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技術 高強度マグネシウム合金およびその製造方法

出願人 トヨタ自動車株式会社国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 渡辺真祈加藤晃蔡安邦シン・アロック
出願日 2003年10月9日 (17年2ヶ月経過) 出願番号 2003-350795
公開日 2005年4月28日 (15年8ヶ月経過) 公開番号 2005-113234
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 時間保持後室温 標準組成 Mg結晶粒 キャビティ寸法 所要強度 展伸用合金 準結晶相 ピン留め
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2005年4月28日)のものです。
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図面 (5)

課題

高温強度の向上した高強度マグネシウム合金およびその製造方法を提供する。

解決手段

組成式Mg100-(a+b+c)ZnaAlbYcで表され、a、b、cはそれぞれat%で表したZn、Al、Yの含有量であり、(a+b)/12≦c≦(a+b)/3…(1)、1.5≦a≦10…(2)、0.05a≦b≦0.25a…(3)の各関係を全て満たす高強度マグネシウム合金。この組成マグネシウム合金鋳造材に、370〜420℃に10分〜10時間保持後20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する第1段階と、150〜250℃に1〜15時間保持後室温まで冷却する第2段階とから成る熱処理を施すことを特徴とする高強度マグネシウム合金の製造方法。望ましくは、温度230〜420℃で加工率50%以上の熱間加工を施した後に、上記の熱処理を施す。

概要

背景

マグネシウム合金は軽量を活かして種々の構造部材への適用が進められている。特に、自動車に適用すれば燃費向上とそれによる資源環境保護に効果的である。

市販材としては、砂型鋳造用マグネシウム合金としてASTMAZ91C(標準組成[wt%]:Mg−8.7Al−0.7Zn−0.13Mn)、同ZE41A(同:Mg−4.2Zn−1.2RE−0.7Zr)等が、また展伸用マグネシウム合金として同AZ61A(同:Mg−6.4Al−1.0Zn−0.28Mn)、同AZ31B(同:Mg−3.0Al−1.0Zn−0.15Mn)等が汎用されている。

このうち、砂型鋳造用合金であるAZ91C、ZE41Aは、析出硬化型合金であり、鋳造材にT6(溶体化+時効)またはT5(時効のみ)を施すことにより所要強度に調整する。ただし室温以上、特に50℃以上に長時間晒されると固溶元素時効析出が起きて、合金組織が徐々に変化し、それに伴って特性に経時変化が生ずる原因となる。その結果、組織および特性の熱的な安定性が低く、安定して高い高温強度を得ることができないという欠点があった。

また、展伸用合金であるAZ61A、AZ31Bは、圧延押出等の際の加工・再結晶による結晶粒微細化強化機構として利用している。しかし100℃以上の高温になるとMg特有の顕著な粒界すべりが発生するので、結晶粒微細化は粒界すべり発生サイトの増加により逆に強度低下の原因となる。また、高温に晒されると結晶粒成長して微細化効果が失われ、室温強度の低下の原因になる。その結果、高い高温強度を確保できないばかりでなく、室温強度も熱的に不安定であるという欠点があった。

上記従来の市販材の欠点を改良して高い高温強度を確保するために、特許文献1(特開2002-309332号公報)には、固溶体マトリクス準結晶粒子により分散強化したMg−1〜10at%Zn−0.1〜3at%Y合金が開示されている。鋳造組織はα−Mg結晶粒界に準結晶共晶組織が形成しており、これを熱間加工することにより準結晶を微細かつ均一に分散させたものである。準結晶は近似組成結晶性化合物よりも遥かに高硬度であるため、強度と延伸性に優れたマグネシウムが得られる。しかし、熱的な安定性は高まったものの、強度自体はZE41のような類似組成の市販合金と同等程度であり、更に高い高温強度を得ることができないという限界があった。

また、特許文献2(特開平5-33096号公報)には、耐熱マグネシウム合金Mg−1.0〜6.0wt%Al−1.0〜6.0wt%Zn−0.2〜3.0wt%REが提案されている。融点が高く軟化しにくいMg−Al−Zn−RE系晶出物結晶粒界に生成させることにより高温強度を高めたものである。しかし、REとして用いるCeを主成分とするミッシュメタルは高価でありコスト上昇が避けられないという欠点があった。

更に、特許文献3(特開平3-503661号公報)、特許文献4(特開平3-502346号公報)には、MgbalAlaZnbYcなる組成においてAl含有量aを5〜15at%と多量にしたマグネシウム合金超塑性成形体が示されている。しかし、このように多量のAlが存在すると粗大なAl−Y化合物が生成し、延性が低下してしまうという欠点があった。

特開2002−309332号公報(特許請求の範囲)
特開平5−33096号公報(特許請求の範囲)
特開平3−503661号公報(特許請求の範囲)
特開平3−502346号公報(特許請求の範囲)

概要

高温強度の向上した高強度マグネシウム合金およびその製造方法を提供する。組成式Mg100-(a+b+c)ZnaAlbYcで表され、a、b、cはそれぞれat%で表したZn、Al、Yの含有量であり、(a+b)/12≦c≦(a+b)/3…(1)、1.5≦a≦10…(2)、0.05a≦b≦0.25a…(3)の各関係を全て満たす高強度マグネシウム合金。この組成のマグネシウム合金の鋳造材に、370〜420℃に10分〜10時間保持後20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する第1段階と、150〜250℃に1〜15時間保持後室温まで冷却する第2段階とから成る熱処理を施すことを特徴とする高強度マグネシウム合金の製造方法。望ましくは、温度230〜420℃で加工率50%以上の熱間加工を施した後に、上記の熱処理を施す。

目的

本発明は、高温強度を向上させた高強度マグネシウム合金およびその製造方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
2件

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請求項1

組成式Mg100-(a+b+c)ZnaAlbYcで表され、a、b、cはそれぞれat%で表したZn、Al、Yの含有量であり、下記式(1)(2)(3)の関係:(a+b)/12≦c≦(a+b)/3・・・(1)1.5≦a≦10・・・・・・・・・・・・・(2)0.05a≦b≦0.25a・・・・・・・・(3)を満たすことを特徴とする高強度マグネシウム合金

請求項2

請求項1記載の組成を有するマグネシウム合金鋳造材に、370〜420℃に10分〜10時間保持後20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する第1段階と、その後150〜250℃に1〜15時間保持後室温まで冷却する第2段階とから成る熱処理を施すことを特徴とする高強度マグネシウム合金の製造方法。

請求項3

請求項1記載の組成を有するマグネシウム合金の鋳造材に、温度230〜420℃で加工率50%以上の熱間加工を施した後に、請求項2記載の熱処理を施すことを特徴とする高強度マグネシウム合金の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、高強度マグネシウム合金、特に高温強度を高めたマグネシウム合金およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

マグネシウム合金は軽量を活かして種々の構造部材への適用が進められている。特に、自動車に適用すれば燃費向上とそれによる資源環境保護に効果的である。

0003

市販材としては、砂型鋳造用マグネシウム合金としてASTMAZ91C(標準組成[wt%]:Mg−8.7Al−0.7Zn−0.13Mn)、同ZE41A(同:Mg−4.2Zn−1.2RE−0.7Zr)等が、また展伸用マグネシウム合金として同AZ61A(同:Mg−6.4Al−1.0Zn−0.28Mn)、同AZ31B(同:Mg−3.0Al−1.0Zn−0.15Mn)等が汎用されている。

0004

このうち、砂型鋳造用合金であるAZ91C、ZE41Aは、析出硬化型合金であり、鋳造材にT6(溶体化+時効)またはT5(時効のみ)を施すことにより所要強度に調整する。ただし室温以上、特に50℃以上に長時間晒されると固溶元素時効析出が起きて、合金組織が徐々に変化し、それに伴って特性に経時変化が生ずる原因となる。その結果、組織および特性の熱的な安定性が低く、安定して高い高温強度を得ることができないという欠点があった。

0005

また、展伸用合金であるAZ61A、AZ31Bは、圧延押出等の際の加工・再結晶による結晶粒微細化強化機構として利用している。しかし100℃以上の高温になるとMg特有の顕著な粒界すべりが発生するので、結晶粒微細化は粒界すべり発生サイトの増加により逆に強度低下の原因となる。また、高温に晒されると結晶粒成長して微細化効果が失われ、室温強度の低下の原因になる。その結果、高い高温強度を確保できないばかりでなく、室温強度も熱的に不安定であるという欠点があった。

0006

上記従来の市販材の欠点を改良して高い高温強度を確保するために、特許文献1(特開2002-309332号公報)には、固溶体マトリクス準結晶粒子により分散強化したMg−1〜10at%Zn−0.1〜3at%Y合金が開示されている。鋳造組織はα−Mg結晶粒界に準結晶共晶組織が形成しており、これを熱間加工することにより準結晶を微細かつ均一に分散させたものである。準結晶は近似組成結晶性化合物よりも遥かに高硬度であるため、強度と延伸性に優れたマグネシウムが得られる。しかし、熱的な安定性は高まったものの、強度自体はZE41のような類似組成の市販合金と同等程度であり、更に高い高温強度を得ることができないという限界があった。

0007

また、特許文献2(特開平5-33096号公報)には、耐熱マグネシウム合金Mg−1.0〜6.0wt%Al−1.0〜6.0wt%Zn−0.2〜3.0wt%REが提案されている。融点が高く軟化しにくいMg−Al−Zn−RE系晶出物結晶粒界に生成させることにより高温強度を高めたものである。しかし、REとして用いるCeを主成分とするミッシュメタルは高価でありコスト上昇が避けられないという欠点があった。

0008

更に、特許文献3(特開平3-503661号公報)、特許文献4(特開平3-502346号公報)には、MgbalAlaZnbYcなる組成においてAl含有量aを5〜15at%と多量にしたマグネシウム合金超塑性成形体が示されている。しかし、このように多量のAlが存在すると粗大なAl−Y化合物が生成し、延性が低下してしまうという欠点があった。

0009

特開2002−309332号公報(特許請求の範囲)
特開平5−33096号公報(特許請求の範囲)
特開平3−503661号公報(特許請求の範囲)
特開平3−502346号公報(特許請求の範囲)

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、高温強度を向上させた高強度マグネシウム合金およびその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

上記の目的を達成するために、第1発明の高強度マグネシウム合金は、組成式Mg100-(a+b+c)ZnaAlbYcで表され、a、b、cはそれぞれat%で表したZn、Al、Yの含有量であり、下記式(1)(2)(3)の関係:
(a+b)/12≦c≦(a+b)/3・・・(1)
1.5≦a≦10・・・・・・・・・・・・・(2)
0.05a≦b≦0.25a・・・・・・・・・(3)
を満たすことを特徴とする。

0012

第1発明の高強度マグネシウム合金を製造する第2発明の方法は、第1発明の組成を有するマグネシウム合金の鋳造材に、370〜420℃に10分〜10時間保持後20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する第1段階と、150〜250℃に1〜15時間保持後室温まで冷却する第2段階とから成る熱処理を施すことを特徴とする。

0013

望ましくは、第1発明の組成を有するマグネシウム合金の鋳造材に、温度230〜420℃で加工率50%以上の熱間加工を施した後に、第2発明の熱処理を施すことにより、更に強度を高めることができる。

発明の効果

0014

本発明の高強度マグネシウム合金は、従来のMg−Zn−Y合金に規定量のAlを添加したことにより、第1段階と第2段階とから成る熱処理によって、分散強化粒子として準結晶に加えて、その近似結晶が時効析出するので、強度、特に高温強度が向上する。この近似結晶(ここで「τ1相」と呼ぶ。)は、準結晶(Mg3Zn6Y1)に近い組成で、部分的に準結晶と同様の構造を持つ結晶性化合物である。

発明を実施するための最良の形態

0015

本発明の高強度マグネシウム合金は、鋳造状態でα−Mg母相体積の50%以上を占め、α−Mg結晶粒界に共晶相として準結晶(Mg3Zn6Y1)が晶出しており、α−Mg結晶粒内には準結晶およびその近似結晶τ1から実質的に成る1μm以下の析出物が均一に分散している。これら粒内析出物は凝固完了から室温までの冷却過程固相析出したものである。

0016

本発明の熱処理においては、第1段階の熱処理により粒径100nm以下の準結晶が析出し、第2段階の熱処理により準結晶の近似結晶τ1が析出する。これらはいずれも粒径100nm以下である。その結果、鋳造時に晶出た準結晶と併せて粒径数十〜数百nmの晶出粒子および析出粒子がα−Mg粒内に高濃度に分散する。これらの粒子は250℃以下では相変態を起こさずに安定であり、転位との強い相互作用により合金強度を著しく高める。また、α−Mg結晶粒界に位置する準結晶は高温において粒界すべりを抑制する。これらの効果が重畳して高温強度が顕著に向上する。

0017

なお、第1段階の熱処理における加熱の際、α−Mg結晶粒界に存在する準結晶が結晶粒界をピン留めするため、結晶粒の成長が抑制される。したがって370℃以上の高温に保持しても結晶粒粗大化による強度低下が起きない。

0018

本発明のマグネシウム合金の化学組成を限定した理由は下記のとおりである。
すなわち、本発明においては、組成式Mg100-(a+b+c)ZnaAlbYcにおいて、a、b、cはそれぞれat%で表したZn、Al、Yの含有量であり、下記式(1)(2)(3)の関係:
(a+b)/12≦c≦(a+b)/3・・・(1)
1.5≦a≦10・・・・・・・・・・・・・(2)
0.05a≦b≦0.25a・・・・・・・・(3)
を満たすことが必要である。

0019

≪式(1):ZnとAlの合計含有量(at%)とY含有量(at%)との比率を3:1〜12:1の範囲に限定する理由≫
本発明の合金の主な強化相は、α−Mg結晶粒界に共晶相として存在するMg3Zn6Y1準結晶と、α−Mg結晶粒内のMg3Zn6Y1準結晶とその近似結晶τ1である。
Mg中にZnとYを6:1の原子比率になるように添加した合金は、α−MgとMg3Zn6Y1準結晶との2相混合状態である。ここで、ZnとYの比率は完全に6:1でなくとも3:1〜12:1の範囲内であれば、合金組織は実質的にα−Mg結晶相とMg3Zn6Y1準結晶相とで占められる。Mg3Zn6Y1準結晶およびその近似結晶τ1は非常に硬く、前者は430℃付近まで、後者は250℃付近まで分解せず安定であるため、常温から高温までの広い温度範囲で強化相として有効に作用する。
また、Mg3Zn6Y1準結晶はα−Mg結晶粒界に共晶相としても存在すると共に、α−Mg結晶粒内に数十〜数百nmの粒径の粒状の析出物としても存在する。

0020

≪式(2)Zn含有量aを1.5≦a≦10に限定する理由≫
Zn、Al、Yの含有量が増加するほど、Mg3Zn6Y1準結晶およびその近似結晶τ1の体積率が増加し、強度および剛性が高まるが、それに伴って延性の低下、比重の増加を招く。強度および剛性の増加作用を確保するためにはZn含有量a≧1.5とする必要がある。一方、延性の低下および比重の増加を実用的な許容範囲内とするためにZn含有量a≦10とする。

0021

≪式(3)Al含有量bを0.05a≦b≦0.25aに限定する理由>
本発明の合金は、Mg3Zn6Y1準結晶の組成をベースとして、Znの一部をAlで置換した組成である。これにより、Alを添加しない場合と比較して、α−Mg結晶粒内のMg3Zn6Y1準結晶およびその近似結晶τ1の量が増加し、強化作用が大幅に増強される。この効果を得るために必要なAl置換量として、Zn含有量aに対してAl含有量bは0.05a≦bとする。ただし、Al置換量が過剰になると、粗大なAl−Y化合物の形成およびMg3Zn6Y1準結晶の減少により却って強度低下を招くので、Zn含有量aに対してAl含有量bはb≦0.25aとする。

0022

本発明の高強度マグネシウム合金の製造は一般に下記のように行なう。
(1) 第1発明に規定した範囲内の組成を有するMg合金溶湯を準備する。

0023

(2) 上記のMg合金溶湯を鋳造する。鋳造方法は特に限定する必要はなく、重力鋳造法ダイカスト法レオキャスト法等、従来からMg合金の鋳造に用いられている鋳造方法でよい。

0024

(3) 得られた鋳造材に第1段階の熱処理を施す。これは、370℃〜420℃に10分〜10時間加熱保持した後に、水冷等により20℃/秒以上の冷却速度で室温まで急冷することにより行なう。この加熱保持および急冷により、Mg3Zn6Y1準結晶が析出する。370〜420℃で加熱保持することにより、分解温度が320℃付近と低いMg−Zn二元系化合物をα−Mg母相中に分解・固溶させる。Mg−Zn二元系化合物は120℃以上の高温で軟化してしまい高温での強化に寄与しないばかりでなく、高温で強化に寄与するMg3Zn6Y1準結晶とその近似結晶τ1 として析出すべきMgおよびZnの過飽和度を低下させて析出量を不足させる。Mg3Zn6Y1準結晶の析出は370〜420℃での加熱保持中および/または20℃/秒以上での急冷中に起きる。

0025

第1段階の熱処理温度が370℃未満であると、Mg−Zn二元系化合物の分解・固溶が不十分になってMgおよびZnの過飽和度が低下する結果、Mg3Zn6Y1準結晶の析出量とその近似結晶τ1 の析出量(第2段階熱処理)が減少して析出強化が不十分になる。
第1段階の熱処理温度が420℃を超えると、α−Mg結晶粒界に共晶相として晶出しているMg3Zn6Y1準結晶が部分的に熱分解する恐れがある。熱分析によればMg3Zn6Y1準結晶の分解温度は460℃付近と測定されるが、実際にはそれより低い430℃付近から一部分解が起きることを確認している。

0026

第1段階の熱処理時間が10分未満であると、固溶が不十分になって過飽和度が低下し、第1段階および第2段階での析出強化が不十分になる。第1段階の熱処理時間が10時間を超えると、結晶粒が粗大化して強度が低下する恐れがある。

0027

第1段階の熱処理は上記温度および時間の加熱保持後に20℃/秒以上の冷却速度で急冷する必要がある。これによりMg3Zn6Y1準結晶の析出量が十分に確保できる。これより遅い冷却速度では、Mg−Zn二元系化合物が析出し、Mg3Zn6Y1準結晶の析出量が減少する。

0028

(4) 第1段階の熱処理後、第2段階の熱処理を行なう。これは、150℃〜250℃に1時間〜15時間加熱保持することにより行なう。これにより、過飽和に固溶していた合金元素がMg母相中に化合物として析出する。析出物としては、数十nm〜数百nmの準結晶(Mg3Zn6Y1)の近似結晶τ1相が生成する。この析出物は250℃以下では相変態を起こさずに安定であり、転位との強い相互作用により合金強度を著しく高める。
第2段階熱処理温度が150℃未満であると、熱処理に長時間を要し実用的でない。逆に第2段階熱処理温度が250℃を超えると、近似結晶τ1相の分解温度を上回るため析出が起きなくなる。第2段階熱処理時間は、十分な析出強化を確保するために1時間以上とする。ただし、15時間より長時間にしても、析出強化の増分はほとんどない。

0029

望ましい実施形態においては、上記の(3)第1段階と(4)第2段階とから成る2段階の熱処理の前に、押出し、圧延等の熱間加工を行い再結晶による結晶粒微細化等により、更に強度を高めることができる。熱間加工温度は230℃〜420℃とする。加工温度が230℃未満であると、加工が著しく困難であり、割れ等が発生する可能性が高くなる。加工温度が420℃を超えると、材料の変形抵抗が非常に低くなるため、加工によって導入される転位の密度が低くなり、熱間加工とその後の熱処理とを組み合わせたことによる強度向上効果が得られない。すなわち、熱間加工の目的は、加工硬化と、転位の導入による析出サイトの増加である。析出核生成サイトの増加により、熱間加工後の熱処理による析出強化が顕著になる。加工率を50%以上とする理由も、同じく加工硬化と、転位導入による析出サイトの増加である。この熱間加工後に上記(3)(4)で説明した第1および第2段階の熱処理を行なう。

0030

〔実施例1〕
本発明による組成のマグネシウム合金鋳造材を作製し、金属組織観察引張試験を行った。

0031

試料の作成>
(1)合金組成原料配合
〈本発明例〉
合金組成:Mg−2.5Zn−0.5Al−0.5Y (at%)
原料配合:( )内は純度
純Mg(99.9%) :1826g
純Zn(99.99%):128.3g
純Al(99.9%) :10.6g
純Y (99.9%) : 35.1g

0032

〈従来例〉
合金組成:Mg−3Zn−0.5Y
原料配合:( )内は純度
純Mg(99.9%) :1814g
純Zn(99.99%):151.4g
純Y (99.9%) :34.6g

0033

(2) 溶解
純Mgを鉄製るつぼにて溶解し、溶湯を700℃に保持する。溶湯中に他の合金原料を添加し、溶湯温度を約700℃に保持したまま、装入原料が全て溶解して均一な状態になるまで攪拌する。なお、Mg溶湯に対して合金原料を添加する順序は任意でよい。

0034

(3)鋳造
約700℃に保持した合金溶湯を約100℃に予熱したJIS4号舟形に鋳造した。

0035

<鋳造組織の観察>
得られた各合金の鋳造材について、走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微鏡TEM)にて金属組織を観察した。

0036

SEM観察によると、本発明例および従来例のいずれもα−Mg結晶粒界に共晶相である準結晶(Mg3Zn6Y1:電子線回折にて同定)が晶出しているが、本発明例は従来例に比べて準結晶相が小さく全体として均一に分散している。

0037

TEMにより更に詳細に観察すると、図1に示すように、α−Mg結晶粒内に微細な析出物が生成しており、その濃度は従来例に比べて本発明例の方が高い。

0038

JIS4号舟形鋳造材から平行部φ5×25mmの丸棒引張試験片採取し、室温および150℃にて引張試験を行った。島津製作所製AG−250kND引張試験機を用い、引張速度0.8mm/分で行なった。

0039

本発明例は従来例と比較して150℃における引張強さが高く、また室温→150℃の温度上昇に伴う強度低下が非常に小さい。その主因は、α−Mg結晶粒内の微細析出物図1参照)が増加したためであると考えられる。準結晶(Mg3Zn6Y1)およびその近似結晶τ1を主体とする微細析出物は熱安定性が高いため、150℃においても転位に対するピン留め機能が有効に作用していると考えられる。

0040

〔実施例2〕
本発明による組成のマグネシウム合金を鋳造後、更に熱間加工(押出し)および熱処理(第1段階+第2段階)を施し、金属組織観察と引張試験を行なった。

0041

<試料の作成>
(1)合金組成と原料配合
合金組成:Mg−5.4Zn−1Al−1.07Y
原料配合:( )内は純度
純Mg(99.9%) :3302g
純Zn(99.99%):518.6g
純Al(99.99%):39.7g
純Y (99.9%) :139.7g

0042

(2) 溶解
純Mgを鉄製るつぼにて溶解し、溶湯を700℃に保持する。溶湯中に他の合金原料を添加し、溶湯温度を約700℃に保持したまま、装入原料が全て溶解して均一な状態になるまで攪拌する。なお、Mg溶湯に対して合金原料を添加する順序は任意でよい。

0043

(3)鋳造
約700℃に保持した合金溶湯を約100℃に予熱した鋳鉄鋳型キャビティ寸法:70mm×70mm×300mm)に鋳造した。

0044

(4)熱間加工(押出し)
得られた鋳造材から機械加工によりφ50×200mmの鋳造丸棒を作成した。この鋳造丸棒を250℃にて押出し比10:1で押出し加工してφ16mmの押出し丸棒を得た。

0045

(5)熱処理
・第1段階:押出し丸棒を400℃で1時間加熱保持した後、40℃の水中に投入して急冷した。
・第2段階:第1段階の熱処理を施した丸棒を200℃で10時間加熱保持した後、大気中で放冷した。

0046

組織観察
得られた丸棒試料について、光学顕微鏡およびTEMにて金属組織を観察した。
光学顕微鏡観察によると、結晶粒径10μm以下のα−Mg再結晶組織中に、サブミクロン径の準結晶(Mg3Zn6Y1)が分散していることが認められた。

0047

組織の詳細をTEMにて観察した。代表的な一例を図3に示す。図3(a)はα−Mg結晶粒内組織のTEM像であり、粒径100nm前後のMg3Zn6Y1準結晶相(白抜き矢印で示す)の他に、これより小さい粒径数十nmのτ1相(黒矢印で示す)が高い数密度で分散していることが認められた。図3(b)はτ1相の高倍率観察像である。

0048

τ1相は、Mg3Zn6Y1準結晶相の近似結晶であり、Mg−Zn−Yから成る化合物であるが、組成(成分元素の比率)の詳細は明らかでない。結晶構造局所的にMg3Zn6Y1準結晶と同様の構造を持つ非常に複雑なものであり、転位が内部を通過できないため強化相として極めて効果的である。

0049

<引張試験>
上記熱処理済の丸棒から、平行部φ5×25mmの丸棒引張試験片を採取し、200℃にて引張試験を行った。なお、比較のために押出しのみ(熱処理なし)の試料および従来例として市販のASTMAZ61A押出し材についても同様に引張試験を行った。島津製作所製AG−250kND引張試験機を用い、引張速度0.8mm/分にて行なった。結果を図4に示す。

0050

本発明例は、押出し後に熱処理を施すことにより従来例に比べて200℃で同等の伸びを維持しつつ強度が大幅に向上した。また、押出しのみで熱処理なしの状態でも、従来例と同等の強度を発揮しつつ伸びが大幅に向上している。

0051

〔実施例3〕
表1に示す種々の組成のマグネシウム合金を実施例1、2で説明したのと同様の手順により準備し、室温、150℃、200℃で引張試験を行った。

0052

0053

表1に明示されているように、本発明例(No.1〜6)は従来例(No.7〜12)に比べて強度、特に150℃、200℃における高温強度が向上している。この傾向は、重力鋳造したままの状態(No.1〜4とNo.7〜10)についても、鋳造後に押出しによる熱間加工を施した状態(No.5〜6とNo.11〜12)についても、同様に現われており、従来例では行なわれていない熱処理(第1段階+第2段階)を採用したことによる本発明の優位性が明瞭に現われている。

0054

また、比較例(No.13〜21)のうち本発明範囲内の組成(No.13〜18)であっても、重力鋳造したままの状態(No.13〜16)およびこれに押出し加工を施した状態(No.17〜18)のいずれも、強度のうち特に150℃、200℃の高温強度は、熱処理を採用した本発明例(No.1〜6)に及ばない。これは、本発明例が熱処理によりα−Mg結晶粒内の析出物濃度が向上しているのに対して、熱処理を施さない比較例では析出物濃度の向上がないことに直接対応している。

0055

比較例(No.13〜21)と本発明例(No.1〜6)との比較で、押出しを施した場合(比較例No.17〜18)と本発明例No.5〜6)の室温強度は、熱処理なしの比較例(No.17〜18)の方が本発明例(No.5〜6)より高い。これは、押出しによる加工硬化が熱処理(特に400℃での第1段階熱処理)によって回復されること、強度への加工硬化の寄与は室温で大きく高温で小さいこと、等によると考えられる。

0056

比較例のうち、組成も本発明範囲外であって鋳造したままで熱処理も行なわない場合(No.19〜21)は、室温〜200℃のいずれの強度も本発明例(No.1〜6)に及ばず、また従来例(No.7〜12)にも及ばない。これは逆に、本発明の望ましい態様による熱間加工+熱処理(第1段階+第2段階)の強度への寄与がいかに大きいかを示している。

0057

特にY量が本発明範囲の下限未満の場合(No.19)は150℃以上の強度低下が著しい。この組成ではα−Mg結晶粒内に針状のMg−Zn化合物β1’相)が析出する。β1’相はMg−Zn二元系合金の代表的な強化相であり、室温強度への寄与は大きいが150℃以上の高温強度への寄与が小さい。

0058

また、Al量が本発明範囲の上限を超える場合(No.20〜21)は粗大なAl−Y化合物が生成し、延性が低下する。

0059

本発明によれば、高温強度を向上させた高強度マグネシウム合金およびその製造方法が提供される。

図面の簡単な説明

0060

本発明の高強度マグネシウム合金の鋳造状態での金属組織を示す透過電子顕微鏡写真である。
本発明の高強度マグネシウム合金の鋳造状態での引張特性を従来のマグネシウム合金と比較して示すグラフである。
本発明の高強度マグネシウム合金に鋳造状態から押出しによる熱間加工と熱処理とを経た状態での金属組織を示す透過電子顕微鏡写真である。
本発明の高強度マグネシウム合金に鋳造状態から押出しによる熱間加工と熱処理とを経た状態での引張試験における応力歪み曲線を、押し出しまでを経た状態および従来材と比較して示すグラフである。

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