図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
概要
高い酸素透過性能を有し、昇降温時に急激な体積変化を生じない混合伝導性複合酸化物およびその製造方法、この混合伝導性複合酸化物を用いた酸素製造方法およびガス改質方法を提供する。ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(1)式で表される混合伝導性複合酸化物を分離膜として用いることにより酸素製造を行い、また、これを隔膜リアクターとして用いることによりガス改質を行う。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(1)(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
目的
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高い酸素透過性能を有し、昇降温時に急激な体積変化を生じない混合伝導性複合酸化物およびその製造方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(1)式で表されることを特徴とする混合伝導性複合酸化物。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(1)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
請求項2
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(2)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系であることを特徴とする混合伝導性複合酸化物。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(2)(ただし、0.4≦x≦0.8、0.2≦y≦0.7)
請求項3
さらに開気孔率が1%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混合伝導性複合酸化物。
請求項4
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(3)式で表される複合酸化物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下とすることを特徴とする混合伝導性複合酸化物の製造方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(3)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
請求項5
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(4)式で表される混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(4)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
請求項6
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(5)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系である混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(5)(ただし、0.4≦x≦0.8、0.2≦y≦0.7)
請求項7
前記混合伝導性複合酸化物の開気孔率が1%以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の酸素製造方法。
請求項8
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を以下の(6)式に示す構成比率で含有する化合物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下として得られた混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(6)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
請求項9
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(7)式で表される混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(7)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
請求項10
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(8)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系である混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(8)(ただし、0.4≦x≦0.8、0.2≦y≦0.7)
請求項11
前記混合伝導性複合酸化物の開気孔率が1%以下であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のガス改質方法。
請求項12
ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を以下の(9)式に示す構成比率で含有する化合物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下として得られた混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法。Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y…(9)(ただし、0.1≦x≦0.9、0.2≦y≦0.7)
技術分野
0002
空気のような酸素含有ガスから酸素成分のみを選択的に輸送する物質として、混合伝導性複合酸化物が広く知られている。ここで、混合伝導性複合酸化物とは、電子または正孔を伝導すると同時に、酸素イオン(酸化物イオンともいう)も伝導する酸化物のことである。このような混合伝導性複合酸化物は、例えば、セメント、製鉄、ガラス等の高温高熱を要する工場で、熱効率を高めるために使用する酸素を製造する酸素製造装置の分離膜や、酸素富化空気の製造に用いられるガス改質装置の隔膜リアクターとして用いることができる。
0003
混合伝導性複合酸化物を利用して選択的酸素輸送を工業的に行うには、その操業条件における酸素イオン導電率として、大略0.1S/cm以上が必要であり、好ましくは 0.5S/cm以上、最も好ましくは1S/cm以上である。また、電子導電率としては、それらと同程度ないしそれ以上の値を有することが必要である。すなわち、本発明が対象とする混合伝導性複合酸化物とは、電子導電率および酸素イオン導電率が操業条件において、共に、大略0.1S/cm以上である酸化物を指す。
0004
この定義を満足する混合伝導性複合酸化物として、古くは、LaxSr1−xCoO3−aやLa1−xSrxCo1−yFeyO3−zといったペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、最近では、代表的組成がSr4Fe6−xCoxOz(13−δ≦z≦13+δ)で表され、主結晶相の一つが少なくとも室温付近ではSr4Fe6O13化合物と同じ層状ペロブスカイト型または非ペロブスカイト型の結晶構造であって、大気中において10〜30S/cm(800〜950℃)程度の電子導電率を有する酸化物が発明されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
0005
さらに、La1−xSrxCo1−yFeyO3の組成においては、xおよびyを0〜1.0で変化させた結果、SrCoO2.5を除けば、xが大きく、かつ、yが小さな組成、例えば、SrCo0.8Fe0.2O3とすることにより良好な酸素透過能が得られている(例えば、非特許文献1参照)。さらにまた、Sr,Coリッチ組成域でのLa−Sr−Co−Fe系ペロブスカイトにおいてはAサイトにLaを含むことで低温での酸素透過能が向上することから、La−Sr−Co−Feの4成分からなり、かつ、SrとCoの組成が可能な限り高い酸化物、例えばLa0.1Sr0.9Co0.9Fe0.1O3組成とすることによって、良好な酸素透過能が得られている(例えば、非特許文献2参照)。
0006
さらにまた、先に、発明者らは、La−Sr−Co−Fe系ペロブスカイトにおいて、そのAサイト(La、Srのサイト)をBaとすることにより、高い酸素透過性能を示すBa−Co−Fe系の混合伝導性複合酸化物を見出し、これを酸素製造用分離膜や隔膜リアクターへ適用した場合に、実際に高い酸素透過率を有するためのこれら混合導電性酸化物の組成および焼結体の状態、緻密質な焼結体を得るための焼成温度等の制御等についてした発明を開示した(例えば、特許文献5,6参照)。
背景技術
0007
【特許文献1】
特開昭56−92103号公報(第5頁〜第7頁)
【特許文献2】
特開昭61−21717号公報(第3頁〜第7頁)
【特許文献3】
米国特許第5356728号明細書(第10段26行〜41行)
【特許文献4】
米国特許第5580497号明細書(第19段28行〜60行)
【特許文献5】
特開2003−0603808号公報(第35段落〜第51段落)
【特許文献6】
特開2003−0603828号公報(第21段落〜第24段落)
【非特許文献1】
寺岡ら、日本化学会誌、vol.1988、No.7、p1084−1089、1988年
【非特許文献2】
寺岡ら、電気化学会第68回大会予稿集、1J26、pp175、2001年4月1〜3日
0008
しかしながら、Ba−Co−Fe系の混合伝導性複合酸化物は、約800℃〜910℃付近で酸素の吸放出による急激な体積変化を起こす。このために、Ba−Co−Fe系の混合伝導性複合酸化物の焼結体や成膜体を、例えば、酸素分離用としてこの温度域を跨いで昇降温して用いた場合には、昇降温時の体積変化によって焼結体等にクラックが生じて、このクラックを酸素を分離する前の処理ガス全体が通り抜けてしまい、高純度の酸素を得ることができなくなるという問題を生ずる。
発明が解決しようとする課題
0009
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高い酸素透過性能を有し、昇降温時に急激な体積変化を生じない混合伝導性複合酸化物およびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、この混合伝導性複合酸化物を用いた酸素製造方法およびガス改質方法を提供することを目的とする。
0010
本発明の第1の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(1)式で表されることを特徴とする混合伝導性複合酸化物、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(1)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0011
本発明の第2の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(2)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系であることを特徴とする混合伝導性複合酸化物、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(2)
(ただし、0.4≦x≦0.8 、0.2≦y≦0.7 )
0012
本発明の第3の観点によれば、このようなSr−Ba−Co−Fe系混合伝導性複合酸化物の製造方法、すなわち、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(3)式で表される複合酸化物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下とすることを特徴とする混合伝導性複合酸化物の製造方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(3)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0013
本発明に係る混合伝導性複合酸化物の開気孔率は、酸素分離用等の高い酸素選択性が必要とされる用途においては、1%以下とすることが好ましい。開気孔率が1%超の場合には酸素分離前の処理ガスのリークが生じ、酸素透過選択性が低下するおそれがある。
0014
本発明によれば、上記混合伝導性複合酸化物を用いた酸素製造方法が提供される。すなわち本発明の第4の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(4)式で表される混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(4)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0015
本発明の第5の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(5)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系である混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(5)
(ただし、0.4≦x≦0.8 、0.2≦y≦0.7 )
ここで、第4および第5の観点に係る酸素製造方法において用いられる混合伝導性複合酸化物の開気孔率は1%以下であることが好ましい。
0016
本発明の第6の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を以下の(6)式に示す構成比率で含有する化合物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下として得られた混合伝導性複合酸化物を酸素製造用分離膜として用いて酸素を製造することを特徴とする酸素製造方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(6)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0017
本発明によれば、また、上記混合伝導性複合酸化物を用いたガス改質方法が提供される。すなわち、本発明の第7の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(7)式で表される混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(7)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0018
本発明の第8の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(8)式で表され、かつ、結晶系が立方晶系である混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(8)
(ただし、0.4≦x≦0.8 、0.2≦y≦0.7 )
ここで、第7および第8の観点に係るガス改質方法において用いられる混合伝導性複合酸化物の開気孔率は1%以下であることが好ましい。
0019
本発明の第9の観点によれば、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を以下の(9)式に示す構成比率で含有する化合物を、1000℃〜1200℃で1〜10時間、大気中で熱処理し、かつ、前記熱処理の昇温速度および降温速度を50℃/時間以下として得られた混合伝導性複合酸化物を隔膜リアクターとして用いてガスを改質することを特徴とするガス改質方法、が提供される。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(9)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
課題を解決するための手段
0020
このような酸素製造方法およびガス改質方法によれば、高い効率で所望の組成を有するガスを製造することができる。
0021
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の混合伝導性複合酸化物は、ストロンチウム、バリウム、コバルトおよび鉄を主成分とし、それら成分元素のモル比が下記(1)式で表される組成を有する。
Sr:Ba:Co:Fe=x:1−x:1−y:y …(1)
(ただし、0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )
0022
式(1)を具体的に化学式で示せば、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zとなる。このSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zは、ペロブスカイト型構造を示す一般式ABO3のAサイトにSrとBaが位置し、BサイトにCoとFeが位置している構造を有する。AサイトのSrによるBaの置換量xは0.1≦x≦0.9の範囲とする。また、CoのFeによる置換量は0.2≦y≦0.7の範囲とする。このような組成とすることにより、昇降温時の急激な酸素の吸放出と、これに伴う急激な体積変化が起こり難くなり、昇降温時の亀裂の発生が抑えられる。特に0.4≦x≦0.8の場合には、昇降温時の急激な酸素の吸放出と、これに伴う急激な体積変化がさらに抑えられるとともに、x=0の場合と同等以上の酸素透過性能が得られる。
0023
これに対して、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zでは、x>0.9の場合に酸素透過性能が低下し、x<0.1の場合には昇降温時の酸素の吸放出が急激に起こるようになって、これに伴う急激な体積変化によって、その焼結体等では亀裂が発生しやすくなるという問題が生ずる。また、y<0.2の場合と0.7<yの場合には、酸化イオンまたは酸素欠陥の移動が生じにくくなるために酸素透過率が低下するという問題が生じる。
0024
なおSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの室温での粉末X線回折による結晶系の同定では、0.4≦x≦0.8の場合には立方晶系であり、x<0.4では立方晶系に六方晶系が混在した系となり、さらにx<0.1では六方晶系が主となっていることが確認された。このことから、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zにおいては、六方晶系の結晶相が酸素の急激な吸放出に大きく関与しているものと考えられる。
0025
SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの焼結体や成膜体を酸素分離膜や隔膜として用いる場合には、その開気孔率は1%以下であることが好ましい。これは、開気孔率が1%超の場合には、酸素分離前の処理ガスのリークが生じて酸素透過選択性が低下する問題を生ずるおそれがあるからである。
0026
次に、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−z(0.1≦x≦0.9 、0.2≦y≦0.7 )の製造方法について説明する。この混合伝導性複合酸化物は、基本的には、熱処理を含む方法により調製することができる。その方法の1つは、仮焼や焼結等の熱処理過程で酸化物に転換し得る、ストロンチウム、バリウム、コバルト、鉄のそれぞれの金属原子を含む化合物、例えば、酸化ストロンチウムや酸化バリウム、酸化コバルト、酸化鉄のような酸化物、または硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、または酢酸塩や蓚酸塩などの有機酸塩、あるいは塩化物や臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物、さらに水酸化物、オキシハロゲン化物等を所望の割合で混合し、熱処理を行う方法である。
0027
また、金属塩の混合水溶液を、アンモニア水などのアルカリ水溶液で加水分解する、いわゆる共沈法により得た沈殿物に熱処理を施して、所望の複合酸化物を得てもよい。さらに、それぞれの金属の混合物または合金を熱処理して酸化してもよい。
0028
このSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの仮焼が終了した段階では、結晶の70%以上が六方晶となっていることが望ましい。これは、六方晶が70%未満であり、残りが原料粉末かまたは焼成が進んだ立方晶となった場合には、焼結が阻害されるためである。仮焼の好ましい条件は、大気中、850℃〜1050℃で、6〜24時間保持する条件である。例えば、950℃で12時間保持することにより、結晶の70%以上が六方晶となっている仮焼粉末を得ることができる。得られた仮焼粉は、公知の粉砕方法を用いて所定の粒径に調整される。
0029
SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの焼結では、その結晶系が主に立方晶となるように、処理温度および処理時間を選択する。好ましくは、大気中、1000℃〜1200℃で、1〜10時間保持する。例えば、1100℃で6時間保持することにより、その殆どを立方晶とすることができる。このような焼結は、一般的には、得られた仮焼粉を板状等に一軸プレス成形法や冷間静水圧成形法等によりプレス成形し、またはドクターブレード法等により自立膜を成形し、または押出成形法や射出成形法等によりチューブ状の成形体を成形し、あるいはスクリーン印刷法やスラリーコーティング法によって多孔質支持体の表面に塗布膜を形成し、これら成形体を所定の条件で焼成することによって行われる。このような成形体の焼成時には昇温速度および降温速度をそれぞれ50℃/時間以下とすることが好ましい。これは、昇温速度と降温速度を50℃/時間とすると、焼成体から酸素が急に吸排出され、焼成体に亀裂が発生しやすくなるからである。
0030
プレス成形等により焼結体を作製した場合には、必要に応じてスライス加工や研削加工を行うことによって所望の厚さの自立膜を作製することができる。また、膜を多孔質支持体の表面に形成する場合には、例えば、形成する膜と同じ組成を有する多孔質支持体、または、形成する膜と反応してスピネルのような複合酸化物を形成せず、かつ熱膨張係数がほぼ等しい材料からなる多孔質支持体が好適に用いられる。このような多孔質支持体は、適度な機械的強度とガス拡散係数が得られるように、その厚み、気孔率、気孔径等を制御して作製される。
0031
なお、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zのその他の成形方法としては、スパッタ法や溶射法が挙げられる。スパッタ法では、仮焼粉をプレス成形等して焼成して得られた焼結体をターゲットとして用いることができる。また、溶射法では、仮焼粉を直接に溶射原料として用いてもよいし、仮焼粉をプレス成形等して焼成して得られた焼結体を再粉砕して用いてもよい。
0032
このようにして作製されたSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの緻密質膜を用いて、例えば、酸素混合気体の1つである空気から酸素を分離する基本的な方法は、この緻密質膜の両側に気密室を設け、一方の室に空気を供給し、その酸素分圧よりも他室の酸素分圧が低くなるように両室の圧力条件を設定する方法である。例えば、空気が供給される気密室(以下「空気室」という)を常圧または加圧状態として他室を減圧としたり、または空気室を常圧として他室を窒素ガス等で置換して酸素分圧を下げた状態とする等すればよい。これにより空気室から低酸素分圧側の他室にSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの緻密質膜を通して純度の高い酸素が移動し、この他室側で酸素を取り出すことができる。
0033
このようにしてSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの緻密質膜を複合酸化物を酸素分離用として使用する温度は、通常400℃〜1200℃、好ましくは500〜1000℃である。なお緻密質膜の表面に酸素分離を促進する触媒を付与してもよい。この触媒としては、白金、パラジウム、金、銀、ビスマス、バリウム、バナジウム、モリブデン、セリウム、ルテニウム、マンガン、コバルト、ロジウム、プラセオジウムなどの金属または金属酸化物が挙げられる。
0034
次に、上述した酸素分離の原理を用いた酸素製造方法およびガス改質方法を実施する電力併産型のシステムについて説明する。図1は電力併産型のシステムの概要を示す系統図である。原料空気1は前処理装置2に送られ、除塵、除水などされた後、空気圧縮機3により昇圧され、昇圧された圧縮空気4は熱交換器5により昇温され、酸素製造装置7に送り込まれる。酸素製造装置7に送り込まれた昇温された空気6は、酸素製造装置7の内部に設置されたSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zからなる分離膜(以下、単に「分離膜」という)により高濃度酸素8と高濃度窒素(排ガス)11とに分離される。
0035
分離された高濃度酸素8は、熱交換器9に送り込まれ、酸素圧縮機10により圧縮され、昇圧機12を通過後、溶融還元炉、酸素高炉、スクラップ溶解炉などの酸素消費設備13に送られ、消費される。また、昇圧機12および熱交換器9を通過した高濃度酸素15は、SrxBa1−xCo1−yFeyO3−zからなる隔膜リアクター(以下、単に「隔膜リアクター」という)を有するガス改質装置23に送り込まれ、メタンなどの改質ガス用原料22の改質用ガスとして使用される。ガス改質装置23では、改質ガス用原料22が高濃度酸素15により改質されて改質ガス24となり、その際の排ガス25はガス改質装置23外へ排出される。
0036
酸素消費設備13で発生する一酸化炭素、水素などの副生ガス14は、ガスタービン19に送り込まれ、そこで昇圧された排ガス26は高圧燃焼機16に送られ、圧縮空気4の一部によって燃焼させガスタービン17を駆動する。ガスタービン17および19の駆動力は空気圧縮機3および酸素圧縮機10に伝えられるとともに、ガス圧縮機20にも伝えられ、ガス圧縮機20で生じた電気21は発電プラントに送られる。
0037
酸素製造装置7の分離膜またはガス改質装置23の隔膜リアクターとして用いられるSrxBa1−xCo1−yFeyO3−zの膜厚は、数十μmから数百μm、例えば、10μm〜500μmとすることが望ましい。これは、これ以上に膜厚が薄い場合には、この膜が自立膜である場合にはいうまでもなく、この膜を多孔質支持体上に形成した場合であっても機械的強度が不足し、膜の前後の圧力差に耐えられないおそれがあるからであり、逆に、これ以上に膜厚が厚い場合には、酸素透過速度の大幅な低下をきたすためである。
0038
分離膜や隔膜リアクターに用いられる隔膜(以下「分離膜等」という)の膜面積は必要酸素量により適宜決められる。供給ガスと分離膜等との接触面積を大きくするために、分離膜等の表面に凸凹をつけることにより、分離膜等の専有面積を小さくすることができる。分離膜等の形状としては、平面膜あるいはチューブ状多孔質支持体の外表面に分離膜等を形成させたシェルチューブ構造等があり、使用目的に応じてその形状を選択することができる。
0039
次に、酸素製造装置7についてより詳細に説明する。図2は、酸素製造装置7内に設けられた空気分離ユニットを示す模式図である。空気分離ボックス29にはタンマン型チューブ30が設置されており、このタンマン型チューブ30は、図3の断面図に示すように、一端が閉じられた薄肉円筒状の多孔質支持体37の外表面に薄膜状の分離膜36が形成された構造を有している。空気分離ボックス29に設けられた原料空気取り入れ口28から昇圧された高温原料空気27が空気分離ボックス29内に送り込まれ、酸素35のみがタンマン型チューブ30の外表面から内部に透過し、酸素回収ボックス33を通り、酸素取り出し口34から回収される。一方、酸素貧化空気32は排ガス排出口31から系外に排出される。
0040
空気分離ボックス29内には、タンマン型チューブ30の補強のために、支持板等を設けることができ、また、原料空気27を効率良くタンマン型チューブ30の表面に送り込むためにガス流れを制御するための整流板を設けることもできる。また、この整流板が支持板を兼ねる構成とすることもできる。
0041
図2に示した空気分離ユニットは、製造酸素量により複数個組み合わせることができ、空気分離ボックス29内のタンマン型チューブ30の数や長さ等は目的用途に応じて変わり得るものである。なお、図3に示した分離膜36の形態はあくまで例示であり、これに限定されるものではない。
0042
次に、ガス改質装置23についてより詳細に説明する。図4は、ガス改質装置23内に設けられたガス改質ユニットを示す模式図である。ガス改質ボックス43には隔膜リアクターとして機能するストレート型チューブ44が設けられており、このストレート型チューブ44は、図5の断面図に示すように、両端が開口した薄肉円筒状の多孔質支持体51の外表面に薄膜状の隔膜50が形成された構造を有している。
0043
ガス改質ボックス43に設けられた改質用原料ガス取り入れ口39から昇圧された改質原料ガス38が改質用原料ガスボックス40を介してガス改質ボックス43内に送り込まれ、かつ酸素取り入れ口41から酸素42がガス改質ボックス43内に送り込まれる。そして、酸素42のみがストレート型チューブ44の外表面から内部に透過し、ストレート型チューブ44の内部に送り込まれた改質用ガス38を酸化する。酸化された改質ガス47は改質ガス回収ボックス45で集約され、改質ガス取り出し口46から回収される。一方、余剰の酸素49は、酸素排出口48から系外に排出される。
0044
図4に示したガス改質ユニットは、改質ガス量により複数個組み合わせることができ、ガス改質装置内のガス改質ユニットの数は任意である。また、ガス改質ボックス43内のストレート型チューブ44の数や長さ等は目的用途に応じて変わり得るものである。さらに、ガス改質ボックス43内には、ストレート型チューブ44の補強のために支持板等を設けることができ、酸素42をストレート型チューブ44の表面に送り込むためにガス流れを制御するための整流板を設けることもできる。ここで、この整流板が支持板を兼ねる構成とすることもできる。なお、図5に示した隔膜50の形態はあくまで例示であり、これに限定されるものではない。
0045
【実施例】
以下、本発明の実施例について比較例とともに説明する。
0046
(実施例1〜3)
炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酸化コバルト、酸化鉄を、その金属成分のモル比が表1に示す値となるように秤量し、これらを分散溶媒としてエタノールを用いたボールミル処理によって混合した後、エバポレータにより乾燥した。次に、得られた混合粉末を大気中、950℃で10時間仮焼した。こうして得られた仮焼粉を直径30mm、厚さ3mmのディスク状にプレス成形し、この成形体を、大気中、1100℃で5時間焼成した。このときの昇降温速度は、実施例1では20℃/時間とし、実施例2と実施例3では10℃/時間とした。
0047
こうして得られた実施例1〜実施例3のそれぞれの焼結体に亀裂は認められなかった。また、これらの焼結体の開気孔率を水中アルキメデス法により測定した。その結果、開気孔率はともに0.1%であり、焼結体が緻密化していることが確認された。さらに、これらの焼結体の結晶相を粉末X線回折法により調べたところ、実施例1の焼結体では立方晶のみが認められ、実施例2と実施例3の焼結体では、僅かに六方晶の存在が認められたが、主に立方晶であることが確認された。
0048
実施例1〜3の焼結体を、外径が20mm、厚さが0.5mmとなるように加工し、酸素透過性能評価装置を用いて酸素透過性能を評価した。まず、加工されたディスクをムライト管の上面に、純銀製リングを用いてこれを溶融、固化させることによって、ムライト管の端面をディスクで封止し、次に、こうしてディスクが取り付けられたムライト管を測定温度である900℃まで降温して、ディスク表面(ムライト管の外側)に原料ガスとして純空気(O2:21.05%、N2:78.95%)を20ml/分で供給した。また、ディスク表面(ムライト管の内側)にパージガスとしてヘリウム(He)を20ml/分で供給した。原料空気から分離され、ディスク内を透過した酸素は、パージガスと混合されるために、ムライト管から排出されるガスをガスクロマトグラフィー(GC−TCD)によって分析することにより、その検出酸素量からディスクの酸素透過能を算出した。さらにN2濃度を検出することにより、ディスクの亀裂発生や融着不良等による空気のリークの有無を確認した。この測定は、測定温度(900℃)で約30分間保持した後、約10分間隔で4回行った。
0049
表1に示されるように、実施例1と実施例3では5cm3・min−1・cm−2、実施例2では6cm3・min−1・cm−2という高い酸素透過性能が得られ、空気のリーク、つまりN2のリークは観察されなかった。
0050
(比較例1〜6)
各試料の組成は表1に示す通りであり、その作製方法は実施例の場合に準ずる。比較例1ではBaをSrで置換しなかったために、焼結体に亀裂が発生した。比較例2では焼結温度が低かったために緻密化が促進されず、これによって酸素透過性能の評価を行うことは不可能であった。比較例3では、得られた焼結体に亀裂が発生していた。これは、焼成時の昇温速度および降温速度を100℃/時間としたために、焼結体からの急激な酸素の吸排出が起こったためと考えられる。比較例4では焼成温度を1300℃としたために焼結体が溶融した。比較例5では、y値を0.1としたために酸素透過性能が低下し、比較例6ではy値を0.8としたために酸素透過性能が低下した。
0051
【表1】
発明を実施するための最良の形態
0052
(熱重量分析結果)
実施例1と比較例1のディスクを破砕し、この破砕片を用いて熱重量分析を行った結果を図6に示す。この熱重量分析は、熱天秤を用いて、リファレンスにアルミナ(Al2O3)を使用し、昇温速度および降温速度を25℃/分として行っている。図6から明らかなように、比較例1では昇温時に約910℃で酸素の放出による急激な重量減少が生じ、逆に、降温時には約810℃で酸素の吸収による急激な重量増加が起きていることがわかる。比較例1では、このような重量変化が生ずる際に体積が大きく変化する。これに対して、実施例1では昇温時の重量減少と降温時の重量増加がなだらかに起こっていることがわかり、急激な酸素の吸放出による体積変化が生じ難くなっていることが確認された。
図面の簡単な説明
0053
以上説明したように、本発明の混合伝導性複合酸化物は、高い酸素透過性能を有し、しかも昇降温時に急激な体積変化を生じないために、耐久性に優れた高性能の酸素製造用分離膜や隔膜リアクター等を実現することができる。また、本発明は、このような酸素製造用分離膜および隔膜リアクターを用いて酸素製造およびガス改質を行うことにより、高効率で酸素の製造およびガスの改質を行うことができる。
【図1】
本発明に係る酸素製造方法およびガス改質方法を実施可能な電力併産型のシステムの概要を示す系統図。
【図2】
図1の酸素製造装置内に設けられる空気分離ユニットの模式図。
【図3】
図2の空気分離ユニットに用いられるタンマン型チューブの概略断面図。
【図4】
図1のガス改質装置内に設けられるガス改質ユニットの模式図。
【図5】
図4のガス改質ユニットに用いられるストレート型チューブの概略断面図。
【図6】
実施例1および比較例1の試料の熱重量分析曲線を示すグラフ。
【符号の説明】
7;酸素製造装置
23;ガス改質装置
29;空気分離ボックス
30;タンマン型チューブ
36;分離膜
37;多孔質支持体
43;ガス改質ボックス
44;ストレート型チューブ
50;隔膜
51;多孔質支持体
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成