮細胞画分からセルソーターにより純化した毛乳頭細胞を用いて得られた結果と一致し、「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品には活性細胞成分として毛乳頭細胞のみが含まれていることを実証した。

0043

毛乳頭細胞画分と上皮系細胞画分の細胞比率の毛包再構成効率に及ぼす影響
「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品と、実施例2記載のマウス由来上皮細胞と同様の処理により調製したラット新生児皮膚由来上皮系細胞とをそれぞれ、0、 1x106 、3×106、1x107の細胞数に調整し、混合し、上述の再構成毛包作成手順によりヌードマウス背部皮膚に移植して毛包再構成の有無を調べた。その結果を以下の表2に示す。

0044

0045

表2の結果から、毛乳頭細胞と上皮系細胞との混合比が1:10〜10:1の範囲において毛包の再生が認められ、1:1〜3:1、特に1:1程度の細胞混合物を移植したとき、毛包の再生が顕著に生ずることがわかった。

0046

上皮系細胞を成熟したマウス皮膚由来とした場合の毛包再構成
成熟したマウス皮膚由来(10週齢以降)の上皮系細胞の調製を、実施例2に記載の新生児マウス由来上皮系細胞の調製に準じて行った。成熟マウス皮膚由来の上皮系細胞として、生後10週齢以降のマウスの休止期毛の表皮から調製したもの(休止期毛上皮系細胞含有系)と、休止期毛の皮膚をワックス塗布による除毛処理により機械的刺激し、発毛を促したマウスの表皮から調製したもの(成長期誘導毛上皮系細胞含有系)の二種類を用いた。これら成熟マウス皮膚由来上皮系細胞をそれぞれ「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品と細胞数が1:1となるように混合し、上述の再構成毛包作成手順によりマウスの背部に移植した。その結果を以下の表3に示す。

0047

0048

毛包原基の形成の有無は移植部組織より薄切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色などの一般染色後、形態観察により表皮層陥没真皮線維芽細胞の表皮陥没部直下における凝集により判定した。

0049

この結果から明らかな通り、休止期毛上皮系細胞含有系、成長期誘導毛上皮系細胞含有系のいずれを移植した場合でも、発毛が認められた。従って、上皮系細胞は新生仔表皮に限らず、成熟表皮、例えば休止期毛又は成長期毛の表皮に由来する場合でも、毛包再生に有効であることがわかった。

0050

毛乳頭細胞と上皮系細胞とを異種系にした場合の毛包再構成
「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品とラット新生児皮膚由来上皮系細胞とをそれぞれ約1x107個混合し、上述の再構成毛包作成手順によりヌードマウス背部皮膚に移植して毛包再構成の有無を調べた。その結果は以下の表4及び図4にも示す。

0051

0052

この結果から明らかなとおり、毛乳頭細胞と上皮系細胞との混合物が異種系であっても、同種系と同様、毛包を再生させるのに有効であることがわかった。

0053

上皮系細胞をヒト新生児包皮由来とした場合の毛包再構成
割礼などにより得られたヒト新生児包皮より表皮細胞を調製し、凍結保存マウス毛乳頭細胞調製品と混合し、上述の再構成毛包作成手順によりヌードマウス背部皮膚に移植して毛包再構成の有無を調べた。

0054

包皮組織は一般的な線維芽細胞培養用培地DMEM培地など)及び角化細胞培養用培地(ケラチノサイト−SFM培地;インビトロジェンなど)中で冷蔵保存することで、3〜1週間程度、保存することができる。

0055

包皮由来培養細胞は下記の方法により調製した。
上記培地中の包皮組織(人種を問わず利用できる)をPBS(組織培養用、カルシウムマグネシウムフリー)にストレプトマイシンペニシリンなどの抗生物質が添加された溶液で満たされたペトリデッシュ中で30分間、反応させた。さらに10分間、新しいPBSと抗生物質で満たされたペトリデッシュに移し、10分間反応させた。過剰の脂肪組織を除去した後に、約1cm2程度の皮膚片裁断し、デスパーゼ溶液(合同清酒製:濃度1000U〜5000U)中に浮遊させた状態で4℃、約18時間反応させた。反応後、再びPBS溶液で洗った後に、表皮部分を慎重にピンセットでつまみ剥がした。剥がした表皮シートを5mlの0.05%トリプシン−0.5mMEDTA溶液に懸濁し、37℃で15分間反応させた。

0056

トリプシンインヒビターを加え、反応を停止した後、900回転で10分間遠心し、上澄みを捨てた。10mlのケラチノサイト−SFM培地(インビトロジェン社製)に再懸濁し、細胞数を計測した。約1x106〜107個の細胞を一回の移植実験に供した。移植のために、継代した培養表皮細胞を調製する場合は、約1x106の表皮細胞をI型ないしはIV型コラーゲン溶液でコートした100mmのシャーレあるいは75cm2一のフラスコ播種し、ケラチノサイト−SFM培地を用いて、CO2インキュベータ内で定法に従い培養を行った。細胞がコンフルエントに達した時点で、トリプシンにより細胞を剥がし、回収し、再度1x106の細胞密度に調整して、必要な細胞数、継代数になるまで培養を続けた。

0057

上記移植の結果も以下の表5に示す。

0058

この結果から、上皮系細胞としてヒト由来のものをマウス毛乳頭細胞と組み合わせても、毛包の再生に有効であることがわかった。また、興味深いことに、包皮細胞は毛包や毛根を有しない皮膚部位由来の上皮系細胞であるにもかかわらず、毛乳頭細胞と組み合わさることで毛包を再生させた。従って、毛包を再生させる系において毛乳頭細胞と組み合わせることができる上皮系細胞は、有毛部位の皮膚に限らず、無毛部位の皮膚に由来してよいことも明らかとなった。

0059

上皮系細胞をヒト成人包皮由来とした場合の毛包再構成
包茎除去等の術時に得られた成人包皮組織(20代)より表皮細胞を調製し、凍結保存マウス毛乳頭細胞調整品と混合し、上述の再構成毛包作製手順によりヌードマウス背部皮膚に移植して毛包再構成の有無を調べた。

0060

成人包皮組織は一般的な線維芽細胞培養用培地(DMEM培地など)及び角化細胞培養培地(ケラチノサイト−SFM培地;インビトロジェン社など)中で冷蔵保存することで、1週間程度保存することができる。

0061

成人包皮組織由来培養細胞の調製方法は実施例6の新生児包皮由来培養細胞の調製方法に準じて行うことができる。

0062

上記移植の結果を以下の表6に示す。

0063

この結果から、上皮系細胞として成人ヒト由来のものをマウス毛乳頭組合わせても毛包の再生に有効であることが判った。このことから、毛包を再生させる系において毛乳頭細胞と組合わせることができる上皮系細胞は、発生過程、成熟した組織に関わらず、利用できることが明らかになった。

0064

ヒト包皮由来培養細胞の継代数による毛包再構成に及ぼす影響
実施例6及び7において、ヒト新生児あるいは成人包皮由来の異なる人種の上皮細胞を異なる継代数、培養後にマウス毛乳頭と組合わせて、毛包再構成の実験に供した場合の、再構成の効率について、以下の表7に示す。

0065

この結果から、上皮系細胞として、人種に関わらず、継代数が若いほど、毛包が再構成されることも明らかとなった。

0066

再構成された毛包の検討
再構成された毛包が毛乳頭細胞と上皮系細胞との組み合わせにより構成されているかどうかを確認するには、例えば種特異的な抗体を用いる方法や種特異的な遺伝子配列(ヒトAlu配列など)を用いることができる。もっとも簡便には、毛包再生のための本発明に係る組成物として異種系組成物を使用し(例えば毛乳頭細胞をマウス由来とし、上皮系細胞をラット又はヒト由来とする、又はその逆)、核染色に用いられるヘキスト(Hoechst)#33258試薬(Molecular Probe社)による染色によって、異種系のマウスの場合は核内に複数のドット(点)が明瞭に観察されるのに対し、ヒト、ラットではそれが認められないことで容易に組織学的観察により判別することができる(Miller GJ & Ferrara JA、Stain Technol. 63(1):15-21,1988)。

0067

ヘキスト#33258核染色法
移植部位の組織を薄切したパラフィン切片スライドガラス(4-6μmが望ましい)に載せ、通常の脱パラフィン処理し(キシレン洗浄2回→99.9%エタノール洗浄→80%エタノール洗浄→70%エタノール洗浄→水洗)、PBS溶液に移した(この状態でしばらく置いておくことができる)。
ヘキスト#33258 (モレキュラープローブ社)4mgを1mLのPBS溶液に溶解した(アルミ遮光)。出来上がったヘキスト#33258溶液10μLを10mlのPBSで希釈し(1000倍希釈、最終濃度4μg/mL)、その数滴を平置したスライド組織切片の上を完全に覆うように添加した。その後、室温で遮光しながら15分反応させ、5分間水洗した後、GVA Mounting Solution(グリセロール封入剤、Zymed Lab.製、フナコシ薬品扱い)とカバーグラス封入した。UV領域の励起観察可能蛍光顕微鏡の下、観察を行った。
この方法によれば、マウス細胞の核は明るく、複数のドットが観察され、その他のラット、ヒト細胞はドットが見えないので、組織の起源の種を識別できる。
図5は毛乳頭細胞がマウスに由来し、上皮系細胞がヒト(ヒト新生児包皮由来)に由来する毛包再構成系を移植した場合の蛍光顕微鏡写真の結果を、通常の組織染色、即ちヘマトキシリン−エオジン(HE)染色(「染色法のすべて」医歯薬出版株式会社、p2〜7, 1988年)した組織像との対比において示す。その図から、毛包は毛乳頭細胞(マウスに由来する明るいドットを多数有する部分)と上皮系細胞(ヒトに由来するドットを有しない部分)の双方から構成されることが明らかとなった。

0068

3次元皮膚モデルでの毛包原基再生
ヒト線維芽細胞を0.1%コラーゲン溶液/DMEM/10%FBSに適当量分散させ、シャーレに分注し、ただちに37℃のCO2インキュベータに静置した。ゲル化後、シャーレ壁面および底面よりゲルを剥がし、シャーレの中で浮遊するようにさせた。コラーゲンゲルを揺らしながら培養し、ゲルを約5分の1に収縮させ真皮モデルとした。真皮モデルをステンレスグリッドの上に置き、その上にガラスリングをセットし、KGM(表皮細胞培養用培地)に分散したヒト培養表皮細胞(1.0 X 106細胞数/ml)を0.4mlガラスリング内に注入し培養した。このとき、「凍結保存」マウス由来真皮細胞調製品を同時に混合して注入した。シャーレ内にDMEM—KGM—5%FBS+Ca2+の培地を、真皮モデルの上部が空気に晒される程度に入れ、培養し、約一週間後に皮膚モデルを観察し、毛包原基形成の有無と再現性を、ヘマトキシリン−エオジン染色及び上記ヘキスト染色により判定した。その結果を図6に示す。

0069

図6の結果から明らかなとおり、本発明に係る毛包再生系を3次元皮膚モデルに移植しても、毛包原基形成が認められた。

0070

本発明に係る毛包を再生するための組成物は毛包移植や、毛包再構成についての研究・開発に利用できる。

図面の簡単な説明

0071

LacZ及び7-AADに基づくFACS解析結果。
CD-49及び7-AADに基づくFACS解析結果。
凍結融解毛乳頭細胞と上皮系細胞の混合移植による毛包再生結果
毛乳頭細胞と上皮系細胞とを異種系(マウス−ラット)にした場合の毛包再構成結果。
毛乳頭細胞と上皮系細胞とを異種系(ラット−ヒト)にした場合の毛包再構成のヘキスト核染色結果。
本発明の毛包再生系を3次元皮膚モデルに移植した場合の毛包原基形成を示す結果。

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