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技術 金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 星川郁生鈴木陵平水渡英昭井上亮アンドレイカラセフ
出願日 2002年12月16日 (18年0ヶ月経過) 出願番号 2002-364344
公開日 2004年7月15日 (16年5ヶ月経過) 公開番号 2004-198144
状態 特許登録済
技術分野 その他の電気的手段による材料の調査、分析 蛍光または発光による材料の調査,分析 粒子の特徴の調査
主要キーワード 鉄マトリックス りん化物 試料範囲 レーザ照射痕 金属試料表面 CaO系介在物 電気分解前 一部炭化
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この項目の情報は公開日時点(2004年7月15日)のものです。
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課題

化学的溶解法または電気化学的溶解法により溶解残渣が多量に生ずる金属試料であっても、該金属試料中非金属介在物組成および粒径を、効率よくかつ極めて精度良く測定する方法を提供する。

解決手段

強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で金属試料を溶解して得られる溶解残渣と金属ペーストとの混合物レーザ光照射して、該溶解残渣中の非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定する。

概要

背景

近年、製鋼工程における清浄化技術の進歩により、鋼中の非金属介在物(以下、単に「介在物」ということがある)量は著しく減少した。これに伴い、鉄鋼製品の性能は大幅に向上し、例えば軸受鋼については、転動疲労寿命が1桁以上伸びるなど特性が著しく向上した。

概要

化学的溶解法または電気化学的溶解法により溶解残渣が多量に生ずる金属試料であっても、該金属試料中の非金属介在物の組成および粒径を、効率よくかつ極めて精度良く測定する方法を提供する。強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で金属試料を溶解して得られる溶解残渣と金属ペーストとの混合物レーザ光照射して、該溶解残渣中の非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定する。

目的

本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、試料溶解時に介在物とともに不要残渣が多量に生ずる金属試料であっても、該金属試料中の非金属介在物の組成および粒径を効率よくかつ極めて精度良く測定する方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法金属試料を溶解して得られる溶解残渣金属ペーストとの混合物レーザ光照射して、該溶解残渣中の非金属介在物組成および/または粒径レーザ励起−ICP分析法で測定することを特徴とする金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法。

請求項2

前記金属ペーストとして、前記溶解残渣を構成する金属元素を含まないものを用いる請求項1に記載の分析法。

請求項3

前記金属ペーストとして、AgペーストPtペーストCuペーストおよびNiペーストよりなる群から選択されるいずれかを用いる請求項2に記載の分析法。

請求項4

電気化学的溶解法において、電解中断後の金属試料表面粘着テープ押し付けた後、剥して得られる非金属介在物の付着した粘着テープにレーザ光を照射して、該非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定することを特徴とする金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法。

請求項5

前記化学的溶解法としてはハロゲン溶解法、また、前記電気化学的溶解法としてはスライム法非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法よりなる群から選択されるいずれかを適用する請求項1〜4のいずれかに記載の分析法。

請求項6

前記金属試料は、CおよびCrをそれぞれ0.2質量%以上含有する鉄鋼試料である請求項1〜5のいずれかに記載の分析法。

請求項7

金属試料の溶解に先立ち、該金属試料に800℃以上で3分間以上の溶体化処理を施す請求項1〜6のいずれかに記載の分析法。

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0001

本発明は、金属試料中に存在する非金属介在物組成および/または粒径分析する方法に関するものであり、詳細には、金属試料から非金属介在物を抽出分離した後、レーザ励起−ICP分析法で非金属介在物の組成および/または粒径を分析する方法に関するものである。

技術分野

0002

尚、本発明の分析法は金属試料を対象とするものであり、鉄鋼試料の他、Ni、Cu等の非鉄金属中の介在物分析にも勿論適用できるが、以下では、代表的な適用例として鉄鋼試料の介在物分析に適用する場合を中心に説明する。

0003

近年、製鋼工程における清浄化技術の進歩により、鋼中の非金属介在物(以下、単に「介在物」ということがある)量は著しく減少した。これに伴い、鉄鋼製品の性能は大幅に向上し、例えば軸受鋼については、転動疲労寿命が1桁以上伸びるなど特性が著しく向上した。

0004

金属中に存在する非金属介在物は、数十μm程度のサイズであっても、疲労寿命の低下や加工時の割れの原因になるなど、金属の機械的特性に悪影響を及ぼすことが知られている。従って、更なる清浄化を図り、鋼の疲労特性等を飛躍的に向上させるには、上記製造プロセスの改善とともに、該プロセスの改善効果や得られる鉄鋼製品の改善効果を確認するための評価技術確立、即ち、介在物の低減された鋼材について、該微量介在物の組成やサイズを正確に把握する技術の確立が必要となる。

0005

これまで介在物の組成やサイズを評価する方法として、例えば、鋼材を切断し研磨した切断面を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察し、該切断面に現れた介在物の組成やサイズを調べる方法が挙げられる。

0006

しかし、近年の清浄鋼を対象とする場合には、研磨面上に現れる介在物数が非常に少ないため広い面積を観察しなければならない。例えば、軸受鋼を対象とする場合、サイズが20μmを超える介在物の出現は3000mm2当たり1個程度である。従って、信頼性のある介在物データを得るには50000〜100000mm2もの広い面積を観察する必要があり、観察に長時間を要する。また上記方法では、研磨面上に現れた介在物の一断面を観察しているに過ぎないので、真の粒径を判定することは困難である。これらの理由から工業的な方法としては採用し難い。

0007

また、介在物の組成やサイズを評価する別の方法として、化学的処理法で金属成分(マトリックス)を溶解し非金属介在物を抽出した後に、該介在物の化学成分組成を例えば上記EPMAで調べたり、粒径を光学顕微鏡電子顕微鏡で測定する方法がある。

0008

従来より、鋼中非金属介在物の分析に際して該介在物を抽出する化学的処理法として、代表的なものに酸分解法ハロゲン溶解法非水溶媒電解法スライム法等が挙げられる。

0009

上記酸分解法とは、85〜90℃程度に加熱した硫酸硝酸またはその混合酸等の水溶液中で鉄鋼試料の鉄マトリックスを溶解し、残渣として残る介在物の組成やサイズを測定する方法である。この方法は操作が比較的簡便であり、また残渣中に介在物とともに存在する炭化物水酸化鉄の量が少ないため、顕微鏡X線分光分析装置等による介在物の観察および測定が比較的容易であるという特長を有する。

0010

しかしながら上記酸分解法は、酸に対して化学的に安定なAl2O3の定量には適しているものの、酸に対して不安定なCaO含有介在物等に適用すると、その一部あるいは全部が抽出時に溶解するため、CaO含有介在物の組成やサイズを正確に把握することができないといった問題がある。

0011

上記ハロゲン溶解法としては、例えば、14v/v%ヨウ素−メタノール溶液を用いたヨウ素−メタノール法や、10v/v%臭素−メタノール溶液を用いた臭素−メタノール法等が挙げられる。

0012

また、非水溶媒電解法としては、溶媒アセチルアセトン塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール系(例えば10v/v%アセチルアセトン−1v/v%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液等)や、サリチル酸メチル−塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール系等を用いた非水溶媒定電位電解法または非水溶媒定電流電解法が挙げられる。

0013

上記ハロゲン溶解法および非水溶媒電解法は、いずれも介在物抽出工程において、介在物が溶解してその組成やサイズが変化してしまうといったことが少ないので、CaO含有介在物の抽出においても、該CaO含有介在物の溶損欠損がほとんど生じないという点で抽出精度に優れている。しかし、ヨウ素−メタノール等のハロゲン類や、アセチルアセトンやサリチル酸メチル等の非水系溶媒は、鉄イオンの溶解度がかなり小さいので、多量の鉄鋼試料を溶解させることができず、1鉄鋼試料分の現実的な溶解量は1〜5g程度にとどまる。

0014

また、いわゆるスライム法は、定電流電解分析法の1種であり、電解液塩化第一鉄(FeCl2)水溶液(例えば10v/v%塩化第一鉄溶液)を用いて鉄鋼試料中の鉄マトリックスを溶解し、残渣として残った介在物を評価する方法である。この方法の特長は、数kgと大量の鉄鋼試料を用いることができるので、鋼中介在物量の少ない清浄鋼であっても信頼性のあるデータが得られる点にある。

0015

しかしながら従来のスライム法は、信頼性のあるデータが得られるものの、電解時に生成する水酸化鉄や炭化物が介在物とともに残渣として多量に残留し、特にCまたはCr量の多い鋼を溶解する場合には、炭化物等が不要残渣として非常に多く析出することから、その後の介在物の定量分析粒度分布の測定が困難であるといった問題を抱えていた。

0016

この様な介在物以外の不要残渣に対処するため、介在物と不要残渣の比重差を利用して流水中で介在物を分離する、いわゆる水簸法が提案されている(例えば、非特許文献1)。しかし前記水簸法は、50μm以上の大型介在物を炭化物等の残渣と分離するには有用であるが、目的とする微細な介在物が水流によって散逸するなど、介在物のサイズや組成を精度よく測定することができないという問題を有している。

0017

また特許文献1には、テフロンメッシュを用いたろ過法が提案されている。しかしこの方法では、残渣として残った炭化物や水酸化物を介在物と分離除去するのに40μm程度の大きなメッシュサイズのテフロンを使用する必要がある。従って該炭化物等の残渣を除去する際に、割れの起点となりうる20μm程度の介在物も一緒に除去されてしまい、対象とする介在物を正確に評価することができない。

0018

特許文献2には、介在物および不要残渣を密度2.10〜3.22g/cm3の溶媒中で比重分離する方法が開示されている。しかしこの方法では、密度が約2.7〜3.42g/cm3の介在物を、密度が2.25g/cm3程度であるグラファイトと分離することはできるが、密度が3.40g/cm3である水酸化鉄と分離することは不可能であり実用的であるとは言い難い。

0019

金属試料中の炭化物を試料溶解前に予め低減する技術として、非特許文献2には、介在物抽出に際して鉄鋼試料に溶体化処理を施す方法が提案されている。前記文献では、軸受鋼を対象とし、酸分解法や臭素−メタノール法で鉄マトリックスを溶解する前に、予め鉄鋼試料に1100℃で溶体化処理を施して、酸化物系介在物の定量に与える炭化物の影響を小さくすることが報告されている。

0020

しかし本発明者らの調査によると、鋼中CおよびCrがそれぞれ0.2質量%未満であれば、溶体化処理で炭化物を完全に分解することができるが、鋼中CおよびCrがそれぞれ0.2質量%以上の場合には、1100℃に加熱することによって炭化物が分解しても、その後の冷却過程一部炭化物が再析出し、完全に炭化物を消滅させることができない。また、この様に溶体化処理を施して試料溶解時の炭化物析出を抑制しても、前記スライム法を適用して介在物を抽出する場合には、多量の水酸化物が不要残渣として生ずるので、これらの処理対策が必要となる。

0021

ところで本発明者らは、前記電子プローブマイクロアナライザーに代わる方法として、レーザ励起−ICP分析法で非金属介在物の組成や粒径を測定する方法を既に提案している(特許文献3)。

0022

前記レーザ励起−ICP分析法とは、鉄鋼及び非鉄金属表面にレーザ光走査照射して介在物を蒸発させ、これをキャリアガスにより搬送し、高温誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下「ICP」と略す)中でイオン化させて、生成したイオン個数質量分析法、あるいは生成したイオンの発光強度発光分光光度法で計測する方法である。

0023

この方法は、金属表面だけでなく鋼内部の介在物も分析可能であるため、前記EPMA法と比較して検査面積を小さくすることができる。しかし、現在のところ金属を励起させるためのレーザ出力に上限があるので、レーザの走査速度にも上限がある。そこで、前記特許文献3では、清浄鋼の介在物を効率よく分析する方法として、前記ハロゲン溶解法、定電位電解法、定電流電解法等の化学的処理法で抽出した介在物粒子を、溶融ガラス表面に付着させて凝固させたものをレーザ励起−ICP分析用試料とすることを提案している。

0024

この方法は、鋼中C量が0.2%未満の試料を対象とする場合、介在物とともに析出する炭化物量が少ないので、全溶解残渣を溶融ガラス表面に付着させて測定することができる。また、この様にC量の少ない試料に予め1000℃程度で10分間保持して炭化物を固溶する、いわゆる溶体化処理を施すことで析出する炭化物量を低減でき、溶融ガラス表面に付着させる抽出時の残渣を少量に抑えることができる。

0025

しかしながら、鋼中C量が0.2質量%を超える試料では、上述の通り前記溶体化処理を施しても、急冷時に多量の炭化物が再び析出するため、溶解残渣は、介在物とともに多量の炭化物を含むことになる。多量の溶解残渣を溶融ガラス表面に付着させるには、溶融ガラス面積を大きくする必要があり、結果として溶融ガラス試料が大きくなるので測定時間が長くなる。

0026

従って、試料溶解時に介在物とともに不要残渣が多量に生ずる金属試料を対象に、該試料中の非金属介在物の組成および粒径を効率よくかつ精度良く測定するには、分析方法の更なる改善が必要である。また、溶融ガラスはSiO2を主成分とするものであるため、主要な介在物成分の一つであるSiO2を評価することができない。この様な観点からも分析方法の改善が必要であると考える。

背景技術

0027

【特許文献1】
特開昭59−141035号公報 (第1頁)
【特許文献2】
2000−131313号公報 (第1頁)
【特許文献3】
特開2001−242144号公報 (第1頁)
【非特許文献1】
鉄と鋼,61,1975,p.2489
【非特許文献2】
CAMP−ISIJ,7,1994,p.380

発明が解決しようとする課題

0028

本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、試料溶解時に介在物とともに不要残渣が多量に生ずる金属試料であっても、該金属試料中の非金属介在物の組成および粒径を効率よくかつ極めて精度良く測定する方法を提供することにある。

0029

本発明に係る金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法とは、強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で金属試料を溶解して得られる溶解残渣と金属ペーストとの混合物にレーザ光を照射して、該溶解残渣中の非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定するところに特徴を有する。

0030

前記金属ペーストとしては、前記溶解残渣を構成する金属元素を含まないものを用いるのがよく、例えば、AgペーストPtペーストCuペーストおよびNiペーストよりなる群から選択されるいずれかを用いることができる。

0031

また本発明は、電気化学的溶解法において、電解中断後の金属試料の電解面に粘着テープ押し付けた後、剥して得られる前記非金属介在物の付着した粘着テープにレーザ光を照射して、該非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定するところに特徴を有する方法も含むものである。

0032

前記化学的溶解法としては、ハロゲン溶解法を適用するのがよく、また前記電気化学的溶解法としては、スライム法、非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法よりなる群から選択されるいずれかを適用するのがよい。

0033

本発明法は、前記金属試料としてCおよびCrをそれぞれ0.2質量%以上含有する鉄鋼試料についても適用することができる。

0034

前記金属試料の溶解に先立って、該金属試料に800℃以上で3分間以上の溶体化処理を施してもよい。

課題を解決するための手段

0035

尚、前記「溶解残渣」とは、試料溶解後に残存する、Al2O3、Al2O3・MgO、SiO2、CaO等の評価対象となる非金属介在物と、その他の炭化物や水酸化物等の不要残渣を併せたものをいう。

0036

本発明者らは、前述した様な状況の下で、介在物抽出に伴い不要残渣が多量に生じる場合であっても、これら不要残渣量に関係なく介在物を定量することができ、該介在物の組成および粒径を効率よくかつ精度良く測定することができる方法ついて様々な角度から検討を行った。その結果、
(A)レーザ励起−ICP分析に際し、
▲1▼試料として、強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で溶解して得た溶解残渣と金属ペーストとの混合物を用いること、
▲2▼別の試料として、電気化学的溶解法で、電解中断後の金属試料表面に粘着テープを押し付けた後、剥して得られる介在物の付着した粘着テープを用いることとし、かつ
(B)レーザ励起−ICP分析法で、介在物の組成および/または粒径を測定すること
を見出し、更にこれらの方法について好適な具体的条件を検討し、本発明に想到した。以下、本発明で上記の様に規定した理由および詳細な条件について述べる。
(1)前記(A)▲1▼について
まず本発明では、後述するレーザ励起−ICP分析に際し、金属試料を、強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で溶解して介在物を抽出することとした。

0037

この様な方法を採用することで、金属試料表面を観察する場合よりもはるかに多い試料を測定できることとなり、介在物の極めて少ない清浄鋼を対象とする場合であっても、信頼性のある分析結果が得られるのである。

0038

前記強酸を用いない化学的溶解法としてはハロゲン溶解法、また前記電気化学的溶解法としてはスライム法、非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法よりなる群から選択されるいずれかを適用するのがよい。

0039

鋼材中に存在する非金属介在物としては、Alキルド鋼におけるAl2O3、Al2O3・MgO、Siキルド鋼におけるSiO2、およびスラグ鋳型フラックスの巻き込みに起因するCaOを含むものが挙げられる。そのうち、Al2O3、Al2O3・MgO、SiO2は、酸に対して化学的に安定な化合物であるので、鉄の溶解能力に優れた酸溶解法で短時間で多量の試料して抽出することができる。

0040

しかしながら、金属製品疲労破壊の起点となりやすいCaO含有介在物は酸に溶解するので抽出することができず、CaO含有介在物の評価をすることができない。特に、CaO含有介在物は、精錬工程や連鋳工程のタンディッシュで生ずるスラグ、更には連鋳工程で使用する鋳型内フラックスを起源混入しやすく、かつ、粒径の大きいものについては、上述に通り鋼材の疲労破壊の起点となり易い。従って、CaO含有介在物の介在物評価を行うことは不可欠であり、この様なCaO含有介在物を含めた介在物評価を行うことができない酸溶解法は好ましくない。

0041

これに対し、ハロゲン溶解法や、スライム法、非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法等の電解法は、上述の通り金属試料のマトリックス溶解速度が小さく、ハロゲン溶解法や非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法等の電解法の場合、工業的には金属試料1〜5g程度の溶解が限界であるが、CaO含有介在物の抽出が可能であり、CaO含有介在物を含めた介在物評価を行うことができるので好ましい。

0042

ハロゲン溶解法では、上述の通り、溶媒としてヨウ素−メタノール、臭素−メタノールが汎用されている。前者のヨウ素−メタノールとしてはヨウ素濃度が10〜14%のものが用いられ、該溶媒中では溶解反応が穏やかに進行するので、化学的に不安定な化合物の抽出に適している。しかし金属マトリックスの溶解速度が遅いため、水浴中で40〜60℃に加温し、超音波印加しながら抽出操作を行うことが望ましい。

0043

また後者の臭素−メタノールとしては、臭素濃度:4〜10%のものが用いられる。該溶媒を用いたハロゲン溶解法では、金属マトリックスの溶解がヨウ素−メタノールの場合より速やかに進行し、化学的に安定な介在物の抽出に適している。この場合も超音波を印加して抽出操作を行うことが溶解促進の観点から望ましい。また、いずれのハロゲン溶解法においても、溶媒に含まれる水分は金属マトリックスの溶解を妨げるので、極力水分含有量の少ないメタノールを用いるのがよい。

0044

非水溶媒定電位電解法や非水溶媒定電流電解法では、溶媒として、一般的に10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール、4%サリチル酸メチル−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール、2%トリエタノールアミン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール等が用いられる。これらは、抽出する介在物の種類によって使い分けるのがよい。

0045

この方法で、化学的に不安定なCaO系介在物MgO系介在物を抽出する場合、非水溶媒に含まれる水分が多いと、微細なCaO系介在物やMgO系介在物の溶損が生ずる。従って、非水溶媒中の水分を除去すべく、非水溶媒に金属BaやBaOを添加して水分と反応させ、沈殿物として生じたBa(OH)2を乾燥雰囲気中でろ過し除去するのがよい。

0046

また電解に際して大電流を印加すると、溶媒の温度上昇および蒸発損失が生じるので、約80mA/cm2以下で電解することが望ましい。また、この様な低電流で効率よく溶解するには、金属試料を板状にする等して金属試料の表面積を大きくするのがよい。

0047

いわゆるスライム法は、図1に示す通り、塩化第一鉄水溶液を電解液23とし、定電流で鉄マトリックスを電気分解して介在物を抽出する方法であり、この方法は、前記酸溶解法と同様に、鉄マトリックスを早く多量に溶解することができるので効率よく介在物を抽出することができる。

0048

スライム法を採用する場合には、電解液23としてpH5〜7に調整した10v/v%塩化第一鉄水溶液を用いるのがよい。電解液のpHが小さすぎる場合、即ち、酸性度が高い場合には、CaO含有介在物が前記酸溶解法の場合と同様に溶解し、正確に鋼中のCaO含有介在物の定量または粒径の測定を行うことができないので好ましくない。本発明では、電解液(塩化第一鉄水溶液)のpHを5以上、好ましくは5.5以上とするのがよい。

0049

一方、上記塩化第一鉄水溶液のpHが高すぎると、抽出時に水酸化物が析出しやすくなり残渣量が増加する。本発明法では、残渣量に関係なく後述のレーザ励起−ICP分析法で介在物の分析を行うことができるが、レーザ励起−ICP分析での分析時間が長くなるので残渣量は少ない方が好ましく、そのためには、上記塩化第一鉄水溶液のpHを7以下、好ましくは6.5以下となるよう制御するのがよい。

0050

CaO含有介在物を含めた介在物を抽出する方法として、上記いずれかの方法を採用すればよいが、高清浄鋼を対象に介在物の評価を行う場合には、100g以上の試料を用いることが好ましく、この様な場合、試料のマトリックス成分(鉄鋼試料における鉄)の溶解速度の速いスライム法を採用することが望ましい。

0051

<溶体化処理について>
CおよびCrをそれぞれ0.2質量%以上含有する鋼を分析対象とする場合、上記いずれの方法で試料を溶解する場合にも介在物とともに多量の炭化物が残存する。この様な炭化物の発生を抑制するには、試料溶解に先立って約800℃以上で約3分間以上保持する、いわゆる溶体化処理を施すことが望ましい。

0052

溶体化処理における加熱温度が低すぎると、炭化物の分解効果が不十分となり、試料溶解時に該炭化物がCaO含有介在物とともに多量に残渣として残る。従って、溶体化処理の温度は800℃以上とするのがよく、好ましくは900℃以上である。

0053

尚、溶体化処理温度が多少高くなり酸化鉄が析出しても、該酸化鉄がレーザ励起−ICP分析法で測定する場合に介在物分析に悪影響を及ぼさないので、特に溶体化処理温度の上限を設けないが、酸化鉄の過剰な析出を抑えてより効率よくレーザ励起−ICP分析法で測定するには、1100℃以下で溶体化処理を行うのが好ましく、より好ましくは1000℃以下である。

0054

また適正な温度で溶体化処理を行う場合であっても、その処理時間が短すぎると炭化物を十分に分解させることができないので、3分間以上、好ましくは5分間以上行うのがよい。

0055

ところで本発明者らは、予め溶体化処理を施した試料を用いて、pH5〜7に調整した10v/v%塩化第一鉄水溶液中で定電流溶解してCaO含有介在物を定量する方法について既に提案している(特願2001−146512号、但し未公開)。この方法では、溶体化処理時間が長すぎると酸化鉄が析出し、その後の処理が煩雑となることから、溶体化処理時間の上限を10分間としている。

0056

しかし、本発明法では、溶体化処理時間が多少長くなり酸化鉄が析出しても、該酸化鉄がレーザ励起−ICP分析法で測定する場合に介在物分析に悪影響を及ぼさないので、特に溶体化処理時間の上限を設けない。本発明者らが高炭素高クロム鋼である軸受鋼について溶体化処理時間を検討する実験を行ったところ、溶体化処理時間が10分間では炭化物を十分に分解することができず、溶体化処理時間を約30分間とすれば、試料溶解時に生ずる残渣量が極めて低減できることが分かった。

0057

尚、介在物のうち窒化物硫化物は溶体化処理で分解し易いので、窒化物や硫化物の定量が必要な場合には、溶体化処理を行わない方がよい。溶体化処理を行わない場合には、上述の通り多量の不要残渣が生ずるが、本発明法では、レーザ励起−ICP分析法で該不要残渣とともに窒化物や硫化物を測定することができる。

0058

<試料溶解後の濾過について>
目的とする介在物サイズに合わせたフィルターを用い、よりサイズの小さな不要残渣等を除去することで、残渣量を低減でき、レーザ励起−ICP分析法での分析時間を短縮することができる。

0059

例えば、前記スライム法で軸受鋼を溶解する場合、開孔径20μmのテトロンフィルターを用いて濾過することが挙げられる。軸受鋼の場合には、20μmを超えるサイズの介在物が疲労破壊の起点となりやすく、20μmを超えるサイズの介在物の組成等を評価するのが有効だからである。

0060

尚、ハロゲン溶解法や非水溶媒定電位電解法等で少量の試料を溶解し、開孔径のより小さい1〜10μm程度の白金フィルターでろ過して、微細な介在物を観察してもよい。

0061

<金属ペーストとの混合試料の作製について>
本発明では、前記溶解法で溶解して生じた溶解残渣を金属ペーストと混合させたものを、レーザ励起−ICP分析に用いる。この様に金属ペーストと混合させることで、溶解残渣を粉末状のまま用いた場合にキャリアガスと共に微粒子飛散して介在物の組成やサイズを正確に計測することができないといった問題を解消できる。また、炭化物や水酸化物等の不要残渣が多量に生じた場合でも、該溶解残渣中の非金属介在物を不要残渣量に関係なく測定できるからである。

0062

前記金属ペーストとしては、前記溶解残渣を構成する金属元素を含まないもの、即ち、非金属介在物を構成する金属元素、炭化物や水酸化物を構成する金属元素を含まないものを用いるのがよく、非金属介在物は、Al、Si、Ca、Mg、Mn、Fe等の酸化物、硫化物、窒化物または炭化物等から構成されているため、これらの成分が含まれていないものを用いて正確な介在物組成の分析を行うのがよい。

0063

具体的に金属ペーストとして、例えば、Agペースト、Ptペースト、Cuペースト、Niペースト等を用いることができ、特に市販品として容易に入手できるAgペーストを用いるのが好ましい。

0064

以下では、一例としてAgペーストを用いて試料を作成する場合について説明する。

0065

まずフィルター上に捕捉された溶解残渣を、100℃以上に加熱して付着水を除去する。例えば200℃で2時間加熱すればよい。その後、乾燥させた溶解残渣をペーストと混合させて、レーザ励起−ICP分析用試料を作製する。図2は、該試料の作製を図示したものであり、Agペースト30を溶解残渣31に対して30〜80質量%の割合で混合し、約100〜200μm厚となるまでプレスする状態を示している。

0066

尚、Agペースト30を用いる場合には、プレスした試料32の電解鉄基盤33との密着性およびAgペーストコストの面から、Agペースト30を溶解残渣31との割合で50〜60質量%混合することが望ましい。

0067

またこの場合、プレス後の厚みは特に制限されず、一回のレーザ走査で溶解残渣を励起できるようプレス後の厚みを更に薄くしてもよいし、プレス厚を厚いままとし、全ての溶解残渣を励起するまでレーザ走査を繰り返してもよい。

0068

プレス後の試料32は、大気雰囲気で200℃で2時間加熱して、Agペースト中の有機物を除去するのがよい。介在物および残渣の付着水を前記の通り予め除去するのは、溶解残渣に多量の水が付着したままだと、この加熱時に試料中の水分が蒸発する際、試料が湾曲するなど変形し、試料に照射したレーザービーム焦点がずれて、効率よく励起されない等の恐れがあるからである。以上の操作によりAgペーストと介在物・残渣との混合物は完全に固化し、レーザ励起−ICP分析に適した試料となる。
(2)前記(A)▲2▼について
本発明は、介在物の組成および粒径をレーザ励起−ICP分析法で測定するに際し、前記スライム法、非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法等の電気化学的溶解法において、電解中断後の金属試料の電解面に粘着テープを押し付けた後、剥して得られる前記非金属介在物の付着した粘着テープを試料としてもよい。

0069

試料表面の介在物を分析することになるため試料量は少なくなるが、介在物が比較的多い金属試料を分析する場合には、十分信頼性のある介在物の測定結果が得られる。また、試料を完全に溶解する方法ではないため電解時間が極めて短く、濾過操作も必要としないため、前記化学的処理法によって介在物を抽出分離する方法よりもかなり短時間で分析できる。

0070

具体的には、金属試料の表面を電気分解し、電気分解前の試料表面から約5〜15μm深さまでマトリックスが溶解した時点で電解を中断し、金属試料の表面をアルコールで静かに洗浄し、乾燥させた後に、電解された試料表面にカーボン粘着テープ等のような粘着テープを押し付けて、試料表面から露出している介在物を粘着テープに固定し、これをレーザ励起−ICP分析に供する。

0071

尚、上記粘着テープとしては、上記電気分解により金属試料表面に露出した介在物を付着させることができるものであればよく、市販のセロハンテープ等を用いてもよい。しかし、粘着テープに介在物を固定後、レーザ励起−ICP分析を行う際に、レーザ励起時の熱によるテープの変形を抑えて安定した分析を行うには、耐熱性の高いカーボン粘着テープを用いるのが好ましい。該カーボン粘着テープは、前記セロハンテープと比較して強度も高いので作業性の観点からも好ましい。

0072

また別の方法として、介在物の露出した金属試料表面に酢酸メチル溶液を塗布した後、アセチルセルロースフィルムを押し付け、酢酸メチル溶液と接触して溶けたアセチルセルロースフィルムで介在物を固着させてもよい。
(3)前記(B)について
本発明では上記の通り調製した試料を用い、レーザ励起−ICP分析法で介在物の組成および/または粒径を測定する。

0073

以下、上記レーザ励起−ICP分析法により非金属介在物の組成及び粒径を測定する原理を説明する。レーザ励起−ICP分析法とは、上述の通り、鉄鋼及び非鉄金属表面にレーザ光を照射して介在物を蒸発させ、これをキャリアガスにより搬送し、高温の誘導結合プラズマ中でイオン化させて、生成したイオンの個数を質量分析法、あるいは生成したイオンの発光強度を発光分光光度法で計測する方法である。一般に発光分光光度法より質量分析法の方が分析精度が高い為、質量分析法を用いる方が好ましい。

0074

上記の様に作成した試料中の介在物を分析するには、該試料上にレーザ光を操作させて、ペーストを構成する成分や炭化物等の残渣とともに介在物を蒸発させて、ICP分析で得られるスペクトル強度時間曲線積分値から、非金属介在物の組成および粒径を調べればよい。

0075

本発明にかかるレーザ励起−ICP分析法による非金属介在物の組成及び粒径の迅速分析法の実施形態を、図3および図4を用いて詳細に説明する。尚、ここでは質量分析装置を用いた場合を例示する。

0076

図3において、試料13を上面が透明ガラスである容器14に入れ、キャリアガスとしてアルゴンガスを流しながらレーザ光15を試料上部から照射する。レーザ光が照射している間に、あらかじめ設定された移動パターンで容器14を水平方向に移動させる。試料の上面16において、レーザ光照射による励起痕は例えば17のごとく現れる。レーザ照射痕17の幅及び深さは、レーザ出力が高いほどまた走査速度が低いほど大きくなる。

0077

例えば、出力が大きいレーザ光の照射装置を用いることでレーザ光の照射幅及び深さは大きくなるため、走査速度を高くして、広い試料範囲を迅速に測定することが可能になる。また、微細な介在物が多数存在する場合には、レーザ光の照射幅を小さくし走査速度を低くすることで、個々の介在物についての正確な組成及び粒径を測定することができる。

0078

レーザ光の照射により励起された蒸気は、アルゴンキャリアガスによって高速でICP部18に連続的に導入され、蒸気中の各元素はイオン化される。各元素のイオン数は、質量分析装置19により遂次計測され、各元素のマススペクトルの時間曲線として表示される。これをデータ処理装置20を用いて処理し、個々の介在物の組成及び粒径は数値及びグラフとして出力される。

0079

また本発明法では、分析用試料上にレーザ光を走査させ、前記レーザ励起−ICP分析法により得られるスペクトル強度の時間曲線の積分値を用いて非金属介在物の組成や粒径を測定することが好ましい。以下、図4に示す様に、鋼表面に、A元素及びB元素を含有する酸化物系介在物1と、鋼内部の表面近傍に前記介在物1と異なる量のA元素及びB元素を含有する酸化物系介在物1’が存在する場合を例に説明する。

0080

図4に示す様に、鋼試料の部位2から部位3までレーザ光を走査して照射した場合、介在物を含む溶解残渣と金属ペーストが共に励起されて蒸発する。この際、介在物1及び1’も励起されて蒸発する。励起・蒸発する試料部分4の幅及び深さは、レーザ出力が高いほどまた走査速度が遅いほど大きくなる。

0081

例えば、レーザ出力が2mJ、走査速度0.02mm/sの場合、励起された鋼試料部分4の幅は50ミクロン程度となり、深さは50ミクロン程度となる。

0082

蒸発した試料は、高流量のアルゴンキャリアガスにより高速でICP部18に搬送され、ICP部18(図3参照)でイオン化され、質量分析装置19(図3参照)でイオンの個数が計測される。A元素及びB元素は、それぞれ図4の時間曲線5及び6に示される様にマススペクトルとして表わされる。

0083

図4に示すピーク7及び8は介在物1に対応し、ピーク9及び10は介在物1’に対応している。尚、図中記号11,12はバックグラウンドを示している。ピーク7〜10の斜線部分をそれぞれ積分して得られたピーク面積値を用いて、検量線から介在物1及び1’中のA及びB元素の量をそれぞれ求めることができる。さらに、(AOの質量%)+(BOの質量%)=100であるから、計算により介在物1及び1’の組成(割合)を求めることができる。

0084

本発明法は、介在物が、上述の様なA元素,B元素及び酸素からなるAO及びBOの2成分系酸化物である場合に限らず、例えば、1成分または3成分系以上の酸化物や1成分系以上の硫化物、あるいは1成分系以上のりん化物等にも適用することができる。

0085

介在物1及び1’の粒径に対するピーク7と8及びピーク9と10との比較から明らかな様に、介在物の粒径はピーク面積値に比例する。従って、予め粒径が既知の複数の介在物を用い、レーザ励起−ICP分析法で該介在物のピーク面積をそれぞれ測定し、ピーク面積と介在物粒径の関係を示す検量線を作成しておけば、該検量線に基づき介在物の粒径を求めることができる。

0086

本発明の上記方法は、鉄鋼、Ni、Cu等の様々な金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径を把握するのに有効であるが、その中でも、鉄鋼試料に用いれば本発明の効果が十分に発揮され、特に、CおよびCrの含有量が比較的多い軸受鋼中の非金属介在物を評価するのに好適である。

0087

【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。

0088

実施例
軸受鋼(C含有量:1.0質量%、Cr含有量:1.5質量%)をブルーム連続鋳造機鋳造し、分塊圧延棒鋼圧延を行って得た棒鋼(直径:65mm)から、試料(厚み:約5mm、質量:約120g)を切り出した。この様にしてチャージの異なる試料を3個用意し、レーザ励起−ICP質量分析法による介在物の組成/粒径分析に供する試料には、溶体化処理(1000℃で30分間加熱)を施した。

0089

<本発明例:レーザ励起−ICP質量分析法による介在物の組成/粒径分析>
pH6に調整した10v/v%塩化第一鉄水溶液中で定電流電解を行った。電極として溶体化処理した軸受鋼試料とステンレス板対極)を使用し、軸受鋼試料表面に対する電流密度を約20mA/cm2で一定とした。電解槽内には、孔径20μmのテトロンフィルターを設置し、電解液中で濾過を行って溶解残渣(粒径20μm以上の介在物とその他の炭化物等の残渣)を捕捉した。

0090

次に、テトロンフィルター上の前記溶解残渣を、200℃で2時間加熱して溶解残渣の付着水を除去した。加熱後の溶解残渣の質量は約200mgであった。

0091

乾燥させた溶解残渣と市販のAgペーストを各50質量%の割合で混合し、約100μm厚にプレスした。この混合物を200℃で2時間加熱し、Agペースト中の有機物を除去してレーザ励起−ICP質量分析用の試料とした。

0092

レーザ励起条件は、レーザ出力を2mJとし、走査速度を0.02mm/sとして上記試料をレーザ励起−ICP質量分析を行った。全ての試料を分析するのに要した時間は約3時間であった。この様にして検出された全介在物の組成および粒径を表1に示す。

0093

<比較例:EPMAによる介在物分析>
前記本発明例で用いた軸受鋼から試料を採取して研磨し、試料表面の20mm×20mmの視野内にある、長径が20μm以上の介在物の組成と粒径をEPMAを用いて調べた。チャージの異なる各試料において各10視野観察した。その結果を表2に示す。

0094

【表1】

0095

【表2】

発明を実施するための最良の形態

0096

表1から、本発明の方法によれば、酸に溶解し易く検出が困難であったCaO含有介在物を含む種々の非金属介在物について定量できることがわかる。これに対し、鋼材の断面を直接EPMAで観察する従来の方法では、観察が試料表面に限定されることから、測定できた介在物個数は極めて少なく、分析結果が軸受鋼の介在物量(介在物特性)を示すものとは言い難い結果となった。

図面の簡単な説明

0097

本発明は以上のように構成されており、金属試料中の非金属介在物、特にCaO含有介在物も含めた種々の非金属介在物の組成とサイズを精度よく測定できるようになった。この様な分析方法の実現によって、最終ユーザーにまで鉄鋼製品の非金属介在物に関する品質保証できることとなった他、製品開発時の介在物の評価手段として有用な方法を提供できるようになった。

図1
本発明を実施する為に構成される装置例を示す概略説明図である。
図2
本発明法で用いる試料の作製方法を例示した概略説明図である。
図3
本発明を実施する為に構成されるレーザ励起−ICP質量分析法を示す概略説明図である。
図4
介在物粒径と、該介在物中のA元素およびB元素のマススペクトル曲線との関係を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1、1’ 非金属介在物
レーザ照射開始点
レーザ照射終了点
4 非金属介在物以外の試料構成物質
5 A元素のスペクトルの時間曲線
6 B元素のスペクトルの時間曲線
7 非金属介在物1によるA元素のスペクトルピーク
8 非金属介在物1によるB元素のスペクトルピーク
9 非金属介在物1’によるA元素のスペクトルピーク
10 非金属介在物1’によるB元素のスペクトルピーク
11 非金属介在物以外の試料構成物質中のA元素のスペクトル強度
12 非金属介在物以外の試料構成物質中のB元素のスペクトル強度
13金属試料
14小型容器
15レーザ光
16 上から見た金属試料
17レーザ照射痕
18誘導結合プラズマ装置
19質量分析装置
20データ処理装置
21処理容器
22電極
23 10%塩化第一鉄水溶液
24 鋼試料
25テトロンフィルタ(孔径20μm)
26 フィルタに捕捉された溶解残渣
27 フィルタを通過した溶解残渣
28電源
30Agペースト
31 溶解残渣
32 Agペーストと溶解残渣の混合物
33電解鉄基盤
34プレス板
35 紙

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