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課題

ライムギなどのムギ類のゲノムに特異的に存在する新規トランスポゾン様因子を得ることが本発明の課題である。

解決手段

本発明により、3041塩基対からなるトランスポゾン様因子RevolverのDNA配列、およびその構造変異体のDNA配列が提供された。本発明のトランスポゾン様因子RevolverのDNA配列、Revolverがコードする転写活性がある遺伝子のDNA配列、およびその構造変異体のDNA配列は、イネ科の有用資源植物のゲノムの検出、DNAマーカー開発、染色体の同定、進化の検討のためのプローブPCRエントリーポイントなどに利用することが可能である。

概要

背景

ライムギSecale cereale(2n=2x=14)をはじめとする近縁種は、病害抵抗性環境ストレスに対する耐性遺伝子を持ち、コムギライコムギの有意義育種のための重要な遺伝資源である。例えばライムギのゲノムは7.8 Gbに及び、染色体短腕だけでショウジョウバエゲノムの2倍に匹敵する。しかも、ゲノム中でタンパク質の合成を指示する遺伝子は数%に過ぎず、90%以上を同じ塩基配列を繰り返す反復配列が占めている。

トランスポゾン又はレトロトランスポゾンとは、原核生物真核生物の染色体やプラスミド上に存在する可動性遺伝因子一種であり、両端に数百から千数百の塩基が逆向きに繰り返された塩基配列があり、逆向き反復配列およびそれに挟まれた領域が一つの単位を構成しており、そのようなトランスポゾンは、生物種を越えてゲノムの構築進化駆動力となっている。

イネやトウモロコシにおいては、可動性遺伝因子であるトランスポゾン様因子遺伝子解析DNAマーカー開発のツールとして利用されている。コムギやライコムギの育種においても、種属を越えてゲノムや遺伝情報移入しようとする場合、有用な資源植物のゲノムに特異的に存在するトランスポゾンがあればDNAマーカー開発のツールとして有効である。しかしながら、これまでに見い出されていたトランスポゾンは生物界を敷衍して共通する構造を持ち、また、ムギ類ではトランスポゾンは発見されておらず、これまでムギ類においてはDNAマーカー開発のためのツールはなかった。

概要

ライムギなどのムギ類のゲノムに特異的に存在する新規なトランスポゾン様因子を得ることが本発明の課題である。本発明により、3041塩基対からなるトランスポゾン様因子RevolverのDNA配列、およびその構造変異体のDNA配列が提供された。本発明のトランスポゾン様因子RevolverのDNA配列、Revolverがコードする転写活性がある遺伝子のDNA配列、およびその構造変異体のDNA配列は、イネ科の有用資源植物のゲノムの検出、DNAマーカー開発、染色体の同定、進化の検討のためのプローブPCRエントリーポイントなどに利用することが可能である。なし

目的

そこで本発明者らは、病害抵抗性や環境ストレスに対する耐性を示すコムギを育種することを目的として、コムギゲノムには存在せず、ライムギゲノムに特異的に存在するトランスポゾン様因子のクローニングを試みた。コムギとライムギが分化した後にライムギゲノムで増幅・分散したトランスポゾンがあれば、コムギゲノムに導入されたライムギゲノムの検出・同定、DNAライブラリーの作製、遺伝子増幅DNA多型検出のためのプローブやPCRのエントリーポイント、染色体in situハイブリダイゼーションによる外来遺伝子同定などに利用できる。よって、ライムギなどのムギ類のゲノムに特異的に存在する新規なトランスポゾン様因子を得ることが本発明の課題である。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

配列表の配列番号1に示す塩基番号382−3422で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン様因子

請求項2

配列表の配列番号1に示す塩基番号1−4000で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾン様因子。

請求項3

配列表の配列番号2に示す塩基番号377−3305で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン様因子。

請求項4

配列表の配列番号2に示す塩基番号1−3528で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾン様因子。

請求項5

配列表の配列番号3に示す塩基番号43−4311で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン非自律性因子

請求項6

配列表の配列番号3に示す塩基番号1−4479で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾン非自律性因子。

請求項7

配列表の配列番号4に示す塩基番号24−3242で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン非自律性因子。

請求項8

配列表の配列番号4に示す塩基番号1−3413で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾン非自律性因子。

請求項9

配列表の配列番号5に示す塩基番号24−2688で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン非自律性因子。

請求項10

配列表の配列番号5に示す塩基番号1−2858で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子。

請求項11

配列表の配列番号6に示す塩基番号24−3526で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾン非自律性因子。

請求項12

配列表の配列番号6に示す塩基番号1−3697で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子。

請求項13

配列表の配列番号7に示す塩基番号1−694で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA

請求項14

配列表の配列番号8に示す塩基番号1−726で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA。

請求項15

配列表の配列番号9に示す塩基番号1−728で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA。

請求項16

配列表の配列番号10に示す塩基番号1−665で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA。

請求項17

配列表の配列番号11に示す塩基番号1−395で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA。

請求項18

配列表の配列番号12に示す塩基番号1−1597で示される塩基配列、あるいは当該塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、トランスポゾンcDNA。

請求項19

配列表の配列番号13に示すアミノ酸番号1−117で示されるアミノ酸配列、あるいは当該アミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなることを特徴とする、トランスポゼース

請求項20

請求項1記載のトランスポゾン様因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー

請求項21

請求項2記載の制御因子領域含有トランスポゾン様因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項22

請求項3記載のトランスポゾン様因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項23

請求項4記載の制御因子領域含有トランスポゾン様因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項24

請求項5記載のトランスポゾン非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項25

請求項6記載の制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項26

請求項7記載のトランスポゾン非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項27

請求項8記載の制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項28

請求項9記載のトランスポゾン非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項29

請求項10記載の制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項30

請求項11記載のトランスポゾン非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項31

請求項12記載の制御因子領域含有トランスポゾンの非自律性因子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項32

請求項13から請求項18のいずれか一つの請求項記載のトランスポゾンcDNA又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項33

請求項19記載のトランスポゼースをコードする遺伝子又はその一部分からなるDNAフラグメントであることを特徴とする、プローブ又はプライマー。

請求項34

請求項20ないし請求項33のいずれか一つの請求項記載のプローブ又はプライマーを、有用資源植物の遺伝子マーカーを開発するためにツールとして使用する方法。

請求項35

請求項20ないし請求項33のいずれか一つの請求項記載のプローブ又はプライマーを、有用資源植物のゲノムを検出するために使用する方法。

請求項36

請求項20ないし請求項33のいずれか一つの請求項記載のプローブ又はプライマーを、有用資源植物の染色体を同定するために使用する方法。

請求項37

請求項20ないし請求項33のいずれか一つの請求項記載のプローブ又はプライマーを、植物におけるRevolverのホモログを得るために使用する方法。

請求項38

請求項13から請求項18のいずれかひとつの請求項記載のトランスポゾンcDNAを用いて、植物の形質転換を行う方法。

技術分野

0001

本発明は新規トランスポゾン様因子であるRevolver及びその構造変異体、更にはそれらの利用方法に関する。

背景技術

0002

ライムギSecale cereale(2n=2x=14)をはじめとする近縁種は、病害抵抗性環境ストレスに対する耐性遺伝子を持ち、コムギライコムギの有意義育種のための重要な遺伝資源である。例えばライムギのゲノムは7.8 Gbに及び、染色体短腕だけでショウジョウバエゲノムの2倍に匹敵する。しかも、ゲノム中でタンパク質の合成を指示する遺伝子は数%に過ぎず、90%以上を同じ塩基配列を繰り返す反復配列が占めている。

0003

トランスポゾン又はレトロトランスポゾンとは、原核生物真核生物の染色体やプラスミド上に存在する可動性遺伝因子一種であり、両端に数百から千数百の塩基が逆向きに繰り返された塩基配列があり、逆向き反復配列およびそれに挟まれた領域が一つの単位を構成しており、そのようなトランスポゾンは、生物種を越えてゲノムの構築進化駆動力となっている。

0004

イネやトウモロコシにおいては、可動性遺伝因子であるトランスポゾン様因子が遺伝子解析DNAマーカー開発のツールとして利用されている。コムギやライコムギの育種においても、種属を越えてゲノムや遺伝情報移入しようとする場合、有用な資源植物のゲノムに特異的に存在するトランスポゾンがあればDNAマーカー開発のツールとして有効である。しかしながら、これまでに見い出されていたトランスポゾンは生物界を敷衍して共通する構造を持ち、また、ムギ類ではトランスポゾンは発見されておらず、これまでムギ類においてはDNAマーカー開発のためのツールはなかった。

発明が解決しようとする課題

0005

そこで本発明者らは、病害抵抗性や環境ストレスに対する耐性を示すコムギを育種することを目的として、コムギゲノムには存在せず、ライムギゲノムに特異的に存在するトランスポゾン様因子のクローニングを試みた。コムギとライムギが分化した後にライムギゲノムで増幅・分散したトランスポゾンがあれば、コムギゲノムに導入されたライムギゲノムの検出・同定、DNAライブラリーの作製、遺伝子増幅DNA多型検出のためのプローブPCRエントリーポイント、染色体in situハイブリダイゼーションによる外来遺伝子同定などに利用できる。よって、ライムギなどのムギ類のゲノムに特異的に存在する新規なトランスポゾン様因子を得ることが本発明の課題である。

課題を解決するための手段

0006

本発明により、配列表の配列番号1に示す塩基番号381−3422からなることを特徴とする、トランスポゾン様因子RevolverのDNA配列cDNAおよびその構造変異体のDNA配列が提供された。

発明の効果

0007

本発明のトランスポゾン様因子Revolverの塩基配列はライムギ属とその近縁種において保存されているが、普通コムギには存在していない。Revolverはコムギの祖先種からの進化の過程でいくつかの近縁種で増幅し、普通コムギでは消失しているので、コムギゲノムにおける近縁種の遺伝標識として有用である。より具体的には、本発明のトランスポゾン様因子は、有用資源植物の分子育種に資するプローブ又はプライマー、更には染色体マーカーを開発するためのツールとして有用である。

発明を実施するための最良の形態

0008

下記の実施例で示すように本発明者らは、相同配列サブトラクション法を用いてゲノム特異的なDNAを単離することにより、ライムギゲノム特異的な反復配列のクローニングを行い、新規なトランスポゾン様因子を得た。よって本発明は、3041塩基対からなるトランスポゾン様因子Revolverである。なお本発明のRevolverは新規な塩基配列を有する因子であるが、トランスポゾンと似た塩基配列部分が見出されているために、本願明細書においてRevolverをトランスポゾン様因子と呼ぶこととする。本発明のトランスポゾン様因子Revolverは、配列表の配列番号1に示す、塩基番号382−3422で示される塩基配列からなることを特徴とする。

0009

なお、配列表の配列番号1に示す塩基番号1−4000で示される塩基配列は、上記のトランスポゾン様因子Revolverに、5’側隣接領域及び3’隣接領域が付加されたものである。配列表の配列番号1において、塩基番号1−381の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号3423−4000の領域は3’側隣接領域である。

0010

またトランスポゾン様因子Revolverは、3つのエキソン領域と2つのイントロン領域を含む。配列表の配列番号1において、塩基番号382−539はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列TGTGACGCCCGAGACCGAC:配列番号14)と繰返し配列(TCCAGAAGAT:配列番号15)を含む5’側共通領域であり、塩基番号621−962は第1エキソン領域であり、塩基番号963−1712は第1イントロン領域であり、塩基番号1713−1800は第2エキソン領域であり、塩基番号1801−3037は第2イントロン領域であり、塩基番号3038−3328は第3エキソン領域であり、塩基配列3329−3422はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列(GTCCCATCCTGGGCATTACA:配列番号16)と繰返し配列(ATCATTCTAGGA:配列番号17)を含む3’側共通領域である。

0011

このRevolverの塩基配列又はその隣接領域をプローブ又はプライマーとしてサザンハイブリダイゼーションを行うことにより、ゲノム進化を検討することが可能である。なお本願明細書において「制御因子含有トランスポゾン因子」とは、トランスポゾン様因子の塩基配列に、5’側隣接領域及び3’ 隣接領域の塩基配列が付加されたものを意味するものである。

0012

本発明のRevolverのトランスポゾン様因子から得られた塩基配列をプローブ又はプライマーとして用いて、あらゆる種類の生物から本発明のRevolverに相当するホモログ採取することが可能である。また下記に詳しく述べるように染色体マッピングなどの目的に応用することも可能である。そのようなプローブ又はプライマーは、トランスポゾン様因子のみならず、上記の5’側隣接領域及び3’ 隣接領域の塩基配列から得ることが可能である。よって本発明の制御因子含有トランスポゾン因子の塩基配列は、有用なプローブ又はプライマーを与えることができる隣接領域を含むトランスポゾン因子の塩基配列を与えるものである。トランスポゾン因子の塩基配列のみならず、有用なプローブ又はプライマーを与えることができる隣接領域の塩基配列も、本発明の範囲内である。

0013

また、このプローブを用いて蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行うことにより、ライムギ染色体の検出を行うこともまた可能である。下記の実施例において、Revolverプローブを用いたFISH解析を行ったところ、ドット状のシグナルが検出された。

0014

また、Revolverの内部配列プライマ−として用いてPCRを行うと、ゲノム中から種々の大きさのDNA断片が増幅されてくる。これらの断片は染色体に位置付けられ、DNA多型によりマッピングが可能であるために、染色体や遺伝子のマーカーを与えるものと考えられる。ゲノムに散在する因子をプライマーにして遺伝子マーカーを開発することは、レトロトランスポゾンの配列を使って実施されているが、本発明のRevolverの内部配列から得たプライマ−は、その様な染色体マーカー、遺伝子マーカーの開発のためのツールを新たに与えるものであると考えられる。

0015

遺伝子組み換え技術によれば、基本となるDNAの特定の部位に、当該DNAの基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善する様に、人為的に変異を起こすことができる。本発明のトランスポゾン様因子の特性を変えることなく、本発明により提供される天然の塩基配列を有するDNAの人為的な改変を行う事が可能であり、本発明はそのような変異DNAを含むものである。

0016

本発明において、そのような変異DNAの塩基配列と配列表の配列番号1に示す塩基配列とは60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、なお更に好ましくは95%以上の相同性を有する。その様な変異DNAも、本発明のトランスポゾン様因子としての特性を有する限り、本発明の範囲内である。なお、配列表の配列番号2から12に示すDNAにおいても同様に、それらの変異DNAも本発明の範囲内である。

0017

更に本発明者らは上記のRevolverとは異なるクローンから、2929塩基対からなるトランスポゾン様因子Revolver-2を得た。本発明のトランスポゾン様因子Revolver-2は、配列表の配列番号2に示す、塩基番号377−3305で示される塩基配列からなることを特徴とする。

0018

なお、配列表の配列番号2に示す塩基番号1−3528で示される塩基配列は、上記のトランスポゾン様因子Revolver-2に、5’側隣接領域及び3’ 隣接領域が付加されたものである。配列表の配列番号2において、塩基番号1−376の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号3306−3528の領域は3’側隣接領域である。

0019

またトランスポゾン様因子Revolver-2は、3つのエキソンと2つのイントロンを含む。配列表の配列番号2において、塩基番号377ー504は、トランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列(TGTTCTACTACCGTCGCCCGGAAAAGAC:配列番号18)と繰返し配列(TACCGTCGCC:配列番号19)を含む5’側共通領域であり、塩基番号505−846は第1エキソン領域であり、塩基番号847−1586は第1イントロン領域であり、塩基番号1587−1675は第2エキソン領域であり、塩基番号1676−2897は第2イントロン領域であり、塩基番号2898−3208は第3エキソン領域であり、塩基番号3209ー3305はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列(GTCCCATCCTGGGCATTACA:配列番号20)と繰返し配列(ATCATTCTGGGA:配列番号21)を含む3’側共通領域である。

0020

また、上記のトランスポゾン様因子Revolver又はRevolver-2のDNA配列又はその一部分からなるDNAフラグメントは、有用な資源植物のゲノムを検出するためのプローブまたはプライマーとして有用である。ここで、RevolverのDNA配列又はその一部分からなるDNAフラグメントとは、配列表の配列番号1記載の塩基配列の一部分を構成しているDNAフラグメントを意味する。また、Revolver-2のDNA配列又はその一部分からなるDNAフラグメントとは、配列表の配列番号2記載の塩基配列の一部分を構成しているDNAフラグメントを意味する。

0021

なお本願明細書において「有用資源植物」とは、類縁性があり遺伝資源が利用可能な植物を意味するものである。そして、その範疇に含まれる植物は、主としてイネ科植物であって、より具体的にはコムギ、オオムギ、ライムギ、ライコムギなどのムギ類の植物である。これらのイネ科植物にはRevolverのホモログが存在する可能性があるために、遺伝子マーカー開発に応用できると考えられる。

0022

また本願明細書において「一部分からなるDNAフラグメント」とは、特に限定されるものではないが、配列表に記載されている塩基配列の少なくとも10塩基以上からなる一部分に相当するDNAフラグメント、より好ましくは20塩基以上からなる一部分に相当するDNAフラグメント、更に好ましくは50塩基以上からなる一部分に相当するDNAフラグメントを意味するものである。

0023

またこのトランスポゾン様因子又は制御因子領域含有トランスポゾン様因子から得たプローブ又はプライマーを用いて、他のRevolverの構造変異体を得ることができる。下記の実施例において本発明者は、配列表の配列番号2の3’側隣接領域である塩基番号3456−3478の領域をプライマーとして用いてPCRを行うことにより、Revolver非自律性因子であるRevolver-3 (pSc626)、Revolver-4 (pSc627)、Revolver-5 (pSc628)、Revolver-6 (pSc5R1)を得ており、Revolver-2の3’側隣接領域(配列表の配列番号2の塩基番号3306−3528)は上記の非自律性因子と共通している。これらの非自律性因子の構造の概略を図1に示す。

0024

なおこれらの非自律性因子は、Revolver又はRevolver-2の構造の第2エキソン側5’上流破壊されている塩基配列を有しており、そのためにエキソン1部分を欠いている。よって、Revolver又はRevolver-2とは異なり、Revolver-3、Revolver-4、Revolver-5、Revolver-6はトランスポゼースmRNA発現せず、自らは転移することができない非自律性因子である。

0025

本発明のRevolver-3(pSc626)は、配列表の配列番号3に示す、塩基番号43−4311で示される塩基配列からなることを特徴とする、4269塩基対からなる非自律性因子であり、6R染色体にマッピングされた。配列表の配列番号3において、塩基番号1−42の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号43−191はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列と繰返し配列を含む5’側共通領域であり、塩基番号2598−2687は第2エキソン領域であり、塩基番号2588−3923は第2イントロン領域であり、塩基番号3924−4218は第3エキソン領域であり、塩基配列4219−4311はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列と繰返し配列を含む3’側共通領域であり、塩基番号4312−4479の領域は3’側隣接領域である。

0026

また本発明のRevolver-4(pSc627)は、配列表の配列番号4に示す、塩基番号24−3242で示される塩基配列からなることを特徴とする、3219塩基対からなる非自律性因子である。配列表の配列番号4において、塩基番号1−23の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号1567−1657は第2エキソン領域であり、塩基番号1658−2858は第2イントロン領域であり、塩基番号2859−3143は第3エキソン領域であり、塩基配列3144−3242はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列と繰返し配列を含む3’側共通領域であり、塩基番号3243−3413の領域は3’側隣接領域である。

0027

また本発明のRevolver-5(pSc628)は、配列表の配列番号5に示す、塩基番号24−2688で示される塩基配列からなることを特徴とする、2665塩基対からなる非自律性因子であり、1R染色体にマッピングされた。配列表の配列番号5において、塩基番号1−23の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号1010−1095は第2エキソン領域であり、塩基番号1096−2288は第2イントロン領域であり、塩基番号2289−2589は第3エキソン領域であり、塩基配列2590−2688はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列を含む3’側共通領域であり、塩基番号2590−2688の領域は3’側隣接領域である。

0028

また本発明のRevolver-6 (pSc5R1)は、配列表の配列番号6に示す、塩基番号24−3526で示される塩基配列からなることを特徴とする、3503塩基対からなる非自律性因子であり、5R染色体にマッピングされた。配列表の配列番号6において、塩基番号1−23の領域は5’側隣接領域であり、塩基番号2232−3146は第2イントロン領域であり、塩基番号3147−3426は第3エキソン領域であり、塩基配列3427−3526はトランスポゾンの末端に特徴的な逆位反復配列を含む3’側共通領域であり、塩基番号3527−3697の領域は3’側隣接領域である。

0029

本発明のトランスポゾン様因子Revolver、 Revolver-2、又はそれらをプローブにして得られたものをSTS化することにより、染色体やゲノム位置のマーカーを作製することができる。また上記の非自律性因子は既にSTS化されているので、やはり同様のマーカーを与えることが可能であると考えられる。RFLPプローブやRAPD法により増幅断片の両末端の塩基配列を決定し、その配列をもとにPCRプライマーを設計してPCR法でその領域を特異的に増幅したものがSequence Tagged Site(配列タグ部位:STS)マーカーである。このSTS化されたRevolverの染色体マーカーは、染色体やゲノム位置のマーカーとして特に有用であると考えられる。

0030

また本発明者は、Revolverの第1エキソン、第2エキソン、第3エキソンからなるcDNAのクローンを4種類採取した。配列表の配列番号8に示す、塩基番号1−726で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc1はそのようなRevolverのcDNAである。なお配列表の配列番号8において、塩基番号1−342の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号343−433の領域は第2エキソン領域であり、塩基番号434−726の領域は第3エキソン領域である。そしてpSc1の両末端部分をプライマーとしてRT-PCRを行うことにより、他のcDNA としてpSc5、pSc12、pSc4を得た。Revolverと各cDNAの構造の関係を図2に示す。

0031

これらのcDNAの構造をpSc1と比較すると、第1エキソンの相同性は低いが、第2エキソンと第3エキソンにおいては高い相同性を示した。そのようなRevolverのcDNAが、配列表の配列番号7に示す、塩基番号1−694で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc5である。なお配列表の配列番号7において、塩基番号1−310の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号311−402の領域は第2エキソン領域であり、塩基番号403−694の領域は第3エキソン領域である。また、塩基番号110−463の領域はトランシポゼースのコーディング領域である。

0032

またそのようなcDNAは、配列表の配列番号9に示す塩基番号1−728で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc12である。なお配列表の配列番号9において、塩基番号1−344の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号345−435の領域は第2エキソン領域であり、塩基番号436−728の領域は第3エキソン領域である。

0033

またそのようなcDNAは、配列表の配列番号10に示す塩基番号1−665で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc4である。なお配列表の配列番号10において、塩基番号1−282の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号283−372の領域は第2エキソン領域であり、塩基番号373−665の領域は第3エキソン領域である。

0034

これらのcDNAはRevolverのトランスポゼースをコードしていると考えられる。よってこれらのcDNAを用いることにより、生物種を超えてRevolverを形質転換し、Revolverを可動・転移されることが可能となる。Revolverを形質転換と稼働は、種々の生物における遺伝子破壊によるクローニングに、あるいは遺伝子マーカー開発に応用することが可能である。このような形質転換を行う方法は、本技術分野において広く知られている。

0035

更に、Revolverの第2イントロンと第3エキソンを有するが、第1エキソンの構造が異なっている他の種類のcDNAクローンもまた得られた。そのようなRevolverのcDNAが、配列表の配列番号12に示す、塩基番号1−1597で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc23である。なお配列表の配列番号12において、塩基番号1−86の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号87−1393の領域は第2エキソン領域であり、塩基番号1394−1597の領域は第3エキソン領域である。

0036

更にpSc23のイントロンを欠いているcDNAクローンもまた得られた。そのようなRevolverのcDNAが、配列表の配列番号11に示す、塩基番号1−395で示される塩基配列からなることを特徴とするpSc14である。なお配列表の配列番号11において、塩基番号1−98の領域は第1エキソン領域であり、塩基番号99−395の領域は第2エキソン領域である。

0037

またpSc1のcDNAによりコードされるトランスポゼースは、配列表の配列番号13に示す、アミノ酸番号1−117で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。配列表の配列番号13に示すアミノ酸配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、なお更に好ましくは95%以上の相同性を有する変異タンパク質も、本発明のトランスポゼースとしての特性を有する限り、本発明の範囲内である。

0038

(実施例1:トランスポゾン様因子Revolverの構造)
(サブトラクション法によるゲノム特異的反復配列のクローニング)
コムギゲノムにはなく、ライムギゲノムに特異的に豊富に存在する遺伝因子のクローニングを試みた。ライムギの染色体DNAを4塩基認識の制限酵素MboIで短く消化し、これに超音波ランダムに切断したコムギゲノムDNAを過剰に混合した。塩基間の相補的水素結合で結ばれる2本鎖ヌクレオチド高温で1本鎖DNAに変性し、さらに、室温で2本鎖DNAに再生させた。2本鎖形成の過程では、ライムギMboI断片のうちコムギDNAと共通する配列は長さや末端の形が異なる過剰のコムギ断片と会合するのに対して、ライムギ特異的反復配列を持つMboI断片同士は再会合して、付着末端を持つ2本鎖DNAに復元する。これらの再生DNAに対して相補的な付着末端を持つプラスミドをベクターとして用意すれば、付着末端を持つライムギ特異的2本鎖DNAだけが連結される。このベクターを大腸菌JM109株に導入し、ライムギからコムギと共通する配列をサブトラクション(削除)したDNAライブラリーを作製した。

0039

富田(1995)の方法に従ってゲノムDNAを抽出した。出穂前の植物体の上位2成葉を採取し、-80℃で凍結保存した。これを液体窒素凍結し、粉砕した。これに葉の粉末の重量と等量のDNA抽出液(2%CTAB、100 mM Tris-HCl、 20 mMEDTA・2Na、 1.4 M NaCl、pH8.0)を加えて55℃で振盪しながら1時間30分以上インキュベートした。この溶液クロロホルムイソアミルアルコール(24:1)で2回抽出した。上清に1/10量の3 M sodium acetate pH5.2を加えた後、2倍量の-20℃の99.5%イソプロパノールを加えて重合沈殿した高分子DNAをスプールアウトした。スプールアウトしたDNAを5 mlのHigh-Salt TE(1 M NaCl、 10 mM Tris・HCl、 1 mM EDTA・2Na、pH8.0)に溶解し、エタノール沈殿後、5 mlのTE(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA・2Na、pH8.0)に溶解した。 これに1/100量のRNase溶液(1mg/ml)を加えて37℃で一晩インキュベートした。 RNAの分解とDNAの物理的切断の有無を1%アガロースゲル電気泳動によって確認した。このDNA溶液フェノールクロロホルム抽出およびクロロホルム抽出を1回ずつ行った後、エタノール沈殿して5mlのTE (10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA・2Na、pH8.0)に溶解した。

0040

普通コムギ(Triticum aestivum L.)の品種Chinese spring (CS,2n=42)およびライムギ(Secale cereale L.)の自殖系統IR130 の 5R, 6Rそれぞれの染色体添加型コムギ Chinese Spring系統(5R add CS, 6R add CS, 2n=44)からCTAB法(Murray & Thompson 1980)でゲノムDNAを抽出した。コムギ連植物の反復配列は異なる反復配列のユニット組合わさって複雑に分化してきた証拠が示されている。(Flavell & Smith 1976, Smith & Flavrll 1977, Bedbrook et al. 1980, Flavell et al . 1981, McIntyre et al . 1988)。そこで反復配列中の最小ユニットアニーリングさせることを考えて, 4塩基認識の制限酵素Mboを用いてゲノムDNAを2kb以下に消化した。

0041

6R add CS のDNAは制限酵素Mbo消化後 0.8 %から1.0 %のアガロースゲルで分離し,液体窒素凍結法(Koenen 1989)で 0.5から2.0kbの断片を回収した。回収DNA 6.6μgを超音波で 1 kb 以下に切断した CS のDNAと混合し, これを 10 分間沸騰水中に置いて1 本鎖に変性した。DNAのアニーリングを促進するため、1 本鎖に変性した混合DNAをフェノールエマルジョンバッファー(0.8% phenol, 1.25 M sodium perchlorate, 0.12 M sodium phosphate, pH6.8) 4 ml 中で 72 時間アニーリングさせた。

0042

フェノールエマルジョンはロータリーエバポレーターで回転させることによって誘起した。このとき制限酵素断片がアニーリングしてできる2 本鎖DNAの種類は同じ制限酵素断片と再会合して復元するもの、異なる制限酵素断片と会合するもの、および過剰量の超音波断片と会合するものとなる。このうち制限酵素断片が復元した2本鎖DNA断片だけが付着末端を持つため,ベクターにライゲーション可能となる。このようにアニーリングによって再編成されたDNA溶液を Sephadex G-25 に通してリン酸塩を除去した後、DNA 3.2μgを用いて pUC19 の BamHIサイトとライゲーションし、0.1M CaCl2 , 8% PEG600 によってコンピテント化した E. coli JM109 株を形質転換させた。

0043

組換えプラスミドアルカリSDS 法( Brinboin & Doly 1979) またはシングルステップ法(He et al . 1989) で単離して 1μgずつ 2 枚のナイロンメンブレンスポットし, 80℃で 3 時間ベーキングした。このナイロンメンブレン 1 枚に対してライムギIR130 の全DNA 5 ng およびコムギChinese Spring の全DNA 10 ng をそれぞれプローブに用いて14 時間ドットブロットハイブリタイゼーションし, ライムギ全DNAにのみ強くハイブリッドシグナルを示す反復配列クローンを選抜した。プローブはランダムプライマー法で Digoxigenin-11-dUTP ( Boehringer mannheim 社)を用いてラベリングし, プローブの検出はBoehringer mannheim 社のアルカリフォスファターゼで標識された Digoxigenin 抗体を結合させてNBTを発色させる方法またはAMPPD を発光させる方法を用いた。

0044

ライムギ自殖系統IR130 の 5 R染色体添加コムギ系統( 2n=44 ) のMbo消化DNA断片13.4 μgを CS ( 2n=42 ) のDNA 67.0 μg と混合して1 本鎖に変性した後,フェノールエマルジョン中でアニーリングさせ, Sephadex G-25 で脱塩し,クローニングに用いた。その他の方法は上記方法に準じて行った。

0045

上記のサブトラクション法の対照とするため,ライムギ自殖系統IR130 の MboI断片を pUC19 の BumHIサイトにショットガンクローニングした。

0046

その結果、6R add CS に由来するアニーリング後のDNA 0.8μgを用いて組換えクローン77 個を得た。MboI断片と超音波切断片を1: 3 に混合したので, アニーリング後のDNA溶液中にも 6R add CS の Mbo断片が 0.2μg 含まれていると考えると, MboI断片 1μg 当たり組換えクローン 385 個を得たことになる。同じ MboI断片 1μg を上記の調整を経ずにショットガン法で pUC19の BumHIサイトにライゲーションした場合には3.28×104個の組換えクローンが得られた。アニーリング後のクローン数はショットガン法で得られるクローン数と比較すると 1.2 % だった。

0047

このことは MboI断片の 98.8 % が超音波切断片とのランダムにアニーリングし, MboI断片の 1.2 % が復元してベクターにライゲーションしたものと考えられる。以後,ショットガン法によって得られたクローン数に対する比率をアニーリング後の Mbo断片の復元率とする。組換えクローン77 個をライムギおよびコムギの全DNAとドットハイブダイゼーションさせたところ, 6個がライムギゲノムに強いハイブリッドシグナルを示した。

0048

5R add CSの MboI断片を CS の超音波切断片と 67.0 μg 混合後、アニーリングさせて,脱塩したところ, 20.0 μg が回収された。このうち 500 ng を pUC19 20 ng とライゲーションし,組換えクローン145 個を得た。これは, 5R add CSのMbo断片 83.3 ng から組換えクローン145 個を得たことになり, 1μg 当たりにすると 1740 個である。ショットガン法に対する比率, すなわちアニーリングによる MboI断片の復元率は 0.13 % であった。ライムギおよびコムギ全DNAとのドットブロットハイブリダイゼーションを行ったところ、145 個中 8 個がライムギにのみハイブリッドシグナルを示し, ライムギゲノムに特異的反復配列であると考えられた。その他, ライムギ, コムギ双方にハイブリッドするものが 5 個, コムギにのみハイブリッドするものが 12個存在した。

0049

以上のように,ライムギ染色体添加型コムギ系統のゲノムDNAからコムギゲノムDNAをサブトラクションすることにより, ライムギゲノムに特異的なDNA断片を含むライブラリーを作製することができた。制限酵素断片の復元率から 1 制限酵素断片:5 超音波切断片の比で混合してアニーリングさせたことが成功したものと考えられる。反復クローンのインサーションの大きさは 6R add CS のライブラリーで 500bp前後, 5R add CS のライブラリーで 100から200bp であった。

0050

以上のサブトラクション法から得たDNAライブラリーから、ライムギの全ゲノムDNAに特異的に強くハイブリダイゼーションする14 個のクローンの塩基配列を解読した。その結果、12クローンはライムギの既知の3種類の反復配列のうち2種類(350 bpファミリーBedbrook et al. 1980,R173ファミリー Rogowsky et al.1992)と相同であったが、2クローンはDNA塩基配列データベースに無い未知の配列であった。以後、このうちの一つ89 bp断片を出発材料として、配列の全体構造解析した。

0051

(ゲノムに散在するトランスポゾン様因子の共通配列
89 bp断片の全体構造を明らかにするため、ライムギのゲノムDNAの大きい断片のライブラリーを作製し、その中から89 bp断片を含む複数のDNA断片を選抜して塩基配列を解読し、ゲノム中に繰り返す反復配列の共通配列を求めた。

0052

ライムギ自殖系統IR27のゲノムDNAを制限酵素Mbo Iで9から20kbの大きさに部分分解し、EMBLファージλFixIIDNAのXhoI部位に連結した。これらのファージDNAをファージ粒子に組み込み、宿主大腸菌XL1-BlueMRA(P2)株に感染させて、ライムギゲノムDNA断片をライブラリー化した。このゲノムDNAライブラリーから、89 bp断片を含むファージを選抜するため、ファージの感染によるプラーク溶菌斑)を、φ14 cmのプレート当たり50,000 個形成するように感染させた。このプレート上のプラークをナイロンメンブレンに転写して、89 bp断片をプローブとするプラークハイブリダイゼーションを行った。

0053

その結果、89 bp断片は約50,000個のファージプラークに対して約800個にハイブリダイゼーションした。したがって、ライムギゲノム中の89 bp断片のコピー数は、1bp当たりに89 bp断片が存在する個数ポジティブプラーク数(800 個)/ライムギゲノムDNAライブラリーの平均挿入長(13kb)×スクリーニングしたプラーク数(約50,000 )]×[ライムギ1細胞当たりの染色体DNA量(7.8Gb)]=10000コピー推定される。

0054

89 bp断片とハイブリダイゼーションしたファージを任意に6個選び、89 bp断片が含まれる領域と塩基配列を解読すべき領域を決定するため、ファージに挿入されたライムギDNA断片の制限酵素地図を作製した。まず、ファージに連結されたライムギDNA断片を制限酵素NotIで両サイドのT3及びT7領域ごと切り出し、これをDNA1μg当たり2 unitの制限酵素BamHIまたはSacIを用いて、反応時間を2分から3時間まで変動させて部分消化した。これを電気泳動後、ナイロンメンブレンにトランスファーし、両サイドを標識するT3またはT7プローブとのハイブリダイゼーションを行い、各制限断片位置関係を決定した。さらに、ファージの挿入DNA断片をBamHIまたはSacIで完全消化し、89 bp断片をプローブとするハイブリダイゼーションを行い、89 bp断片を含む制限断片を特定した。

0055

89 bp断片が制限酵素地図上の中央よりに位置するλ2、λ6、λ8の塩基配列を解読するため、サブクローニングを行った。89 bp断片とハイブリダイゼーションしたDNA断片およびそれらに隣接するDNA断片をアガロースゲルから回収して、プラスミドpUC119またはpBlue ScriptIIにサブクローニングした。1回のシークエンシングで解読できるのは700 bpあまりなので、長いサブクローンについては、Exonuclease IIIまたはAluI、HaeI、AfaIによって様々な長さに削ったディレーションクローンを作製して、ジデオキシチェインターミネーター反応に供した。

0056

λ2の挿入断片は、Bam HIで8個のDNA断片に切断し、そのうち7個12.7kbをサブクローニングした。4個のサブクローンについては両方向から約300 bpずつ削ったディレーションクローンを合計58個作製した。λ6の挿入断片は、Sac Iで7個のDNA断片に切断し、そのうち3個7.6 kbをサブクローニングした。さらに、この3クローンから45個のディレーションクローンを作製した。λ8の挿入断片は、Sac Iで9個のDNA断片に切断し、そのうち1個1.3 kbをサブクローニングして、11個のディレーションクローンを作製した。

0057

以上21.6kbの領域について、プラスミドクローン合計117個をテンプレートにしてサイクル法でジデオキシチェインターミネーター反応を行った。DNA自動シーケンサー終結因子となった塩基を次々に解読した。その結果、λ2とλ6は91.5%相同の共通配列3041bpを含み、末端に20 bpの逆位反復配列(TIR)を持つトランスポゾン様の因子であった。これをRevolverと命名した。Revolverの塩基配列を配列表の配列番号1に示す。また、BERE-100との比較におけるRevolverの構造を図3に示す。

0058

Revolver(3,041 bp) は,両端部分がオオムギのcopia 型レトロトランスポゾンBARE-1の中に挿入配列として見いだされ(Manninen & Schulman 1993),gypsy 型レトロトランスポゾンのsolo-LTRとみなされているBARE-100 (3,130 bp)の両端部分と相同性を示す以外に、類似の配列はない。Revolverの5'側で転写開始点の上流には,BARE-100 の5'末端との149 bpの相同領域(相同性62%) が存在する。また,Revolverの3'側では,第2イントロンの途中から第3エキソン下流の非翻訳領域3'末端にわたる768 bpの領域が,BARE-100 の3'側777 bpと62%の相同性を示す。

0059

Revolverは,両末端が逆位反復配列に挟まれてゲノムに散在するトランスポゾン様の挿入因子で、ライムギゲノムに約1万コピー散在している。

0060

(トランスポゾン様因子の転写産物
ライムギSecale cereale他殖系統Petkus、Triticum aestivum品種Chiese Spring、品種Gabo、ライムギ1R染色体転座型コムギGabo系統、ライコムギから抽出した全RNAおいた植物材料の成葉−80℃に保存して1.0 gを、液体窒素で凍結し、ホモジナイザーで粉砕した。この凍結粉末を、Denaturing Solution (4.2 Mグアニジンチオシアネート,25 mMクエン酸ナトリウム・2水和物,0.5% Sodium N-lauroyl Sarcosine)を加えて、ボルテックス混和しタンパク質を変性させた。

0061

1/10量(1 ml)の2 M Sodium acetate(pH 4.0)を加えて転倒混和した後、1:1量(10 ml)の酸性フェノールを加えて混和し、さらに、1/5量(2 ml)のクロロホルム/イソアミルアルコール(49:1)を加えてよく転倒混和して除タンパク質した遠心上層分取して、イソプロパノール沈殿させたRNAペレットに0.5 mlの Denaturing Solution を加え45℃の恒温水槽につけながら完全に溶解させた。0.6 mlのイソプロパノ−ルを加えて遠心してRNA をペレットにした。上澄みを取り除いてRNAペレットに300 μlの DEPC処理水を加え、45℃の恒温水槽につけながら溶解させ、−80℃に保存した。

0062

ライムギSecale cereale品種Petkus、Triticum aestivum品種Chiese Spring、品種Gabo、ライムギ1R染色体転座型コムギGabo系統、ライコムギから抽出した全RNA 5 μgを1%アガロースゲルで20 Vで20時間電気泳動した後、バキュームブロッティング装置を用いてナイロンメンブレンにトランスファーした。ブロッティング装置にゲルを乗せてバキュームポンプで20×SSCを2時間吸引した。トランスファー後、ナイロンメンブレンを10×SSCで洗浄し、UV(125 mJoule)でDNAをクロスリンクした。

0063

トランスファーしたナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション溶液(2% blocking reagent (Boehringer Mannheim Biochemica)、5×SSC、 0.1% N-lauroyl Sarcosine、0.02% SDS)に浸し、4時間のプリハイブリダイゼーションを行った。次に、ラベリングしたRevolvercDNApSc1 (726 bp)DNA断片200 ngを含む10 mlのハイブリダイゼーション溶液中で65℃で20時間ハイブリダイゼーションを行った。洗浄は2×SSC、0.1%SDSで室温5分間を2回、0.1×SSC、0.1%SDSで65℃15分間を2回行った。

0064

さらに、Washing buffer(0.3%(W/V)Tween20/buffer 1、buffer 1:0.1 M Maleic acid、0.15 M NaCl、pH7.5)で3分間洗浄後、buffer 2(1%(w/v)blocking reagent(Boehringer Mannheim Biochemica)/buffer1)で30分間ブロッキングし、0.01%のAnti-digoxigenin-AP,Fabfragments(750 units/ml)を含むbuffer 2で30分間の抗原抗体反応を行った。これをWashing bufferで30分間2回洗浄し、buffer 3(0.1 M Tris-HCl pH9.5、0.1 M NaCl、0.05 M MgCl2)に5分間インキュベートした後、CDPStar溶液(0.1%CDP Star/Buffer 3)を2ml滴下してナイロンメンブレンをハイブリバッグ封入し、37℃で10分間インキュベートした。さらに、ナイロンメンブレンをX線フィルムコンタクトして3時間感光させ、ハイブリダイゼーションのシグナルを検出した。ノーザン解析により、トランスポゾン様因子Revolverは0.4kb、0.7 kb、3 kb、5 kbのRNAに転写されていることが分かった。

0065

ライムギのS.cereale自殖系統IR10の全RNAからPoly A TractmRNAIsolation System(Promega) でmRNAを分離し, XhoIリンカーオリゴd(T)をプライマーにしてMMLV逆転写酵素で1本鎖cDNAを合成し、それにEcoRIアダプターを付加した。 これらcDNAをλZAPII DNAに連結し, in vitroパッケージングでファージ粒子を形成させ, これらを宿主菌XL1-BlueMRF′に感染させて1.4×106 pfuのcDNAライブラリーを作製した。

0066

Revolver(クローンλ2)プローブにして,cDNAライブラリー25万プラークとのハイブリダイゼーションを行って9個の陽性ファージを選び、さらに,二次スクリーニングで3個にしぼった。 これら3個の陽性ファージとヘルパーファージ共感染させてファージミドDNAを合成し,サイクルシーケンス法でDNA塩基配列を決定した。そのようにして得られたのがcDNAクローンであるpSc1でありその塩基配列を配列表の配列番号8に示す。なお、トランスポゾン様因子RevolverのゲノムDNAクローンとpSc1の構造比較から,Revolverは3個のエキソン(342 bp, 88 bp, 291 bp)と2個のイントロン(750 bp, 1237 bp)で構成されていることが分かった。

0067

そしてプロセシングを受けたRevolverのmRNAは、117アミノ酸残基からなるポリペプチドをコードする一つのオープンリーディングフレームを有していた。なお、RevolverのcDNAがコードするトランスポゼースのポリペプチドのアミノ酸配列を配列表の配列番号13に示す。

0068

(実施例2:トランスポゾン様因子Revolverがコードする遺伝子)
(ライムギにおけるRevolvermRNAの分類
ライムギSecale cerealeの品種・自殖系統,野生種S.fragile, S.silvestre,ライムギ染色体転座型コムギ系統,ライムギ染色体添加型コムギ系統、普通コムギの葉から全RNAを抽出し、RevolverのcDNApSc1(726 bp) の両末端から設計したプライマーでRT-PCRを行った。Revolver cDNAの3’末端の23塩基を含む38 merのoligo dT プライマー[726RT38(5’-TTTTTTTTTTTTTTTGGCACAACTCATGTAAAAGAGGG-3’:配列番号22(Tm値74.6))]を用いてAMV逆転写酵素で反応を行った。RNA PCR Kit (AMV) Ver.1.1 (TaKaRa)を用いた。逆転写反応一本鎖cDNAを合成した。さらに、逆転写産物鋳型にして、38 merの726RT38プライマーと22 merの726-5Fプライマー(5’-GGCACGAGGGTACGAGTCCGAG-3’:配列番号23(Tm値 73.0))にはさまれた二本鎖cDNAを増幅した。DNA20 ngを鋳型にして、200 nM プライマー(33 ng)、100μM dNTPs、50 mM KCl、10 mM Tris-HCl(pH8.8)、1.5 mM MgCl2で1 U TaqDNAポリメラーゼを含む全量50 μlの反応液を作製した。

0069

サーマルサイクラーPC-700(ASTEC)を用いて、変性95℃ 30秒、アニーリング63℃ 30秒、伸長72℃ 1分の一連PCR反応を30回行った。また、最初の変性94℃と最後の合成72℃は5分間ずつ行った。ライムギ、コムギCS及びライムギ染色体添加コムギCS系シリーズPCR産物を1.5%アガロースゲルで100 Vで1時間30分間電気泳動した。その結果,約0.7kbと1.5 kbのcDNAが強く増幅された。

0070

PCR産物をバキュームブロッティング装置を用いてナイロンメンブレン(バイオダインラス)にトランスファーした。ブロッティング装置にゲルを乗せてバキュームポンプで3分間吸引しながら0.25 N HClをゲル上に注いで脱プリンした。同様に0.4 N NaOHでゲルを覆って1時間吸引した。トランスファー終了後、ナイロンメンブレンを2xSSCで洗浄後UV(125 mJoule)でDNAをクロスリンクした。RT-PCR産物のゲルブロットでも,RevolverのpSc1由来のcDNAプローブが0.7kbと1.5 kbのDNAにハイブリダイゼーションした。

0071

RT-PCR産物とのゲルブロットハイブリダイゼーションで相同性を示したcDNAをpGEM-Tベクターでクローニングし,サイクルシーケンス法でそれらの塩基配列を決定した。

0072

RT-PCR産物のTAクローニングで得られたRevolverのcDNA30クローンを解析した結果,全長665から723 bpで第1エキソンの構造が異なる3つのクラス (IからIII)に分類された(クラス内の相同性I:89%,II:97%,III:93%)。このようにして得られたcDNAクローンが、配列表の配列番号7に示すpSc5(クラスI), 配列表の配列番号9に示すpSc12(クラスII), 配列表の配列番号10に示すpSc4(クラスIII)であり、pSc1はクラスIIに分類される。

0073

クラス間の相同性は,クラスIとクラスIIIで75%,クラスIとクラスIIIで80%,クラスIとクラスIIIで76%である。エキソンごとに対比すると,第2エキソン (89から92 bp) と第3エキソン(293 bp) はクラス間でも91から95%の高い相同性を示した。これに対して,第1エキソン (282から341 bp) は,各クラス内では相同性が高いが (I:98%,II:99%,III:99%),クラス間の相同性が60%台と低かった (IとII:63%,IとIII:64%,IIとIII:67%)。第1エキソンには,3つのクラス間で互いに部分的な塩基配列の欠失と変異が見いだされ,長さも異なっている。つまり,cDNAの分類は第1エキソンの構造変異に対応している。また,第1エキソンには,8から14 bpを単位とする同方向反復配列がいくつも存在していて、対立遺伝子間で非相同組み換えを起こして、多様な構造変異をもたらしたと考えられる。トランスポゾン様因子RevolverのcDNA解析によって,第2,第3エキソン部分はほぼ一致するが,第1エキソン部分が部分的な重複,欠失などで異なっている3つのサブファミリーが存在することが分かった。

0074

以上のように,自殖性純系ライムギから得た転写活性を持つRevolverの遺伝子には第1エキソンに多様な構造が存在することが分かり、ゲノムのランドマークとして着目される。

0075

(コムギ連植物におけるRevolvermRNAの分類)
Revolver mRNAのコムギ連植物Triticeaeにおける変異を解析した。S. fragile,S. silvestre,T. monococcum,Ae. squarrosa,D. villosumの成葉からRT-PCR法で得たRevolverのcDNA構造を決定した。全RNAを抽出し、RevolverのcDNA pSc1(726bp)の両末端から設計したプライマーでRT-PCRを行った。Revolver cDNAの3’末端の23塩基を含む38 merのoligo dT プライマー[726RT38(5’-TTTTTTTTTTT-TTTTGGCACAACTCATGTAAAAGAGGG-3’:配列番号22(Tm値74.6))]を用いてAMV逆転写酵素で一本鎖cDNAを合成した。RNA PCR Kit (AMV) Ver.1.1 (TaKaRa)を用いた。

0076

さらに、逆転写産物を鋳型にして、38 merの726RT38プライマーと22 merの726-5Fプライマー(5’-GGCACGAGGGTACGAGTCCGAG-3’ :配列番号23 (Tm値73.0))にはさまれた二本鎖cDNAを増幅した。DNA 20 ngを鋳型にして、200 nM プライマー(33 ng)、100 μM dNTPs、50 mM KCl、10 mM Tris-HCl(pH8.8)、1.5 mM MgCl2 で1 U TaqDNAポリメラーゼを含む全量50μlの反応液を作製した。サーマルサイクラーPC-700(ASTEC)を用いて、変性95℃ 30秒、アニーリング63℃ 30秒、伸長72℃ 1分の一連のPCR反応を30回行った。その結果,大多数が S. cereale のクラスI(47%) またはクラスII(27%) に属し,主要な2つのクラスが種属を越えて保存されている。従って3つのクラスは偶然の産物ではないと考えられる。

0077

(種属を越えたRevolverコーディング領域の保存性
Revolverは0.7kbのmRNAを活発に産生しており、そのうちクラスIのmRNAはコムギ連植物に種属を越えて保存されている118アミノ酸残基(配列表の配列番号13)のORFをコードしている。

0078

(実施例3:トランスポゾン様因子Revolverの消長と構造変異)
(イネ科植物におけるRevolverの消長)
イネ科植物におけるRevolverの分布を調べるため,ライムギSecale cereale (RR)品種Petkus,自殖系統(IR-10,IR48-1),ライムギ属野生種(S. montanum,S. fragile,S. silvestre),コムギTriticum aestivum (AABBDD), T. monococcum (AA), T. durum (AABB), T. polonicum (AABB), T. timopheevi (AAGG),T. tauschii (DD), ライムギ染色体転座型コムギ系統(DRA-I), ライムギ染色体1Rから7R添加型コムギ系統, Dasypyrum villosum (VV),オオムギHordeum bulbosum (HH), イネOryza sativa からゲノムDNAを抽出し,制限酵素Sac IとDra Iで完全に消化した。

0079

これらの植物のゲノムDNA を20 μgずつ1%アガロースゲルで20 Vで20時間電気泳動した後、バキュームブロッティング装置を用いてナイロンメンブレン(バイオダインプラス)にトランスファーした。ブロッティング装置にゲルを乗せてバキュームポンプで3分間吸引しながら0.25 N HClをゲル上に注いで脱プリンした。次に0.4 N NaOHで2時間吸引した。トランスファー後、ナイロンメンブレンを5×SSCで洗浄し、UV(125 mJoule)でDNAをクロスリンクした。

0080

トランスファーしたナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション溶液(2% blocking reagent (Boehringer Mannheim Biochemica)、5×SSC、 0.1%N-lauroylsarcosine、0.02%SDS)に浸し、4時間のプリハイブリダイゼーションを行った。次に、ラベリングしたRevolvercDNApSc1 (726 bp)DNA断片200 ngを含む10mlのハイブリダイゼーション溶液中で65℃で20時間ハイブリダイゼーションを行った。洗浄は2×SSC、0.1%SDSで室温5分間を2回、0.1×SSC、0.1%SDSで65℃15分間を2回行った。

0081

さらに、Washing buffer(0.3%(W/V)Tween20/buffer 1、buffer 1:0.1 M Maleic acid、0.15 M NaCl、pH7.5)で3分間洗浄後、buffer 2(1%(w/v)blocking reagent(Boehringer Mannheim Biochemica)/buffer1)で30分間ブロッキングし、1/1000 Anti-digoxigenin-AP,Fabfragments(750 units/ml)を含むbuffer 2で30分間の抗原抗体反応を行った。

0082

これをWashing bufferで30分間2回洗浄し、buffer 3(0.1 M Tris-HCl pH9.5、0.1 M NaCl、0.05 M MgCl2)に5分間インキュベートした後、CDPStar溶液(CSPD(10 mg/ml):Buffer 3=1:100)を2ml滴下してナイロンメンブレンをハイブリバッグに封入し、37℃で10分間インキュベートした。さらに、ナイロンメンブレンをX線フィルムにコンタクトして1から3時間感光させ、ハイブリダイゼーションのシグナルを検出した。

0083

cDNA(726 bp)プローブは, Rゲノム種であるSecale cereale, S. montanum, S. fragile, S. silvestre), Dasypyrum villosum (VV) に強くハイブリダイゼーションし, Triticum monococcum (AA), T. durum (AABB), T. polonicum (AABB), T. timopheevi (AAGG), T. tauschii (DD)に中度にハイブリダイゼーションした。また, Hordeum bulbosum (HH), Oryza sativaにもハイブリダイゼーションした。T. aestivum (AABBDD)にはハイブリダイゼーションしなかった。

0084

このことから, RevolverはRRゲノム, AAゲノム, AABBゲノム,DDゲノムには存在するが, 普通コムギのAABBDDゲノムには存在しないことがわかった。興味深いことに, Revolverは 普通コムギには存在しないが, より祖先種に近いAゲノムやDゲノムには存在している。

0085

コムギ族植物におけるサザンブロット解析図4)では,RevolverのcDNAプローブはライムギ属の3種 S. cereale,S. fragile,S. silvestreとDasypyrum villosum に強くハイブリダイゼーションし,Triticum monococcum,Aegilops squarrosa,にも中程度にハイブリダイゼーションした。したがって,Revolverは,ライムギ属とDasypyrum属に多数のコピーが存在する他,一粒系コムギタルホコムギなど二倍体種やデュラムコムギ等の四倍体種には中度に反復して存在しているが,普通コムギには存在していない。Revolverはコムギの祖先種からの進化の過程で、いくつかの近縁種で増幅し、普通コムギでは消失しているので、コムギゲノムにおける近縁種の遺伝標識として有用である。コムギ連植物の種属間でコピー数が異なるので,ゲノム進化の指標、染色体のランドマークとして着目される。

0086

(ゲノムにおけるRevolverの多様な構造変異)
Revolverの一つのクローン(Revolve-2:配列表の配列番号2)の3'側隣接領域GTAGTCGTCAGGAGTCCTCACCA(配列番号24)をシングルプライマーとするPCRを行うとライムギゲノムから2.3kb、2.8 kb、3.3kb、4.3 kbの4種類のDNAが増幅されるが、コムギゲノムからは何も増幅されない。このプライマーによって、コムギとライムギの遺伝質を簡便に区別することができる。さらに、同じプライマーでライムギ染色体添加コムギ系統のゲノムDNAをテンプレートとするPCRを行うと、1R染色体添加系統からは2.8 kbのDNA、5R染色体添加系統からは3.6 kbのDNA、6R染色体添加系統からは4.3 kbのDNAが増幅される。このプライマーによるPCRにより、ライムギの染色体1R、5R、6R、7Rを識別、同定することができる。ライムギゲノムから増幅された4種類のDNA、1R、5R、6R、7Rの染色体添加系統から増幅されるそれぞれ1個のDNAをpGEM-Tvectorを用いてTAクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、いずれもRevolverの第2イントロン以降を持つが,5’側に構造変異が生じていているものであり、Revolverの非自律性因子であった。

0087

まず、6R染色体に存在するRevolve-3(配列表の配列番号3) は、全長が4269 bpで,3'側にRevolverの第1イントロンの途中から第3エキソンを経て3'末端にわたる2112 bpの領域を持ち,5'末端には逆位反復配列を含む150 bpの相同領域を持つが、その間約2kbは、第1エキソンから第1イントロン途中までを欠くかわりに,Revolverにないオオムギの挿入配列BARE-100 (3130 bp) と相同性が高い370 bpの領域を含むなど,Revolverとは全く異なっている。

0088

Revolve-3 (pSc626)(4,269 bp)およびBARE-100(3,130 bp)はいずれも両端にRevolverとの相同領域を含む。5'末端にはいずれもgypsy 型レトロトランスポゾンLTRの5'末端共通配列14 bpを含み、Revolverの転写開始点の上流との123から149 bpの相同領域を持ち,さらにRevolve-3 (pSc626)とBARE-100に特異的な相同領域が600 bp前後まで続いている。

0089

一方,3'側にはRevolverの転写される領域との相同配列を含み,Revolve-3 (pSc626)は第1イントロンの途中から第3エキソンの下流までの2,112 bpを持ち,BARE-100は第2イントロンの途中から第3エキソンの下流までの777 bpを持っている。3'末端はいずれもRevolverの第3エキソン下流非翻訳領域の3'末端と一致し,かつgypsy 型レトロトランスポゾンLTRの3'末端共通配列14 bp を含んでいる。以上の領域ごとの相同性は,Revolverとの相同部分ではRevolverに対してRevolve-3 (pSc626)が77から93%,BARE-100が58から65%を示し,5'側のRevolve-3 (pSc626)とBARE-100のみの相同部分では65%であった。

0090

Revolve-3 (pSc626)の5'側から631から2,176 bpの領域とBARE-100の598から2,353 bpの領域には短い配列が繰り返して存在し,両クローン間では53%の相同性を示すが,Revolverとの相同性は全くない。Revolve-3 (pSc626)とBARE-100は5'側に独自の共通領域を持つなど全体として相同性が高く,BARE-100はRevolve-3 (pSc626)からの第1イントロンから第2イントロンに相当する領域が欠失したタイプである。

0091

次に、Revolver-4 (pSc627)は全長が3219 bpで(配列表の配列番号4)、3'側にRevolverの第2エキソンの直前から3'末端にわたる1806 bpの領域を持つが,その5’側1413 bpでRevolverとの相同領域は末端101 bpにすぎない。

0092

さらに、1R染色体に存在するRevolver-5 (pSc628)は全長が2665 bpで(配列表の配列番号5)、3'側にRevolverの第2エキソンの直前から3'末端にわたる1826 bpの領域を持っている。その5’側でRevolverとの相同領域は末端部分37 bpにすぎないが、Revolver-4 (pSc627)とは約670 bpが相同である。

0093

最後に、5R染色体から増幅されたRevolver-6 (pSc5R1)は全長が3503 bpで(配列表の配列番号6)、3'側にRevolverの第2イントロンの途中から3'末端にわたる1294 bpの領域を持つが,その5’側にはRevolverとの相同領域はなく、5’末端121 bpがRevolver-4 (pSc627)、Revolver-5 (pSc628)と相同である。

0094

(RevolvermRNAの多様な構造変異)
Revolverの種属ごとの特性や変異を見いだすため,cDNAクローンの構造解析を進めた。その結果,第1エキソンの構造が全く異なるcDNAが見いだされた。ライムギの野生種Secale silvestreからクローン化した5個のcDNAは,全長が1597 bpで,Revolverの第2イントロン(1210 bp),第3エキソン(301 bp)を持つが,その5’側にRevolverに見られない86 bpの配列を持っている。5クローン間の相同性は96%を示す。他方,ライムギ栽培種S. cerealeからクローン化した4個のcDNAは,全長が395 bpで,上記の1597 bpのcDNAクローンに対して第2イントロンを欠いている。以上のことから,全長が1597 bpで2つのエキソンと1個のイントロンで構成され,86 bpの特異的な第1エキソンを持ち,イントロン以降の構造はRevolverと共通する因子の存在が明らかになった。このRevolverファミリーの第3のタイプを,Revolver-7 (pSc23)とする(配列表の配列番号12)。

0095

一方,葉のcDNAライブラリーからスクリーニングされた別のcDNAクローン(pSc14:全長2,182 bp)は,Revolverの第2エキソン(90 bp,相同性97%)と第3エキソン(260 bp, 92%)を持つが,第1エキソンに相当する領域が極めて長く,他のcDNAとの相同性もなかった(配列表の配列番号11)。第2イントロン以降の構造が共通しているRevolverファミリーは,活発に転写されていて,5’側に多様な構造変異が生じている。

0096

(実施例4:トランスポゾン様因子Revolverによる染色体マーカー開発)
(Revolverのin situハイブリダイゼーションによる染色体同定)
ライムギ品種Petkusの体細胞分裂中期の染色体標本を作製し,RevolverとL6のBARE-100 の5'側に特異的な370 bp領域の染色体位置をFISH法によって分析した。Revolverのプローブは,クローンRevolver-1 が含む共通配列3,041 bp の全長をbiotin-16-dUTPで標識して作製し,Revolver-3 (pSc626)特異的領域のプローブはBARE-100との相同部分370 bpを使用した。ハイブリダイゼーション後,avidin-FITCを介して間接蛍光法で染色体上のプローブを検出した。ライムギ染色体の同定は,末端領域の縦列型反復配列350 bpファミリーとの同時FISH法(dig標識,ローダミン抗dig抗体で検出)とFISH後のC-バンド法により行った。

0097

Revolverプローブはライムギ染色体全域に弱くハイブリダイゼーションし,ドット状で点在する比較的大きいシグナルが検出された。1R染色体では短腕中央の介在部1箇所,2R染色体では短腕の末端近傍動原体付近の介在部2箇所,5R染色体では短腕中央の介在部1箇所,長腕の動原体付近と中央の介在部2箇所において,ドット状のシグナルが安定して検出された。Revolverプローブによって1R,2R,5R染色体を明確に識別できる。 一方、Revolver-3 (pSc626)でBARE-100と共通する370 bpの領域は,ライムギ染色体全域に比較的強くハイブリダイゼーションし,Revolverより高いコピー数で散在している。

0098

(Revolverの多様な構造変異体のSTS化による染色体マーカー)
Revolverのゲノムクローンのうち、Revolverの第2イントロン以降を持つが,5’側に構造変異が生じていて、非自律性因子と考えられるクローンを、ライムギ染色体コムギ系統を用いてライムギ染色体上にSTS化した。Revolver-3はRevolver-2の3’側隣接領域のプライマーGTAGTCGTCAGGAGTCCTCACCA(配列番号24)によってライムギ6R染色体添加系統のみから増幅されるので、6R染色体にSTS化された。

0099

また、Revolver-5 (pSc628)はRevolver-2の3’側隣接領域のプライマーGTAGTCGTCAGGAGTCCTCACCA(配列番号24)によってライムギ1R染色体添加系統のみから増幅されるので、ライムギ1R染色体に位置づけられた。さらに、Revolver-6 (pSc5R1)はRevolver-2の3’側隣接領域のプライマーGTAGTCGTCAGGAGTCCTCACCA(配列番号24)によってライムギ5R染色体添加系統のみから増幅されるので、ライムギ5R染色体に座乗している。

0100

さらに、Revolver-6(pSc5R1)の内部配列をプライマー(ATAGCTCCACTGTTGGCTCCTCTTGC(配列番号25)、CATTCATCCAAAGAACACAGAGTCCG(配列番号26)にして5R染色体に特異的な2973 bpのDNAが確かに増幅される。また、Revolver-2は5’側の隣接領域GCCTTTCGGCCTTCCTCTCAGGCGG(配列番号27)とGTACTTGGCATCGGTAGATGTTCGG(配列番号28)によるPCRでライムギ7R染色体添加系統のみから492 bpのDNAが増幅されるので、ライムギ7R染色体に位置づけられた。以上のように、ゲノムに散在するRevolverの各因子に隣接する配列、内部配列およびそれらの組み合わせたPCRプライマーによって、Revolverの各因子が座乗する染色体を決定し、染色体を検出・同定するためのPCRマーカーに利用することができる。

0101

Revolver-7の第1エキソン部分は,S. cerealeでは98 bp (Revolver-7、pSc23)で、S. silvestreでは86 bp(Revolver-7、pSc14)である。そこで,(Revolver-7、pSc23)の第1エキソン部分を増幅するように配列を設計し,挿入因子ファミリーを多数持つS. cereale,S. silvestreおよびDasypyrum villosumについてPCRを行った。その結果,第1エキソンに相当するDNAが増幅され,S. silvestreとD. villosumでは約90 bp,S. cerealeでは約100 bpであった。挿入因子はゲノム全域に存在するので,Revolver-7の第1エキソン部分のプライマーセットは,コムギの遺伝的背景でS. cerealeとD. villosumのDNAを識別・同定するのに有効である。

0102

本発明のトランスポゾン様因子RevolverのDNA配列、Revolverがコードする転写活性がある遺伝子のDNA配列、およびその構造変異体のDNA配列は、有用資源植物のゲノムの検出、同定、DNAマーカーの開発、染色体同定、進化の検討のためのプローブ、PCRのエントリーポイントなどに利用することが可能である。

図面の簡単な説明

0103

図1は、Revolverとその非自律性因子の構造を示す模式図である。
図2は、RevolverとそのcDNAの構造を示す模式図である。
図3は、Revolverの構造をBARE-100との比較において示す模式図である。
図4は、種々のコムギ族植物においてRevolverのサザンブロット解析を行った写真である。

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