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技術 脱水素方法、水素粉砕方法、希土類永久磁石の製造方法

出願人 TDK株式会社
発明者 坂本篤司石坂力
出願日 2003年2月26日 (17年9ヶ月経過) 出願番号 2003-050166
公開日 2004年9月16日 (16年3ヶ月経過) 公開番号 2004-256877
状態 特許登録済
技術分野 金属質粉又はその懸濁液の製造 水素、水、水素化物 水素、水、水素化物 硬質磁性材料
主要キーワード 変化プロファイル 保持終了後 最終処理温度 検討実験 排気終了後 被処理粉末 残留水素量 混合微粉末
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重要な関連分野

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図面 (18)

課題

脱水素過程短時間化を図るとともに微粉砕工程における粉砕性を向上させることができ、しかも最終的に得られる磁石磁気特性の向上を図ることのできる技術を提供することを目的とする。

解決手段

金属を不活性ガス雰囲気中に配置し、炉内を昇温させる。そして、炉内を真空状態とした後、さらに昇温を行う。炉内を当初不活性ガス雰囲気としつつ炉内を昇温させた実施例1では、炉内を真空状態としてから昇温を開始した比較例1よりも短時間で脱水素処理が完了している。また、不活性ガス雰囲気のまま脱水素処理を終了させた比較例2よりも、α—Feの析出が抑制される。

概要

背景

R—T—B系永久磁石の製造方法に関し、磁石生産性の向上及び磁気特性の向上を目的として、水素吸収処理脱水素処理を順次経ることにより原料合金粉砕する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2。)。

概要

脱水素過程短時間化をるとともに微粉砕工程における粉砕性を向上させることができ、しかも最終的に得られる磁石の磁気特性の向上をることのできる技術を提供することを目的とする。金属を不活性ガス雰囲気中に配置し、炉内を昇温させる。そして、炉内を真空状態とした後、さらに昇温を行う。炉内を当初不活性ガス雰囲気としつつ炉内を昇温させた実施例1では、炉内を真空状態としてから昇温を開始した比較例1よりも短時間で脱水素処理が完了している。また、不活性ガス雰囲気のまま脱水素処理を終了させた比較例2よりも、α—Feの析出が抑制される。

目的

本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、脱水素処理の短時間化、微粉砕工程における粉砕性の向上、最終的に得られる磁石の磁気特性の向上を図ることのできる技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
0件

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請求項1

水素を含む金属から水素を放出させる脱水素方法であって、前記金属を不活性ガス雰囲気が導入された炉内に配置し、前記炉内を第1の温度まで昇温させた後、前記炉内を所定以上の真空度とし、しかる後に、前記第1の温度より高い第2の温度まで前記炉内を昇温させることを特徴とする脱水素方法。

請求項2

前記第1の温度を所定時間だけ維持することを特徴とする請求項1に記載の脱水素方法。

請求項3

前記炉内を前記第1の温度に維持している間に、当該炉内の真空引きを開始することを特徴とする請求項2に記載の脱水素方法。

請求項4

前記第1の温度が、330〜400℃であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の脱水素方法。

請求項5

前記第2の温度を所定時間だけ維持することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の脱水素方法。

請求項6

前記第2の温度が、450〜800℃であることを特徴とする請求項5に記載の脱水素方法。

請求項7

金属に水素を吸収させる吸収工程と、水素が吸収された前記金属から水素を放出させる脱水素工程と、を備え、前記脱水素工程は、不活性ガスが導入された雰囲気下に前記金属を配置し、前記雰囲気の昇温を開始した後、前記雰囲気が所定の温度に至るまでの過程で、当該雰囲気を所定の圧力以下に減圧することを特徴とする水素粉砕方法。

請求項8

前記雰囲気の温度を所定時間保持した後に当該雰囲気の減圧を開始することを特徴とする請求項7に記載の水素粉砕方法。

請求項9

前記雰囲気が前記所定の温度に至った時点で、当該雰囲気の温度を所定時間保持することを特徴とする請求項7または8に記載の水素粉砕方法。

請求項10

前記所定の圧力が、1.0×10−1Torr以下であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の水素粉砕方法。

請求項11

実質的に水素からなる雰囲気下で終了する前記吸収工程の後、前記雰囲気中に導入するガスを水素から不活性ガスに切り替えた後に前記脱水素工程が行われることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の水素粉砕方法。

請求項12

R−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeおよびCoの1種または2種、B=ホウ素)系希土類永久磁石を製造する方法であって、所定形態原料合金の一部または全部に水素吸収および脱水素処理を施して水素粉砕物を得る工程と、前記水素粉砕物、または前記水素粉砕物を機械的な手段により粉砕した粉末微粉砕して微粉砕粉末を得る工程と、前記微粉砕粉末を磁場中で所定形状に成形した後に焼結する工程と、を含み、前記脱水素処理は、不活性ガスが導入された雰囲気下に配置した前記原料合金を、第1の温度まで昇温させた後、前記雰囲気の真空度を所定以上に高めるとともに、前記原料合金を前記第1の温度より高い第2の温度まで昇温させることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。

請求項13

前記原料合金は、最終的に得られる希土類永久磁石と実質的に一致する組成を有する合金であることを特徴とする請求項12に記載の希土類永久磁石の製造方法。

請求項14

前記原料合金は、R2Fe14B化合物主体とするR−T−B合金およびRおよびTを主体とするR−T合金を含むことを特徴とする請求項12に記載の希土類永久磁石の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、水素を含んだ金属(合金を含む)の脱水素方法、金属の水素粉砕方法、希土類元素R、FeおよびCoの1種または2種T、ホウ素Bを主成分とする希土類永久磁石の製造方等に関する。

0002

R—T—B系永久磁石の製造方法に関し、磁石生産性の向上及び磁気特性の向上を目的として、水素吸収処理脱水素処理を順次経ることにより原料合金粉砕する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2。)。

0003

【特許文献1】
特公平3−40082号公報
【特許文献2】
特公平4−24401号公報

0004

従来、表1に示すように、一般的に行われている工程(A)では、吸水素の段階では炉内雰囲気をH2とし、室温にて処理を行っている。そして、脱水素の段階では炉内雰囲気をArガス不活性ガス)に置換し、例えば600℃まで昇温させ、処理を行っている。

0005

【表1】

背景技術

0006

また、特許文献1および2に示された工程(B)では、吸水素の段階では炉内雰囲気をH2とし、炉内圧力を200Torr〜50kg/cm2として処理を行い、脱水素の段階では、炉内温度を100℃以上に昇温させ、処理を行っている。

0007

しかしながら、工程(A)のように、脱水素の段階で炉内雰囲気をArガスに置換し、600℃で処理を行うと、金属間化合物分解反応を起こし、硬度の高いα—Feが析出する。その結果、脱水素後に行われる微粉砕工程における粉砕性の低下や、最終的に得られる磁石の磁気特性が損なわれるという問題がある。

0008

これに対し、表1の工程(C)に示すように、脱水素の処理を真空中で行うことにより、α—Feの析出を抑制する記述が既に提案されている(例えば、特許文献3。)。

0009

【特許文献3】
特開平5−101918号公報

0010

脱水素の処理を真空中で行うには、その前段の吸水素の段階で、炉内雰囲気を大気圧のH2として処理を行っているため、水素吸収処理が完了した時点で真空ポンプを作動させ、炉内圧力を真空状態にしなければならない。このとき、このような処理を行う処理炉では、真空度に基づいた管理(炉の作動制御)を行っているのが一般的である。
このため、図17に示すように、水素吸収処理の完了後、真空ポンプを作動させ、炉内が所定の真空度に到達した時点で、ヒータを作動させて炉内の加熱を開始する(図17において(d)の部分)わけであるが、吸水素完了直後の被処理粉末から排出される水素の量は多く、所定の真空度に到達するまでに時間が掛かる。また、ヒータを作動させて炉内の加熱を開始すると、所定の温度(例えば320℃付近)で、被処理粉末から水素が放出され、これによって炉内の真空度が低下する。これによってヒータの作動が停止されるとともに、所定の真空度に到達するまで真空ポンプが作動し(図17において(e)の部分)、ここでも時間を要することになる。その結果、炉内温度を最終的に予め設定した温度まで昇温させて脱水素処理を完了するまでに長い時間がかかり、水素粉砕工程全体が長時間化してしまうのである。

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、脱水素処理の短時間化、微粉砕工程における粉砕性の向上、最終的に得られる磁石の磁気特性の向上を図ることのできる技術を提供することを目的とする。

0012

本発明者は、不活性ガス雰囲気中で金属を加熱した後、雰囲気を真空状態とし、さらに加熱を行うことで、微粉砕工程における粉砕性、および最終的に得られる磁石の磁気特性を向上させつつ、短時間で脱水素処理が行えることを見出した。
これに基づいてなされた本発明の脱水素方法は、金属(合金を含む概念である)を不活性ガスが導入された雰囲気の炉内に配置し、炉内を第1の温度まで昇温させた後に炉内を所定以上の真空度とし、しかる後に、第1の温度より高い第2の温度まで炉内を昇温させることを特徴とする。
このとき、第1の温度は、金属中から水素が大量に放出される温度を上回る、例えば330〜400℃とし、所定時間だけ維持するのが好ましい。また、炉内を第1の温度に維持している間に、炉内の真空引きを開始するのが好ましい。さらに、第1の温度で時間を維持することなく真空引きを開始し、所定以上の真空度にすることも可能である。
また、第2の温度についても、例えば450〜800℃とし、所定時間だけ維持するのが好ましい。

0013

本発明の水素粉砕方法は、金属に水素を吸収させる吸収工程と、水素が吸収された金属から水素を放出させる脱水素工程と、を備え、脱水素工程は、不活性ガスが導入された雰囲気下に金属を配置し、雰囲気の昇温を開始した後、雰囲気が所定の温度に至るまでの過程で雰囲気を所定の圧力以下に減圧させることを特徴とする。
このとき、雰囲気の減圧を開始するに際しては、雰囲気の温度を所定時間一定に保持した後に、減圧を開始するのが好ましい。このときの温度保持時間は、0.1〜5時間とし、保持温度は、例えば330〜400℃の範囲内で設定することができる。
また、雰囲気が所定の温度に至った時点で、その雰囲気の温度を所定時間保持するのが好ましい。このときは、保持時間を2時間以上とし、保持温度は、例えば450〜800℃の範囲内で設定することができる。
また、減圧後の所定の圧力は、ほぼ真空状態(例えば1.0×10−1Torr以下)とするのが好ましい。

0014

ところで、吸収工程が実質的に水素からなる雰囲気下で終了する場合、この吸収工程の後、雰囲気中に導入するガスを水素から不活性ガスに切り替えた後に脱水素工程を行うのが好ましい。

0015

本発明は、R−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeおよびCoの1種または2種、B=ホウ素)系希土類永久磁石を製造する方法として捉えることもできる。この方法は、所定形態の原料合金の一部または全部に水素吸収および脱水素処理を施して水素粉砕物を得る工程と、水素粉砕物、または水素粉砕物を機械的な手段により粉砕した粉末を微粉砕して微粉砕粉末を得る工程と、微粉砕粉末を磁場中で所定形状に成形した後に焼結する工程と、を含む。そして、脱水素処理は、不活性ガスが導入された雰囲気下に配置した原料合金を、第1の温度まで昇温させた後、雰囲気の真空度を所定以上に高めるとともに、原料合金を第1の温度より高い第2の温度まで昇温させる。
このとき、原料合金は、最終的に得られる希土類永久磁石と実質的に一致する組成を有する合金とすることもできるし、R2Fe14B化合物主体とするR−T−B合金およびRおよびTを主体とするR−T合金を含むものとすることもできる。前者がシングル法、後者が混合法と称される製造方法を示している。なお、後者については、3種類以上の合金からなる場合をも含む。

0016

ところで、上記したような水素吸収工程で行われる水素吸収反応は発熱反応であるが、温度上昇に伴って吸収水素量が低下すること、冷却等に要する時間が長くなり生産性の低下を招く。しかし、現状、水素吸収反応時の温度上昇を抑制し、かつ長時間を要することなく水素吸収を行うことのできる方法は見当たらない。
そのような方法について模索していた本発明者らは、水素吸収を、当初、水素ガスのみで開始した後に、水素濃度を低下させるために水素に対して不活性ガスを所定量混入させたところ、水素吸収による金属の発熱反応を抑えることができることを知見した。そして、その後に不活性ガスの混入を停止して、再度水素のみの雰囲気で水素吸収を継続したところ、長時間を要することなく水素吸収を完了できた。つまり、水素吸収処理において、水素の濃度を変化させることにより、短時間でかつ発熱反応を抑制した水素吸収処理を行うことができることを知見した。
このような知見に基づき、金属に水素を吸収させる方法として、金属を水素濃度(a)の水素雰囲気に晒し、所定の時期以降に水素雰囲気の水素濃度を水素濃度(b)に低下させ、水素雰囲気を水素濃度(b)に所定時間だけ維持した後に、水素濃度(c)に上昇させることを特徴とすることもできる。

0017

以上の水素吸収方法において、水素雰囲気は所定の処理室内に形成される。そして、典型的には、水素濃度(a)の水素雰囲気は、この処理室に水素ガスのみを導入することにより形成することができる。
また、水素濃度(b)の水素雰囲気は、水素ガスが導入されている処理室に不活性ガスを導入することにより形成することができる。不活性ガスの導入により処理室内の水素濃度は低下する。
さらに、水素濃度(c)の水素雰囲気は、処理室への不活性ガスの導入を停止するとともに水素ガスを導入することにより形成することができる。水素濃度(c)は、水素濃度(b)を超え、水素濃度(a)以下の範囲で選択することができる。

0018

以上では水素吸収までを対象としたが、この方法は、前記の、金属に水素を吸収させる吸収工程と、水素が吸収された金属から水素を放出させる脱水素工程という基本的に2つの工程を有する水素粉砕方法に適用することもできる。すなわち、吸収工程では、実質的に水素からなる第1の雰囲気に金属を配置し、第1の雰囲気中に不活性ガスを供給することにより第2の雰囲気とし、さらに、第2の雰囲気への不活性ガスの供給を停止するとともに水素ガスを供給することにより実質的に水素からなる第1の雰囲気に戻すのである。
以上の特徴ある水素吸収工程を含む構成により、水素吸収工程における発熱反応を抑制し、かつ長時間を要することなく吸収工程を完了させることができるので、水素粉砕を効率よく行うことを可能とする。

0019

また、第1の雰囲気中への不活性ガスの供給は、金属が水素の吸収を開始した直後から行うことが望ましい。発熱反応を有効に抑制するためである。
さらに、第2の雰囲気は、その水素濃度を98〜99.5%の範囲に制御することが望ましい。発熱反応を抑制しつつ水素吸収を進行させるためである。

課題を解決するための手段

0020

以上の水素吸収方法ないし水素粉砕方法を適用したR−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeおよびCoの1種または2種、B=ホウ素)系希土類永久磁石の製造方法を提供することもできる。この方法は、所定形態の原料合金の一部または全部を水素吸収および脱水素処理を施して水素粉砕物を得る工程と、水素粉砕物または水素粉砕物を機械的な手段により粉砕した粉末を微粉砕して微粉砕粉末を得る工程と、微粉砕粉末を所定形状に成形した後に焼結する工程とを含む。そして、脱水素処理では、不活性ガスからなる雰囲気下に配置した原料合金を、第1の温度まで昇温させた後、雰囲気の真空度を所定以上に高めるとともに、原料合金を第1の温度より高い第2の温度まで昇温させる。また、水素吸収処理では、原料合金を水素濃度(a)の水素雰囲気に晒し、所定の時期以降に水素雰囲気の水素濃度を水素濃度(b)に低下させ、水素雰囲気を水素濃度(b)に所定時間だけ維持した後に、水素濃度(c)に上昇させる。

0021

以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の脱水素方法は、金属を不活性ガス雰囲気の炉内に配置し、炉内を第1の温度まで昇温させた後に炉内を所定以上の真空度とし、しかる後に、第1の温度より高い第2の温度まで炉内を昇温させる。このように、不活性ガス中で炉内温度を昇温することで、金属に含まれる水素を効率的に放出させることができる。そして、不活性ガス中で、脱水素処理の最終処理温度まで昇温してしまうと、金属中にα—Feが析出してしまうため、これを防止するために炉内を真空状態とするのである。
このとき、第1の温度を、330℃以上とすることで、金属に含まれる水素が大量に放出される温度域(例えば320℃付近)において、雰囲気を不活性ガスとしておき、無用に真空引きすることを防ぐ。また、第1の温度を400℃以下とすることで、不活性ガス雰囲気下でα—Feが合金中に析出するのを防ぐ。この第1の温度は、脱水素を促すため、所定時間、好ましくは0.5〜5時間だけ維持する。
そして、炉内を第1の温度に維持している間に、炉内の真空引きを開始する。炉内の真空度が1.0×10−1Torr以下となった時点で、炉内の昇温を再開し、第2の温度まで昇温させる。
第2の温度は、450〜800℃とし、この温度を2時間以上保持するのが好ましい。このとき、炉内の真空状態を維持するため、炉内の真空引き(排気)は継続しておく。

0022

金属を水素粉砕する場合、上記の脱水素方法を適用できる。
この場合、金属に水素を吸収させる水素吸収処理を経た後、上記の脱水素処理に移行する。
水素吸収処理においては、金属を、当初、水素濃度(a)の水素雰囲気に晒し、所定の時期以降に水素雰囲気の水素濃度を水素濃度(b)に低下させるようにしても良い。もちろん、水素濃度(a)は、水素濃度(b)より高い。水素濃度(a)は、例えば、実質的に水素ガスからなる雰囲気下で実現される。この雰囲気は、金属への水素吸収を促進するために、密閉容器内で形成することができる。このときの水素ガス圧は、0.05〜2.5kgf/cm2の範囲とすることが望ましい。0.05kgf/cm2未満で、水素吸収速度が遅くなり、十分な粉砕効果が得られず効率的な操業を妨げるのみならず安全性の面から0.05kgf/cm2以上とすることが望ましい。また、2.5kgf/cm2を超えると水素との反応熱の増加が著しくなるためである。よって、水素ガス圧は0.2〜2.5kgf/cm2とするのが望ましい。なお、本明細書において、実質的に水素ガスからなるとは、水素以外の他のガスを意識的に含ませないことを意味する。例えば、工業的生産には99.99vol.%以上の純度を有する水素ガスが用いられている。この水素ガスは、N2<50vol.ppm、O2<1vol.ppm程度の微量の不純物の含有を許容している。本明細書でいうところの実質的に水素ガスからなるとは、水素ガス以外のこのような微量ガス成分の含有を許容している。

0023

水素濃度(b)は、例えば水素濃度(a)の雰囲気が水素ガスのみから構成されている場合には所定量の不活性ガスを導入することにより形成できる。不活性ガスの導入により、水素吸収の程度を低減して反応熱の発生を抑制する。ただし、水素濃度(b)が低くなると、水素吸収速度が低下して、水素吸収を完了するまでに要する時間が長くなる。したがって、水素吸収を迅速に完了させるためには、水素濃度を98〜99.5%の範囲とすることが望ましい。不活性ガスの導入は、金属が水素の吸収を開始した直後から行うのが望ましい。水素吸収による発熱反応を抑制するためである。なお、金属が水素の吸収を開始したことは、水素吸収処理を行う雰囲気の圧力の変化、具体的には圧力の低下を検知することにより知ることができる。

0024

水素濃度(b)による水素吸収処理を経たならば、次に水素吸収の雰囲気を水素濃度(c)に上げる。水素濃度(b)の雰囲気を得るために、不活性ガスを導入していたならば、その導入を停止し、水素吸収の雰囲気を水素ガスのみとすることにより、水素濃度(c)の雰囲気を形成することができる。または、不活性ガスの導入量を、水素濃度(b)のときよりも低減することによっても水素濃度(c)の雰囲気を形成することができる。水素吸収がある程度進行すると、発熱反応が低減されるため、それに応じて水素濃度を高くする。

0025

上記の、水素吸収処理が終了した後に、前記脱水素処理に移行するのである。この処理は、金属中に吸収された水素量を減少させること、具体的には水素化物を安定な価数状態とすることにより、その後の大気中におけるハンドリングの安定性を向上させることを目的として行われる。
このとき、水素吸収処理は、実質的に水素からなる雰囲気下で終了する。このため、吸収処理の後、雰囲気中に導入するガスを水素から不活性ガスに切り替えた後に脱水素工程が行われる。

0026

本発明の脱水素方法は、R−T−B系希土類永久磁石の製造方法に適用することができる。R−T−B系合金は、特に粉砕し難い金属間化合物(R2Fe14B)を含むため、水素粉砕方法が適用されている。図1は、本発明の希土類永久磁石の製造方法の工程の流れを示すものである。
はじめに、所定形態の原料合金の一部または全部を水素吸収および脱水素処理を施して水素粉砕し、水素粉砕物を得る。原料合金としては、鋳型を用いて得た鋳塊ストリップキャスト法によるストリップ、その他のいかなる形態の合金をも対象とすることができる。ただし、水素吸収に供する合金のサイズが大きすぎると、水素吸収効率が低下する。1つの尺度として、鋳塊であれば厚さが30mm以下とすることが望ましい。

0027

R−T−B系希土類永久磁石は、最終的に得たい合金組成と一致する原料合金を用いて製造するシングル法と、最終的に得たい合金組成を構成する複数の合金を組み合わせる混合法とが知られている(図1は混合法による例である)。シングル法によりR−T−B系希土類永久磁石を製造する場合には、一般に、原料合金の全部を水素吸収および脱水素処理に供する。混合法によりR−T−B系希土類永久磁石を製造する場合には、複数の合金のうちの一部の合金に対して水素吸収および脱水素処理を施しても良いし、または複数の合金の全部について水素吸収および脱水素処理を施しても良い。

0028

水素吸収および脱水素処理により粉砕された原料合金は、それぞれ必要に応じて粒径数百μm程度になるまで粗粉砕される。粗粉砕は、スタンプミルジョークラッシャーブラウンミル等の機械的粉砕手段を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。
水素吸収および脱水素処理による粉砕または上記粗粉砕後、微粉砕工程に移る。微粉砕は、主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末が、平均粒径3〜5μmになるまで行われる。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速ガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体粒子加速し、粉体の粒子同士の衝突ターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
微粉砕で得られた粉末は、磁場中成形に供される。このとき、混合法を用いた場合、磁場中での成形に先立ち、粉末を混合して組成配合を行う。
加圧成形の際に、磁場を印加することにより結晶軸配向させるが、微粉砕時に添加された潤滑剤が配向度の向上に寄与する。この磁場中成形は、10〜16kOeの磁場中で、1〜1.6ton/cm2前後の圧力で行えばよい。

0029

磁場中成形後、その成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1130℃で1〜5時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力Hcjを制御する重要な工程である。時効処理を二段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力Hcjが増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。

0030

本発明が適用されるR−T−B系希土類永久磁石の組成は目的に応じ選択すればよいが、磁気特性に優れた希磁石を得るためには、焼結後の磁石組成において希土類元素R:20〜40wt%、ホウ素B:0.5〜4.5wt%、T(FeおよびCoの1種または2種):残部、となるような配合組成とすることが望ましい。ここで、希土類元素Rは、Yを含む希土類元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,YbおよびLu)の1種または2種以上である。希土類元素Rの量が20wt%未満であると、希土類永久磁石の主相となるR2Fe14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力Hcjが著しく低下する。一方、希土類元素Rが40wt%を超えると主相であるR2Fe14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度Brが低下する。また希土類元素Rが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なR−rich相が減少し、保磁力Hcjの低下を招くため、希土類元素Rの量は20〜40wt%とする。Ndは資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。またDyは異方性磁界が大きく、保磁力Hcjを向上させる上で有効である。

0031

また、ホウ素Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力Hcjを得ることができない。ただし、ホウ素Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度Brが低下する傾向がある。したがって、上限を4.5wt%とする。望ましいホウ素Bの量は0.5〜1.5wt%である。
さらに、保磁力Hcjを改善するために、Mを加えてR−T−B−M系の希土類永久磁石とすることもできる。ここで、Mとしては、Al,Cr,Mn,Mg,Si,Cu,C,Nb,Sn,W,V,Zr,Ti,Mo,Bi,AgおよびGaなどの元素を1種または2種以上添加することができるが、添加量が6wt%を超えると残留磁束密度Brが低下してくる。

0032

【実施例】
検討実験1>
ここで、上記の最終的な脱水素条件を検討するに先立ち、従来の、一般的に行われている方法により不活性ガス中で脱水素処理を行う場合と、特許文献3に記載された方法により真空中で脱水素処理を行った場合について、それぞれ処理温度による組成の違いを比較したので、その結果を示す。
原料合金として、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
主相合金は、31wt%Nd−0.2%Al−1.1%B−bal.Feの組成を有する、厚さ0.35mmのストリップキャスト合金単ロール法により得た。この主相合金の金属間化合物は、Nd2Fe14Bであり、残部はNd−rich相となっている。
また、粒界相合金は、60wt%Nd−5wt%Co−0.1wt%Cu−0.2wt%Al−bal.Feの組成を有する、厚さ9mmの合金を、鉄製鋳型への鋳造により得た。この粒界相合金の金属間化合物は、Nd2Fe17であり、残部はNd−rich相となっている。
表2は、上記の原料合金を示すものである。

0033

【表2】

0034

得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件(検討例1、検討例2)で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、その組成を解析した。

0035

検討例1:不活性ガス中で脱水素処理を行った場合
[水素吸収処理]
(1)内容量60Lの管状炉を用い、Mo製セッターに原料合金を800g入れ、炉内に設置した。このときの温度は室温である。
(2)炉内を真空ポンプにて1×10−1Torr以下(最高到達1×10−4Torr)まで排気した。
(3)炉内に水素ガスを導入、大気圧まで復圧させた。このとき、圧力低下を引き起こさないように水素ガスを供給し続けた。
(4)圧力低下が起こらなくなるまで水素を供給し続け、圧力低下が起こらなくなった時間で吸収終了とした。
[脱水素処理]
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで所定温度まで昇温、2時間保持した。このとき、保持した所定温度(以下、これを最終処理温度と適宜称する)は、200、400、500、600℃の4通りとした。
(7)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し、室温まで冷却した。

0036

検討例2:真空中で脱水素処理を行った場合
(1)〜(4)の水素吸収処理:検討例1と同様。
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスを0.5時間フローさせた(炉内の雰囲気をArに変えた)。
(6)0.5時間後、真空ポンプにて1×10−1Torrまで排気した。
(7)排気終了後、排気を継続したまま5℃/minで昇温した。途中、炉内圧力が1×10−1Torrを超えることがあれば、1×10−1Torrに到達するまで昇温を止めた。
(8)所定温度まで昇温後、2時間保持した。このとき、保持した所定温度は、200、400、500、600℃の4通りとした。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0037

さて、上記脱水素処理を経た、上記検討例1、検討例2の処理を経た原料合金(主相合金、粒界相合金)の状態をそれぞれX線回折によって確認した。
表3は、検討例1、検討例2によって得られた、主相合金中の金属間化合物(Nd2Fe14B)の状態を示すものである。

0038

【表3】

0039

また、表4は粒界相合金の検討例1、検討例2の金属間化合物(Nd2Fe14B)の状態を示すものである。

0040

【表4】

0041

また、表5は、検討例1、検討例2における、原料合金の金属間化合物以外の残部(Nd−rich相)の状態を示すものである。

0042

【表5】

0043

図2は、粒界相合金の検討例1におけるX線回折の測定結果を示すものであり、図3は、粒界相合金の検討例2のX線回折の測定結果を示すものである。なお、図3において、符号(f)で示す曲線は、比較のために示した、検討例1の最終処理温度600℃の結果である。
これらの結果から、不活性ガスをフローさせて脱水素処理を行った場合、表3に示したように、主相合金では、最終処理温度が200、400、500℃では、α—Feの析出が認められないものの、600℃の場合、α−Feの析出が認められる。
また、粒界相合金では、表4および図2に示したように、最終処理温度が200、400℃では、α—Feの析出が認められないものの、500、600℃の場合、α−Feの析出が認められる。
これに対し、真空中で脱水素処理を行った検討例2では、いずれの温度でもα—Feの析出が認められない。

0044

また、主相合金、粒界相合金ともに、不活性ガス中で脱水素処理を行った検討例1では、表3、表4に示すように、最終処理温度が200、400℃のときに、表中でNd2Fe14BH、Nd2Fe17Hと記載するように、金属間化合物の格子間に水素(H)が侵入残留)している。
このことは、図2に示すように、200、400℃で金属間化合物による回折線が、500、600℃に比べ、低角側にシフトしており、金属間化合物の格子間に水素が侵入し、格子膨張した結果であることからもわかる。またピークのシフトの大きさから、水素の残留量は、最終処理温度が200℃のときより、400℃のときのほうが少ないことがわかる。
これに対し、図3に示すように、真空中で脱水素処理を行った検討例2では、いずれの温度でも金属間化合物の格子間への水素(H)が侵入(残留)が認められない。

0045

原料合金中の金属間化合物以外の残部(Nd−rich相)は、検討例1、検討例2ともに、表5に示すように200、400℃のときにNdH3が存在し、500、600℃ではNdH3より大気に対し安定なNdH2となっている。これは図2図3に示すように、200℃のときにはNdH3のピークが観察され、400℃の時にはNdH2とNdH3の両方が存在するためにピーク幅が広がっていることからわかる。500、600℃においてはNdH3のピークは観察されず、全てNdH2となっている。

0046

<検討実験2>
また、不活性ガス中で脱水素処理を行う場合、最終処理温度の保持時間の違いを比較した。
ここで、原料合金としては、検討例2と同様、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件(検討例3、検討例4)で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、その組成を解析した。

0047

検討例3、4
[水素吸収処理]
(1)〜(4)、検討例2と同様
[脱水素処理]
(5)検討例2と同様、水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで所定温度まで昇温、2時間保持した。このとき、保持した所定温度(以下、これを最終処理温度と適宜称する)は、400℃とした。
(7)最終処理温度を所定時間保持し、所定時間が経過した後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し、室温まで冷却した。このとき、最終処理温度の保持時間は、検討例3:検討例2と同様の2時間、検討例4:4時間とした。

0048

上記検討例1、検討例2の処理を経た原料合金(粒界相合金)に対し、それぞれX線回折の測定を行った。
図4にその結果を示す。
この図4に示すように、検討例3よりも第1の温度での保持時間を長くした検討例4では、28゜付近のNdH3に対応するピーク強度が減少することから、NdH3の割合が減少していることが認められる。このNdH3の減少分は、検討例1、2と同様にNdH2になっている。また、金属間化合物であるNd2Fe17に対応するピークは、保持時間の延長により若干ではあるが高角側へのシフトが認められることから、残留水素量の低下による格子の収縮が起きていることがわかる。

0049

これら検討実験1、2により、雰囲気を真空とすることでα—Feの析出が抑制され、また雰囲気温度を500℃以上とすることで、大気に対してNdH3より安定で、元合金中の酸素量の増加を抑制できるNdH2を生成できることがわかる。
また、検討例3、4により、所定時間の温度保持により、残留水素量が低減できることがわかる。

0050

実験例1>
ここではまず、本発明を適用した場合と、特許文献3に記載された技術を適用した場合と、従来一般的に行われている手法を適用した場合との比較を行った。
原料合金として、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
主相合金は、31wt%Nd−0.2%Al−1.1%B−bal.Feの組成を有する、厚さ0.35mmのストリップキャスト合金を単ロール法により得た。
また、粒界相合金は、60wt%Nd−5wt%Co−0.1wt%Cu−0.2wt%Al−bal.Feの組成を有する、厚さ9mmの合金を、鉄製鋳型への鋳造により得た。
得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件(実施例1、比較例1、比較例2)で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、粉砕した。

0051

実施例1
[水素吸収処理]
(1)内容量60Lの管状炉を用い、Mo製セッターに原料合金を800g入れ、炉内に設置した。このときの温度は室温である。
(2)炉内を真空ポンプにて1×10−1Torr以下(最高到達1×10−4Torr)まで排気した。
(3)炉内に水素ガスを導入、大気圧まで復圧させた。このとき、圧力低下を引き起こさないように水素ガスを供給し続けた。
(4)圧力低下が起こらなくなるまで水素を供給し続け、圧力低下が起こらなくなった時間で吸収終了とした。
[脱水素処理]
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで350℃まで昇温し、1時間温度を保持した。
(7)保持終了後、真空ポンプを用いて排気を行い、真空度が1.0×10−1Torr以下になるようにした。
(8)排気を継続したまま、5℃/minで500℃まで昇温し、2時間保持した。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0052

比較例1:特許文献3に記載された工程に相当
(1)〜(4)の水素吸収処理:実施例1と同様。
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスを0.5時間フローさせた(炉内の雰囲気をArに変えた)。
(6)その後、真空ポンプにて1×10−1Torrまで排気した。
(7)排気終了後、排気を継続したまま5℃/minで昇温した。途中、炉内圧力が1×10−1Torrを超えることがあれば、1×10−1Torrに到達するまで昇温を止めた。
(8)500℃まで昇温後、2時間保持した。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0053

比較例2:従来一般的に行われていた工程に相当
(1)〜(4)の水素吸収処理:実施例1と同様。
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで500℃まで昇温、2時間保持した。
(7)2時間経過後、雰囲気を保ったまま急冷し、室温まで冷却した。

0054

以上の実施例1、比較例1、比較例2における、粒界相合金の、水素吸収処理終了時からの経過時間に対する炉体温度プロファイル図5に示す。また図6に、実施例1における脱水素処理時間に対する炉体温度および炉内圧力の変化プロファイルを示す。
図5に示すように、実施例1では、(g)の部分で、前記(6)の工程での350℃で1時間保持し、およびその後の(7)の工程で真空引きを行っている。その結果、(8)の工程が完了するまでに5.5時間を要している。
比較例1では、(d)の部分で、前記(6)の工程での1×10−1Torrまでの真空引きを行っている。また、(e)の部分では、(7)で真空引きを継続しつつ昇温している途中で、炉内圧力が1×10−1Torrを上回ったために、昇温が止まっている。その結果、(8)の工程が完了するまでに、8.5時間を要している。
比較例2では、(6)の工程が完了するまでに、3.5時間余りを要している。
このように、実施例1によれば、脱水素処理を真空中で行う比較例1に比べれば、短時間で脱水素処理が終了していることがわかる。また、実施例1は、脱水素処理で炉内雰囲気をArガスに置換する比較例2に比べると、脱水素処理に長時間を要しているものの、後述するように、実施例1により得られた永久磁石は、比較例2により得られた永久磁石を凌ぐ磁気特性を有している。

0055

さて、上記脱水素処理を経た、上記実施例1、比較例1、比較例2の原料合金(主相合金、粒界相合金)をそれぞれ粉砕した。
これには、ディスクミルを用いて、機械粉砕を行ったのち、気流式粉砕機を用い微粉砕を行った。気流式粉砕機の粉砕圧は7kgf/cm2とした。
そして、得られた微粉粒度分布はSympatec社製の乾式レーザー回折粒度分布計HELOS&RODOSを用いて測定した。微粉砕後の粒度分布を図7に、そのときの各粒径を表6に表す。

0056

【表6】

0057

図7において、主相合金については、比較例1、比較例2と顕著な差が認められなかったため、比較例1、比較例2の粒度分布を省略した。
粒界相合金(粉)は、実施例1に比べ、比較例2は、粒度が大きい。これについては、前述のα—Feの析出により粉砕性に悪影響が生じていることがわかる。

0058

さて、上記の粉砕処理を経た、上記実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれにおいて、主相合金微粉末と粒界相合金微粉末を混合し、その組成を32wt%Nd−0.5%Co−0.1%Cu−0.2%Al−bal.Feとした。
そして、得られた混合微粉末を、14kOeの配向磁界中、1.2ton/cm2の圧力で横磁場成形した。得られた成形体を、1030℃・4時間(真空中)だけ焼結した後、800℃×1時間、580℃ ×1時間の二段時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性を、B−Hトレーサを用い、室温にて測定した。その結果を表6に示した。

0059

表6に示したように、実施例1は、磁気特性において、脱水素処理を真空中で行う比較例1に対しては、残留磁束密度Brに若干ではあるが優れ、保磁力HcJに関しては同等となっている。また、脱水素処理で炉内雰囲気をArガスに置換する比較例2と比べると、実施例2は、残留磁束密度Br、保磁力HcJともに凌いでいる。

0060

以上のように、実施例1においては、比較例1に対しては脱水素処理の短時間化が図れ、比較例2に対しては磁気特性、粒度分布の面で優れていることが明らかである。つまり、従来よりも、磁気特性に優れる磁石を、短時間で、しかも微粉砕工程において優れた粉砕性で製造することができるのである。

0061

<実験例2>
次に、脱水素処理で炉内を昇温する際の保持温度を変動させたときの、脱水素処理に要する時間、得られた焼結体磁石の磁気特性を比較した。
実施例2
原料合金としては、実施例1と同様、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、粉砕した。

0062

[水素吸収処理]
(1)〜(4)実施例1と同様。
[脱水素処理]
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで所定温度まで昇温し、1時間温度を保持した。このとき、前記の所定温度(保持温度)を、250、300、320、330、350、375、400、450、500℃の9通りとした。
(7)所定温度での保持終了後、真空ポンプを用いて排気を行い、真空度が1.0×10−1Torr以下になるようにした。
(8)排気を継続したまま、5℃/minで500℃まで昇温し、2時間保持した。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0063

以上の実施例2における、脱水素処理に要した時間を図8に示す。
図8に示すように、保持温度が330℃を下回った場合、脱水素に要する時間が長くなることがわかる。これは、320℃付近で大量に放出される水素を真空引きしているためである。

0064

さて、上記脱水素処理を経た上記実施例2の原料合金(主相合金、粒界相合金)を、実験例1と同様、それぞれ粉砕した後、得られた主相合金微粉末と粒界相合金微粉末を混合して横磁場成形し、これにより得られた成形体を焼結、時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性を、B−Hトレーサを用い、室温にて測定した。得られた磁気特性のうち、残留磁束密度Brを図9に示す。
この図9に示すように、保持温度が400℃を超えると、残留磁束密度Brが低下する傾向が見られる。これは、粒界相合金中の金属間化合物が分解し、α−Feが析出するために生じているためである。

0065

このようにして、脱水素処理での保持温度を330〜400℃の範囲内とすることで、脱水素に要する時間を短縮することができ、しかも磁気特性に優れた磁石を製造することができる。

0066

<実験例3>
次に、脱水素処理で炉内を昇温する際の保持時間を変動させたときの、脱水素処理に要する時間を比較した。
実施例3
原料合金としては、実施例1と同様、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、粉砕した。

0067

[水素吸収処理]
(1)〜(4)実施例1と同様。
[脱水素処理]
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで380℃まで昇温し、0〜5時間の間の所定時間だけ温度を保持した。このとき、前記の保持時間は、0、0.5、1、2、3、5時間の6通りとした。
(7)所定温度での保持終了後、真空ポンプを用いて排気を行い、真空度が1.0×10−1Torr以下になるようにした。
(8)排気を継続したまま、5℃/minで500℃まで昇温し、2時間保持した。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0068

以上の実施例3における、脱水素処理に要した時間を図10に示す。
図10に示すように、保持時間を0.5、1時間等とすることで、僅かながら脱水素に要する時間が減少している。しかし、保持時間が2時間を超えると、脱水素に要する時間が長くなることがわかる。これは、保持時間の延長分がそのまま脱水素に要する時間の延長に繋がっていることを示している。
これにより、脱水素の処理で所定の温度を保持した方が脱水素時間の短縮化が図れることがわかる。

0069

<実験例4>
次に、脱水素処理の最終処理温度を変化させたときの、得られた焼結体磁石の磁気特性と酸素量を比較した。
実施例4
原料合金としては、実施例1と同様、主相合金として使用される合金、粒界相合金として使用される合金の、計2種類の合金を用いた。
得られた主相合金、粒界相合金を、それぞれ以下の条件で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、粉砕した。

0070

[水素吸収処理]
(1)〜(4)実施例1と同様。
[脱水素処理]
(5)水素吸収終了後、導入ガスをArガスに切り替え、1気圧でArガスをフローさせた。
(6)その直後、5℃/minで昇温し、350℃で1時間温度を保持した。
(7)所定温度での保持終了後、真空ポンプを用いて排気を行い、真空度が1.0×10−1Torr以下になるようにした。
(8)排気を継続したまま、5℃/minで所定温度まで昇温し、2時間保持した。このとき、前記の所定温度(保持温度)としては、350、400、500、600、700、750、800、850、900℃の9通りとした。
(9)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却した。

0071

上記脱水素処理を経た上記実施例4の原料合金(主相合金、粒界相合金)を、実験例1と同様、それぞれ粉砕した後、得られた主相合金微粉末と粒界相合金微粉末を混合して横磁場成形し、これにより得られた成形体を焼結、時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性を、B−Hトレーサを用い、室温にて測定した。
得られた磁気特性と、得られた焼結体酸素量を表7に示す。

0072

【表7】

0073

この表7に示すように、400℃以下、850℃以上では、焼結体酸素量が多く、磁気特性の劣化が認められる。400℃以下はNdH3により、また850℃以上ではNd−rich相により、焼結体酸素量が多くなっているのである。
これにより、脱水素処理での最終処理温度は、450〜800℃の範囲内とすることにより、磁気特性に優れる磁石を得ることができることがわかる。

0074

<実験例5>
また、上記実験例1ではいわゆる2種の合金を原料合金とする、いわゆる混合法を用いたが、これに対し、最終組成物となる合金を原料合金としたいわゆるシングル法で焼結体磁石を作成した場合についても、従来技術との比較実証を行った。
原料合金としては、焼結体磁石を形成する最終組成物となる合金を用いた。
この合金は、24wt%Nd−8%Dy−0.5%Co−0.1%Cu−0.2%Al−1.0%B−bal.Feの組成を有する、厚さ0.35mmのストリップキャスト合金を単ロール法により得た。
得られた合金を、それぞれ以下の条件(実施例5、比較例3)で、水素吸収処理、脱水素処理を経た後、粉砕した。

0075

実施例5
[水素吸収処理]
(1)〜(4)実施例1と同様とした。
[脱水素処理]
(5)〜(9)実施例1と同様とした。

0076

比較例3
[水素吸収処理]
(1)〜(4)実施例1と同様とした。
[脱水素処理]
(5)〜(7)比較例2と同様とした。

0077

上記脱水素処理を経た上記実施例5、比較例3の原料合金を、実験例1と同様、の条件で機械粉砕、微粉砕した。
得られた微粉の粒度分布はSympatec社製の乾式レーザー回折粒度分布計HELOS&RODOSを用いて測定した。微粉砕後の粒度分布を図11に、そのときの各粒径を表8に表す。

0078

【表8】

0079

図11および表8に示すように、最終組成の合金を原料合金に用いた、つまりいわゆるシングル法を用いた場合にも、実施例1に対応した実施例5に比べ、比較例2に対応する比較例3は粒度が大きい。これについても、α—Feの析出が粉砕性に悪影響を及ぼしている。

0080

さて、上記の粉砕処理を経た、上記実施例5、比較例3のそれぞれにおいて、得られた合金微粉末を、実施例1と同様、14kOeの配向磁界中、1.2ton/cm2の圧力で横磁場成形した。得られた成形体を、1050℃・4時間(真空中)だけ焼結した後、800℃×1時間、580℃ ×1時間の二段時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性を、B−Hトレーサを用い、室温にて測定した。その結果を表8に示した。

0081

この表8に示したように、脱水素処理で炉内雰囲気をArガスに置換する比較例3と比べると、実施例3は、残留磁束密度Br、保磁力HcJともに凌いでおり、磁気特性に優れていることが明らかである。
このように、シングル法においても、同様の効果が得られるのがわかる。

0082

<実験例6>
また、脱水素処理だけでなく、水素吸収処理における条件を変化させた場合の検証も行った。
24wt%Nd−8%Dy−0.5%Co−0.1%Cu−0.2%Al−1.0%B−bal.Feの組成を有する厚さ0.35mmのストリップキャスト合金を単ロール法により得た。
得られたストリップキャスト合金に、以下の3つの条件(実施例6、比較例4、比較例5)で水素吸収処理を行った。

0083

実施例6
(1)容量60Lの管状炉を用い、Mo製セッターに原料合金800gを入れ炉内に設置した。このときの温度は室温である。なお、温度測定のために、炉芯管外部に熱伝対を設置した。
(2)炉内を真空ポンプにて1×10−1Torr以下(最高到達1×10−4Torr)まで排気した。
(3)水素ガスを導入して、炉内を0.14kgf/cm2まで復圧し、一旦水素ガスの供給を中断した。
(4)ストリップキャスト合金に水素が吸収され始めたと判断したときに、炉内水素濃度が99%程度となるまでArガスのみを導入した。このときのArは、10L/minの流量で約5秒間導入した。炉内は0.8L−Ar/60L−H2であるから、H2濃度は99%となる。なお、水素吸収の開始の判断は、炉内圧力の低下開始に基づいて行った。
(5)Arガスの導入を中止し、水素ガスのみを再度供給開始した。水素ガスは、水素吸収を実行あらしめるために、炉内圧力が0.05kgf/cm2以下にならないように供給した。
(6)水素の供給を行わなくても炉内の圧力低下が起こらなくなるときまで水素の供給を続けた。炉内の圧力低下が起こらなくなった時間を吸収終了時間とした。

0084

比較例4
(1)実施例6と同様。
(2)実施例6と同様。
(3)水素ガスを導入して、炉内を0.14kgf/cm2まで復圧した。その後も、炉内に圧力低下が生じないように水素ガスを供給した。
(4)水素の供給を行わなくても炉内の圧力低下が起こらなくなるまで水素の供給を続けた。炉内の圧力低下が起こらなくなった時間を吸収終了時間とした。

0085

比較例5
(1)実施例6と同様。
(2)実施例6と同様。
(3)下記の比率による水素ガスおよびArガスの混合ガスを導入して、炉内を0.14kgf/cm2まで復圧した。その後も、炉内に圧力低下が生じないように混合ガスを供給した。水素ガス:Arガス=9:1(4)混合ガスの供給を行わなくても炉内の圧力低下が起こらなくなるときまで混合ガスの供給を続けた。炉内の圧力低下が起こらなくなった時間を吸収終了時間とした。

0086

以上の実施例6、比較例4および比較例5における、水素ガスまたは混合ガスの導入開始からの経過時間と熱伝対により測定した温度変化炉体温度上昇分)の関係を図12に示す。図12に示すように、水素吸収開始から水素吸収終了まで水素ガスのみを導入した比較例4は、炉体温度の上昇が急速に行われ、かつ到達温度が高いことがわかる。また、水素吸収開始から水素吸収終了まで混合ガスのみを導入した比較例5は、炉体温度の上昇が緩やかで、かつ到達温度が低いことがわかる。これに対して、当初水素ガスを導入しつつ、所定のタイミングでArガスを導入し、再度水素ガスを導入した実施例6は、比較例5に比べて短時間で水素吸収が終了していることがわかる。しかも、後述するように、実施例6により得られた永久磁石は、比較例4はもちろん、比較例5により得られた永久磁石を凌ぐ磁気特性を有している。なお、図12において、実施例6〜比較例5によって吸収終了時間が異なるため、測定時間が異なっている。

0087

次に、水素吸収が終了したストリップキャスト合金に脱水素処理を施した。脱水素条件は、実施例6〜比較例5ともに以下の通りである。
(1)水素吸収が終了した後、そのまま炉内導入ガスをArガスに切り替え、Arガスの導入と放出弁開閉により、炉内圧力を0.10〜0.11kgf/cm2に維持する。
(2)そのままの状態で5℃/minで350℃まで昇温し、350℃にて1時間保持する。
(3)1時間後、真空ポンプにて1×10−1Torr以下まで炉内を排気する。
(4)排気終了後、さらに排気を継続したまま、5℃/minで500℃まで昇温、2時間保持する。
(5)2時間経過後、Arガスを導入し、大気圧まで復圧した後、雰囲気を保ったまま急冷し室温まで冷却する。

0088

以上の水素吸収・脱水素処理を経た後に、気流式微粉砕機(日本ニューマチック製PJM−100NP)を用い、粉砕圧7kgf/cm2で微粉砕を行った。微粉砕の条件は、実施例6、比較例4、5とも同一である。
微粉砕によって得られた微粉末の粒度分布を、Sympatec社製乾式レーザー回折粒度分布計HELOS&RODOSを用いて測定した。その結果を図13に、そのときの各粒径を表9に示す。

0089

次に、以上で得られた微粉末を、14kOe中の磁場中、1.2ton/cm2の圧力で横磁場成形した。得られた成形体を1050℃・4時間(真空中)だけ焼結した後に、800℃×1時間、580℃×1時間の二段時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性をB−Hトレーサにて室温で測定した。その結果を表9に示す。
図13および表9に示すように、水素ガスのみで水素吸収を行った比較例4は、発熱反応による温度上昇が大きいために、脱水素後の粉砕が十分でない。そのために、微粉砕を行った後の粉末の粒度が大きく、磁気特性も劣っている。水素ガスとArガスの混合ガスで水素吸収を行った比較例5は、微粉砕後の粒度、磁気特性は比較例4に比べて良好ではあるが、図12に示したように、水素吸収までの時間が長い。以上に比べて本発明による実施例6は、水素ガスのみ水素吸収を行った比較例4に比べて発熱反応が抑制されているために、微粉砕後の粉末も微細で、かつ磁気特性は比較例4はもちろん比較例5を凌いでいる。しかも、図12に示したように、水素ガスとArガスの混合ガスで水素吸収を行う比較例5に比べて、短時間で水素吸収処理を完了できる。このように、実施例6は、磁気特性および水素吸収処理の短時間化という要求を兼備している。

0090

【表9】

0091

<実験例7>
31wt%Nd−0.2%Al−1.1%B−bal.Feの組成を有する厚さ0.35mmの主相合金形成用のストリップキャスト合金(以下、単にストリップ)を単ロール法により得た。また、60wt%Nd−5%Co−0.1%Cu−0.2%Al−bal.Feの組成を有する厚さ9mmの合金インゴット(以下、単にインゴット)を鉄製鋳型により鋳造することにより得た。得られたストリップ、インゴットに以下の条件で水素吸収処理を行った。

0092

実施例7
ストリップ(主相形成用)およびインゴット(粒界相形成用)ともに、実施例6と同様の条件で水素吸収処理を行った。

0093

比較例6
ストリップ(主相形成用)は実施例6、またインゴット(粒界相形成用)は比較例4と同様の条件で水素吸収処理を行った。

0094

比較例7
ストリップ(主相形成用)は実施例6、またインゴット(粒界相形成用)を比較例5と同様の条件(水素ガスとArガスの混合ガスを導入)で水素吸収処理を行った。
以上の実施例7、比較例6および比較例7で、インゴットの水素吸収における、水素ガスまたは混合ガスの導入開始からの経過時間と熱伝対により測定した温度変化(炉体の温度上昇分)の関係を図14に示す。図14に示すように、水素吸収開始から水素吸収終了まで水素ガスのみを導入した比較例6は、炉体温度の上昇が急速に行われ、かつ到達温度が高いことがわかる。また、水素吸収開始から水素吸収終了まで混合ガスのみを導入した比較例7は、炉体温度の上昇が緩やかで、かつ到達温度が低いことがわかる。これに対して、当初水素ガスを導入しつつ、所定のタイミングでArガスを導入し、再度水素ガスを導入した実施例7は、比較例7に比べて短時間で水素吸収が終了していることがわかる。しかも、後述するように、実施例7により得られた永久磁石は、比較例6はもちろん、比較例7により得られた永久磁石を凌ぐ磁気特性を有している。

0095

以上の水素吸収処理が終了した後に、実施例7、比較例6および比較例7について、実施例6と同様の条件で脱水素処理を行うことにより、粗粉砕粉末を得た。このインゴット粗粉砕粉末を、メッシュ分級し各粒径粉の割合を求めた。その結果を図15に示すが、水素ガスのみを導入した比較例6は3mm以上の粗大粒が多く含まれることがわかる。

0096

脱水素処理により得られた粗粉砕粉末を、気流式微粉砕機を用いて、微粉砕を行った。この粉砕条件は、実施例7、比較例6および比較例7ともに実施例6と同様である。ただし、比較例6の場合のみ、3mm以上の粗大粒子が多量に存在するため、気流粉砕前にディスクミルにて機械粉砕を施した。得られた粉砕粉末微粉の粒度分布はSympatec社製乾式レーザー回折粒度分布計HELOS&RODOSを用いて測定した。その結果を図16に、そのときの各粒径を表10に示す。

0097

【表10】

0098

微粉砕された主相形成用合金粉と粒界相形成用合金粉とを、32wt%Nd−0.5%Co−0.1%Cu−0.2%Al−bal.Feの組成となるように、混合した。この混合粉末を、14kOe中の磁場中、1.2ton/cm2 の圧力で横磁場成形した。得られた成形体を1050℃×4時間(真空中)だけ焼結した後に、800℃×1時間、580℃×1時間の二段時効処理を施して、焼結体磁石を得た。得られた磁石の磁気特性をB−Hトレーサにて室温で測定した。その結果を表10に示した。実施例7による永久磁石は、比較例6はもちろん比較例7と同等の磁気特性を得ている。しかも、図14に示したように、実施例7は、水素ガスとArガスの混合ガスで水素吸収を行った比較例7に比べて短時間で水素吸収を完了できるから、生産効率の点からも優れている。このように、実施例7は、磁気特性および水素吸収処理の短時間化という要求を兼備している。

発明を実施するための最良の形態

0099

なお、以上の実験例1〜7では、R−T−B系希土類永久磁石について説明したが、本発明は他のいかなる金属についても適用できることはいうまでもない。

図面の簡単な説明

0100

以上説明したように、本発明の脱水素方法によれば、短時間で、かつ粉砕性を損なう物質の析出を抑えて脱水素処理を行うことが可能となる。そして、本発明の水素粉砕方法によれば、脱水素処理を短時間で行いつつ、微粉砕工程における粉砕性を向上させることができる。また、本発明の希土類永久磁石の製造方法によれば、磁気特性に優れる磁石を、短時間で、しかも微粉砕工程において優れた粉砕性で製造することが可能となる。

図1
本発明の希土類永久磁石の製造方法の工程の流れを示すものである。
図2
不活性ガス中で脱水素処理を行い、最終処理温度を異ならせた場合に得られる合金のX線回折結果を示す図である。
図3
真空中で脱水素処理を行い、最終処理温度を異ならせた場合に得られる合金のX線回折結果を示す図である。
図4
最終温度保持時間を変えた場合に得られる合金のX線回折結果を示す図である。
図5
脱水素処理時間に対し、炉体温度のプロファイルを示す図である。
図6
実施例1において、脱水素処理時間に対する、炉体温度および炉内圧力のプロファイルを示す図である。
図7
実験例1における、微粉砕後の粒径分布を示す図である。
図8
保持温度に対する脱水素処理時間の関係を示す図である。
図9
保持温度に対し、得られる磁石の残留磁束密度の関係を示す図である。
図10
保持時間に対する脱水素処理時間の関係を示す図である。
図11
実験例5における、微粉砕後の粒径分布を示す図である。
図12
実験例6における、水素吸収過程における炉体温度変化を示すグラフである。
図13
実験例6における、微粉砕後の粒度分布を示すグラフである。
図14
実験例7における、水素吸収過程における炉体温度変化を示すグラフである。
図15
実験例7における、水素粉砕後の重量比率を示すグラフである。
図16
実験例7における、微粉砕後の粒度分布を示すグラフである。
図17
真空中で脱水素処理を行う場合の、脱水素処理時間に対する炉体温度のプロファイルを示す図である。

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