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技術 放熱性及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装体、並びに電子機器部品

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 渡瀬岳史平野康雄山本哲也奥村和生
出願日 2004年7月23日 (16年4ヶ月経過) 出願番号 2004-216376
公開日 2005年1月6日 (15年10ヶ月経過) 公開番号 2005-001393
状態 特許登録済
技術分野 塗料、除去剤 積層体(2) 流動性材料の適用方法、塗布方法
主要キーワード 赤外線放出量 箱内温度 混合度合 積分放射率 長尺金属 照射率 シリコンラバーヒーター 分光放射強度
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課題

電子機器部材に要求される本来の特性(防水防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化をも達成し得、更には、当該塗装体自体の温度上昇を抑える特性にも優れた電子機器部材用塗装体を提供する。

解決手段

本発明の電子機器部材用塗装体は、基板表裏面に塗膜被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、 該塗装体を100℃に加熱したときの赤外線波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(4)及び(5)を満足する(但し、a×b≧0.42を除く)。 b≦0.9(a−0.05) … (4) (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… (5) a:表面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率b:裏面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率

概要

背景

近年、電子電気光学機器等の高性能化・小型化に伴い、電子機器等のシャーシ内部における発熱量が増大(高温化)し、高熱化する等の問題が生じている(電子機器内部の高熱化)。電子機器の内部温度は通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高で100℃程度の高温になることがあるが、そうすると、IC、CPU(半導体素子)、ディスクモーター等の耐熱温度を超える為、安定操業に支障をもたらすことが指摘されている。更に温度が上昇すると半導体素子が壊れて故障する等し、電子機器部品寿命が低下するといった問題を抱えている。

そこで、電子機器の内部温度を低減化(放熱化)させる為の放熱手段として、電子機器の筺体(筺体本体、フレームシールドケース液晶等のバックパネル等)に、ヒートシンクヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法が提案されている。しかしながら、この方法では、電子機器内部の熱源発熱体)から放出される熱を、せいぜい、筺体内全体へ拡散させる程度の効果しか得られず、特に筺体の容積が小さい場合、所望の放熱効果が得られない。更に、当該放熱部品の取り付けに手間がかかり、設置場所別途確保しなければならない、コストが高くつくといった不利不便がある等、小型化・低廉化が進む電子機器用途に適用するには不適切である。

また、電子機器の筺体に金属板塗装体)を用い、この金属板に穴をあけてファンを取り付け、対流を利用して放熱させる方法も提案されている。しかしながら、一般に電子機器は水や埃に弱い為、用途によっては適用が困難である他、前述したヒートシンク等の場合と同様、部品のコスト増、取り付けの手間及び取り付け場所の確保等の点で問題がある。

従って、電子機器に要求される本来の特性(防水防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規電子機器部材用筺体の提供が切望されている。

一方、電子機器の筺体には、上述した放熱特性に加え、当該筺体自体の温度上昇を抑えることも要求されている。これにより、電子機器製品稼動中に、消費者が当該筺体に触れてやけど等する危険を防止でき、安全な製品を提供できるからである。この「電子機器の筺体自体の温度上昇を抑える特性」を、前述した「放熱性」と区別する目的で、本発明では特に、「自己冷却性」と呼ぶ。これらの両特性に優れた筺体を得るに当たり、前述した放熱対策(ヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法や、金属板に穴をあけてファンを取り付ける方法等)を採用したのでは、やはり、同様の問題が見られる。従って、これらの両特性を備えた筺体の提供も切望されている。

加えて、基板側に着目すると、従来は、耐食性塗膜密着性等の観点から、基板にクロメート処理が施されているが、有害な6価クロムを多量使用することから環境汚染の問題が深刻化している。そこで、有害なクロメート処理に代わり、クロムフリーノンクロメート処理への対応が要請されている。しかしながら、クロメート処理を施さない場合には、耐食性や塗膜密着性、更には加工性も劣ることが知られている。従って、クロメート処理を施さなくとも、耐食性、塗膜密着性、更には加工性にも優れたクロムフリーの塗装体であって、しかも前述した放熱性、更には自己冷却性にも優れた電子機器部材用筺体の提供が切望されている。

概要

電子機器部材に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化をも達成し得、更には、当該塗装体自体の温度上昇を抑える特性にも優れた電子機器部材用塗装体を提供する。 本発明の電子機器部材用塗装体は、基板の表裏面に塗膜被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、 該塗装体を100℃に加熱したときの赤外線波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(4)及び(5)を満足する(但し、a×b≧0.42を除く)。 b≦0.9(a−0.05) … (4) (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… (5) a:表面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率b:裏面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率

目的

本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、電子機器の筺体として使用される塗装体であって、電子機器部材に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規な塗装体;更には、当該塗装体自体の温度上昇を抑える特性(自己冷却性)にも優れた電子機器部材用塗装体;更には、耐食性及び塗膜密着性に優れており、加工性も良好なクロムフリーの電子機器部材用塗装体;この様な優れた特性を兼ね備えた塗装体で被覆された電子機器部品;クロムフリー系下地処理の施された基板に適用される塗料組成物であって、放熱性、耐食性、塗膜密着性、及び加工性に優れた塗料組成物;及び被験体の放熱性を評価する為の放熱性評価装置を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
2件

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請求項1

基板表裏面に塗膜被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、該塗装体を100℃に加熱したときの赤外線波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(4)及び(5)を満足する(但し、a×b≧0.42を除く)ことを特徴とする放熱性及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装体。b≦0.9(a−0.05)…(4)(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08…(5)a:表面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率b:裏面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率

請求項2

前記放熱塗膜は、放熱性添加剤として、少なくとも酸化チタンを50〜70質量%含有し、膜厚25〜30μmを満足するものである請求項1に記載の塗装体。

請求項3

基板の表裏面に塗膜が被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、前記放熱塗膜は黒色の放熱性添加剤を含有しており、且つ、下式(6)を満足することを特徴とする放熱性及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装体。(X−3)×(Y−0.5)≧3…(6)式中、Xは放熱塗膜に含まれる黒色の放熱性添加剤の含有量(質量%)を、Yは放熱塗膜厚さ(μm)を、夫々、意味する。

請求項4

更に、下式(7)を満足するものである請求項3に記載の塗装体。4≦X<15…(7)式中、Xは放熱塗膜に含まれる黒色の放熱性添加剤の含有量(質量%)を意味する。

請求項5

更に、放熱塗膜厚さY>1μmを満足するものである請求項3または4に記載の塗装体。

請求項6

前記黒色の放熱性添加剤の平均粒径は5〜100nmである請求項3〜5のいずれかに記載の塗装体。

請求項7

前記黒色の放熱性添加剤はカーボンブラックである請求項3〜6のいずれかに記載の塗装体。

請求項8

前記放熱塗膜を形成する樹脂は、非親水性樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の塗装体。

請求項9

前記非親水性樹脂は、ポリエステル系樹脂である請求項8に記載の塗装体。

請求項10

前記放熱塗膜に、クリアー塗膜が被覆されることにより耐疵付き性及び耐指紋性が高められたものである請求項1〜9のいずれかに記載の塗装体。

請求項11

前記基盤は、クロムフリー下地処理がなされた金属板であり、且つ、放熱塗膜は、更に防錆剤を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の塗装体。

請求項12

電子機器部品筐体として使用されるものである請求項1〜11のいずれかに記載の塗装体。

請求項13

請求項1〜12のいずれかに記載の塗装体に用いられる塗料組成物であって、塗膜形成成分に対し、黒色添加剤を3質量%超含有し、導電性フィラーを含有しないものであることを特徴とする電子機器部品用塗料組成物。

請求項14

前記黒色の放熱性添加剤の平均粒径は5〜100nmである請求項13に記載の組成物

請求項15

前記黒色の放熱性添加剤はカーボンブラックである請求項13または14に記載の組成物。

請求項16

請求項11に記載の塗装体に用いられる塗料組成物であって、塗膜形成成分に対し、エポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体骨格に導入したポリエステル系樹脂を35質量%以上、防錆剤を2〜25質量%、架橋剤を1〜20質量%、及び黒色添加剤を3質量%超含有し、導電性フィラーを含有しないものであることを特徴とする電子機器部品用塗料組成物。

請求項17

前記架橋剤は、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、メラミン系樹脂を5〜80質量部の比率で含有するものである請求項16に記載の組成物。

請求項18

前記黒色添加剤の平均粒径は5〜100nmである請求項16または17に記載の組成物。

請求項19

前記黒色添加剤はカーボンブラックである請求項16〜18のいずれかに記載の組成物。

請求項20

閉じられた空間に発熱体内臓する電子機器部品であって、該電子機器部品は、その外壁の全面または一部が請求項1〜11のいずれかに記載の電子機器部材用塗装体で構成されていることを特徴とする電子機器部品。

技術分野

0001

本発明は、電子電気光学機器(以下、電子機器で代表させる場合がある)等の筺体として有用な、放熱性及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装体;これらの特性に優れた電子機器部品;及びこれらの特性に優れた塗装体を形成するのに有用な塗料組成物に関するものである。本発明の塗装体は、放熱特性及び自己冷却性に極めて優れており、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録分野;パソコンカーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連分野等に好適であり、更にプロジェクターテレビビデオゲーム機等のAV機器コピー機プリンター等の複写機エアコン室外機等の電源ボックスカバー制御ボックスカバー自動販売機冷蔵庫等、種々の電子機器部材用筺体として用いることができる。更に本発明の塗装体は、有害な6価クロムを一切含まないクロムフリー塗装体としても使用することができ、しかもクロメート処理鋼板匹敵する耐食性及び塗膜密着性を有し、更には良好な加工性も兼ね備えたクロムフリー塗装体を提供できる点で、極めて有用である。

背景技術

0002

近年、電子・電気・光学機器等の高性能化・小型化に伴い、電子機器等のシャーシ内部における発熱量が増大(高温化)し、高熱化する等の問題が生じている(電子機器内部の高熱化)。電子機器の内部温度は通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高で100℃程度の高温になることがあるが、そうすると、IC、CPU(半導体素子)、ディスクモーター等の耐熱温度を超える為、安定操業に支障をもたらすことが指摘されている。更に温度が上昇すると半導体素子が壊れて故障する等し、電子機器部品の寿命が低下するといった問題を抱えている。

0003

そこで、電子機器の内部温度を低減化(放熱化)させる為の放熱手段として、電子機器の筺体(筺体本体、フレームシールドケース液晶等のバックパネル等)に、ヒートシンクヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法が提案されている。しかしながら、この方法では、電子機器内部の熱源発熱体)から放出される熱を、せいぜい、筺体内全体へ拡散させる程度の効果しか得られず、特に筺体の容積が小さい場合、所望の放熱効果が得られない。更に、当該放熱部品の取り付けに手間がかかり、設置場所別途確保しなければならない、コストが高くつくといった不利不便がある等、小型化・低廉化が進む電子機器用途に適用するには不適切である。

0004

また、電子機器の筺体に金属板(塗装体)を用い、この金属板に穴をあけてファンを取り付け、対流を利用して放熱させる方法も提案されている。しかしながら、一般に電子機器は水や埃に弱い為、用途によっては適用が困難である他、前述したヒートシンク等の場合と同様、部品のコスト増、取り付けの手間及び取り付け場所の確保等の点で問題がある。

0005

従って、電子機器に要求される本来の特性(防水防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規な電子機器部材用筺体の提供が切望されている。

0006

一方、電子機器の筺体には、上述した放熱特性に加え、当該筺体自体の温度上昇を抑えることも要求されている。これにより、電子機器製品稼動中に、消費者が当該筺体に触れてやけど等する危険を防止でき、安全な製品を提供できるからである。この「電子機器の筺体自体の温度上昇を抑える特性」を、前述した「放熱性」と区別する目的で、本発明では特に、「自己冷却性」と呼ぶ。これらの両特性に優れた筺体を得るに当たり、前述した放熱対策(ヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法や、金属板に穴をあけてファンを取り付ける方法等)を採用したのでは、やはり、同様の問題が見られる。従って、これらの両特性を備えた筺体の提供も切望されている。

0007

加えて、基板側に着目すると、従来は、耐食性、塗膜密着性等の観点から、基板にクロメート処理が施されているが、有害な6価クロムを多量使用することから環境汚染の問題が深刻化している。そこで、有害なクロメート処理に代わり、クロムフリーのノンクロメート処理への対応が要請されている。しかしながら、クロメート処理を施さない場合には、耐食性や塗膜密着性、更には加工性も劣ることが知られている。従って、クロメート処理を施さなくとも、耐食性、塗膜密着性、更には加工性にも優れたクロムフリーの塗装体であって、しかも前述した放熱性、更には自己冷却性にも優れた電子機器部材用筺体の提供が切望されている。

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、電子機器の筺体として使用される塗装体であって、電子機器部材に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規な塗装体;更には、当該塗装体自体の温度上昇を抑える特性(自己冷却性)にも優れた電子機器部材用塗装体;更には、耐食性及び塗膜密着性に優れており、加工性も良好なクロムフリーの電子機器部材用塗装体;この様な優れた特性を兼ね備えた塗装体で被覆された電子機器部品;クロムフリー系下地処理の施された基板に適用される塗料組成物であって、放熱性、耐食性、塗膜密着性、及び加工性に優れた塗料組成物;及び被験体の放熱性を評価する為の放熱性評価装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

上記課題を解決し得た本発明に係る「放熱性及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装体」は、基板の表裏面に塗膜が被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、
該塗装体を100℃に加熱したときの赤外線波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(4)及び(5)を満足する(但し、a×b≧0.42を除く)ところに要旨を有するものである。
b≦0.9(a−0.05) … (4)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… (5)
a:表面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率
b:裏面に放熱塗膜が被覆された塗装体の赤外線積分放射率

0010

上記本発明の塗装体においては、放熱皮膜は、放熱性添加剤として、少なくとも酸化チタンを50〜70質量%含有し、膜厚25〜30μmを満足するものが、好ましい態様として推奨される。

0011

この様な「放熱性及び自己冷却性」に優れた塗装体を得る為の具体的構成は、基板の表裏面に塗膜が被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であって、
前記放熱塗膜は黒色の放熱性添加剤を含有しており、且つ、下式(6)を満足するところに要旨を有するものである。
(X−3)×(Y−0.5)≧3 … (6)
式中、Xは放熱塗膜に含まれる黒色の放熱性添加剤の含有量(質量%)を、
Yは放熱塗膜厚さ(μm)を、夫々、意味する。

0012

ここで、X(放熱塗膜に含まれる黒色の放熱性添加剤の含有量)が4≦X<15[式(7)]を満足するもの;Y(塗膜厚さ)がY>1μmを満足するもの;更に黒色添加剤平均粒径が5〜100nmを満足するもの;黒色添加剤がカーボンブラックであるものは、より優れた放熱性を得るのに有用である。

0013

上述した本発明の塗装体において、放熱塗膜を形成する樹脂として、非親水性樹脂(好ましくはポリエステル系樹脂)を用いれば、耐食性が向上するので好ましい態様である。

0014

更に本発明において、上記放熱塗膜にクリアー塗膜が被覆されたものは、耐疵付き性及び耐指紋性が高められるので有用である。

0015

本発明の塗装体は、クロムフリー塗装体にも適用することができる。即ち、上記基板はクロムフリーの下地処理がなされており、且つ、放熱塗膜は、更に防錆剤を含有するものは好ましい態様である。具体的には、上記放熱塗膜の形成成分は、エポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体骨格に導入したポリエステル系樹脂、及び架橋剤(好ましくはイソシアネート系樹脂及び/又はメラミン系樹脂、より好ましくは両者を併用したもの)を含有することが推奨され、これにより、優れた耐食性[JIS−Z−2371に規定されている塩水噴霧試験耐食性試験(72時間)における外観異常部の面積率:10%以下]、塗膜密着性(曲げ部をテーピングした後における塗膜の剥離状況)、加工性(JIS K 5400に規定されている密着曲げ試験におけるクラック数:5個以下)を確保することができる。更に、上記塗膜の上に塗膜が被覆された二層塗膜構成とすれば、防錆剤の溶出を防止し得るので一層優れた耐食性[JIS−Z−2371に規定されている塩水噴霧試験耐食性試験(120時間)における外観異常部の面積率:10%以下]が得られるので非常に有用である。ここで、上記塗膜の上に被覆される塗膜を、クリヤー塗膜とすれば、更に耐疵付き性及び耐指紋性も高められる。

0016

上記のような各種塗装体は、電子機器部品の筐体として使用されるものとして有用である。

0017

一方、上記課題を解決し得た本発明の電子機器部材用塗料組成物は、上記のような塗装体に用いられる塗料組成物であって、塗膜形成成分に対し、黒色添加剤を3質量%超含有し、導電性フィラーを含有しないものであるところに要旨を有するものであり、この様な塗料組成物を用いれば、放熱性及び自己冷却性に優れた塗膜を形成することができる。ここで、上記黒色添加剤の平均粒径が5〜100nmであるものは好ましい態様である。

0018

更に本発明には、クロムフリー系下地処理の施された基板に適用される塗料組成物であって、塗膜形成成分に対し、エポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂を35質量%以上、防錆剤を2〜25質量%、架橋剤を1〜20質量%、及び黒色添加剤を3質量%超、含有する電子機器部材用塗料組成物も本発明の範囲内に包含される。ここで、上記架橋剤は、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、メラミン系樹脂を5〜80質量部の比率で含有することが好ましい。また、上記黒色添加剤の平均粒径は5〜100nmであり、カーボンブラックの使用が推奨される。この様な組成を満足する塗料組成物を使用すれば、放熱性、自己冷却性、耐食性、塗膜密着性、及び加工性に優れたクロムフリー系塗膜を形成することができる。

0019

更に本発明には、閉じられた空間に発熱体を内臓する電子機器部品であって、その外壁の全部または一部が前述した本発明の電子機器部材用塗装体で構成されている電子機器部品(例えばCD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等)も本発明の範囲内に包含される。

発明の効果

0020

本発明の塗装体は以上の様に構成されているので、電子機器部材に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器部材の内部温度の低減化(放熱特性)をも具備し得ると共に、電子機器部材用塗装体自体の温度上昇を抑える特性(自己冷却性)にも優れた電子機器部材用塗装を提供することができた。本発明の塗装体は、特に、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録分野;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連分野等の他、プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等、様々な電子機器部材に用いることができる。

発明を実施するための最良の形態

0021

本発明者らは、電子機器に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化、低コスト等)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規な電子機器部材用塗装体を提供すべく、特に、当該塗装体自体の放熱性改善を中心に鋭意検討してきた。その結果、基板の表裏面に、所定の塗膜を被覆すれば所期の目的が達成されることを見出した。

0022

そのメカニズムは、「電子機器内部の熱源(発熱体)から放出される熱(輻射熱)を、裏面の塗膜で吸収(放射)し、この熱を、表面の放熱塗膜から放射させる」というものであり、所謂『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材にうまく適用したところに最大の特徴がある。この様な『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材に適用し、電子機器から放出される熱量を、「基板の裏面」→「基板の表面」へと吸収→放射させた塗装体は従来知られておらず、新規である。尚、本発明では、当該塗装体から見て外気側を「表面」、当該塗装体の内側を「裏面」と呼ぶ。

0023

本発明の塗装体は、基板の表裏面に塗膜が被覆され、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜であって導電性フィラーを含有しない放熱塗膜が被覆された塗装体であり、「優れた自己冷却性」を表す指標として、下記(III)に示すΔT2(塗装体自体の温度上昇抑制の程度)若しくは下記(IV)に示す式(4)[b≦0.9(a−0.05)]を;また、上記第二の塗装体における「優れた放熱性」を表す指標として、下記(V)に示す式(5)[(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08]を満足するものである。

0024

まず、自己冷却性の指標について説明する。

0025

このうち式(4)は、裏面の赤外線放射率に比べ、表面の赤外線放射率を高くし、塗装体に吸収された熱を外気側へ移動させる放熱効果を示す指標として定めたものであり;一方、ΔT2は、電子機器部材用途を模擬した実用レベルの塗装体での放熱効果を定めたものである。

0026

この様に両者は、いずれも「自己冷却性」を表す指標として有用であり、良好な相関関係を有している。参考までに、後記する実施例の結果をプロットしたグラフ図3に示す。図3縦軸は、上式(4)を変形した式(0.9a−b≧0.05)中、左辺(0.9a−b)の計算値(以下、Q値で代表させる場合がある)である。

0027

この様な自己冷却性を満足するものは、塗装体自体の温度上昇が抑えられるので、当該塗装体を電子機器の筺体として使用したとき、電子機器稼動時に、取扱者が触れたとしても「熱くない」と感じる等、取扱者側から見て安全な電子機器を提供することができる。しかも上記塗装体は、良好な放熱性も兼ね備えているので、これらの両特性を兼ね備えた電子機器部材は、更なる用途の拡大をもたらす点で非常に有用である。

0028

以下、(III)〜(V)の各特性について説明する。

0029

(III)ΔT2(=T2B−T2A)≧0.5℃
ここで、T2Aは、後記する図1に示す放熱性評価装置を用い、供試材として本発明塗装体を測定したときの塗装体温度を;T2Bは、同様に上記図1の放熱性評価装置を用い、供試材として塗膜が被覆されていない基板を使用したときの基板温度を、夫々、意味する。また、供試材を用いたときの温度と、塗膜を施さない無塗装原板を用いたときの温度の差(ΔT2)を算出した。

0030

尚、ΔT2は、各供試材につき5回ずつ測定し、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT2と定めた。

0031

上記ΔT2は、基板(塗膜が被覆されていないままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、電子機器稼動時における塗装体自体の温度上昇を如何に抑えられるかという指標(自己冷却性)を定めたものであり、本発明では、ΔT2を測定する装置として、特に、図1に示す本発明独自の放熱性評価装置を用いた。

0032

優れた自己冷却性を得る為には、上記ΔT2は大きい程、好ましい。ΔT2の好ましい順に1.0℃以上、1.5℃以上、2.0℃以上、2.5℃以上である。

0033

(IV)式(4):b≦0.9(a−0.05)
式中、a及びbは、基板の表裏面に塗膜が被覆された塗装体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率(以下、単に「赤外線積分放射率」若しくは「赤外線放射率」と略記することがある)において、表面の赤外線積分放射率(a)及び裏面の赤外線積分放射率(b)を夫々、意味する。この赤外線積分照射率は、後述する方法で測定され、表面若しくは裏面の赤外線積分照射率を夫々、別々に測定することができる。

0034

上記「赤外線積分放射率」とは、換言すれば、赤外線(熱エネルギー)の放出し易さ(吸収し易さ)を意味する。従って、上記赤外線放射率が高い程、放出(吸収)される熱エネルギー量は大きくなることを示す。例えば物体(本発明では塗装体)に与えられた熱エネルギーを100%放射する場合には、当該赤外線積分放射率は1となる。

0035

尚、本発明では、100℃に加熱したときの赤外線積分放射率を定めているが、これは、本発明塗装体が電気機器用途(部材等によっても相違するが、通常の雰囲気温度は概ね、50〜70℃で、最高で約100℃)に適用されることを考慮し、当該実用レベルの温度と一致させるべく、加熱温度を100℃に定めたものである。但し、200℃に加熱しても赤外線積分放射率は殆ど変化せず、200℃に加熱したときの赤外線積分放射率は、100℃の赤外線積分放射率に比べ、概ね0.02程度高いものの、略一致することを実験により確認している。

0036

本発明における赤外線積分放射率の測定方法は以下の通りである。
装置:日本電子(株)製「JIR−5500型フーリエ変換赤外分光
光度計」及び放射測定ユニット「IRR−200」
測定波長範囲:4.5〜15.4μm
測定温度試料の加熱温度を100℃に設定する
積算回数:200回
分解能:16cm-1

0037

上記装置を用い、赤外線波長域(4.5〜15.4μm)における試料の分光放射強度実測値)を測定した。尚、上記試料の実測値は、バックグラウンド放射強度及び装置関数加算/付加された数値として測定される為、これらを補正する目的で、放射率測定プログラム[日本電子(株)製放射率測定プログラム]を用い、積分放射率を算出した。算出方法の詳細は以下の通りである。

0038

0039

式中、
ε(λ) :波長λにおける試料の分光放射率(%)
E(T) :温度T(℃)における試料の積分放射率(%)
M(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における試料の分光放射強度
(実測値)
A(λ) :装置関数
KFB(λ) :波長λにおける固定バックグラウンド(試料によって
変化しないバックグラウンド)の分光放射強度
KTB(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体
分光放射強度
KB(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における黒体の分光放射強度
ブランク理論式からの計算値)
λ1,λ2 :積分する波長の範囲
を夫々、意味する。

0040

ここで、上記A(λ:装置関数)、及び上記KFB(λ:固定バックグラウンドの分光放射強度)は、2つの黒体炉(80℃、160℃)の分光放射強度の実測値、及び当該温度域における黒体の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)に基づき、下記式によって算出したものである。

0041

0042

式中、
M160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
M80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
K160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
K80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
を夫々、意味する。

0043

尚、積分放射率E(T=100℃)の算出に当たり、KTB(λ,TTB)を考慮しているのは、測定に当たり、試料の周囲に、水冷したトラップ黒体を配置している為である。上記トラップ黒体の設置により、変動バックグランド放射(試料によって変化するバックグラウンド放射を意味する。試料の周囲からの放射が試料表面で反射される為、試料の分光放射強度の実測値は、このバックグランド放射が加算された数値として表れる)の分光放射強度を低くコントロールすることができる。上記のトラップ黒体は、放射率0.96の疑似黒体を使用しており、前記KTB[(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の分光放射強度]は、以下の様にして算出する。
KTB(λ,TTB)=0.96×KB(λ,TTB)
式中、KB(λ,TTB)は、波長λ、温度TTB(℃)における黒体の
分光放射強度を意味する。

0044

前述した通り、上式(4)も、塗装体自体の温度上昇を抑制する「自己冷却性」の指標として有用である。上式は、「基板の裏面(電子機器内部側)に比べ、基板の表面(外気側)の赤外線放射率を高くした塗膜を施すことにより、塗装体自体の温度上昇を抑制しよう」という思想のもと、所望の自己冷却性(ΔT2≧0.5℃)を確保できる表面・裏面の赤外線放射率の関係式を特定したものである。

0045

塗装体を電子機器の筺体に使用する場合、筺体内部面(裏面)の赤外線放射率を高めると、電子機器内熱源から放出される赤外線吸収量が増加し、塗装体自体の温度は上昇してしまう。一方、筺体外部面(表面)の放射率を高めれば、塗装体から外気に向けて放出する赤外線放出量が増加し、塗装体の温度も低下する。本発明は、この様な知見に基づき、種々の実験を重ねて上式を定めたものであり、本発明によれば、基板の裏面側で吸収(放射)される熱量よりも、基板の表面側から放射される熱量が大きくなるので、塗装体自体の温度上昇を効率よく抑えることが可能になる。

0046

この様に基板の表面と裏面に放熱特性の異なる塗膜を設け、放熱特性の水準を或る程度維持しつつ、しかも塗装体の温度上昇をも抑制させた塗装体は従来知られておらず、新規であると考える。

0047

従って、本発明の塗装体では、aとbの赤外線放射率の差が大きい程、優れた自己冷却性が得られる。具体的には、上記Q値(=0.9a−b)が大きい程好ましく、好ましい順に、0.13以上、0.24以上、0.35以上、0.47以上である。

0048

次に、「優れた放熱性」を表す指標について説明する。本発明では、ΔT1(=T1B−T1A)≧2.6℃、若しくは下記(V)式(5)[(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08]を満足するものである。

0049

ここで、T1Aは、後記する図1に示す放熱性評価装置を用い、供試材として本発明塗装体を使用したときのT1位置の温度を;T1Bは、同様に上記図1の放熱性評価装置を用い、供試材として塗膜が被覆されていない基板を使用したときのT1位置の温度を、夫々、意味する。

0050

上記ΔT1は、基板(塗膜が被覆されていない裸ままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、如何に電子機器の内部温度を低減できるかという指標を定めたものであり、本発明では、ΔT1を測定する装置として、特に、図1に示す本発明独自の放熱性評価装置を用いた。図1の装置は、電子機器等の用途で想定される雰囲気温度(電子機器部材の種類等によって雰囲気温度は異なるが、概ね50〜70℃、最高で100℃程度)の放熱特性を評価し得る装置として極めて有用であり、これにより、電子機器用途を模擬した実用レベルでの放熱効果を正しく評価することが可能となる。

0051

図1は、内部空間が100mm(縦)×130mm(横)×100mm(高さ)である直方体の装置である。図1中、1は供試材(被験体、測定面積は100×130mm)、2は断熱材、3は発熱体[底面積は1300mm2、当該発熱体面積内で引ける最も長い直線の長さ(図1では、対角線の長さ)は164mm]、5は測温装置である。

0052

このうち発熱体3には、シリコンラバーヒーターを用い、その上にアルミ板(赤外線放射率は0.1以下)を密着したものを使用する。また、図1のT1位置[内部空間の中央部(発熱体3から50mm上方)]に、測温装置5として熱電対を固定する。尚、発熱体からの熱輻射の影響を排除する目的で、熱電対の下部をカバーしておく。また、断熱材2は、その種類や使用態様等によって箱内雰囲気温度が変化する(放熱性にも影響する)為、赤外線放射率が0.03〜0.06の金属板[例えば電気亜鉛めっき鋼板(JIS SECC等)]を用い、後記する方法によってT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様、断熱材の張り方等を調整する。その他、放熱性に影響を及ぼす因子(例えば供試材の固定法等)についても、同様にT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様に調整する。

0053

次に上記装置を用いて放熱特性を評価する方法について説明する。

0054

測定に当たっては、外気条件(風等)によるデータのバラツキをなくす目的で、測定条件を、温度:23℃、相対湿度:60%に制御しておく。

0055

まず、各供試材1を設置し、電源を入れてホットプレート3を140℃にまで加温する。ホットプレートの温度が安定して140℃となり、T1位置の温度が60℃以上になっていることを確認した後、一旦、供試材を取外す箱内温度が50℃まで下がった時点で、再び供試材を設置し、設置してから90分後の箱内温度を夫々測定する。次に、上記供試材を用いたときの温度と、塗膜を施さない無塗装原板を用いたときの温度の差(ΔT1)を算出する。

0056

尚、ΔT1は、各供試材につき5回ずつ測定し、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT1と定めた。

0057

この様にして算出されたΔT1は大きい程、放熱特性に優れていることを意味する。好ましい順に2.7℃以上、3.0℃以上、3.3℃以上、3.5℃以上、3.7℃以上、4.0℃以上である。

0058

尚、放熱特性の指標(目標レベル)は、電子機器の種類等によって異なるが、本発明によれば、後記する通り、放熱塗膜中に含まれる黒色添加剤を、塗膜厚との関係で適切に制御することによって、容易に、所定の放熱特性に調整することができる。

0059

(V)式(5):(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08
上式(5)は、本発明の塗装体における放熱特性の指標を、表裏面の赤外線積分放射率の積によって特定したもので、左辺[(a−0.05)×(b−0.05)]の計算値(以下、R値で代表させる場合がある)が大きい程、放熱特性(ΔT1)に優れていることを示す。好ましい下限は順に、0.35(ΔT1で、約2.6℃)、0.52(ΔT1で、約3.5℃)である。

0060

この上式(5)は、前述したΔT1と、良好な相関関係を有している。参考までに、後記する実施例の結果をプロットしたグラフを図4に示す。

0061

次に、上記塗装体を得る為の具体的構成について説明する。

0062

上記塗装体は、基板の表裏面に塗膜が被覆されており、且つ、基板の少なくとも表面に、放熱性を有する放熱塗膜が被覆されたものである。所望の自己冷却性を確保する為には、裏面に比べ、表面の赤外線放射率を高くして上式(4)を満足することが必要であり、且つ、放熱特性は、少なくとも上式(5)を満足することが必要である。この様に第二の塗装体では、表面・裏面に要求される放熱特性のレベルが異なる為、以下、場合を分けて説明する。

0063

まず、上記第二の塗装体における「表面の放熱塗膜」は、下記(A)及び(B)の態様を包含する。

0064

(A)黒色の放熱性添加剤(黒色添加剤)を主に添加し、放熱塗膜中に含まれる黒色添加剤(X)を、塗膜厚(Y)との関係で制御する態様
表面の塗膜に黒色添加剤を添加し、放熱特性を高めようとする場合は、黒色添加剤の添加量(X)と塗膜厚(Y)が下式(6)を満足する様、X及びYを適宜、適切に制御すれば良い。具体的には下記(A−1)〜(A−3)の通りである。

0065

(A—1)式(6):(X−3)×(Y−0.5)≧3
上式(6)は、第二の塗装体における放熱性の目標レベル(ΔT1≧1.5℃)を実現する為の、X及びYの関係式を定めたものであり、P値[=(X−3)×(Y−0.5)]が大きい程、優れた放熱特性が得られる。好ましい順に、7以上、11以上、15以上、30以上、50以上である。

0066

但し、P値をあまり大きくしても放熱特性は飽和していまい、使用する黒色添加剤等の量が増えるだけで経済的に無駄である他、本発明塗装体は電子機器の筺体として使用され、加工性や導電性等にも要求されることを考慮すると、P値の上限を、好ましい順に、240、200、150、100に制御することが推奨される。

0067

本発明に用いられる黒色添加剤としては黒色を付与し得るものであれば特に限定されず、代表的にはカーボンブラックが挙げられるが、その他、Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mo,Ag,Sn等の酸化物硫化物カーバイドや黒色の金属微粉等を使用することもできる。最も好ましいのはカーボンブラックである。

0068

ここで、塗膜中のカーボンブラックの添加量(X)は、以下の方法により、測定することができる。

0069

まず、被験体(分析サンプル)に溶媒を加えて加温し、被験体中の有機物を分解する。使用する溶媒の種類は、ベース系樹脂の種類によっても異なり、各樹脂の溶解度に応じて、適宜、適切な溶媒を使用すれば良いが、例えば、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂を用いる場合は、水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加した容器ナス型フラスコ等)に被験体を加え、この容器を70℃のウオーターバスで加温し、被験体中の有機物を分解すれば良い。

0070

次いで、この有機物をガラスフィルター孔径0.2μm)で濾別し、得られた残渣中の炭素を、燃焼赤外線吸収法により定量し、塗膜中のカーボンブラック濃度を算出する。

0071

更に、上記黒色添加剤の平均粒径は5〜100nmに制御することが好ましい。上記添加剤の平均粒径が5nm未満では、所望の放熱特性が得られない他、塗料の安定性が悪く、塗装外観に劣る。一方、平均粒径が100nmを超えると放熱特性が低下するのみならず、塗装後外観が不均一となってしまう。好ましくは10nm以上、90nm以下;より好ましくは15nm以上、80nm以下である。尚、放熱特性に加え、塗膜安定性、塗装後外観均一性等を総合的に案すれば、黒色添加剤の最適平均粒径は概ね20〜40nmとすることが推奨される。

0072

(A−2)式(7):4%≦X<15%
黒色添加剤の含有量Xは3%超を前提とし、4%以上とすることが推奨される。ここで、「X>3%」を前提としたのは、上式(6)を満足する為には、当該式の左辺の係数である(X−3)は正(>0)であることが必要だからである。

0073

また、上記Xの下限は、優れた放熱特性を得ると同時に、塗装体自体の特性(塗装性、外観等)を確保する為に定められたもので、3%以下では所望の特性が得られない。好ましい下限は順に、5%、7%、8%、10%である。一方、Xの上限は放熱特性との関係では特に制限されないが、15%以上になると塗装性が悪くなり、塗布むらが生じて外観不良が発生する。従って、塗装性等を考慮した好ましい上限は順に、15%未満、13%、11%である。

0074

(A−3)式(8):Y>1μm
放熱塗膜の塗膜厚さYは、0.5μm超を前提とし、1μm超とすることが推奨される。ここで、「Y>0.5μm」を前提としたのは、上式(6)を満足する為には、当該式の左辺の係数である(Y−0.5)が正(>0)であることが必要だからである。

0075

上記Yの下限は、特に優れた放熱特性を得る為に定められたもので、Yが0.5μm以下では、黒色添加剤を多く添加しても所望の放熱効果が得られない。好ましい下限は順に、3μm、5μm、7μm、10μmである。

0076

尚、上記Yの上限は放熱特性との関係では特に制限されないが、本発明塗装体は電子機器部品への適用を意図しており、当該用途との関係上、加工性の向上も要求されること;特に曲げ加工時における塗膜のクラック剥離等の発生防止等を考慮すると、50μm以下(より好ましい順に、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下)に制御することが推奨される。

0077

更に、良好な加工性を備えると共に、優れた導電性も確保する為には、上記Yを12μm以下(より好ましい順に、11μm以下、更により好ましくは10μm以下)に制御することが推奨される。

0078

(B)黒色添加剤以外の他の添加剤を主に添加する態様
表面塗膜の放熱特性を高める為に、黒色添加剤以外の他の添加剤(代表的には、少なくともTiO2)を使用する場合は、当該他の添加剤として、例えばTiO2、セラミックス酸化鉄酸化アルミニウム硫酸バリウム酸化ケイ素等が用いられる。これらは、1種または2種以上使用することができる。更にカーボンブラック等の黒色添加剤を添加しても良い。上記放熱塗膜の膜厚は、所望の放熱特性が得られる様、使用する添加剤の種類等に応じて適宜適切な膜厚を定めることができるが、概ね、5〜30μm程度とすることが推奨される。

0079

具体的にはTiO2含有塗膜の場合、塗膜中に酸化チタンを概ね、50〜70%添加し、塗膜厚を約25〜30μmとすることが推奨される。また、メタリック調外観の塗膜を施したいときは、Alフレーク等を概ね、5〜30%添加し、塗膜厚を約5〜30μmとすることが推奨される。

0080

次に、本発明に係る第二の塗装体における「裏面の塗膜」について説明する。前述した「表面の塗膜」は、優れた自己冷却性を確保する為に放熱塗膜とする必要があるが、「裏面の塗膜」は、所望の特性が得られる限り、必ずしも放熱塗膜とする必要はない。即ち、本発明の塗装体には、基板の裏面に塗膜が施されていない「片面塗装鋼板」は包含されない(塗膜なし原板の赤外線放射率は概ね0.04で、所望の自己冷却性は得られない)が、上式(4)を満足する限りにおいて、任意の塗膜を採用することができる。

0081

具体的には、前述した黒色添加剤・黒色添加剤以外の他の添加剤を単独または併用し、表面塗膜の放射率に応じて、適宜、添加量及び塗膜厚を適切に調整して裏面の塗膜を形成することができる。尚、黒色添加剤を用いて裏面の塗膜を形成する場合、前記XとYの関係は、必ずしも、前述した(6)式を満足する必要はなく、放熱性を殆ど有しない塗膜(前記のP値が0未満)であっても、表面塗膜の赤外線放射率さえ、適切に制御すれば、所望の自己冷却性を確保することができる(後記する表1のNo.1及び11を参照)。

0082

或いは、上記の添加剤を全く添加せず、塗膜厚を所定範囲(約2.5μm以上)に制御した塗膜も採用することができる(後記する表1のNo.3及び7を参照)。塗膜中に含まれる樹脂のみによっても、或る程度の放熱特性が得られるからである。

0083

具体的には、例えば塗膜形成樹脂として非親水性のポリエステル系樹脂を使用する場合は、塗膜厚を概ね、2.5μm以上に調整すれば良い。

0084

以上、本発明の塗装体において、表面・裏面の塗膜を形成する黒色添加剤/他の添加剤について、その基本構成を説明した。

0085

尚、塗膜中に添加される樹脂(放熱塗膜を形成するベース樹脂)の種類は、放熱特性の観点からは特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。但し、本発明塗装体は電子機器の筺体として使用される為、放熱性に加え、耐食性、加工性の向上も要求されることを考慮すると、上記ベース樹脂は、非親水性樹脂[具体的には、水との接触角が30°以上(より好ましくは50°以上、更により好ましくは70°以上)を満足するもの]であることが好ましい。この様な非親水性特性を満足する樹脂は、混合度合や変性の程度等によっても変化し得るが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等の使用が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂若しくは変性したポリエステル系樹脂(エポキシ変性ポリエステル系樹脂、フェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂等の熱硬化性ポリエステル系樹脂または不飽和ポリエステル系樹脂)の使用が推奨される。

0086

更に上記塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、カーボンブラック等の黒色添加剤の他、防錆顔料シリカ等の顔料も添加しても良い。或いは、黒色添加剤以外の他の放熱性を有する添加剤(例えばTiO2、セラミックス、酸化鉄、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素等を1種または2種以上の少なくとも一種)も、本発明の作用を損なわない範囲で、添加することができる。

0087

また、上記塗膜には、架橋剤を添加することができる。本発明に用いられる架橋剤としては、例えばメラミン系化合物イソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜10質量%の範囲で添加することが推奨される。

0088

以上、本発明の塗装体を特徴付ける塗膜について詳述した。前述した通り、本発明の最重要ポイントは塗膜の構成を特定したところにあり、塗膜以外の基板については特に限定されない。従って本発明に用いられる基板としては、(1)代表的には金属板、具体的には冷延鋼板熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、5%Al−Znめっき鋼板、55%Al−Znめっき鋼板、Al等の各種めっき鋼板、ステンレス鋼板等の鋼板類や、公知の金属板等を全て適用することができる他、(2)金属板以外の基板、具体的には線材棒材パイプ材セラミック材等も挙げられる。このうち好ましいのは、熱導電性に優れた金属板等の金属材料セラミックである。

0089

尚、上記(1)の金属板は、耐食性向上、塗膜の密着性向上等を目的として、クロメート処理やリン酸塩処理等の表面処理を施してもよいが、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの態様も本発明の範囲内に包含される。

0090

ここで、ノンクロメート処理した金属板を用いた本発明塗装体の構成について説明する。

0091

まず、上記基板は、クロムフリーの下地処理がなされており、且つ、放熱塗膜(少なくとも表面)は、更に防錆剤を含有することが必要である。一般にノンクロメート処理すると耐食性が低下することが知られており、耐食性向上の目的で、防錆剤の使用が不可欠だからである。

0092

ここで、上記「クロムフリーの下地処理」は特に限定されず、通常、使用される公知の下地処理を行えば良い。具体的には、リン酸塩系、シリカ系、チタン系、ジルコニウム系等の下地処理を、単独で、若しくは併用して行うことが推奨される。

0093

また、上記防錆剤としては、シリカ系化合物リン酸塩系化合物亜リン酸塩化合物ポリリン酸塩系化合物、イオウ有機化合物ベンゾトリアゾールタンニン酸モリブデン酸塩系化合物、タングステン酸塩系化合物、バナジウム系化合物シランカップリング剤等が挙げられ、これらを単独で若しくは併用することができる。特に好ましいのは、シリカ系化合物(例えばカルシウムイオン交換シリカ等)と、リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、ポリリン酸塩系化合物(例えばトリポリリン酸アルミニウム等)との併用であり、シリカ系化合物:(リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、またはポリリン酸塩系化合物)を、質量比率で0.5〜9.5:9.5〜0.5(より好ましくは1:9〜9:1)の範囲で併用することが推奨される。この範囲に制御することにより、所望の耐食性と加工性の両方を確保することができる。

0094

尚、これらの防錆剤は、前記の下地処理にも使用しても良い。

0095

上記防錆剤の使用により耐食性は確保できるが、一方、防錆剤の添加による加工性が低下することも知られている。そこで本発明では、放熱塗膜の形成成分として、特に、樹脂及び架橋剤の組合わせに留意しており、エポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂、及び架橋剤(好ましくはイソシアネート系樹脂及び/又はメラミン系樹脂、より好ましくは両者の併用)を組合わせて使用することが推奨される。

0096

このうちエポキシ変性ポリエステル系樹脂及びフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂(例えばビスフェノールAを骨格に導入したポリエステル系樹脂等)は、ポリエステル系樹脂に比べ、耐食性及び塗膜密着性に優れている。

0097

一方、イソシアネート系架橋剤は加工性向上作用(加工後の外観向上作用を意味し、後記する実施例では、密着性曲げ試験におけるクラック数で評価している)を有しており、これにより、防錆剤を添加したとしても優れた加工性を確保することが可能となる。

0098

また、メラミン系架橋剤は、優れた耐食性を有することが本発明者らの検討結果により明らかになった。従って、本発明では、前述した防錆剤と併用することにより、非常に良好な耐食性が得られることになる。

0099

本発明では、上記イソシアネート系架橋剤及びメラミン系架橋剤を単独で使用しても良いが、両者を併用すると、加工性及び耐食性を一層向上させることができる。具体的には、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、メラミン系樹脂を5〜80質量部の比率で含有することが推奨される。メラミン系樹脂が5質量部未満の場合、所望の耐食性が得られず、一方、メラミン系樹脂が80質量部を超えると、イソシアネート系樹脂の添加による効果が良好に発揮されず、所望の加工性向上作用が得られない。より好ましくは、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、10質量部以上、40質量部以下、更により好ましくは15質量部以上、30質量部以下である。

0100

尚、上述した塗膜形成成分を構成する樹脂、防錆剤、架橋剤、黒色添加剤、及び導電性フィラーの比率については、後記する「塗料組成物」において説明する。

0101

この様な構成を満足する塗装体は、耐食性、塗膜密着性及び加工性に優れている。具体的には、耐食性に関しては、JIS−Z−2371に規定されている塩水噴霧試験耐食性試験(72時間)における外観異常部(塗膜膨れ、錆等)の面積率が10%以下(より好ましくは5%以下)を満足するものである。上記特性は、使用する架橋剤の種類を適切に制御したり(例えば耐食性向上に有用なメラミン系架橋剤を単独で所定量添加する)、防錆剤の溶出を抑制する目的で、塗膜の上に塗膜(好ましくはクリヤー塗膜)を施した二層塗膜とする等の構成を採用することにより、一層高められ、その結果、より過酷な試験[JIS−Z−2371に規定されている塩水噴霧試験耐食性試験(120時間)]における外観異常の面積率が10%以下(より好ましくは5%以下)をも満足するものである。

0102

更に上記塗装体は、塗膜密着性及び加工性にも優れたものである。ここで、「塗膜密着性」も「加工性」も、共に「加工後の外観に優れている」点で共通の性質を備えているが、本発明では、特に「加工性」について、「JIS K 5400に規定されている密着曲げ試験におけるクラック(ひび割れ)の数」で評価しており(本発明塗装体は、上記密着曲げ試験におけるクラック数が5個以下、より好ましくは2個以下、更により好ましくは0個を満足する)、一方、「塗膜密着性」は、「加工した部分の塗膜密着性」で評価している。

0103

以上、ノンクロメート処理した金属板を用いた本発明塗装体について説明した。

0104

これまで説明した本発明塗装体は、基板に塗膜が施された単層皮膜構成であるが、本発明には、更に、その上に塗膜が一種または2種以上被覆された複層皮膜構成の態様も包含される。特に本発明では、耐疵付き性及び耐指紋性の付与を目指して、特に黒色塗膜を使用した場合、当該黒色塗膜にクリヤー皮膜を施した二層皮膜構成とすることが推奨される。黒色塗膜は濃色系の黒で塗装されている為、手で取扱う際、指紋が目立ち易いというデメリットを抱えており、外観品質が低下するが、クリヤー皮膜の形成により、耐指紋性が改善される。また、たとえ黒色塗膜に疵が付いたとしても、クリヤー皮膜を施すことにより当該疵が目立たなくなるというメリットもある。

0105

ここで、所望の特性(放熱特性/自己冷却性)を維持しつつ、耐疵付き性及び耐指紋性を向上させる為には、クリアー塗膜の膜厚を制御することが重要であるが、放熱性に加えて優れた導電性をも具備させる場合には、当該クリアー塗膜厚の好ましい範囲が変化する。

0106

即ち、塗膜に導電性フィラーを添加しない塗装体の場合、優れた放熱特性/自己冷却性を維持しつつ、しかも耐疵付き性及び耐指紋性の向上を図る為には、クリアー塗膜の膜厚を0.1〜10μmに制御することが推奨される。0.1μm未満では耐疵付き性及び耐指紋性の向上作用が得られない。より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上である。但し、膜厚が10μm超と厚くしても、耐疵付き性等の向上作用は飽和してしまい、皮膜コストが増加するのみで不経済である為、その上限を10μmにすることが好ましい。より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。

0107

上述の如く塗膜の上にクリアー塗膜を被覆した二層塗膜構造とすることにより、塗膜単独からなる単層塗膜構造に比べ、耐疵付き性を格段に向上し得ると共に、該単層塗膜構造では達成できなかった耐指紋性向上も得られる点で、クリアー塗膜の形成は極めて有効である。

0108

ここで、上記クリヤー皮膜を構成する樹脂としては特に限定されず、透明な皮膜を形成し得る樹脂は全て包含される。具体的にはアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、及びこれら樹脂の混合物または変性した樹脂等が挙げられる。更にクリヤー皮膜中には、本発明の作用を損なわない範囲で、架橋剤、ワックス艶消し剤等の添加剤を添加しても良い。これにより、塗膜の潤滑性や強度等を容易に調整することが可能になり、その結果、耐疵付き性を更に高めることができるからである。本発明に用いられる添加剤としては、塗膜中に通常使用され、上記作用を有効に発揮し得るものであればとくに限定されず、例えばメラミン系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤等の架橋剤が挙げられる。

0109

尚、前述した通り、本発明の塗装体には、クリヤー塗膜でない塗膜が施された複数皮膜構成のものも包含されるが、この場合には、上述したクリヤー塗膜を構成する樹脂および添加剤に、更に着色顔料等の顔料等を添加することができる。

0110

また、クロムフリー系下地処理の施された基板に適用される塗料組成物として、塗膜形成成分に対し、エポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂を35質量%以上(好ましくは40質量%以上、更により好ましくは45質量%以上)、防錆剤を2〜25質量%(好ましくは3質量%以上、20質量%以下;更により好ましくは4質量%以上、15質量%以下)、架橋剤を1〜20質量%(好ましくは2質量%以上、18質量%以下;更により好ましくは3質量%以上、15質量%以下)、及び黒色添加剤を3質量%超含有する塗料組成物も本発明の範囲内に包含される。このうち上記記架橋剤の好ましい要件(好ましくはソシアネート系架橋剤100質量部に対し、メラミン系架橋剤を5〜80質量部の比率で含有すること)、及び上記黒色添加剤の好ましい要件は前述した通りである。本発明の塗料組成物を用いれば、放熱性、耐食性、塗膜密着性、及び加工性に優れたクロムフリー系塗膜を形成することができるので、電子機器部材用塗装体を得る為の塗料であって、特に、クロムフリー塗装体用の塗料として好適に用いることができる。

0111

次に、本発明の塗装体を製造する方法について説明する。本発明の塗装体は、上記成分を含む塗料を、公知の塗装方法で基板の表面に塗布し、乾燥させて製造することができる。塗装方法は特に限定されないが、例えば表面を清浄化して、必要に応じて塗装前処理(例えばリン酸塩処理、クロメート処理など)を施した長尺金属帯表面に、ロールコーター法スプレー法カーテンフローコーター法などを用いて塗料を塗工し、熱風乾燥炉を通過させて乾燥させる方法などが挙げられる。被膜厚さの均一性処理コスト塗装効率などを総合的に勘案して実用上好ましいのは、ロールコーター法である。

0112

尚、基板として樹脂塗装金属板を使用する場合には、樹脂被膜との密着性または耐食性の向上目的で、塗装前処理としてリン酸塩処理またはクロメート処理を施しても構わない。但し、クロメート処理材については、樹脂塗装体使用中のクロム溶出性の観点から、クロメート処理時のCr付着量を35mg/m2以下に抑制することが好ましい。この範囲であれば、下地クロメート処理層からのクロム溶出を抑えることが可能だからである。また、従来のクロメート処理材は必要に応じて設けられる上塗り塗装耐水密着性が、6価クロムの溶出に伴って、湿潤環境下において低下する傾向にあるが、上記金属板では溶出が抑制されるため、上塗り被膜の耐水密着性が悪化することはない。

0113

或いは、前述したクロムフリーの下地処理を、ロールコーター法、スプレー法、浸漬処理法等により施せば、ノンクロメートタイプの塗装体を得ることができる。

0114

更に本発明には、閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が上記電子機器部材用塗装体で構成されている電子機器部品も包含される。上記電子機器部品としては、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等が挙げられる。

0115

以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本願発明に含まれる。

0116

実施例1
本実施例では、添加剤の種類、表裏面の放射率を種々変化させた各供試体における放熱性、自己冷却性、及び導電性を測定した。

0117

まず、電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.6mm)を原板として、その表裏面に、下記表1に示す添加剤を添加した塗料(ベース樹脂としてポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を使用)を塗布した後、焼付け、乾燥してNo.1〜19の各供試材(120×150mm)を作製した。このうち、No.17は、原板として、Zn−Ni合金めっき鋼板を黒色化処理したもの(板厚0.6mm)を使用し、それ以外は、原板として電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.6mm)を使用した。

0118

この様にして得られた各供試材について、図1の装置を用い、前述した方法に基づいて赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率、及びΔT1、ΔT2及び導電率を測定した。

0119

尚、放熱特性を表すΔT1は、下記基準で相対評価した。本発明に係る第二の塗装体では、◎、●及び○の塗装体を、「当該塗装体における良好な放熱性を発揮するもの」と評価している。
◎:3.5≦ΔT1
●:2.7≦ΔT1<3.5
○:1.5≦ΔT1<2.7
△:1.0≦ΔT1<1.5
×:ΔT<1.0

0120

また、自己冷却性を示すΔT2は、下記基準で相対評価した。ΔT2が大きければ大きい程、放熱特性に優れていることを示す。尚、本発明では、◎及び○の塗装体を、「優れた自己冷却性を発揮するもの」として評価している。
◎:1.5≦ΔT2
○:0.5≦ΔT2<1.5
×:ΔT2<0.5

0121

得られた結果を表1及び表2に記載する。

0122

0123

0124

上記表より、本発明の要件を満足する塗装体(No.1〜12)は、いずれも良好な放熱特性を維持しつつ、しかも、優れた自己冷却性を有している。特に、自己冷却性の指標である式(4)において、Q値(=0.9a−b)が0.045以上を遥かに超えるNo.1〜8は、極めて優れた自己冷却性を発揮しており、Q値が大きい程、自己冷却性に優れていることが分かる。

0125

このうち表1のNo.3及び7は、表面にカーボンブラック含有塗膜を被覆し、裏面には塗膜のみ被覆した(添加剤なし)例;No.6/No.12は、表面/裏面にカーボンブラック含有塗膜を被覆し、裏面/表面に酸化チタン含有塗膜を被覆した例;No.10は、表裏面にいずれも、メタリック調外観塗膜を被覆した例;No.11は、表面にAlフレーク含有塗膜を被覆し、裏面にカーボンブラック含有塗膜を被覆した例であるが、いずれも本発明の要件を満足しているので、優れた自己冷却性を有しており、放熱特性も良好である。

0126

また、表1のNo.1及びNo.11は、裏面の塗膜にカーボンブラックを添加した例であるが、上式(6)を満足しなくとも、第二の塗装体で定める指標[式(4)及び(5)]を満足する為、自己冷却性も放熱特性も良好である。

0127

これに対し、本発明の要件を満足しない塗装体(No.13〜19)は、いずれも自己冷却性に劣っている。

0128

例えばNo.13は、片面に塗装を施さない片面塗装体であり、ベースとなる放熱特性が得られていない。同様にNo.14は、表面(カーボンブラック含有塗膜)の組成が上式(6)を満足しない為、放熱特性の指標となる式(5)を満たさず、所望の放熱特性が得られない。No.15も、表裏面に添加剤を全く添加せず、塗膜厚が薄い為、所望の放熱特性が得られない。

0129

一方、No.16は、表裏面の放射率が同程度の例であり、所望の自己冷却性が得られない。No.17は、表裏面を同じ方法で黒色化処理した従来例であり、表裏面の放射率が同程度になる為、所望の自己冷却性が得られない。No.18は、表面に比べ、裏面の放射率が大きい例であり、自己冷却性が低下している。

図面の簡単な説明

0130

本発明塗装体において、ΔT1(放熱性)を評価する為に用いた装置の概略図である。
本発明の塗装体における、自己冷却性と放熱特性の双方に優れた範囲を示すグラフである。
実施例1において、ΔT2と、Q値(=0.9a−b)との関係を示すグラフである。
実施例1において、ΔT1と、R値[=(a−0.05)×(b−0.05)]との関係を示すグラフである。

符号の説明

0131

1供試材(被験体)
2断熱材
3発熱体
防護部材(カバー)
5 測温装置

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