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技術 遅延引き出し付きタンデム飛行時間型質量分析計および使用方法

出願人 パーセプティブバイオシステムズ,インコーポレイテッド
発明者 マービンエル.ベスタル
出願日 1999年2月5日 (21年1ヶ月経過) 出願番号 2003-126506
公開日 2003年12月5日 (16年3ヶ月経過) 公開番号 2003-346705
状態 特許登録済
技術分野 その他の電気的手段による材料の調査、分析 計測用電子管
主要キーワード パルス引 入口アパーチャ 出口アパーチャ 中央アパーチャ イオン分析器 遅延発生器 高電圧接続 サンプル電圧
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (14)

課題

サンプルの分子量に関して優れたデータを提供するのみならず、分子構造の情報を提供し、ペプチドまたはオリゴヌクレオチド配列決定などの生物学的適用に必要な感度および分解能を提供する。

解決手段

本発明に従って、パルス化イオン発生器と、パルス化イオン発生器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と、フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを有する、タンデム飛行時間型質量分析計を提供する。

概要

背景

(発明の背景質量分析計は、サンプルを気化してイオン化し、得られたイオン質量電荷比を決定する。1つの形態の質量分析計は、電場の影響下において、与えられたイオン、すなわちイオン化され気化したサンプルがイオン源から検出器まで移動するために要する時間を測定することにより、イオンの質量電荷比を決定する。与えられた強度の電場においてイオンが検出器に到達するために要する時間は、質量の一次関数であり電荷逆関数である。この形態の質量分析計は飛行時間型質量分析計と呼ばれる。

最近、特に、比較的不揮発性生物分子分析、ならびに高速度、高感度および/または広い質量範囲を必要とする他の適用分野において、飛行時間(TOF)型質量分析計が広く受け入れられるようになってきた。マトリクス支援レーザソープション/イオン化(MALDI)および電子スプレーESI)などの新しいイオン化技術は、気相で完全な分子イオンを生成するようにされ得る、分子の質量範囲を大幅に拡大し、TOFはこれらの適用分野において独自の利点を有する。例えば米国特許第5,625,184号および第5,627,360号に記載の遅延引き出しの最近の開発は、高分解能で精密な質量測定をMALDI−TOFで日常的に使用可能にし、パルス化引き出しによる直交注入は、ESI−TOFに対して同様の性能向上を提供している。

これらの技術は、サンプルの分子量に関して優れたデータを提供するが、分子構造に関してはほとんど情報を提供しない。従来、タンデム質量分析計(MS−MS)は、構造情報を提供するために用いられてきた。MS−MS装置において、第1の質量分析器が、注目する一次イオン、例えば、特定のサンプルの分子イオンを選択するために用いられる。内部エネルギを増加させることにより、例えばイオンを中性分子衝突させることにより、そのイオンがフラグメントされる。その後フラグメントイオンスペクトルが、第2の質量分析器によって分析され、一次イオンの構造はしばしば、フラグメンテーションパターン解釈することにより決定され得る。MALDI−TOFにおいて、ポストソース分解(PSD)として知られる技術が用いられ得るが、フラグメンテーションスペクトルはしばしば弱く、解釈することが困難である。イオンが中性分子と高エネルギ衝突する衝突セルを追加することは、低質量フラグメントイオンの生成を向上させ、ある程度の追加のフラグメンテーションを引き起こす。しかし、そのスペクトルは解釈が困難である。直交ESI−TOFにおいて、フラグメンテーションは、大気圧電子スプレーと排気された質量分析計との間の界面でエネルギ衝突を引き起こすことにより起こるが、今のところ特定の一次イオンを選択する手段はない。

タンデム質量分析法の最も一般的な形態は、一次イオンが第1の四重極により選択され、フラグメントイオンスペクトルが第3の四重極を走査することにより分析される、トリプル四重極である。第2の四重極は典型的には、複数の低エネルギ衝突が起こるのに十分高い圧力および電圧に維持されている。得られたスペクトルは概して、解釈が容易であり、例えば、このようなスペクトルからペプチドアミノ酸配列を決定する技術が開発されている。最近、第3の四重極が飛行時間型分析器に置きかえられたハイブリッド装置が記載されている。

一次イオンの選択とフラグメントイオンの分析および検出との両方に飛行時間技術を用いるいくつかのアプローチが、これまでに記載されている。例えば、表面誘起解離(SID)を用いた、2つの線形飛行時間型質量分析器を組み込んだタンデム装置が、生成品としてのイオンを生成するために用いられてきた。後に開発されたバージョンにおいて、第2の質量分析器にイオンミラーが追加された。米国特許第5,206,508号は、線形または反射型分析器を用いたタンデム質量分析計を開示している。このタンデム質量分析計は、互いに異なる質量を有する親イオンの分離を必要とすることなく、各親イオンに関してタンデム質量スペクトルを得ることができる。米国特許第5,202,563号は、接地された真空ハウジングと、フラグメンテーションチャンバを介して連結された2つの反射型質量分析器と、接地された真空ハウジングに対して電気的に浮遊している飛行チャネルとを含むタンデム飛行時間型質量分析計を開示している。これらのデバイスの適用は概して、比較的小さい分子に限られており、ペプチドまたはオリゴヌクレオチド配列決定などの生物学的適用に必要な感度および分解能を提供するものはないと考えられる。

タンデム質量分析法によるペプチドの配列決定および構造決定にとって、両方の質量分析器は、注目する質量範囲に亘って、少なくとも単位質量分解能と良好なイオン伝達とを有していなければならない。分子量1000を超えると、この要件は、高質量範囲を有する2つの二重焦点磁気偏向質量分析計からなるMS−MSシステムによって最も良好に満たされる。これらの装置は最高の質量範囲と質量精度とを提供するが、飛行時間に比べると感度に限度があり、MALDIおよび電子スプレーなどの最新のイオン化技術による使用には容易に適応可能でない。これらの装置はさらに、非常に複雑であり高価である。

概要

サンプルの分子量に関して優れたデータを提供するのみならず、分子構造の情報を提供し、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドの配列決定などの生物学的適用に必要な感度および分解能を提供する。

本発明に従って、パルス化イオン発生器と、パルス化イオン発生器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と、フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを有する、タンデム飛行時間型質量分析計を提供する。

目的

従って、本発明は、パルス化イオン発生器と、パルス化イオン発生器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と、フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを有する、タンデム飛行時間型質量分析計を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
7件
牽制数
5件

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請求項1

a)第1の実質的に電場を有さない領域にイオンを引き出し、所定の質量電荷比範囲のイオンを焦点面上に集束させるように位置された第1のタイミング制御イオン引き出し器に結合された、パルス化イオン源と;b)該第1の実質的に電場を有さない領域と流体連絡する、イオンフラグメント器と;c)該イオンフラグメント器と流体連絡する、第2の実質的に電場を有さない領域と;d)該イオンフラグメント器と、該第2の実質的に電場を有さない領域との間に位置された第2のタイミング制御イオン引き出し器であって、該第2のタイミング制御イオン引き出し器は、所定の時間後に、イオンおよびそのフラグメントイオンを、該イオンフラグメント器から該第2の実質的に電場を有さない領域へと加速するように位置された、第2のタイミング制御イオン引き出し器と;e)該第2の実質的に電場を有さない領域と流体連絡するイオンミラーであって、該イオンミラーは、該第2のタイミング制御イオン引き出し器によって該第2の実質的に電場を有さない領域へと加速された該フラグメントイオンの少なくとも一部を、イオン検出器上に集束させるように位置された、イオンミラーと;を備える、タンデム飛行時間型質量分析計

請求項2

前記パルス化イオン源は、マトリックス支援レーザソープションイオン化(MALDI)イオン源包含する、請求項1に記載の質量分析計

請求項3

前記パルス化イオン源は、電場を有さない領域中にイオンを注入するインジェクタおよび、注入方向に対して実質的に直交である方向に該イオンを引き出すように位置された第1のタイミング制御イオン引き出し器を包含する、請求項1に記載の質量分析計。

請求項4

前記パルス化イオン源からイオンを受け取るように位置されたタイミング制御イオンセレクタをさらに備える請求項1に記載の質量分析計であって、該タイミング制御イオンセレクタは、所定の質量電荷比範囲のイオンのみが前記イオンフラグメント器まで移動することを可能にする、質量分析計。

請求項5

前記タイミング制御イオンセレクタは、イオンデフレクタを包含する、請求項4に記載の質量分析計。

請求項6

前記イオンデフレクタは、電位差が印加される1対の偏向電極を包含し、該電位差は、前記所定の質量電荷比範囲内のイオンが該電極間を通過する時間区間中以外において、イオンが前記イオンフラグメント器に到達することを防ぐ、請求項5に記載の質量分析計。

請求項7

前記イオンデフレクタは2対の偏向電極を包含し、より低い質量電荷比のイオンが前記イオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第1の偏向電極対に印加され、より高い質量電荷比のイオンが該イオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第2の偏向電極対に印加される、請求項4に記載の質量分析計。

請求項8

前記タイミング制御イオンセレクタは、前記第1の実質的に電場を有さない領域内に位置された、請求項4に記載の質量分析計。

請求項9

前記第1の実質的に電場を有さない領域は、ドリフト管を備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項10

前記第1の実質的に電場を有さない領域内に位置されたイオンガイドをさらに備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項11

前記イオンガイドはガイドワイヤを包含する、請求項10に記載の質量分析計。

請求項12

前記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、該複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、該複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加される、請求項10に記載の質量分析計。

請求項13

前記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含する、請求項10に記載の質量分析計。

請求項14

実質的に電場を有さない領域は、前記イオンフラグメント器と、前記第2のタイミング制御イオン引き出し器との間に位置された、請求項1に記載の質量分析計。

請求項15

前記イオンフラグメント器と電気的に連絡され、該イオンフラグメント器に入るイオンのエネルギーを変化させるように調節される、電源をさらに備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項16

前記イオンフラグメント器は、ガス衝突セルを包含する、請求項1に記載の質量分析計。

請求項17

前記イオンフラグメント器は、光解離セルを包含する、請求項1に記載の質量分析計。

請求項18

前記フラグメント器は、イオンが固体または液体表面衝突する表面解離手段を包含する、請求項1に記載の質量分析計。

請求項19

前記第2の実質的に電場を有さない領域は、ドリフト管を備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項20

前記第2の実質的に電場を有さない領域は、イオンガイドを備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項21

前記イオンガイドはガイドワイヤを包含する、請求項20に記載の質量分析計。

請求項22

前記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、該複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、該複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加される、請求項20に記載の質量分析計。

請求項23

前記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含する、請求項20に記載の質量分析計。

請求項24

前記所定の時間は、前記第2のタイミング制御イオン引き出し器が、選択された質量電荷比範囲内のイオンを第2の焦点面上に集束させるような時間である、請求項1に記載の質量分析計。

請求項25

前記第2の実質的に電場を有さない領域は入口を有し、前記第2の焦点面は、該入口と実質的に一致するように位置された、請求項24に記載の質量分析計。

請求項26

前記所定の時間は、前記第2のタイミング制御イオン引き出し器が、選択された質量電荷比範囲内のイオンを集束させるような時間であり、該集束されたイオンが、前記イオンフラグメント器から出射したときの速度に実質的に関わらず、時間間隔内で前記イオン検出器に到達するような時間である、請求項1に記載の質量分析計。

請求項27

前記第2のタイミング制御イオン引き出し器と電気的に連絡され、該第2のタイミング制御イオン引き出し器に電位を印加し、素早く変化させるように調節される電源をさらに備える、請求項1に記載の質量分析計。

請求項28

a)所定の質量電荷比範囲のイオンを焦点面上に集束させる、パルス化イオン源と;b)該所定の質量電荷比範囲のイオンの少なくとも一部を受け取るように位置された、第1の実質的に電場を有さない領域と;c)該パルス化イオン源から間隔が開けられ、かつ、該第1の実質的に電場を有さない領域に入るイオンの少なくとも一部を受け取るように位置されたイオンフラグメント器であって、該イオンフラグメント器に入る該イオンの運動エネルギーを変更するように調節されている、イオンフラグメント器と;d)該イオンフラグメント器から間隔が開けられ、かつ、流体連絡するタイミング制御パルス化引き出し器であって、所定の時間後に、該所定の質量電荷比範囲のイオンおよびそのフラグメントイオンを加速する、タイミング制御パルス化引き出し器と;e)該タイミング制御パルス化引き出し器と流体連絡する飛行時間分析器であって、該タイミング制御パルス化引き出し器によって加速される該イオンの質量電荷比を決定するように調節される、飛行時間分析器と;を備える、タンデム飛行時間型質量分析計。

請求項29

前記パルス化イオン源は、遅延引き出しマトリックス支援レーザデソープション/イオン化(MALDI)イオン源を包含する、請求項28に記載の質量分析計。

請求項30

前記パルス化イオン源は、電場を有さない領域中にイオンを注入するインジェクタおよび、注入方向に対して直交である方向に該イオンを引き出すパルス化イオン引き出し器を包含する、請求項28に記載の質量分析計。

請求項31

該パルス化イオン源からイオンを受け取るように位置されたタイミング制御イオンセレクタをさらに備える、請求項28に記載の質量分析計であって、該タイミング制御イオンセレクタは、前記所定の質量電荷比範囲のイオンのみが前記イオンフラグメント器まで移動することを可能にする、質量分析計。

請求項32

前記タイミング制御イオンセレクタは、前記第1の実質的に電場を有さない領域内に位置された、請求項31に記載の質量分析計。

請求項33

前記タイミング制御イオンセレクタは、イオンデフレクタを包含する、請求項31に記載の質量分析計。

請求項34

前記タイミング制御イオンデフレクタは、電位差が印加される1対の偏向電極を包含し、該電位は、前記所定の質量電荷比範囲内のイオンが該電極間を通過する時間区間中以外において、イオンが前記イオンフラグメント器に到達することを防ぐ、請求項31に記載の質量分析計。

請求項35

前記タイミング制御イオンデフレクタは2対の偏向電極を包含し、より低い質量電荷比のイオンが前記イオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第1の偏向電極対に印加され、より高い質量電荷比のイオンが該イオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第2の偏向電極対に印加される、請求項31に記載の質量分析計。

請求項36

前記第1の実質的に電場を有さない領域は、ドリフト管を備える、請求項28に記載の質量分析計。

請求項37

前記第1の実質的に電場を有さない領域内に位置されたイオンガイドをさらに備える、請求項28に記載の質量分析計。

請求項38

前記イオンガイドはガイドワイヤを包含する、請求項37に記載の質量分析計。

請求項39

前記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、該複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、該複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加される、請求項37に記載の質量分析計。

請求項40

前記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含する、請求項37に記載の質量分析計。

請求項41

前記イオンフラグメント器と前記タイミング制御パルス化引き出し器との間に位置されたグリッドをさらに備え、該グリッドは該イオンフラグメント器とタイミング制御パルス化引き出し器との間に実質的に電場を有さない領域を生成するようにバイアスされている、請求項28に記載の質量分析計。

請求項42

前記イオンフラグメント器は、ガス衝突セルを包含する、請求項28に記載の質量分析計。

請求項43

前記イオンフラグメント器は、光解離セルを包含する、請求項28に記載の質量分析計。

請求項44

前記イオンフラグメント器は、イオンが固体または液体表面に衝突する表面解離手段を包含する、請求項28に記載の質量分析計。

請求項45

前記イオンフラグメント器は、前記イオンが該イオンフラグメント器に入る前に運動エネルギーを低減するように調節されている、イオン請求項28に記載の質量分析計。

請求項46

前記イオンフラグメント器と電気的に連絡され、該イオンフラグメント器に入るイオンのエネルギーを変化させるように調節される、電源をさらに備える、請求項28に記載の質量分析計。

請求項47

前記飛行時間分析器は、ドリフト管およびイオン検出器を含む、請求項28に記載の質量分析計。

請求項48

前記ドリフト管はイオンガイドを含む、請求項47に記載の質量分析計。

請求項49

前記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、該複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、該複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加される、請求項48に記載の質量分析計。

請求項50

前記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含する、請求項48に記載の質量分析計。

請求項51

前記ドリフト管と前記イオン検出器との間にイオンミラーが設けられた、請求項47に記載の質量分析計。

請求項52

前記タイミング制御パルス化引き出し器は、前記飛行時間分析器のための遅延引き出しイオン源を包含することにより、該飛行時間分析器に入る各質量電荷比のイオンが、前記イオンフラグメント器から出射したときの速度に実質的に関わらず、狭い時間間隔内で前記検出器に到達するように、イオンが時間的に集束される、請求項28に記載の質量分析計。

請求項53

a)パルス化イオン源と;b)該パルス化イオン源からイオンを受け取るように位置されたタイミング制御イオンセレクタであって、所定の質量電荷比範囲のイオンのみがイオンフラグメント器を通って移動することを可能にする、タイミング制御イオンセレクタと;c)実質的に電場を有さない領域によって該イオンフラグメント器と間隔が開けられ、かつ、結合されたタイミング制御パルス化引き出し器であって、所定の時間後に、該所定の質量電荷比のイオンおよびそのフラグメントイオンを加速する、タイミング制御パルス化引き出し器と;d)該タイミング制御パルス化引き出し器と流体連絡する飛行時間分析器であって、該タイミング制御パルス化引き出し器によって加速されるフラグメントイオンの質量電荷比を決定する、飛行時間分析器と;を備える、タンデム飛行時間型質量分析計。

請求項54

前記パルス化イオン源は、所定の質量電荷比範囲のイオンを焦点面上に集束させる、請求項53に記載の質量分析計。

請求項55

前記イオンフラグメント器は、入口および出口を有し、前記焦点面は、該イオンフラグメント器の該出口に実質的に一致するように位置された、請求項54に記載の質量分析計。

請求項56

前記タイミング制御イオンセレクタは、前記イオンフラグメント器内にあり、該イオンフラグメント器入口に近似する、請求項55に記載の質量分析計。

請求項57

前記タイミング制御イオンセレクタは、イオンデフレクタを包含する、請求項53に記載の質量分析計。

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0001

(関連出願)本発明は、参考のため本明細書中に援用する、1998年2月6日付出願の米国特許出願第09/020,142号の一部継続出願である。

技術分野

0002

(発明の分野)本発明は、概して質量分析計に関し、特にタンデム質量分析計に関する。

背景技術

0003

(発明の背景)質量分析計は、サンプルを気化してイオン化し、得られたイオン質量電荷比を決定する。1つの形態の質量分析計は、電場の影響下において、与えられたイオン、すなわちイオン化され気化したサンプルがイオン源から検出器まで移動するために要する時間を測定することにより、イオンの質量電荷比を決定する。与えられた強度の電場においてイオンが検出器に到達するために要する時間は、質量の一次関数であり電荷逆関数である。この形態の質量分析計は飛行時間型質量分析計と呼ばれる。

0004

最近、特に、比較的不揮発性生物分子分析、ならびに高速度、高感度および/または広い質量範囲を必要とする他の適用分野において、飛行時間(TOF)型質量分析計が広く受け入れられるようになってきた。マトリクス支援レーザソープション/イオン化(MALDI)および電子スプレーESI)などの新しいイオン化技術は、気相で完全な分子イオンを生成するようにされ得る、分子の質量範囲を大幅に拡大し、TOFはこれらの適用分野において独自の利点を有する。例えば米国特許第5,625,184号および第5,627,360号に記載の遅延引き出しの最近の開発は、高分解能で精密な質量測定をMALDI−TOFで日常的に使用可能にし、パルス化引き出しによる直交注入は、ESI−TOFに対して同様の性能向上を提供している。

0005

これらの技術は、サンプルの分子量に関して優れたデータを提供するが、分子構造に関してはほとんど情報を提供しない。従来、タンデム質量分析計(MS−MS)は、構造情報を提供するために用いられてきた。MS−MS装置において、第1の質量分析器が、注目する一次イオン、例えば、特定のサンプルの分子イオンを選択するために用いられる。内部エネルギを増加させることにより、例えばイオンを中性分子衝突させることにより、そのイオンがフラグメントされる。その後フラグメントイオンスペクトルが、第2の質量分析器によって分析され、一次イオンの構造はしばしば、フラグメンテーションパターン解釈することにより決定され得る。MALDI−TOFにおいて、ポストソース分解(PSD)として知られる技術が用いられ得るが、フラグメンテーションスペクトルはしばしば弱く、解釈することが困難である。イオンが中性分子と高エネルギ衝突する衝突セルを追加することは、低質量フラグメントイオンの生成を向上させ、ある程度の追加のフラグメンテーションを引き起こす。しかし、そのスペクトルは解釈が困難である。直交ESI−TOFにおいて、フラグメンテーションは、大気圧電子スプレーと排気された質量分析計との間の界面でエネルギ衝突を引き起こすことにより起こるが、今のところ特定の一次イオンを選択する手段はない。

0006

タンデム質量分析法の最も一般的な形態は、一次イオンが第1の四重極により選択され、フラグメントイオンスペクトルが第3の四重極を走査することにより分析される、トリプル四重極である。第2の四重極は典型的には、複数の低エネルギ衝突が起こるのに十分高い圧力および電圧に維持されている。得られたスペクトルは概して、解釈が容易であり、例えば、このようなスペクトルからペプチドアミノ酸配列を決定する技術が開発されている。最近、第3の四重極が飛行時間型分析器に置きかえられたハイブリッド装置が記載されている。

0007

一次イオンの選択とフラグメントイオンの分析および検出との両方に飛行時間技術を用いるいくつかのアプローチが、これまでに記載されている。例えば、表面誘起解離(SID)を用いた、2つの線形飛行時間型質量分析器を組み込んだタンデム装置が、生成品としてのイオンを生成するために用いられてきた。後に開発されたバージョンにおいて、第2の質量分析器にイオンミラーが追加された。米国特許第5,206,508号は、線形または反射型分析器を用いたタンデム質量分析計を開示している。このタンデム質量分析計は、互いに異なる質量を有する親イオンの分離を必要とすることなく、各親イオンに関してタンデム質量スペクトルを得ることができる。米国特許第5,202,563号は、接地された真空ハウジングと、フラグメンテーションチャンバを介して連結された2つの反射型質量分析器と、接地された真空ハウジングに対して電気的に浮遊している飛行チャネルとを含むタンデム飛行時間型質量分析計を開示している。これらのデバイスの適用は概して、比較的小さい分子に限られており、ペプチドまたはオリゴヌクレオチド配列決定などの生物学的適用に必要な感度および分解能を提供するものはないと考えられる。

0008

タンデム質量分析法によるペプチドの配列決定および構造決定にとって、両方の質量分析器は、注目する質量範囲に亘って、少なくとも単位質量分解能と良好なイオン伝達とを有していなければならない。分子量1000を超えると、この要件は、高質量範囲を有する2つの二重焦点磁気偏向質量分析計からなるMS−MSシステムによって最も良好に満たされる。これらの装置は最高の質量範囲と質量精度とを提供するが、飛行時間に比べると感度に限度があり、MALDIおよび電子スプレーなどの最新のイオン化技術による使用には容易に適応可能でない。これらの装置はさらに、非常に複雑であり高価である。

発明が解決しようとする課題

0009

従って、本発明は、パルス化イオン発生器と、パルス化イオン発生器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と、フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを有する、タンデム飛行時間型質量分析計を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

1つの局面において、本発明は、以下:
a)所定の質量電荷比範囲のイオンを焦点面上に集束させる、パルス化イオン源と;
b)この焦点面に位置され、このパルス化イオン源からのこの集束されたイオンを受け取るタイミング制御イオンセレクタであって、この所定の質量電荷比範囲のイオンのみがイオンフラグメント器まで移動することを可能にする、タイミング制御イオンセレクタと;
c)このタイミング制御イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と;
d)このイオンフラグメント器に結合されたタイミング制御パルス化引き出し器であって、この所定のイオンおよびそのフラグメントを加速する、タイミング制御パルス化引き出し器と;
e)このタイミング制御パルス化引き出し器と連絡する飛行時間分析器であって、この予め選択されたイオンおよびそのフラグメントの質量電荷比を決定する、飛行時間分析器と;を備える、タンデム飛行時間型質量分析計を提供する。

0011

1つの実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御パルス化引き出し器は、実質的に電場を有さない領域によって上記イオンフラグメント器に結合されており、この電場を有さない領域は、このイオンフラグメント器中の衝突によって励起されたイオンがフラグメンテーションを実質的に完了することを可能にし得る。

0012

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記実質的に電場を有さない領域内に位置されたイオンガイドをさらに備え得る。

0013

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドはガイドワイヤ包含し得る。

0014

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、この複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位印加され、この複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加され得る。

0015

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含し得る。

0016

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器と上記タイミング制御パルス化引き出し器との間に位置されたグリッドをさらに備え、このグリッドは上記実質的に電場を有さない領域を生成するようにバイアスされている。

0017

1つの実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御イオンセレクタは、ドリフト管およびタイミング制御イオンデフレクタを包含し得る。

0018

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記ドリフト管はイオンガイドを含み得る。

0019

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドはガイドワイヤを包含し得る。

0020

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、この複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、この複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加され得る。

0021

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含し得る。

0022

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御イオンデフレクタは、電位差が印加される1対の偏向電極を包含し、この電位は、上記選択された質量電荷比範囲内のイオンがこの電極間を通過する時間区間中以外において、イオンが上記イオンフラグメント器に到達することを防ぎ得る。

0023

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御イオンデフレクタは2対の偏向電極を包含し、低い質量電荷比のイオンが上記イオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第1の偏向電極対に印加され、高い質量電荷比のイオンがこのイオンフラグメント器に到達することを防ぐための電位差が第2の偏向電極対に印加され得る。

0024

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記パルス化イオン源は、遅延引き出しマトリックス支援レーザデソープション/イオン化(MALDI)イオン源を包含し得る。

0025

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記パルス化イオン源は、電場を有さない領域中にイオンを注入するインジェクタおよび、注入方向に対して直交方向にこのイオンを引き出すパルス化イオン引き出し器を包含し得る。

0026

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器に入る上記イオンのエネルギーは、このイオンフラグメント器に電位を印加することにより制御され得る。

0027

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器は、イオンが中性分子と衝突させられる衝突セルを包含し得る。

0028

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器は、イオンに光子ビーム照射される光解離セルを包含し得る。

0029

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器は、イオンが固体または液体表面に衝突する表面解離手段を包含し得る。

0030

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記質量分析器は、上記タイミング制御パルス化引き出し器をイオン検出器に結合するドリフト管を備え得る。

0031

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記ドリフト管は、イオン伝達効率を増加させるためのイオンガイドを含み得る。

0032

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドは孔があけられた複数のプレートを包含し、この複数のプレートのうちの1つおきのプレートに正のDC電位が印加され、この複数のプレートのうちの残りのプレートに負のDC電位が印加され得る。

0033

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンガイドはRF励起される多重極レンズを包含し得る。

0034

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記ドリフト管と上記検出器との間にイオンミラーが設けられ得る。

0035

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御パルス化引き出し器は、上記質量分析器のための遅延引き出しイオン源を包含することにより、各質量電荷比のイオンが、上記イオンフラグメント器から出射したときの速度に関わらず、狭い時間間隔内で上記検出器に到達するように、イオンが時間的に集束され得る。

0036

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記パルス化源、上記タイミング制御イオンセレクタ、および上記イオンフラグメント器は、同じ真空ハウジング中に納められている。

0037

別の局面において、本発明は、以下:
a)対象サンプルからイオンパルスを生成する工程と;
b)このパルスからの所定の質量電荷比範囲を有するイオンを、イオンセレクタ内に集束させる工程と;
c)このイオンセレクタを活性化することにより、この所定の質量電荷比範囲を有するこの集束されたイオンを選択する工程と;
d)この選択されたイオンを励起することにより、このイオンをフラグメントする工程と;
e)飛行時間型質量分析を用いてこのフラグメントイオンを分析する工程と;を包含する、高性能タンデム質量分析方法を提供する。

0038

1つの実施態様において、本発明の質量分析計は、上記飛行時間型質量分析を用いて上記フラグメントイオンを分析する工程は、遅延引き出し飛行時間型質量分析を用いてこのフラグメントイオンを分析する工程を包含し得る。

0039

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、ほぼ電場を有さない領域を通って上記励起されたイオンを通過させることにより、この励起されたイオンがそこにおいてフラグメンテーションを実質的に完了することを可能にする工程をさらに包含し得る。

0040

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記選択されたイオンを励起する工程は、イオンを中性ガス分子に衝突させることを包含し得る。

0041

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンパルスを生成する工程は、電子スプレー、気圧支援電子スプレー、化学的イオン化、MALDI、およびICPからなる群より選択された方法を包含し得る。

0042

さらに別の局面において、本発明は、以下:
a)パルス化イオン源と;
b)このパルス化イオン源からイオンを受け取るように位置されたタイミング制御イオンセレクタであって、所定の質量電荷比範囲のイオンのみがイオンフラグメント器まで移動することを可能にする、タイミング制御イオンセレクタと;
c)このタイミング制御イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と;
d)実質的に電場を有さない領域によってこのイオンフラグメント器に結合されたタイミング制御パルス化引き出し器であって、この所定のイオンおよびそのフラグメントを加速する、タイミング制御パルス化引き出し器と;
e)このタイミング制御パルス化引き出し器と連絡する飛行時間分析器であって、この予め選択されたイオンおよびそのフラグメントの質量電荷比を決定する、飛行時間分析器と;を備える、タンデム飛行時間型質量分析計を提供する。

0043

1つの実施態様において、本発明の質量分析計は、上記実質的に電場を有さない領域は、上記イオンフラグメント器中の衝突によって励起されたイオンがフラグメンテーションを実質的に完了することを可能にし得る。

0044

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記イオンフラグメント器と上記タイミング制御パルス化引き出し器との間に位置されたグリッドをさらに備え、このグリッドは上記実質的に電場を有さない領域を生成するようにバイアスされている。

0045

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記タイミング制御イオンセレクタは、ドリフト管およびタイミング制御イオンデフレクタを包含し得る。

0046

別の実施態様において、本発明の質量分析計は、上記パルス化イオン源は、電場を有さない領域中にイオンを注入するインジェクタおよび、注入方向に対して直交方向にこのイオンを引き出すパルス化イオン引き出し器を包含し得る。

発明を実施するための最良の形態

0047

(発明の要旨)本発明は、(1)イオン生成器と、(2)イオン生成器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、(3)イオンセレクタと連絡するイオンフラグメンテーションチャンバと、(4)フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを含むタンデム飛行時間型質量分析計に関する。一実施形態において、イオン生成器は、イオンの速度が質量電荷比に依存するようにイオンが加速される、パルス化イオン源を含む。パルス化イオン源は、レーザデソープションイオン化またはパルス化電子スプレー源を含む。別の実施形態において、イオン生成器は、連続電子スプレー、電子インパクト、誘起結合プラズマ、または化学的イオン化源などの連続イオン化源を含む。この実施形態において、イオンは、ドリフト空間内のイオンの移動方向に実質的に直交する方向で、パルス化イオン源に注入される。イオンは、パルス化イオンビームに変換され、周期的に電圧パルスを印加することによってドリフト空間方向に加速される。

0048

一実施形態において、タイミング制御イオンセレクタは、一端にパルス化イオン生成器に連結されたフィールドフリーのドリフト空間を含み、他端でパルス化イオンデフレクタに連結されている。ドリフト空間は、イオン伝達を向上させるためにイオンビームをドリフト空間の中央近傍閉じ込めビームガイドを含み得る。パルス化イオンデフレクタは、選択された質量電荷比範囲内のイオンのみが、イオンフラグメンテーションチャンバを介して伝達されることを可能にする。一実施形態において、分析器が、飛行時間型質量分析計であり、フラグメンテーションチャンバが、イオンのフラグメンテーションを引き起こし、かつ、引き出しを遅延させるように設計された衝突セルである。別の実施形態において、分析器がイオンミラーを含む。

0049

本発明の特徴は、フラグメントイオンを生成するためだけでなく、飛行時間型質量分析計によるフラグメントイオンの分析のための遅延引き出しイオン源として作用するためにも、フラグメンテーションチャンバを用いることである。このことは、フラグメントイオンの高分解能飛行時間型質量スペクトルが、単一の収集質量範囲全体に亘って記録されることを可能にする。本発明の別の特徴は、衝突セルと加速領域との間のフィールドフリーの領域を生成するグリッドの追加である。フィールドフリーの領域は、衝突セル内での衝突によって励起されたイオンにフラグメンテーションを完了するための時間を与える。

0050

本発明はさらに、高分解能、高精度、および高感度でフラグメント質量スペクトルを測定することに関する。一実施形態において、方法は、(1)パルス化イオン源を生成する工程と、(2)特定の範囲の質量電荷比のイオンを選択する工程と、(3)イオンをフラグメントする工程と、(4)遅延引き出し飛行時間型質量分析法を用いてフラグメントイオンを分析する工程とを含む。一実施形態において、パルス化イオン源を生成する工程は、MALDIによって行われる。一実施形態において、イオンをフラグメントする工程は、イオンを気体の分子と衝突させることによって行われる。一実施形態において、イオンをフラグメントする工程は、イオンを励起させ、その後励起したイオンをほぼフィールドフリーの領域を通過させることにより、励起したイオンに、実質的にフラグメンテーションを完了するために十分な時間を与える工程を含む。

0051

本発明による高性能タンデム質量分析法は、一次イオンの選択を含む。パルス化イオン生成器を制御するパラメータは、注目する一次イオンがパルス化イオンデフレクタにおいて最小ピーク幅に集束するように、調整される。デフレクタは、選択されたイオンが伝達されることを可能にするが、すべての他のイオンは偏向され従って伝達されない。選択されたイオンは所定量だけ減速され得る。選択されたイオンは、衝突セルに入り、そこで中性分子との衝突により励起されて解離する。フラグメントイオンおよび残りのすべての選択されたイオンは、衝突セルを出て、セルと、セルとほぼ同一の電位に維持されているグリッドプレートとの間のほぼフィールドフリーの領域に向かう。この時点でのイオンパケットは、すべてのイオンが、速度および位置では多少のばらつきがあるが、ほぼ同一の平均速度を有しているという点で、MALDIによって最初に生成されたものに酷似している。

0052

イオンがグリッドプレート内のアパーチャを通過してから短い遅延期間の後に、所定振幅加速パルスが、グリッドプレートに印加される。生成品としてのイオンのスペクトルは記録され得、正確な質量が決定され得る。理論によると、伝達効率損失を最小限に抑えながら、一次イオン選択のための3000に近い分解能が達成可能である。フラグメントイオンの理論的分解能は、質量2000まではフラグメント質量の少なくとも10倍である。

0053

従って,本発明の目的は、高性能MS−MS装置、および一次イオン選択とフラグメントイオン決定との両方のための飛行時間技術を用いた方法を提供することである。本発明は、MALDIおよび電子スプレーなどのいずれのパルス化または連続イオン化源にも適用可能である。本発明は、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよびオリゴ糖などの生物学的サンプルに関する配列および構造情報を提供するために特に有用である。

0054

(発明の詳細な説明)本発明を特に添付の請求の範囲に照らして説明する。本発明の上記および他の利点は、添付の図面と共に以下の記載を参照することにより、よりよく理解され得る。

0055

簡単な概略説明として、図1を参照して、本発明の遅延引き出しを用いるタンデム飛行時間型質量分析計10は、以下を含む。すなわち、(1)パルス化イオン生成器12、(2)パルス化イオン生成器12と連絡するタイミング制御イオンセレクタ14、(3)タイミング制御イオンセレクタ14と連絡するイオンフラグメント器またはフラグメンテーションチャンバ18、そして(4)イオン分析器24である。動作中、分析対象サンプルは、パルス化イオン生成器12によりイオン化される。調査対象イオンは、タイミング制御イオンセレクタ14により選択され、フラグメンテーションチャンバ18に渡される。ここで、選択されたイオンはフラグメントされ、分析器24に渡される。フラグメンテーションチャンバ18は、分析器24の遅延引き出し源として機能するよう設計されている。

0056

さらに詳細に、図2Aを参照して、遅延引き出しを用いるタンデム飛行時間型質量分析計10の1つの実施形態は、パルス化イオン生成器12を含む。パルス化イオン生成器は、レーザ27およびソース引き出しグリッド36を含む。タイミング制御イオンセレクタ14は、イオン生成器12と連絡している。イオンセレクタ14は、電場を有さないドリフト管16およびパルス化イオンデフレクタ52を含む。電場を有さないドリフト管16は、図7に関連して示されるようにイオンガイドを含んでもよい。

0057

イオンフラグメンテーションチャンバ18は、イオンセレクタ14と連絡している。図2Aに示されるイオンフラグメンテーションチャンバは、衝突セル44を含む。しかしながら、フラグメンテーションチャンバ18は、光解離チャンバまたは表面誘起解離チャンバのような、対象分野において公知の他のあらゆるタイプのフラグメンテーションチャンバであってもよい。パルス化イオンデフレクタ52への入口における小さなアパーチャ54は、イオンビームをフラグメンテーションチャンバ18へ自由に通過させるが、中性ガスの流れは制限する。フラグメンテーションチャンバ18は、イオン分析器24と連絡している。フラグメンテーションチャンバ18の出口における小さなアパーチャ58は、イオンビームを自由に通過させるが、中性ガスの流れは制限する。

0058

1つの実施形態において、グリッドプレート53は、衝突セル44に隣接して配置され、電場を有さない領域57を形成するようにバイアスされる。電場を有さない領域57は、図2Aにおいて四角で示し、関連する図7においてさらに詳細に説明するイオンガイド57’を含んでもよい。フラグメント器引き出しグリッド56は、グリッドプレート53および分析器24への入口58に隣接して配置される。別の実施形態において、グリッドプレート53が排除され、フラグメント器引き出しグリッド56は、出口アパーチャに直接隣接して配置される。この実施形態は、フラグメンテーションが衝突セル44内で実質的に完了する測定において用いられる。分析器24は、イオンミラー64と連絡している第2の電場を有さないドリフト管16’を含む。第2の電場を有さないドリフト管16’は、図7に関連して示すようにイオンガイドを含んでもよい。反射イオンを受け取るように検出器68が配置される。

0059

パルス化イオン生成器12およびドリフト管16は、ガス放出口22を通じて真空ポンプ(図示せず)に接続される真空ハウジング20に封入されている。また、フラグメンテーションチャンバ18およびパルス化イオンデフレクタ52も、ガス放出口48を介して真空ポンプ(図示せず)に接続される真空ハウジング19に封入されている。同様に、分析器24は、ガス放出口28を介して真空ポンプ(図示せず)に接続される真空ハウジング26に封入されている。真空ポンプは、イオンと中性分子との衝突が起こり難くなるように、真空ハウジング20、19および26内の中性ガスのバックグランド圧力を十分に低く維持する。

0060

動作中、分析対象サンプル32は、イオンのパルスを生成するパルス化イオン生成器12によりイオン化される。1つの実施形態において、パルス化イオン生成器12は、マトリックス支援レーザデソープション/イオン化(MALDI)を用いる。この実施形態において、レーザビーム27’は、入射レーザビーム28の波長を選択的に吸収可能なマトリックスと混合されたサンプル32を有するサンプル板に衝突する。

0061

イオン化から所定の時間後に、サンプル32とソース引き出しグリッド36との間、およびソース引き出しグリッド36とドリフト管16との間に放出電位を印加することにより、イオンを加速する。1つの実施形態において、ドリフト管16は接地電位にある。この加速の後、イオンは、その電荷質量比平方根にほぼ比例した速度で、ドリフト管16を移動する。すなわち、イオンは重いほどゆっくりと移動する。従って、質量の大きいイオンは、質量の小さいイオンよりもよりゆっくりと移動するので、イオンは、ドリフト管16内でその質量電荷比に応じて分離する。

0062

パルス化イオンデフレクタ52は、イオン化から所定の時間後に、ある時間窓だけ開く。これにより、パルス化イオンデフレクタ52が衝突セル44へのアクセスを可能としている間の所定の時間窓内にパルス化イオンデフレクタ52に達する選択された質量電荷比のイオンのみが伝達される。従って、パルス化イオンデフレクタ52により、選択された質量電荷比を有する所定のイオンのみが、衝突セル44に入ることができる。質量がより大きいまたは小さいその他のイオンは阻止される。

0063

衝突セル44に入る選択されたイオンは、吸入口40を通じて流入する中性ガスと衝突する。これらの衝突が、イオンのフラグメントを引き起こす。衝突のエネルギーは、サンプル32と衝突セル44との間の印加電位差に比例する。1つの実施形態において、衝突セル44における中性ガスの圧力は約10−3Torrに維持され、衝突セル44の周囲の空間における圧力は約10−5Torrに維持されている。イオン入口アパーチャ46およびイオン出口アパーチャ50を介して衝突セル44からのガス拡散は、ガス放出口48に接続された真空ポンプ(図示せず)により促進される。別の実施形態においては、ガス吸入口40に高速パルスバルブ(図示せず)が配置され、これによりイオンがフラグメンテーションチャンバ18に達する間は、中性ガスの高圧パルスを生成し、それ以外の間は、フラグメンテーションチャンバ18を真空状態に保つ。中性ガスは、ヘリウム、空気、窒素アルゴンクリプトンまたはキセノンのような任意の中性ガスであり得る。

0064

1つの実施形態において、フラグメントイオンがグリッドプレート53内のアパーチャ50’を通過し、グリッドプレート53とフラグメント器引き出しグリッド56との間のほぼ電場を有さないの領域59に入るまで、グリッドプレート53およびフラグメント器引き出しグリッド56は、衝突セル44と実質的に同じ電位にてバイアスされる。イオンがグリッドプレート53を通過してから所定の時間後に、グリッドプレート53上の電位が高電圧へと急速に切り換えられ、これによりイオンは加速される。加速されたイオンは、分析器24への入口58を通過し、第2の電場を有さないドリフト管16’に入り、イオンミラー64に入り、そして反射イオンを受け取るように配置された検出器68へと進む。

0065

グリッドプレート53上の電位が切り換えられた時から、検出器68によるイオンの検出までの、イオンフラグメントの飛行時間が測定される。測定された時間から、イオンフラグメントの質量電荷比が、決定される。フラグメンテーションチャンバ18がイオンフラグメントの遅延引き出しソースとして機能するように動作パラメータを正しく選択することで、質量電荷比を非常に高い分解能にて決定することができる。動作パラメータは、以下を含む。すなわち、(1)グリッドプレート53内のアパーチャ50’を通じてのフラグメントイオンの通過と、グリッドプレート53への加速電位の印加との間における遅延、および(2)グリッドプレート53とフラグメント器引き出しグリッド56との間における引き出し電界の大きさ、である。

0066

別の実施形態においては、グリッド53は用いられないか、または存在しない。この実施形態は、衝突セル44内でフラグメンテーションが実質的に完了する測定において用いられる。この実施形態において、フラグメント器引き出しグリッド56は、衝突セル44と実質的に同じ電位にてバイアスされる。イオンが衝突セル44を出てから所定の時間後に、衝突セル44への高電圧接続が、第2の高電圧供給(図示せず)へと急速に切り換えられ、これにより、イオンは加速される。加速されたイオンは、分析器24への入口58を通過し、第2の電場を有さないドリフト管16’に入り、イオンミラー64に入り、そして反射イオンを受け取るように配置された検出器68へと進む。

0067

衝突セル44上の電位が切り換えられた時から、検出器68によるイオンの検出までの、イオンフラグメントの飛行時間が測定される。イオンフラグメントの質量電荷比は、測定された時間から決定される。フラグメンテーションチャンバ18がイオンフラグメントの遅延引き出しソースとして機能するように動作パラメータを正しく選択することで、質量電荷比を非常に高い分解能にて決定することができる。動作パラメータは、以下を含む。すなわち、(1)高電圧が第2の高電圧に急速に切り換えられる前に、イオンが衝突セル44を出てから所定の時間後、および(2)衝突セル44とフラグメント器引き出しグリッド56との間における引き出し電界の大きさ、である。

0068

図2Bは、図2Aに示すタンデム質量分析計の実施形態の各部分においてイオンが経る電位を示す。電圧70がサンプル32に印加され、電圧71が引き出しグリッド36に印加される。電圧71は、電圧72とほぼ等しい。レーザービーム28がサンプル32に衝突するのに応答して、イオンのパルスが形成され、サンプル32と引き出しグリッド36との間にある実質的に電場を有さないの空間61内に放出される。イオンは、その質量電荷比とほぼ無関係な特徴的な速度分布で、サンプル32から放出される。イオンが、サンプル32と引き出しグリッド36との間のほぼ電場を有さないの空間61内をドリフトするに従い、イオンは空間的に分布し、より速いイオンは引き出しグリッド36に近くなり、そしてより遅いイオンはサンプル32に近くなる。イオン化から所定の時間後に、サンプル32に印加された電圧は、より高い電圧72へと急速に切り換えられ、これにより、サンプル32と引き出しグリッド36との間に電界確立する。サンプル32と引き出しグリッド36との間の電界により、サンプル32に最も近くて初期的により遅いイオンが、初期的により速いイオンよりも大きな加速を受ける。

0069

ドリフト管16が、引き出しグリッド36よりも低い電位73にあるため、引き出しグリッドとドリフト管との間に第2の電界が確立される。1つの実施形態において、電圧73は、接地電位にある。これにより、イオンは、第2の電界によりさらに加速される。電圧71および72、ならびにイオンパルスの形成と引き出し電圧72のスイッチングとの間の時間遅延を適切に選択することにより、81の初期的により遅いイオンは、82の初期的により速いイオンよりも加速されるため、初期的により遅いイオンは、最終的に選択集束点83にて、初期的により速いイオンを追い抜く。選択集束点83としては、パルス化イオンデフレクタ52、衝突セル44、またはイオン行路沿いのその他の任意の点が選ばれ得る。

0070

MALDIによるイオン生成における典型的な速度分布の場合、ある特定の質量電荷比のイオンが、選択集束点83に到達する時間の総時間幅は、典型的には約1ナノ秒以下である。選択集束点83が、パルス化イオンデフレクタ52と同じ位置に選択された場合、パルス化イオンデフレクタ52のゲートは、選択された質量電荷比のイオンの到達時間に対応する短い時間間隔で開けられ、これ以外の時間は、他のすべてのイオンを阻止するために閉じられる。本発明の遅延引き出しは、イオンパケットの時間幅を非常に小さくすることが可能なことから、イオン選択の分解能が、パルス化イオンデフレクタ52の特性によってしか制限されないため、有利である。従って、高分解能のイオン選択が可能である。対照的に、継続的な引き出しを用いた場合には、すべてのイオンが電界から同一の加速を受け、速度集束は起こらない。これにより、特定の質量電荷比のイオンパケットの時間幅は、サンプルから行路沿いの任意の点へのイオンの移動時間に比例して拡大し、イオン選択の分解能は非常に高くはなり得ない。

0071

動作中、パルス化イオンデフレクタ52は、選択された質量電荷比のイオンが到達するまでの間、質量の小さいイオンを偏向する横電界を確立する。選択された質量電荷比のイオンが到達すると、横電界は急速にゼロへと下げられため、選択されたイオンは通過可能となる。選択されたイオンの通過後、横電界は元に戻り、より質量の大きいあらゆるイオンは偏向される。選択されたイオンは、フラグメンテーションチャンバ18内へ偏向されずに伝達される。

0072

イオンが、入口アパーチャ46を通って衝突セル44に入る前に、イオンの運動エネルギーを下げるために電圧74が衝突セル44に印加され得る。衝突セル44内のイオンのエネルギーは、電圧74およびイオンの初速度と関連する運動エネルギーに対する初期電位81または82により決定される。衝突セル44内でイオンが中性分子と衝突する際のエネルギーは、電圧74を変えることで多様にすることができる。

0073

衝突セル44内でイオンが中性分子と衝突する際、イオンの運動エネルギーの一部は、イオンがフラグメントするのに十分な内部エネルギーに変換され得る。衝突セル44内における衝突により、エネルギーを与えられたイオンおよびフラグメントは、幾分遅い速度にて衝突セル44内を移動し続け、依然短い時間間隔内で、遅延引き出しおよび衝突により変更された初速度分布に対応する速度分布にて、出口アパーチャ50を通って最終的に出てくる。

0074

1つの実施形態において、グリッドプレート53に印加された電圧74、およびフラグメント器引き出しグリッド56に印加された電圧75が等しくあるため、衝突セル44とフラグメント器引き出しグリッド56との間に電場を有さない領域を形成する。電場を有さない領域内をイオンがドリフトするに従い、イオンは空間的に分布し、より速いイオンはフラグメント器引き出しグリッド56に近くなり、そしてより遅いイオンはグリッドプレート53に近くなる。

0075

所定の時間遅延の後、グリッドプレート53に印加された電圧は、より高い電圧76へと急速に切り換えられ、これにより、グリッドプレート53とフラグメント器引き出しグリッド56との間に電界が確立される。その結果、初期的により遅いイオンは、初期的により速いイオンよりも大きな加速を受ける。1つの実施形態において、グリッドプレート53および衝突セル44は、その両方が同時に切り換えられるように電気的に接続されている。別の実施形態において、衝突セル44に印加される電圧は一定であり、グリッドプレート53に印加される電圧のみが切り換えられる。

0076

別の実施形態において、グリッドプレート53は用いられないか、または存在しない。この実施形態は、フラグメンテーションが衝突セル44内で実質的に完了する測定において用いられる。この実施形態では、衝突セル44とフラグメント器引き出しグリッド56との間に電場を有さない領域はない。所定の時間遅延の後、衝突セル44に印加された電圧は、より高い電圧76へと急速に切り換えられ、これにより、衝突セル44とフラグメント器引き出しグリッド56との間に電界を確立する。その結果、初期的により遅いイオンは、初期的により速いイオンよりも大きな加速を受ける。

0077

イオンは、フラグメント器引き出しグリッド56とドリフト管16’との間の電界内でさらに加速される。1つの実施形態において、電圧77は、接地電位にあってもよい。電圧76および74、ならびに衝突セル44の切り換え時間を適切に選択することで、84の初期的により遅いイオンは十分に加速され、85の初期的により速いイオンを選択集束点89にて追い抜く。

0078

1つの実施形態において、この集束点は、分析器24への入口58、あるいはその付近に選択される。この実施形態において、イオンは、第2の電場を有さない領域16’を移動し、イオンミラー64に入る。イオンミラー64内において、イオンは、電圧79で反射され、最終的に検出器68に衝突する。ドリフト管16’の所定の長さおよびミラー64の長さに対して、電圧78は、検出器68にてイオンを時間的に再集束するように調整可能である。このように、フラグメンテーションチャンバ18は、分析器24の遅延引き出し源としての役割を果たし、フラグメントイオンの高分解能スペクトルが測定可能となる。

0079

図3は、図2におけるフラグメンテーションチャンバ18の1つの実施形態の模式図である。衝突セル44は、衝突セル44内にガスを導入するガス吸入口40、および衝突セル44から外へとガスを拡散する(矢印D)入口アパーチャ46および出口アパーチャ50をそれぞれ含む。これらのアパーチャ46および50は、衝突セル44内に外部の電界が侵入するのを回避するために、透明度の高いグリッド47で覆われてもよい。外部に拡散するガスは、フラグメンテーションチャンバ18のガス放出口48(図2)に取り付けられた真空ポンプにより引き出される。1つの実施形態において、均一な電界が、衝突セル44とフラグメンテーションチャンバ18への入口アパーチャ51との間、ならびにフラグメント器引き出しグリッド56と分析器24への入口アパーチャ58との間に確立される。

0080

高電圧電源92は、引き出しグリッド56および抵抗型分圧器53’に接続されている。分圧器53’は、電気的に絶縁した保護環55に取り付けられている。保護環55は、引き出しグリッド56と分析器24への入口アパーチャ58との間、ならびに衝突セル44とフラグメンテーションチャンバ18への入口アパーチャ51との間の空間に、均一間隔で置かれている。分圧器53’は、これらの空間にほぼ均一の電界を提供するように調整されている。高電圧電源90は、衝突セル44に電気的に接続され、電圧74(図2B)に設定されている。グリッドプレート53上の電圧は、スイッチ80により設定される。スイッチ80は、電圧74に設定された高電圧電源90、および電圧76に設定された高電圧電源91のそれぞれ(図2B)と電気的に連絡している。

0081

スイッチ80は、遅延発生器87からの信号により制御される。遅延発生器87は、制御器(図示せず)から受け取ったスタート信号に応答して、制御信号をスイッチ80に供給する。制御器は、1つの実施形態においては、デジタルコンピュータである。スイッチ80が、グリッドプレート53への高電圧接続を高電圧電源90により生じる電圧74から、高電圧電源91により生じる電圧76へと切り換えるために起動される直前に、選択された質量電荷比のイオンが、グリッドプレート53におけるアパーチャ50’を通過できるように遅延が設定される。

0082

同様に図4を参照して、1つの実施形態において、パルス化イオンデフレクタ52は、透明度の高いグリッドで覆われたアパーチャ51と54との間に配置される、2つの直列デフレクタ100および102を含む。アパーチャ54はまた、ドリフト管16の出口アパーチャとして機能し、アパーチャ51もまた、フラグメンテーションチャンバ18への入口アパーチャ51として機能する。グリッド状のアパーチャ51および54は、デフレクタ100および102により形成された電界が、パルス化イオンデフレクタ52より先へと伝搬することを回避する。デフレクタ100および102は、電気的破壊を引き起こすことなく、できる限りアパーチャ51および54上のグリッド面の近くに配置される。

0083

1つの実施形態において、サンプル32に最も近いデフレクタ100は、デフレクタ100の電極101Aと101Bがこれらの電極間に電位差を有する、通常閉(NC)または充電状態の構成で動作される。第2のデフレクタ102は、電極105Aと105Bとの間に電圧差がない、通常開(NO)または放電状態の構成により動作される。イオンの生成と、デフレクタ100における所望の質量電荷比のイオンの到達時間との間の遅延を正しく選択することにより、入口電極101Aおよび101Bは、所望のイオンのみがデフレクタ100に達するように開くため、非充電状態にされ得る。その一方で、第2のデフレクタ102の電極105Aおよび105Bは、対象イオンがデフレクタ102を通過する直後に閉じられるように非充電状態される。この方法にて、質量の小さいイオンは、第1のデフレクタ100により阻止され、質量の大きいイオンは、第2のデフレクタ102により阻止される。イオンは、臨界アパーチャからそれるような、十分に大きな角度で偏向されることにより、阻止される。様々な実施形態において(例えば、図2)、臨界アパーチャは、衝突セル44への入口アパーチャ46、分析器24または検出器68(最小の偏向角度を有する方)への入口アパーチャ58と一致し得る。

0084

電界におけるイオンの運動方程式により、イオン行路沿いにおける任意の2つの点の間のあらゆるイオンの飛行時間を正確に計算することができる。図2Aおよび図2Bに示される1つの実施形態において用いられたような均一の電界の場合、これらの方程式は、特に正確に計算することができ、電圧、距離、および初速度が正確に知られている条件においては、2つの点の間のあらゆるイオンの飛行時間を正確に計算することができる。具体的には、イオンが均一加速電界横断する時間は、以下の方程式で示される。

0085

t=(v2−v1)/a
式中、v2は加速後の最終速度、v1は加速前の初速度、そしてtはイオンが電界内で過ごす時間を示す。加速度は、以下の方程式で示される。

0086

a=z(V1−V2)/md
式中、zはイオンの電荷、mはそのイオンの質量、V1およびV2は印加電圧、そしてdは電界の全長を示す。電場を有さない空間において、加速度はゼロであり、以下の式で示される。
t=D/v
式中、Dは、電場を有さない空間の全長、vはイオンの速度を示す。

0087

保存系(すなわち、摩擦損失がない場合)において、運動エネルギーおよび位置エネルギーの総和は一定である。電界における荷電粒子運動は、以下の式で示される。
T2−T1=z(V1−V2)
式中、運動エネルギーT=mv2/2である。この式をVについて解くことによって、任意の点における荷電粒子の速度の明確な式を示し得る。

0088

一連の均一な電界を移動するイオンに対して、上記の方程式は、イオンの質量、電荷、電位、距離と、初期の位置および速度との関数として飛行時間を正確に提供する。距離がメートルで、電位がボルトで、質量がkgで、電荷がクーロンで、そして時間が秒で表されるSI系が用いられる場合、さらなる定数は必要ない。

0089

場合によっては、すべてのパラメータは、先験的に十分な正確さで知られないこともあり、そのような場合は、計算された飛行時間の補正を経験的に決定する必要もあり得る。

0090

いかなる場合においても、任意に選択された質量電荷比のイオンの飛行時間は、十分な正確さで決定でき、これにより、パルス化イオン生成器12におけるイオンの生成と、タイミング制御イオンセレクタ14におけるイオンの選択、または衝突セル44からのイオンのパルス引き出しとの間に必要とされる時間遅延を正確に決定することが可能となる。

0091

同様に図5を参照して、1つの実施形態において、4チャネル遅延発生器162は、スタートパルス150により開始される。スタートパルス150は、パルス化イオン生成器12におけるイオンの生成と同期している。1つの実施形態において、スタートパルスは、レーザビーム28からの光のパルスを検出することにより生成される。第1の遅延期間の後、パルス151が遅延発生器162により生成される。遅延発生器162は、電圧70および72をそれぞれ供給する電圧源と連絡しているスイッチ155をオンにする。パルス151を受け取る前、スイッチ155は、電圧70の供給源をサンプル32へと接続する位置160にある。パルス151を受け取ると、スイッチ155は、電圧72の電圧源をサンプル32へと接続する位置161に急速に移動する。第1の遅延は、パルス化イオン生成器12により生成された選択された質量電荷比のイオンが、選択点(例えばパルス化イオンデフレクタ52)において、時間的に集束するように選択される。

0092

第2の遅延期間の後、スイッチ156および157をトリガするパルス152が生成される。パルス152を受け取る前、スイッチ156は電圧源120を偏向板101Aに接続し、スイッチ157は電圧源121を偏向板101Bに接続する。パルス152を受け取ると、スイッチ156および157は、急速に動いて偏向板101Aおよび101Bの両方を接地に接続する。

0093

同様に、スイッチ158および159は、初期的には電極105Aおよび10Bを接地接続し、そして第3の遅延期間の後に起こる遅延パルス153に応答して、電極105Aおよび105Bを電圧源122および123にそれぞれ接続する。1つの実施形態において、電圧源120および122は等しい電圧を供給し、電圧源121および123は、電圧源120より供給される電圧と大きさが等しく符号は反対である電圧源を供給する。第2の遅延期間は、パルスイオン偏向器52の入口アパーチャ54、またはその付近に選択された質量電荷比のイオンが到達することに対応するように選択される。そして、第3の遅延期間は、パルスイオン偏向器52の出口アパーチャ51、またはその付近に選択された質量電荷比のイオンが到達することに対応するように選択される。

0094

第4の遅延期間の後、スイッチ79をトリガするパルス154が生成される。パルス154を受け取る前、スイッチ79は、電圧源供給電圧74をグリッド板53に接続する。そして、パルス154を受け取ると、スイッチ79は、電圧源供給電圧76をグリッド板53に接続するために急速に切り換える。第4の遅延期間は、グリッド板53のアパーチャ50’、またはその付近に選択された質量電荷比のイオンが到達することに対応するように選択される。第4の遅延期間を適切に選択することで、フラグメンテーションチャンバ18は、分析器24の遅延引き出し源として作用し、一次イオンおよびフラグメントイオンの両方が、時間的に検出器68に集束する。各スイッチ79、155、156、157、158および159は、次のスタートパルスが開始されるよりも前に、初期状態リセットされなければならない。スイッチをリセットする時間および速度は重要ではなく、各スイッチに組み込まれた固定遅延の後に実行してもよいし、あるいは別の外部の遅延チャネル(図示せず)からの遅延パルスを用いてもよい。

0095

図6を参照して、フラグメントイオンの分解能は、定められた距離、電圧および遅延時間を有する、図2に示した実施形態のような、あらゆる機器構成(instrumental geometory)に対して計算できる。図6に示すプロットは、20キロボルトサンプル電圧72および19.8キロボルトの衝突セル電圧74(実験室基準系(laboratory referenceframe)における200ボルトのイオン中性衝突エネルギーに対応)で、パルス化イオン生成器12において生じる質量電荷比(m/z)が2000のイオンについてのフラグメント質量の関数としての分解能の計算に対応する。(図2Aおよび図2B)。m/zが2000の一次イオンがアパーチャ50’を通過すると計算された時点から858ナノ秒の遅延後に、グリッド板53をより高い電圧76に切り換えた。この電圧76は、この計算の目的においては25キロボルトであった。

0096

1つの事例にて(図6曲線111)、フラグメント器引き出しグリッド56に印加された電圧75もまた、19.8キロボルトであったため、引き出しグリッド56と衝突セル44との間の領域は電場を有さなかった。別の事例にて(図6の曲線112)、フラグメント器引き出しグリッド56に印加された電圧75は19.9キロボルトであったため、衝突セル44の出口50から出てくるイオンは多少減速された。図6からもわかるように、後者の事例である112は、比較的大きい質量の場合に理論的分解能が若干低くなるが、比較的低いフラグメント質量においては幾分良好な分解能が得られる。

0097

図7を参照して、本発明の実施形態によっては、イオンガイド99が、1つ以上のフィールドフリー領域に配置されることを含む。イオンガイドは、イオンの伝達を増加させるため、ドリフト管16または16’のうちの少なくとも1つに、あるいはフィールドフリー領域57に配置され得る。ワイヤインシリンダ型(wire−in−cylinder type)および4極、6極または8極から成るRF励起多極レンズを含む、いくつかの型のイオンガイドが、当該分野において公知である。イオンガイドの1つの実施形態において、スタックリング静電イオンガイド(stacked ring electrostatic ion guide)が用いられる。スタックリングイオンガイドは、それぞれ中央アパーチャ110を有し、各組リング108の間に均一の間隔で重ねられた同一の板またはリング108および108’の積層体を含む。リング108’は1つおきに正の電圧電源109に接続され、その間のリング108は、それぞれ、負の電圧電源107に接続される。

0098

入口106および出口54のアパーチャが配置されるドリフト管16の端板は、ガイドの隣接し合うリングの間の距離の半分に相当する距離だけ、スタックリングイオンガイドの端部から離れている。イオンガイド99を通過する際のイオン飛行時間が不安定になるのを回避するため、正にバイアスされた電極の数を、負にバイアスされた電極の数と等しくすることが重要である。入射イオンビームのエネルギーと比例する電圧電源107および109からの印加電圧の、適切な大きさを選択することにより、イオンビームは、ガイドの軸付近で閉じ込められる。例えば、ワイヤインシリンダ型イオンガイドよりもスタックリングイオンガイドの方が優位である点は、イオンの飛行時間に著しい影響を与えることなく、エネルギーおよび質量の広い範囲にわたり、効率的にイオンを伝達させることである。

0099

図8は本発明の別の実施形態である。図8を参照して、パルス化イオン生成器12へイオンを供給するために、連続またはパルス源のイオン128のいずれを用いてもよい。この実施形態において、電気スプレー化学イオン化電子衝撃誘導結合プラズマ(ICP)およびMALDIを含む、当該分野において公知のあらゆるイオン化技術を用いることができる。この実施形態においては、イオンのビーム129を、電極130と引き出しグリッド36との間のフィールドフリー空間内に注入し、周期的に電圧パルスを電極130に印加し、これにより、初期ビームの方向と直交する方向へイオンを加速させる。イオンは、引き出しグリッド36とグリッド136との間に形成された第2の電界においてさらに加速される。

0100

保護板134は、分圧器(図示せず)に接続され、グリッド36と136との間に均一な電界を形成するための補助として用いられ得る。イオンは、フィールドフリー空間16を通過し、フラグメンテーションチャンバ18内に入る。フラグメンテーションチャンバ18内において、イオンは衝突セル44に入り、その中で中性分子との衝突によりフラグメントされる。この実施形態において、以下でさらに説明するように、パルスイオン偏向器は衝突セル44内に配置され、フラグメンテーションチャンバ18は、分析器24の遅延引き出し源として機能する。フラグメンテーションチャンバ18から出ていくイオンは、フィールドフリー空間16’を通過し、イオンミラー64により反射され、フィールドフリー空間16’に再び入り、検出器68により検出される。

0101

図2Bを参照して、この電位図は、多少の変更を加えれば、図8に示される1つの実施形態にも適用される。サンプル32(図2)は、電極130(図8)に置き換えられ、パルスイオン偏向器52は、衝突セル44(図8)内に配置される。連続イオン源128内で生成されたイオンビーム129は、点81と82の間にある、電極130と引き出しグリッド36との間の空間に入る。電極130における電圧70は、初期的には引き出しグリッド36上の電圧71と等しく、電極130を周期的に切り換えることにより、イオンを引き出す。70と72との間の電圧差は、ビーム内のイオンが、時間内に衝突セル44からの出口、またはその付近に集束するように選択される。1つの実施形態において、引き出しグリッド36上の電圧71は接地電位にあり、ドリフト管16および16’上の電圧73は、対象イオンとは反対符号の電圧である。

0102

衝突セル44内のイオンのエネルギーは、電圧74にそれらの初速度に関連付けられた運動エネルギーを足したものに対して、それらの初期電位81または82により決定される。従って、衝突セル44内でイオンが中性分子と衝突する際のエネルギーは、電圧74を変えることで変化させることができる。1つの実施形態において、電圧71および電圧74は、接地電位にある。この実施形態において、衝突セル44とフラグメント器引き出しグリッド56との間の引き出し電界は、初期的に接地の、または接地付近の電圧75を、より低い電圧に切り換えることで形成される。

0103

図9を参照して、1つの実施形態において、パルスイオン偏向器52は、衝突セル44内に配置される。パルス化イオン生成器12(図8)からのイオンは、衝突セル44の出口104、またはその付近に集束される。選択された質量電荷比を有するイオンのパルスが、衝突セル44への入口103、またはその付近に到達したとき、パルスイオン偏向器100を停止状態にし、これにより、選択されたイオンを無偏向で通過させる。選択された質量電荷比を有するイオンのパルスが、衝突セル44への出口104、またはその付近に到達したとき、パルスイオン偏向器102を活性化し、これにより、パルス偏向器102に遅れて到達する、より大きい質量のイオンを偏向する。このように、質量電荷比のより低いイオンは、パルスイオン偏向器100により偏向され、質量電荷比のより高いイオンは、パルスイオン偏向器102により偏向され、そして選択された質量電荷比の範囲内のイオンは、偏向されずに伝達される。パルスイオン偏向器100および102に印加された電圧は、偏向されたイオンおよび衝突セル内で生成されたあらゆるフラグメントが、臨界アパーチャを通過することがないように調整される。臨界アパーチャは、この実施形態において、分析器24への入口アパーチャ58である。

0104

図8に示される実施形態において、連続イオン源128からのビームは、断面が円筒状であり、ビームの軸に垂直な方向における速度成分が非常に小さくなるように、十分に平行化されている。その結果、パルス化イオン生成器12により生成されたパルスビーム39は、連続イオン源128からイオンが移動する方向において比較的幅が広くなっているが、直交方向において狭くなっている。すなわち、ビームの方向がx軸沿いの場合、これに直交するビームの幅は狭くなる。アパーチャ36、136、138、103、104、56および142の幅は、本質的にパルスビーム全体が透過されるように、連続ビーム129およびパルスビーム32の方向により規定される平面において、十分に広くなければならない。しかし、この平面に垂直の方向においては、狭くてもよい。これは、衝突セル44の断面図を示す図9Aに示されている。この図において、出口アパーチャ104の全長は、連続イオン源128からのビームに平行する方向において25mmで、連続イオン源128からのビームおよびパルスビーム39で規定される平面に対して直交する方向においては1.5mmである。その他のアパーチャ36、136、138、103、56および142は、同様の寸法を有していてもよい。また、連続イオンビーム129の初速度は、パルス化イオン生成器12内での加速により与えれた速度にベクトル的に加算される。その結果、パルスイオンビーム39の行路は、加速の方向に対して小さな角度にあり、スリットは、その長手方向沿いオフセットされており、これにより、パルスイオンビーム39の中心が、各アパーチャの中心付近を通過する。

0105

図10を参照して、本発明の1つの実施形態は、フラグメンテーションチャンバ18内で、光解離セル152を用いる。1つに実施形態において、光解離セルは、衝突セル44に類似するが、中性ガスが吸入口40を通じて流入するのではなく、パルスレーザビーム150がアパーチャまたは窓160を通じて流入し、アパーチャまたは窓161を通じてセルから出ていく。レーザパルスは、選択された質量電荷比のイオンパルスと同時にレーザパルスが光解離セルの中心に到達するように、スタートパルスおよび遅延発生器(図示せず)と同期している。

0106

対象イオンがその波長にてエネルギーを吸収するようにレーザの波長は選択されている。1つの実施形態において、266nmのレーザ光線の波長を有する4倍Nd:YAGレーザが用いられる。別の実施形態において、193nmの波長を有するエキシマレーザが用いられる。対象イオンにより吸収されることを条件として、あらゆる波長の放射を用いることができる。対象イオンは、パルスレーザビーム150からの1つ以上の光子の吸収により励起され、フラグメント化される。フラグメントは、上記にて詳述したように、分析器24の遅延引き出し源として機能を果たすフラグメンテーションチャンバ18で分析される。光解離セル152はまた、パルスイオン偏向器100および102を備え、選択されたイオンと異なる質量電荷比を有するイオンが分析器24に伝達されるのを回避する。

0107

図11を参照して、本発明の1つの実施形態は、フラグメンテーションチャンバ18内で表面誘起解離セル154を用いる。この実施形態において、対象イオンは、パルスイオン偏向器52により選択され、その他の質量電荷比のイオンは、表面誘導誘起解離セル154に入らないように偏向される。選択されたイオンが、入射グレージング角度にて電極156の表面159と衝突するように選択されたイオンを偏向するように、電極158と156との間に電位差が印加される。イオンは、表面159との衝突により励起され、フラグメントされる。1つの実施形態において、表面159は、フラグメンテーションを促進する、あるいは、表面との電荷交換の可能性を低減するように、ペルフルオロ化等の高分子量の比較的不揮発性である液体コーティングされる。フラグメントイオンは、分析器24の遅延引き出し源として機能を果たすフラグメンテーションチャンバ18で分析される。

0108

図12を参照して、1つの実施形態において、タイミング制御イオン選択器14およびイオンフラグメンテーションチャンバ18は、パルス化イオン生成器12と同じ真空ハウジング20内に封入されている。グリッド板53およびフラグメント器引き出しグリッド56を含むパルスイオン引き出し器は、分析器24を封入する真空ハウジング26に配置される。フラグメンテーションチャンバ18とグリッド板53との間のほぼフィールドフリーの空間57に配置される小さなアパーチャ58により、中性ガスの流れは制限されるが、イオンビームは自由に通過できる。1つの実施形態において、アパーチャ58を通過するイオンを集束させるために、パルス化イオン生成器12とタイミング制御イオン選択器14との間にeinzelレンズが配置される。この実施形態において、真空ハウジング19(図2)およびこれに関連する真空ポンプは、必要とされない。1つの実施形態において、フラグメンテーションチャンバ18内の衝突セル44は、フラグメント器引き出しグリッド56と同様、接地電位に接続されている。グリッド板53も同様に、最初は接地されており、対象イオンが、グリッド板53とフラグメント器引き出しグリッド56との間のほぼフィールドフリーの空間59に達した後、高電圧に切り換えられる。

0109

本発明の好適な実施形態を記載したが、これらの概念取り入れた他の実施形態も用いられ得ることが、当業者には明らかである。従って、これらの実施形態は、開示された実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の趣旨と範囲によってのみ限定されるものである。

発明の効果

0110

本発明により、パルス化イオン発生器と、パルス化イオン発生器と連絡するタイミング制御イオンセレクタと、イオンセレクタと連絡するイオンフラグメント器と、フラグメンテーションチャンバと連絡する分析器とを有する、タンデム飛行時間型質量分析計が提供される。

図面の簡単な説明

0111

図1図1は、本発明の一実施形態のブロック図である。
図2図2Aは、本発明の、図1の実施形態の模式図である。
図2図2Bは、本発明の、図2Aに示す実施形態の、各点に存在する電圧を示すグラフである。
図3図3は、図2のフラグメンテーションチャンバの一実施形態の模式図である。
図4図4は、図2のパルス化イオンデフレクタおよび関連するゲーティング電位の一実施形態の模式図である。
図5図5は、図2に示すパルス化イオン生成器、タイミング制御イオンセレクタ、およびタイミング制御引き出しにおいて用いられる電圧スイッチング回路の一実施形態のブロック図である。
図6図6は、本発明の、図2の実施形態のための、質量電荷比2000を有する仮定的イオンフラグメンテーションにより得られたフラグメントイオンの、分解能と質量電荷比との関係を示すグラフである。
図7図7は、本発明の、図1の実施形態の、様々なフィールドフリーの領域に位置し得る積層プレートアレイを含むイオンガイドの実施形態の模式図である。
図8図8は、図1の本発明の、別の実施形態の模式図である。
図9図9は、本発明の、図8に示す実施形態のための、フラグメンテーションチャンバとしての衝突セルの実施形態の模式図である。
図9図9Aは、図9の衝突セルの断面図である。
図10図10は、本発明の、図8に示す実施形態のフラグメンテーションチャンバとしての光解離セルの実施形態の模式図である。
図11図11は、本発明の、図8に示す実施形態のフラグメンテーションチャンバ内での、イオンと固体または液体表面との衝突を用いた実施形態の模式図である。
図12図12は、本発明の、図1の実施形態の模式図であって、タイミング制御イオンセレクタと、イオンフラグメンテーションチャンバと、パルス化イオン生成器とが同一の真空ハウジング内に収容されている実施形態の模式図である。

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