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課題
解決手段
効果
評価を厳しくすることにより、大きな破片が発生する可能性のある倍強度ガラスを予め除去することができ、より安全性を高めることができる。
概要
背景
概要
JIS合格品であっても、一部の倍強度ガラスでは、アイランドと称する大きな破片が発生する可能性がある。大きな破片が発生する虞のある倍強度ガラスを除去することができる評価方法を提供する。倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下であることを確認する応力差評価ステップと、板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上であることを確認する応力釣合率評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価する。評価を厳しくすることにより、大きな破片が発生する可能性のある倍強度ガラスを予め除去することができ、より安全性を高めることができる。
目的
効果
実績
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請求項1
倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JISR3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下であることを確認する応力差評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする倍強度ガラスの評価方法。
請求項2
倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JISR3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上であることを確認する応力釣合率評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする倍強度ガラスの評価方法。
請求項3
倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JISR3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下であることを確認する応力差評価ステップと、板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上であることを確認する応力釣合率評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする倍強度ガラスの評価方法。
請求項4
前記応力差評価ステップで使用する所定の値は、20MN/m2であることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の倍強度ガラスの評価方法。
請求項5
前記応力釣合率評価ステップで使用する所定の値は、30%であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の倍強度ガラスの評価方法。
技術分野
0002
同厚のフロート板ガラスと比較して約2倍の強度(耐風圧強度、熱割れ強度)に高めたガラスを、倍強度ガラスと呼ぶ。この倍強度ガラスは、ビル高層階の窓ガラスに好適であるため、近年、需要が伸びている。倍強度ガラスは、次に示す日本工業規格に準拠して、製造、管理される(例えば、非特許文献1。)。
0003
【非特許文献1】
日本工業規格JIS R 3222−1996「倍強度ガラス」
0004
非特許文献1の1.注記に「注倍強度ガラスとは、板ガラスを熱処理してガラス板表面に適切な大きさの圧縮応力層をつくり、破壊強度を増大させ、かつ、破損したときに、材料の板ガラスに近い割れ方となるようにしたものである。」との記載がある。
0005
さらに、非特許文献1には、以下の規定が明示されている。
3.3で「表面圧縮応力表面圧縮応力は、6.4によって測定を行い、それぞれの測定値が20MN/m2以上、かつ、60MN/m2以下でなけらばならない。」
6.4(1)で「・・・直線と対角線との交点4か所の表面圧縮応力を測定するものとする。」
0006
6.4(2)第8行〜第11行で「倍強度ガラスでは、表面圧縮応力によって、振動面がガラス表面に沿う方向の光と、それに垂直な方向の光との間に複屈折を生じる。・・・略・・・暗線(A)と・・・略・・・暗線(B)との間の距離(D)を測ることによって、表面圧縮応力に比例する屈折率の差の測定値が得られる。」
6.4(4)に、具体的な計算式が示されている。
背景技術
0007
一方、ガラス板では自然破損と呼ぶ現象を、問題にすることがある。この自然破損とは、許容応力以下で使用したにも拘わらず、破壊すること言う。
この破壊は、表面に付いた傷やNiS(硫化ニッケル)相転移が始点となって進行すると考えられる。
0008
図9(a)、(b)は従来のガラス板の破損形状図である。
(a)は、フロート板ガラス101のある点102が始点となって、ほぼ放射状に割れ103が入った様子を示す。窓枠104があるため、ガラスの破片が直ちに外れる若しくは落下する心配はない。これが、JISで注記された「材料の板ガラスに近い割れ方となる」ことに相当する。
0009
(b)は、一部の倍強度ガラス111に見られる現象を示す。すなわち、倍強度ガラス111のある点112が始点となって、ほぼ丸く割れ113が入った様子を示す。窓枠114があるため、倍強度ガラス111の縁部は残るが、アイランド115と称する丸い破片が想像線で示すように落下する虞がある。
ビルの高層部から、このようなアイランド115が落下することは、避けなければならない。
発明が解決しようとする課題
0010
ただし、前記JISに合格した倍強度ガラスの大部分は、上記(a)のような割れ方をする。しかし、ごく一部ではあるが、前記JISに合格したにも拘わらず、倍強度ガラス111に丸い割れ113が入ることがある。ただし、上記(b)で説明したほど顕著な破壊ではない。しかし、軽度であっても丸い割れ113は未然に防止する必要がある。
0011
倍強度ガラスの信頼性を高める手法として、(1)製造技術を改良することと、(2)製造技術は既存の技術のままで、評価方法を改良することとの、2つが考えられる。好ましくは(1)であるが解決すべき項目が多岐にわたるため、(2)の評価方法を先に確立することとした。評価方法が確立すれば、この評価方法を用いることにより、(1)の製造技術の評価が容易に行え、製造技術の改良が効率よく行える。
0012
本発明者らは、上記(2)の評価方法を確立するために、先ず、NiSの影響を調べ、次にクラックの数、アイランドの大きさを調べることにした。
図1は表面圧縮応力とNiSの粒径との関係を調べたグラフであり、横軸の20〜60(MN/m2)の範囲が、JIS合格範囲となる。領域Cは自然破損が起こりやすい領域であり、領域Aは自然破損が起こる心配のない領域であり、領域Bはその中間の領域である。
0013
例えば、点P1は表面圧縮応力が40(MN/m2)で、NiSの粒径が100μmの点である。この点では自然破損は起こらない。
一方、点P2は表面圧縮応力が40(MN/m2)で、NiSの粒径が400μmの点である。この点では自然破損が起こりやすい。
0014
NiSの粒径が大きいほど、始点になりやすく、破壊を促す作用が強いことは容易に認識できる。この結果、JIS合格品であるにも拘わらず、自然破損が発生する可能性があることが確認できた。
0015
図2はクラックの入り方の例を示す図である。
(a)は、倍強度ガラス10に、始点11から1本のクラック12が入ったことを示す。なお、この倍強度ガラス10は、クラック12が発生する前に、予め全面的に表面圧縮応力σ1〜σnを計測しておく。これらの表面圧縮応力σ1〜σnは、JIS R 3222−1996に規定される計測方法で測定することができる。
表面圧縮応力σ1〜σnの中から最大値σmaxと最小値σminを選び、応力差Δσ=(σmax−σmin)を求めたところ、18MN/m2であった。
0016
(b)は、倍強度ガラス20に、始点21からクラック22と、クラック23とが入ったことを示す。この倍強度ガラス20は、応力差Δσが20MN/m2であった。
(c)は、倍強度ガラス30に、始点31からクラック32と、クラック33、34とが入り、アイランド35が発生したことを示す。この倍強度ガラス20は、応力差Δσが24MN/m2であった。
0017
以上の例から、クラックの本数が増加するほど、アイランドが発生しやすくなり、窓枠からの脱落の危険性が増すと予想される。そして、クラックの本数は、応力差Δσ、すなわち、最大表面圧縮応力差Δσの大小に依存すると考えられる。
表面圧縮応力が不均一の場合は、最大値と最小値との差が大きいほど大きな歪が残留し、破壊に影響を及ぼすと推定できるからである。そこで、サンプル数を増加して実験を行った。その結果を次図に示す。
0018
図3は応力差とクラックの関係を調べたグラフであり、横軸は最大表面圧縮応力差Δσ、縦軸はクラックの本数を示す。黒点は取得データを示し、これらの黒丸群から折れ線Bを引くことができる。
グラフから、最大表面圧縮応力差Δσが20MN/m2を超えると、折れ線Bが急激に立ち上がり、クラックの本数が急増することが分かる。
0019
ガラス板にクラックが入ったことを想定すると、クラックの本数が1〜2本であれば、アイランドの発生は起こりにくい。縦軸の「2」に相当する横軸は「15」であるから、最大表面圧縮応力差Δσが15MN/m2以下であれば、危険度がごく小さいと言える。
0020
クラックの本数を2本に留めることは理想であるが、本発明者等の観察によれば、クラックの本数が4本までは、ほぼアイランドの発生は防げることが分かった。縦軸の「4」に相当する横軸は「20」であるから、最大表面圧縮応力差Δσが20MN/m2までは許容可能である。
0021
従って、クラックの本数で評価する場合は、最大表面圧縮応力差Δσは20MN/m2以下、望ましくは15MN/m2以下の倍強度ガラスを、合格品とする。
0022
次にアイランドの大きさを検討する。
なお、2枚の偏光板で倍強度ガラスを挟み、光源を用いて板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合を観察することができる。釣合部分は黒くなり、不釣合部分は白くなるごとくに、光学的に観察することができる。
0023
図4は光学的観察とアイランドとの関係を調べたときの一例を示す図である。なお、作図の都合で釣合部分は空白とし、不釣合部分にハッチングを施した。
(a)は、不釣合部分41と釣合部分42とを含む倍強度ガラス40を示す。倍強度ガラス40の不釣合部分41が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠46を配置し、測定枠46内の面積をS1、測定枠46内の釣合部分42の面積をS2とすれば、測定枠46内の面積に占める釣合部分の割合は、S2/S1で表すことができる。
この釣合部分の割合を、パーセント表示したものを「板厚方向残留応力釣合率」(=100×S2/S1)と呼ぶことにする。
0025
比較のために、(c)、(d)を試した。
(c)の倍強度ガラス50は、全てが釣合部分52で構成されている。
(d)において、始点53からクラック54が入ったが、アイランドはできなかった。
0026
以上のことから、不釣合部分41の有無がアイランドの発生に関連し、不釣合部分41の大小、すなわち釣合部分42の大小がアイランドの大きさに関連することが予想される。
そこで、サンプル数を増加して関連を詳細に調べた。その結果を次図で説明する。
0027
図5は板厚方向残留応力釣合率とアイランドの総面積との関係を示すグラフであり、横軸は板厚方向残留応力釣合率(=100×S2/S1)、縦軸はアイランドの総面積を示す。アイランドの総面積は、アイランドが複数個ある場合は、それらを合計した。なお、横軸は等間隔目盛り、縦軸は対数目盛で表した。
0028
横軸で「100」は全てが釣合部分であって不釣合部分は0であるため、アイランドは発生しない。一方、横軸で「50」は釣合部分が50%で不釣合部分が50%であるため、10mm2以下の小さな面積のアイランドが発生する。横軸で「10」は90%が不釣合部分であるために、106mm2の総面積のアイランドが発生する。
0029
本発明者らが検討したところでは、アイランドは、103mm2(直径35mmの丸若しくは32mm×32mmの角)であれば、万一、落下しても人的及び物的被害を最小限に留めることができる。グラフ縦軸の103mm2は、横軸の30%に相当する。
すなわち、アイランドの大きさから、板厚方向残留応力釣合率が30%以上であれば、従来の倍強度ガラスで懸念される課題を解消することができると言える。
0030
以上の説明に基づき本発明は次の様にまとめることができる。
請求項1は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、
倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下であることを確認する応力差評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0031
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。
従って、請求項1によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0032
請求項2は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、
板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を設置し、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上であることを確認する応力釣合率評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0033
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
従って、請求項2によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0034
請求項3は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップと、
倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下であることを確認する応力差評価ステップと、
板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を設置し、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上であることを確認する応力釣合率評価ステップと、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0035
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。さらに、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
0036
従って、請求項3によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるとともに、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、極めて安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0037
請求項4では、応力差評価ステップで使用する所定の値は、20MN/m2であることを特徴とする。
応力差が、20MN/m2以下であれば、クラックの本数を4本以内にすることができる。
課題を解決するための手段
0038
請求項5では、応力釣合率評価ステップで使用する所定の値は、30%であることを特徴とする。
応力釣合率が、30%以上であれば、発生アイランドの総面積を1000mm2以下にすることができる。
0039
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図6は本発明の第1実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図である。ST××はステップ番号を示す。以下同じ。
ST01:JIS R 3222に基づき、矩形の倍強度ガラスの隅部近傍(合計4点)の表面圧縮応力σ1〜σ4を測定する。
0040
ST02:σ1が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ2が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ3が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ4が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ1〜σ4の一つでも否であれば、不合格と判定し、この評価フローを終える。
0041
ST03:矩形の倍強度ガラスの表面を、格子状に細かく区切り、縦横線の交点での表面圧縮応力σ1〜σmを計測する。計測点は数十〜数百とする。表面圧縮応力は、ST01と同様にJISに基づいて計測する。ST01でのσ1〜σ4と、このステップでのσ1〜σmとは、同時に計測することは差し支えない。
0042
ST04:表面圧縮応力σ1〜σmから最大値σmaxを選出する。この作業は電子計算機を用いることで瞬時に実施することができる。
ST05:表面圧縮応力σ1〜σmから最小値σminを選出する。この作業も電子計算機を用いることで瞬時に実施することができる。
0044
以上をまとめると、第1実施例は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップ(ST01〜ST02)と、
倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下(例えば20MN/m2以下)であることを確認する応力差評価ステップ(ST03〜ST06)と、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0045
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。
従って、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0046
図7は本発明の第2実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図である。
ST11:JIS R 3222に基づき、矩形の倍強度ガラスの隅部近傍(合計4点)の表面圧縮応力σ1〜σ4を測定する。
0047
ST12:σ1が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ2が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ3が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ4が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ1〜σ4の一つでも否であれば、不合格と判定し、この評価フローを終える。
0048
ST13:2枚の偏光板で倍強度ガラスを挟み、光源を用いて板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合を観察する。釣合部分は黒くなり、不釣合部分は白くなるごとくに、光学的に観察することができる。
0049
ST14:倍強度ガラスの不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を配置し、測定枠内の面積をS1、測定枠内の釣合部分の面積をS2とすれば、測定枠内の面積に占める釣合部分の割合は、S2/S1で表すことができる。この釣合部分の割合を、パーセント表示したものを「板厚方向残留応力釣合率」(=100×S2/S1)と呼ぶことにする。(S2/S1)×100が30%以上であるか否かを調べる。
ST14で、否であれば、不合格と判定する。YESであれば合格と判定する。
0050
以上をまとめると、第2実施例は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップ(ST11〜ST12)と、
板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を設置し、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上(例えば30%以上)であることを確認する応力釣合率評価ステップ(ST13〜ST14)と、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0051
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
従って、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0052
図8は本発明の第3実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図である。ST21:JIS R 3222に基づき、矩形の倍強度ガラスの隅部近傍(合計4点)の表面圧縮応力σ1〜σ4を測定する。
0053
ST22:σ1が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ2が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ3が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ4が20〜60MN/m2の範囲内にあるか否かを調べる。σ1〜σ4の一つでも否であれば、不合格と判定し、この評価フローを終える。
0054
ST23:矩形の倍強度ガラスの表面を、格子状に細かく区切り、縦横線の交点での表面圧縮応力σ1〜σmを計測する。計測点は数十〜数百とする。
ST24:表面圧縮応力σ1〜σmから最大値σmaxを選出する。この作業は電子計算機を用いることで瞬時に実施することができる。
0055
ST25:表面圧縮応力σ1〜σmから最小値σminを選出する。この作業も電子計算機を用いることで瞬時に実施することができる。
ST26:応力差(σmax−σmin)が、20MN/m2以下であるか否かを調べる。否であれば不合格と判定する。YESであれば、次に進む。
0056
ST27:2枚の偏光板で倍強度ガラスを挟み、光源を用いて板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合を観察する。釣合部分は黒くなり、不釣合部分は白くなるごとくに、光学的に観察することができる。
0057
ST28:倍強度ガラスの不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を配置し、測定枠内の面積をS1、測定枠内の釣合部分の面積をS2とすれば、測定枠内の面積に占める釣合部分の割合は、S2/S1で表すことができる。この釣合部分の割合を、パーセント表示したものを「板厚方向残留応力釣合率」(=100×S2/S1)と呼ぶことにする。(S2/S1)×100が30%以上であるか否かを調べる。
ST28で、否であれば、不合格と判定する。YESであれば合格と判定する。
0058
以上をまとめると、第3実施例は、倍強度ガラスの表面圧縮応力が日本工業規格JIS R 3222で規定される範囲に収まっていることを確認する応力評価ステップ(ST21〜ST22)と、
倍強度ガラスの全面にわたって計測した表面圧縮応力の最大値と最小値との差が所定の値以下(例えば20MN/m2以下)であることを確認する応力差評価ステップ(ST23〜ST26)と、
板厚方向の圧縮応力と引張応力の釣合部分と不釣合部分とを調べ、不釣合部分が最大となる個所に一辺150mm以上の矩形測定枠を設置し、測定枠内に占める釣合部分の割合が所定の値以上(例えば30%以上)であることを確認する応力釣合率評価ステップ(ST27〜ST28)と、の複数の評価ステップにより評価することを特徴とする。
0059
応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。さらに、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
0060
従って、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるとともに、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、極めて安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0061
尚、図6において応力差評価ステップを実施してから応力評価ステップを実施すること、図7において応力釣合評価ステップを実施してから応力評価ステップを実施することは差し支えない。
また、図8において応力評価ステップ、応力差評価ステップ、応力釣合評価ステップの実行順序は、変更してもよい。
発明を実施するための最良の形態
0062
さらに、請求項1では、応力差評価ステップでの所定の値は、20MN/m2に限定するものではなく、倍強度ガラスの製造方法等の改良、変更に伴って値を設定し直すことは差し支えない。
請求項2でも同様に応力釣合評価ステップでの所定の値は、30%に限定するものではなく、倍強度ガラスの製造方法等の改良、変更に伴って値を設定し直すことは差し支えない。
0063
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、応力評価ステップで規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。
従って、請求項1によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0064
請求項2では、応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
従って、請求項2によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、より安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
0065
請求項3では、応力評価ステップで、規格をクリアーさせる。そして、応力差評価ステップで、クラックの発生本数を実害のでないレベルに抑える。さらに、応力釣合率評価ステップで、アイランドの大きさを実害のでないレベルに抑える。
0066
従って、請求項3によれば、倍強度ガラスに、万一、クラックが入ってもクラックの本数が少ないので、脱落等の実害を最小限度に留めることができるとともに、クラックが入ってもアイランドが発生しても、アイランドが小さいため実害を最小限度に留めることができるため、極めて安全性の高い倍強度ガラスを提供することができる。
発明の効果
0067
請求項4は、応力差評価ステップで使用する所定の値は、20MN/m2であることを特徴とし、応力差が、20MN/m2以下であれば、クラックの本数を4本以内にすることができる。
図面の簡単な説明
0068
請求項5は、応力釣合率評価ステップで使用する所定の値は、30%であることを特徴とし、応力釣合率が、30%以上であれば、発生アイランドの総面積を1000mm2以下にすることができる。
【図1】
表面圧縮応力とNiSの粒径との関係を調べたグラフ
【図2】
クラックの入り方の例を示す図
【図3】
応力差とクラックの関係を調べたグラフ
【図4】
光学的観察とアイランドとの関係を調べたときの一例を示す図
【図5】
板厚方向残留応力釣合率とアイランドの総面積との関係を示すグラフ
【図6】
本発明の第1実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図
【図7】
本発明の第2実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図
【図8】
本発明の第3実施例に係る倍強度ガラスの評価方法のフロー図
【図9】
従来のガラス板の破損形状図
【符号の説明】
10、20、30、40、50、111…倍強度ガラス、12、22、23、32、33、34、44、54、103、113…クラック、35、45、115…アイランド、46…矩形測定枠(測定枠)、41…不釣合部分、42、52…釣合部分。