図面 (/)

技術 被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法

出願人 富士通株式会社
発明者 木村浩一西井耕太
出願日 2002年9月11日 (18年3ヶ月経過) 出願番号 2002-264903
公開日 2004年4月2日 (16年8ヶ月経過) 公開番号 2004-099993
状態 特許登録済
技術分野 固体廃棄物の処理 金属の製造または精製
主要キーワード 凹凸部位 Mg合金製 部材表 発火状態 Mg合金材 塗着状態 内蔵電子部品 筐体側壁
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2004年4月2日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (5)

課題

マグネシウム合金材の表面に形成されている塗膜を短時間で適切に除去するための方法を含む被塗装マグネシウム合金材塗膜除去方法を提供する。

解決手段

本発明に係る被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法は、塗装が施されているマグネシウム合金材に対して、塗膜を物理的かつ部分的に除去する部分除去工程(S11)と、前記部分除去工程(S11)を経たマグネシウム合金材に対して、アルカリ剥離液を作用させて塗膜をさらに剥離させる薬液処理工程(S12)とを含む。

概要

背景

ノートパソコン携帯電話、PDAなどのモバイル電子機器筐体については、高強度であること、内蔵電子部品の生ずる熱を効率良く発散すること、リサイクル性に優れていることなどが要求される。そして、これらの要求に対処すべく、モバイル電子機器の筐体としては、従来の樹脂筐体に代えて金属筐体が採用されるようになってきた。

概要

マグネシウム合金材の表面に形成されている塗膜を短時間で適切に除去するための方法を含む被塗装マグネシウム合金材塗膜除去方法を提供する。本発明に係る被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法は、塗装が施されているマグネシウム合金材に対して、塗膜を物理的かつ部分的に除去する部分除去工程(S11)と、前記部分除去工程(S11)を経たマグネシウム合金材に対して、アルカリ剥離液を作用させて塗膜をさらに剥離させる薬液処理工程(S12)とを含む。 

目的

本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、マグネシウム合金材の表面に形成されている塗膜を短時間で適切に除去するための方法を含むマグネシウム合金再生材の製造方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

塗装が施されているマグネシウム合金材に対して、塗膜物理的かつ部分的に除去する部分除去工程と、前記部分除去工程を経たマグネシウム合金材に対して、アルカリ剥離液を作用させて塗膜をさらに剥離させる薬液処理工程と、を含むことを特徴とする、被塗装マグネシウム合金材塗膜除去方法

請求項2

前記部分除去工程は、カッターナイフによる塗膜への切り込み形成またはウェットブラストにより行われる、請求項1に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。

請求項3

前記アルカリ剥離液とは別の剥離液を用いて塗膜をさらに剥離させる追加の薬液処理工程をさらに含んでおり、最初の薬液処理工程で塗膜面の剥離面積割合が90%以上のマグネシウム合金材を間引き、残りのマグネシウム合金材についてのみ前記追加の薬液処理工程を行う、請求項1または2に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。

請求項4

最初の薬液処理工程を経た前記残りのマグネシウム合金材を塗膜の剥離面積割合に応じて複数のグループ分類し、各グループ毎に異なる剥離液を用いて前記追加の薬液処理工程を行う、請求項3に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。

請求項5

前記追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも1つは、最初の薬液処理工程に用いるアルカリ剥離液とは別のアルカリ剥離液であり、前記追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも他の1つは、酸剥離液である、請求項4に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。

技術分野

0001

本発明は、塗装が施されたマグネシウム合金材リサイクル技術に関する。具体的には、本発明は、マグネシウム合金再生材を製造するために、ノートパソコン携帯電話に用いられるマグネシウム合金筐体などの被塗装マグネシウム合金材から塗膜を除去する方法に関する。

0002

ノートパソコン、携帯電話、PDAなどのモバイル電子機器の筐体については、高強度であること、内蔵電子部品の生ずる熱を効率良く発散すること、リサイクル性に優れていることなどが要求される。そして、これらの要求に対処すべく、モバイル電子機器の筐体としては、従来の樹脂筐体に代えて金属筐体が採用されるようになってきた。

0003

電子機器用の金属筐体を構成する材料としては、機器の軽量化の観点より、マグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)などの軽金属を主成分とする軽合金が注目されている。特にMgは、構造材として実用され得る単体金属のうち最も比強度が大きく、放熱性についてはAlに匹敵する程に高く、そのうえ比重についてはAlの約7割と小さい、という特長を有する。そのため、Mgを主成分とするMg合金は、電子機器筐体構成材料として有用である。

0004

Mg合金製部品製品射出成形方法としては、ダイカスト法が一般であるが、チクソモールディング法が採用される場合もある。ダイカスト法またはチクソモールディング法により、Mg合金の溶湯を用いてたとえばノートパソコン筐体射出成形する場合、1回の溶湯射出量に対して成形目的の部位が占める体積は30〜50%程度である。残りの50〜70%程度は、成形後に切断除去される部位、即ち金型におけるスプルランナなどにて凝固したMg合金が占める。ダイカスト法またはチクソモールディング法によると、このように1回の射出成形における材料損失率は大きい。そのため、Mg合金材の射出成形の分野においては、地球資源の有効利用およびコストダウンの観点より、射出成形後に切断除去される部位、および、製品回収により得られるMg合金材を、再び射出成形に供する材料として使用するための、リサイクル技術の確立が望まれている。

0005

Mg合金材の射出成形後に切断除去される部位からMg合金再生材を製造する方法としては、Mg合金材の射出成形後に切断除去される部位が、所定のフラックスとともに再び溶融され、溶融状態において成分調整が行われた後に冷却凝固されて、所定の組成を有するMg合金として再生される方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。

0006

一方、市場に出荷されるMg合金製の部品や製品は、一般に、塗装処理が施され、その表面に塗膜が形成されている。塗膜が形成されているMg合金材を、上述の方法において当該塗膜を除去せずに溶融すると、塗料に含まれるアクリル樹脂ウレタン樹脂などの樹脂材料燃焼することによって多量の有機系ガスが発生してしまい、好ましくない。加えて、塗料に含まれているチタンなどにより溶湯が過度汚染されてしまう場合もある。そのため、製品回収により得られるMg合金材からMg合金再生材を製造するにあたっては、Mg合金材を溶融する前に、Mg合金材の表面に形成されている塗膜を除去する必要がある。

0007

Mg合金材の表面に形成されている塗膜を除去するための技術としては、たとえば、ウェットブラスト法が開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。ウェットブラスト法は、たとえばアルミナなどの無機粒子とともに流体としての水を被塗装Mg合金材に吹付けることによって、塗膜を物理的に除去するための方法である。しかしながら、このようなウェットブラスト法のみでは、Mg合金材の塗装面が凹凸形状を有する場合に、塗膜を適切に除去するのは困難である。具体的には、凹部では、無機粒子が衝突しにくい傾向にあるため、塗膜を充分に除去できない場合がある。逆に、凸部では、無機粒子の衝突頻度が過度になる傾向にあるため、塗膜とともに部材表面のMg合金をも削り取ってしまう場合がある。

0008

Mg合金材の表面に形成されている塗膜を除去するための他の技術としては、アルカリ剥離液を使用する手法が知られている。この手法は、被塗装Mg合金材をアルカリ剥離液に浸漬して当該アルカリ剥離液の作用によって塗膜を膨潤させた後、水洗などにより塗膜を除去するための方法である。しかしながら、アルカリ剥離液に浸漬する従来の手法においては、1回の浸漬処理が、塗膜の全体が膨潤するまで行われている。具体的には、一般的に下塗り層および上塗り層からなる塗膜の両層が膨潤するまで、被塗装Mg合金材はアルカリ剥離液に浸漬され続ける。このような浸漬処理では、浸漬時間は2時間程度の長時間を要する場合がある。

背景技術

0009

【特許文献1】
特開2001−316739号公報 (第4−6頁、第1−2図)
【特許文献2】
特開2000−263443号公報 (第4−5頁、第2−5図)

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、マグネシウム合金材の表面に形成されている塗膜を短時間で適切に除去するための方法を含むマグネシウム合金再生材の製造方法を提供することを目的とする。

0011

本発明により提供される被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法は、塗装が施されているマグネシウム合金材に対して、塗膜を物理的かつ部分的に除去する部分除去工程と、前記部分除去工程を経たマグネシウム合金材に対して、アルカリ剥離液を作用させて塗膜をさらに剥離させる薬液処理工程と、を含むことを特徴としている。

0012

このような工程を含む塗膜除去方法によると、部分除去工程において、塗膜と処理液との接触面積を大きくするとともに、アルカリ剥離液が塗膜とマグネシウム合金材との界面または塗膜中に染み込みやすくなるように、塗膜の一部を物理的に除去する。これにより、塗膜全体を除去するために要する正味の時間は短縮される。また、塗膜をある程度物理的作用により除去することができるので、後の処理工程において除去すべき塗膜の量が減ることによっても、塗膜除去に要する時間は短縮される。

0013

本発明の好適な実施形態においては、前記部分除去工程は、カッターナイフによる塗膜への切り込み形成またはウェットブラストにより行われる。

0014

上記のようにカッターナイフにより塗膜への切り込み形成する場合においては、少なくとも切り込みがマグネシウム合金材の表面に至るようにするのが好ましい。これにより、続く薬液処理工程において、アルカリ剥離液が切り込みからマグネシウム合金材と塗膜との界面に浸入して塗膜を浮き上がらせ、塗膜の剥離を促進できるのである。

0015

被塗装マグネシウム合金材における塗膜は、一般に、所望の色調を達成するための上塗り層と、マグネシウム合金表面に対する上塗り層の良好な塗着状態を達成するための下塗り層とからなる。一般的には、上塗り層よりも下塗り層の方が除去し難いのであるが、上塗り層があるまま薬液処理工程を行うと、上塗り層を剥離除去できた時点でアルカリ剥離液が劣化してしまい、下塗り層を剥離させる能力が残らない可能性がある。そこで、ウェットブラストを利用する場合においては、少なくとも上塗り層が除去されるレベル(例えば、塗膜全量の20〜50%程度)まで塗膜を部分的に除去するのが好ましい。これにより、部分除去工程に次いで行われる処理工程のアルカリ剥離液は、既に上塗り層が除去されているため、直ちに下塗り層に作用することが可能となる。そのため、このアルカリ剥離液は、上塗り層を剥離溶解させることに起因しては劣化していないため、いわゆる「フレッシュな」状態のアルカリ剥離液で下塗り層を確実に剥離させることができるので、塗膜全体を除去するために要する正味の時間は短縮されるのである。

0016

本発明の塗膜除去方法は、前記アルカリ剥離液とは別の剥離液を用いて塗膜をさらに剥離させる追加の薬液処理工程をさらに含んでおり、最初の薬液処理工程で塗膜面の剥離面積割合が90%以上のマグネシウム合金材を間引き、残りのマグネシウム合金材についてのみ前記追加の薬液処理工程を行うようにしてもよい。

0017

剥離面積の割合が90%以上に達するものは、その時点で溶解炉に入れてマグネシウム合金の再生を行っても、塗料に含まれるアクリル樹脂やウレタン樹脂などの樹脂材料が燃焼することによって生じる有機系ガスの量が少なく、また、塗料に含まれているチタンなどにより溶湯が過度に汚染されてしまうことはない。したがって、この時点で90%以上剥離したものを間引いて、さらなる剥離に要する工程の負担を軽減しているのである。なお、剥離面積の割合とは、全塗装面積に対して塗膜が剥離した部分の面積の割合を百分率で表したものである。

0018

本発明の好ましい実施形態では、最初の薬液処理工程を経た前記残りのマグネシウム合金材を塗膜の剥離面積割合に応じて複数のグループ分類し、各グループ毎に異なる剥離液を用いて前記追加の薬液処理工程を行うようにしている。

0019

また、このように追加の薬液処理工程を行う場合において、その追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも1つは、最初の薬液処理工程に用いるアルカリ剥離液とは別のアルカリ剥離液であり、前記追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも他の1つは、酸剥離液であるのが好ましい。

0020

剥離面積の割合に応じて複数のグループに分類し、剥離面積の割合が比較的大きく、酸剥離液を用いなくてもアルカリ剥離液で十分に剥離が行えるグループには、追加の薬液処理工程でアルカリ剥離液を作用させ、酸剥離液を用いなければ十分に剥離が行えないグループには、追加の処理工程で酸剥離液を作用させる。これにより、剥離面積の割合が比較的大きく、酸剥離液を用いなくても十分に剥離が行えるマグネシウム合金材に対して酸剥離液を用いないので、マグネシウム合金材が溶解してしまうことを抑制することができる。また、アルカリ剥離液を用いる場合でも、その剥離面積の割合に応じて、グループ毎にアルカリ剥離液の濃度を適切に変えることで、取り扱いに注意が必要な濃アルカリ剥離液の使用量を抑制できる。なお、ここでいう「別のアルカリ剥離液」とは、最初の薬液処理工程にて使用されていないアルカリ剥離液をいい、当該薬液処理工程で用いたアルカリ剥離液と同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。また、最初の薬液処理工程および追加の薬液処理工程に用いられるアルカリ剥離液は、アルカリ主成分として水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含むことが好ましく、酸剥離液は、酸主成分として有機酸を含むことが好ましい。

0021

本発明の好ましい実施形態においては、追加の薬液処理工程を行ってもマグネシウム合金材になお残留する塗膜を除去するために、追加の物理的除去工程をさらに行ってもよい。具体的には、スクレーパなどにより残留した塗膜部分を物理的に除去する。これにより、筐体の複雑な形状を有する部分など、最初の薬液処理工程や追加の薬液処理工程では除去しにくい筐体の複雑な形状を有する部分などの塗膜を除去することが可能となる。

0022

好ましくは、酸剥離液を用いる追加の処理工程に続き、当該追加の処理工程を経たマグネシウム合金材に付着している酸剥離液を中和する中和工程をさらに含む。

0023

マグネシウム合金材は、酸に溶解するので、中和工程において追加の処理工程で付着した酸剥離液を中和することにより、マグネシウム合金材の溶解を抑制する。その結果、マグネシウム合金材の回収ロスが低減し、より無駄なくマグネシウム合金材の再生が行える。なお、中和工程における中和は、水酸化ナトリウムを作用させることにより行われることが好ましい。

0024

本発明においては、最初の薬液処理工程と追加の薬液処理工程とからなるサイクルを繰り返し行ってもよい。これにより、1回のサイクルでは剥離させることが困難な塗膜でも剥離させることが可能となる。

課題を解決するための手段

0025

本発明の好ましい実施形態においては、最初の薬液処理工程および/または追加の薬液処理工程の直後に前記マグネシウム合金材を水洗するための水洗工程を行う。薬液処理工程を経たマグネシウム合金材を所定の水圧で水洗することによって、膨潤などしてマグネシウム合金材表面に対する塗着力が低下した塗膜を、マグネシウム合金材表面から適切に除去することが可能である。

0026

次に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。

0027

図1は、本発明の第1の実施形態に係る塗装の剥離からマグネシウム(Mg)合金再生材の製造に至るまでのフローチャートである。このような各工程を経ることにより、たとえば図2に示すようなMg合金材の表面に形成されている塗膜が除去される。図2のMg合金材は、ノートパソコン筐体であってその表面の所定箇所に塗装が施されている。塗膜は、たとえば所望の色調を達成するための上塗り層と、Mg合金表面に対する上塗り層の良好な塗着状態を達成するための下塗り層とからなり、エポキシ樹脂塗料ウレタン樹脂塗料およびアクリル樹脂塗料などが用いられる。エポキシ樹脂塗料としては、エポキシアミノ樹脂塗料、エポキシエステル塗料、エポキシジンクリッチプライマー、エポキシタール塗料(タールエポキシ塗料)、エポキシフェノール樹脂塗料およびエポキシ・ポリアミド塗料などが挙げられる。ウレタン樹脂塗料としては、2液型ウレタン塗料湿気硬化型ウレタン塗料および酸化硬化型ウレタン塗料などが挙げられる。アクリル樹脂塗料としては、アクリル酸またはメタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー重合した塗料が挙げられる。

0028

部分除去工程S11において、被塗装Mg合金材の塗膜の一部(特に上塗り層)を物理的に除去する。具体的には、カッターナイフなどの刃物により塗膜への切り込みを形成する、あるいはウェットブラスト(たとえばアルミナなどの無機粒子とともに流体としての水を塗膜に吹付けること)により行われる。カッターナイフなどの刃物による塗膜への切り込みは、下塗り層と基材との境界面に達する深さまで行われるのが好ましい。また、ウェットブラストにより除去される塗膜の除去量は、少なくとも上塗り層が除去される(塗膜全量の20〜50%程度)まで行われるのが好ましい。

0029

第1薬液処理工程S12において、部分除去工程S11を経た被塗装Mg合金材を第1アルカリ剥離液に浸漬する。第1薬液処理工程S12で使用される第1アルカリ剥離液は、Mg合金材の10〜20倍量の体積とする。第1アルカリ剥離液の温度は50〜90℃とし、浸漬時間は5〜30分間とする。第1アルカリ剥離液は、アルカリ成分として、アルカリ金属アルカリ土類金属水酸化物を含んでいるのが好ましい。アルカリ成分としては、特に水酸化カリウムが好適である。第1アルカリ剥離液における水酸化カリウムの濃度は、2〜40wt%が好ましい。このような第1薬液処理工程S12により、塗膜は、一部が剥離する。また、残った塗膜の一部も膨潤してMg合金材に対する塗着力が低下する。

0030

次に、第1アルカリ剥離液からMg合金材を引き上げ、水洗工程S13において、これを水洗する。本工程では、シャワー装置を使用して、Mg合金材に対して水を吹き付ける。このときの水圧は、0.5〜2kgf/cm2とする。あるいは、本工程では、所定の浴槽に溜めた洗浄水に対してMg合金材を浸漬することによって水洗してもよい。このような水洗工程S13により、Mg合金材の表面で膨潤している塗膜、または、Mg合金材表面に付着している塗膜片が、Mg合金材から物理的に除去される。

0031

次に、間引き処理S14において、水洗工程S13を経たMg合金材のうち、塗膜の剥離面積の割合が90%以上のものを間引きする。ここで、間引かれたMg合金材は、乾燥させた後、後述する溶解工程S20に導入される。また、乾燥を行う前に必要に応じて、後述する中和工程S17、水洗工程S18、除去工程S19と同様の工程を経るようにしてもよい。なお、剥離面積の割合とは、全塗膜面積に対して塗膜が剥離した部分の面積の割合を百分率で表したものである。

0032

次に、第2薬液処理工程S16において、間引き処理S14で間引かれなかったMg合金材を第2アルカリ剥離液あるいは酸剥離液に浸漬する。

0033

第2薬液処理工程S16で使用する第2アルカリ剥離液は、Mg合金材の10〜20倍量の体積とする。第2アルカリ剥離液の温度は50〜90℃とし、浸漬時間は、10〜30分間とする。第2アルカリ剥離液は、アルカリ成分として、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を含んでいるのが好ましい。アルカリ成分としては、特に水酸化カリウムが好適である。第2アルカリ剥離液における水酸化カリウムの濃度は、2〜40wt%が好ましい。第2アルカリ剥離液に、第1アルカリ剥離液と同一の組成のものを使用してもよい。このような第2薬液処理工程S16により、塗膜は、膨潤してMg合金材に対する塗着力が低下する。また、塗膜の一部はMg合金材から剥離する。

0034

第2薬液処理工程S16で使用する酸剥離液は、Mg合金材の10〜20倍量の体積とする。酸剥離液の温度は20〜70℃とし、浸漬時間は5〜30分間とする。酸剥離液は、酸成分として有機酸を含んでいるのが好ましい。有機酸としては、たとえば、ギ酸酢酸安息香酸が挙げられる。有機酸としてギ酸を採用する場合、酸剥離液におけるギ酸の濃度は2〜20wt%が好ましい。このような第2薬液処理工程S16により、塗膜は、分解作用溶解作用を受けて溶解する、あるいは、膨潤してMg合金材から剥離する。

0035

次に、第2アルカリ剥離液あるいは酸剥離液からMg合金材を引き上げ、水洗工程S17において、これを水洗する。本工程でも、シャワー装置を使用し、Mg合金材に吹き付ける水圧を0.5〜2kgf/cm2とする。あるいは、本工程では、所定の浴槽に溜めた洗浄水に対してMg合金材を浸漬することによって水洗してもよい。このような水洗工程S17により、Mg合金材の表面で膨潤している塗膜、または、Mg合金材表面に付着している塗膜片が、Mg合金材から物理的に除去される。

0036

次に、中和工程S18において、水洗工程S17を経たMg合金材に残留する第2アルカリ剥離液あるいは酸剥離液を中和する。このとき、残留する酸剥離液を中和するのに使用するアルカリ溶液は、Mg合金材の10〜20倍量の体積とする。アルカリ溶液の温度は10〜30℃とし、浸漬時間およびアルカリ溶液の濃度は、残留する酸剥離液の程度に応じて、中和の達成が可能な範囲で任意に定めればよい。アルカリ溶液としては、たとえば水酸化ナトリウムなどが挙げられる。また、残留する第2アルカリ剥離液を中和するに使用する酸溶液は、Mg合金材の10〜20倍量の体積とする。酸溶液の温度は10〜30℃とし、浸漬時間および酸溶液の濃度は、残留する第2アルカリ剥離液の程度に応じて、中和の達成が可能な範囲で任意に定めればよい。酸溶液としては、たとえばギ酸などが挙げられる。

0037

次に、水洗工程S19において、中和工程S18を経たMg合金材の水洗を、水洗工程S17と同様の条件で行う。ただし、第2薬液処理工程S16を第2アルカリ剥離液を用いて行った場合は、中和工程S18および洗浄工程S19を省いてもよい。なお、この段階で塗膜の除去が不十分な場合は、第1薬液処理工程S12から水洗工程S19までの工程を順に繰り返し行ってもよい。

0038

次に、追加の物理的除去工程S20において、水洗工程S19を経た(中和工程S18および水洗工程S19を省いた場合は、水洗工程S17を経た)Mg合金材で形状が複雑なために各剥離液による浸漬では剥離しにくい部分の塗膜を物理的に除去する。具体的にはスクレーパなどを用いて塗膜の除去を行う。なお、追加の物理的除去工程S20は、塗膜の物理的除去が必要なものに対してのみ選択的に行えばよい。

0039

次に、乾燥工程S21において、塗膜が十分に除去されたMg合金材を乾燥する。たとえば乾燥器内において、温度50〜80℃にて30分〜1時間放置することによって、Mg合金材を乾燥する。

0040

次に、上記各工程を経ることにより、塗膜が十分に除去されたMg合金材を用いて、Mg合金再生材の製造を行う。なお、Mg合金がリサイクル過程を経ることによって、合金に含まれるFeは増加する傾向にあり、Mnは減少する傾向にあることが知られている。そこで、本実施形態では、Mg合金に含まれるFe成分およびMn成分の双方の含有率を調整することによって、JIS MD1DまたはAZ91Dに相当する鍛造用Mg合金を再生材として製造する場合について説明する。

0041

溶解工程S22において、塗膜が除去されたMg合金材を第1フラックスとともに溶解炉にて溶解する。具体的には、砕片状または一旦インゴットとされたMg合金材と粉状の第1フラックスとを、予め680℃程度に加熱された溶解炉に投入し、投入の後に720℃程度に昇温してこれらを溶解する。このとき、溶融したMg合金すなわち溶湯の均質性を確保するため、溶解炉内の溶湯は、機械式羽車を回転させることによって攪拌する。第1フラックスは、溶解の際に生ずる酸化物還元すること、および、後の工程において溶湯内の油分などの不純物スラッジとして沈降させることを主目的として添加されるものであり、たとえばアルカリ金属やアルカリ土類金属のハロゲン化物が使用される。より具体的には、第1フラックスとしては、MgCl2を40〜60wt%、KClを15〜35wt%、CaF2を1〜10wt%、BaCl2を10〜30wt%含む粉末混合物を使用することができる。また、溶湯の表面に発火が生じる場合には、その発火状態に応じて、第1フラックスを適宜追加する。

0042

次に、スラッジ分離工程S23において、溶湯を攪拌し続けることによって溶湯内の不純物をスラッジとして分離させる。本工程では、溶湯内にスラッジの分離が確認されたときに、溶湯に対して粉状の第2フラックスを添加することによりスラッジの分離を促進させる。第2フラックスとしては、第1フラックスと略同様のものが使用されるが、各成分の割合は第1フラックスとは異なり、比重の大きなBaCl2の割合を少なくするのが好ましい。より具体的には、第2フラックスとしては、たとえば、MgCl2を60〜75wt%、KClを20〜35wt%、CaF2を0.1〜5wt%、BaCl2を1〜10wt%含む粉末混合物を使用することができる。また、溶湯の表面に発火が生じる場合には、その発火状態に応じて、第2フラックスを適宜追加する。

0043

次に、清浄化工程S24において、溶湯を清浄化する。具体的には、溶湯の攪拌を停止した後に溶湯を10〜30分間鎮静することによって、溶解炉の底部にスラッジを沈降させる。このとき、溶湯の表面を覆う酸化防止ガス層を形成する。具体的には、溶湯に対して粉状の第3フラックスを添加する。第3フラックスは、溶湯の熱により分解して溶湯の酸化を防止するためのガスを発生するものであり、当該ガスが溶解炉内に充満することによって、溶湯の表面を覆う酸化防止ガス層が形成される。第3フラックスとしては、たとえば、硫黄(S)を60〜90wt%、MgF2を10〜40wt%含む粉末混合物を使用することができる。

0044

次に、成分分析工程S25において、清浄化した溶湯に含まれている成分を分析する。具体的には、まず、溶解炉から溶湯の一部を抽出し、この溶湯から、たとえば直径5cmで長さ10cmの円柱サンプルを鋳造する。そして、このサンプルについて成分分析を行うことによって、溶湯におけるFe成分およびMn成分の含有率を特定する。分析手法としては、たとえばアーク発光分光分析を採用することができる。

0045

次に、成分調整工程S26において、前工程で得られた測定結果に基づいて、Fe成分およびMn成分の含有率を所望の範囲内に調整する。たとえばAZ91Dに相当する鍛造用Mg合金を製造する場合、Fe成分の所望範囲は40ppm(0.004wt%)以下であり、Mn成分の所望範囲は0.17〜0.4wt%である。

0046

Mg合金がリサイクルの過程を経ると、合金に含まれるFeは増加することが知られており、従って、Fe成分を調整するためには、その過剰量に応じた適切な量のFe沈降剤を溶湯に添加する。Fe沈降剤としては、たとえばAl−Mn金属間化合物を使用することができる。一方、Mg合金がリサイクルの過程を経ると、合金に含まれるMnは減少することが知られており、従って、Mn成分を調整するためには、その不足量に応じた適切な量のMn供給剤を溶湯に添加する。Mn供給剤としては、単体Mnや、Mnを含む化合物を使用することができる。たとえば、Al−Mn金属間化合物は、Mn供給剤としても使用することができる。Fe成分およびMn成分の含有率が既に所望の範囲内にある場合、Fe沈降剤およびMn供給剤は添加されない。

0047

種類および量を適切に決定してFe沈降剤およびMn供給剤を溶湯に添加し、溶湯を攪拌および続いて清浄化した後、成分分析工程S25を再び行う。このような、成分調整工程S26およびその後の成分分析工程S25を、Fe成分およびMn成分の含有率が所望の範囲内に収まるまで繰り返し行う。

0048

次に、鋳造工程S27において、所望の成分組成を有する溶湯から、鋳造用材料として、所定サイズのインゴットを鋳造する。このようにして、Mg合金再生材が製造される。

0049

以上の工程を経ることによって、たとえば図2に示すノートパソコン筐体の平面部1のみならず、筐体側壁2、退避部3、細かい凹凸部位4についても、塗膜を良好に除去することができる。部分除去工程S11において、カッターナイフにより塗膜に切り込みを形成する、あるいはウェットブラストにより塗膜の一部を除去するとともに、塗膜面に凹凸を形成することにより、剥離液が染み込み易くなる。これにより、塗膜に対する剥離液の染み込みが促進し、塗膜全体を除去するために要する正味の時間は短縮される。間引き処理S14において、この時点で塗膜が90%以上剥離したものを間引くことにより、後の第2薬液処理工程S16や水洗工程S17などを省くことができ、全体的な塗膜除去時間の短縮およびコストの削減が図れる。したがって、効率よくMg合金再生材を製造することができる。

0050

図3は、本発明の第2の実施形態に係る塗装の剥離からMg合金再生材の製造に至るまでのフローチャートである。この図において先に説明した第1の実施形態と同一の工程については、同一の符号を付してあり、重複説明は省略するものとする。

0051

部分除去工程S11、第1薬液処理工程S12および水洗工程S13を経たMg合金材を、分類S15において、塗膜の剥離面積割合に応じて複数のグループに分類する。一例として、剥離面積の割合が80%超のグループAと、剥離面積の割合が40〜80%のグループBと、剥離面積の割合が40%未満のグループCと、の3つのグループに分類する。このグループの分類は必要に応じて4つ以上に分類してもよいし、2つだけの分類でもよい。また、分類する際の基準となる剥離面積割合の範囲は、塗料の材質や厚み、その他の諸条件により異なるので、必要に応じて任意に定めればよい。

0052

次に、第2薬液処理工程S16a〜cにおいて、分類S15でグループA〜Cに分類されたMg合金材をグループ毎で異なるアルカリ剥離液あるいは酸剥離液に浸漬する。一例としてグループAを第2アルカリ剥離液、グループBを第3アルカリ剥離液、グループCを酸剥離液に浸漬する。なお、第2アルカリ剥離液の方が第3アルカリ剥離液よりもアルカリ成分の含有量は小さい方が好ましい。また、第2および第3アルカリ剥離液のいずれか一方に、第1アルカリ剥離液と同一の組成のものを使用してもよい。

0053

以降、水洗工程S17と同様の水洗工程S17a〜c、中和工程S18と同様の中和工程S18a〜c、水洗工程S19と同様の水洗工程S19a〜c、追加の物理的除去工程S20と同様の追加の物理的除去工程S20a〜c、乾燥工程S21と同様の乾燥工程S21a〜c、溶解工程S22、スラッジ分離工程S23、清浄化工程S24、成分分析工程S25、成分調整工程S26および鋳造工程S27が順に行われる。

0054

以上の工程を経ることによって、第2薬液処理工程S16a〜cで剥離面積の割合が比較的大きく、酸剥離液を用いなくても十分に剥離が行えるマグネシウム合金材(たとえばグループA,B)に対して酸剥離液を用いないので、マグネシウム合金材が溶解してしまうことを抑制することができる。また、アルカリ剥離液を用いる場合でも、その剥離面積の割合に応じて、グループ毎にアルカリ剥離液を適切に変えることで、たとえば危険で、取り扱いに注意が必要なアルカリ成分の濃度が高いアルカリ剥離液の使用量を抑制でき、より安全に塗装の除去を行うことが可能となる。

0055

図4は、本発明の第3の実施形態に係る塗装の剥離からマグネシウム合金再生材の製造に至るまでのフローチャートである。この図において先に説明した第1および第2の実施形態と同一の工程については、同一の符号を付してあり、重複説明は省略するものとする。

0056

以上の工程を経ることによって、第1の実施形態における特徴と第2の実施形態における特徴を兼ね備えることができる。

0057

【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。

0058

【実施例1】
被塗装Mg合金材として、Mg合金製で表面塗装が施されている図2に示すようなノートパソコン筐体を210枚用意した。このノートパソコン筐体210枚の内訳は、表面塗装において、上塗りがエポキシ系マグダインEP1000(日本ペイント製)で、下塗りがエポキシ系マグパウダー♯1000(大日本塗料製)であるエポキシ系塗膜を有する筐体が70枚、上塗りがウレタンNC−7(佑光社製)で、下塗りがアクリルシリコン系UBプライマー(ミカサペイント製)であるウレタン系塗膜を有する筐体が70枚、上塗りがアクリルウレタン系PSハイコートB(ミカサペイント製)で、下塗りがアクリルシリコン系UBプライマー(ミカサペイント製)であるアクリル系塗膜を有する筐体が70枚である。まず、これらの塗装済み筐体の塗膜にカッターナイフで切り込みを入れる。この切り込みの間隔は50mmとした。次に、切り込みを入れた筐体210枚を、ジグに収容した状態で、まず、ステンレス製処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第1アルカリ剥離液に浸漬した。第1アルカリ剥離液は、水酸化カリウムを3.5wt%、水酸化ナトリウムを2.5wt%、アニオン界面活性剤を20wt%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを40wt%含んでいる。第1アルカリ剥離液の温度は70℃に維持し、浸漬時間は10分間とした。このような第1薬液処理により、塗膜を膨潤させて、その一部を剥離させた。次に、筐体を収容したジグを第1アルカリ剥離液から引き上げた後、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第1洗浄水に筐体を浸漬し、水洗した。これにより、エポキシ系塗膜を有する筐体の約90%は、塗膜面の剥離面積割合が90%以上に達したため、これらを間引きした。また、ウレタン系塗膜およびアクリル系塗膜を有する筐体は、この段階で上塗り部分が剥離した。

0059

次に、間引きされなかった筐体を、ジグに収容した状態で、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の酸剥離液に浸漬した。この酸剥離液は、有機酸であるギ酸を5wt%、芳香族アルコールを30wt%、エチレングリコールモノブチルエーテルを30wt%含んでいる。酸剥離液の温度は60℃に維持し、浸漬時間は10分間とした。このような第2薬液処理により、塗膜の一部は分解作用や溶解作用を受けて溶解、あるいは膨潤によりMg合金材から剥離した。次に、筐体を収容したジグを酸剥離液から引き上げた後、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第2洗浄水に筐体を浸漬し、水洗した。次いで、水洗した筐体をステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3のアルカリ溶液に浸漬した。このアルカリ溶液は水酸化ナトリウムを5wt%含んでいる。アルカリ溶液の温度は常温に維持し、浸漬時間は5分間とした。これにより、筐体に残留する酸剥離液を中和した。次に、筐体をアルカリ溶液から引き上げた後、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第3洗浄水に筐体を浸漬し、水洗した。これらの各処理により、間引きされなかった筐体のうち50%は、塗膜が完全に剥離した。また、残りの50%の筐体も塗膜が残留しているのは、剥離しにくい筐体側壁やくぼみ、凹凸部分などであり、これらの部分に残留する塗膜はスクレーパにより物理的に除去された。次に、塗膜が除去された筐体を乾燥機により乾燥した。このようにして、Mg合金製のノートパソコン筐体において、図2に示す平面部1、筐体側壁2、退避部3、細かい凹凸部位4に形成されていた塗膜を、適切に除去することができた。

0060

次に、約680℃に予熱した溶解炉(60dm3)に対して、上述のようにして塗膜を除去したMg合金筐体30kgと、第1フラックス1kgとを投入し、その後、溶解炉を720℃まで昇温してこれらを溶解した。第1フラックスは、MgCl2を50wt%、KClを25wt%、CaF2を5wt%、BaCl2を20wt%含む粉末混合物である。溶融したMg合金すなわち溶湯の均質性を得るため、溶湯は、機械式の羽車により撹拌した。羽車の回転数は100rpmとした。

0061

攪拌を継続し、溶湯からスラッジが分離し始めた時点で、溶湯に第2フラックス0.2kgを投入した。第2フラックスは、MgCl2を67.5wt%、KClを27.5wt%、CaF2を1wt%、BaCl2を4.5wt%含む粉末混合物である。そして、溶湯表面の発火状態に応じて、第2フラックスを0.1kgずつ適宜追加した。このような第2フラックスの添加により、溶湯からのスラッジの分離を促進した。

0062

次に、攪拌を停止して溶湯を20分間鎮静させることにより、溶湯内でスラッジを沈降させて溶湯を清浄化した。その際、攪拌を停止した直後に、溶湯に第3フラックス0.2kgを投入した。第3フラックスは、Sを80wt%、MgF2を20wt%含む粉末混合物である。第3フラックスの投入によりSF6が発生して溶解炉内に充満し、SF6により、溶湯表面を覆う酸化防止ガス層が形成された。このようにして溶湯の酸化を抑制した状態で、充分にスラッジを沈降させた。

0063

次に、清浄化された溶湯から、サンプルとして0.2kgを抽出し、この溶湯から円柱状サンプル(直径5cm、長さ10cm)を鋳造した。次に、このサンプルについて、アーク式発光分光分析装置(PDA−5500II、島津製作所製)を使用して成分分析を行った。その結果、Fe含有率は0.0058wt%であり、Mn含有率は0.120wt%であった。

0064

次に、Fe含有率を低下させ、かつMn含有率を上昇させるため、Fe沈降剤とMn供給剤の機能を併有するAl−Mn金属間化合物を溶解炉に投入した。AZ91Dに相当する鍛造用Mg合金(Fe:0.004wt%以下、Mn:0.17〜0.4wt%)を得るべく、Al−Mn金属間化合物の投入量は4kgとした。次に、このようにして成分調整が行なわれた溶湯を撹拌した後、10分間鎮静することによって溶湯を清浄化した。

0065

次に、清浄化された溶湯から、サンプルとして0.2kgを抽出し、この溶湯から円柱状サンプル(直径5cm、長さ10cm)を鋳造した。次に、このサンプルについて、アーク式発光分光分析装置(PDA−5500II、島津製作所製)を使用して成分分析を行ったところ、Fe含有率は0.0015wt%に低下し、Mn含有率は0.210wt%に上昇していた。次に、このようにして所望の組成に成分調整が行なわれた溶湯からインゴット(5kg)を5個鋳造した。このようにして、被塗装Mg合金ノートパソコン筐体からMg合金再生材を製造することができた。

0066

曲げ強度測定>
上述のようにして得たMg合金再生材から、ダイカスト成形により、JIS Z 2204 1号試験片(10mm×50mm×3.2mm)を5個作成し、これら試験片について曲げ強度を測定した。具体的には、万能試験機商品名:INSTORON5581、インストロンジパン製)を使用し、JIS K 7055に準拠して、各試験片について3点曲げ試験を行った。試験条件は、支持2点間距離(スパン)を40mmとし、当該支持2点間の略中央に対する負荷荷重速度を2mm/minとした。一方、ヴァージン材(AZ91D)からも、同様にJIS Z 2204 1号試験片を5個作成し、これら試験片について同一の条件で3点曲げ試験を行った。その結果、本実施例のMg合金再生材から作成された試験片は、ヴァージン材から作成された試験片とほぼ同強度であって、平均約400MPaの曲げ強度を示し、その最大値最小値の差は約12%であった。

0067

耐食試験
上述のようにして得たMg合金再生材から、ダイカスト成形により、JIS Z 2204 1号試験片(10mm×50mm×3.2mm)を5個作成し、これら試験片について、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験により耐食性を評価した。一方、ヴァージン材からも、同様にJIS Z 2204 1号試験片を5個作成し、これら試験片について同一の条件で耐食性を評価した。その結果、本実施例の試験片の腐食量は、ヴァージン材から作成した試験片の腐食量と、ほぼ同程度であった。

0068

<成形性の評価>
上述のようにして得たMg合金再生材から、ダイカスト成形により、図2に示すような形状のノートパソコン筐体(320mm×240mm×1.2mm)を50個成形した。一方、ヴァージン材からも、同様に50個のノートパソコン筐体を成形した。その結果、本実施例のMg合金再生材は、ヴァージン材と同程度の成形性を示した。たとえば、製品の良品率は、ヴァージン材を使用した場合と同様に約83%であった。ここで、製品の良品率とは、溶湯のショートショットや、成形体におけるひけ及び欠けが発生せずに、製品としての外観基準を満たす成形体の割合をいう。

0069

【実施例2】
被塗装Mg合金材として、Mg合金製で表面塗装が施されている図2に示すようなノートパソコン筐体を210枚用意した。このノートパソコン筐体210枚は、上塗りがアクリルウレタン系PSハイコートB(ミカサペイント製)で、下塗りがアクリルシリコン系UBプライマー(ミカサペイント製)であるアクリル系塗膜を有する筐体である。まず、これらの塗装済み筐体の塗膜に対しウェットブラスト処理を行った。このウェットブラスト処理は、処理速度(噴射ノズルの移動速度)が10mm/s、噴射圧が0.27MPaの条件で、研磨液を塗膜に吹付けることにより行った。研磨液は、平均粒径が約130μmのアルミナ粒子を20wt%含み、その温度は常温に維持された。このウェットブラスト処理により塗膜の一部が除去されるとともに、塗膜面に細かな凹凸が形成された。次に、ウェットブラスト処理により塗膜の一部が削られた筐体210枚を、ジグに収容した状態で、実施例1と同様にして、第1アルカリ剥離液による第1薬液処理およびその後の水洗を行った。これにより、塗膜の一部が除去され、筐体における塗膜の剥離面積割合が80%超のものは全体の約15%(グループA)、剥離面積割合が40〜80%のものは全体の約50%(グループB)、剥離面積割合が40%未満のものは全体の約35%(グループC)となった。この塗膜の剥離面積割合に応じて分類したグループA〜Cを、それぞれ以下に示す各処理槽に浸漬することにより、第2薬液処理を行った。グループAに分類された筐体は、ジグに収容した状態で、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第1アルカリ剥離液に浸漬した。第1アルカリ剥離液は、水酸化カリウムを3.5wt%、水酸化ナトリウムを2.5wt%、アニオン界面活性剤を20wt%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを40wt%含んでいる。第1アルカリ剥離液の温度は70℃に維持し、浸漬時間は20分間とした。グループBに分類された筐体は、ジグに収容した状態で、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の第2アルカリ剥離液に浸漬した。第2アルカリ剥離液は、水酸化カリウムを35wt%、モノエタノールアミン14wt%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを10wt%含んでいる。第2アルカリ剥離液の温度は80℃に維持し、浸漬時間は20分間とした。グループCに分類された筐体は、ジグに収容した状態で、ステンレス製の処理浴槽(1m3)に用意した800dm3の酸剥離液に浸漬した。酸剥離液は、有機酸であるギ酸を5wt%、芳香族アルコールを30wt%、エチレングリコールモノブチルエーテルを30wt%含んでいる。酸剥離液の温度は60℃に維持し、浸漬時間は20分間とした。これにより、いずれの筐体の塗膜も完全に剥離された。

0070

このようにして塗膜が除去されたMg合金筐体を用いて、溶解炉での溶解から、成分分析および成分調整を経て5kgインゴットの鋳造まで実施例1と同様にして、Mg合金再生材を製造した。このMg合金再生材について、実施例1と同様にして曲げ強度測定、耐食試験、成形性の評価を行ったところ、本実施例のMg合金再生材もヴァージン材と同程度の特性ないし物性を示した。

0071

以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。

発明を実施するための最良の形態

0072

(付記1)塗装が施されているマグネシウム合金材に対して、塗膜を物理的かつ部分的に除去する部分除去工程と、
前記部分除去工程を経たマグネシウム合金材に対して、アルカリ剥離液を作用させて塗膜をさらに剥離させる薬液処理工程と、を含むことを特徴とする、被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記2)前記部分除去工程は、カッターナイフによる塗膜への切り込み形成またはウェットブラストにより行われる、付記1に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記3)前記部分除去工程では、塗膜全体量の20%〜50%が除去される、付記1または2に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記4)前記アルカリ剥離液とは別の剥離液を用いて塗膜をさらに剥離させる追加の薬液処理工程をさらに含んでおり、最初の薬液処理工程で塗膜面の剥離面積割合が90%以上のマグネシウム合金材を間引き、残りのマグネシウム合金材についてのみ前記追加の薬液処理工程を行う、付記1〜3のいずれか1つに記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記5)最初の薬液処理工程を経た前記残りのマグネシウム合金材を塗膜の剥離面積割合に応じて複数のグループに分類し、各グループ毎に異なる剥離液を用いて前記追加の薬液処理工程を行う、付記4に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記6)前記追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも1つは、最初の薬液処理工程に用いるアルカリ剥離液とは別のアルカリ剥離液であり、前記追加の薬液処理工程に用いる剥離液の少なくとも他の1つは、酸剥離液である、付記5に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記7)前記アルカリ剥離液は、アルカリ主成分として水酸化カリウムを含む、付記1〜6のいずれか1つに記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記8)前記酸剥離液は、酸主成分として有機酸を含む、付記6に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記9)前記酸剥離液を用いる前記追加の薬液処理工程に続いて、該追加の薬液処理工程を経たマグネシウム合金材に付着している前記酸剥離液を中和する中和工程をさらに含む、付記6〜8のいずれか1つに記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記10)前記中和工程における中和は、水酸化ナトリウムを作用させることにより行われる、付記9に記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記11)前記追加の薬液処理工程を経たマグネシウム合金材に残留する塗膜を除去する追加の物理的除去工程をさらに含む、付記4〜10のいずれか1つに被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記12)前記薬液処理工程の直後に前記マグネシウム合金材を水洗するための水洗工程を含む、付記1〜11のいずれか1つに記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記13)前記最初の薬液処理工程と追加の薬液処理工程とを含むサイクルを繰り返し行うことを特徴とする、付記4〜12のいずれか1つに被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法。
(付記14)付記1〜13のいずれか1つに記載の被塗装マグネシウム合金材の塗膜除去方法により塗膜が除去されたマグネシウム合金材と、マグネシウム合金ヴァージン材とを少なくとも用いて製造されたことを特徴とする、マグネシウム合金再生材。

図面の簡単な説明

0073

本発明によると、マグネシウム合金材の表面に形成されている塗膜を短時間で適切に除去することができる。したがって、被塗装マグネシウム合金材から、ヴァージン材と同等の特性を示し得るマグネシウム合金再生材を効率よく製造することが可能となる。

図1
本発明の第1の実施形態に係る塗装の剥離からマグネシウム合金再生材の製造に至るまでの工程を示すフローチャートである。
図2
ノートパソコン用のマグネシウム合金筐体の一例を表す。
図3
本発明の第2の実施形態に係る塗装の剥離からマグネシウム合金再生材の製造に至るまでの工程を示すフローチャートである。
図4
本発明の第3の実施形態に係る塗装の剥離からマグネシウム合金再生材の製造に至るまでの工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
S11        部分除去工程
S12        第1薬液処理工程(最初の薬液処理工程)
S13        水洗工程
S14        間引き処理
S15        分類工程
S16,S16a〜c    第2薬液処理工程(追加の薬液処理工程)
S17,S17a〜c    水洗工程
S18,S18a〜c    中和工程
S19,S19a〜c    水洗工程
S20,S20a〜c    除去工程
S21        乾燥工程
S22        溶解工程
S23        スラッジ分離工程
S24        清浄化工程
S25        成分分析工程
S26        成分調整工程
S27        鋳造工程

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ