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技術 薄膜の密着性の評価方法および表面に薄膜を有する基材の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 名越正泰佐藤馨河野崇史濱田悦男
出願日 2003年10月16日 (17年1ヶ月経過) 出願番号 2003-356317
公開日 2005年5月12日 (15年6ヶ月経過) 公開番号 2005-121467
状態 未査定
技術分野 放射線を利用した材料分析 機械的応力負荷による材料の強さの調査 ナノ構造物
主要キーワード 皮膜領域 特定材質 材料表 一定加速 皮膜物質 評価対象材料 微小部位 下地物質
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2005年5月12日)のものです。
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図面 (8)

課題

材料表面に形成された薄膜密着性を正確かつ迅速に評価する手法を提供する。

解決手段

(1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(2)前記試料を剥離試験する工程と、(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(4)前記剥離試験前の二次電子量の測定値と前記剥離試験後の二次電子量の測定値との差を求める工程と、(5)前記剥離試験前後の二次電子量の測定値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法

概要

背景

鉄鋼製品化学製品における表面処理技術、あるいは半導体製品、記録やディスプレー関連製品など、多くの技術分野において、薄膜付与技術、薄膜制御技術は、特性発現の要である。すなわち、基材表面の厚さ数オングストローム数百ナノメートルの薄膜の特性、物性、膜厚やその分布が性能支配因子となっていることが多い。薄膜技術が重要になればなるほど、その評価技術製品開発および検査・管理の鍵を握ってくるといっても過言ではない。

薄膜の特性において、その密着性は非常に重要な特性の一つである。密着性が不良であれば、薄膜の剥離や剥離を介した腐食つながり製品の性能を著しく損ねてしまう。そのため、薄膜の密着性を評価する方法は大切である。

皮膜の密着性を評価する方法は、例えばスクラッチ試験磨耗試験のような機械的な方法、あるいはテープを一旦試料に貼り付けた後引き剥がして、テープ上に付着した皮膜構成元素定量分析するテープ剥離試験などがある。後者においては、加工時の密着性を評価するため、加工(例えば90°曲げや、ドロービード試験)後にテープ剥離試験を行う方法も含まれる。またこのなかには、クロスカット升目状に入れ、剥がれた升目の数を数えるJIS K5400のような手法も含まれる。よりマクロ的には、張り合わせ部のせん断引張試験などがある。

しかしながら上記の方法は、皮膜のマクロ的な密着性を評価する方法であり、微小な部分の皮膜密着性の評価、および数十ナノメートル程度の薄い膜厚の皮膜の評価は困難である。

昨今、材料や部品ミクロ的な構造を有し、材質、形状等が異なる複数の材料を組合せた複合材料を使用するようになってきており、特定の微小な部位あるいは特定材質上の皮膜密着性を評価することが必要になってきたが、前述の評価方法は、係る目的には適していない。すなわち、既存方法では本来知りたい部位の皮膜密着性とそれ以外の部分の皮膜密着性を含めたマクロな部分の評価しかできない。

また、剥離試験後の試料を仔細に研究することなしには、どのような皮膜剥離が起こっているか、剥離した部分の分布はどうであるかなど、皮膜密着性の改善策製造条件の変更を行うために重要な知見を得ることは困難である。

さらに、従来法では、試験に長時間を要する。テープ剥離法では、剥離試験後に定量分析を行う必要があるため、迅速に結果がでない。そのため、製品の出荷検査、製造条件へのフィードバックを効率的に行えないばかりか、研究開発スピード鈍らせる

さらに重要な点は、皮膜がより薄く、また皮膜が微量領域に付与されたものになってくると、機械的な手法は適用が困難になり、テープ剥離法は、剥離量そのものが低下するため、定量分析の精度がネックになり、正確な評価が困難になることである。機械的剥離法には、走査プローブ顕微鏡を用いたナノスクラッチ試験があるが、測定や結果の解釈熟練を要し、またシリコンウエハハードディスクのような平滑性の高い下地にしか適用できない。表面に凹凸がある試料は適用困難である。テープ剥離法では、精度を上げようとすると、膨大な試料面積を必要とし現実的でない。

さらにテープ剥離法では、テープに付着する物質は必ずしも皮膜物質とは限らないところも問題である。たとえば、下地の一部が剥離してテープに付着したり、試料表面に存在していた不純物がテープに付着し、剥離した皮膜量を過剰に見積もってしまう可能性が高い。

概要

材料表面に形成された薄膜の密着性を正確かつ迅速に評価する手法を提供する。 (1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(2)前記試料を剥離試験する工程と、(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(4)前記剥離試験前の二次電子量の測定値と前記剥離試験後の二次電子量の測定値との差を求める工程と、(5)前記剥離試験前後の二次電子量の測定値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

目的

本発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、材料表面に形成された薄膜の密着性を正確かつ迅速に評価する手法を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

(1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(2)前記試料を剥離試験する工程と、(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、(4)前記剥離試験前の二次電子量の測定値と前記剥離試験後の二次電子量の測定値との差を求める工程と、(5)前記剥離試験前後の二次電子量の測定値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法

請求項2

(1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧で電子線を照射し、その二次電子像を観察し、その二次電子量を二次電子量の明るさ数値として数値化する工程と、(2)前記試料を剥離試験する工程と、(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、その二次電子像を観察し、その二次電子量を、二次電子量の明るさ数値として数値化する工程と、(4)前記剥離試験前の二次電子量の明るさ数値と前記剥離試験後の二次電子量の明るさ数値との差を求める工程と、(5)前記剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

請求項3

請求項1において、試料表面に照射する電子線を、前記試料表面上を走査しながら照射し、剥離試験前及び剥離試験後における電子線照射位置に対応した二次電子量を各々測定し、電子線照射位置に対応した剥離試験前の二次電子量と剥離試験後の二次電子量の測定値の差から、試料表面上の各位置における薄膜の密着性を評価することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

請求項4

請求項2において、試料表面に照射する電子線を、前記試料表面上を走査しながら照射し、剥離試験前及び剥離試験後における電子線照射位置に対応した二次電子量の明るさ数値を各々求め、電子線照射位置に対応した剥離試験前の二次電子量の明るさ数値と剥離試験後の二次電子量の明るさ数値の差から、試料表面上の各位置における薄膜の密着性を評価することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

請求項5

請求項1〜4において、試料表面に照射する電子線の加速電圧は0.01kV以上2kV以下の範囲内であることを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

請求項6

請求項1〜5において、薄膜は、金属あるいは半導体上の酸化物および/または水酸化物からなることを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法。

請求項7

基材の表面に薄膜を形成する製造工程と、前記製造工程で表面に薄膜を形成した基材の一部又は全部に対して請求項1〜6のいずれかに記載の方法で薄膜の密着性を評価する評価工程と、を有することを特徴とする、表面に薄膜を有する基材の製造方法。

請求項8

予め、剥離試験前後の二次電子量の差と密着性との対応関係又は剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差と密着性との対応関係を求め、前記評価工程は、前記剥離試験前後の二次電子量の差と密着性との対応関係と、前記評価工程の剥離試験前後の二次電子量の測定値の差、又は、前記剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差と密着性との対応関係と、前記評価工程の剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差に基いて、薄膜が所定の密着性を有するか否かを判定することを特徴とする、請求項7に記載の表面に薄膜を有する基材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、材料表面に形成された薄膜密着性を正確かつ迅速に評価する方法および表面に薄膜を有する基材の製造方法に関する。

背景技術

0002

鉄鋼製品化学製品における表面処理技術、あるいは半導体製品、記録やディスプレー関連製品など、多くの技術分野において、薄膜付与技術、薄膜制御技術は、特性発現の要である。すなわち、基材表面の厚さ数オングストローム数百ナノメートルの薄膜の特性、物性、膜厚やその分布が性能支配因子となっていることが多い。薄膜技術が重要になればなるほど、その評価技術製品開発および検査・管理の鍵を握ってくるといっても過言ではない。

0003

薄膜の特性において、その密着性は非常に重要な特性の一つである。密着性が不良であれば、薄膜の剥離や剥離を介した腐食つながり製品の性能を著しく損ねてしまう。そのため、薄膜の密着性を評価する方法は大切である。

0004

皮膜の密着性を評価する方法は、例えばスクラッチ試験磨耗試験のような機械的な方法、あるいはテープを一旦試料に貼り付けた後引き剥がして、テープ上に付着した皮膜構成元素定量分析するテープ剥離試験などがある。後者においては、加工時の密着性を評価するため、加工(例えば90°曲げや、ドロービード試験)後にテープ剥離試験を行う方法も含まれる。またこのなかには、クロスカット升目状に入れ、剥がれた升目の数を数えるJIS K5400のような手法も含まれる。よりマクロ的には、張り合わせ部のせん断引張試験などがある。

0005

しかしながら上記の方法は、皮膜のマクロ的な密着性を評価する方法であり、微小な部分の皮膜密着性の評価、および数十ナノメートル程度の薄い膜厚の皮膜の評価は困難である。

0006

昨今、材料や部品ミクロ的な構造を有し、材質、形状等が異なる複数の材料を組合せた複合材料を使用するようになってきており、特定の微小な部位あるいは特定材質上の皮膜密着性を評価することが必要になってきたが、前述の評価方法は、係る目的には適していない。すなわち、既存方法では本来知りたい部位の皮膜密着性とそれ以外の部分の皮膜密着性を含めたマクロな部分の評価しかできない。

0007

また、剥離試験後の試料を仔細に研究することなしには、どのような皮膜剥離が起こっているか、剥離した部分の分布はどうであるかなど、皮膜密着性の改善策製造条件の変更を行うために重要な知見を得ることは困難である。

0008

さらに、従来法では、試験に長時間を要する。テープ剥離法では、剥離試験後に定量分析を行う必要があるため、迅速に結果がでない。そのため、製品の出荷検査、製造条件へのフィードバックを効率的に行えないばかりか、研究開発スピード鈍らせる

0009

さらに重要な点は、皮膜がより薄く、また皮膜が微量領域に付与されたものになってくると、機械的な手法は適用が困難になり、テープ剥離法は、剥離量そのものが低下するため、定量分析の精度がネックになり、正確な評価が困難になることである。機械的剥離法には、走査プローブ顕微鏡を用いたナノスクラッチ試験があるが、測定や結果の解釈熟練を要し、またシリコンウエハハードディスクのような平滑性の高い下地にしか適用できない。表面に凹凸がある試料は適用困難である。テープ剥離法では、精度を上げようとすると、膨大な試料面積を必要とし現実的でない。

0010

さらにテープ剥離法では、テープに付着する物質は必ずしも皮膜物質とは限らないところも問題である。たとえば、下地の一部が剥離してテープに付着したり、試料表面に存在していた不純物がテープに付着し、剥離した皮膜量を過剰に見積もってしまう可能性が高い。

発明が解決しようとする課題

0011

前記したように、薄膜の密着性を、対象材料特定部位について、薄膜剥離の分布も含めて評価でき、しかも迅速に行える手法が必要である。また、平滑でない下地に対しても薄膜の密着性を評価できる手法が必要である。

0012

本発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、材料表面に形成された薄膜の密着性を正確かつ迅速に評価する手法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0013

上記課題を解決する本発明の特徴は次のとおりである。

0014

第1発明は、(1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、
(2)前記試料を剥離試験する工程と、
(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、二次電子量を測定する工程と、
(4)前記剥離試験前の二次電子量の測定値と前記剥離試験後の二次電子量の測定値との差を求める工程と、
(5)前記剥離試験前後の二次電子量の測定値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、
を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0015

第2発明は、(1)表面に薄膜を有する試料表面に、膜厚に応じて選択された所定加速電圧で電子線を照射し、その二次電子像を観察し、その二次電子量を二次電子量の明るさ数値として数値化する工程と、
(2)前記試料を剥離試験する工程と、
(3)剥離試験後の試料表面に、前記所定加速電圧で電子線を照射し、その二次電子像を観察し、その二次電子量を、二次電子量の明るさ数値として数値化する工程と、
(4)前記剥離試験前の二次電子量の明るさ数値と前記剥離試験後の二次電子量の明るさ数値との差を求める工程と、
(5)前記剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差に基いて、薄膜の密着性を評価する工程と、
を有することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0016

第3発明は、第1発明において、試料表面に照射する電子線を、前記試料表面上を走査しながら照射し、剥離試験前及び剥離試験後における電子線照射位置に対応した二次電子量を各々測定し、電子線照射位置に対応した剥離試験前の二次電子量と剥離試験後の二次電子量の測定値の差から、試料表面上の各位置における薄膜の密着性を評価することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0017

第4発明は、第2発明において、試料表面に照射する電子線を、前記試料表面上を走査しながら照射し、剥離試験前及び剥離試験後における電子線照射位置に対応した二次電子量の明るさ数値を各々求め、電子線照射位置に対応した剥離試験前の二次電子量の明るさ数値と剥離試験後の二次電子量の明るさ数値の差から、試料表面上の各位置における薄膜の密着性を評価することを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0018

第5発明は、第1〜第4発明において、試料表面に照射する電子線の加速電圧は0.01kV以上2kV以下の範囲内であることを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0019

第6発明は、第1〜第5発明において、薄膜は、金属あるいは半導体上の酸化物および/または水酸化物からなることを特徴とする、薄膜の密着性の評価方法である。

0020

第7発明は、基材の表面に薄膜を形成する製造工程と、前記製造工程で表面に薄膜を形成した基材の一部又は全部に対して第1〜第6発明のいずれかに記載の方法で薄膜の密着性を評価する評価工程と、を有することを特徴とする、表面に薄膜を有する基材の製造方法である。

0021

第8発明は、予め、剥離試験前後の二次電子量の差と密着性との対応関係又は剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差と密着性との対応関係を求め、前記評価工程は、前記剥離試験前後の二次電子量の差と密着性との対応関係と、前記評価工程の剥離試験前後の二次電子量の測定値の差、又は、前記剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差と密着性との対応関係と、前記評価工程の剥離試験前後の二次電子量の明るさ数値の差に基いて、薄膜が所定の密着性を有するか否かを判定することを特徴とする、第7発明に記載の表面に薄膜を有する基材の製造方法である。

発明の効果

0022

本発明の評価法によれば、材料の特性の多くを左右する表面の薄膜の密着性を、既存手法より簡便・迅速、かつより正確に評価できる。本発明の評価法によれば、極低加速電圧を用いることにより、既存技術では評価困難な、厚さ数nm程度の極薄薄膜の密着性評価にも対応できる。

0023

また、本発明の評価法によれば、微小部位おける密着性の評価が可能であるので、平滑でない表面に形成された薄膜や、材料の特定部位の薄膜の密着性を正確に評価することができる。

0024

基材表面に薄膜を形成する際に、本発明法で薄膜の密着性を評価し、その結果に基づいて、製品の開発はもとより、適切な製品管理、出荷管理が可能になる。また、評価結果を薄膜を形成する製造工程へフィードバックし、製造条件の調整に利用することもできる。

発明を実施するための最良の形態

0025

以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の特徴は、(i)工業製品上で重要な皮膜の多くが低導電性であることと、(ii)電子線照射に対して皮膜物質と下地物質二次電子放出率の違いに着目し、(iii)皮膜の有無を一定加速電圧に対する二次電子放出率の変化の違いとして検出することにある。ただし後述するように、皮膜物質と下地との間で二次電子放出量に差があるものであれば、(i)の条件は必須ではない。

0026

発明者らは極低加速EM技術を利用し種々の薄膜サンプルを調べるうち、低導電性皮膜の有無によって二次電子像の明るさに大きな違いがあることに気づいた。この明るさの違い(以下コントラスト)は、金属上に導電性の低い酸化物層が存在する場合を例にとると、図1に模式的に示したメカニズムで生じると考えている。

0027

すなわち、通常加速電圧では、図1(a)に示すように、膜物質がある部分、膜物質がない部分のいずれでも、下地物質からの二次電子放出が支配的である。そのため、膜物質がある部分と膜物質がない部分とで二次電子放出量の差は小さい。これに対して、入射電子の加速電圧を、入射後の電子の拡散が皮膜物質内に収まるような条件で選択された場合、図1(b)に示されるように、膜物質がある部分における二次電子放出は膜物質そのもので決定され、膜物質が無い部分における二次電子放出量は下地物質そのもので決定される。このとき、膜物質と下地との二次電子放出量に差が生じる。そのために、膜物質がある部分と無い部分とで物質の違いにより物質コントラストが生じるのである。皮膜が低導電性の場合、皮膜が存在する部分は、二次電子量の少ない領域、すなわち暗いコントラストとして表れる。

0028

発明者らは、この現象を利用して、薄膜の密着性を評価できることを見出した。

0029

すなわち、剥離試験前の試料に上記のような皮膜領域下地領域で二次電子量に差がでる加速電圧で電子線を照射し、次いで剥離試験を行い、剥離試験後の試料に前記と同じ加速電圧で電子線を照射し、剥離試験前後における二次電子量の変化(差)を求める。剥離試験で皮膜の一部が剥離すると、皮膜面積が減少し、下地の面積が増加することから、剥離試験前後で二次電子量が変化する。

0030

剥離試験前後における二次電子量の変化に基き、皮膜の被覆率の差、すなわち剥離面積が求まることから、皮膜の密着性を評価できるのである。

0031

特定の微小部における密着性を評価する場合、又は剥離部の面内における分布を評価する場合は、入射電子線を細く絞り走査して表面の特定部位に照射し、電子線照射位置に対応して二次電子量を測定する。すなわち走査電子顕微鏡(SEM)の原理に基づき、二次電子量を試料上の位置に対応させて記録する。この場合、剥離試験前後で同一試料同一視野を観察して、その二次電子量の分布の違いを計測することがより正確である。両者の二次電子量の分布を計測し、その差を求めることで、皮膜剥離を起こした部分の面内の分布を瞬時に知ることができ、また各点の二次電子量を、評価する特定の領域について平均化することで、特定領域の密着性を評価できる。

0032

前記は薄膜の一部分が全層剥離する場合を念頭において説明したが、薄膜が全層剥離ではなく、例えば皮膜の上部のみが剥離することも考えられる。このような剥離形態が混在する場合でも下記のようにして皮膜の密着性を評価可能である。発明者らは、二次電子量が薄膜の厚さに関連して、連続的に変化することを見出した。皮膜が薄くなると二次電子量が増加し下地の二次電子量に近づくように変化するので、剥離試験前後における視野全体の二次電子量の変化、あるいは特定領域で平均化された二次電子量の変化に基いて皮膜剥離量を、また電子線照射位置に対応した剥離試験前後の二次電子量の変化から、剥離量の面内の分布も評価することが可能である。

0033

上記の手法において、本質は二次電子の放出量であるが、SEMを用いて二次電子像の明るさを測定し、それを数値化し、その数値で二次電子放出量の相対的な違いを評価することができる。二次電子像の明るさを数値化して評価することには、(1)簡便であること、(2)皮膜、厚さの二次元分布を容易に取得できること、の利点がある。また、(3)SEMが具備する各種表面画像観察機能元素分析機能を利用して、試料の表面形態組成分布などを必要に応じて評価できることである。

0034

本発明で照射する電子線の加速電圧範囲、すなわち皮膜領域と皮膜のない下地領域で二次電子量に差がでる加速電圧範囲は、薄膜の厚さによって決定される。

0035

皮膜の有無で二次電子量の異なる加速電圧を実測して求める方法の一例は、試料に照射する電子線の加速電圧を高い方から低い方へ又は低い方から高い方へ変化させて、加速電圧に対する二次電子発生量(二次電子像の明るさ)の変化を評価し、皮膜の有無で前記二次電子発生量(明るさ数値)が異なる加速電圧を求める方法である。

0036

図2は、金属上に該金属よりも導電性の低い物質で構成され、膜厚の異なる薄膜(ここでは酸化物層)を有する試料(2)〜(4)について、加速電圧を高い方から低い方へ変化させたときの二次電子発生量の変化を示す模式図である。膜厚は試料(4)>試料(3)>試料(2)である。皮膜が存在しない試料(1)表面からの二次電子放出量は、実際には加速電圧を低下すると二次電子発生量はわずかずつ変化し、滑らかな曲線となる加速電圧依存性を有しているが、図2では、その変化を無視し、皮膜が存在しない試料(1)の二次電子発生量の加速電圧依存性を、二次電子発生量が一定の直線で示してある。

0037

低導電性の皮膜が表面に存在する試料(2)〜(4)の二次電子発生量の加速電圧依存性は、各々図中に示されるような曲線になる。すなわち、加速電圧が高い領域では、加速電圧を低下しても二次電子発生量の変化は薄膜が存在しない試料(1)と類似しているが、加速電圧をさらに低下すると、ある加速電圧から二次電子発生量は顕著に減少するようになる。これは、前述のように入射電子の試料内での広がり皮膜内に限定されるようになることで、低導電性の皮膜表面が正に帯電し、二次電子発生量が減少するためと考えられる。なお、図2では、装置の二次電子検出効率の加速電圧依存性は無視されている。

0038

二次電子発生量が滑らかな曲線から外れて減少を開始する加速電圧(図2中、▽印ア〜ウで示す。)を求め、膜厚と二次電子発生量が減少を開始する加速電圧の関係を図示すると、図3に示すような特性曲線が得られる。本発明において、電子線の加速電圧は、薄膜の厚さに対応して決定される図3中の特性曲線より下方の領域から加速電圧が選択される。

0039

以上、照射する電子線の加速電圧範囲を実測結果に基づいて決定する方法を説明したが、膜物質の成分・組成密度と膜厚がわかっている場合は、モンテカルロシミュレーションなどで、入射電子の試料内での広がりが皮膜内に限定される加速電圧を求めることで、決定することができる。モンテカルロシミュレーションには、市販のモンテカルロシミュレーションソフトウエアを利用できる。

0040

対象とする薄膜の厚さが1nm以上50nm以下である場合、皮膜物質によるが加速電圧0.01kV以上2kV以下の極低加速電圧とすることが必要である。例えば、薄膜の厚さが1nm以上30nm以下の場合、加速電圧として0.01kV以上1.0kV以下が有効である。また、薄膜で厚さが1nm以上10nm以下の場合、加速電圧として0.01kV以上0.3kV以下が有効である。

0041

図4は、図3中の特性曲線より下方の領域にある加速電圧から選択された一定加速電圧(図2中の加速電圧X)における試料(2)〜(4)の二次電子発生量を、各々a、b、cとし、膜厚と二次電子発生量の関係を図示したものである。図4においては、二次電子発生量は膜厚に対応していることから、前記加速電圧で、二次電子発生量を測定することにより皮膜厚さを評価できる。また、この関係を利用し、剥離試験前の皮膜厚さ、剥離試験後の皮膜厚さを各々評価し、その差を求めることで皮膜剥離の程度を評価、すなわち皮膜の密着性を評価できる。図4に示すような一定加速電圧における二次電子発生量と皮膜厚さとの関係をあらかじめ求めておくことにより、膜厚未知の試料の皮膜厚さを決定できる。このことにより、皮膜の全層剥離の場合だけでなく、皮膜内の破壊・脱離より、皮膜厚さが薄くなるような場合も、皮膜の脱落を評価することができ、密着性を評価できることになる。

0042

図2図4は二次電子発生量と膜厚との関係を示した例であるが、二次電子発生量に代えて明るさ数値と膜厚との関係も同様にして求めることができる。

0043

本発明は上記知見に基づきなされたものである。発明者らは、上記の発見に基づいて、本発明の薄膜の密着性の評価方法を金属や半導体上の低導電性膜に適用し、皮膜の密着性の評価に有用であることを確認した。本発明の薄膜の密着性の評価方法は、これら材料の製品検査出荷品質管理に利用することができ、さらにはその評価工程を組み込んだ製造方法、操業条件修正方法等にも応用できる。

0044

以下、本発明を、SEMを使用して明るさ数値に基いて試料面内の密着性分布までも評価する場合を例に挙げて具体的に説明する。密着性の評価が平均情報でよい場合は、単純に結果を平均化したり、あるいは絞らないビームで評価したり、さらには、試料に照射できる電子線源と試料より発生する二次電子量を測定する機能を備えた簡単な装置でも評価可能である。

0045

本発明では、予め、評価対象材料と同種の薄膜を有し、薄膜厚さの異なる材料について、適切な一定加速電圧(皮膜領域と皮膜のない下地領域で二次電子量に差がでる加速電圧範囲内から選択される加速電圧)でSEMによりその表面を観察し、画像を取込んだ後、明るさを数値化し、例えば、図5に示すような、膜厚と明るさとの関係を調査して求めておく。薄膜が無い試料又は下地部分(薄膜が無い部分)の明るさも調査して求めておく。図5において、Bsは下地部分の明るさ数値である。ただし、皮膜の剥離形態が全層剥離であって、皮膜の有無により密着性が評価できる場合には、このステップは省略できる。

0046

次に、評価対象の材料から必要に応じて密着性評価用の試料を切出す。次いで、切出した試料を必要であれば洗浄した後、適切な加速電圧でSEMによりその表面を観察し、画像を取込んだ後、明るさを数値化する。その後該試料を剥離試験に供する。その方法は、テープ剥離方法でもよいし、加工後にテープ剥離する方法、機械的な磨耗試験でもよい。また、腐食促進試験などの溶液浸す方法で腐食による皮膜の密着性を評価する際にも適用できる。剥離試験が終了後、必要に応じて試料を洗浄し、試験前に観察した部分を同じ加速電圧で観察し、画像を取り込んだのち、明るさを数値化する。剥離試験前後の明るさの差を求め、その結果より薄膜の密着性を評価する。すなわち、図5において、剥離試験前の明るさをBF1、剥離試験後の明るさをBF2とすると、前記明るさBF1、BF2は各々膜厚(膜厚が不均一の場合は、平均膜厚となる)t1、t2に対応していることから、剥離試験前後の明るさの差BF1−BF2は、剥離試験による皮膜減少t1−t2に対応している。従って、剥離試験前後の明るさの差BF1−BF2に基き薄膜の密着性を評価できる(全層剥離の場合は、BF2=BSとなる。)。

0047

また、剥離試験前の皮膜厚t1はBF1−BSに対応し、剥離試験後の残存皮膜厚t2はBF2−BSに対応していることから、(BF2−BS)/(BF1−BS)は、剥離試験後の皮膜残存率を表す。これによって薄膜の密着性を評価することもできる。

0048

密着性の評価には、加速電圧2kV以下の電子線を常時安定して照射できるSEMを用いることができる。この加速電圧の範囲で、5nmより良い空間分解能を損なわずに自由に加速電圧を変化させることができるもので、電子線の安定性の観点からショットキー電放出電子を有すること望ましい。二次電子検出器としては、低エネルギーの二次電子を、できれば選択的に、多く検出できるものが望ましい。また、迅速に測定までのセットアップができることから試料準備室を有することが望ましい。一例をあげるとすると、LEO1500シリーズやSUPRAシリーズ(LEO社)は、上記の目的に適している。

0049

二次電子量の測定は、二次電子を電流として取り込む方法が直接的であるが、二次電子像の明るさを数値化して評価することが簡便である。二次電子は、低エネルギーの二次電子を多く取り込むようにすると、導電性の違いに伴う二次電子量の変化を効率よく測定できる。

0050

一定の加速電圧で得られた明るさから、皮膜の分布を定量的に評価するためには、観察・画像取り込み、および数値化の条件を同一にすることが肝要である。特に試験前後で同じ視野を定量的に評価する場合、検査対象に対して同一条件で得られた結果を比較する必要がある。同一条件で画像をデジタルデータとして取込む。その際に同一にする観察条件は以下のとおりである。
・加速電圧:前記のごとく対象とする膜厚により決定する。
・入射電子条件:加速電圧、アパーチャ−、ビーム径(通常最小)、電子の走査範囲倍率)、走査スピード(一点あたりの電子線照射時間)、走査方法
検出条件検出器の条件(印可電圧など)、明るさ、コントラスト
画像取込み条件:取込み点数、取込み時間、明るさ、コントラスト
次いで取込んだ画像を、画像処理ソフトウエアで読み込む。このソフトウエアは自作、市販品を問わない。後者の一例は、Adobe製Photoshopである。前記ソフトウエア上で、付着物など異常部を除いた画像範囲の明るさを数値化する。数値化方法は問わないが、例えば明るさを256階調に分ける。

0051

試料表面の平均情報を得る場合は、前記範囲内の画像データ点数で平均化する方法を採用できる。剥離試験前の試料と試験後の試料の両方について、同様の方法で画像を数値化する。また、同一条件で観察された、皮膜のみの領域と下地のみの領域の明るさを各々数値化する。
これらの結果より、皮膜の被覆率は、(2)式により評価できる。

0052

0053

これは、皮膜部分の明るさBF、下地部分の明るさをBS、皮膜の被覆率をCとすると、全体の明るさ平均値Bと、B=(BF×C+BS×(1−C))の関係があることによる。

0054

この皮膜被覆率を、剥離試験前後で各々求める。図5に示したように、全体の明るさ平均値Bは皮膜厚さに対応していることから、(3)式より、皮膜残存率、すなわち皮膜の密着性を評価できる。

0055

0056

なお、(2)式における皮膜被覆率は、皮膜の全層剥離を想定した記述であるが、剥離試験により皮膜厚さが薄くなる場合は、これを平均膜厚に置き換え、皮膜の密着性、皮膜残存率を同様に評価できる。

0057

ここでは、剥離試験前後で同一試料の同一視野を評価することを述べたが、剥離試験前の皮膜の状況がわかっている場合、例えば皮膜が均一の厚さで試料表面の全面を覆っている場合や皮膜の分布が均一な場合、一度このような皮膜の二次電子像明るさを評価しておけば、その後は剥離試験後の表面の評価を行うだけで密着性を評価できる。

0058

また、より簡便な方法として、同一条件で得られた二次電子像の明るさを数値化して、適当な明るさ(閾値)で皮膜部分と下地露出部分を二値化して、それぞれ皮膜の被覆率を計算し、(3)式を用いて皮膜残存率を評価することができる。この方法は、皮膜のみ、下地のみの明るさを計測する必要はない。

0059

特定微小部の密着性を評価するには、特定領域のデータのみを平均化したものについて、(2)式、(3)式を適用すればよい。

0060

皮膜剥離程度面内分布を調べるには、剥離試験前後の二次電子像の明るさ分布の比(剥離試験後の明るさ数値/剥離試験前の明るさ数値、あるいはその逆)の分布を得ることにより、剥離した部分を可視化できる。

0061

本発明が対象とする材料は、基材(下地物質)表面の少なくとも一部に薄膜を有しており、該薄膜は基材の導電性よりも低い導電性物質からなる材料である。具体例としては、金属や半導体上にそれより低導電性の皮膜が存在する材料が本発明の対象となる。半導体分野では、シリコン上の絶縁皮膜誘電体皮膜などを挙げることができる。前述の低導電性皮膜としては、例えば、鋼板などの金属板上の酸化物や水酸化物、あるいは有機化合物高分子材料主体とする表面処理皮膜などがある。

0062

これらの製品の特性が低導電性皮膜の厚さに依存しているものは、本発明の格好の対象である。対象となる低導電性の薄膜の厚さは、1nm以上1μm以下である。本発明は、厚さ1nm以上100nm以下の薄膜に対してより好適に適用でき、厚さ1nm以上10nm以下の極薄の薄膜に対して特に好適に適用できる。

0063

しかし、本発明は、必ずしも皮膜の導電性に限定されることはなく、皮膜物質と下地物質とで二次電子量に違いのでるものであれば、適応可能である。

0064

また、原理は図1と異なるが、膜物質と下地物質との平均原子番号が異なる場合は、反射電子検出器を使って、膜物質と下地物質との平均原子番号の違いによる反射電子量の違いを利用することができる。この方法は、極薄層には適さないが、導電性に差がない場合も適用可能である。

0065

本発明によれば、薄膜の密着性を的確、迅速に評価できる。基材の表面に薄膜を形成する製造工程で製造された材料に対して、本発明の薄膜の評価方法を適用することで、該材料の出荷先を適切に振り分けることが可能となる。

0066

すなわち、密着性試験前後の二次電子量の測定値の差又は剥離試験前後の明るさ数値の差と密着性との対応関係を求め、さらに薄膜の密着性が所定の密着性レベルとなる密着性試験前後の二次電子量の測定値の差又は密着性試験前後の明るさ数値の差の閾値を予め設定しておく。そして、製造工程で製造された材料の薄膜の評価結果から得られた密着性試験前後の二次電子量の測定値の差又は剥離試験前後の明るさ数値の差が前記閾値以上であれば薄膜は所定の密着性を有すると判定する。

0067

前記閾値を、密着性の合否を判定する閾値とし、製造工程で製造された材料の薄膜の密着性評価結果が該閾値以上であれば当該材料を所定の引当先に振り向け、該閾値未満であれば当該材料を所定の引当先に振り向けないようにすることができる。

0068

また、前記閾値を、密着性レベルに対応して、複数の閾値、例えば高グレード閾値、低グレード閾値の2種の閾値を設定し、製造工程で製造された材料の薄膜の密着性評価結果と前記各々の閾値とを対比し、該材料の薄膜の密着性評価結果が高グレード閾値以上であれば高グレードの密着性が必要な引当先に振り向け、低グレード閾値以上であれば低グレードの密着性が必要な引当先に振り向け、低グレード閾値未満であれば、前記の何れにも引き当てないようにしてもよい。

0069

皮膜の被覆率により製品の良否を判定できる場合、本明細書で記載する皮膜の被覆率を求める方法を利用して、製品や試作品における薄膜の被覆率を評価することが有効である。求めた薄膜の被覆率を、上記の密着性と同様に、取扱うことにより、製品の検査(良否判定グレード仕分け)、および製造工程における製造条件決定を行うことができる。

0070

次に、本発明を実施例により説明する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を常法により製造し、調質圧延によりめっき表面に平坦部をもうけた。その鋼板をpH1の酢酸ソーダを含有する酸性溶液に浸漬後200℃で乾燥することで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面にZnを主体とする酸化物層を形成させた。酢酸ソーダの含有量を変化させて3種類の酸化物層を形成させた。オージェ電子顕微鏡で測定した結果、酸化物は調質圧延により作製した平坦部にのみ形成されており、酸化物の厚さはすべて40nm前後であった。この酸化物層を、アセチルセルロースフィルムを、アセトンを介して試料表面に30秒間圧着し、剥離することを2回繰返す剥離試験を行った。

0071

SEM(LEO1530)を用い、加速電圧0.5kVで上記試料表面を走査し、画像をデジタルデータで取り込んだ。画像の取り込みは、剥離試験前後で同一視野について行った。それぞれの画像データから、平坦部の明るさの平均を数値化した。また、それぞれの画像データから、皮膜存在部のみ、下地部分のみの領域を選択し、それぞれの領域の明るさの平均値を数値化した。これらの数値から、前記(2)式、(3)式より、皮膜被覆率、皮膜残存率を求めた。なお明るさの数値化は、市販のソフトウエアPhotoshop(Adobe製)を用いて256階調で数値化した。

0072

表1は、試料A〜Cの画像データから数値化した結果と、試料の平坦部における剥離試験前後の皮膜被覆率および皮膜残存率を評価した結果である。

0073

0074

試料Aは、三試料中でもっとも皮膜の密着性が劣ることがわかる。また、試料Cは、剥離試験前の皮膜の被覆率は他の試料より低いが、皮膜残存率(皮膜密着率)はもっとも高く、剥離試験後の皮膜被覆率が高い。この結果に基づき、密着性の高い酸化物の皮膜形成条件を決定することができた。

0075

この例のように、皮膜の形成が表面の特定部分に限られる場合に本発明は特に有効である。例えばテープ剥離試験では定量的な評価ができたとしても、皮膜の分布がわからないため、試料の単位面積あたりの密着性評価(広い領域の平均的な密着性評価)ができるだけで、平坦部に形成された皮膜の密着性は評価できない。

0076

前記と同じ画像データに、皮膜部を抽出できるように閾値を決め、その閾値で二値化して、剥離試験前後での皮膜の被覆率の変化を調べることも行った。この結果、試料Aでは、皮膜の残存率は約40%と、前記と同様の結果を得た。この方法でも皮膜の密着性を評価できることを示している。

0077

なお、図6は、試料Aの剥離試験前後の二次電子像で、(a)は剥離試験前の二次電子像、(b)は(a)に対応する部分の剥離試験後の二次電子像である。ともに0.5kVの加速電圧により得られたものである。これらの像の明るさを数値化して、表1の試料Aの明るさ数値を求めた。試料B、Cでも同様にして明るさ数値を求めた。

0078

また、図7は、図6(b)の各点の明るさ数値を図6(a)のそれで割った結果を示す図である。平坦部において、皮膜が剥離した領域が暗いコントラストで表されており、皮膜が剥離した領域の分布が明瞭に示されている。

0079

本発明は、基材表面に形成された薄膜、例えば厚さ数nm以上の薄膜の密着性評価に利用できる。本発明は、特に、半導体材料鉄鋼材料分野において、半導体や金属上の酸化膜からなる薄膜を形成させた材料の密着性の評価に好適に利用できる。

0080

本発明によれば、SEMを使うことができるため、平面内で数十nmのなかでの膜厚の密着性評価や剥離部の可視化も可能であり、ナノテクノロジーにより開発される材料の極薄薄膜の密着性の評価に利用できる。

0081

本発明は、前記のような製品の開発はもとより該製品の製品管理、出荷管理、さらには該製品を製造する製造工程の製造条件調整へのフィードバックにも利用可能である。

図面の簡単な説明

0082

本発明において、薄い酸化膜層存在部分を可視化できる機構を示す模式図で、(a)は通常加速電圧における二次電子放出を説明し、(b)は入射電子の加速電圧を、入射後の電子の拡散が皮膜物質内に収まるような低加速電圧に選択されたときの二次電子放出を説明する。
表面に膜厚の異なる低導電性皮膜が存在する試料で、加速電圧を高い方から低い方に変化させたときの加速電圧に対する二次電子発生量量の変化を示す模式図である。
加速電圧を高い方から低い方に変化させたときの二次電子の発生量が減少を開始する加速電圧と皮膜厚さとの関係を示す図である。
二次電子の発生量が減少を開始する加速電圧よりも低い所定加速電圧で電子線を照射したときの二次電子発生量と皮膜厚さとの関係を示す図である。
二次電子発生量と皮膜厚さとの関係に基き、密着性を評価する方法を説明する図である。
実施例1の試料Aの剥離試験前後の表面の二次電子像を示す図面代用の顕微鏡写真で、(a)は剥離試験前の二次電子像、(b)は(a)に対応する部分の剥離試験後の二次電子像である。
実施例1の試料Aについて、図6(b)の各点の明るさ数値(剥離試験後の明るさ数値)を図6(a)の各点の明るさ数値(剥離試験前の明るさ数値)で割った結果を示す図面代用の顕微鏡写真で、皮膜が剥離した領域は暗いコントラストで示されている。

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