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課題・解決手段
請求項1
以下の一般式:
請求項
ID=000004HE=034 WI=080 LX=0655 LY=0555[式中、Dは、治療薬物部分であり、HおよびH’は、各々、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、m+n+pは、合わせて、少なくとも1で、D上の−H’、−Lおよび−H−L置換基についての共有結合部位の総数を超えない数値であり、H−L結合(群)は加水分解型で、D−L’結合(群)は、存在する場合、加水分解型である]を有する薬物−オリゴマー結合体。
請求項2
mが0であり、pが少なくとも1である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項3
nが0であり、pが少なくとも1である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項4
mおよびnが各々0であり、pが少なくとも1である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項5
pが0であり、mおよびnが各々少なくとも1である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項6
D−HおよびD−H’結合は、存在する場合、非加水分解型である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項7
D−L’結合は、存在する場合、非加水分解型である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項8
請求項9
請求項10
D−L’結合が存在し、エステルおよびカルボネートからなる群から選択される、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項11
Dが生物活性ポリペプチドである、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項12
生物活性ポリペプチドは、XNH2、−OHおよびXSHからなる群から選択された、少なくとも1つの結合に利用可能な部分を有し、利用可能な部分の少なくとも1つは、H−L部分に結合している、請求項11に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項13
生物活性ポリペプチドは、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン誘導体、エビラチド、アンギオテンシン、アンギオテンシンII、アスパラギナーゼ、心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrialnatriuretic peptides)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial sodium diuretic peptides)、バシトラシン、β−エンドルフィン、血液凝固因子VII、VIIIおよびIX、血液胸腺因子、血液胸腺因子誘導体、骨形態形成因子、骨形態形成タンパク質、ブラジキニン、セルレイン、カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド、カルシトニン、CCK−8、細胞増殖因子、EGF、TGF−α、TGF−β、PDGF、酸性FGF、塩基性FGF、セルレイン、ケモカイン、コレシストキニン、コレシストキニン−8、コレシストキニン−パンクレオザイミン、コリスチン、コロニー刺激因子、CSF、GCSF、GMSCF、MCSF、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、サイトカイン、デスモプレッシン、ジノルフィン、ジペプチド、ジスムターゼ、ダイノルフィン、エレドイシン、エンドルフィン、エンドセリン、エンドセリン拮抗ペプチド、エンドセリン(endotherin)、エンケファリン誘導体、エンケファリン、上皮細胞成長因子、エリスロポエチン、濾胞刺激ホルモン、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン放出ポリペプチド、ガストリン、G−CSF、グルカゴン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオ−ペルオキシダーゼ、性腺刺激ホルモン、グラミシジン、グラミシジン群、成長因子、成長ホルモン放出因子、成長ホルモン群、h−ANP、ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβ鎖、ヒト胎盤ラクトゲン、阻害剤、インスリン、インスリン様成長因子、IGF−I、IGF−II、インターフェロン、インターロイキン、腸ポリペプチド、カリクレイン、キョートルフィン、ルリベリン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、塩化リゾチーム、メラニン細胞刺激(melanocyte stimulating)ホルモン、メラニン細胞刺激(melanocyte−stimulating)ホルモン、黒色素胞刺激ホルモン、メリチン、モチリン、メラニン細胞刺激ホルモン、ムラミル、ムラミルジペプチド、神経成長因子、神経栄養因子、NT−3、NT−4、CNTF、GDNF、BDNF、神経ペプチドY、ニューロテンシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、膵ポリペプチド、パンクレオザイミン、副甲状腺ホルモン、ペンタガストリン、ポリペプチドYY、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド、血小板由来成長因子、ポリミキシンB、プロラクチン、タンパク質合成刺激ポリペプチド、PTH関連タンパク質、リラキシン、レニン、セクレチン、血清胸腺因子、ソマトメジン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン、サブスタンスP、スーパーオキシド、スーパーオキシドジスムターゼ、タフトシン、テトラガストリン、トロンボポエチン、胸腺体液因子、サイモポエチン、サイモシン、サイモスティミュリン(thymostimulin)、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンTRH、トリプシン、タフトシン、腫瘍増殖因子、腫瘍壊死因子、チロシジン、ウロガストリン、ウロキナーゼ、血管作動性腸ポリペプチド、血管作動性腸ポリペプチド、バソプレッシン、およびかかるポリペプチドの機能的等価体からなる群から選択される、請求項11に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項14
Dが、アデノウイルス、炭疽菌、ボルデテラ・パータッシス、ボツリヌス中毒、ウシ鼻気管炎、ブランハメラ・カタラリス、イヌ肝炎、イヌジステンパー、クラミジア、コレラ、コクシジウム症、牛痘、サイトメガロウイルス、デング熱、デングトキソプラズマ、ジフテリア、脳炎、腸内毒素産生E.coli、エプシュタイン−バールウイルス、ウマ脳炎、ウマ感染性貧血、ウマ・インフルエンザ、ウマ肺炎、ウマ・ライノウイルス、エシェリヒア・コリ、ネコ白血病、フラビウイルス、グロブリン、ヘモフィルス・インフルエンザb型、ヘモフィルスインフルエンザ、ヘモフィルス・パータッシス、ヘリコバクター・ピロリ、ヘモフィルス、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、HIV、HIV−1ウイルス、HIV−2ウイルス、HTLV、インフルエンザ、日本脳炎、クレブシエラ属、レジオネラ・ニューモフィラ、リーシュマニア、ライ病、ライム病、マラリア免疫原、麻疹、髄膜炎、髄膜炎菌、髄膜炎菌性多糖A群、髄膜炎菌多糖C群、ムンプス、ムンプスウイルス、マイコバクテリアおよび、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ナイセリア、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、NonA NonB、ヒツジ青舌、ヒツジ脳症、乳頭腫、パラインフルエンザ、パラミクソウイルス、パラミクソウイルス群、百日咳、ペスト、肺炎球菌、ニューモシスチス・カリニ、肺炎、ポリオウイルス、プロテウス属、シュードモナス・アエルギノーザ、狂犬病、RSウイルス、ロタウイルス、風疹、サルモネラ、住血吸血症、赤痢菌、シミアン免疫不全ウイルス、痘瘡、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス属、ブタ・インフルエンザ、破傷風、梅毒トレポネーマ、腸チフス、ワクシニア、水痘帯状疱疹、およびコレラ菌からなる群から選択された、生物由来の抗原であるか、または疾病状態に関連している、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項15
Dがインスリンまたはその機能的等価体である、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項16
HおよびH’が、独立的に、直鎖または分枝鎖PEG1〜130および糖からなる群から選択される、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項17
請求項18
請求項19
H−Lは、CH3(CH2)n(OC2H4)mOH(式3)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7である)、CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2CO2H(式4)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜6である)、CH3(CH2)nCX(OC2H4)mOH(式5)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7であり、XはOである)、R−(OC2H4)mCH2CO2H(式6)(ここでのmは0〜5であり、Rはコレステロールまたはアダマンタンである)、またはR−OCO(C2H4O)mCH2CO2H(式7)(ここでのmは0〜14である)、CH3(CH2−CH=CH)6(CH2)2CH2(OC2H4)mOH(式8)(ここでのmは0〜7である)、CH3(CH2−CH=CH)6(CH2)2CX(OC2H4)mOH(式9)(ここでのmは1〜7であり、XはNまたはOである)からなる群から選択されたサブユニットを含む、請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項20
請求項21
エマルジョンと共に請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体を含む医薬組成物。
請求項22
マイクロエマルジョンと共に請求項1に記載の薬物−オリゴマー結合体を含む医薬組成物。
請求項23
以下の一般式:D−[(H−Sn)−Lo]p(式11)[式中、Dは、治療薬物部分であり、Hは、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から選択された、親水性部分であり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、Sは、糖、炭水化物およびグリセロールからなる群から選択されたスペーサー基であり、nは、1から、SがH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、LがSに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、pは、1から、−[(H−Sn)−Lo]pがDに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、S−Lおよび/またはS−H結合は、加水分解型である]を有する、薬物−オリゴマー結合体。
請求項24
Dは、インスリンまたはその機能的等価体である、請求項23に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項25
以下の一般式:D−[(H−Sn−H’q)−Lo]p(式12)[式中、Dは、治療薬物部分であり、HおよびH’は、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、Sは、糖、炭水化物およびグリセロールからなる群から選択されたスペーサー基であり、nは、1から、SがHに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、qは、1から、H’がSに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、LがSに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、pは、1から、−[(H−Sn−H’q)−Lo]pがDに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、そしてS−Hおよび/またはS−H’結合(群)は、加水分解型である]を有する薬物−オリゴマー結合体。
請求項26
Dがインスリンまたはその機能的等価体である、請求項25に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項27
以下の一般式:D−[(H−H’q−Sn)−Lo]p(式13)[式中、Dは、治療薬物部分であり、HおよびH’は、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、Sは、糖、炭水化物およびグリセロールからなる群から選択されたスペーサー基であり、qは、1から、H’がHに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、nは、1から、SがH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、LがSに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、H−H’結合は加水分解型である]を有する薬物−オリゴマー結合体。
請求項28
Dがインスリンまたはその機能的等価体である、請求項27に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項29
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG2〜7である、請求項27に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項30
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG3である、請求項27に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項31
マイクロエマルジョン中に薬物を可溶化する方法であって、a)式:
請求項
ID=000005HE=034 WI=080 LX=0655 LY=0555[式中、Dは、治療薬物部分であり、HおよびH’は、各々、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、LおよびL’は、各々、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、m+n+pは、少なくとも1で、前記置換基についての共有結合部位の数を超えず、oは、1から、LがHに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、H−L結合およびD−H結合は、存在する場合、加水分解型である]を有する薬物−オリゴマー結合体を提供し、b)a)の薬物−オリゴマー結合体をマイクロエマルジョンと会合することを含む、前記方法。
請求項32
Dがインスリンまたはその機能的等価体である、請求項32に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項33
請求項
ID=000006HE=034 WI=080 LX=0655 LY=0300[式中、HおよびH’は、各々、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、LおよびL’は、各々、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、m+n+pは、少なくとも1で、前記置換基についての共有結合部位の数を超えず、oは、1から、LがHに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、H−L結合およびD−H結合は、存在する場合、対象内で加水分解可能で、活性薬物−両親媒性物質結合体を提供する]を有する不活性薬物−オリゴマー結合体を投与することを含む前記方法。
請求項34
Dがインスリンまたはその機能的等価体である、請求項33に記載の方法。
請求項35
Hが、2〜7個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーである、請求項33に記載の方法。
請求項36
Hが、3〜6個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーである、請求項33に記載の方法。
請求項37
Hが、2〜7個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーである、請求項34に記載の方法。
請求項38
Hが、3〜6個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーである、請求項34に記載の方法。
請求項39
対象の位置に、活性薬物−PEG結合体を提供する方法であって、ここでの薬物−PEG結合体の薬物成分は、インスリンおよびインスリンの機能的等価体からなる群から選択され、ここでの薬物−PEG結合体は、対応する結合していないインスリン分子と比べて増強した活性を有し、前記方法は、対象に、式:D−[(H−H’q)−Lo]p(式10)[式中、Dは、治療薬物部分であり、Hは、2〜7個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーであり、H’は、0〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーであり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、qは、1から、H’がHに付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、LがH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、pは、少なくとも1で、[(H−H’q)−Lo]がDに付着できる共有結合部位の数を超えない数であり、H−H’結合および/またはH−L結合は、対象内で加水分解可能で、活性薬物−両親媒性物質結合体を提供する]を有する不活性薬物−PEG−親油性物質結合体を投与することを含む、前記方法。
請求項40
Hは、2、3、4、5または6個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーである、請求項39に記載の方法。
請求項41
請求項42
薬物−PEG2〜10−親油性物質は、医薬組成物としてエマルジョンと共に投与する、請求項39に記載の方法。
請求項43
薬物−PEG2〜10−親油性物質は、医薬組成物としてマイクロエマルジョンと共に投与する、請求項39に記載の方法。
請求項44
以下の一般式:D−[(H−H’q)−Lo]p(式10)[式中、Dは、治療薬物部分であり、HおよびH’は、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、H−H’結合は加水分解型であり、H’−L結合は加水分解型ではなく、qは、1から、H’がHに付着できるH上の共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、LがH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数であり、pは、1から、−[(H−H’q)−Lo]pがDに付着できる共有結合部位の最大数までの数である]を有する薬物−オリゴマー結合体。
請求項45
D、H、H’およびLは、薬物−オリゴマー結合体が両親媒性となるように選択および配列される、請求項44に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項46
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG2〜7である、請求項44に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項47
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG3である、請求項44に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項48
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG2〜7である、請求項45に記載の薬物−オリゴマー結合体。
請求項49
Dがインスリンまたはその機能的等価体であり、HがPEG3である、請求項45に記載の薬物−オリゴマー結合体。
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0003
治療剤としてのポリペプチドの有用性は、ポリペプチドがその特異的なインビボ標的に到達する前に横断しなければならない生体障壁により限定される。非経口投与したポリペプチドは、血漿中のプロテアーゼによって容易に代謝される。おそらく最も魅力的な投与経路である経口投与は、さらにより問題である。胃において、経口投与したポリペプチドは、酵素によるタンパク質分解および酸による分解を受ける危険性がある。腸での存続は、過剰なタンパク質分解により、さらにより不可能のようである。内腔では、ポリペプチドは、胃および膵酵素、エキソおよびエンドペプチダーゼ、および刷子縁ペプチダーゼを含む様々な酵素により絶えず集中攻撃を受ける。結果として、内腔から血流へのポリペプチドの通過は、重度に限定される。
0005
2.1ポリペプチド薬物の投与経路
0007
経口投与を向上するために、透過増強剤(例えば、サリチレート、脂質−胆汁酸塩−混合ミセル、グリセリドおよびアクリルカルニチン)が研究されてきた。しかし、透過増強剤は、頻繁に、局所刺激および毒性などの深刻な局所毒性問題、上皮層の部分的または完全な摩耗、並びに、組織炎症を引き起こす。さらに、透過増強剤は、通常、ポリペプチド薬物と共投与され、投与形からの漏出もよく起こる。
0008
経口送達を増強するための別の一般的な戦略は、プロテアーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン、ダイズトリプシン阻害剤、およびアマスタチン)とポリペプチド薬物の共投与である。残念なことに、プロテアーゼ阻害剤は、プロテアーゼの所望の効果も阻害してしまう。従って、プロテアーゼ阻害剤の非存在下で効果的にポリペプチド薬物を送達する方法および組成物が必要である。
0009
かかる薬物の粘膜の透過を増強するために、ポリペプチド薬物の物理化学的特性を修飾する試みが実施されてきた。1つのかかる試みは、親油性分子にポリペプチド薬物を結合することであるが、しかし、結果により、単に親油性を上げるだけでは、細胞外輸送を増加するのに十分ではないことが示唆されている。
0010
ポリペプチドを安定化する他の方法も記載されている。従って、例えば、AbuchowskiおよびDavisは、酵素を誘導体化して、水溶性で非免疫原性でインビボで安定な製品を提供する様々な方法を開示している(「可溶性ポリマー−酵素付加物」、薬物としての酵素、HolcenbergおよびRoberts編、J.WileyおよびSons、ニューヨーク、NY(1981))。AbuchowskiおよびDavisは、デキストラン、ポリビニルピロリドン、糖ペプチド、ポリエチレングリコールおよびポリアミノ酸などのポリマー物質と酵素を結合する様々な方法を開示している。得られた結合ポリペプチドは、その生物活性および非経口適用のための水溶解度を保持していると報告されている。さらに、米国特許第4,179,337号は、ポリエチレングリコールは、タンパク質を可溶性かつ非免疫原性とすることを開示している。しかし、これらのポリマー物質は、腸粘膜結合を向上または膜透過を促進または増強する成分を含んでいない。従って、これらの結合体は経口投与用に意図されていない。
0011
Meisnerら、米国特許第4,585,754号は、タンパク質は、コンドロイチン硫酸と前記タンパク質を結合することにより安定化し得ることを教示する。この組合せの製品は、通常、ポリアニオン性で、非常に親水性で、細胞透過能がなく、それらは通常、経口投与用ではない。
0012
Millら、米国特許第4,003,792号は、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸およびカラゲナンなどの特定の酸性多糖をタンパク質にカップリングして、可溶性および不溶性製品の両方を製造できることを教示する。かかる多糖は、細胞透過特徴向上能はなく、経口投与用ではない。
0013
他の研究者は、タンパク質に連結したポリエチレングリコールは、変性および酵素による消化に対する安定性を向上することを示した(Boccuら、Pharmacological Research Communication 14、11〜120(1982))。しかし、これらのポリマーは、膜相互作用を増強する成分は含まない。従って、得られた結合体は、上記したのと同じ問題があり、経口投与に適していない。
0014
低分子量化合物(例えばアミノレシチン、脂肪酸、ビタミンB12、およびグリコシド)へのポリペプチドの結合も記載されている(R.lgarishiら、「Proceed.Intem.Symp.Control.Rel.Bioact.Materials.17、366(1990)、T.Taniguchiら、同上、19、104(1992)、G.J.Russel−Jones、同上、19、102(1992)、M.Baudysら、同上、19、210(1992))。得られたポリマーは、経口投与後のバイオアベイラビリティーに必要な可溶性および膜親和性の両方を付与するのに必要な成分を含んでいない。
0015
アゾポリマー皮膜へのタンパク質性薬物の封入も、ポリペプチド薬物の経口投与を可能とする手段として使用されている(M.Saffanら、in Science、223、1081(1986))。皮膜は、胃での消化に切り抜けて存続するが、大腸の微生物叢により消化され、そこで封入されたタンパク質は放出される。このアプローチは、インビボでのポリペプチド薬物の作用持続時間を延長することが知られている。しかし、この技術は物理的混合物を使用し、放出されたタンパク質の膜を横切る吸収は促進しない。
0016
同様に、リポソームも、経口投与並びに非経口投与用のポリペプチド薬物を安定化するのに使用されている。リポソーム使用の総説は、Y.W.Chien、「新しい薬物送達システム」、Marcel Dekker、ニューヨーク、NY、1992に見出される。リポソーム−タンパク質複合体は物理的混合物である。リポソームをベースとした投与の結果は、しばしば不規則かつ予測不可能である。さらに、リポソームの使用により、特定の臓器にポリペプチド薬物が望ましくないことに蓄積し得る。リポソームをベースとした製剤の他の欠点は、コストの高さ、複合体製造プロセスが複合体凍結乾燥サイクルを必要とすること、および溶媒の不適合を含む。
0017
ポリペプチド薬物の経口送達を促進する別のアプローチは、「プロテノイド」の使用である(Santiago,Nら、「インフルエンザウイルスMタンパク質(M1)ミクロスフィアを用いた経口によるラットの免疫化」、妙禄番号A221、Proc.Int.Symp.Control.Rel.Bioac.Mater、19、116(1992))。プロテノイドは、高度に分枝したアミノ酸からなるポリマー状被覆に、目的の薬物を封入している。リポソームと同様、ポリペプチド薬物は、プロテノイド球体に化学的に結合しておらず、投与形からの薬物成分の漏出が可能である。
0018
不安定な薬物(例えば、酵素的、化学的または物理的分解を受け易いインスリンなどの薬物)の薬物送達用のマトリックスとしてエマルジョンを使用する試みがなされてきた。しかし、ラットおよびウサギでのインスリンの腸吸収亢進におけるエマルジョン製剤の効力に関する以前の報告にも関わらず(Engel,S.ら、「インスリン:W/O/W型エマルジョンとしての腸吸収」、Nature、219:856〜857(1968)、Shichiri,Yら、「W/O/W型エマルジョンとしての腸吸収およびウサギ」Diabetologia、10:317〜321(1974))、インスリンの不安定性およびグルコース恒常性を維持するのには過剰の投与量が必要であることから、その後の研究は放棄された(Shichiri,Yら、「インスリンの腸吸収の増加:インスリン坐剤」、J.Pharm.Pharmacol.30:806〜808(1978)、Block,Lら、「医薬エマルジョンおよびマイクロエマルジョン」、医薬投与形:分散システム、第2巻、71項(1996))。それ故、インスリンなどの不安定な薬物の送達においてエマルジョンおよびマイクロエマルジョンの使用を可能とする方法および組成物が依然として当分野において必要である。
0019
(1)胃でポリペプチド薬物が存続し、胃上皮を透過して、血流に侵入することを可能とし、(2)ポリペプチドが活性形で血流中に存続し、そして(3)作用の開始の遅延したおよび/または作用持続時間の増加したポリペプチド薬物を提供する手段が当分野において明らかに必要である。本発明は、これらの3つの重要な各問題を解決する手段を提供する。
0020
2.2糖尿病およびインスリン
0021
炭水化物の代謝異常である糖尿病は、古くから知られている。糖尿病は、インスリンの不十分な産生またはインスリンに対する感受性の低下から生じる。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で合成され、生体中の大半の細胞によるグルコースの正常な利用に必要である。糖尿病のヒトでは、グルコースを使用する正常な能力が阻害され、よって、血中糖レベルが増加する(過血糖)。グルコースが血中に蓄積すると、過剰なレベルの糖が、尿中に分泌される(糖尿)。糖尿病の他の症状は、尿量および頻度の増加、喉の乾き、痒み、空腹感、体重減少、および衰弱を含む。
0022
糖尿病には2種類ある。I型は、インスリン依存性糖尿病すなわちIDDMである。IDDMは、正式には若年発症型糖尿病と称される。IDDMでは、インスリンが膵臓から分泌されず、外部の源から提供しなければならない。II型成人発症型糖尿病は、普通、食事療法により制御できるが、進行型の場合ではインスリンが必要とされる場合がある。
0023
1920年代にインスリンが単離された以前、大半の患者は、発症後短期間で死亡した。未処置の糖尿病は、血中に脂肪分解産物であるケトンが蓄積するケトーシスに至り、これに続いて吐気および嘔吐を伴うアシドーシス(血中における酸の蓄積)が生じる。炭水化物および脂肪代謝異常による毒性産物が増えつづけると、患者は糖尿病性昏睡に至る。
0024
糖尿病の処置は、典型的にはインスリンの定期的注射を必要とする。糖尿病処置としてのインスリンの使用は、1922年までさかのぼり、この年、Bantingら(「糖尿病の処置における膵抽出物」、Can.Med.Assoc.J.12、141〜146(1992))により、膵臓からの活性抽出物が、糖尿病イヌにおいて治療効果を有することが示された。同年の膵抽出物による糖尿病患者の処置により、劇的で生命を救う臨床的向上がもたらされた。インスリン注射が不便であることから、インスリンに、その投与および生体同化を向上するための莫大な努力が向けられた。
0025
インスリン分子は、ジスルフィド結合により連結した2つのアミノ酸鎖からなる(分子量6,000)。膵島のβ細胞は、プロインスリンとして知られる、インスリンの一本鎖前駆体を分泌する。プロインスリンのタンパク質分解により、4つの塩基性アミノ酸(プロインスリン鎖の31、32、64および65番:それぞれArg、Arg、Lys、Arg)および接続している(「C」)ポリペプチドが除去される。得られた2本鎖インスリン分子では、A鎖は、アミノ末端にグリシンを有し、B鎖はアミノ末端にフェニルアラニンを有する。
0026
インスリンは、モノマー、ダイマーまたは3つのダイマーから形成されたヘキサマーとして存在し得る。ヘキサマーは、2つのZn++元素と配位している。生物活性はモノマーに存在する。近年まではウシおよびブタのインスリンがほぼ専らヒトの糖尿病の処置に使用されてきたが、種間でのインスリンにおける数多くの多様性が知られている。ブタインスリンは、ヒトインスリンに最も類似し、ブタ・インスリンは、B鎖C末端でトレオニン残基ではなくアラニンを有する点でのみヒト・インスリンとは異なる。これらの差異にも関わらず、大半の哺乳動物インスリンは、同等な比活性を有する。近年までは、動物抽出物が、疾病処置に使用する全てのインスリンを提供してきた。組換え技術の伸展により、商業的規模でのヒトインスリンの製造が可能である(例えば、Humulin(登録商標)インスリン、市販でIN州インディアナポリス所在イーライリリー社から市販されている)。
0027
糖尿病患者で正常血糖を達成するためのインスリンの経口投与に関連した問題は、薬学および医学文献に十分に文書化されている。インスリンは、消化管中の消化酵素により迅速に分解され、これにより生物学的に不活性な薬物となる。膜透過性も、親油性が十分でないために低い(1)。これらの2つの大きな問題に効果的に対処する経口送達システムでは、腸吸収は向上するだろう。
0028
我々の以前の特許(米国特許第5,359,030号、第5,438,040号、および第5,681,811号)で、我々は、インスリンの両親媒性修飾によって、その親油性は向上し、酵素による分解に対してインスリンは安定化することを示した。しかし、本発明者は、驚くべきことに、経口送達の可能なインスリン結合体は、作用開始の遅延および/または作用持続時間の延長、並びに、インスリンの作用の劇的な増強を提供することを発見した。
0029
3.発明の要約
0030
本発明者は、驚くべきことに、加水分解型結合(例えばエステル結合)により連結された親水性成分および親油性成分を含む、新しいシリーズのオリゴマーを発見した。薬物(本明細書に定義したような)に結合し、適切に製剤化すると、これらのオリゴマーは、経口送達および血流中での活性の開始の遅延および/または活性の持続時間の延長を促進し得る。参照し易いようにするために、結合体は、本明細書で薬物−オリゴマー結合体として記載するが、当業者には明らかなように、薬物成分は、1つ以上の親水性−親油性成分に結合でき、および/または個々の親水性および親油性成分に結合できる。
0031
本発明のオリゴマーは、親水性成分および親油性成分を含む。適切な親油性成分は、例えば、直鎖または分枝鎖脂肪酸またはアルキル鎖を含む。好ましい親油性物質は、天然脂肪酸またはアルキル鎖である。脂肪酸成分は、(飽和または不飽和)炭素原子を有し、適切には炭素原子数が2から28個の範囲である直鎖または分枝鎖分子であり得る。最も好ましくは、脂肪酸は、12から22個の炭素原子を有する。
0032
親水性成分は、好ましくは2〜130個のPEG単位、より好ましくは1〜100個のPEG単位を有する、好ましくは直鎖または分枝鎖ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーである。特定の実施形態において、薬物成分はインスリンであり、親油性物質は、2〜7個、好ましくは2〜6個、より好ましくは3、4または5個のPEG単位を有するPEG鎖である。
0033
親水性および親油性成分は、好ましくは、共に、エステル結合またはカーボネート結合などの加水分解型結合により接続している。加水分解型結合の使用により確実に、結合体が腸上皮を横切って血流の親水性環境へと入ると、親油性成分は、加水分解型結合の加水分解により切断され、よって、結合体の薬物−親水性物質成分が放出される。これは、薬物成分がインスリンであり、親水性成分が、インスリンの活性を増加させるPEG鎖である場合に特に重要である。
0034
好ましい形態において、結合体を経口投与する場合、親油性成分および親水性成分の長さおよび組成を調整して確実に、(1)結合体が腸上皮を横断するのに十分な両親媒性を有し、そして(2)一旦親油性物質が、親水性物質と親油性物質を接続している加水分解型結合の加水分解を受けると、治療部分の活性は消失しないようにし得る。さらに、薬物−オリゴマー結合体の両親媒性を必要であれば調整して、新油性または親水性担体中の、またはエマルジョンまたはマイクロエマルジョン中の薬物の製剤化が可能となり得る。
0035
好ましい態様において、本発明のポリペプチド−オリゴマー結合体は、以下の一般式を有する。
0036
(式1)
0037
ここで、Dは、治療薬物部分であり、
Hは、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から選択された、親水性部分であり、
LおよびL’は、各々、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から独立的に選択された親油性部分であり、
oは、1から、H上の共有結合部位の最大数までの数であり、
pは少なくとも1の数値を有し、m+n+pは、合わせて、少なくとも1で、かかる置換基についてのD上の共有結合部位の総数を超えない数値であり、
H−L結合(群)は加水分解型で、D−L’結合(群)は、存在する場合、加水分解型である。
0038
狭い態様において、本発明の薬物−オリゴマー結合体は、式:
D−[H−Lo]p(式2)
[式中、
Dは、治療薬物部分であり、
Hは、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から選択された、親水性部分であり、
Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、
oは、1から、H上の共有結合部位の最大数までの数であり、
pは、1から、D上の共有結合部位の最大数までの数であり、
H−L結合は加水分解型である]
を有する。
0039
1つの態様において、本発明のオリゴマーは、CH3(CH2)n(OC2H4)m
OH(式3)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7である)、CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2CO2H(式4)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜6である)、CH3(CH2)nCX(OC2H4)mOH(式5)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7であり、XはOである)、R−(OC2H4)
mCH2CO2H(式6)(ここでのmは0〜5であり、Rはコレステロールまたはアダマンタンである)、またはR−OCO(C2H4O)mCH2CO2H(式7)(ここでのmは0〜14である)、CH3(CH2−CH=CH)6(CH2)2CH2(OC2H4)mOH(式8)(ここでのmは0〜7である)、CH3(CH2
−CH=CH)6(CH2)2CX(OC2H4)mOH(式9)(ここでのmは1〜7であり、XはNまたはOである)からなる群から選択されたサブユニットを含む。
0041
本発明者はまた、PEG2〜7、好ましくはPEG3よるインスリンのPEG化は、インスリンの活性を増加することを発見した。本発明は、インスリン−PEG2〜7−親油性物質結合体(ここでのPEG−親油性物質結合は加水分解型である)を提供することにより、この驚くべき発見を活用する。血流中で、加水分解型PEG−親油性物質結合は加水分解され、血中を循環している高度に活性なインスリンPEG化合物が残る。
0042
他の実施形態において、本発明の結合体は、式:
D−[(H−H’q)−Lo]p(式10)
[式中、
D、H、Lおよびpは、上記した通りであり、H’は上でHについて上記した通りであり、H−H’結合は加水分解型であり、H’−L結合は加水分解型ではなく、qは、1から、H’がHに付着できるH上の共有結合部位の最大数までの数であり、そして、oは、1から、L置換基がH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数である]
を有する。この配列では、HおよびH’部分は、結合体の親油性対結合体の親水性のバランスをとるように選択することが可能であり、(Dの親水性または親油性に対処するために)両親媒性結合体を製造することができ、同時に、加水分解されたD−H部分の活性を可能とするまたは保持する小さいH部分(例えばHは2〜10個のPEG単位を有する短いPEG鎖であり得る)を使用できる。別の言葉で言えば、加水分解型結合は、加水分解されたD−H部分に最大活性を与える、親水性部分に沿った任意の点に配置できる。Dがインスリンである場合、Hは好ましくはPEG2〜7、より好ましくはPEG2、PEG3、PEG4またはPEG5、最も好ましくはPEG3であり、H’およびLは、結合体の親油性および親水性のバランスをとるように選択し、腸内腔から血流に通過できる両親媒性結合体を提供する。
0043
他の実施形態において、本発明の結合体は、式:
D−[(H−Sn)−Lo]p(式11)
D−[(H−Sn−Hq’)−Lo]p(式12)、および
D−[(H−Hq’−Sn)−Lo]p(式13)
[式中、
D、H、H’およびLは、上記に定義した通りであり、Sは、糖、炭水化物およびグリセロールからなる群から選択されたスペーサー基であり、qは、1から、H上の共有結合部位の最大数までの数であり、nは、0から、H’上の共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、Sが存在する場合S上の、Sが存在しない場合H’上の、共有結合部位の最大数までの数であり、そして、pは、1から、D上の共有結合部位の最大数までの数であり、Sが存在しない場合、LはHまたはH’に付着している(それぞれ式1および2のように)]
を有する。式11、12および13の各々は、少なくとも1つの加水分解型結合を有する。式11では、加水分解型結合は、S−LまたはS−Hであり得、式12では、加水分解型結合は、S−HまたはS−H’であり得、式13では、加水分解型結合はH−H’である。
0044
本発明はまた、薬物−オリゴマー結合体を含む医薬製剤を提供する。好ましい態様において、医薬製剤は、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンである。本発明の薬物−オリゴマー結合体は、エマルジョンまたはマイクロエマルジョン製剤に容易に取り込める点で重要な利点を有する。さらに、結合体の親油性/親水性は、オリゴマーの親水性および親油性成分の分子量および構造を変化させることにより容易に調整され、特定のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン製剤の溶解度を促進することができる。
0045
本発明はまた、ポリペプチド−オリゴマー結合体を製造および使用する方法、並びに、これらの結合体を含む医薬製剤を提供する。
0046
3.1 定義
0048
本明細書に使用したような「PEG」なる語は、直鎖または分枝鎖ポリエチレングリコールポリマーおよびモノマーを意味する。「PEGサブユニット」なる語は、1つのポリエチレングリコール単位、すなわち−(CH2CH2O)−を意味する。
0049
本明細書に使用したような「親油性」なる語は、脂質に溶けることができることおよび/または生体膜を透過、それと相互作用および/または横断することができること意味し、「親油性部分」または「親油性物質」なる語は、親油性である、および/または別の化学実体に付着した場合に、前記化学実体、例えば脂肪酸、コレステロールの親油性を増加する部分を意味する。親油性物質は、本明細書では「L」として式に示す。
0050
本明細書に使用したような「親水性」なる語は、水に溶けることができることを意味し、「親水性部分」または「親水性物質」なる語は、親水性である、および/または別の化学実体に付着すると、前記化学実体、例えば糖、PEGの親水性を増加する部分を意味する。親水性物質は本明細書では「H」または「H’」として式に示す。
0051
本明細書に使用したような「両親媒性」なる語は、水および脂質の両方で溶けることができることを意味し、「両親媒性部分」および「両親媒性物質」なる語は、両親媒性である、および/または、ポリペプチドまたは非ポリペプチド薬物に付着すると、得られた結合体、例えばPEG−脂肪酸オリゴマー、糖−脂肪酸オリゴマーの両親媒性を増加する部分を意味する。
0052
本明細書に使用したような、本発明の薬物−オリゴマー結合体の薬物、親水性および親油性成分に関する「共有結合」、「連結」、「結合した」、「接続した」等なる語は、特定の成分が、互いに直接共有結合しているか、または間接的に介在部分または成分、例えば橋、スペーサー、リンカーまたは類似物などを介して互いに共有結合することを意味し、例えば、糖部分またはグリセリン部分は、PEGポリマーと脂肪酸部分の間のスペーサーとして作用できる(すなわち、PEG−糖−脂肪酸またはPEG−グリセリン−脂肪酸)。
0053
本明細書に使用したように「非加水分解型」などの用語および「加水分解型ではない」なる文は、全ての条件下で加水分解できない結合、並びに、通常の生理的条件下では迅速に加水分解されないカルバメート、アミドおよび他の結合を意味するために使用される。
0054
本明細書に使用したような「薬物」なる語は、ヒトおよび/またはヒト以外の動物における、疾病の発症、疾病状態、または他の生理的容態を診断、特徴づけ、治癒、緩和、処置、予防、または軽減するか、または、正常な生理機能を増強するのに使用される物質を意味する。この用語は、投与する薬物のプロドラッグ、塩、エステル、および他の変形も含む。薬物は、本明細書で「D」として式に提示する。
0055
「治療有効量」は、疾病の発症を予防、遅延またはその重度を減少するのに必要な量、または、現在進行中の疾病を停止またはその重度を減少するのに必要な量を意味し、また、正常な生理機能の増強に必要な量も含む。
0056
「機能的等価体」なる語は、本明細書で、天然ポリペプチドの活性類似体、誘導体、断片、切断短縮アイソフォームまたは類似物である、ポリペプチドを意味するために使用される。ポリペプチドは、対応する天然ポリペプチドのいくらかまたは全ての生物活性を保持している場合に活性である。
0057
「免疫的に効果的」なる語は、本明細書で、対象に免疫応答の免疫学的細胞記憶を付与する免疫応答を意味するために使用され、二次応答(同じまたは類似の免疫原に対する)は、以下の1つ以上により特徴づけられるという効果を有する。免疫化の非存在下における対応する曝露原から生じるずれ期と比較してずれ期が短い、かかる免疫化の非存在下における対応する曝露における抗体の産生よりも長い期間抗体の産生が続く、免疫化の非存在下におけるかかる曝露から産生された抗体のタイプおよび品質と比較して産生された抗体のタイプおよび品質は変化している、クラス応答がシフトし、IgG抗体は、IgMよりも高い濃度でおよびより長い持続性で出現する、免疫化の非存在下におけるかかる曝露からの抗原に対する抗体の平均的な親和性と比較して、抗原に対する抗体の平均的な親和性(結合定数)は増加している、および/または、二次免疫応答を特徴付ける当分野で既知の他の特徴。
0058
本明細書に使用したような本発明に記載の製剤の「医薬的に許容される」成分(例えば塩、担体、添加剤または希釈剤)は、(1)薬物−オリゴマー結合体の生物活性を消失することなく、本発明の薬物−オリゴマー−結合体と配合できる点で、製剤の他の成分と適合性であり、そして(2)過度の副作用(例えば毒性、刺激、およびアレルギー応答)を伴うことなく動物(ヒトを含む)での使用に適している成分である。副作用は、その危険性が、医薬組成物により提供される利点にしのぐ場合に「過度」である。医薬的に許容される成分の例は、リン酸緩衝食塩水、水、水中油滴型エマルジョンなどのエマルジョン、マイクロエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを含むがこれに限定されない。
0059
本明細書に使用したような、インスリンなどのポリペプチドに関して使用される「天然」なる語は、示されたポリペプチドが、天然に見出される対応するポリペプチドのアミノ酸配列を有することを示すために使用する。
0060
本明細書に使用したような「抗原」および「抗原性」なる語は、生物の免疫細胞に提示されると、免疫応答を誘導する物質を記載することを意味する。抗原は、B細胞受容体(すなわち、B細胞膜上の抗体)またはT細胞受容体により認識される、単一の免疫原性エピトープ、または複数の免疫原性エピトープを含み得る。従って、本明細書に使用したように、これらの用語は、免疫応答を誘発できる任意の物質、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、肝炎ウイルス抗原(HCV、HBV、HAV)、およびトキソプラズマ・ゴンディ、サイトメガロウイルス、ヘリコバクター・ピロリ、風疹などの抗原、並びに、当業者に既知の適切な条件下で抗原性となり得るハプテンを意味する。
0061
4.発明の詳細な説明
0062
本発明は、広く、治療および/または診断用の薬物−オリゴマー結合体に関し、ここでの薬物分子は、オリゴマーに共有結合して、両親媒性結合体を形成している。オリゴマーは、少なくとも1つの親水性部分および少なくとも1つの親油性部分を含む。この部分は、加水分解型結合により様々に連結し、よって、加水分解型結合の加水分解時に、活性薬物−親水性物質(D−H)結合体が残る。オリゴマーは、有利には、血流中のポリペプチド−オリゴマー結合体の活性の開始を延ばしつつ、経口送達を促進できる。
0063
4.1 薬物−オリゴマー結合体
0064
薬物−オリゴマー結合体は、一般に、D−H−LまたはD−H−H’−Lとして配列され、ここでのH−LおよびH−H’結合は、血流中で加水分解されて、血中で循環しているD−H結合体を残すことができる。本明細書に記載した様々なオリゴマー(例えば−H−L、−H−H’−L、−H−S−L、−H−S−H’−L、および−H−H’−S−L)は、専らなものとしては捉えず、任意の特定のDは、適切な共有結合部位が存在する限り、それに付着した1つ以上のこれらのオリゴマーを有し得る。従って、例えば、天然インスリンは、3つの共有結合部位を有し、これは、本明細書に記載した1、2または3つの同一のオリゴマーまたはオリゴマーの組合せにより占有され得る。さらに、共有結合部位は、本明細書に記載した任意の親水性および親油性成分により占有され得る。
0065
本発明の結合体は、以下の一般式を有する。
0066
(式1)
0067
ここで、Dは、治療薬物部分であり、
HおよびH’は、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、
LおよびL’は、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、
pは少なくとも1の数値を有し、m+n+pは、共に、少なくとも1で、かかる置換基についてのD上の共有結合部位の総数を超えない数値を有し、
H−L結合(群)は加水分解型で、D−L’結合(群)は、存在する場合、加水分解型である。
0068
m+n+pの数は、かかる部分が付着できるD上の位置の数を越え得ない。例えば、天然ヒトインスリンは、3つの共有結合部位を有し、それ故、m+n+pは、3を超え得ず、ここでのDは天然ヒトインスリンである。しかし、インスリンおよび他の薬物は、化学的に修飾されて、追加の共有結合部位を提供できることが理解されよう。好ましくは、m+n+pは、1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8、さらにより好ましくは1〜5、最も好ましくは1、2、3または4である。H−L基のHがPEGポリマー(直鎖または分枝鎖)である場合、oは好ましくは1〜3であり、より好ましくは1または2であり、最も好ましくは2である。
0069
好ましい形態において、m+nは0であり、pは少なくとも1である。別の態様において、pは0であり、mおよびnは各々少なくとも1である。この別の態様において、H−D結合は、非加水分解型であり、L−D結合は加水分解型である。
0070
狭い態様において、本発明は、式:
D−[H−Lo]p(式2)
[式中、
Dは、治療薬物部分であり、
Hは、2〜130個のPEGサブユニットを有する直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび糖からなる群から独立的に選択された、親水性部分であり、
Lは、2〜24個の炭素原子を有するアルキル基、コレステロール、および脂肪酸からなる群から選択された親油性部分であり、
oは、1から、H上の共有結合部位の最大数までの数であり、
pは、1から、D上の共有結合部位の最大数までの数であり、
H−Lo結合は加水分解型である]
を有する薬物−オリゴマー結合体を提供する。
0071
式2では、oは好ましくは1〜3であり、より好ましくは1または2であり、pは好ましくは1〜5であり、より好ましくは1、2または3である。
0072
加水分解型結合は、好ましくは、エステルおよびカーボネートからなる群から選択される。
0073
本発明者はまた、PEG2〜7(好ましくはPEG3)によるインスリンのPEG化は、インスリンの活性を劇的に増加することを発見した。本発明は、インスリン−PEG−親油性物質結合体(ここでのPEG−親油性物質結合は加水分解型である)を提供することにより、この驚くべき発見を活用する。血流で、加水分解型PEG−親油性物質の結合は加水分解され、血中に循環している高度に活性なインスリンPEG化合物が残る。
0074
インスリン−PEG−親油性物質結合体の親油性物質は、好ましくは、PEG−親油性物質加水分解型結合の加水分解前にインスリンが不活性となるように選択する。結果として、活性形(インスリン−PEG)は、PEG−親油性結合が加水分解されると血中にゆっくりと放出され、よって、活性なインスリン−PEGが次第に放出され、作用の持続期間は延長する。本発明のインスリン−PEG−親油性物質結合体は、結合体が腸上皮を横断するのに十分な両親媒性をもつように製剤化され得、よって結合体の経口投与が可能となる。両親媒性は、PEGおよび/または親油性物質のコンフォメーションおよび/または構造を短くする、長くする、および/または別様に変化させる当分野で既知の手段により調整し得る。
0075
本発明はまた、ポリペプチド−オリゴマー結合体を製造および使用する方法を提供する。
0076
4.1.1 薬物−オリゴマー結合体の薬物成分
0077
本発明の薬物−オリゴマー結合体は、薬物成分を含む。薬物成分は、小分子の治療薬物部分または生物活性ポリペプチドであり得る。適切な薬物は、(1)本発明のオリゴマーに結合でき、そして(2)薬物−オリゴマー結合体の親油性成分の加水分解的除去後に(すなわち薬物−親水性物質形で)、いくらかまたは全てのその活性を保持しているものである。
0078
薬物成分が、血流中で循環中に親水性物質に付着したままであることが好ましい環境では(例えば、親油性物質が、親水性物質により寄与される親水性の増加から利点がある場合、および/または、親水性物質が、薬物の活性を増加する場合)、親水性物質は、非加水分解型結合によりオリゴマーの薬物成分に付着しているべきである。好ましい非加水分解型結合は、カルバメート、アミドおよび2級アミンを含む。しかし、ある環境では、加水分解型結合により薬物に1つ以上の親水性物質を付着することが望ましくあり得ることが当業者により理解されるだろう。従って、例えば、循環中に全てより少ない親水性成分を保持し、親水性を最適化して循環を向上するか、または循環薬物の活性を最適化することが有利であり得る。さらに、薬物への複数の加水分解型親水性物質の付着を使用して、循環を向上し、薬物の作用開始を遅延し得る。従って、例えば、薬物−オリゴマー結合体の混合物の投与により確実に、ほぼ即座の活性(すなわち僅か数個の結合を加水分解する)を有する結合体もあるが、多数の加水分解型結合(親油性物質を親水性物質に、および/または親水性物質を薬物に接続している)が加水分解されると遅延して活性となる結合体もある。
0079
薬物は、(1)共有結合によりオリゴマーの親水性成分に直接、または(2)適切なスペーサー基(例えば、下記したような糖基)を通して間接的に接続し得る。結合複合体は、好ましくは、親水性部分が薬物に直接付着し、親油性部分が親水性部分に付着するように構造的に配列する。さらに、薬物は、オリゴマーの非存在下またはオリゴマーと組合せて、1つ以上の追加の親油性部分および/または親水性部分に付着し得る。
0080
本明細書に示した例は、薬物−オリゴマー結合体の薬物成分としてのインスリンの使用に例として向けられているが、本発明の有用性はかくして限定されないことが当業者には理解されよう。多種多様の薬物種を、本発明の広範な実施に使用し得る。適切な薬物成分は、本明細書に記載のオリゴマーの親水性成分に結合できるものである。好ましい薬物成分は、薬物−オリゴマー結合体の親油性成分が、加水分解型結合の加水分解により切断された場合に活性であり、薬物−親水性成分は無傷のまま残る。しかし、別の実施形態において、親水性物質は、加水分解型結合により薬物成分に接続し得、よって、加水分解時に、遊離され結合されていない活性薬物が放出される。
0081
1つの態様において、薬物−オリゴマー結合体の薬物成分はポリペプチドである。適切なポリペプチドは、生物活性であるものである。例えば、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、副腎皮質刺激ホルモン誘導体(例えばエビラチド)、アンギオテンシン、アンギオテンシンII、アスパラギナーゼ、心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrialnatriuretic peptides)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial sodium diuretic peptides)、バシトラシン、β−エンドルフィン、血液凝固因子VII、VIIIおよびIX、血液胸腺因子(FTS)、血液胸腺因子誘導体(米国特許第4,229,438号参照)、ボンベシン、骨形態形成因子(BMP)、骨形態形成タンパク質、ブラジキニン、セルレイン、カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(CGRP)、カルシトニン、CCK−8、細胞増殖因子(例えば、EGF、TGF−α、TGF−β、PDGF、酸性FGF、塩基性FGF)、セルレイン、ケモカイン、コレシストキニン、コレシストキニン−8、コレシストキニン−パンクレオザイミン(CCK−PZ)、コリスチン、コロニー刺激因子(例えば、CSF、GCSF、GMCSF、MCSF)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)、サイトカイン、デスモプレッシン、ジノルフィン、ジペプチド、ジスムターゼ、ダイノルフィン、エレドイシン、エンドルフィン、エンドセリン、エンドセリン拮抗ペプチド(欧州特許公開公報第436189号、第457195号および第496452号および日本特許未審査公開公報番号第94692/1991および第130299/1991参照)、エンドセリン(endotherin)、エンケファリン、エンケファリン誘導体(米国特許第4,277,394号および欧州特許公開公報第31567号参照)、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン放出ポリペプチド(GRP)、ガストリン、G−CSF、グルカゴン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオ−ペルオキシダーゼ、性腺刺激ホルモン(例えばヒト絨毛性腺刺激ホルモンおよびそのαおよびβサブユニット)、グラミシジン、グラミシジン群、成長因子(EGF)、成長ホルモン放出因子(GRF)、成長ホルモン、ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ヒト心房ナトリウム利尿ポリペプチド(h−ANP)、ヒト胎盤ラクトゲン、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、インターフェロン、インターフェロン群(例えば、α、βおよびγ−インターフェロン)、インターロイキン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12)、腸ポリペプチド(VIP)、カリクレイン、キョートルフィン、ルリベリン、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、塩化リゾチーム、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、黒色素胞刺激ホルモン、メリチン、モチリン、ムラミル、ムラミルジペプチド、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子(例えば、NT−3、NT−4、CNTF、GDNF、BDNF)、神経ペプチドY、ニューロテンシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、膵ポリペプチド、パンクレオチミン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ペンタガストリン、ポリペプチドYY、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、血小板由来成長因子、ポリミキシンB、プロラクチン、タンパク質合成刺激ポリペプチド、PTH関連タンパク質、リラキシン、レニン、セクレチン、血清胸腺因子、ソマトメジン、ソマトスタチン誘導体(Sandostatin、米国特許第4,087,390号、第4,093,574号、第4,100,117号および第4,253,998号参照)、サブスタンスP、スーパーオキシドジスムターゼ、タフトシン、テトラガストリン、トロンボポエチン(TPO)、胸腺体液因子(THF)、サイモポエチン、サイモシン、サイモスティミュリン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、トリプシン、タフトシン、腫瘍増殖因子(TGF−α)、腫瘍壊死因子(TNF)、チロシジン、ウロガストリン、ウロキナーゼ、血管作動性腸ポリペプチド、バソプレッシン、およびかかるポリペプチドの機能的等価体である。
0082
別の態様において、ポリペプチドは抗原である。多くの適切な抗原が当分野で公知であり、例えば、免疫応答の増強を誘発し得る、免疫応答を増強し得る、および/または以下の疾病および疾病を引き起こす病原体に対する免疫的に効果的な応答を引き起こし得る抗原がある。アデノウイルス、炭疽菌、ボルデテラ・パータッシス、ボツリヌス中毒、ウシ鼻気管炎、ブランハメラ・カタラリス、イヌ肝炎、イヌジステンパー、クラミジア、コレラ、コクシジウム症、牛痘、サイトメガロウイルス、デング熱、デングトキソプラズマ、ジフテリア、脳炎、腸内毒素産生E.coli、エプシュタイン−バールウイルス、ウマ脳炎、ウマ感染性貧血、ウマ・インフルエンザ、ウマ肺炎、ウマ・ライノウイルス、エシェリヒア・コリ、ネコ白血病、フラビウイルス、グロブリン、ヘモフィルス・インフルエンザb型、ヘモフィルスインフルエンザ、ヘモフィルス・パータッシス、ヘリコバクター・ピロリ、ヘモフィルス、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、HIV、HIV−1ウイルス、HIV−2ウイルス、HTLV、インフルエンザ、日本脳炎、クレブシエラ属、レジオネラ・ニューモフィラ、リーシュマニア、ライ病、ライム病、マラリア免疫原、麻疹、髄膜炎、髄膜炎菌、髄膜炎菌性多糖A群、髄膜炎菌多糖C群、ムンプス、ムンプスウイルス、マイコバクテリアおよび、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ナイセリア、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ヒツジ青舌、ヒツジ脳症、乳頭腫、パラインフルエンザ、パラミクソウイルス、パラミクソウイルス、百日咳、ペスト、肺炎球菌、ニューモシスチス・カリニ、肺炎、ポリオウイルス、プロテウス属、シュードモナス・アエルギノーザ、狂犬病、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、風疹、サルモネラ、住血吸血症、赤痢菌、シミアン免疫不全ウイルス、痘瘡、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス属、ブタインフルエンザ、破傷風、梅毒トレポネーマ、腸チフス、ワクシニア、水痘帯状疱疹、およびコレラ菌。
0083
好ましい抗原は、ワクチンの成分として有用であることが知られるものである。抗原は、例えば、様々な類毒素、ウイルス抗原および/または細菌抗原を含み得る。例えば、抗原は、以下のワクチンに一般的に使用される抗原を含み得る。水痘ワクチン、ジフテリア、破傷風および百日咳ワクチン、ヘモフィルス・インフルエンザb型ワクチン(Hib)、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン、麻疹、ムンプス、および風疹ワクチン(MMR)、肺炎球菌ワクチン、ポリオワクチン、ロタウイルスワクチン、炭疽菌ワクチン、および破傷風およびジフテリアワクチン(Td)。
0084
好ましい態様において、薬物−オリゴマー結合体の薬物成分は、インスリンまたはその機能的等価体、好ましくは哺乳動物インスリンまたはその機能的等価体、最も好ましくはヒトインスリンまたはその機能的等価体である。
0085
本発明の薬物−オリゴマー結合体に使用するに適切なインスリンの別の形態は、アミノ酸のリジンおよびプロリンの位置が、インスリン分子のβ鎖の末端で切り換えられている、新しく開発されたヒトインスリン類似体である、インスリン・リスプロである(Koivisto,V.A.「ヒトインスリン類似体インスリン・リスプロ」Ann Med 1988年6月30日:3 260〜6)。B28位にリジンおよびB29位にプロリンを有するインスリン・リスプロは、ヒトインスリンよりも自己会合する傾向が低い。これにより、薬物動態に3つの主な差異がもたらされる。作用がより速く、より高いピークを有し、持続時間はヒトインスリンよりも短い。従って、インスリン・リスプロは、ヒトレギュラーインスリンよりも、食事におけるより正確な作用プロフィルを示す。インスリン・リスプロは、食事する前の15分以内に注射することが推奨され、これに対し、ヒトインスリンでは30〜40分である。インスリン・リスプロは、食事中のインスリンとしての使用するために設計された。別の態様において、患者に、速効性インスリン(例えばリスプロ)を含む薬物−オリゴマー結合体および遅効性インスリン(例えば通常のインスリン)を有する薬物−オリゴマー結合体を(連続的にまたは同時に)投与し得る。このようにして、対象のグルコースレベルは(1)迅速に制御でき、そして(2)より長時間におよび維持できる(これは速効性インスリン単独では不可能な利点である)。
0086
4.1.2 オリゴマー成分
0087
本発明の薬物−オリゴマーは、オリゴマー成分を含む。本発明のオリゴマーは、親水性成分(親水性物質)および親油性成分(親油性物質)を含む。
0088
適切な親油性成分は、例えば、天然脂肪酸またはアルキル鎖を含む。好ましくは、脂肪酸成分は、(飽和または不飽和)炭素原子を有し、適切には炭素原子数が2から28個の範囲である直鎖分子である。最も好ましくは、脂肪酸は、12から22個の炭素原子を有する。オリゴマーの親油性成分として使用できる不飽和脂肪酸は、例えば、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を含む。
0089
親水性成分は、典型的には、直鎖または分枝鎖PEGポリマーおよび/または糖である。親水性成分がPEGポリマーである場合、PEGポリマーは、好ましくは、1〜130個のPEG単位を有し、より好ましくは1〜100個のPEG単位を有する。親水性成分は、好ましくは1〜10個のPEG単位、より好ましくは2〜8個のPEG単位を有する、ポリエチレングリコール(PEG)の小セグメントである。非常に好ましい態様において、薬物はインスリンまたはインスリンの機能的等価体であり、PEGポリペプチドは3、4、5、6または7個のPEG単位を有する。
0090
親油性成分および親水性成分の長さおよび組成は、所望の親油性、親水性または両親媒性度を提供するように選択し得る。脂肪酸またはアルキル成分の炭素鎖を長くして、親油性を増加し得、一方、PEG成分を長くして親水性を増加し得る。薬物−オリゴマー結合体を経口投与する場合、薬物−オリゴマー結合体の両親媒性度を調整して、薬物−オリゴマー結合体が、腸上皮を横切って血流へと入ることを可能とすべきである。
0091
さらに、親油性成分を、非加水分解型結合により、または、容易に加水分解されない結合により、親水性成分に接続し得る。親油性物質の親水性成分を次いで、加水分解型結合により、オリゴマーの親水性成分に結合できる。例えば、CH
3(CH2)15OCH2CH2OCH2CH2OC(O)−CH2OCH2CH2C(O)−NH−タンパク質。
0092
このように、オリゴマーの親水性態様は、加水分解型結合の親油性側上の親水性部分のサイズを増加することによりバランスをとることができる。従って、本発明は、別に、以下の一般式:
D−[(H−H’q)−Lo]p(式10)
[式中、
D、HおよびLは上記した通りであり、H’は上でHについて上記した通りであり、H−H結合は加水分解型であり、H’−L結合は加水分解型ではなく、qは、1から、H’がHに付着できるH上の共有結合部位の最大数までの数であり、そして、Lは、1から、L置換基がH’に付着できる共有結合部位の最大数までの数である]
によって記載できる。この配列により、HおよびH’部分は、Hの親油性に対してLの親水性のバランスをとるように選択することが可能となり、(Dの親水性または親油性に対処するために)両親媒性結合体を製造することができ、同時に、加水分解されたD−H部分の活性を可能とするまたは保持する小さいH部分(例えばHは2〜10個のPEG単位を有する短いPEG鎖であり得る)を使用できる。別の言葉で言えば、加水分解型結合は、加水分解されたD−H部分に最大活性を与える、親水性部分に沿った任意の点に配置できる。
0093
従って、Dがインスリンである場合、H部分は、2〜7個のPEG単位、より好ましくは3、4、5または6個のPEG単位、最も好ましくは3個のPEG単位を有するPEGポリマーであることが好ましく、一方、H’は、腸壁を横断して(例えば腸の細胞の生体膜と相互作用することにより)血流に侵入することのできる両親媒性結合体が得られるような、結合体の残りの成分の親油性のバランスをとるのに必要な任意の長さであり得る。血流では、H−H’結合は加水分解され、よって非結合インスリンポリペプチドと比べて活性の向上したインスリン−PEG結合体が得られる。
0095
本発明の好ましいオリゴマーは、以下の成分から選択された成分を含む。CH
3(CH2)n(OC2H4)mOH(式3)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7である)、CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2CO2H(式4)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜6である)、CH3(CH2)nCO(OC2H4)mOH(式5)(ここでのnは3〜25であり、mは1〜7である)、R−(OC2H4)mCH2CO2H(式6)(ここでのmは0〜5であり、Rはコレステロールまたはアダマンタンである)、またはR−OCO(C2H4O)mCH2CO
2H(式7)(ここでのmは0〜5である)、CH3(CH2−CH=CH)8(CH2)2CH2(OC2H4)mOH(式8)(ここでのmは1〜7である)、CH3(CH2−CH=CH)6(CH2)2CO(OC2H4)mOH(式9)(ここでのmは1〜7である)。
0096
式5は、H−L結合が加水分解型である、H−L配置を有する、代表的なオリゴマーである。式3、4、6、7、8および9は、H−H’−L配置を有するオリゴマーのH’−L成分の代表であり、示されたようなH’−L成分は、加水分解型結合によりH成分に接続され、H−H’結合が加水分解型であるH−H’−Lオリゴマーが生じる。
0097
好ましい加水分解型結合は、例えば、エステル(親水性物質のヒドロキシル基に共有結合した親油性物質のカルボキシ基または親油性物質のヒドロキシ基に共有結合したオリゴマーのカルボキシ基)およびカーボネートを含む。加水分解型結合の使用により、D−H−LまたはD−H−H’−L結合体が腸上皮を横切って血流の親水性環境へと入る場合に、H−LまたはH−H’成分が加水分解型結合の加水分解により切断され、よって結合体のD−H成分が放出するという利点が提供される。
0098
好ましい形態において、結合体を経口投与する場合、親油性成分および親水性成分の長さおよび組成を調整して確実に、(1)結合体が腸上皮を横断するのに十分な両親媒性を有し、そして(2)一旦LまたはH’−L部分が、H−LまたはH−H’加水分解型結合の加水分解を受けると、H部分は治療部分の活性は消失しないようにし得る。さらに、Hの長さおよび組成を調整して、薬物−親水性物質結合体の薬物−親水性成分の活性を最適化し得る。
0099
D−HおよびH’−L結合は好ましくは加水分解型ではない。適切な非加水分解型結合の例は、例えば、アミド(薬物のアミン基に連結した親水性物質のカルボキシ基)およびカルバメート(薬物のアミン基に連結した親水性物質のクロロホルメート基)を含む。アミドまたはカルバメート基の付着に好ましいポリペプチド薬物のアミン基は、ポリペプチドのN末端のアミン、または、通常リジン残基のε−アミノ残基上に見出される求核性アミノ残基のアミンである。
0100
糖および他の炭水化物は、H−L、H−H’、および/またはH’−L基オリゴマーの間に簡便なスペーサー基を形成でき、よって、H−S−L、H−S−H’、および/またはH’−S−L配置がそれぞれ生じる(ここでのSはスペーサー基を示す)。これらの化合物の複数の−OH基が、複数の親油性成分における簡便な共有結合部位を形成する。好ましい炭水化物は単糖および二糖である。特に好ましいスペーサー基は、以下の例に示したようなグリセロールである。
0101
この例で、加水分解型結合は、タンパク質薬物由来のグリセリン分子の逆の側にある。従って、加水分解時に、グリセリン成分は、薬物−親水性物質結合体の一部を残し、よってD−H−SまたはD−H−S−H’配置が生じる。しかし、加水分解型結合は、スペーサー基のどちらの側にも位置し得、従って、加水分解時に、D−H配置を有する結合体が生じ得ると理解される。従って、本発明はまた、以下の一般式:
D−[(H−Sn)−Lo]p(式11)
D−[(H−Sn−H’q)−Lo]p(式12)
D−[(H−H’q−Sn)−Lo]p(式13)
[式中、
D、H、H’およびLは上記に定義した通りであり、Sは、糖、炭水化物およびグリセロールからなる群から選択されたスペーサー基であり、qは、1から、H上の共有結合部位の最大数までの数であり、nは、0から、H’上の共有結合部位の最大数までの数であり、oは、1から、Sが存在する場合S上の、Sが存在しない場合H’上の、共有結合部位の最大数までの数であり、そして、pは、1から、D上の共有結合部位の最大数までの数であり、Sが存在しない場合、LはHまたはH’に付着している(それぞれ式1および2のように)]
を有する結合体も提供する。式11、12および13の各々は、少なくとも1つの加水分解型結合を有する。式11では、加水分解型結合は、S−LまたはS−Hであり得、式12では、加水分解型結合は、S−HまたはS−H’であり得、式13では、加水分解型結合はH−H’である。
0102
4.2 薬物−オリゴマー結合体の調製
0103
4.2.1 薬物−オリゴマー結合体のポリペプチド成分の調製
0104
本発明の薬物成分がポリペプチドである場合、ポリペプチドは、当分野で公知の任意の方法に従って調製し得る。組換え法に加えて、ポリペプチド成分は、当分野で公知の合成技術により、例えば、ポリペプチド合成機の使用により、または当分野で公知の他の標準的な化学的方法により製造し得る(例えば、Hunkapiller,Mら、1984、Nature 310:105〜111、Clark−Lewisら、1991、Biochem.30:3128〜3135およびMerrifield、1963、J.Amer.Chem.Soc.85:2149〜2156参照)。例えば、ポリペプチドは、固相技術により合成し、レジンから切断し、分取高速液体クロマトグラフィーにより精製できる(例えば、Creighton、1983、タンパク質、構造および分子原理、W.H.Freemanおよび共同研究者、N.Y.50〜60項参照)。ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンス(例えばエドマン分解法、Creighton、1983、タンパク質、構造および分子原理、W.H.Freemanおよび共同研究者、N.Y.34〜49項参照)またはタンパク質マッピングにより確認し得る。本発明のポリペプチドは、全体を、アミノ酸残基の連続的付加により、または別に、断片縮合などの当分野で公知の技術を使用して合体し得る断片サブ成分として合成し得る(Shinら、1992、Biosci.Biotech.Biochem.56:404〜408、Nufelerら、1992、ペプチド、Proc.12th Amer.Pep.Soc.SmithおよびRivier(編)、Leiden、661〜663項、およびNokiharaら、1990、タンパク質研究基金、Yanaihara(編)、大阪、315〜320項)。別の実施形態において、天然ポリペプチドを、標準的な方法(例えばイムノアフィニティー精製)を使用して天然源から精製できる。
0105
新しく合成されたポリペプチドは、任意の利用可能な方法を使用して、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)またはポリペプチドのサイズまたは荷電に基づいた他の分離法を使用して精製できる。さらに、精製ポリペプチドは、これらおよびアミノ酸分析および質量分析などの他の公知の方法を使用して特徴づけることができる。
0106
本発明の薬物−オリゴマー結合体の薬物成分を修飾して、オリゴマー成分へのカップリングを促進できる。薬物成分がポリペプチドである場合、官能基をポリペプチドのC末端またはN末端に、またはオリゴマーの付着点を提供するためにポリペプチドの側鎖に付加し得る。例えば、プロリンまたはアラニン残基を、治療ポリペプチドのN末端に付加して、オリゴマー成分の付着を促進できる。適切な修飾は、薬物の活性を消失しないものである。
0108
従って、例えば、ポリペプチド薬物内の1つ以上のアミノ酸を、例えば、1つ以上のアミノ酸の保存的アミノ酸置換により、修飾または置換できる。保存的アミノ酸置換変化は、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸に置換、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換、または、NleをLeuに、またはオルニチン(Orn)またはホモアルギニン(homoArg)をArgになどの非天然アミノ酸の使用を含む、当分野で公知の他の保存的置換を含み得る。
0109
上記のタイプの修飾または置換に加えて、別様にはポリペプチド模倣体またはペプチド模倣体としても知られる、1つ以上のアミノ酸の模倣体も使用できる。本明細書に使用したような「模倣体」なる語は、アミノ酸と同じまたは類似の機能的特徴を有するアミノ酸またはアミノ酸類似体を意味する。従って、例えば、(D)アルギニン類似体は、この類似体が、アルギニンのグアニジニウム側鎖反応基の特徴であるような、生理的pHで正の荷電を有する側鎖を含む場合には、(D)アルギニンの模倣体であり得る。ポリペプチド模倣体またはペプチド模倣体は、対応するポリペプチドに存在するのと類似したポリペプチド鎖ファルマコフォア基を保持する有機分子である。
0110
上記したような非天然アミノ酸およびペプチド模倣体によるアミノ酸の置換は、側鎖官能基への修飾に基づいて個々のポリペプチドの全体的な活性または特性を増強し得る。例えば、これらのタイプの変化は、本発明のオリゴマー成分と共に使用して、酵素的分解に対するポリペプチドの抵抗性をさらに増強および/または生物活性を向上することができる。
0111
4.2.2 薬物−オリゴマー結合体の合成
0113
脂肪酸およびポリエチレングリコールを含むオリゴマーの合成において、エチレングリコールを、加水分解型エステル結合で脂肪酸に接続する場合、脂肪酸の酸クロリドまたはその酸無水物で始めることが望ましい。次いで、末端に2つの遊離ヒドロキシルを有する所望のポリエチレングリコールを、不活性溶媒中で、等モル当量の酸クロリドまたは酸無水物で処理する。グリコール単位を最初に不活性溶媒中に溶かし、酸クロリドまたは酸無水物を添加する前に有機塩基で処理する。生成物を反応媒体から抽出し、さらにカラムクロマトグラフィーを使用して精製する。
CH3(CH2)nCOCl+HOCH2CH2(OC2H4)mOH
↓
CH3(CH2)nCO(OC2H4)mOH
0114
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
0115
いくつかの場合では、アミドなどの、より強力な加水分解型結合を有するオリゴマーを調製することが望ましい。選択した脂肪酸の酸クロリドまたは酸無水物を、ポリエチレングリコールのアミノ誘導体で、制御された反応条件で処理し、アミノ残基のみに影響を及ぼし、ヒドロキシ部分には影響を及ぼさない。選択性はまた、脂肪酸を、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換し、ポリエチレングリコールのアミノ残基と反応することにより確認できる。
CH3(CH2)nCOCl+NH2CH2CH2(OC2H4)mOH
↓ピリジン
CH3(CH2)nCONHCH2CH2(OC2H4)mOH
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
CH3(CH2)nCOONSU+NH2CH2CH2(OC2H4)mOH
↓THF/TEA
CH3(CH2)nCONHCH2CH2(OC2H4)mOH
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
0116
オリゴマーは、オリゴマーの遊離ヒドロキシル部分を、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NSU)に変換することにより、ペプチド薬物にカップリングできる。N−ヒドロキシスクシンイミド基は、ペプチドの求核性アミノ残基と容易に反応する。
0117
CH3(CH2)mCONHCH2CH2(OC2H4)nOCONSU+ペプチド
↓
0118
CH3(CH2)mCONHCH2CH2(OC2H4)OCO−ペプチド
0119
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
0120
オリゴマーの親油性部分がエステル結合により親水性部分に接続されたオリゴマーの合成において、所望のポリエチレングリコール(親水性物質)を最初に保護する。末端の2つの遊離ヒドロキシルの1つを、ピリジン中トリチル基で、1モルの塩化トリチルを使用して保護する。保護されたポリエチレングリコールを適切な不活性溶媒に溶かし、水素化ナトリウムで処理する。親油性部分のブロモまたはトシレート誘導体を不活性溶媒に溶かし、保護されたポリエチレングリコールの溶液に加える。生成物を、無水不活性溶媒中、室温で、p−トルエンスルホン酸溶液で処理する。所望の生成物を不活性溶媒中で抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製する。転換物の構造を以下に示す。
CH3(CH2)nBr+HO(C2H4O)mトリチル
↓NaH THF
CH3(CH2)n(OC2H4)Omトリチル
↓P−TSA
CH3(CH2)n(OC2H4)mOH
0121
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
0123
オリゴマーの親油性部分がエーテル結合により親水性部分に接続し、末端がカルボン酸部分であるオリゴマーの合成において、カルボン酸基を保護することが望ましい。一端に遊離ヒドロキシル基および他端にカルボン酸基を有するポリエチレングリコールを選択する。カルボン酸基を、エステル化により保護する。保護されたポリエチレングリコールを適切な不活性溶媒(例えばTHF)に溶かし、水素化ナトリウムで処理する。親油性部分のブロモまたはトシレート誘導体を不活性溶媒に溶かし、保護されたポリエチレングリコール溶液に加える。生成物を、水酸化ナトリウム溶液で処理し、遊離酸を遊離する。所望の生成物を不活性溶媒中で抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製する。転換物の構造を以下に示す。
0124
CH3(CH2)nBr+HO(C2H4O)mCH2CO2C2H5
↓NaH THF
0125
CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2CO2C2H5
↓NaOH
0126
CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2CO2H
0127
ここでのnは0〜24であり、mは2〜130である。
0128
親油性部分は、好ましくは、アルキル、コレステロールおよびアダマンチル部分からなる群から選択される。
0129
酸性オリゴマーのこの基は、最初にカルボン酸基をN−ヒドロキシスクシンイミド(NSU)と反応させて、容易に脱離可能な基を形成することにより、ペプチド薬物にカップリングできる。次いで、不活性溶媒中の活性化オリゴマー溶液を、適切な溶媒に溶かした所望のペプチド薬物で処理する。逆添加を選択し得る。
0130
CH3(CH2)n(OC2H4)mOCH2COH2+NSU
↓DCC
0131
CH3(CH2)n(OC2H4)mOCHCO2NSU
↓ペプチド−薬物
0132
CH3(CH2)n(OC2H4)OCH2CO−ペプチド
0133
時に、親油性部分を、親油性糖で置換することが望ましい。糖部分は、最初に、所望の脂肪酸クロリドでエステル化し、選択的または部分的にアシル化する。生成物を不活性溶媒中で、ポリエチレングリコールの所望のジカルボン酸誘導体の二酸クロリドで処理する。
0134
反応は、各反応部分の1モル当量を用いて実施する。この反応により、酸クロリドを有する親水性物質一端が残り、これをさらにN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換する。活性化エステルを、適切な不活性溶媒中でペプチド薬物と反応させる。
0135
Rは、脂肪酸、アルキル1〜26、コレステロールおよびアダマンタンからなる群から選択され、mは、1〜130の数である。
0136
4.3 治療法
0138
本発明の1つの実施形態は、治療有効量の本発明の薬物−オリゴマー結合体を含む医薬組成物を投与する方法を提供する。
0139
導入法は、経口、非経口、直腸、局所、舌下、粘膜、鼻腔、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、脊髄、くも膜下腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ、および子宮内投与を含むがこれに限定されない。結合体は、任意の簡便な経路により、例えば、点滴またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜裏打ちを通した吸収(例えば口粘膜、直腸および腸粘膜等)により投与し得、他の生物学的に活性な物質と共に投与し得る。好ましい経路は、経口および非経口であり、最も好ましいのは経口である。投与は全身性または局所性であり得る。
0140
特定の環境では、本発明の医薬組成物を、直接中枢神経系に、脳室内およびくも膜下腔内注射を含む任意の適切な経路により導入することが望ましくあり得、脳室内注射は、例えば、Ommayaレザバーなどのレザバーに付着した、脳室内カテーテルにより促進し得る。
0142
別の実施形態において、結合体は、放出制御系で送達できる。1つの実施形態において、ポンプを使用し得る(Langer、上記、Sefton、CRCCrit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987)、Buchwaldら、Surgery 88:507(1980)、Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)参照)。さらに別の実施形態において、放出制御系は、治療標的の近くに、すなわち脳に配置でき、よって、全身投与量の一部しか必要でない(例えば、Goodson、放出制御の医学適用、上記、第2巻、115〜138項(1984)参照)。他の放出制御系は、Langer(Science 249:1527〜1533(1990))による総説に議論されている。
0143
対象は、好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ等の動物を含むがこれに限定されない動物であり、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
0144
4.4 医薬組成物
0145
本発明は、獣医学的および医学的用途の医薬組成物の使用を考える。医薬組成物は、一般に、治療成分として、1つ以上の薬物−オリゴマー結合体を含む。かかる医薬組成物は、医薬的に有効な担体を含み得、所望により、他の治療成分も含み得る。担体または担体群は、治療成分(群)と適合性であり、そのレシピエントに過度に有害ではない意味で医薬的に許容されなければならない。適合性担体は、治療成分(群)の活性を消失しないものである。好ましい担体は、治療成分(群)の活性を有意に消失しないものである。治療成分(群)は治療有効量で提供される。
0146
好ましい態様において、医薬組成物の治療成分(群)は、インスリン−PEG
1〜10−親油性結合体を含む。
0148
様々な送達系が公知であり、本発明の結合体、例えば封入マイクロカプセルの投与に使用できる。本発明により好ましい医薬製剤は、エマルジョンおよびマイクロエマルジョンを含む。最も好ましいのはマイクロエマルジョンである。
0149
「担体」なる語は、結合体と共に投与する、希釈剤、アジュバント、添加剤、または他のベヒクルを意味する。かかる医薬担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油エーテル、動物、植物または合成起源のものを含む、水および油などの無菌液体であり得る。適切な医薬担体の他の例は、E.W.Martinによる「レミントンの医薬科学」に記載されている。適切な医薬添加剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含む。
0150
好ましい実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として、慣用的な手順に従って製剤化する。医薬組成物を静脈内投与する場合には水が好ましい担体である。食塩水溶液およびデキストロースおおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射溶液用に使用できる。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水中の溶液である。必要であれば、組成物はまた、可溶化剤並びに注射部位の疼痛を和らげるリドカインなどの局所麻酔剤を含み得る。一般に、成分は、別々に供給されるか、または、活性物質の量を表示するアンプルまたはサッシェなどの、密封容器中の乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、単位投与形で共に混合されている。
0151
組成物を点滴により投与したい場合、無菌で医薬等級の水または食塩水を含む点滴瓶を用いて施薬できる。組成物を注射により投与する場合、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを、成分を投与前に混合できるように提供することができる。経口製剤は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリド、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含み得る。
0153
組成物は、溶液、懸濁液、シロップ、エマルジョン、マイクロエマルジョン、エリキシル、錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、散剤、持続放出製剤等の形をとることができる。組成物はまた、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に、坐剤として製剤化できる。坐剤は、一般に、0.5から10重量%の活性成分を含み、経口製剤は、好ましくは、10%から95%の活性成分を含む。
0154
好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンとして製剤化され、マイクロエマルジョンが特に好ましい。
0155
エマルジョンは、混和しない液体(例えば油および水)を含むコロイド状の分散液であり、その一方が、他方内において液滴として分散している(Block,Lら、「医薬エマルジョンおよびマイクロエマルジョン」、医薬投与形:分散系、第2巻、47〜109項(1996))。エマルジョンは、一般に、エマルジョン成分を、摩砕または粉砕プロセスにかけることにより調製される。エマルジョンは、非連続的または内部の相がそれ自体、乳化系を含む、2相エマルジョンの伸展した系を含む。各内部相は、次いで、多分散して、3次、4次、またはより高次のエマルジョンが生成する。それ故、本発明に有用なエマルジョンは、例えば、W/O、O/W、W/O/W、O/W/O等を含む。本発明のエマルジョン組成物はまた、第三の非液体相、例えば、固体粒子またはリオトロピック液晶を含む相を含み得る。
0156
マイクロエマルジョンは、一般に、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定な液体である、水、油および両親媒性物の系として定義される。マイクロエマルジョンは、一般に、最初に油を界面活性剤水溶液に溶かし、次いで、十分量の中間体鎖状アルコールを添加して、透明な系を形成することにより調製される。
0157
多種多様の極性および非極性化学成分が、エマルジョンの非混和相として使用するのに利用できる。極性成分は、例えば、ポリオール(例えばブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)および水を含む。非極性成分は、例えばエステル(例えば、脂肪、ラノリン、ミリスチル酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノステアリン酸グリセリルおよび植物油)、エーテル(例えばペルフルオロポリエーテルおよびポリオキシプロピレン)、脂肪酸、脂肪アルコール、炭化水素(例えばブタン、プロパン、微結晶ワックス、鉱油、石油エーテルおよびスクアレン)、ハロ炭化水素(例えばペルフルオロカーボンおよびクロロフルオロカーボン)、植物および動物ワックス、およびシリコン液体を含む。
0159
本発明のエマルジョンおよびマイクロエマルジョンにおいて、相連続性を破壊するのに必要なエネルギーを減少させ、腸表面張力を下げることにより完全な相分散を達成するのに、界面活性剤は有用である。本発明のエマルジョン組成物に使用するに適切な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、両性、および非イオン性界面活性剤を含み得る。好ましい界面活性剤は、6〜20の範囲の親水性−親油性バランス(HLB)を有するものであり、より好ましいのは、8〜20の範囲のHLBを有するものであり、さらにより好ましいのは、10〜20の範囲のHLBを有するものであり、最も好ましいのは13〜20の範囲のHLBを有するものである。別に、好ましい界面活性剤は、安定で半透明から透明の溶液が生じるものであり、最も好ましいのは、透明な溶液が生じるものである。
0160
適切なエマルジョン安定化剤は、例えば、親油性コロイド、多糖、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアールガム、カラヤガム、トラガカント、キサンタンガム、クレイ、微結晶セルロース、酸化物および水酸化物、発熱性またはヒュームドシリカ、ゼラチン、カルボマーレジン、セルロースエーテル等を含む。
0161
保存剤(例えば抗微生物剤)および抗酸化剤(例えばクエン酸、EDTA、フェニルアラニン、リン酸、酒石酸、トリプトファン、アスコルビン酸、重硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム)を、本発明のエマルジョンおよびマイクロエマルジョンに使用し得る。
0162
投与形態および投与形は、勿論、特定の処置適用に望ましくかつ効果的である治療量の化合物に影響を及ぼす。治療有効量は、レシピエントの体重および健康、投与形態および処置する病状の種類などの因子に基づいて変化することは当業者に容易に理解されるだろう。
0163
例えば、インスリン結合体の適切な投与量は、一般に、0.1mgから5mg/kg、好ましくは0.1mg/kgから2mg/kg、より好ましくは0.2mg/kgから0.3mg/kgの範囲であり得る。効果的な投与量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定し得る。
0165
本発明の薬物−オリゴマー結合体は、中性すなわち塩形として製剤化できる。医薬的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から得られた塩などの遊離アミノ基を用いて形成された塩、および、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の遊離カルボキシル基を用いて形成された塩を含む。
0166
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1つ以上で充填された、1つ以上の容器を含む、医薬パックまたはキットを提供する。医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制している政府機関により規定された形の注意書きを、所望により、かかる容器(群)に添えることができる。かかる注意書きは、ヒト投与用の製造、使用または販売について機関による認可を反映し得る。
0167
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態により範囲を限定されない。実際、本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な変形が、前記および添付の図面から当業者には明らかとなろう。かかる変形は、添付の特許請求の範囲内に該当すると捉えられる。
0168
本明細書の全体を通じて、様々な特許および特許でない参考文献に言及している。これらの各参考文献の全開示を、本明細書の記載の一部として援用し、以下の各々の参考文献の全開示も同様である。1997年10月28日に発行された題名「結合安定化治療剤」の米国特許第5,681,811号、1995年8月1日に発行された題名「結合安定化ポリペプチド組成物、治療送達およびそれを含む診断製剤、および、それを製造および使用する方法」の米国特許第5,438,040号、1994年10月25日に発行された題名「結合安定化ポリペプチド組成物、治療送達およびそれを含む診断製剤、および、それを製造および使用する方法」の米国特許第5,359,030号、1997年10月27日に提出された題名「親水性および親油性のバランスのとれた遊離形のマイクロエマルジョン製剤および/またはインスリンなどの結合安定化治療剤」の米国特許出願番号第08/958,383号、1998年8月14日に提出された題名「血液脳関門治療薬」の米国特許出願番号第09/134,803号、Chien,Y.W.ら、Drug.Dev.Ind.Pharm.15:1601〜1634(1989)、Radhakrishnan,Bら、Proc.Int’l Symp.Control.Rel.Bioactive Mater.25:124〜125(1998)、およびEkwuribe,N.AAPSAnn.Meeting 妙禄.S−102−S−103(1998)。
0169
5.実施例
0171
5.1加水分解型および非加水分解型オリゴマーインスリンの合成および特徴づけ
0172
加水分解型オリゴマーを、脂肪酸クロリドを等モルのポリエチレングリコールとカップリングすることにより合成した。非加水分解型オリゴマーは、アルキルブロミドを、適切なポリエチレングリコールの一ナトリウム塩とカップリングすることにより合成した。オリゴマーを、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化し、インスリンにカップリングし、精製し、MALDI(TOF)−MSにより特徴づけて、1モルのインスリン上のオリゴマーの数を決定した。基本的な合成スキームを図1に示す。
0173
5.2トリエチレングリコールおよびPEG9
0174
トリエチレングリコール(100g、0.67モル)を、エーレンマイヤーフラスコに秤量し、塩化メチレンに溶かし、MgSO4で処理した。MgSO4を、セライトを有する半融ガラス漏斗を使用してろ過した。塩化メチレンを除去し、組成物を高真空でP2O5上で一晩乾燥した。
0175
撹拌棒、硫酸カルシウム管および滴下漏斗を具備した清潔で乾燥した2口の丸底フラスコに、乾燥トリエチレングリコール(49.72g、0.33モル)を、フラスコに秤量し、無水THF(200ml)を加えた。1モル当量のトリエチルアミン(15.8ml、0.11モル)を容器に加えた。反応フラスコを5℃まで冷却した。滴下漏斗から、塩化オレオイル(33.10g、0.11モル)を10分間かけてTHFの2倍の容量を滴下して加えた。添加後、反応液を3時間撹拌し、沈降物が形成した。
0179
2口フラスコに、オレエートPEG3(2.0g、4.8ミリモル)を秤量した。塩化メチレンを加え、撹拌して、ポリマーを溶かした。トリエチルアミン(0.7ml、4.9ミリモル)を加え、反応混合物を冷却した。反応容器を十分に冷却し、塩化メチレンに溶かした4−ニトロフェニルクロロホルメート(1.0g、4.9ミリモル)をゆっくりと加えると、発熱反応が生じた。反応液を室温で6時間撹拌した。6時間後、塩化メチレンを回転蒸発により除去した。エーテルをフラスコに加え、沈降物が形成した。溶液をろ過して、沈降物を除去した。ろ液をMgSO4で乾燥し、次いでエーテルをろ過し、除去すると、オレンジ色−黄色の油状物が得られた。
0181
インスリン(1.503g、0.26ミリモル)を、撹拌棒を具備した丸底フラスコに秤量した。撹拌しながら、DMSO(5ml)を注意して加え、溶けるまで撹拌した。トリエチルアミン(2.08ミリモル)を加え、10分間撹拌した。最少量のDMSO(2ml)中の活性化オレエートトリエチレングリコールを注意して一度に加え、3時間室温で撹拌した。反応液をHPLCにより30分毎にモニタリングした。結合体を分取HPLCを使用して精製した。
0182
5.2.1ラウレートおよびオレエートPEGn
0183
ポリマー(市販されている)を塩化メチレンに溶かし、飽和NaCl(3×50ml)、重炭酸ナトリウム(3×50ml)および脱イオン水(3×50ml)で洗浄して、全ての遊離PEGを除去した。溶液を、トリエチレングリコールについて上記したように乾燥した。
0184
2口フラスコに、ラウレートPEG5(21.72g、54.3ミリモル)を秤量した。塩化メチレンを加え、撹拌してポリマーを溶かした。次に、トリエチルアミン(7.56ml、54.3ミリモル)を加え、反応混合物を冷却し、4−ニトロフェニルクロロホルメート(10.72g、53.0ミリモル)を加えた。一旦添加が完了すると、反応液を室温で6時間撹拌した。6時間後、塩化メチレンを回転蒸発により除去した。エーテルをフラスコに加え、沈降物が形成し、ろ過した。ろ液をMgSO4で乾燥し、ろ過し、溶媒を除去した。オレンジ色−黄色の油状物が得られた。
0185
perstalticポンプ2.5cm×26.5cmを具備した、C18逆相カラムを、溶出液としてイソプロパノール中30%脱イオン水を使用して調製した。
0186
インスリン(1.52g、0.262ミリモル)を、撹拌棒と共に丸底フラスコに秤量した。DMSO(5ml)を注意して撹拌しながら加えた。トリエチルアミン(2.1ミリモル)を加え、10分間撹拌した。活性化ラウレートPEG
5(0.152g、0.262ミリモル)を最小量のDMSO(2ml)に溶かした。これを注意して一度に加え、3時間室温で撹拌した。反応液をHPLCにより30分毎にモニタリングした。結合体を分取HPLCにより30分毎にモニタリングした。結合体を、HPLC VydacC18HPLC22idmm×250mmlを使用して精製した。
0187
5.3加水分解型TEGインスリンに使用する製剤の調製
0188
最初に、以下の組成を有するブランクのマイクロエマルジョンを調製した。
0189
5.3.1ブランクマイクロエマルジョンの調製
0190
ブランクマイクロエマルジョンを、5段階手順を使用して、重量対重量の基準で調製した。
0191
段階1油混合物の調製:大豆油、CapmulMCM、ヒマワリ油、メチルパラベンNF、プロピルパラベンNFおよびL−アスコルビン酸パルミテートNFの混合物を50℃で窒素下で10分間超音波にかけると、透明で黄色の溶液が得られた。
0193
段階3 100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)の調製:リン酸一ナトリウム無水およびリン酸二ナトリウム無水を、脱イオン水に溶かし、溶液を0.2μmフィルターを通してろ過した。溶液の最終pHは約7.4であった。
0194
段階4最終製剤の調製:ヘキシルインスリンM2を、リン酸ナトリウム緩衝液、無菌水、ゼラチン溶液および乳化混合物を含む、無菌150mlバイアルに溶かした。段階1の油混合物を滴下して上記の混合物に加えた。窒素を頭隙に噴霧し、バイアルをテフロン(登録商標)で被膜した底栓で封をした。溶液を室温
で2分間超音波にかけた。最終組成物は透明な溶液であった。
0196
5.3.2インスリンTEGオリゴマーの調製
0197
このシリーズに使用した全ての化合物は、水溶解度が低い。
0198
製剤化されたインスリンTEGオレエート混合物の調製:58.6mg(85%純度)のTEGオレエート混合物を、5mlのME365ブランクマイクロエマルジョンに溶かした。
0199
マイクロエマルジョンでのインスリンPEG3オレエートモノ結合体(M1+M2)混合物の調製:65.8mg(85%純度)を、12.5g(12ml)の製剤4.23mg/mlに溶かした。
0200
マイクロエマルジョンでのインスリンTEGオクタノエート混合物の調製:57.3mg(85%純度)を5mlの製剤に溶かした。
0201
マイクロエマルジョンでのインスリンTEGパルミテート混合物の調製:58.9mg(85%純度)を5mlの製剤に溶かした。
0202
マイクロエマルジョンでのインスリンPEG9オレエートモノ結合体(M1+M2)混合物の調製:2mg(85%純度)を0.2mlの製剤9.17mg/mlに溶かした。
0203
マイクロエマルジョンでのインスリンPEG9オレエートジ結合体の調製:2mg(85%純度)を0.2mlの製剤5.78mg/mlに溶かした。
0204
インスリンTEGDHA結合体混合物の調製:70mgのモノおよびジ結合体混合物を50mlのブランクエマルジョンに溶かした。
0205
5.4効力評価
0206
5匹の雄CF−1マウス(約25gで断食していない)の6対の投与量群が、ウシインスリンまたは修飾インスリンの皮下注射を受けた。実験前および実験後の基線は、2つのベヒクル群を用いて確立した。追加の25μg/kgのインスリン投与量群は内部対照として作用した。マウスを、投与30分後に末端を出血させ、血中グルコースを血糖計(ONE TOUCH(登録商標))を用いて測定した。次いで、修飾インスリンの生物効力を、ウシインスリン標準曲線と比較して計算した。計算は、ウシインスリンが27.5IU/mgの効力を有するという仮定に基づいた。
0207
5.5糖尿病イヌの評価
0208
2匹のイヌを、各化合物について使用した。化合物を、油中水滴型エマルジョンで製剤化し、1〜2mg/kgの投与量で評価した。20mlの製剤を各イヌに経口投与し、製剤の後に20mlの水を飲んだ。血漿中グルコースおよびインスリンレベルを様々な時間間隔でモニタリングした。
0209
ここでのRは−OC(O)C(CH3)3である。
0210
5.6 結果および考察
0211
効力評価:加水分解型および非加水分解型結合体の活性の比較により、加水分解型エステル結合をもつ結合体は、良好なインビボ生物活性を生じることが示される(表2)。活性は、化学的または生物学的加水分解により脂肪酸部分を欠失したインスリン結合体から生じる。緩衝液に試料を長く保存すると、活性は増加する。HPLC分析により、脂肪酸部分は加水分解されることが判明する。長鎖脂肪酸および短鎖PEGをもつ非加水分解型結合体は、無視できる活性を生じる。