図面 (/)

技術 1つの状態から他の状態への細胞の転換をモニタリングする方法

出願人 エピゲノミクスアーゲー
発明者 クルトベルリンアレクサンダオレクスフェンオレク
出願日 2003年12月10日 (15年11ヶ月経過) 出願番号 2003-411933
公開日 2004年7月15日 (15年4ヶ月経過) 公開番号 2004-194655
状態 未査定
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理
主要キーワード ソニフィケーション 検出度 ソフトマージン 不定期間 トランスリン 参照文 組織特有 相対的変化
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2004年7月15日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

ゲノムに基づく技術を利用して、1つの状態から他の状態への細胞転換モニタリングする。

解決手段

状態1から状態2に転換する少なくとも1つの細胞の分化モニターする方法であり、以下の工程、a)状態1にある細胞のDNA中のシトシンメチル化パターンを決定すること、b)状態2にある細胞のDNA中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、c)上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件曝露すること、d)該培養条件に曝露した細胞のDNA中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、e)工程dで測定したシトシンのメチル化パターンと、工程a及びbで決定したメチル化パターンとを比較すること、そして、f)得られたデータから評価を行うこと、が実施されることを特徴とする方法。

概要

背景

組織欠損及び末期段階器官不全は、広範囲にわたる健康上の多数の問題を招来する。これらの問題を解決するため、主として、組織又は器官全体の移植に頼った複数の試みがなされている。それらの試みは、改善される見込みのない状況、すなわち、ドナーから提供される器官の入手可能性、及びそれによって起こり得る免疫拒絶反応により制限されている。

組織工学は、設計された生体代用物を、単独で又は製造された装置類と共に、体内に移植することによって、組織欠損あるいは器官不全の治療を可能にしている。

最近利用されている移植技術と比較した場合に、組織工学の産生物を使用する1つの利点は、組織を発育させるために自家移植源を使用し、そうして患者自分自身細胞で治療することを可能とし、それにより免疫拒絶反応を回避できる可能性にある。このような個別的な産生物を供給するためには、理想的な組織を発育させるための出発材料を、患者自身から取得する必要がある。この材料は、品質保証され、増殖し、正常に分化する細胞であることが必要である。もしも、自家移植源から生の材料を分離する場合、その過程は、各患者個人で異なる出発材料に適合させる必要がある。その上、患者に移植される組織産物が、同じ患者の出発材料に由来するものであることが保証される必要がある。

しかしながら、組織工学が既に確立された分野では、標準的な組織設計産物は、自家移植源よりも、むしろ他家移植源からのものである。それでも、正しく設計された組織、たとえば、腫瘍の発生を招いたり、他の望まない結果となり得る未分化あるいは異常に分化した細胞がない組織、の提供を受けることは、患者にとって、この上なく重要なことであるから、個々の最終産物は、十分に解析される必要がある。該産物の正確な系統、機能性、及び同質性について、保証されなければならない。

組織工学の産物として、潜在的可能性を有する1つの出発材料は、幹細胞及び/又は他の前駆細胞である。詳細な定義については、本発明の記載の中で述べられる。一般に、幹細胞は、不定期間、しばしば生物体の一生、を通じて、自己自身を複製する能力がある。適切な培養条件下、又は適切なシグナルが与えられると、幹細胞は、生物体を構成する別の細胞になる(分化する)ことができる。幹細胞を定義するために用いられる用語の多くは、完全な生物体内(in vivo)、実験環境下(in vitro)又は移植後における幹細胞の挙動に依存している。

胚性幹細胞は、その発生段階に基づいて定義され、たとえば、の発生において最も初期の段階のものは、胚盤胞と呼ばれる。詳しくは、胚性幹細胞は、胚盤胞が子宮壁に着床する前の段階における、胚盤胞の内部細胞塊に由来するものである。

成人の幹細胞は、分化(特殊化)した組織内で発生する未分化(非特殊化)の細胞で、自己自身を複製し、その特異的な組織における特異的なタイプの細胞を産生するように特殊化する。成人では、器官の形成及び複製は、器官−又は組織−制限幹細胞のみ(たとえば、血液中の全ての細胞を生じさせる造血幹細胞ニューロン神経膠星状細胞、及び寡突起神経膠細胞となる神経幹細胞)の作用で起こると考えられていた。しかしながら、ある器官の幹細胞、たとえば、造血幹細胞は、肝臓、脳又は腎臓のような他の器官に分化する細胞になり得ることが示されている。成人の幹細胞は、生物体の生涯を通じて、自己自身の同一の複製物を産生することができる。修復あるいは複製過程において、成人の幹細胞は分裂して、前駆細胞(前駆体細胞)を産生し、その後、それらは分化、すなわち、特徴的な形態と特別な機能をもった成熟した細胞型となる。

前駆細胞(前駆体細胞)は、胎児又は成人の組織内で発生し、部分的に特殊化されている。前駆細胞は、分裂して分化した細胞を発生させる。前駆細胞が分裂する場合、該前駆細胞は、より多くの前駆細胞を形成し、又は2つの特殊化した細胞を形成することができる。通常、この後者の細胞は、自己自身を複製することはできない。しかしながら、例外があり、たとえば、肝臓にある特異的な八倍体細胞は、自己自身を複製することができる。

用語「多分化能性」は、いくつかの異なった細胞系を発生させ、自己自身を複製させる単一細胞の能力を意味する。多分化能は、いくつかのレベルで起こることができる。全能性細胞とも呼ばれるペナルティメート多分化能性細胞は、受精卵であり、これは体内のあらゆる細胞を発生させることができる。

幹細胞の実質的に無制限の自己複製能及び分化能は、生物医学研究及び複製医学において広範な適用の可能性を開いた。複製医学に対しては、幹細胞はドナー組織不足の問題、また、受取人にとって該細胞を免疫適応性とすることにより、移植拒絶の問題を解決する可能性を与える。ヒトの多分化能性細胞は、前着床胚に由来するものであり、特定の細胞系への分化が促進される。

成人の幹細胞から発生した細胞系に関する組織工学の潜在的可能性を説明するため、ここで例として、糖尿病患者を治療するために、膵臓から分離した前駆細胞を、グルコース応答する形でインシュリン分泌する高度に分化した細胞とする取り組みを述べる。

膵臓は二つの細胞型のタイプ、すなわち、外分泌及び内分泌細胞を有する。成長の間、内分泌細胞が膵臓の導管から出現し、凝集塊を形成し、最後にランゲルハンス島として知られるものになる。ヒトにおいては、4つの型の島細胞があり、インシュリンを産生するベータ細胞はそれらのうちの1つである。過去数年にわたって、医師たちは、膵臓の島細胞を患者に注入することによって、糖尿病を治療しようと試みてきた。しかしながら、島細胞は免疫的適応するものでなければならず、その組織は、死から8時間以内の遺体から得た新鮮なものでなければならない。しかも、通常、何人かのドナーは、1回手術を受ける必要がある。これらの要件を満たすのは困難である。さらに、島細胞を移植した受取人は、免疫抑制治療を一生行うことになる。

これらの問題を解決するため、組織工学の分野では、グルコースに応答するインシュリン産生ベータ細胞の別の供給源が確認されている。適当な前駆細胞あるいは幹細胞は、十分に機能するベータ細胞に分化するように誘導することができる。この特異的な細胞分化コントロールする、いくつかの方法が知られている。それらの方法の1つでは、出発原料を成人の組織としている。Susan Bonner-Weirと彼の同僚は、ヒトの膵臓組織から分離した導管細胞の培養物は、導管細胞及び内分泌細胞の両方を含むクラスターに分化するよう誘導されることがあり、該内分泌細胞はグルコースに曝露されるとインシュリンを産生することを報告した(Bonner-Weir S、Taneja M、WeirGC、Tatarkiewicz K、Song KH、Sharma A、O'Neil JJ. (2000) In vitro cultivation of human islets from expanded ductal tissue. Proc Natl Acad Sci USA 97,7999−8004)。

組織工学の産物として、もう一つの潜在的可能性のある出発材料は、十分に分化した細胞であり、培養において脱分化するものである。

また、特異的な細胞型(十分に分化した細胞から、他の細胞型を発生させる可能性をもつ、あまり特殊化していない細胞まで)を再分化することも有益であり得る。たとえば、培養、脱分化、そして増殖させたヒトの軟骨細胞は、管理された培養条件下において、再分化することができる。この能力は、三次元培養の間、成長因子ホルモン特有の組み合わせによって増幅されることが示されている(Yaegerら(1997)、 Synergistic action of transforming growth factor-beta and insulin-like growth factor-I induces expression of type II collagen and aggrecan genes in adult human articular chondrocytes. Exp Cell Res.237,318-355;Jakobら(2001)、 Specific growth factors during the expansion and redifferentiation of adult human articular chondrocytes enhance chondrogenesis and cartilaginous tissue formation in vitro. J Cell Biochem 81, 368−77)。それらの成長因子には、TGF−ベータ、FGF及びEGFがあり、再分化を誘導する足場スカフォールド)を必要なだけ適用すると共に、該成長因子を培養培地に添加すると、分化に対する効果を表す。

軟骨細胞の分化の段階を見分ける標準的な方法は、マーカー蛋白質であるコラーゲン2とコラーゲン1の発現レベルの割合、及び/又はアグリカン(aggrecan)とバーシカン(versican) の発現レベルの割合を決定することである。いずれの割合も軟骨細胞の分化の段階を知るための指標となるものである。

しかしながら、特異的な組織を見分けるための、より好ましい方法は、メチル化の状態を解析することである。前立腺及び腎臓のような組織を識別することが、Adorjanらによって報告されている(Tumour class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis.(2002)Nucleic AcidsRes.30、e21)。本発明は、1つの細胞又は複数の細胞の分化の段階を識別するために、メチル化を検出する特別な技術の使用に関するものである。

幹細胞又は前駆細胞から、信頼かつ複製可能な方法により、in vitroで新たな型の細胞と組織を開発、設計し、最終的に、それらに対して法上の承認を得ることは、いくつかの企業の目的である。この目的のためには、a)細胞が自己の表現型及び分化状態を変化させることなく、維持かつ増殖できること、b)目的の細胞型を得るために、的確で標準的、効率的な方法で、細胞を操作、識別できること、c)正確な系統、機能性、同質性、及び分化状態が評価できること、が必要である。

分化及び増殖の初期段階では、実験結果の評価により、正確な前駆細胞が選択されたかどうか、分化の経路予期されたものかどうか、及び該経路は正確な組織を産生するかどうか、が問われる。産生物の増殖のより進んだ段階では、上記評価は、産生物の質を示す証拠として必要である。本文では、「正確」とは、問題の細胞型に関して、十分に生物学的に機能していることを言う。

現在に至るまで、上記した必要条件の評価の実態は、上記細胞の形態学的及び生化学的変化のような表現型の変化の解析に基づいている。使用されている典型的な技術は、免疫組織化学的解析、蛍光活性細胞選別FACS)、及び特異的マーカー蛋白質の発現解析である。これらの生化学的手法は、しばしば結論が得られにくく、冗長で、時間がかかり、多くの処理量の解析には向いていない。それらは、常に、意図する細胞の機能の予測に適しているわけではなく、往々にして、分化過程の最後において有意義なだけである。

細胞の状態を決定する標準的な方法は、免疫組織化学的解析法の使用である。この方法は、特異的な蛋白質の検出に基づくものである。最近の刊行物には、変形関節症の軟骨細胞を識別するのに好適ないくつかのマーカーの使用について述べられている(Pfander D 、Swoboda 及びKirsch T(2001)Expression of early and late differentiation markers (proliferating cell nuclear antigen、syndecan-3、annexin VI and alkaline phosphatase. Am.J.Pathol 159: 1777−1783)。3つの蛋白質は、初期の分化状態、2つの異なる蛋白質は、後期の分化状態に対して特異的であるように思われる。しかしながら、マーカーとしてのそれらの使用は、労働集約的な操作である免疫染色に限定されている。通常、蛋白質ごとの1つの解析においては、その蛋白質の発現モニターする必要がある。このデータの解釈は、しばしば複雑で、結果は、普通、発現の相対的変化のみを表している。かなり複雑な蛋白質発現パターンによって細胞の状態が決定されうるので、細胞の状態に関する明確な内容を記述することは困難となる。

マーカー蛋白質について、より一層理解するに従って、細胞の分化状態をより詳細に決定することができる。より多くの数の変化に関する知見を同時に取得することを可能とするRNAベースcDNAオリゴマクロアレイあるいはコンプレックスプロテオミックス実験のような分子生物学の技術を使用することなしには、細胞分化自体及び分化に対する増殖因子の影響について、詳細に研究することはほとんど不可能である。

プロテオミックな試みは、根本的な困難、たとえば、十分な感受性が得られること、を克服していないが、発現パターンを解析するRNAベースの技術は、よく知られており、広く利用されている。細胞分化に関するマイクロアレイベース発現解析の研究は、進展中の研究分野である。分化させるために発現した正確なパターンの遺伝子は、最終的に付与された系統に向かう特定の細胞を指示し、その多くは分化の最も初期の段階で調節されると認識されている。

多くの刊行物には、細胞の分化を研究するために、マイクロアレイ解析の使用について記載されている。たとえば、Burton GR、Guan Y、Nagarajan R、McGehee RE (2002) Microarray analysis of gene expression during early adipocyte differentiation. Gene 293:21−31。Lu SJ、Quan C、Li F、Vida L及びHonig GR (2002) Hematopoietic Progenitor Cells Derived from Embryonic Stem Cells:Analysis of Gene Expression. Stem Cell 20 (5):が発行されている。
他のグループ研究者(Bruce Lahnら)は、脳形成の初期段階における細胞分化及び移動をコントロールしている分子メカニズム解明しようと努力している。彼らは、また、幹細胞と分化細胞を識別する明確な分子学的特徴を明らかにすることを試みている(http://www.genes.uchicago.edu/fri/lahnres.html、2002年8月現在)。

cDNA配列及び(オリゴヌクレオチドベースの)アフィメトリックスチップ(affymetrix chips) によれば、細胞の発現パターンの変化についての、複雑で感受性の高い解析が可能である。しかしながら、これらの技術の決定的な欠点は、それらがRNAに依存しているということである。RNAを用いた広範な研究にもかかわらず、その不安定性に関する通常の問題は解決されていない。そのため、RNAを用いた単一の実験では、実験過程の進行につれて、RNAが分解することを考慮に入れる必要がある。この問題は、大部分の遺伝子では、実際の発現の変化が不規則な分解と重なって不明瞭となるように、RNAの発現レベルが次第に変化するという事実によって一層深刻となる。

管理機関では、近年、上記の欠点により、マイクロアレイ発現に依存する技術の基礎部分受け入れていない。対照的に、本発明の方法は、容易に分解するRNA分子ではなく、安定なDNA分子に基づくものであり、デジタルの0/1シグナル(メチル化又は非メチル化塩基によってもたらされる)に依存している。それゆえ、結果は、RNA依存の技術よりも、感受性に優れ、信頼できるものである。この技術に基づく基礎部分は、管理当局にも認容されると思われる。

近年、分子生物学の分野では、研究は、主として遺伝子、遺伝子のRNAへの転写、及び蛋白質へのRNAの翻訳焦点が当てられてきた。遺伝子のコントロールに関連した調節メカニズムに関する一層限定された解析法が知られている。遺伝子調節、たとえば、個体の発育のどの段階で、遺伝子が活性化または阻害化されるか、及びこの調節についての組織特有性質は、あまり解明されていない。しかしながら、そのことは、遺伝子又はゲノムにおけるメチル化の程度及び性質と、高い確率で相関し得る。特異的な細胞型は、特異的なメチル化パターンと相関し得るものであり、このことは、いくつかのケースで示されている(Adorjanら (2002) Tumour class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 30 (5) e21)。
さらに、本発明は、分化の過程にある細胞の状態を、そのメチル化パターンを解析することによって決定する方法を開示する。

高等な種の真核細胞では、DNAは、CpGジヌクレオチドグアニンの5’位に位置するシトシンで、ほとんど排他的にメチル化される。この修飾は、遺伝子発現、特に多くの遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG島として知られるCpGに富む領域を含む場合に重要な調節効果を及ぼす。常染色体のほとんど全ての遺伝子関連の島は、メチル化から保護されている一方、CpG島の広範囲にわたるメチル化は、所定の刷り込み遺伝子の不活性化及び雌の不活性X染色体上の遺伝子の転写の不活性化と関連している。

メチル化の形でのシトシンの修飾には、重大な情報が含まれている。メチル化されていないシトシンとは異なり、DNA配列中の5−メチルシトシンの同定が、その役割をさらに深く解析する上で、最も重要であることは明らかである。しかし、5−メチルシトシンが、ハイブリダイゼーション優先性配列解析において基礎となる性質)に関する点において、ちょうどシトシンのような挙動をとるからといって、その位置を通常のシークエンシング反応によって同定することはできない。

その上、いかなる増幅、たとえば、PCR増幅においても、この関連したエピジェネティックな情報、メチル化シトシンあるいは非メチル化シトシンは、完全に喪失されるだろう。

この問題を解決するいくつかの方法が知られている。通常、ゲノムDNAは、化学薬品又は酵素で処理されて、シトシン塩基転換され、結果として、これにより、その後、塩基を識別することが可能となる。最も一般的な方法は、a)メチル化及び非メチル化DNAの識別を可能にするメチル化感受性制限酵素の使用、b)重亜硫酸塩による処理、である。上記酵素の使用は、特定の認識配列に対する制限酵素選択性の理由から制限される。

そのため、重亜硫酸塩とシトシンとの特異的反応は、後続アルカリ性加水分解と同時に、シトシンをウラシルに転換させる一方、5−メチルシトシンは、これらの条件下(Shapiroら、(1970) Nature 227:1047)では、未修飾のままであり、近年、DNAの5−メチルシトシンを研究するために最も頻繁に使用されている方法である。ウラシルは、その塩基対挙動の点でチミンに相当し、すなわち、それはアデニンハイブリダイズし、一方、5−メチルシトシンは、この処理において、その化学的性質を変化させず、そのため、シトシンの塩基対挙動をもち、グアニンとハイブリダイズする。結果的に、ハイブリダイゼーション挙動では、シトシンと識別できない5−メチルシトシンが、正常な分子生物学的技術、たとえば、増幅及びハイブリダイゼーションあるいはシークエンシングを用いて、残っているシトシンのみを検出することができるように、元のDNAは転換される。これら全ての技術は、塩基対に基づくものであり、現在では十分に開発されている。重亜硫酸塩処理のあるなしで、DNA配列を比較すると、メチル化されていないシトシンを容易に同定することができる。

5−メチルシトシンを検出するための、さらなる公知方法概要は、以下の概説文献から得られる:Rein T、DePamphilis ML、 Zorbas H (1998) 、Nucleic AcidsRes.、26: 2255。

感受性の点では、従来技術は方法として規定されており、該方法は、アガロースマトリックスで解析されるDNAを包含し、それによりDNAの拡散再結合(重亜硫酸塩は単一鎖のDNAとのみ反応する)を防ぎ、全ての沈降及び精製過程ファースト透析で置き換えている(Olek A、Oswald J、Walter J.(1996) A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 24: 5046−6)。この方法を使用すると、個体の細胞を解析することが可能となり、このことは該方法の潜在的有用性例証するものである。

現在までのところ、ごく少数の例外(たとえば、Zeschnigk M、Lich C、Buiting K、 Doerfler W、Horsthemke B. (1997) A single-tubePCRtest for the diagnosis of Angelman and Prader-Willi syndrome based on allelic methylation differences at the SNRPN locus. Eur J Hum Genet. 5: 94−8)を除き、重亜硫酸塩技術は、研究において唯一使用されているものである。しかしながら、常に、公知遺伝子の短い特異的なフラグメントは、重亜硫酸塩処理の後に増幅され、完全な配列(Olek A、Walter J. (1997) The pre-implantation ontogeny of the H19 methylation imprint. Nat Genet. 3: 275−6)又は個々のシトシンの部位が、プライマー伸長反応(Gonzalgo ML and Jones PA. (1997) Rapid quantitation of methylation differences at specific sites using methylation-sensitive single nucleotide primer extension (Ms-SNuPE). Nucleic AcidsRes. 25: 2529−31、WO 95/00669)又は酵素消化(Xiong Z、Laird PW. (1997)COBRA: a sensitive and quantitative DNA methylation assay. Nucleic Acids Res. 25: 2535−4) によって検出される。

ハイパーメチル化を検出する他の技術は、いわゆるメチル化特異的PCR(MSP) (HermanJG、Graff JR、Myohanen S、Nelkin BD and Baylin SB. (1996) 、Methylation-specific PCR: a novel PCR assay for methylation status of CpG islands. Proc Natl Acad Sci USA. 93: 9821−6)と言われるものである。該技術は、上記DNA配列の重亜硫酸塩処理後に適用した場合に、メチル化及び非メチル化配列を識別するプライマーの使用に基づくものである。
そのプライマーは、シトシンに相当する部位において、グアニンを含んでおり、それは該部位がメチル化されていた場合にのみ、重亜硫酸塩処理後に結合する。あるいは、該プライマーは、シトシンに相当する部位において、アデニンを含んでおり、そのため、シトシンが非メチル化であり、それゆえ、重亜硫酸塩処理によって、アデニンにハイブリダイズするように変化した場合にのみ、上記DNA配列に重亜硫酸塩処理後に結合する。これらのプライマーを使用することにより、あるシトシンのメチル化状態に基づいて、アンプリコンを特異的に産生することができ、また、アンプリコンは、それにより、そのメチル化状態を示す。

別の新たな技術は、MethylLight (WO 00/70090)としても知られるTaqmanPCRを用いたメチル化の検出である。この技術を用いることによって、PCRを行う間、付加的な過程として、PCR産物を解析する必要がなく、単一又は複数の部位のメチル化状態を直接決定することが容易となった。

また、ハイブリダイゼーションによる検出も公表されている(Olekら、WO 99/28498)。

さらに、個体の遺伝子において、メチル化を検出するために重亜硫酸塩を用いる技術を扱った文献としては、Grigg G、Clark S. (1994) Sequencing 5-methylcytosine residues in genomic DNA. Bioessays 16: 431−6; Zeschnigk M, Schmitz B、Dittrich B、Buiting K、Horsthemke B、Doerfler W. (1997) Imprinted segments in the human genome: different DNA methylation patterns in the Prader-Willi/Angelman syndrome region as determined by the genomic sequencing method. Hum Mol Genet. 6、387−395; Feil R、Charlton J、BirdAP、Walter J、Reik W (1994) Methylation analysis on individual chromosomes: improved protocol for bisulphite genomic sequencing. Nucleic AcidsRes. 22、695−696; Martin V、Ribieras S、Song-Wang X、Rio MC、Dante R (1995) Genomic sequencing indicates a correlation between DNA hypomethylation in the 5' region of the pS2 gene and its expression in human breast cancer cell lines. Gene 157、261−264; WO 97/46705、WO 95/15373 及び WO 97/45560がある。

本文中で引用した全ての文献は、参照の形で盛り込んでいる。

概要

ゲノムに基づく技術を利用して、1つの状態から他の状態への細胞の転換をモニタリングする。状態1から状態2に転換する少なくとも1つの細胞の分化をモニターする方法であり、以下の工程、a)状態1にある細胞のDNA中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、b)状態2にある細胞のDNA中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、c)上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露すること、d)該培養条件に曝露した細胞のDNA中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、e)工程dで測定したシトシンのメチル化パターンと、工程a及びbで決定したメチル化パターンとを比較すること、そして、f)得られたデータから評価を行うこと、が実施されることを特徴とする方法。なし

目的

そのような方法が、本発明によって提供される。該方法は、コントロールされた培養条件下において、細胞を1つの状態から他の状態へ転換させる手段、及び該転換を検知する手段を含む。そのようにして、その培養条件が細胞分化の状態に及ぼす効果を解析する。また、該方法は、分化経路に沿って、細胞の詳細な特性化のための手段を提供する。細胞の正確な系統、機能性、同質性及び分化状態がメチル化解析の手段を用いて、どのように評価されるかについて述べる。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

状態1から状態2に転換する少なくとも1つの細胞分化モニターする方法であり、以下の工程、a)状態1にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンメチル化パターンを決定し、又は取得すること、b)状態2にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定し、又は取得すること、c)上記状態1にある少なくとも1つの細胞を、上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件曝露すること、d)上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定すること、e)工程dで測定したシトシンのメチル化パターンと、工程a及びbで決定し、又は取得したシトシンのメチル化パターンとを比較すること、そして、f)上記状態1にある細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群に転換が起こったかどうか、また、それは完全及び/又は有効であったかどうかの評価を行うこと、が実施されることを特徴とする方法。

請求項2

上記細胞の状態の1つが、他の状態よりも、より特殊化、及び/又はさらに分化している点に特徴付けられる請求項1に記載の方法。

請求項3

上記細胞の状態の1つが、十分に分化し、生物学的に機能している細胞である点に特徴付けられる請求項1に記載の方法。

請求項4

上記細胞の状態の1つが、平滑筋横紋筋骨格筋心筋結合組織、骨、軟骨腎臓泌尿生殖系副腎皮質心臓、血管、骨髄胸腺甲状腺副甲状腺喉頭気管呼吸管内層膀胱尿道胃腸器官肝臓膵臓腸上皮細胞胃腸管の内層、脳、皮膚、目、、頭及び顔の結合組織、神経上皮細胞脳下垂体胚性神経節側頭鱗上皮細胞層副腎髄質リンパ組織造血細胞神経膠星状細胞、寡突起神経膠細胞伸縮性細胞、脂肪細胞軟骨細胞骨細胞心筋細胞ニューロン角質細胞骨髄間質細胞、胸腺間質細胞肝細胞胆管細胞、赤血球、又は白血球の細胞である点に特徴付けられる請求項1又は2に記載の方法。

請求項5

上記状態1の細胞が、幹細胞及び/又は前駆細胞である請求項1に記載の方法。

請求項6

上記状態1の細胞が、胎児組織生殖細胞原生殖細胞胚性幹細胞質体細胞、胚盤胞内部細胞塊(ICM)の細胞、又は成人幹細胞である請求項1に記載の方法。

請求項7

上記状態1の細胞が、造血幹細胞(HSC)、間充組織幹細胞(MSC)、神経幹細胞(NSC)、ヒト中枢神経系幹細胞(hCNS-SC)、又は加工リポアスレート(lipoaspirate)の間質脈管細胞の分画から分離した幹細胞である請求項1に記載の方法。

請求項8

上記状態1又は状態2の細胞が、造血前駆細胞骨髄前駆細胞リンパ前駆細胞、間充組織前駆細胞、ネスチン陽性由来前駆細胞、又は神経前駆細胞である請求項1に記載の方法。

請求項9

上記状態1の細胞が、内胚葉中胚葉、又は外胚葉の細胞である請求項1に記載の方法。

請求項10

上記状態1の細胞が、外胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、脳、皮膚、目、耳、頭及び顔の結合組織、神経上皮細胞、脳下垂体、胚性神経節、側頭鱗上皮細胞層、又は副腎髄質である請求項1に記載の方法。

請求項11

上記状態1の細胞が、内胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、胸腺、甲状腺、副甲状腺、喉頭、気管、肺、呼吸管の内層、膀胱、膣、尿道、胃腸器官、肝臓、膵臓、腸上皮細胞、又は胃腸管の内層である請求項1に記載の方法。

請求項12

上記状態1の細胞が、中胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、平滑筋、横紋筋、骨格筋、心筋、結合組織、骨、軟骨、腎臓、泌尿生殖系、副腎皮質、心臓、血管、骨髄、リンパ組織、又は造血細胞である請求項1に記載の方法。

請求項13

上記状態1の細胞が、造血幹細胞であり、上記状態2の細胞が、造血前駆細胞、肝細胞、胆管、赤血球、又は白血球である請求項1に記載の方法。

請求項14

上記状態1の細胞が、間充組織幹細胞であり、上記状態2の細胞が、伸縮性細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞、ニューロン細胞、骨髄間質細胞、又は胸腺間質細胞である請求項1に記載の方法。

請求項15

上記状態1の細胞が、神経幹細胞又はヒト中枢神経系幹細胞であり、上記状態2の細胞が、筋細胞、ニューロン細胞、神経膠星状細胞、又は寡突起神経膠細胞である請求項1に記載の方法。

請求項16

上記状態1の細胞が、加工リポアスピレート(lipoaspirate)の間質脈管細胞の分画から分離した細胞であり、上記状態2の細胞が、脂肪細胞前駆体、骨細胞前駆体、軟骨細胞前駆体、又は伸縮性細胞前駆体である請求項1に記載の方法。

請求項17

上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞である請求項1に記載の方法。

請求項18

上記状態1の細胞が、胚盤胞内部細胞塊であり、上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞である請求項1に記載の方法。

請求項19

上記状態1の細胞が、ネスチン陽性島由来前駆細胞であり、上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞又は肝細胞である請求項1に記載の方法。

請求項20

該膵臓細胞がインシュリンを産生する請求項17〜請求項19のいずれか1項に記載の方法。

請求項21

該膵臓細胞がグルコース応答してインシュリンを産生する請求項20に記載の方法。

請求項22

上記状態の1つにある細胞が、軟骨細胞である請求項1に記載の方法。

請求項23

上記状態1にある細胞が、十分に分化した軟骨細胞であり、上記状態2の細胞が、脱分化した及び/又は増殖したものである請求項1に記載の方法。

請求項24

該軟骨細胞が、ヒト軟骨サンプルから分離されたものである請求項22又は請求項23に記載の方法。

請求項25

上記状態の1つにある細胞が、循環骨格血液細胞であり、他方の状態にある上記細胞が、脂肪細胞又は骨細胞である請求項1に記載の方法。

請求項26

上記状態の1つにある細胞が、骨髄の血管芽細胞であり、他方の状態にある上記細胞が、新たに形成された血管の細胞又は成熟内皮細胞である請求項1に記載の方法。

請求項27

DNAサンプルが、細胞培養又は組織培養のような供給源から採取したものである請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。

請求項28

上記培養条件が、足場スカフォールド)、そうでなければ、3次元培養条件下で細胞及び/又は細胞培養を増殖させる点で特徴付けられる請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。

請求項29

上記培養条件が、1又はいくつかの低減培地又は補足培地で上記細胞に栄養分を与えることを含む請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。

請求項30

上記補足培地が、増殖又は分化誘導因子天然血清天然抽出物、合成サプルメント、組換え体成長因子又は化学物質を含むものであり、これらの内のいずれか又はいくつかの混合物は、増殖又は分化を誘導する請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。

請求項31

上記培養条件が、フィーダー細胞層で細胞に栄養分を与えることを含む請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。

請求項32

上記培養条件が、特定の温度、湿度、光、電場、磁場、O2、N2、及び/又はCO2濃度で特徴付けられる請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。

請求項33

上記培養条件が、状態1の上記細胞のDNAのメチル化状態を修飾することができる有効な量の試薬で、該細胞を処理することを含むものである請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。

請求項34

上記培養条件が、5−アザ−2’−デオキシシチジントリコスタチンA、ランカジンベンゼンアミンシクロヘキサン酢酸、青色白ウラシル、13−ヒドロキシ−15−オキソ−カウレノエートメチルスルホニウム、ユーフォルニンD、塩化オクタデシルホスホリル、グニジマルシン、及びアスピキュラマイシンHCLの群に属するDNAのメチル化関与する試薬で状態1の上記細胞を処理することを含む請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。

請求項35

上記培養条件が、DNAのメチル化及びヒストン脱アシル化トポイソメラーゼII、及びDNA合成阻害剤からなる群に属するDNAのメチル化に関与する試薬で状態1の上記細胞を処理することを含む請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。

請求項36

組織工学的工程を改良する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項37

細胞分化工程をモニターする目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項38

in vitro供給源由来の細胞系又は in vivo及び/又は自家移植源由来の細胞系の分化をモニターする目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項39

1つの状態から他の状態に細胞が転換する、いくつかのステップを含む工程をモニターする目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項40

設計された組織細胞を確認する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項41

全能細胞と分化した細胞を識別する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項42

培養細胞同質性を確認する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項43

分化した細胞、又は前駆細胞や幹細胞のような無秩序増殖細胞を有する設計組織コンタミネーションを検出する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項44

組織細胞の起源同一性を確認する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項45

設計組織が特定の限定された細胞源に由来するかどうかを確認する目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

請求項46

患者移植した組織の経過に関する手術後の評価を行う目的での請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の使用。

技術分野

0001

本発明は、分子生物学及び細胞生物学の分野に関する。より詳しくは、ゲノムに基づく技術を利用して、1つの状態から他の状態への細胞転換モニタリングする方法に関する。該方法は、上記細胞の状態に応じたメチル化パターンの十分な解析に基づくものである。さらに、該方法は、上記細胞自身の実際の転換も含んでいる。本方法は、1つの状態から他の状態へ細胞を転換する培養条件に細胞を曝露することにより行われる。

背景技術

0002

組織欠損及び末期段階器官不全は、広範囲にわたる健康上の多数の問題を招来する。これらの問題を解決するため、主として、組織又は器官全体の移植に頼った複数の試みがなされている。それらの試みは、改善される見込みのない状況、すなわち、ドナーから提供される器官の入手可能性、及びそれによって起こり得る免疫拒絶反応により制限されている。

0003

組織工学は、設計された生体代用物を、単独で又は製造された装置類と共に、体内に移植することによって、組織欠損あるいは器官不全の治療を可能にしている。

0004

最近利用されている移植技術と比較した場合に、組織工学の産生物を使用する1つの利点は、組織を発育させるために自家移植源を使用し、そうして患者自分自身の細胞で治療することを可能とし、それにより免疫拒絶反応を回避できる可能性にある。このような個別的な産生物を供給するためには、理想的な組織を発育させるための出発材料を、患者自身から取得する必要がある。この材料は、品質保証され、増殖し、正常に分化する細胞であることが必要である。もしも、自家移植源から生の材料を分離する場合、その過程は、各患者個人で異なる出発材料に適合させる必要がある。その上、患者に移植される組織産物が、同じ患者の出発材料に由来するものであることが保証される必要がある。

0005

しかしながら、組織工学が既に確立された分野では、標準的な組織設計産物は、自家移植源よりも、むしろ他家移植源からのものである。それでも、正しく設計された組織、たとえば、腫瘍の発生を招いたり、他の望まない結果となり得る未分化あるいは異常に分化した細胞がない組織、の提供を受けることは、患者にとって、この上なく重要なことであるから、個々の最終産物は、十分に解析される必要がある。該産物の正確な系統、機能性、及び同質性について、保証されなければならない。

0006

組織工学の産物として、潜在的可能性を有する1つの出発材料は、幹細胞及び/又は他の前駆細胞である。詳細な定義については、本発明の記載の中で述べられる。一般に、幹細胞は、不定期間、しばしば生物体の一生、を通じて、自己自身を複製する能力がある。適切な培養条件下、又は適切なシグナルが与えられると、幹細胞は、生物体を構成する別の細胞になる(分化する)ことができる。幹細胞を定義するために用いられる用語の多くは、完全な生物体内(in vivo)、実験環境下(in vitro)又は移植後における幹細胞の挙動に依存している。

0007

胚性幹細胞は、その発生段階に基づいて定義され、たとえば、の発生において最も初期の段階のものは、胚盤胞と呼ばれる。詳しくは、胚性幹細胞は、胚盤胞が子宮壁に着床する前の段階における、胚盤胞の内部細胞塊に由来するものである。

0008

成人の幹細胞は、分化(特殊化)した組織内で発生する未分化(非特殊化)の細胞で、自己自身を複製し、その特異的な組織における特異的なタイプの細胞を産生するように特殊化する。成人では、器官の形成及び複製は、器官−又は組織−制限幹細胞のみ(たとえば、血液中の全ての細胞を生じさせる造血幹細胞ニューロン神経膠星状細胞、及び寡突起神経膠細胞となる神経幹細胞)の作用で起こると考えられていた。しかしながら、ある器官の幹細胞、たとえば、造血幹細胞は、肝臓、脳又は腎臓のような他の器官に分化する細胞になり得ることが示されている。成人の幹細胞は、生物体の生涯を通じて、自己自身の同一の複製物を産生することができる。修復あるいは複製過程において、成人の幹細胞は分裂して、前駆細胞(前駆体細胞)を産生し、その後、それらは分化、すなわち、特徴的な形態と特別な機能をもった成熟した細胞型となる。

0009

前駆細胞(前駆体細胞)は、胎児又は成人の組織内で発生し、部分的に特殊化されている。前駆細胞は、分裂して分化した細胞を発生させる。前駆細胞が分裂する場合、該前駆細胞は、より多くの前駆細胞を形成し、又は2つの特殊化した細胞を形成することができる。通常、この後者の細胞は、自己自身を複製することはできない。しかしながら、例外があり、たとえば、肝臓にある特異的な八倍体細胞は、自己自身を複製することができる。

0010

用語「多分化能性」は、いくつかの異なった細胞系を発生させ、自己自身を複製させる単一細胞の能力を意味する。多分化能は、いくつかのレベルで起こることができる。全能性細胞とも呼ばれるペナルティメート多分化能性細胞は、受精卵であり、これは体内のあらゆる細胞を発生させることができる。

0011

幹細胞の実質的に無制限の自己複製能及び分化能は、生物医学研究及び複製医学において広範な適用の可能性を開いた。複製医学に対しては、幹細胞はドナー組織不足の問題、また、受取人にとって該細胞を免疫適応性とすることにより、移植拒絶の問題を解決する可能性を与える。ヒトの多分化能性細胞は、前着床胚に由来するものであり、特定の細胞系への分化が促進される。

0012

成人の幹細胞から発生した細胞系に関する組織工学の潜在的可能性を説明するため、ここで例として、糖尿病患者を治療するために、膵臓から分離した前駆細胞を、グルコース応答する形でインシュリン分泌する高度に分化した細胞とする取り組みを述べる。

0013

膵臓は二つの細胞型のタイプ、すなわち、外分泌及び内分泌細胞を有する。成長の間、内分泌細胞が膵臓の導管から出現し、凝集塊を形成し、最後にランゲルハンス島として知られるものになる。ヒトにおいては、4つの型の島細胞があり、インシュリンを産生するベータ細胞はそれらのうちの1つである。過去数年にわたって、医師たちは、膵臓の島細胞を患者に注入することによって、糖尿病を治療しようと試みてきた。しかしながら、島細胞は免疫的適応するものでなければならず、その組織は、死から8時間以内の遺体から得た新鮮なものでなければならない。しかも、通常、何人かのドナーは、1回手術を受ける必要がある。これらの要件を満たすのは困難である。さらに、島細胞を移植した受取人は、免疫抑制治療を一生行うことになる。

0014

これらの問題を解決するため、組織工学の分野では、グルコースに応答するインシュリン産生ベータ細胞の別の供給源が確認されている。適当な前駆細胞あるいは幹細胞は、十分に機能するベータ細胞に分化するように誘導することができる。この特異的な細胞分化コントロールする、いくつかの方法が知られている。それらの方法の1つでは、出発原料を成人の組織としている。Susan Bonner-Weirと彼の同僚は、ヒトの膵臓組織から分離した導管細胞の培養物は、導管細胞及び内分泌細胞の両方を含むクラスターに分化するよう誘導されることがあり、該内分泌細胞はグルコースに曝露されるとインシュリンを産生することを報告した(Bonner-Weir S、Taneja M、WeirGC、Tatarkiewicz K、Song KH、Sharma A、O'Neil JJ. (2000) In vitro cultivation of human islets from expanded ductal tissue. Proc Natl Acad Sci USA 97,7999−8004)。

0015

組織工学の産物として、もう一つの潜在的可能性のある出発材料は、十分に分化した細胞であり、培養において脱分化するものである。

0016

また、特異的な細胞型(十分に分化した細胞から、他の細胞型を発生させる可能性をもつ、あまり特殊化していない細胞まで)を再分化することも有益であり得る。たとえば、培養、脱分化、そして増殖させたヒトの軟骨細胞は、管理された培養条件下において、再分化することができる。この能力は、三次元培養の間、成長因子ホルモン特有の組み合わせによって増幅されることが示されている(Yaegerら(1997)、 Synergistic action of transforming growth factor-beta and insulin-like growth factor-I induces expression of type II collagen and aggrecan genes in adult human articular chondrocytes. Exp Cell Res.237,318-355;Jakobら(2001)、 Specific growth factors during the expansion and redifferentiation of adult human articular chondrocytes enhance chondrogenesis and cartilaginous tissue formation in vitro. J Cell Biochem 81, 368−77)。それらの成長因子には、TGF−ベータ、FGF及びEGFがあり、再分化を誘導する足場スカフォールド)を必要なだけ適用すると共に、該成長因子を培養培地に添加すると、分化に対する効果を表す。

0017

軟骨細胞の分化の段階を見分ける標準的な方法は、マーカー蛋白質であるコラーゲン2とコラーゲン1の発現レベルの割合、及び/又はアグリカン(aggrecan)とバーシカン(versican) の発現レベルの割合を決定することである。いずれの割合も軟骨細胞の分化の段階を知るための指標となるものである。

0018

しかしながら、特異的な組織を見分けるための、より好ましい方法は、メチル化の状態を解析することである。前立腺及び腎臓のような組織を識別することが、Adorjanらによって報告されている(Tumour class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis.(2002)Nucleic AcidsRes.30、e21)。本発明は、1つの細胞又は複数の細胞の分化の段階を識別するために、メチル化を検出する特別な技術の使用に関するものである。

0019

幹細胞又は前駆細胞から、信頼かつ複製可能な方法により、in vitroで新たな型の細胞と組織を開発、設計し、最終的に、それらに対して法上の承認を得ることは、いくつかの企業の目的である。この目的のためには、a)細胞が自己の表現型及び分化状態を変化させることなく、維持かつ増殖できること、b)目的の細胞型を得るために、的確で標準的、効率的な方法で、細胞を操作、識別できること、c)正確な系統、機能性、同質性、及び分化状態が評価できること、が必要である。

0020

分化及び増殖の初期段階では、実験結果の評価により、正確な前駆細胞が選択されたかどうか、分化の経路予期されたものかどうか、及び該経路は正確な組織を産生するかどうか、が問われる。産生物の増殖のより進んだ段階では、上記評価は、産生物の質を示す証拠として必要である。本文では、「正確」とは、問題の細胞型に関して、十分に生物学的に機能していることを言う。

0021

現在に至るまで、上記した必要条件の評価の実態は、上記細胞の形態学的及び生化学的変化のような表現型の変化の解析に基づいている。使用されている典型的な技術は、免疫組織化学的解析、蛍光活性細胞選別FACS)、及び特異的マーカー蛋白質の発現解析である。これらの生化学的手法は、しばしば結論が得られにくく、冗長で、時間がかかり、多くの処理量の解析には向いていない。それらは、常に、意図する細胞の機能の予測に適しているわけではなく、往々にして、分化過程の最後において有意義なだけである。

0022

細胞の状態を決定する標準的な方法は、免疫組織化学的解析法の使用である。この方法は、特異的な蛋白質の検出に基づくものである。最近の刊行物には、変形関節症の軟骨細胞を識別するのに好適ないくつかのマーカーの使用について述べられている(Pfander D 、Swoboda 及びKirsch T(2001)Expression of early and late differentiation markers (proliferating cell nuclear antigen、syndecan-3、annexin VI and alkaline phosphatase. Am.J.Pathol 159: 1777−1783)。3つの蛋白質は、初期の分化状態、2つの異なる蛋白質は、後期の分化状態に対して特異的であるように思われる。しかしながら、マーカーとしてのそれらの使用は、労働集約的な操作である免疫染色に限定されている。通常、蛋白質ごとの1つの解析においては、その蛋白質の発現モニターする必要がある。このデータの解釈は、しばしば複雑で、結果は、普通、発現の相対的変化のみを表している。かなり複雑な蛋白質発現パターンによって細胞の状態が決定されうるので、細胞の状態に関する明確な内容を記述することは困難となる。

0023

マーカー蛋白質について、より一層理解するに従って、細胞の分化状態をより詳細に決定することができる。より多くの数の変化に関する知見を同時に取得することを可能とするRNAベースcDNAオリゴマクロアレイあるいはコンプレックスプロテオミックス実験のような分子生物学の技術を使用することなしには、細胞分化自体及び分化に対する増殖因子の影響について、詳細に研究することはほとんど不可能である。

0024

プロテオミックな試みは、根本的な困難、たとえば、十分な感受性が得られること、を克服していないが、発現パターンを解析するRNAベースの技術は、よく知られており、広く利用されている。細胞分化に関するマイクロアレイベース発現解析の研究は、進展中の研究分野である。分化させるために発現した正確なパターンの遺伝子は、最終的に付与された系統に向かう特定の細胞を指示し、その多くは分化の最も初期の段階で調節されると認識されている。

0025

多くの刊行物には、細胞の分化を研究するために、マイクロアレイ解析の使用について記載されている。たとえば、Burton GR、Guan Y、Nagarajan R、McGehee RE (2002) Microarray analysis of gene expression during early adipocyte differentiation. Gene 293:21−31。Lu SJ、Quan C、Li F、Vida L及びHonig GR (2002) Hematopoietic Progenitor Cells Derived from Embryonic Stem Cells:Analysis of Gene Expression. Stem Cell 20 (5):が発行されている。
他のグループ研究者(Bruce Lahnら)は、脳形成の初期段階における細胞分化及び移動をコントロールしている分子メカニズム解明しようと努力している。彼らは、また、幹細胞と分化細胞を識別する明確な分子学的特徴を明らかにすることを試みている(http://www.genes.uchicago.edu/fri/lahnres.html、2002年8月現在)。

0026

cDNA配列及び(オリゴヌクレオチドベースの)アフィメトリックスチップ(affymetrix chips) によれば、細胞の発現パターンの変化についての、複雑で感受性の高い解析が可能である。しかしながら、これらの技術の決定的な欠点は、それらがRNAに依存しているということである。RNAを用いた広範な研究にもかかわらず、その不安定性に関する通常の問題は解決されていない。そのため、RNAを用いた単一の実験では、実験過程の進行につれて、RNAが分解することを考慮に入れる必要がある。この問題は、大部分の遺伝子では、実際の発現の変化が不規則な分解と重なって不明瞭となるように、RNAの発現レベルが次第に変化するという事実によって一層深刻となる。

0027

管理機関では、近年、上記の欠点により、マイクロアレイ発現に依存する技術の基礎部分受け入れていない。対照的に、本発明の方法は、容易に分解するRNA分子ではなく、安定なDNA分子に基づくものであり、デジタルの0/1シグナル(メチル化又は非メチル化塩基によってもたらされる)に依存している。それゆえ、結果は、RNA依存の技術よりも、感受性に優れ、信頼できるものである。この技術に基づく基礎部分は、管理当局にも認容されると思われる。

0028

近年、分子生物学の分野では、研究は、主として遺伝子、遺伝子のRNAへの転写、及び蛋白質へのRNAの翻訳焦点が当てられてきた。遺伝子のコントロールに関連した調節メカニズムに関する一層限定された解析法が知られている。遺伝子調節、たとえば、個体の発育のどの段階で、遺伝子が活性化または阻害化されるか、及びこの調節についての組織特有性質は、あまり解明されていない。しかしながら、そのことは、遺伝子又はゲノムにおけるメチル化の程度及び性質と、高い確率で相関し得る。特異的な細胞型は、特異的なメチル化パターンと相関し得るものであり、このことは、いくつかのケースで示されている(Adorjanら (2002) Tumour class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 30 (5) e21)。
さらに、本発明は、分化の過程にある細胞の状態を、そのメチル化パターンを解析することによって決定する方法を開示する。

0029

高等な種の真核細胞では、DNAは、CpGジヌクレオチドグアニンの5’位に位置するシトシンで、ほとんど排他的にメチル化される。この修飾は、遺伝子発現、特に多くの遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG島として知られるCpGに富む領域を含む場合に重要な調節効果を及ぼす。常染色体のほとんど全ての遺伝子関連の島は、メチル化から保護されている一方、CpG島の広範囲にわたるメチル化は、所定の刷り込み遺伝子の不活性化及び雌の不活性X染色体上の遺伝子の転写の不活性化と関連している。

0030

メチル化の形でのシトシンの修飾には、重大な情報が含まれている。メチル化されていないシトシンとは異なり、DNA配列中の5−メチルシトシンの同定が、その役割をさらに深く解析する上で、最も重要であることは明らかである。しかし、5−メチルシトシンが、ハイブリダイゼーション優先性配列解析において基礎となる性質)に関する点において、ちょうどシトシンのような挙動をとるからといって、その位置を通常のシークエンシング反応によって同定することはできない。

0031

その上、いかなる増幅、たとえば、PCR増幅においても、この関連したエピジェネティックな情報、メチル化シトシンあるいは非メチル化シトシンは、完全に喪失されるだろう。

0032

この問題を解決するいくつかの方法が知られている。通常、ゲノムDNAは、化学薬品又は酵素で処理されて、シトシン塩基が転換され、結果として、これにより、その後、塩基を識別することが可能となる。最も一般的な方法は、a)メチル化及び非メチル化DNAの識別を可能にするメチル化感受性制限酵素の使用、b)重亜硫酸塩による処理、である。上記酵素の使用は、特定の認識配列に対する制限酵素選択性の理由から制限される。

0033

そのため、重亜硫酸塩とシトシンとの特異的反応は、後続アルカリ性加水分解と同時に、シトシンをウラシルに転換させる一方、5−メチルシトシンは、これらの条件下(Shapiroら、(1970) Nature 227:1047)では、未修飾のままであり、近年、DNAの5−メチルシトシンを研究するために最も頻繁に使用されている方法である。ウラシルは、その塩基対挙動の点でチミンに相当し、すなわち、それはアデニンハイブリダイズし、一方、5−メチルシトシンは、この処理において、その化学的性質を変化させず、そのため、シトシンの塩基対挙動をもち、グアニンとハイブリダイズする。結果的に、ハイブリダイゼーション挙動では、シトシンと識別できない5−メチルシトシンが、正常な分子生物学的技術、たとえば、増幅及びハイブリダイゼーションあるいはシークエンシングを用いて、残っているシトシンのみを検出することができるように、元のDNAは転換される。これら全ての技術は、塩基対に基づくものであり、現在では十分に開発されている。重亜硫酸塩処理のあるなしで、DNA配列を比較すると、メチル化されていないシトシンを容易に同定することができる。

0034

5−メチルシトシンを検出するための、さらなる公知方法概要は、以下の概説文献から得られる:Rein T、DePamphilis ML、 Zorbas H (1998) 、Nucleic AcidsRes.、26: 2255。

0035

感受性の点では、従来技術は方法として規定されており、該方法は、アガロースマトリックスで解析されるDNAを包含し、それによりDNAの拡散再結合(重亜硫酸塩は単一鎖のDNAとのみ反応する)を防ぎ、全ての沈降及び精製過程ファースト透析で置き換えている(Olek A、Oswald J、Walter J.(1996) A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 24: 5046−6)。この方法を使用すると、個体の細胞を解析することが可能となり、このことは該方法の潜在的有用性例証するものである。

0036

現在までのところ、ごく少数の例外(たとえば、Zeschnigk M、Lich C、Buiting K、 Doerfler W、Horsthemke B. (1997) A single-tubePCRtest for the diagnosis of Angelman and Prader-Willi syndrome based on allelic methylation differences at the SNRPN locus. Eur J Hum Genet. 5: 94−8)を除き、重亜硫酸塩技術は、研究において唯一使用されているものである。しかしながら、常に、公知遺伝子の短い特異的なフラグメントは、重亜硫酸塩処理の後に増幅され、完全な配列(Olek A、Walter J. (1997) The pre-implantation ontogeny of the H19 methylation imprint. Nat Genet. 3: 275−6)又は個々のシトシンの部位が、プライマー伸長反応(Gonzalgo ML and Jones PA. (1997) Rapid quantitation of methylation differences at specific sites using methylation-sensitive single nucleotide primer extension (Ms-SNuPE). Nucleic AcidsRes. 25: 2529−31、WO 95/00669)又は酵素消化(Xiong Z、Laird PW. (1997)COBRA: a sensitive and quantitative DNA methylation assay. Nucleic Acids Res. 25: 2535−4) によって検出される。

0037

ハイパーメチル化を検出する他の技術は、いわゆるメチル化特異的PCR(MSP) (HermanJG、Graff JR、Myohanen S、Nelkin BD and Baylin SB. (1996) 、Methylation-specific PCR: a novel PCR assay for methylation status of CpG islands. Proc Natl Acad Sci USA. 93: 9821−6)と言われるものである。該技術は、上記DNA配列の重亜硫酸塩処理後に適用した場合に、メチル化及び非メチル化配列を識別するプライマーの使用に基づくものである。
そのプライマーは、シトシンに相当する部位において、グアニンを含んでおり、それは該部位がメチル化されていた場合にのみ、重亜硫酸塩処理後に結合する。あるいは、該プライマーは、シトシンに相当する部位において、アデニンを含んでおり、そのため、シトシンが非メチル化であり、それゆえ、重亜硫酸塩処理によって、アデニンにハイブリダイズするように変化した場合にのみ、上記DNA配列に重亜硫酸塩処理後に結合する。これらのプライマーを使用することにより、あるシトシンのメチル化状態に基づいて、アンプリコンを特異的に産生することができ、また、アンプリコンは、それにより、そのメチル化状態を示す。

0038

別の新たな技術は、MethylLight (WO 00/70090)としても知られるTaqmanPCRを用いたメチル化の検出である。この技術を用いることによって、PCRを行う間、付加的な過程として、PCR産物を解析する必要がなく、単一又は複数の部位のメチル化状態を直接決定することが容易となった。

0039

また、ハイブリダイゼーションによる検出も公表されている(Olekら、WO 99/28498)。

0040

さらに、個体の遺伝子において、メチル化を検出するために重亜硫酸塩を用いる技術を扱った文献としては、Grigg G、Clark S. (1994) Sequencing 5-methylcytosine residues in genomic DNA. Bioessays 16: 431−6; Zeschnigk M, Schmitz B、Dittrich B、Buiting K、Horsthemke B、Doerfler W. (1997) Imprinted segments in the human genome: different DNA methylation patterns in the Prader-Willi/Angelman syndrome region as determined by the genomic sequencing method. Hum Mol Genet. 6、387−395; Feil R、Charlton J、BirdAP、Walter J、Reik W (1994) Methylation analysis on individual chromosomes: improved protocol for bisulphite genomic sequencing. Nucleic AcidsRes. 22、695−696; Martin V、Ribieras S、Song-Wang X、Rio MC、Dante R (1995) Genomic sequencing indicates a correlation between DNA hypomethylation in the 5' region of the pS2 gene and its expression in human breast cancer cell lines. Gene 157、261−264; WO 97/46705、WO 95/15373 及び WO 97/45560がある。

0041

本文中で引用した全ての文献は、参照の形で盛り込んでいる。

発明が解決しようとする課題

0042

表現型及び本来の分化を変えることなく、細胞を維持、増殖させるためには、その変化をできるだけ早く、有効に、そして完全に解析することが必要である。より早い変化が検出なされれば、無視され得る変化の原因について調べることが一層容易となる。そのため、上記細胞を維持するのに不適当な培養条件あるいは単に上記培養細胞老化に由来する変化の発生を検知するツールが必要である。細胞は速やかに喪失されうるので、迅速な検出は時間と労力を省く。

0043

細胞の操作、識別を的確かつ有効に行うには、細胞の分化状態に関する情報が迅速に得られる方法であることが必要である。この過程を標準化できるようにするためには、要求される方法は、複製可能なデータを送り、また、作業しやすいものでなければならない。

0044

そのような方法が、本発明によって提供される。該方法は、コントロールされた培養条件下において、細胞を1つの状態から他の状態へ転換させる手段、及び該転換を検知する手段を含む。そのようにして、その培養条件が細胞分化の状態に及ぼす効果を解析する。また、該方法は、分化経路に沿って、細胞の詳細な特性化のための手段を提供する。細胞の正確な系統、機能性、同質性及び分化状態がメチル化解析の手段を用いて、どのように評価されるかについて述べる。

0045

異なった細胞型及び分化状態は、明瞭で特異的なメチル化パターンを有する。このメチル化パターンは、標的細胞、すなわち正確に分化した細胞型を決定、選別するために使用される。特異的な分化経路に従わない細胞である場合、該細胞のメチル化パターンは、そうでない細胞とは異なる。このことは容易に検出され、培養細胞は、それぞれ別個に除去することができる。

0046

本発明に含まれる方法は、細胞が十分に分化し、それゆえ十分に機能しているかどうかを評価するために、細胞の実際の分化過程において、これら細胞をモニターするためのツールを提供する。

課題を解決するための手段

0047

本発明の方法は、分子生物学及び細胞生物学の分野に関連する。より詳細には、1つの状態から他の状態への細胞の転換を、ゲノムに基づく技術を使用してモニターする方法に関するものである。該方法は、上記細胞の状態に応じたメチル化パターンの解析に基づくものである。さらには、該方法は、上記細胞自身の実際の転換を含んでいる。これは、細胞を1つの状態から他の状態に転換させる培養条件に該細胞を曝露することによって行われる。

0048

本発明では、以下の定義を用いる。

0049

「分化」とは、細胞が特殊化する過程であり、広範囲のいくらかの分化能を喪失し、細胞型に特異的な特性を獲得する。分化においては、幹細胞、初期の胚細胞、前駆細胞のような非特異的細胞は、心臓、肝臓、又は筋肉細胞のような特異的細胞の特徴を獲得する。具体的に説明すると、生体を構成する多くの細胞のうちの1つに特殊化する。分化の間は、複雑な調節の仕方で、ある遺伝子が活性化され、他の遺伝子は不活性化される。その結果、分化した細胞は特異的構造発達させ、ある機能を奏するようになる。

0050

発生期において生じる分化の完全な過程は、潜在性幹細胞から始まり、限定された分化能をもつ中間体細胞を経て、全く自己を複製できないか又は非常にゆっくりにしか複製できない高度に特殊化した細胞になる。

0051

「幹細胞」は、胚、胎児、又は成人から得られる細胞であり、ある条件下で、長い期間(成人の幹細胞では生物体の生涯)、自己を複製する能力を有する細胞である。実験室において、胚性幹細胞は、無期限に、成人の幹細胞にはない特性を増加させることができる。幹細胞が分裂する場合、2つの新たな細胞のうちの1つは、しばしば自己を再び複製することができる幹細胞である。しかしながら、ときには、新たな細胞の両方とも、自己を複製することができる幹細胞となり、また、両方ともできない幹細胞となる。

0052

全能性幹細胞」は、全てのタイプの細胞となる能力を有するものであり、生体の全ての細胞を生じさせる3つの生殖層(中胚葉内胚葉外胚葉)を含む。

0053

多分化能性幹細胞」は、上記3つの生殖層から増殖する型の細胞を産生する能力を有する。
「胚性幹細胞」は、内部細胞塊と呼ばれるグループの細胞に由来するものであり、初期(4〜5日)胚盤胞と呼ばれる胚の一部である。胚性幹細胞は、多分化能性である。

0054

胎児性生殖細胞」は、胎児組織に由来するものである。特には、5〜10週の胎児の卵割に生じた原生殖細胞に由来するものである。胎児性生殖細胞は、多分化能性である。

0055

「成人幹細胞」は、分化(特殊化)した組織に生ずる未分化(非特殊化)細胞であり、自己を複製し、本来の起源である組織の全ての特殊化した細胞型を産生するように特殊化する。しかしながら、ある条件下では、いくつかの成人幹細胞は、本来の起源でない組織型の細胞に特殊化することもできる。成人幹細胞は、生物体の生涯を通じて、自己自身の同一の複製を形成することができる。成人幹細胞は、通常、前駆細胞(前駆体細胞)を産生するために分裂し、その時、特徴的な形態と特殊な機能を有する成熟細胞型に分化又は発育する。成人幹細胞は、培養内で無期限に複製しない。

0056

「前駆細胞(前駆体細胞)」は、胎児又は成人の組織で発生し、部分的に特殊化されており、分裂して分化した細胞を生ずる。前駆細胞が分裂する場合、多くの前駆細胞あるいは2つの特殊化された細胞を形成する。前駆細胞と幹細胞の違いは微妙である。それゆえ、正確に定義することは困難である。しかしながら、一般に幹細胞は、前駆細胞よりも分化能があり、特殊化されていない。

0057

本文では、「表現型」とは、生物体又は細胞における観察可能な特徴を取り込むことと理解される。これには、目には見えないが、蛋白質発現のような、生化学的アッセイを利用して観察できる特徴を含む。表現型とは対照的に、遺伝子型は生物体の遺伝子組成である。表現型は、遺伝子型で規定される生物体の特異的な相互作用と環境から生ずる。本文では、ゲノムのエピジェネティックな組成、たとえば、そのメチル化状態、は表現型の一部ではない。

0058

用語「マイクロアレイ」は、従来技術において認識されているように、DNAマイクロアレイDNAチップの両方を広く意味し、全ての技術で認識されている固体支持体を包含し、また、核酸分子をそれに付着させる全ての方法及びその上で核酸を合成する全ての方法を含む。

0059

本文中で引用された全ての参照文献は、完全な形で参照として述べてある。

0060

本発明の主題は、状態1から状態2に転換する少なくとも1つの細胞の分化をモニターする方法であり、以下の工程、1)上記状態1にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定し、又は取得すること、2)上記状態2にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定し、又は取得すること、3)上記状態1にある少なくとも1つの細胞を、上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露すること、4)上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを測定すること、5)工程4で測定したシトシンのメチル化パターンと、工程1及び2で決定し、又は取得したシトシンのメチル化パターンとを比較すること、そして、6)上記状態1にある細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群に転換が起こったかどうか、また、それは完全及び/又は有効であったかどうかの評価を行うこと、を実施することを特徴とする。

発明を実施するための最良の形態

0061

本発明の方法は、いくつかの工程からなる。

0062

本発明方法の最初の工程は、上記状態1にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定し、又は供給することであり、第2の工程は、上記状態2にある少なくとも1つのプロトタイプ細胞から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを決定し、又は供給することである。本文において、「決定する」とは、細胞の上記状態と相関関係があるパターンの同定及び/又は検出を含む。このことは、上記パターンが以前に公知であるか否かの問題とは関係ない。用語「供給する」についても、既に一般によく知られ、文書化されているパターンの使用を明確に含む。

0063

たとえば、もしも、造血幹細胞の十分な数の遺伝子におけるシトシン残基のメチル化パターンが、分化の状態を明瞭に同定できるようにわかっているならば、この情報は、目的の上記プロトタイプ細胞が造血幹細胞であれば、工程1及び/又は工程2において使用されるだろう。

0064

もしも、特異的なプロトタイプ細胞及び目的の状態におけるシトシンのメチル化パターンが十分によく確認されていないならば、それについて決定する必要がある。

0065

そのようなメチル化パターンを決定する方法は、文献(たとえば、Adorjanら、(2002) Tumor class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 30 (5) 、e21)及び特許例、WO 99/28498 (Olekら) 、WO 00/70090 (Lairdら) 、U.S. Patent 6,265,171 (Herman及びBaylin) 、U.S. Patent 6,251,594 (Gonzalgoら) に記載されている。

0066

一般に、関連したマーカー遺伝子既知であるか、又はそれらが不明であるかの2つの異なるシナリオが可能である。状態1にあるプロトタイプ細胞から採取した、マーカー遺伝子が不明のDNAサンプルにおける特異的なメチル化パターンを決定するために、最初にマーカー遺伝子を見つける必要がある。マーカーを同定するこの工程は、それが必要であるとわかった場合は、いつでも、工程1及び/又は工程2の中の用語「決定する」に含まれる。特に配列データが利用できない場合、マーカーの発見は、1つ又は複数の以下に示す技術を用いるのが好ましい。具体的には、
示差的メチル化ハイブリダイゼーション法DMH)(Huangら、(1999) Methylation profiling of CpG islandsin human breast cancer cells. Hum Mol Genet. 8、459−70)、
制限酵素ランドマークゲノムスキャニング法(RLGS) (Hatadaら、(1991) A Genomic Scanning Method for Higher Organisms Using Restriction Sites as Landmarks. PNAS 88、9523−9527; Hatadaら、 (1993) A new imprinted gene cloned by a methylation-sensitive genome scanning method. Nucleic Acids Res. 21、5577−5582) 、
メチル化感受性任意プライムPCR(AP−PCR) (Gonzalgoら、 (1997) Identification and characterization of differertially methylated regions of genomic DNA by methylation-sensitive arbitrarily primed PCR. Cancer Res. 57、594−599) 、
メチル化CpG島増幅(MCA) (Toyotaら、(1999) Identification of differentially methylated sequences in colorectal cancer by methylated CpG island amplification. Cancer Res. 59、2307−2312; Toyota, M及びIssa, D (2002) Methylated CpG island amplification for methylation analysis and cloning differentially methylated sequences. Methods Mol Biol 200、101−110)が挙げられる。

0067

上記した全ての方法は、マーカーとして使用するCpG部位の適当な候補を同定し確認するために使用し得る。

0068

目的の状態に特異的なマーカー遺伝子が判明すると、上記DNAサンプル中のメチル化パターンは、たとえば、通常、塩基数4〜8の長さの特異的配列認識部位において及び/又は認識部位上でDNAを触媒的に加水分解消化)することができるメチル化特異的制限エンドヌクレアーゼを用いることによって決定することができる。メチル化特異的制限エンドヌクレアーゼは、特異的なメチル化状態が認識配列内に存在している場合にのみ、DNAを消化する点に特徴がある。消化されたDNAフラグメントは、好ましくは、サイズに基づいて(たとえば、ゲル電気泳動によって)分離される。上記配列のメチル化状態は、それによって演繹的に求められる。好ましくは、消化後のPCR増幅工程を追加して、制限部位のいずれかの側の2つのプライマーを用いて消化後のDNAを増幅する。PCR産物は消化が起こっていない場合にのみ検出することができる。

0069

マーカーのメチル化解析に関する他の好ましい方法は、配列解析を引き続いて行うCpGの修飾である。メチル化及び非メチル化CpG部位を識別するために使用する好ましい化学試薬は、ヒドラジンであり、これは核酸を切断する。

0070

しかしながら、メチル化及び非メチル化シトシンを識別するための、より好ましい方法は、重亜硫酸塩による処理であり、好ましくはアルカリ加水分解を引き続いて行うものである(Olekら、(1996) A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 24、5064−5066.)。処理したDNAは、通常の分子生物学的方法、たとえば、PCR増幅法、シークエンシング及び/又は検出オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、を用いて解析することができる。

0071

MSP(メチル化特異的PCR)は、CpG部位がメチル化又は非メチル化されているかを決定するのに好ましい方法であり、これはメチル化感受性プライマーを用いる方法である。目的のDNAは、メチル化及び非メチル化シトシンが、そのハイブリダイゼーション挙動によって区別されるように修飾処理される。この方法は、好ましくは重亜硫酸塩処理と共に行われる(上記参照)。元がメチル化のCpG、又は元が非メチル化のCpGのいずれかに特異的なPCRプライマーは、PCR増幅工程で用いられる。増幅反応の産物は、その後検出され、ゲノムDNA内のCpG部位のメチル化状態について求められる(U.S. Patent 6,265,171 Herman及びBaylin)。

0072

重亜硫酸塩処理したDNAを解析するための、より好ましい方法は、Gonzalgoら(U.S. Patent 6,251,594)によって報告されているプライマー伸長の使用及びリアルタイムPCRを基礎とする方法の使用を含むものである。

0073

上記した全ての方法は、上記工程1又は上記工程2の細胞のDNAに特異的なDNAサンプルのメチル化パターンを決定するために使用し得る。

0074

本方法の第3の工程は、上記状態1にある少なくとも1つの細胞を、上記状態1の細胞から上記状態2の細胞に転換する培養条件に曝露することである。

0075

これは多くの方法によって行うことができる。細胞増殖、細胞分化、細胞脱分化、あるいはアポトーシスさえも誘導するために細胞培養で用いられる、あらゆる処理は、この発明において、1つの状態の細胞を他の状態の細胞に転換することに含まれる。たとえば、成長ホルモンを含む培地中の成長細胞は、本発明では、上記状態1の細胞から上記状態2の細胞を転換する培養条件に曝露していると理解される。たとえば、hES(ヒト胚幹)細胞は、培養において、未分化、多分化能の状態で入手し、維持することができる。フィーダー細胞層がないと、培養hES細胞は、短い期間しか、多分化能を維持することができない。この文脈中では、状態1の細胞は、新たに分離された、多分化能のhES細胞であり、状態2の細胞は、フィーダー細胞層を添加しない長い培養期間のために多分化能を喪失したhES細胞である。この場合、培養自体は、状態1の細胞を状態2に転換するために、状態1の細胞が曝露される培養条件に該当する。

0076

別の例では、もしも、状態1の上記細胞が、新たに分離された、多分化能のhESであり、上記細胞を転換し該細胞が曝露される培養条件が培養であり、上記ヒト胎児線維芽細胞フィーダー細胞として添加し、それにより細胞の未分化状態と多分化能を保っているならば、状態2の細胞は、フィーダー細胞層と共に培養されたhES細胞であり、これは未だ多分化能を有する。

0077

いずれのケースにおいても、細胞が新たに培養されたかどうかに基づいて、特異的にメチル化又は非メチル化されているCpG部位を見つけ出すこと、及び細胞が多分化能であるかないかに基づいて、特異的にメチル化又は非メチル化されているCpG部位を見つけ出すことが必要である。第2の例では、細胞がフィーダー細胞層と共に、又はフィーダー細胞層がない状態で培養されたかどうかに基づき、添加するマーカーは、特異的にメチル化されていることが必要である。

0078

本方法の第4の工程は、上記状態1の細胞を上記状態2の細胞に転換する培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群から採取したDNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを測定することからなる。たとえば、第1の実験(上記例)では、数日間、培養培地に曝露されたhES細胞のシトシンのメチル化パターンを測定する。第2の実験では、フィーダー細胞として上記ヒト胎児線維芽細胞を含む培養条件に曝露されたhES細胞のシトシンのメチル化パターンを測定する。

0079

DNAサンプル中のシトシンのメチル化パターンを測定する方法にはいくつかあり、それらについては十分に文書化されている。メチル化パターンを同定するために、あらゆる方法、たとえば、シークエンシング法、MSP−PCR法サザンブロッティング、オリゴマイクロアレイハイブリダイゼーション法、を用いることができる。本発明では、メチル化に関する情報を得るために有用な方法は、上記の方法には限定されない。メチル化に関する情報が得られる限り、あらゆる方法を用いることができる。好ましい方法のいくつかは、ここで述べたものである。

0080

メチル化パターンの検出法を実施するに先立って、解析すべきDNAサンプルを分離する必要がある。DNA抽出は、当業者にとって一般的な方法で行えばよく、これには、洗浄剤ライイト(lysate)の使用、ソニフィケーション(sonification)、及びエタノールによる沈降を後続させるガラスビーズを用いたボルテクシング(vortexing)の使用のような過程を含む。核酸を抽出したら、解析において、ゲノム二重ラセンDNAを用いる。

0081

本発明の工程において、目的の状態に特異的な関連マーカー遺伝子が既知である場合は、上記DNAサンプルのメチル化パターンを、たとえば、メチル化特異的制限エンドヌクレアーゼを用いて決定する。それは、認識配列中に特異的メチル化部位が存在する場合にのみ、DNAを消化することで特徴付けられる。消化されたDNAフラグメントは、好ましくはサイズに基づいて(たとえば、ゲル電気泳動)分離し、サザンブロット法を用いて、より特定的に検出することができる。配列のメチル化状態が、それによって求められる。

0082

好ましくは、消化後のPCR増幅工程を、消化部位のいずれかの側の2つのプライマーを用いて、消化されたDNAを増幅する分離工程の前に追加する。PCR産物は、消化が起こっていない時にのみ、検出することができる。

0083

メチル化解析の好ましい方法は、特異的部位の検出に先立って行われる修飾過程に基づくものである。この過程は、元がメチル化及び非メチル化のシトシンを識別可能とするCpGの修飾からなる。

0084

目的のゲノムDNAサンプルは、C5部位が非メチル化されたシトシン塩基が、ウラシル、チミン又はハイブリダイゼーション挙動の点でシトシンとは異なる他の塩基に転換され、一方、5−メチルシトシンは転換されないように処理する。このことは、今後、本発明において、「前処理」と呼ぶ。本発明では、ゲノムDNAは、目的サンプルから抽出された未処理DNAを意味する。

0085

ゲノムDNAに対する上記処理は、好ましくは重亜硫酸塩(亜硫酸水素塩、ジ亜硫酸塩)を用いて行い、続いてアルカリ加水分解を行う(Olek, A ら、(1996) A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 24、5064−5066)ことにより、非メチル化シトシン核酸塩基が、塩基対挙動の点でシトシンとは異なるウラシルに転換される。

0086

処理されたDNAは、通常の分子生物学方法により解析できる。前処理DNAのフラグメントを、プライマーオリゴヌクレオチドのセットと、好ましくは熱安定性ポリメラーゼを用いて増幅する。統計的及び実際的考慮から、好ましくは100〜2000塩基対の長さをもつ1以上の異なるフラグメントを増幅する。いくつかのDNAフラグメントは、同一の反応容器中で同時に増幅することができる。通常、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して行う。増幅されたDNAは、その後、一般の方法で解析する。

0087

この配列の転換により、メチル化状態に特異的な新たな制限部位の発生及びメチル化状態に特異的な、元から存在している部位の保持も生じるので、酵素消化を利用してメチル化状態を検出することができる(Xiong、Z 及びLaird、PW (1997)COBRA: a sensitive and quantitative methylation assay. Nucleic AcidsRes. 25、2535−2534)。

0088

重亜硫酸塩処理の前にメチル化又は非メチル化CpG部位を検出し、メチル化パターンを決定する他の好ましい方法は、転換DNAをシーケンスし、それを未転換DNAの配列と比較する方法である(Grunau C、Clark SJ、Rosenthal A (2001) Bisulfite genomic sequencing: systemtic investigation of critical experimental parameters. Nucleic AcidsRes. 29、E65)。

0089

重亜硫酸塩処理した核酸マーカー内の特異的CpG部位のメチル化状態を検出する他の好ましい方法は、メチル化特異的プライマーオリゴヌクレオチド(MSP)を使用する方法である。この方法は、HermanとBaylinの U.S Patent 6,265,171に記載されている。重亜硫酸塩処理DNAを増幅するために、メチル化状態に特異的なプライマーを使用すると、メチル化及び非メチル化核酸を識別することができる。MSPプライマー対は、重亜硫酸塩処理CpGジヌクレオチドとハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを含む。

0090

処理前メチル化又は処理前非メチル化CpG部位に特異的なPCRプライマーは、PCR増幅工程で使用される。増幅反応の産物は、その後、検出され、ゲノムDNA内のCpG部位のメチル化状態について決定することを可能にする(U.S Patent 6,265,171 (HermanとBaylin))。

0091

重亜硫酸塩処理DNAを解析するための、さらに好ましい方法は、Gonzalgoらによって記載されているように、プライマー伸長(U.S Patent 6,251,594)の使用及びリアルタイムPCRベースの手法を使用する方法である。

0092

増幅で得られたフラグメントには、直接又は間接的に検知可能なラベルを付けることができる。好ましいラベルは、蛍光ラベル放射性核種、又は質量解析計で検出される典型的質量をもった着脱可能な分子フラグメントの形のものである。上記ラベルが典型的質量のラベルである場合には、ラベル化増幅物は、質量解析計で、より高い検出度を達成するため、単一の正又は負の総電荷をもつことが好ましい。その検出は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量スペクトル法(MALDI)又は電気スプレー質量スペクトル法(ESI) により実施、視覚化される。

0093

得られた増幅物は、上記処理を行う前に、CpGジヌクレオチドのメチル化状態を確認するための解析を行う。増幅物がMSP増幅によって得られた場合は、増幅物の有無は、本来、上記プライマーの塩基配列により、プライマーでカバーされたCpG部位のメチル化状態を示す。

0094

標準的及びメチル化特異的PCRで得られた増幅物は、限定されないが、さらに、シークエンシング及びテンプレート指示伸長のような方法だけでなく、アレイ法プローブベース法のようなハイブリダイゼーションベースの方法で解析し得る。

0095

好ましくは、合成された増幅物は、引き続いてアレイ又はオリゴヌクレオチドのセット及び/又はPNAプローブにハイブリダイズさせる。本発明では、ハイブリダイゼーションは以下に述べるようにして行われる。ハイブリダイゼーションで用いるプローブセットは、好ましくは、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド又はPNA−オリゴマーである。その工程では、増幅物は、固相に固定したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするプローブとして働く。非ハイブリダイズフラグメントは、次に除去される。上記オリゴヌクレオチドは、公知のマーカーCpGを含む塩基配列の一部分に逆相補的又は同一である少なくとも9つのヌクレオチドの長さをもつ、少なくとも1つの塩基配列を含む。上記ジヌクレオチドは、該オリゴマーの中央サードに存在するのが、好ましい態様である。たとえば、オリゴマーが1つのCGジヌクレオチドを含む場合、上記ジヌクレオチドは、好ましくは、13−merの5’末端から5〜9番目のヌクレオチドである。

0096

最終的に、ハイブリダイズした増幅物が検出される。本発明では、増幅物に付されたラベルは、オリゴヌクレオチド配列が存在する固相の各位置で同定可能である。

0097

本方法の他の態様は、CpG位置(処理前)のメチル化状態は、重亜硫酸塩処理DNAと共にPCR増幅プライマー(該プライマーはメチル化特異的又は標準的のものである)にハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドプローブの手段で確認するものである。

0098

特に好ましい方法は、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(TaqManTMPCR、using anABIPrism 7700 Sequence Detection System、Perkin Elmer Applied Biosystems、FosterCity、California)を用いる蛍光ベースリアルタイム定量PCR(Heid CAら、 (1996) Real Time quantitative PCR. Genome Res. 6: 986−994)である。TaqManTMPCR反応は、前及び逆増幅プライマーの間にあるCpGに富む配列とハイブリダイズするように設計されている TaqManTMプローブと呼ばれる非伸長性のオリゴヌクレオチドを使用する。TaqManTMプローブは、さらにTaqManTMオリゴヌクレオチドのヌクレオチドにあるリンカー部(たとえば、フォスフォアミダイト)と共有結合する蛍光リポーター部とクエンチャー部を有する。重亜硫酸塩処理に続く核酸内のメチル化解析には、メチルライトアッセイとしても知られるLairdのU.S. 6,331,393(ここでは、参照として盛り込んでいる)で述べられているプローブはメチル化特異的である必要がある。本発明の使用にも適したTaqManTM検出方法に関する変更には、二重プローブ法(LightcyclerTM)や蛍光増幅プライマー(SunriseTM Technology)を含む。これら両方の方法は、重亜硫酸塩処理DNA、さらにCpGジヌクレオチド内のメチル化解析、との使用に適するように変更され得る。

0099

重亜硫酸塩処理核酸の解析によるメチル化の評価を行うためのプローブオリゴヌクレオチドの使用に対して、さらに適した方法は、ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用である。このオリゴヌクレオチドの使用については、(Yu D、Mukai M、Liu Q、Steinman C (1997) Specific inhibition ofPCRby non-extendable oligonucleotides using a 5’ to 3’ exonuclease-deficient DNA polymerase. BioTechniques 23: 714−720.)に記載されている。ブロッキングプローブオリゴヌクレオチドは、重亜硫酸塩処理核酸と共にPCRプライマーにハイブリダイズする。核酸のPCR増幅は、ブロッキングプローブの5’位で終了し、それにより核酸の増幅は、ブロッキングプローブに対する相補的配列が存在する所で阻止される。たとえば、非メチル化核酸内のメチル化核酸の検出には、問題とする位置でCGではなく CAを含むブロッキングプローブを用いて、問題とする位置で非メチル化された核酸の増幅を阻止する。

0100

本方法のより好ましい態様としては、メチル化解析は、MS-SNuPE (Gonzalgo ML 及びJones PA (1997) Rapid quantitation of methylation differences at specific sites using methylation-sensitive single nucleotide primer extension (MS-SNuPE). Nucleic AcidsRes. 25、2529−2531)のようなテンプレート指示オリゴヌクレオチド伸長を利用して行う。

0101

本方法の第5の工程は、工程4で測定したシトシンのメチル化パターンと工程1及び2で決定又は取得したシトシンのメチル化パターンを比較することからなる。このために、上記方法が実施され、結果が比較される。結果の比較は、当業者にとって自明な通常の方法で行う。たとえば、統計的手法の使用の有無を問わず、結果を数字的に解析し、比較することができる。結果は、また、パターン決定の簡単な一致、不一致により比較することもできる。単一のCpGのメチル化状態全てを、1又は複数の相当物と比較するか、または、完全なパターンを1又は複数の相当物の完全なパターンと比較することができる。

0102

本発明の第6の工程は、上記状態1にある細胞を上記状態2の細胞に転換させる培養条件に曝露した上記細胞又は細胞群に転換が起こったかどうか、また、それは完全及び/又は有効であったかどうかの評価からなる。この工程では、それ以前の工程の結果が解釈され、これにより、有用な情報、たとえば、上記培養条件の有効性、に転換される。

0103

たとえば、1日未満、培養して分離、発育させた状態1の軟骨細胞が、脱分化した軟骨細胞である状態2に転換したと実験で判明し、それぞれの特異的メチル化パターンがわかるならば、工程3は脱分化させるための軟骨細胞の培養からなり(特定の培養条件は実施例1参照)、工程4は脱分化していると考えられている少なくとも1つの培養細胞におけるDNAのメチル化パターンの測定からなり、工程5は上記測定パターンと既知のパターンとの比較からなる。工程6では、予期された転換が生じたかどうかが結論付けられる。また、特異的CpGの位置状態を比較して、目的の細胞が状態1と状態2の間のどこかに到達しているか、及びそれにより転換が完全かどうかが結論付けられる。

0104

いくつかの細胞と同様に、1つの細胞培養に対して定量評価が行われたならば、状態1の培養細胞から状態2の培養細胞への転換が完全かどうか、すなわち培養内の全ての細胞が転換したか、それとも一部だけであるかが結論付けられる。

0105

さらに、本発明は、上記細胞の状態の1つが、他の状態よりも、より特殊化されており、及び/又はさらに分化している点に特徴付けられる上記方法に関する。

0106

該細胞の状態の1つが、十分に分化し、生物学的に機能している細胞である点に特徴付けられることも好ましい。本発明では、生物学的に機能している細胞とは、その分化状態において、特異的な型の細胞にとって非典型的なあらゆる特性を開示することなく、問題の特異的な型の細胞に要求される様式で、正確な代謝機構を行っている細胞と理解される。

0107

さらには、本発明は、状態1から状態2に転換する少なくとも1つの細胞の分化をモニターする方法を提供し、上記細胞の状態の1つが、平滑筋横紋筋骨格筋心筋結合組織、骨、軟骨、腎臓、泌尿生殖系副腎皮質、心臓、血管、骨髄胸腺甲状腺副甲状腺喉頭気管呼吸管内層膀胱尿道胃腸器官、肝臓、膵臓、腸上皮細胞胃腸管の内層、脳、皮膚、目、、頭及び顔の結合組織、神経上皮細胞脳下垂体胚性神経節側頭鱗上皮細胞層副腎髄質リンパ組織造血細胞、神経膠星状細胞、寡突起神経膠細胞、伸縮性細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞心筋細胞、ニューロン、角質細胞骨髄間質細胞、胸腺間質細胞肝細胞胆管細胞、赤血球白血球の細胞である点に特徴付けられる。

0108

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、幹細胞及び/又は前駆細胞である上記した方法である。

0109

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、胎児組織生殖細胞、原生殖細胞、胚性幹細胞、胚質体細胞、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の細胞、又は成人幹細胞である上記した方法である。

0110

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、造血幹細胞(HSC)、間充組織幹細胞(MSC)、神経幹細胞(NSC)、ヒト中枢神経系幹細胞(hCNS-SC)、又は加工リポアスレート(lipoaspirate)の間質脈管細胞の分画から分離した幹細胞である上記した方法である。

0111

本発明の他の態様は、上記状態1又は状態2の細胞が、造血前駆細胞骨髄前駆細胞リンパ前駆細胞、間充組織前駆細胞、ネスチン陽性島由来前駆細胞、又は神経前駆細胞である上記した方法である。

0112

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、内胚葉、中胚葉、又は外胚葉の細胞である上記した方法である。

0113

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、外胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、脳、皮膚、目、耳、頭及び顔の結合組織、神経上皮細胞、脳下垂体、胚性神経節、側頭鱗上皮細胞層、又は副腎髄質である上記した方法である。

0114

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、内胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、胸腺、甲状腺、副甲状腺、喉頭、気管、肺、呼吸管の内層、膀胱、膣、尿道、胃腸器官、肝臓、膵臓、腸上皮細胞、又は胃腸管の内層である上記した方法である。

0115

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、中胚葉由来の細胞であり、上記状態2の細胞が、平滑筋、横紋筋、骨格筋、心筋、結合組織、骨、軟骨、腎臓、泌尿生殖系、副腎皮質、心臓、血管、骨髄、リンパ組織、又は造血細胞である上記した方法である。

0116

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、造血幹細胞であり、上記状態2の細胞が、造血前駆細胞、肝細胞、胆管、赤血球、又は白血球である上記した方法である。

0117

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、間充組織幹細胞であり、上記状態2の細胞が、伸縮性細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞、ニューロン細胞、骨髄間質細胞、又は胸腺間質細胞である上記した方法である。

0118

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、神経幹細胞又はヒト中枢神経系幹細胞であり、上記状態2の細胞が、筋細胞、ニューロン細胞、神経膠星状細胞、又は寡突起神経膠細胞である上記した方法である。

0119

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、加工リポアスピレート(lipoaspirate)の間質脈管細胞の分画から分離した細胞であり、上記状態2の細胞が、脂肪細胞前駆体、骨細胞前駆体、軟骨細胞前駆体、又は伸縮性細胞前駆体である上記した方法である。

0120

本発明の他の態様は、上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞である上記した方法である。特に該膵臓細胞がインシュリンを産生することが好ましい。さらには、特に該膵臓細胞がグルコースに応答してインシュリンを産生することが好ましい。

0121

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、胚盤胞内部細胞塊であり、上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞である上記した方法である。特に該膵臓細胞がインシュリンを産生することが好ましい。さらには、特に該膵臓細胞がグルコースに応答してインシュリンを産生することが好ましい。

0122

本発明の他の態様は、上記状態1の細胞が、ネスチン陽性島由来前駆細胞であり、上記状態2の細胞が、内分泌膵臓細胞又は肝細胞である上記した方法である。特に該膵臓細胞がインシュリンを産生することが好ましい。さらには、特に該膵臓細胞がグルコースに応答してインシュリンを産生することが好ましい。

0123

上記状態の1つにある細胞が、軟骨細胞であることが好ましい。特に該軟骨細胞がヒト軟骨サンプルから分離されたものであることが好ましい。

0124

また、上記状態1にある細胞が、十分に分化した軟骨細胞であり、上記状態2の細胞が、脱分化した及び/又は増殖したものであることが好ましい。特に該軟骨細胞がヒト軟骨サンプルから分離されたものであることが好ましい。

0125

本発明の他の態様は、上記状態の1つにある細胞が、循環骨格血液細胞であり、他方の状態にある上記細胞が、脂肪細胞又は骨細胞である上記した方法である。

0126

本発明の他の態様は、上記状態の1つにある細胞が、骨髄の血管芽細胞であり、他方の状態にある上記細胞が、新たに形成された血管の細胞又は成熟内皮細胞である上記した方法である。

0127

本発明の好ましい態様は、DNAサンプルが細胞培養又は組織培養のような供給源から採取したものである場合である。

0128

本発明の他の態様は、上記培養条件が足場(スカフォールド)、そうでなければ、3次元培養条件下で細胞及び/又は細胞培養を増殖させる点で特徴付けられる上記方法である。

0129

さらには、本発明の方法は、上記培養条件が1又はいくつかの低減培地又は補足培地で上記細胞に栄養分を与えることを特徴とする。

0130

本発明の好ましい態様は、上記補足培地が、増殖又は分化誘導因子天然血清天然抽出物、合成サプリメント組換え体成長因子又は化学物質を含むものであり、これらの内のいずれか又はいくつかの混合物は、増殖又は分化を誘導する。

0131

本発明の好ましい態様は、上記培養条件がフィーダー細胞層で細胞に栄養分を与えることを含むものである。

0132

好ましくは、上記方法の培養条件は、特定の温度、湿度、光、電場、磁場、O2、N2、及び/又はCO2濃度で特徴付けられる。

0133

本発明の他の態様は、状態1から状態2に細胞を転換させる上記培養条件が、状態1の上記細胞のDNAのメチル化状態を修飾することができる有効な量の試薬で、該細胞を処理することを含むものである。

0134

上記試薬は、5−アザ−2’−デオキシシチジントリコスタチンA、ランカジンベンゼンアミンシクロヘキサン酢酸、青色白金ウラシル、13−ヒドロキシ−15−オキソ−カウレノエートメチル、スルホニウム、ユーフォルニンD、塩化オクタデシルホスホリル、グニジマルシン、及びアスピキュラマイシンHCLの群に属するものである。

0135

他の態様では、特に好ましくは、上記試薬は、DNAのメチル化及びヒストン脱アシル化トポイソメラーゼII、及びDNA合成阻害剤の群に属するものである。

0136

本発明の他の態様は、ここに述べた上記方法を特定の目的に使用するものである。それらの内、いくつかについては明瞭に記載されるが、潜在的な使用のリストは限定的であることを意味しない。本発明の主目的は、組織工学的工程の質を評価するために、質管理のツールを提供することである。第1のステップ(たとえば、成人幹細胞のような、分化及び工学的工程に対して、十分に高い質をもつ最初の特徴付けされ、分離された細胞の)から最終ステップ(たとえば、組織工学材料の患者への移植)までの全工程は、限定された量が利用可能なDNAに対する迅速かつ簡易試験で、細胞の分化状態を評価することにより該工程をモニター可能とするツールから利益を受けるものと考えられる。

0137

そのため、組織工学的工程を改良する目的で上記方法を使用することは、本発明の好ましい態様である。

0138

細胞分化工程をモニターする目的で上記方法を使用することも、本発明の好ましい態様である。

0139

in vitro供給源又は in vivo及び/又は自家移植源由来の細胞系の分化をモニターする目的で上記方法を使用することは特に好ましい。

0140

1つの状態から他の状態に細胞が転換する、いくつかのステップを含む工程をモニターする目的で上記方法を使用することも特に好ましい。

0141

さらに、設計された組織細胞を確認する目的で上記方法を使用することは好ましい。

0142

さらに、本発明は、最終の組織工学的産物の質を評価する目的での使用が可能であるという点で特徴付けされる方法を提供する。設計された組織が同質性であり、あらゆる未分化細胞を含まないことは患者にとって非常に重要なことである。

0143

そのため、全能細胞と分化した細胞を識別する目的で上記方法を使用することは、本発明の好ましい態様である。

0144

培養細胞の同質性を確認する目的で上記方法を使用することも、本発明の好ましい態様である。

0145

分化した細胞、又は前駆細胞や幹細胞のような無秩序増殖細胞を有する設計組織コンタミネーションを検出する目的で上記方法を使用することは、特に好ましい。

0146

さらに、本発明は、設計組織が由来する個々の供給源の同一性を確認する潜在的可能性を有する点で特徴付けられる方法を提供する。自家移植源から増殖させた個々の産物を提供する場合は、患者に組織設計産物をフィードバックする前に、該産物が実際に患者の細胞から増殖したものであるかを確認する必要がある。

0147

そのため、組織細胞の起源の同一性を確認する目的で上記方法を使用することは、本発明の好ましい態様である。

0148

さらに、設計組織が特定の限定された細胞源に由来するかどうかを確認する目的で上記方法を使用することは特に好ましい。

0149

最終的に、患者に移植した組織の経過に関する手術後の評価のために上記方法を使用することは、本発明の好ましい態様である。

0150

下記に述べた実施例は本発明を説明し、実施可能とするためのものである。

0151

培養中の軟骨細胞の分化状態、及び軟骨細胞の発育を改善するためのメチル化解析
比較解析として、関節の疾病既往歴がない、少なくとも3人の軟骨細胞のサンプルを、組織ライブラリーから入手する。これらは、関節置換手術を受けた他の病気兆候をもつ患者から得た軟骨組織と比較する。

0152

分離
軟骨組織のサンプルを0.15%のタイプIIコラゲナーゼ中で、37℃、22時間インキュベートし、ダルベッコ改変MEM培地(DMEM培地:これに関する詳細な情報は、たとえば、以下から得られる:http://methdb.igh.cnrs.fr/cgrunau/cell_lines/DMEM.pdf)で再サスペンドして、骨細胞を分離する。上記培地は、理想的には、組換え又は合成した成長因子あるいは自家移植源から採取した血清から分離した成長因子を含む。その代わりに、FBSウシ胎仔血清)を該培地に添加してもよい。

0153

軟骨細胞の分離、精製後、各サンプルは4以上の整除数に分割する。この分割したサンプルの内の1つは、精製後に直接凍結するか、代わりに、直ちにメチル化解析に用いる。
残りのサンプルは、この軟骨細胞を増殖及び再分化する目的で、本文中で述べたと同一、類似又は変更したプロトコールに基づいて培養する。

0154

脱分化及び増殖
残りのサンプルの軟骨細胞は、104細胞/cm2の濃度、37℃/5%CO2で組織培養フラスコ中でプレート播種する。10日後、該細胞はサブコンフルエントとなり、5×103細胞/cm2の濃度で2回目のプレート播種を行うために、0.25%トリプシンで該フラスコの底部から該細胞を剥がしてばらばらにする。約1週間後、コンフルエントの細胞は、再びトリプシンで処理し、ペレットとする。P2−培養物と呼ばれるこの培養物は、SFM又はSSM培地中で、再サスペンド及び再分化される。

0155

再分化
再分化するため、5×103細胞/mlの濃度で増殖させている軟骨細胞を、0.5 mlの培地中で、7500rpm、15秒間遠心分離を行う。このペレット化された培養物は、三次元軌道シェーカーの中で、30rpm、37℃/5%CO2でプレート播種し、増殖させる。(Jakobら、(2001) Specific growth factors during the expansion and redifferentiation of adult human articular chondrocytes enhance chondrogenesis and cartilaginous tissue formation in vitro. J Cell Biochem 81、368−77)。

0156

増殖及び分化の間のいくつかの特定の時間で、メチル化解析のために細胞サンプルを用意する。

0157

DNAの精製
この目的のため、QIAamp DNAミニキットの中の製造者ガイドラインに基づき、上記細胞サンプルよりゲノムDNAを分離、精製する。

0158

重亜硫酸塩による処理
分離、精製したDNAは、MssIと共に消化し、以下に記載されるように、重亜硫酸塩処理をする(Olek A、Oswald J及びWalter J (1996) A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis. Nucleic AcidsRes. 24、5064−66)。

0159

マイクロアレイ(チップ)ベース法のための増幅
重亜硫酸塩処理を行い、うまく転換したDNAは、PCR及び特異的に改良されたオリゴヌクレオチドデザイン法(Clark及びFrommer(1997)Bisulfite genomic sequencing of methylated cytosines. In Taylor、G.R. (ed.) LaboratoryMethodsfor the detection of Mutations and Polymorphisms in DNA.CRCPress、Boca Raton、FL、pp 151−61)を用いて増幅する。

0160

マイクロアレイ法
5’−末端でC6−アミノ修飾したオリゴヌクレオチドを、活性化ガラススライド上に、4倍過剰にスポットする(Golubら、(1999) Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring. Science 286、531−557)。解析される各CpG部位に対して、2つのオリゴヌクレオチド(1つはCGを含み、他方はTGを含んでいて、CpGジヌクレオチドメチル化及び非メチル化状態を反映する)をガラスアレイにスポットし、固定化する。オリゴヌクレオチドは、重亜硫酸塩で修飾したDNAフラグメントとのみ結合するように設計される。このことは、重亜硫酸塩による不完全な転換から生じるシグナルを排除するために重要である。既に記述されているように、235までの CpG部位を表すオリゴヌクレオチドマイクロアレイは、56までのCy5−ラベル化PCRフラグメントの組み合わせとハイブリダイズされる(Chen D、Yan Z、Cole DL及びSrivatsa GS (1999) Analysis of (n-1)mer deletion sequences in synthetic oligodesoxyribonucleotides by hybridization to an immobilized probe array. Nucleic AcidsRes. 27: 389−395)。次に、GenePix 4000マイクロアレイスキャナー(Axon Instruments) を使って、ハイブリダイズしたスライド蛍光像を得る。ハイブリダイゼーションの実験は、各サンプルに対して、少なくとも3回繰り返す。

0161

分化して増殖した軟骨細胞の分類
軟骨細胞の分化状態を分類する目的で解析したCpG部位は、インターロイキン−1b、BMP−2/9、TGF−ベータ、FGF−2、インディアンヘッジホッグシンデカン−3、PNCA、コラーゲンI/コラーゲンII、アグレカンCDRAP及びバーシカン、コラーゲンXI、コラーゲンX、A−11、ビグリン、COMB、TRAX/トランスリン、マトリリン−I、フィブロモジュリン、エピフィカンデコリンビグリカン、Sox−5、Sox−6、Sox−9、PTHrP、コンドロアドヘリンアネキシンVI、アルカリフォスファターゼGDF5、ノギンカスパーゼ3、Erk1/2、MEK/Erk、pMAPK38、チロシンキナーゼビンクリン、ID1、サイクリンD1、C−jun、JunD、NFkBを含む群の1又はいくつかの遺伝子の調節部位に存在する。

0162

統計的方法
区分を予測するため(組織の増殖期を区別するため)、選択したCpG部位のセットに対して、サポートベクターマシンSVM)を使用する。最初に、行うべき分離作業の対象であるCpG部位を、2つの区分の手段における違いの重要度に応じてランク付けする。各CpGの重要度は、2つのサンプルのt−テストによって評価される。その後、最も重要なCpG部位にSVMを向ける。CpG部位の最良の数は、分離作業の複雑さによる。SVMの実行には、1−標準ソフトマージン分離ハイパープレインを見つけるために、連続最小最適化アルゴリズムを用いた(Christianini N及びShawe-Taylor J (2000) An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel-Based Learning Methods. Cambridge University Press、Cambridge、UK、pp 137−144)。

0163

付加的な独立データ評価方法を適用するために、重要と思われるCpGに対して、チップベース評価データ及び統計的評価データの解釈に基づき、直接、重亜硫酸塩シークエンシング反応及び/又はリアルタイムPCRを行う。

0164

発見された最も重要なCpGによって、軟骨細胞の少なくとも4つの異なる以下の分化ステージの明瞭な識別が可能となる。
関節炎に関する疾病の明確な兆候としての、活性化された疾病関連の軟骨細胞。
生体組織検査から採取し、完全に分化して増殖が阻害された正常な軟骨細胞。
・脱分化し、増殖する軟骨細胞の前駆体。
・正確及び不正確に再分化し、in vitroで増殖し、増殖が阻害された軟骨細胞。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ