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技術 厚さ計測装置および厚さ計測方法

出願人 株式会社テクノネットワーク四国
発明者 石丸伊知郎奥田貴啓
出願日 2003年9月5日 (17年2ヶ月経過) 出願番号 2003-313350
公開日 2005年3月31日 (15年7ヶ月経過) 公開番号 2005-083774
状態 特許登録済
技術分野 音響的手段による測長装置 超音波による材料の調査、分析
主要キーワード 振動計測器 表面振動 カーボン皮膜 基本共振モード 接触機構 計量的 膜厚面内分布 レーザドップラー振動計
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2005年3月31日)のものです。
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図面 (10)

課題

測定する物質素材にかかわらず物質の局所の厚さを非接触かつ高精度で測定することができ、非常に薄い物質や膜であっても測定可能であり、測定することができ、コンパクトかつエネルギ効率が高い厚さ測定装置および厚さ測定方法を提供する。

解決手段

物質Mの厚さを測定する測定装置であって、物質Mに振動を発生させる振動発生手段10と、振動発生手段10によって発生された物質M内の振動を検出する振動検出手段13と、振動検出手段13が検出した振動から、物質Mの共振周波数を算出する周波数解析手段15とからなり、振動発生手段10が、物質Mに向けて、物質Mが吸収しうる波長の光を照射する光照射部11を備えている。

概要

背景

車のボディや等には、錆の発生や腐食による劣化を防ぐため、また外観を向上させるために表面に塗装膜が形成される。また、偏光フィルム反射防止フィルムは、フィルムの光に対する性質を変えるために、表面に膜状のコーティングが施される。このような塗装膜等の厚さは、塗装膜の性状言い換えれば塗装膜が形成された物質の性状に影響を与えるため、その厚さを管理することは重要である。

従来から、塗装膜の厚さを測定する方法として、変位センサを用いる変位計測手法や、膜を形成する前後における物質の質量の変化を調べる計量的方法がある。
変位センサを用いる変位計測手法は、膜を形成する前の物質表面の位置と、形成された膜の表面の位置との差から膜の厚みを算出するものであるが、変位センサの基準面と物質表面の相対的な位置を常に正確に設置しなくては相対的な比較ができなくなるため、高精度な位置決め技術が必要となるし、膜形成の前後で計測を行わなければならず手間がかかるという問題がある。また、計量的手法では、膜形成前後の物質の質量を測定するだけであるから、高度な技術は必要としないが、膜が形成される物質の質量に対して膜の質量が軽い場合、例えば物質の厚さに比べて膜の厚さが薄い場合等には精度良く計測することができないという問題がある。

上記の2つの方法に対して、膜厚を正確かつ簡単に測定することができる方法として、膜内共振を発生させて、その共振周波数と膜を構成する物質の音速から膜の厚さを測定する技術が開発されている(例えば、特許文献1〜3(従来例1〜3))。
従来例1の技術は、物質に接触させた超音波探触子振動させることによって物質内に超音波を入射するものである。このため、超音波探触子の振動周波数を変化させて、膜に入射される超音波の周波数を変化させれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
また、従来例2の技術は、物質に接触させた超音波探触子からパルス状の超音波を物質内に入射させるものである。このため、入射された超音波に起因して膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
従来例3の技術は、電磁超音波センサによって膜内に渦電流を発生させ、この渦電流に起因する膜の機械的振動によって膜内に振動を発生させるものである。このため、膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めるものであるから、従来例2の技術と同様に、一回の測定で膜厚を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。

しかるに、従来例1、2の技術は、超音波探触子を接触させた部分の厚さを確実に測定できるが、超音波探触子を接触させるため、測定する物質の表面を汚染したり傷つけたりする可能性がある。例えば、Si単結晶引き上げ炉の炭素るつぼには表面に黒色カーボンが施されているが、このカーボン皮膜汚染物質が付着していると、Si単結晶成長時にSi内部が汚染されてしまうという問題が生じるため、これらの方法は使用することができない。また、車のボディの塗装などのように広範囲に渡って膜厚を計測するような場合には、超音波探触子をボディ等に沿って移動させなければならないが、超音波探触子に接続されているケーブルの配置や取り回しが難しくなる等の問題が生じる。
また、従来例3の技術は、電磁超音波センサを膜に接触させなくても膜内に渦電流を発生させることができるため、非接触で膜厚を測定することも可能であるが、渦電流が発生する領域を狭くすることは困難であり、また測定される厚さは渦電流が形成された領域の平均値となるため、局所の厚さを測定することはできない。また、渦電流を発生させなければならないので、厚さを測定することができる物質は強磁性体導電材料に限られ、それ以外の素材の厚さを測定することはできない。そして、電磁超音波センサによって膜内に発生させることができる振動の周波数は、せいぜい10MHz程度であり、理論上は、0.1mm程度の膜まで測定できるものの、実際の装置としては5mm以下の膜厚を測定することは困難である。さらに、膜に発生させる振動のエネルギに比べて電磁超音波センサに加えるエネルギは非常に大きいためエネルギ効率が悪く、電磁超音波センサに高電流を流さなければならないため、その設備も大型化してしまうという問題がある。

特開昭52−18591号公報
特許第3019510号公報
特開2000−165369号公報

概要

測定する物質の素材にかかわらず物質の局所の厚さを非接触かつ高精度で測定することができ、非常に薄い物質や膜であっても測定可能であり、測定することができ、コンパクトかつエネルギ効率が高い厚さ測定装置および厚さ測定方法を提供する。物質Mの厚さを測定する測定装置であって、物質Mに振動を発生させる振動発生手段10と、振動発生手段10によって発生された物質M内の振動を検出する振動検出手段13と、振動検出手段13が検出した振動から、物質Mの共振周波数を算出する周波数解析手段15とからなり、振動発生手段10が、物質Mに向けて、物質Mが吸収しうる波長の光を照射する光照射部11を備えている。

目的

本発明は上記事情に鑑み、測定する物質の素材にかかわらず物質の局所の厚さを非接触かつ高精度で測定することができ、非常に薄い物質や膜であっても測定可能であり、測定することができ、コンパクトかつエネルギ効率が高い厚さ測定装置および厚さ測定方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

物質の厚さを測定する測定装置であって、前記物質に振動を発生させる振動発生手段と、該振動発生手段によって発生された前記物質内の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段が検出した振動から、前記物質の共振周波数を算出する周波数解析手段とからなり、前記振動発生手段が、前記物質に向けて、該物質が吸収しうる波長の光を照射する光照射部を備えていることを特徴とする厚さ測定装置。

請求項2

前記物質に照射される光を集光する集光器を備えていることを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。

請求項3

前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。

請求項4

前記振動検出手段が、前記物質内の振動を非接触で検出しうる非接触型振動検出器であることを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。

請求項5

前記非接触型振動検出器が、光干渉式振動計であることを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。

請求項6

前記振動検出手段が、複数設けられており、前記周波数解析手段が、前記複数の振動検出手段が検出した振動から、前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えていることを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。

請求項7

前記光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、前記振動検出手段を、前記光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置に配置する移動手段を備えており、前記周波数解析手段が、前記振動検出手段の異なる位置において検出された振動から、前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えていることを特徴とする請求項3記載の厚さ測定装置。

請求項8

物質の厚さを測定する測定方法であって、振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、物質が吸収しうる波長の光を照射し、物質に光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、振動検出手段によって物質内部に発生した振動を検出し、周波数解析手段によって、検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、算出された共振周波数から、物質の厚さを算出する、ことを特徴とする厚さ測定方法。

請求項9

集光器によって光を集光して物質に照射させることを特徴とする請求項8記載の厚さ測定方法。

請求項10

前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする請求項8記載の厚さ測定方法。

請求項11

前記振動検出手段が、複数設けられており、前記周波数解析手段の音速解析部によって、前記複数の振動検出手段が検出した振動から、前記物質内の音速を算出することを特徴とする請求項8記載の厚さ測定方法。

請求項12

前記振動発生手段の光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、移動手段によって振動検出手段を物質に沿って移動させて、前記振動発生手段の光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置で振動検出手段によって振動を検出し、前記周波数解析手段の音速解析部によって、前記振動検出手段が異なる位置で検出した振動から、前記物質内の音速を算出することを特徴とする請求項10記載の厚さ測定方法。

技術分野

0001

本発明は、物質の厚さを計測する技術に関する。さらに詳しくは、物質の全体の厚さだけでなく、物質表面に形成された膜や、複数層を有する物質であれば各層の厚さをそれぞれ計測することが可能である厚さ計測装置および厚さ計測方法に関する。

背景技術

0002

車のボディや等には、錆の発生や腐食による劣化を防ぐため、また外観を向上させるために表面に塗装膜が形成される。また、偏光フィルム反射防止フィルムは、フィルムの光に対する性質を変えるために、表面に膜状のコーティングが施される。このような塗装膜等の厚さは、塗装膜の性状言い換えれば塗装膜が形成された物質の性状に影響を与えるため、その厚さを管理することは重要である。

0003

従来から、塗装膜の厚さを測定する方法として、変位センサを用いる変位計測手法や、膜を形成する前後における物質の質量の変化を調べる計量的方法がある。
変位センサを用いる変位計測手法は、膜を形成する前の物質表面の位置と、形成された膜の表面の位置との差から膜の厚みを算出するものであるが、変位センサの基準面と物質表面の相対的な位置を常に正確に設置しなくては相対的な比較ができなくなるため、高精度な位置決め技術が必要となるし、膜形成の前後で計測を行わなければならず手間がかかるという問題がある。また、計量的手法では、膜形成前後の物質の質量を測定するだけであるから、高度な技術は必要としないが、膜が形成される物質の質量に対して膜の質量が軽い場合、例えば物質の厚さに比べて膜の厚さが薄い場合等には精度良く計測することができないという問題がある。

0004

上記の2つの方法に対して、膜厚を正確かつ簡単に測定することができる方法として、膜内共振を発生させて、その共振周波数と膜を構成する物質の音速から膜の厚さを測定する技術が開発されている(例えば、特許文献1〜3(従来例1〜3))。
従来例1の技術は、物質に接触させた超音波探触子振動させることによって物質内に超音波を入射するものである。このため、超音波探触子の振動周波数を変化させて、膜に入射される超音波の周波数を変化させれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
また、従来例2の技術は、物質に接触させた超音波探触子からパルス状の超音波を物質内に入射させるものである。このため、入射された超音波に起因して膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
従来例3の技術は、電磁超音波センサによって膜内に渦電流を発生させ、この渦電流に起因する膜の機械的振動によって膜内に振動を発生させるものである。このため、膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めるものであるから、従来例2の技術と同様に、一回の測定で膜厚を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。

0005

しかるに、従来例1、2の技術は、超音波探触子を接触させた部分の厚さを確実に測定できるが、超音波探触子を接触させるため、測定する物質の表面を汚染したり傷つけたりする可能性がある。例えば、Si単結晶引き上げ炉の炭素るつぼには表面に黒色カーボンが施されているが、このカーボン皮膜汚染物質が付着していると、Si単結晶成長時にSi内部が汚染されてしまうという問題が生じるため、これらの方法は使用することができない。また、車のボディの塗装などのように広範囲に渡って膜厚を計測するような場合には、超音波探触子をボディ等に沿って移動させなければならないが、超音波探触子に接続されているケーブルの配置や取り回しが難しくなる等の問題が生じる。
また、従来例3の技術は、電磁超音波センサを膜に接触させなくても膜内に渦電流を発生させることができるため、非接触で膜厚を測定することも可能であるが、渦電流が発生する領域を狭くすることは困難であり、また測定される厚さは渦電流が形成された領域の平均値となるため、局所の厚さを測定することはできない。また、渦電流を発生させなければならないので、厚さを測定することができる物質は強磁性体導電材料に限られ、それ以外の素材の厚さを測定することはできない。そして、電磁超音波センサによって膜内に発生させることができる振動の周波数は、せいぜい10MHz程度であり、理論上は、0.1mm程度の膜まで測定できるものの、実際の装置としては5mm以下の膜厚を測定することは困難である。さらに、膜に発生させる振動のエネルギに比べて電磁超音波センサに加えるエネルギは非常に大きいためエネルギ効率が悪く、電磁超音波センサに高電流を流さなければならないため、その設備も大型化してしまうという問題がある。

0006

特開昭52−18591号公報
特許第3019510号公報
特開2000−165369号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は上記事情に鑑み、測定する物質の素材にかかわらず物質の局所の厚さを非接触かつ高精度で測定することができ、非常に薄い物質や膜であっても測定可能であり、測定することができ、コンパクトかつエネルギ効率が高い厚さ測定装置および厚さ測定方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

第1発明の厚さ測定装置は、物質の厚さを測定する測定装置であって、前記物質に振動を発生させる振動発生手段と、該振動発生手段によって発生された前記物質内の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段が検出した振動から、前記物質の共振周波数を算出する周波数解析手段とからなり、前記振動発生手段が、前記物質に向けて、該物質が吸収しうる波長の光を照射する光照射部を備えていることを特徴とする。
第2発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記物質に照射される光を集光する集光器を備えている
ことを特徴とする。
第3発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする。
第4発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記振動検出手段が、前記物質内の振動を非接触で検出しうる非接触型振動検出器であることを特徴とする。
第5発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記非接触型振動検出器が、光干渉式振動計であることを特徴とする。
第6発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記振動検出手段が、複数設けられており、前記周波数解析手段が、前記複数の振動検出手段が検出した振動から、前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えていることを特徴とする。
第7発明の厚さ測定装置は、請求項3記載の発明において、前記光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、前記振動検出手段を、前記光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置に配置する移動手段を備えており、前記周波数解析手段が、前記振動検出手段の異なる位置において検出された振動から、前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えていることを特徴とする。
第8発明の厚さ測定方法は、物質の厚さを測定する測定方法であって、振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、物質が吸収しうる波長の光を照射し、物質に光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、振動検出手段によって物質内部に発生した振動を検出し、周波数解析手段によって、検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、算出された共振周波数から、物質の厚さを算出することを特徴とする。
第9発明の厚さ測定方法は、請求項8記載の発明において、集光器によって光を集光して物質に照射させることを特徴とする。
第10発明の厚さ測定方法は、請求項8記載の発明において、前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする。
第11発明の厚さ測定方法は、請求項8記載の発明において、前記振動検出手段が、複数設けられており、前記周波数解析手段の音速解析部によって、前記複数の振動検出手段が検出した振動から、前記物質内の音速を算出することを特徴とする。
第12発明の厚さ測定方法は、請求項10記載の発明において、前記振動発生手段の光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、移動手段によって振動検出手段を物質に沿って移動させて、前記振動発生手段の光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置で振動検出手段によって振動を検出し、前記周波数解析手段の音速解析部によって、前記振動検出手段が異なる位置で検出した振動から、前記物質内の音速を算出することを特徴とする。

発明の効果

0009

第1発明によれば、振動発生手段の光照射部が物質が吸収しうる波長の光を照射するため、照射された光のエネルギを吸収した物質が物質内で熱エネルギに変換される。このため、熱エネルギを吸収した物質の熱膨張と、熱の放出拡散による収縮が発生し、物質内において振動が発生するので、その振動を振動検出手段によって検出し、周波数解析手段によって共振周波数を算出すれば、その共振周波数から物質の厚さを検出することができる。よって、振動発生手段を物質に接触させなくても物質の厚さを測定することができるから、所望の位置の物質の厚さを、広範囲でも簡単に測定することができる。
第2発明によれば、光を集光して物質に照射するから、局所にのみ光のエネルギを供給することができる。すると、物質の厚さ方向の振動は、光が照射された部分とその近傍のみで発生させることができるから、物質の局所の厚さを正確に測定することができる。そして、光を集光する割合、言い換えれば光を照射する範囲を調整して、光のエネルギを吸収する領域を調整することができるから、所望の領域の平均的な厚さを測定することが可能である。
第3発明によれば、パルス光を照射すれば、物質内に広い範囲の周波数成分を含む振動を発生させることができるから、測定できる物質の厚さの範囲を広くすることができる。そして、物質内に発生する振動は、パルス光の幅を狭してその波形デルタ関数に近づければ近づけるほど高周波成分を含むことになるので、パルス光の幅を狭くすれば非常に厚さの薄い物質であっても測定することができる。
第4発明によれば、完全に非接触な状態で物質の厚さを測定することができるから、測定する物質の表面を汚染したり傷つけたることなく物質の厚さを測定することができる。よって、例えば、Si単結晶引き上げ炉の炭素るつぼ等の表面に施された黒色のカーボン皮膜などのように汚染物質の付着が許されないもの等であっても、その品質を低下させることなく、厚さの計測を行なうことができる。
第5発明によれば、光干渉式振動計から照射させる光を集光して、その焦点を、振動検出手段の光照射部の光が照射されている箇所の近傍に配置すれば、物質内に発生する厚さ方向の振動を検出することができるから、厚さ方向の共振周波数を検出する精度を高くすることができる。
第6発明によれば、振動検出手段の光照射部の光が照射してから各検出手段が振動を検出するまでの時間遅れを計測することができる。すると、振動検出手段の光照射部の光が照射されている箇所から各振動検出手段までの距離と時間遅れとから音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるので、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第7発明によれば、振動検出手段の光照射部が一のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、振動検出手段の光照射部が他のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れを比較すれば、音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるので、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第8発明によれば、振動発生手段の光照射部が物質が吸収しうる波長の光を照射するため、照射された光のエネルギを吸収した物質が物質内で熱エネルギに変換される。このため、熱エネルギを吸収した物質の熱膨張と、熱の放出拡散による収縮が発生し、物質内が振動が発生するので、その振動を振動検出手段によって検出し、周波数解析手段によって共振周波数を算出すれば、その共振周波数から物質の厚さを検出することができる。よって、振動発生手段を物質に接触させなくても物質の厚さを測定することができるから、所望の位置の物質の厚さを、広範囲でも簡単に測定することができる。
第9発明によれば、光を集光して物質に照射するから、局所にのみ光のエネルギを供給することができる。すると、物質の厚さ方向の振動は、光が照射された部分とその近傍のみで発生させることができるから、物質の局所の厚さを正確に測定することができる。そして、光を集光する割合、言い換えれば光のエネルギを吸収する領域を調整することができるから、所望の領域の平均的な厚さを測定することが可能である。
第10発明によれば、パルス光を照射すれば、物質内に広い範囲の周波数成分を含む振動を発生させることができるから、測定できる物質の厚さの範囲を広くすることができる。そして、物質内に発生する振動は、パルス光の幅を狭してその波形をデルタ関数に近づければ近づけるほど高周波成分を含むことになるので、パルス光の幅を狭くすれば非常に厚さの薄い物質であっても測定することができる。
第11発明によれば、振動検出手段の光照射部の光が照射してから各検出手段が振動を検出するまでの時間遅れを計測することができる。すると、振動検出手段の光照射部の光が照射されている箇所から各振動検出手段までの距離と時間遅れとから音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるので、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第12発明によれば、振動検出手段の光照射部が一のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、振動検出手段の光照射部が他のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れを比較すれば、音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるので、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。

発明を実施するための最良の形態

0010

つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の厚さ測定装置は、物質内に振動を発生させ、その振動から物質の共振周波数を求めることによって物質の厚さを測定する装置であって、物質に振動を発生させる方法として、光を物質に照射したときに光のエネルギが物質内で熱エネルギに変換される、いわゆる光熱変換効果を利用したことに特徴を有するものである。
なお、光に変えて、電磁波を照射させた場合であっても、光熱変換効果と同様に、電磁波のエネルギを物質内で熱エネルギに変換させることができるが、光も電磁波の一種と考えられるので、以下には、光を照射する場合のみを説明する。

0011

まず、本発明の厚さ測定装置を説明するまえに、本発明の測定原理を説明する。なお、以下では、物質の表面に形成されている膜の厚さを測定する場合を代表として説明する。
図3に示すように、所定の波長の光を物質Mの膜Sの表面に照射した場合、その膜Sを構成する成分が、照射される光に対して不透明である場合、言い換えれば、照射された光が膜Sを完全に透過しない場合には、照射された波長に対する膜Sの分光吸収率に応じて光のエネルギが膜に吸収される。
すると、膜Sで吸収された光エネルギーは膜Sの表面層内で熱エネルギに変換され、膜表面から以下の深さ(以下、熱拡散長μという)に、熱が発生する。



κは温度拡散係数、ρは密度、CPは比熱、fは光強度変調の周波数である。上記式から、熱拡散長μは、変調周波数が高いほど熱拡散長が短くなることが確認できるが、物質によって熱拡散係数が異なるものの、おおよその目安として、変調周波数が1kHz の場合、固体で熱拡散長μは10μm程度であり(例えば、澤田嗣郎著「光熱変換分光法とその応用」、p.21、学会出版センター)、変調周波数がMHz 程度であれば熱拡散長μは、1μmよりも小さくなる。
膜Sの表面層内で熱が発生すると、その膜Sの表面層が熱膨張しやがて放射や熱の周囲への拡散によって収縮する。言い換えれば、膜Sの表面層が膜厚方向に振動するため、この振動が膜内を伝播することになる。膜S内を伝播する振動は、膜Sと空気との界面や、膜Sと膜Sが形成されている基板材料Bとの界面等、音響インピーダンスの相対的な差が存在する界面において反射されるため、2つの界面の間の膜Sは、膜Sの表面層の熱膨張と収縮によって発生した振動に起因して、その膜Sの厚さに対応する共振が発生することになる。
ところで、音響インピーダンスZは、物質の密度ρと音速cに基づいて以下の式で求められる。
Z=ρc (密度ρと音速c )
すると、膜Sの音響インピーダンスよりも基板材料Bの音響インピーダンスが大きい場合、膜S内には、膜Sと空気との界面は自由端を有し、膜Sと基板材料Bとの界面に固定端を有する共振が発生する(図3(B))。この共振は、その波長の(2n-1)/4倍が膜厚Dとなるから、共振周波数をfとすると、膜厚Dは、以下の式(1)から求めることができるのである。
D=((2n-1)/4)*(V/f) (V:膜内の音速) (1)
なお、各共振周波数の波長は、最も低い周波数である基本周波数図3ではf1)の波長の(2n-1)/4倍となるが、他の共振周波数は基本周波数f1に比べて強度が弱いため、基本周波数f1のみを使用すれば膜厚Dを算出することができるが、複数の共振周波数(図3ではf2、f3、f4等)を利用すれば、測定精度を向上させることも可能である。

0012

つぎに、本実施形態の厚さ測定装置1を説明する。
図1において、符号Mは、基板材料Bの表面に厚さを測定する膜Sが形成されている物質を示している。
図1に示すように、この物質Mの膜Sの近傍には、本実施形態の厚さ測定装置1の振動発生手段10の光照射部11が配設されている。この光照射部11は、物質Mの膜Sに光を照射するためのものであり、この光照射部11は物質Mに照射する光を発振する光供給部12に接続されている。
この光供給部12は、例えば、ArF(フッ化アルゴンレーザ窒素レーザCO2レーザYAGレーザ等のパルス発振レーザ等であるが、膜Sが吸収しうる波長のパルス光を、光熱変換効果による振動を発生させることができる十分な光強度で光照射部11に供給することができる光源であれば、特に限定はない。

0013

図1に示すように、物質Mに対して、振動発生手段10の光照射部11と同じ側には、振動検出手段13が設けられている。この振動検出手段13は、光干渉方式によるレーザドップラー振動計等、物質Mや膜Sに接触することなく、膜Sの振動を検出することができる非接触型振動検出器である。

0014

なお、上記のごとく、光を用いて表面振動を計測する場合、特に表面が粗面の場合、表面からの反射光が拡散若しくは散乱して適切な干渉像が得られない等の問題が有ることが知られており、これらの問題を解決することができる色々な光学系が提案されその効果が実証されている(例えば、文献 永井聡、中野英俊、田洋一著:「レーザ励起超音波による材料評価—音速測定および非破壊検査への応用—」、超音波TECHNO,pp.50-54(1999.7))。したがって、本実施形態の振動検出手段13も、必要に応じて、これらの従来技術を、表面特性(粗さ、反射率など)を考慮して適切に選定して使用すれば良い。

0015

この振動検出手段13は、周波数解析手段15に接続されている。この周波数解析手段15は、前記振動検出手段13から膜Sの振動に関する情報、例えば、膜Sの振動波形等が入力されており、この振動に関する情報を解析して、膜Sの共振周波数と、膜S内の音速から膜Sの厚さDを算出するものである。この周波数解析手段15は、膜S内の共振周波数を求める機能を備えているものであるが、共振周波数を求める機能の一例としては、膜Sの振動波形をFFT高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)解析する機能が挙げられるが、振動検出手段13が検出した振動波形から共振周波数を検出することができれば、特に限定はない。

0016

また、周波数解析手段15は、低周波数成分を除去する電気的なハイパスフィルタや、ソフトウェア的に低周波数成分を除去する機能を備えている。図2(A)に示すように、振動検出手段13によって検出される膜Sの振動波形には、膜Sの厚さ方向の共振振動だけでなく、基板材料Bの表面に沿った方向(以下、膜Sの長手方向という)の共振振動も無視できない程度に含まれており、FFT解析を行なった場合には、膜Sの厚さ方向の共振振動の周波数と、膜Sの長手方向の共振振動の周波数においてもピークを有することになる。しかるに、膜Sの長手方向の共振振動の周波数は膜Sの厚さ方向の共振振動の周波数よりも低いため、周波数解析手段15に、低周波数成分を除去する電気的なハイパスフィルタや、ソフトウェア的に低周波数成分を除去する機能を設けておけば、本来計測したい膜Sの厚み方向の共振周波数成分のみを計測することができる。

0017

これは逆に、膜Sの長手方向の共振周波数から膜Sの長手方向の長さを計測することにも適用できる。例えば、膜Sの長手方向の長さをLとすると、板端面の支持が無い場合、つまり両端面での共振波形は自由端となっている場合には、下記式(3)を用いて膜Sの長手方向の長さを測定することができる。
L=((2n−1)/2)*(V/f) (3)
そして、片側の板端面が支持されている場合には、両端面での共振波形は固定端となり下記式(4)によって膜Sの長手方向の長さを測定することができる。
L=((2n−1)/4)*(V/f) (4)
但し、この式(3)、式(4)に用いる音速Vは横波、若しくは板波の音速である。そして、膜Sの長手方向と幅方向長さに差がある場合には、膜Sの長手方向だけでなく、膜Sの長手方向と幅方向長さに応じた共振周波数を生じるから、両方を求めることも可能である。

0018

なお、圧延板の様に長手方向の寸法が非常に長い物質Mに形成された膜Sの厚さを測定するような場合には、周波数解析手段15に、低周波数成分を除去する電気的なハイパスフィルタ等を設けなくてもよい。かかる物質に形成された膜Sでは、その長手方向の振動モードの周波数は極端に低くかつ、強度が小さいため無視できるため、振動検出手段13によって検出された膜Sの振動波形をそのまま周波数解析手段15によって解析しても膜S内の共振周波数を正確に検出することができる。

0019

上記のごとき構成を有しているから、本実施形態の厚さ測定装置1は、光供給部12が発振した光を光照射部11から物質Mの膜Sに照射すれば、膜S内に光熱変換効果に起因する振動を発生させることができる。そして、振動検出手段13によって膜Sの振動波形を検出すれば、周波数解析手段15によって膜S内の共振周波数を検出することができ、この共振周波数と膜S内の音速から膜Sの厚さDを算出することができる。
そして、光照射部11から照射される光をミラーで反射させたり、プリズム等で屈曲させれば、光の光路を容易に変更できるから、膜Sの厚さを測定する位置を容易に変更することができ、広範囲の厚さ計測に容易に対応することができる。

0020

また、物質Mに照射される光はパルス光であるから、膜S内に発生される振動は、広い範囲の周波数成分を含むことになる。すると、共振を発生させることができる周波数の範囲が広くなるから、測定できる膜Sの厚さの範囲を広くすることができる。
そして、膜S内に発生する振動は、パルス光の半値幅を狭くすれば、膜S内に発生される振動が高周波成分を含むことになる。パルス光の波形の照射時間、つまりその半値幅が短ければ短いほどデルタ関数に近づくことになるが、一般に、デルタ関数をフーリエ変換して周波数成分を見ると、全ての周波数成分が含まれていることが知られている。つまり、パルス光の半値幅を短かくしてデルタ関数に近づければ、より高周波の成分を含む波形となり、膜S内で共振を発生させることができる周波数を高くできる。言い換えれば、共振の波長を短くできるから、厚さの薄い膜Sであっても測定することができる。例えば、薄いフィルム(約数十μm)等にコーティングされた10μm程度の厚さの膜や、アルミ板銅板等の表面にコーティングされた膜、ガラスの表面にコーティングされた膜などであっても測定可能である。

0021

なお、光供給部12には、パルス発振レーザを用いるのが最も簡便であるが、連続発振レーザや、レーザでなくとも十分な光強度を有する光源を用いて、例えばAO(Acoust-Optics:音響光学)変調素子を用いて照射強度変調を行いパルス状の光として、光照射部11に供給しても、膜Sにパルス光を照射すれることができる。
さらになお、光供給部12から照射される光は膜Sがそのエネルギを吸収しうる波長であればよいが、ArF レーザを使用すれば、ArF レーザから照射される193 nmの光を透過する物体はフッ化カルシュームぐらいであるから、大半の物質の厚さ測定に本発明を適用できるので好適である。

0022

また、振動検出手段13として非接触型振動検出器を使用しているから、膜Sの厚さを、完全に非接触な状態で測定することができる。すると、膜Sの厚さを計測しても、測定する膜Sの表面を汚染したり傷つけたりすることない。すると、Si単結晶引き上げ炉の炭素るつぼ等の表面に施された黒色のカーボン皮膜などのように汚染物質の付着が許されないもの等であっても、その品質を低下させることなく、カーボン皮膜の厚さの計測を行なうことができる。
とくに、振動検出手段13として、光干渉方式によるレーザドップラー振動計等の光干渉式振動計を使用すれば、振動検出手段13から照射させる光を集光して、その焦点を、振動検出手段10の光照射部11の光が照射されている箇所の近傍に配置することも可能となる。すると、膜Sに発生する厚さ方向の振動を直接検出することができるから、厚さ方向の振動を検出する感度を向上させることができる。

0023

なお、振動検出手段13は、物質Mや膜Sに接触することなく膜Sの振動を検出することができるものであれば光干渉方式を利用した振動計測器に限られず、光を使用した共焦点方式や3角測量方式や、光を利用せずに非接触で振動が検出できる方式を利用した振動計測器を使用してもよい。
さらになお、膜Sの表面に対する検出器の接触による汚染や、配線取り回し、膜Sと接触機構の煩雑さ等に特段の問題が無ければ、振動検出手段13として接触式AE(Acoustic Emission)センサー等でもよい。

0024

さらになお、図4に示すように、本実施形態の厚さ測定装置1は、基板材料Bの表面に形成された膜Sの厚さだけでなく、膜Sが形成されていない物質M自体の厚さを計測することも可能である。この場合には、振動発生手段10の光照射部11から物質Mに光を照射すれば、物質Mの表面層を熱によって膨張収縮させることができ物質M内に振動を発生させることができる。すると、物質M内の振動を振動検出手段13によって検出すれば、周波数解析手段15によって物質M自体の厚さを算出することも可能である。
そして、本実施形態の厚さ測定装置1を使用すれば、その表面層に熱を吸収させさえすればその内部に共振を発生させてその厚さを測定できるから、従来のある厚さ測定方法では計測が困難であった厚さが100μmよりも厚いガラスであっても、その厚さを測定することができる。

0025

ただし、この場合には、物質Mの表裏両面に自由端を有する共振が形成されるため(図9(A)参照)、共振の波長の(2n-1)/2倍が膜厚Dとなるから、共振周波数をfとすると、膜厚Dは、以下の式(2)から求めることになる。
D=((2n-1)/2)*(V/f) (V:膜内の音速) (2)
そして、この場合には、振動検出手段13を、光照射部11との間に物質Mを挟むように配置しておけば、物質M内に発生するその厚さ方向の振動を直接測定することができるから、振動検出手段13が検出した振動波形から物質Mの厚さ方向の共振周波数を精度よく求めることとができ、物質Mの厚さの測定精度高くすることができる。。

0026

さらになお、基板材料Bの表面に複数の膜Sが形成されている場合や、内部に複数の層を有する物質Mの場合には、各層の厚さを計測することも可能である。
図5に示すように、膜Sが複数の層S1〜S3を有する場合には、膜S内の振動は、各層の境界面においても振動の反射が生じ、各層の内部にそれぞれ共振が発生するから、振動検出手段13が検出した振動波形を解析すれば、各層の共振周波数を算出することができ、各層の厚さを計測することができる。
そして、隣接する二層間境界における反射率は、各層を構成する物質の成分密度から決定される音響インピーダンスをZ1、Z2とすると以下の式で決定される。
反射率=(Z1−Z2)/(Z1+Z2)
つまり、各層の境界面の反射率が100%でなければ、各層内で共振するモード(以下、基本共振モードという)だけでなく、複数の膜にまたがって共振するモード(以下、複数膜共振モードという)も発生する(図5)。すると、図6に示すように、基本共振モードとして、層S1、層S2、層S3のそれぞれの厚さに対応するf1〜f3の共振周波数を有する共振が発生し、複数膜共振モードとして、層S1と層S2を合わせた厚さ、層S2と層S3を合わせた厚さ、層S1〜層S3を合わせた厚さに、それぞれ対応するf4〜f6の共振周波数を有する共振が発生する。振動検出手段13が検出した振動波形には、これら全ての共振振動が含まれるから、振動波形を解析して、各共振周波数を算出すれば、各層の膜厚を算出することが可能となり、複数膜共振モードを利用することによって、各層の膜厚の測定精度を高くすることができる。
なお、各層S1〜3に発生する共振や複数の膜にまたがって発生する共振は、共振が形成される層とその層を挟む層の音響インピーダンスの相対的な差によって二層間境界において自由端になる場合と固定端になる場合が考えられる。例えば、層S2に共振が形成される場合には、層S2の音響インピーダンスが層S1および層S3の音響インピーダンスよりも大きい場合には、層S2に形成される共振は両端が自由端となるし(図9(A))、逆に、層S2の音響インピーダンスが層S1および層S3の音響インピーダンスよりも小さい場合には、層S2に形成される共振は両端が固定端となる(図9(B))。よって、式(2)によって共振している層の厚さを求めることができる。
そして、層S2の音響インピーダンスが、層S1の音響インピーダンスより小さく層S3の音響インピーダンスより大きい場合には、層S2に形成される共振は、層S1との境界が自由端となり層S3との境界が固定端となる(図2参照)から、式(1)によって共振している層の厚さを求めることができる。

0027

なお、隣接する層同士の音響インピーダンスの相対的な大きさの差が大きければ、上記のごとく、隣接する層よりも音響インピーダンスの大きい層に形成される共振は境界において確実に自由端となり、隣接する層よりも音響インピーダンスの小さい層に形成される共振は境界において確実に固定端となるが、隣接する層との間の音響インピーダンスの大きさの差が小さい場合には、共振が境界において固定端となるか自由端となるかを音響インピーダンスだけで確実に把握することは難しい。したがって、隣接する層の音響インピーダンスの大きさの差が小さい場合には、事前境界層において共振が固定端となるか自由端となるかを確認しておくことが望ましい。

0028

また、振動発生手段10の光照射部11に、照射する光を集光するレンズ等の集光器を設けておけば、光が照射される領域を非常に狭くすることができる。すると、光が照射された狭い領域、つまり局所にのみ光のエネルギを供給することができるから、膜Sの厚さ方向の振動を、光が照射された部分とその近傍のみで発生させることができる。このため、振動検出手段13が検出する膜Sの厚さ方向の振動を解析すれば、膜Sにおける光が照射された局所の共振周波数を算出することができるので、光が照射された局所の膜Sの厚さを正確に測定することができる。そして、振動検出手段13として光を利用する振動計測器を用いれば、その光プローブ先端径を数μm程度とすることも可能である。すると、携帯電話などの電子回路基板装備する一片が数ミリ以下の小さな電子部品表面に塗布した不透明膜厚の計測、特に小さな面積内での膜厚面内分布計測も可能である。
そして、局所の膜厚を測定できるから、膜の厚さの局所的な分布を計測することも可能となり、膜厚の均一性検査することも可能である。
また、集光器に光を集光する割合を調整する機能を設けておけば、光を集光する割合、言い換えれば光のエネルギを吸収する領域を調整することができる。すると、所望の領域の平均的な膜Sの厚さも測定することが可能である。
さらに、光を集光すれば膜Sや物質Mに照射される光のエネルギ密度を高くすることができるから、光供給部12の出力を低くしても、膜Sや物質Mに照射される光の強度を、光熱変換効果による振動を膜Sや物質M内に発生させることができる十分な光強度とすることができる。よって、装置をコンパクトにすることができ、計測に必要なエネルギを少なくすることができる。

0029

膜S等の厚さを算出する場合、膜Sを構成する物質等からその内部の音速を推測し、推測した音速から膜Sなどの厚さを求めることも可能であるが、以下のごとき構成とすれば、膜Sに発生する振動から膜S内の音速も同時に測定できるため、膜Sの厚さの測定精度をさらに高くすることができる。

0030

図1に示すように、振動発生手段10の光供給部12と周波数解析手段15の音速解析部16を接続しておき、光供給部12がパルス光を発振したタイミングが周波数解析手段15に入力されるような構成とする。そして、光照射部11が光を照射する位置と振動検出手段13が振動を検出する位置を事前に音速解析部16に入力しておけば、パルス光を発振したタイミングと振動検出手段13が振動を検出したタイミングのズレと、光照射部11が光を照射する位置と振動検出手段13が振動を検出する位置との間の距離(以下、音速計測距離という)から、膜S内の音速を求めることができる。
そして、測定された音速は横波、つまり基板材料Bの表面に沿った方向の音速であるから、音速解析部16によって横波の音速を縦波の音速、つまり膜の厚さ方向の音速に変換して、この縦波の音速を利用して膜Sの厚さを算出すれば、膜Sの厚さの測定精度をさらに高くすることができる。

0031

また、音速計測の精度には音速計測距離の精度も重要であるが、この音速計測距離の精度を高くするには、光照射部11から光が照射される範囲と計測範囲のそれぞれを狭くすることが有効である。例えば、レーザを光供給部12や振動検出手段13の光源として用いると、光が照射される範囲と計測範囲での光量分布ガウス分布に従う。すると、この強度分布の重心位置が光が照射される範囲および計測範囲の中心位置であり、この2点間距離が音速計測距離となるから、音速計測距離の誤差を小さくすることができ、音速の測定精度を高くすることができる。
なお、強度分布を正確に計測することが難しかったり、光源の種類によってはガウス分布していない場合もあるが、このような場合には、レンズ等を用いて光を集光したり、絞りを用いて光束を狭めれば、光が照射される範囲と計測範囲を狭くすることができ、音速計測距離の誤差を小さくすることができる。

0032

さらに、図7に示すように、光供給部12がパルス光を発振したタイミングを周波数解析手段15に入力する代わりに、光照射部11と物質Mとの間の光軸上にハーフミラー20を設置し、反射された光を光電変換素子、例えばフォトダイオード21で受光することによりパルス光の射出時間を検出して音速解析部16に入力するようにしてもよい。この場合には、実際に照射されたパルス光をトリガ信号として利用するから、パルス光を発振したタイミングと振動検出手段13が振動を検出したタイミングのズレを、より正確に計測することができる。

0033

また、光照射部11がパルス光を複数回に照射する場合には、物質Mの膜Sの表面に沿って移動させる図示しない移動手段を設けておき、パルス光を照射されるタイミング毎に、異なる位置に振動検出手段13を配置するような構成としておく。そして、移動手段から振動検出手段13の位置情報が音速解析部16に入力されるような構成とすれば、音速解析部光照射部11が一のパルス光を照射してから振動検出手段13が振動を検出するまでの時間遅れと、光照射部11が他のパルス光を照射してから振動検出手段13が振動を検出するまでの時間遅れと、各測定位置における音速計測距離とから膜S内部の音速を算出することができる。
さらに、図8に示すように、複数の振動検出手段13を設けておけば、一回だけパルス光を照射しても、パルス光を照射してから各振動検出手段13が振動を検出するまでの時間遅れと、各振動検出手段13音速計測距離とから膜S内部の音速を算出することができる。

0034

本発明の厚さ測定装置および厚さ測定方法は、金属膜などの不透明膜厚だけでなく、微小電子部品塗布膜など微小面積内での膜厚分布の計測にも有効なである。また、光路途中にミラーやプリズムなどの偏向素子を挿入するだけで取り回しができるため、車の塗装膜など広範囲な膜厚の計測にも適用できる。また、単層膜だけでなく多層膜への適用も可能と、広範な利用ができる。

図面の簡単な説明

0035

本実施形態の厚さ測定装置1の概略説明図である。
(A)は振動検出手段13によって検出される振動の一例を示した図であり、(B)は振動をFFT解析した結果の一例を示した図である。
厚さ測定の原理を示した図である。
他の実施形態の厚さ測定装置1の概略説明図である。
複数の層S1〜S3内に形成される共振を簡単に説明した図である。
複数の層S1〜S3内に形成される共振の共振周波数を説明した図である。
光供給部12がパルス光を発振したタイミングを検出する機構の概略説明図である。
他の実施形態の厚さ測定装置1の概略説明図である。
物質M内に発生する共振振動の波形の概略説明図である

符号の説明

0036

1厚さ測定装置
10振動発生手段10
11光照射部
13振動検出手段
15周波数解析手段
16音速解析部

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