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技術 破断分離に適した高強度非調質鋼及びこれを用いた鍛造部品

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 加藤進一郎
出願日 2003年3月14日 (17年9ヶ月経過) 出願番号 2003-071093
公開日 2004年10月7日 (16年2ヶ月経過) 公開番号 2004-277817
状態 特許登録済
技術分野 軸・クランク・連接棒及び関連の軸受
主要キーワード 亀裂進行 ボルト締結孔 案内パイプ 部品強度 破断分離 往復エンジン 残部不可避的不純物 機械加工面
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この項目の情報は公開日時点(2004年10月7日)のものです。
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図面 (3)

課題

高強度でしかも破断分離特性が良く、破断分離による変形の程度が小さい上に破断面に適度な凹凸を付与することのできる破断分離用の高強度非調質鋼を提供することを目的とする。

解決手段

熱間鍛造後において破断により2個以上に分離される鍛造部品用フェライトパーライト組織を有する非調質鋼を、重量%でC:0.2〜0.6%,Si:0.1〜2%,Mn:0.1〜1.5%,S:0.03〜0.2%,P:0.02〜0.15%,Cu:0.03〜1%,Ni:0.03〜1%,Cr:0.05〜1%,V:0.02〜0.4%,Ti:0.01〜0.8%,s−Al:0.005〜0.045%,N:0.008〜0.035%,残部不可避的不純物及びFeから成る組成とする。

概要

背景

概要

高強度でしかも破断分離特性が良く、破断分離による変形の程度が小さい上に破断面に適度な凹凸を付与することのできる破断分離用の高強度非調質鋼を提供することを目的とする。熱間鍛造後において破断により2個以上に分離される鍛造部品用フェライトパーライト組織を有する非調質鋼を、重量%でC:0.2〜0.6%,Si:0.1〜2%,Mn:0.1〜1.5%,S:0.03〜0.2%,P:0.02〜0.15%,Cu:0.03〜1%,Ni:0.03〜1%,Cr:0.05〜1%,V:0.02〜0.4%,Ti:0.01〜0.8%,s−Al:0.005〜0.045%,N:0.008〜0.035%,残部不可避的不純物及びFeから成る組成とする。 なし

目的

本発明によれば、高強度で被削性も良く、また破断分離性能にも優れていて、なお且つ破面に良好な凹凸を形成することのできる高強度非調質鋼を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
5件

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請求項1

重量%で、C:0.2〜0.6%Si:0.1〜2%Mn:0.1〜1.5%S:0.03〜0.2%P:0.02〜0.15%Cu:0.03〜1%Ni:0.03〜1%Cr:0.05〜1%V:0.02〜0.4%Ti:0.01〜0.8%s−Al:0.005〜0.045%N:0.008〜0.035%残部不可避的不純物及びFeから成り、熱間鍛造後において破断により2個以上に分離される鍛造部品用フェライトパーライト組織を有する破断分離に適した高強度非調質鋼

請求項2

請求項1において、鋼中のTiN介在物最大直径が5μm以上且つその量が数密度で5個/mm2以上であることを特徴とする破断分離に適した高強度非調質鋼。

請求項3

請求項1,2の何れかにおいて、パーライト面積率が20%以上であることを特徴とする破断分離に適した高強度非調質鋼。

請求項4

請求項1〜3の何れかにおいて、以下の式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする破断分離に適した高強度非調質鋼。式(1):0.65≦C−0.125Ti+0.428N+0.07Si+0.16Mn−0.27S+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V≦0.96式(2):134C−3.6Si+24Mn+22Cu+32Ni+30Cr−12Ti+41N≧31

請求項5

請求項1〜4の何れかにおいて、下記A群の成分の何れか1種若しくは2種以上及び/又は下記B群の成分の何れか1種若しくは2種以上を重量%で下記量で更に含有することを特徴とする破断分離に適した高強度非調質鋼。A群Pb:≦0.3%Te:≦0.3%Ca:≦0.01%Bi:≦0.3%B群Nb:≦0.2%Zr:≦0.5%B:≦0.01%

請求項6

請求項1〜5の非調質鋼熱間鍛造して成り、破断分離後破面の表面粗さRaが10μm以上であることを特徴とする鍛造部品

請求項7

請求項6において、前記鍛造部品が内燃エンジン用のコネクティングロッドであることを特徴とする鍛造部品。

--

0001

この発明は鍛造後に2個以上に破断分離されるコネクティングロッド等の素材として好適な高強度非調質鋼及びこれを用いた鍛造部品に関する。

0002

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば図3に示す内燃往復エンジンのコネクティングロッド(以下コンロッド)200は、従来、図3に示しているようにその全体を鍛造で一体に成形加工し、そして仕上げ機械加工を施した後に分離部Pで機械加工により切断分離し、これにより小端部202とロッド部(Iセクション部)204と大端部206の半体206Aとを一体に有する本体側の第1部品と、大端部206の半体206Bからなる第2部品とに分離し、製造していた。

0003

しかしながらこの製造方法の場合、切断部分に切代として余分な材料を要するとともに、切断後に分離面切削加工または研磨加工等によって仕上げる必要があり、多大な時間の浪費と価格の上昇をもたらしていた。
更に接合面の平面度や強度を確保するために、ある程度の表面積が必要となり、重量が増える問題があった。
更にこのような方法ではいくらクランクシャフト組付前に精度良く加工を施したとしても、加工後に分解してクランクシャフトに組付けるときに接合面で横滑りが生じ、組付精度即ち真円度が悪化する問題があった。

0004

このためノックピンを入れたり案内パイプを使用したりして横滑りを防止しているが、それでも十分な組付精度ないし組付状態での形状精度を確保できているわけではない。
またノックピンや案内パイプを設けることは価格の上昇をもたらすので好ましい方法とは言えない。

0005

そこで欧州ではノックピン等の廃止を目的とし、コンロッドを最終形状に一体に鍛造加工した後、破断分離によって上記の第1部品と第2部品とに分割する手法が用いられている。
このようにして得られたコンロッドの分割面即ち組付接合面は、機械加工面とは異なってランダム凹凸を有する破断面であるので接合面での横滑りが生じず、従って精度良くこれを組付けることができる。

0006

現在欧州ではこのような破断分離加工によってコンロッドを製造するための材料としてXC70(フランス基準)型の鋼が用いられている。この鋼は米国特許5,135,587号等に紹介されており、ほぼ100%パーライト単一組織の鋼であって、重量%で0.6〜0.75%のCと0.2〜0.5%のMn、0.04〜0.12%のS(Mn/S>3)とを含み、残部は鉄と不可避不純物であり、不純物含有率は1.2%を超えない化学組成のものである。
しかしながらこの鋼種は、専ら破断分離のし易さを主眼として開発された鋼種であり、従って上記のような破断分離加工には適しているものの、コンロッドとして必要な疲労強度耐力が低く、更に被削性も悪いといった問題があり、自動車用部品としては適していない。
このため疲労強度,耐力に優れ、また被削性も良好で破断分離に適した鋼種の開発が求められている。

0007

これまでも破断分離が可能な非調質鋼は開発されており、例えば下記特許文献1には、高強度で破断分離が可能なコンロッド用非調質鋼が提案されている。
しかしながらこれらの求めるところは、機械加工で付与した切欠きを起点に破断分離してフラット破面を得ることであり、破断面が適度な凹凸を有していないために、エンジンへの組付時やエンジン回転中に接合面での横滑りが生じ、真円度が劣化する恐れがある問題がある。

0008

以上コンロッドを例として説明したが、かかるコンロッドのように鍛造後に2個以上の個別部品に分離してクランクシャフトに連接する部品或いは鍛造後に破断分離して製造されるその他の部品においても事情はほぼ同様である。

技術分野

0009

【特許文献1】
特開平7−338650号公報

0010

本発明の破断分離に適した高強度非調質鋼及びこれを用いた鍛造部品はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1は高強度非調質鋼に関するもので、重量%で、C :0.2〜0.6%,Si:0.1〜2%,Mn:0.1〜1.5%,S :0.03〜0.2%,P :0.02〜0.15%,Cu:0.03〜1%,Ni:0.03〜1%,Cr:0.05〜1%,V :0.02〜0.4%, Ti:0.01〜0.8%,s−Al:0.005〜0.045%,N :0.008〜0.035%残部不可避的不純物及びFeから成り、熱間鍛造後において破断により2個以上に分離される鍛造部品用フェライトパーライト組織を有することを特徴とする。

0011

請求項2のものは、請求項1において、鋼中のTiN介在物最大直径が5μm以上且つその量が数密度で5個/mm2以上であることを特徴とする。

0012

請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、パーライト面積率が20%以上であることを特徴とする。

0013

請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、以下の式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする。
式(1):0.65≦C−0.125Ti+0.428N+0.07Si+0.16Mn−0.27S+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V≦0.96
式(2):134C−3.6Si+24Mn+22Cu+32Ni+30Cr−12Ti+41N≧31

0014

請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、下記A群の成分の何れか1種若しくは2種以上及び/又は下記B群の成分の何れか1種若しくは2種以上を重量%で下記量で更に含有することを特徴とする。
A群 Pb:≦0.3%,Te:≦0.3%,Ca:≦0.01%,Bi:≦0.3%
B群 Nb:≦0.2%,Zr:≦0.5%,B :≦0.01%

0015

請求項6は鍛造部品に関するもので、請求項1〜5の非調質鋼を熱間鍛造して成り、破断分離後の破面の表面粗さRaが10μm以上であることを特徴とする。

0016

請求項7のものは、請求項6において、前記鍛造部品が内燃エンジン用のコネクティングロッドであることを特徴とする。

0017

【作用】
以上の本発明は、非調質鋼にTi,N,Sを所定量含有させることで鋼中に主としてTiN介在物を析出させ、かかるTiN介在物を所定の存在確率で存在させて、破断分離の際の亀裂の進行方向をTiN介在物で変化させることにより破面に凹凸を付与するものである。
また添加したTiはC及びSと結合してチタン炭硫化物を生成し、その生成によってドリル加工時の被削性を高めることができる。

0018

かかる本発明によれば、高強度で被削性も良く、また破断分離性能にも優れていて、なお且つ破面に良好な凹凸を形成することのできる高強度非調質鋼を提供することができる。

0019

TiN介在物による効果、即ち亀裂の進行方向を変化させる効果はTiN介在物が大きく且つ密度が高いほど大となる。
この意味においてTiN介在物は最大直径が5μm以上で且つその量が数密度で5個/mm2以上としておくことが望ましい(請求項2)。

0020

更に本発明においては、請求項3に従いパーライト面積率を20%以上としておくことが望ましい。
破断分離の際の亀裂の進行方向は、亀裂がパーライトブロックに当ることによっても変化する。
而してパーライトブロックが一定以上の確率で存在していることによって、亀裂の進行方向を変化させる作用も大となり、この意味においてパーライト面積率は20%以上としておくことが望ましい。

0021

本発明では、請求項4に従って式(1),式(2)を満たすように各成分を調整しておくことが望ましい。
ここで式(1)は硬さを規定する式であり、また式(2)はパーライト面積率を規定する式である。

0022

本発明では、更に請求項5に規定する各成分を選択的元素として添加することができる。
また本発明の非調質鋼は、熱間鍛造後において鍛造品を破断分離したとき、破面の表面粗さRaが10μm以上となるようにしておくことが望ましい(請求項6)。
このように破面の表面粗さRaを10μm以上となしておくことで、再組付けの際の組付精度を高めることができるとともに再組付けをしたとき若しくはその後の横滑りを良好に防止することができる。

0023

本発明は特に内燃エンジン用のコネクティングロッドに適用して効果的なものである(請求項7)。

0024

次に本発明における各化学成分等の限定理由を以下に詳述する。
C:0.2〜0.6%
Cは強度を確保するために必要な元素であるとともに、適度な凹凸を有する破面を得るために必要な元素である。
本発明鋼のようなフェライトパーライト組織の場合、脆性的な破壊を生じる場合の破面はフェライト・パーライト組織境界のみならず、パーライトブロックの境界で亀裂進展方向が変化する。
よって適度なパーライト量、即ちパーライトブロックサイズを有することは、亀裂を直線的に進行させず、ある程度のばらつきで亀裂進行させることができるために必要で、これにより適度な凹凸を有する破面を得ることができる。
周知の通りパーライト量はC含有量の影響を大きく受けるため、適度な破面の凹凸を得るためにも0.2%以上のC含有が必要である。
しかし過剰に添加すると硬さが高くなり被削性が低下するので、0.6%以下とする必要がある。

0025

Si:0.1〜2%
Siは鋼溶製時において脱酸作用および脱硫作用を有しているとともに、フェライト中に固溶し、破断分離時塑性変形の主な原因である軟質相のフェライトの強度を向上させることによる脆性破面率を高め、破断面の密着性を向上させる。
このような効果を得るためには0.1%以上含有させることが必要である。
しかし多量の含有は硬さを高くし過ぎて被削性を低下させるので2%以下とする。

0026

Mn:0.1〜1.5%,Cr:0.05〜1%
Mn,Crは部品の強度を確保するのに有効な元素であるとともにパーライト量を増加させるため、破断分離時の適度な破面の凹凸を確保するためには必須な元素である。
このような効果を得るためにはMn:0.1%以上,Cr:0.05%以上含有させることが必要である。
しかしながら多量に添加するとパーライトラメラ間隔を小さくして延性向上,破断分離性の悪化を招くとともに鍛造後にベイナイトを発生させ、硬さを著しく増加させて被削性を低下させてしまうため、それぞれの上限をMn:1.5%,Cr:1%とする。

0027

P:0.02〜0.15%
Pは通常粒界への偏析により靭性を低下させる元素として低く抑えるのが一般的であるが、破断分離を行う本発明においては脆性破面率を高め、破断面の密着性を向上させる元素として非常に有効に作用するため、積極的な添加を行う。
しかし多量に添加してもその効果が飽和する上、熱間加工性阻害してしまうため0.02〜0.15%とした。

0028

S:0.03〜0.2%
一般にSはMnと硫化物を生成し、被削性を改善するために添加される。
またSは、添加された全量又はその一部がCとともにTiと結合してTiの炭硫化物系介在物を形成し、ドリル被削性を向上させる効果がある。
更に適度なSの添加はPと同様粒界脆化を起こし、脆性破面率を高め、破断面の密着性を向上させる上で有用である。
しかし必要以上に添加しても熱間加工性を劣化させるため、上限を0.2%とする。

0029

Cu,Ni:0.03〜1%
Cu,Niは不可避的に鋼に含まれて来る元素であり、0.03%以下にすることは多大な努力を必要とし経済的に不利である。
一方Mn,Crと同様に強度を高めるためには有効な元素であるが多量の添加も同様に経済的に不利となるのみならずベイナイトの発生を招き、被削性を大幅に低下させるためその上限を1%以下にする。

0030

V:0.02〜0.4%
VはCやNと化合して微細炭窒化物を形成し、鍛造後の強度を高くするので、そのために含有させる元素である。その効果を得るためには0.02%以上含有させる。
但し多くなると効果が飽和し、更に硬さ増加により被削性を低下させるので上限を0.4%とする。

0031

Ti:0.01〜0.8%
TiはVと同様、炭素窒素と微細な炭(窒)化物を生成し、鍛造後の強度を高める元素である。
またTiは添加された全量又はその一部がC,Sと結合してTiの炭硫化物系介在物を形成することにより、ドリル被削性を向上させる効果がある。
更にTiは適度な破面を得るために有効なTiNの生成に必要な元素である。適度なTiNの晶出は、亀裂の発生及び亀裂進展方向の変化のために重要な働きをなす。
その効果を得るためためには0.01%以上の含有が必要である。
一方0.8%を超えて含有させてもその効果が飽和し、経済的に不利であるのみならず過度の添加は熱間加工性を阻害するため上限を0.8%とする。

0032

sol−Al:0.005〜0.045%
酸溶解性Alは鋼中のNと窒化物を形成し、微細に分散して熱間鍛造時の結晶粒成長を抑制する。
この効果を確実にするためには0.005%以上の存在が必要である。
一方多量に存在しても効果が飽和するのみでなく、結晶粒微細化により材料の延性が向上し、破断分離後の破面の密着性低下につながるため0.045%以下にする必要がある。

0033

N:0.008〜0.035%
Nは適度な破面の凹凸を形成するために必要なTiN介在物の形成のために必須な元素である。
また適度な大きさ且つ適度な量で晶出したTiN介在物は適度な凹凸を有する破面の確保には非常に有効となる。
このような効果を得るためにはNは0.008%以上の添加が必要である。
しかし過度に添加するとTiN介在物の過度の晶出の原因となり、而して過度のTiN介在物はドリル被削性低下の原因となるため上限を0.035%とする。
また微細析出したTi炭(窒)化物はフェライト強化によりマトリックスの強度を増し、鍛造後の強度を高める効果も有するため、この意味でも適量のN添加が必要である。

0034

本発明鋼には、上記成分に加え、被削性向上のためにPb,Te,Ca,Biのうちから選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良い。
更にはこれに加えてNb,Zr,Bの1種又は2種以上を含んでいても良い。
これらの合金元素の効果と含有量を限定する理由について説明する。

0035

Pb:0.3%以下,Te:0.3%以下,Ca:0.01%以下,Bi:0.3%以下
Pb,Te,Ca,Biは何れも被削性を向上させるのに有効な元素であるので、鍛造品において被削性が更に良好であることが要求される場合には必要に応じてこれらのうちから選ばれる1種又は2種以上を適量添加する。
しかしながら添加量が多過ぎると強度や熱間加工性を低下させるので、添加するとしてもPbは0.3%以下、Teは0.3%以下、Caは0.01%以下、Biは0.3%以下とする。

0036

Nb:0.2%以下,Zr:0.5%以下,B:0.01%以下
Nb,Zrは高温における結晶粒の過度の粗大化を防ぐのに有効な元素であるが、過剰に添加すると粗大な炭窒化物が凝固時晶出し、部品強度を著しく低下してしまうため、添加するとしてもNbは0.2%以下、Zrは0.5%以下とする。
Bは焼入性を向上させ強度を高めるのに有効な元素であるが、過剰に添加すると熱間加工性の悪化を招くため0.01%以下とする。

0037

鋼中TiN介在物の最大直径が5μm以上且つその量が数密度で5個/mm2以上
本発明鋼は適度な量のTiを添加するため、Ti炭(窒)化物が微細析出する。
微細析出したTi炭(窒)化物はフェライト強化によりマトリックスの強度を増すため鍛造後の強度を高めるには有効であるが、破断分離時の亀裂進展は直線的となり、破面は凹凸の少ない、フラットな脆性破面となる原因となる。
しかし適度な大きさで晶出したTiN介在物は破断分離時の亀裂進行方向を変える効果を有する。
よってある程度の大きさを有し且つ適度な量で晶出したTiN介在物の存在は、適度な凹凸を有する破面の確保には非常に有効となる。
またTiN晶出介在物は弾性率が低く且つマトリックスとの密着性が良いため亀裂を効果的に進展させる効果もあり、脆性破面率を高め、破断面の密着性を向上させる効果も有する。
このような効果を得るためにはTiN介在物の大きさは最大直径で5μm以上且つその量が数密度で5個/mm2以上である必要がある。
また上記を得るためにはTi及びNが質量%で0.01%以上,0.008%以上であることが必要で、製造時の鋼塊凝固速度は5℃/min以上であることが望ましい。

0038

式(1):0.65≦C−0.125Ti+0.428N+0.07Si+0.16Mn−0.27S+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V≦0.96
上式はコンロッド等として適切な強度を得るために必要な炭素当量(Ceq)を規定している。
一般に自動車エンジンに用いられるコンロッドの硬さは20〜35HRCであり、20HRC以下では十分な強度が得られないとともに破断分離時の変形が大きく、破断分離工程を適用できない。
一方35HRC以上では被削性が低下するためコンロッドの加工に多大なコストを要する。
このため20〜35HRCに硬さを調整するのが望ましい。
このような硬さを得るために炭素当量(Ceq)を0.65〜0.96とする。

0039

式(2):134C−3.6Si+24Mn+22Cu+32Ni+30Cr−12Ti+41N≧31
前述のように、本発明鋼のようなフェライト・パーライト組織の場合、脆性的な破壊を生じる際の破面はフェライト・パーライト組織境界のみならず、パーライトブロックの境界で亀裂進行方向が変化する。
よって適度なパーライト量、即ちパーライトブロックサイズを有することは、亀裂の直線的な進行ではなく、ある程度の亀裂進行方向の変化による破面の適度な凹凸のため望ましい。
そのためにはパーライト面積率を20%以上にすることが望ましい。
このパーライト面積率はCだけではなくSi,Mn,Cu,Ni,Cr含有量の影響を受けて変化する。そこでパーライト面積率を20%以上にするため、式(2)を満足させることが望ましい。

0040

破断分離後の表面粗さRaが10μm以上
破断分離後の表面粗さが小さいと、コンロッド等組付時の横ずれの原因となり、製造工程内での能率低下及び精度低下の原因となる。
このため高能率で精度良く組付けを行うためには、破断分離によって得られる表面粗さRaが10μm以上であることが望ましい。
この表面粗さは、適度なパーライト面積率を有し且つ適度な大きさ且つ適度な量のTiN介在物の晶出により達成することができる。

0041

【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
表1及び表2に示す化学組成の本発明鋼及び比較鋼を溶製した後造塊し、熱間鍛造を行って50mm角鍛造素材とし、これを1200℃で60分加熱保持した後、65×65×20mmの板に熱間鍛造を行い、適当な間隔をおいて床に放置し室温まで放冷した。
この板材より、図1に示しているようなコンロッドの大端部を模擬した試験片10を切出し、試験に供した。
図1において12は試験片10の中央穴であり、14はボルトを挿入して破断分離後の一対の分離体締結するためのボルト締結孔である。

0042

また一部の供試材についてドリル加工能率を測定し、被削性の評価を行った。
硬さは各鍛造品の中心部の硬さをロックウェル硬度計で測定した。
またパーライト面積率は100倍で撮影した光学顕微鏡組織写真を用い画像解析装置で求めた。

0043

更に鋼中TiN介在物は、熱間鍛造材より試料鍛造方向と平行に切り出し、鏡面研磨を行った後、倍率400倍で光学顕微鏡観察を60視野観察し、他の介在物と区分しながらその個数を測定した後、その個数を測定面積で除した値を数密度(個/mm2)と定義し調査を行った。
また介在物最大直径も同様に倍率400倍の光学顕微鏡観察を60視野実施し調査した。

0044

破断分離特性は、大端部を模した試験片10に機械加工で深さ0.5mm,先端R0.1mmの形状の切欠16を施した後、室温で破断分離を行い、その時の真円度変化で評価した。
ここで真円度変化は靭性を表す指標としての意味を有している。即ち靭性が低く脆い材料は破断分離がし易く、且つ破断分離後において変形の程度も小さくなって真円度変化は小さくなる。
一方で靭性の高い材料は破断分離の際の破面の凹凸が靭性の低い材料に比べて大きくなる一方で、破断分離の際に割れ難いためにその際の変形の程度が大きくなって、真円度変化が大きくなる。
そこでここでは破断分離特性を調べるため、真円度変化を調査してその評価を行った。

0045

また破断後の破面22(図2(B)参照)を接触式粗さ計で測定し、Raを求めて破面の凹凸度合い定量化した。
ここで破断分離は、図2(A)に示しているように試験片10の中央穴12に2分割の割型18を挿入し、その割型18の間にクサビ20を挿入して、これを油圧プレスで押し込むことにより実施した。

0046

更に鍛造材より引張試験片を切り出し、コンロッドの座屈強度の評価に用いられる0.2%耐力の測定を行った。
更に工具寿命は、以下の表5に示す条件によるドリル試験を行って測定した。
これらの結果を、発明鋼No.1を100とした場合の相対的な値でドリル加工能率として表3及び表4に示している。
また比較のために、従来鋼として欧州で破断分離工程が適用されるコンロッド用非調質鋼XC70の試験結果も併せて示した。

0047

尚本発明例及び比較例の各鋼には、表1及び表2に示す成分の他に、鋼に通常含まれるMo:≦0.05%,O:≦0.005%の不純物が含まれている。
また今回の試験では発明鋼,比較鋼とも、その鋼塊の凝固速度は5℃/min以上であった。

0048

【表1】

0049

【表2】

0050

【表3】

0051

【表4】

0052

【表5】

0053

これらの表の結果に見られるように、本発明の条件を満たす成分のNo.1〜15では何れも高い強度を有しており、しかも破断分離後の真円度変化が小さいにも拘らず破面の凹凸が大きく、優れた破断分離特性を有している。
尚各実施例ではフェライトブロックのサイズが何れも15μm以上であった。

0054

これに対して比較例のものは以下のような問題点を有している。
先ず比較例Aは、C含有量が本発明の下限値である0.2%よりも低い0.11%であり、このため硬さが低く強度低下,破断後の真円度変化の増大に繋がっている。
またパーライト面積率が小さいため、破断粗さも小さく最組付性が悪いものとなっている。

0055

比較例Bは、逆にCの含有量が本発明の上限値である0.6%よりも高い0.65%であり、このため硬さが硬く被削性の点で問題がある。

0056

比較例Cは、Siの含有量が本発明の上限値である2%よりも多い2.80%であり、このため硬さが硬く被削性が悪化している。

0057

比較例Dは、Sの含有量が本発明の下限値である0.03%よりも低い0.005%であり、そのため被削性が悪化している。また真円度変化もやや大きい。

0058

比較例Eは、Sの含有量が高く、熱間鍛造時に割れが発生している。

0059

次に比較例Fは、Mn含有量が本発明の下限値である0.1%よりも低い0.03%であり強度不足となっている。

0060

比較例Gは、逆にMn含有量が本発明の上限値である1.5%よりも多い1.73%であり、そのため鍛造後にベイナイトが発生し、硬さが非常に高く、被削性が悪くなっている。

0061

比較例Hは、P含有量が低いため、破断分離後の真円度変化が大きくなっている。

0062

比較例Iは、P含有量が0.19%となっており、本発明の上限値の0.15%よりも高過ぎるため鍛造時に割れが発生している。

0063

比較例Jは、Cr含有量が1.52%と本発明の上限値である1%よりも高過ぎるため、鍛造後にベイナイトが発生し、硬さが非常に高くなり被削性が悪い。

0064

比較例Kは、V含有量が0.01%で本発明の下限値である0.02%よりも低いため、硬さが低く強度不足である。また真円度変化の値も悪い。

0065

比較例Lは、V含有量が0.44%と本発明の上限値である0.4%よりも高過ぎるため、硬さが高く被削性が悪くなっている。

0066

比較例Mは、Tiが無添加であるため、同一硬さの実施例と比べ強度が低下しているとともに、TiN生成量が実質的に無いため破断分離後の粗さが小さくなっている。また被削性も悪化している。

0067

比較例Nは、Ti含有量が0.852%と本発明の上限値である0.8%よりも高過ぎるため、熱間鍛造時に割れが発生している。

0068

比較例Oは、Al含有量が0.003%と本発明の下限値である0.005%よりも少なく、脱酸が不十分で鋳造欠陥が発生した。

0069

比較例Pは、N含有量が0.006%と本発明の下限値である0.008%よりも少ないため、破断分離後の適度な破面粗さに必要な数密度及び大きさのTiNが形成されず再組付性が悪い。

0070

比較例Qは、逆にN含有量が0.036%と本発明の上限値である0.035%よりも高いため鋳造欠陥が発生している。

0071

比較例Rは、快削元素を過剰に添加しているため熱間鍛造時割れが発生している。

0072

比較例Sは、快削元素を過剰に添加しているため熱間鍛造時割れが発生している。

0073

比較例Tは、Cuが1.12%と本発明の上限値である1%よりも高過ぎ、熱間鍛造後空冷ままでもベイナイトが発生し、硬さが著しく高く被削性も悪化している。

0074

比較例Uは、Niが1.23%と本発明の上限値の1%よりも高過ぎるため、熱間鍛造後空冷ままでもベイナイトが発生し、硬さが著しく高く被削性も悪化している。

0075

以上のように本実施例のものは、相反する特性であるところの真円度変化と表面粗さの両特性が共に良好となっている。また併せて優れたドリル加工性を備えている。
更に従来材(XC70)との比較からも明らかなように、かかるXC70に対し高い強度を保持している。

課題を解決するための手段

0076

以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

図面の簡単な説明

0077

以上の本発明によれば、高強度でしかも破断分離特性が良好であり、破断分離の際の歪みないし変形が小さくしかも破面に良好な凹凸を付与し得て、再組付時の組付精度が高く保持でき、更にその後における横ずれも良好に防止することのできる破断分離用の高強度非調質鋼を提供することができる。

図1
本発明の実施例において作成した試験片の形状を示す図である。
図2
(A)図1の試験片の破断分離方法の説明図である。
(B) 上記試験片の破断状態及び再組付状態を示す図である。
図3
従来のコンロッドの一例を示す図である。

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