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課題
解決手段
概要
背景
SUM鋼や11系鋼等のS含有快削鋼は、圧延後引抜加工して、磨棒鋼として自動盤切削用に供される。このような従来の快削鋼は高速度鋼工具による被削性を向上するため鋼中にSを添加した硫黄快削鋼が用いられていた。
この硫黄快削鋼中のS含有量は多ければ多いほど被削性は良好になるが、反面、圧延、鍛造等の熱間加工時の赤熱脆性のため割れ等の不良品が多く発生する。その理由は高硫黄のため低融点のFeSが結晶粒界に析出するためである。。そして高S鋼の場合、圧延方向に対し横方向の延性・絞り値が低下し、引抜時のトラブルが生ずるため一般的にはS含有量は0.35%を上限とし、多くても0.40%止まりであった。
更に、すぐれた被削性を有する快削鋼としてSに加えてPb、Te、Bi等の重金属を含有する複合快削鋼が開発されたが、近年環境問題が重要視され、環境に悪影響を与えるこれら重金属を使用しない快削鋼で、しかも被削性が含重金属快削鋼に勝るとも劣らない鋼の開発が待たれていた。
概要
環境に悪影響を与える重金属の添加による被削性の向上を図らず、含重金属快削鋼に対して被削性が勝るとも劣らない含硫黄快削鋼を提供する。
質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.35%以下(0を含む)、Mn:0.30〜2.00%、P:0.01〜0.15%、S:0.35〜0.65%、O:0.0100〜0.0350%、N:0.020%以下、Al:0.005%以下(0も含む)、Nb:0.02〜0.20%を含有し、さらにV:0.05〜0.50%、Ti:0.02〜0.20%の1種又は2種を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる化学成分の鋼中の非金属介在物の主たる硫化物系介在物が1mm2当り500〜1000個存在することを特徴とする含硫黄快削鋼である。
目的
本発明は環境に悪影響を与える重金属の添加による被削性の向上を図らず、しかも製造上特に熱間加工時や、冷間引抜時に問題をおこすことのない被削性に優れた含硫黄快削鋼を提供することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
SUM鋼や11系鋼等のS含有快削鋼は、圧延後引抜加工して、磨棒鋼として自動盤切削用に供される。このような従来の快削鋼は高速度鋼工具による被削性を向上するため鋼中にSを添加した硫黄快削鋼が用いられていた。
0003
この硫黄快削鋼中のS含有量は多ければ多いほど被削性は良好になるが、反面、圧延、鍛造等の熱間加工時の赤熱脆性のため割れ等の不良品が多く発生する。その理由は高硫黄のため低融点のFeSが結晶粒界に析出するためである。。そして高S鋼の場合、圧延方向に対し横方向の延性・絞り値が低下し、引抜時のトラブルが生ずるため一般的にはS含有量は0.35%を上限とし、多くても0.40%止まりであった。
0004
更に、すぐれた被削性を有する快削鋼としてSに加えてPb、Te、Bi等の重金属を含有する複合快削鋼が開発されたが、近年環境問題が重要視され、環境に悪影響を与えるこれら重金属を使用しない快削鋼で、しかも被削性が含重金属快削鋼に勝るとも劣らない鋼の開発が待たれていた。
発明が解決しようとする課題
0005
本発明は環境に悪影響を与える重金属の添加による被削性の向上を図らず、しかも製造上特に熱間加工時や、冷間引抜時に問題をおこすことのない被削性に優れた含硫黄快削鋼を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0006
本発明は、質量%で、
C:0.03〜0.20%
Si:0.35%以下(0を含む)
Mn:0.30〜2.00%
P:0.01〜0.15%
S:0.35〜0.65%
O:0.0100〜0.0250%
N:0.020%以下
Al:0.005%以下(0も含む)
Nb:0.02〜0.20%
を含有し、更に
V:0.05〜0.50%
Ti:0.02〜0.20%
の1種又は2種を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる化学成分の鋼中の非金属介在物の主たる硫化物系介在物の平均サイズが50μm2以下であり、且つ、硫化物介在物が1mm2当り500個乃至1000個存在することを特徴とする高硫黄快削鋼である。
0007
即ち、本発明では、まず第一にS含有量を従来上限とされていた0.35%を超える多量のSを含有させる。その多量に含有させたSによる熱間脆性等の悪影響が出ないようにするために、Mnを多量に含有させてFeSの析出を止めMnS系酸化物のみにする。
0008
また、良好な快削性を得るためにはこのMnS系酸化物と切削工具との接触する頻度が多いほど良いことを発見した。そのために、MnS系硫化物の鋼中への析出は溶鋼の凝固時から始まるが、溶鋼温度において溶鋼中に析出しているTiNや凝固の途中でγ鉄中に析出するNbN、VNをMnS系硫化物の析出核として利用し微細化を図り析出個数を増し、かつ均等な分散を図ることが出来ることを見出した。
0009
その上、工具寿命を短くするα型Al2O3系介在物の存在を無くすため溶鋼の脱酸をAlによらずSi−Mnの共同脱酸をベースにし、しかもSiを0.35%以下にすることにより、硬い珪酸系介在物も極力無くし、脱酸後の溶鋼の酸素レベルを0.01〜0.025%に安定して保つため、脱酸補助剤としてのNbに加えV、Tiの一種又は二種を添加する。それらの溶鋼への残留物もMnS系硫化物の析出核として利用することにより、MnS系硫化物が微細、均等に分散析出させることが可能であることを見出した。ここでいう残留物には当然、Nbなどの酸化物も含まれ、これらがMnS系介在物の析出核や複合介在物の形で接着剤としての役割を果たすことは十分に考えられる。
0010
しかも酸素レベルを0.01〜0.0250%に保つことにより析出するMnS系硫化物の硬度も下がり、工具寿命の延長とアスペクト比(介在物の長さと径の比)を小さくして切屑破砕性が向上することを見出した。
発明を実施するための最良の形態
0012
以下、本発明の含硫黄快削鋼において化学成分の含有率を限定する理由について説明する。
0013
C:0.03〜0.20%
Cが多い時は、引抜き割れ性を生じるのでCの上限は0.20%とする。また、Cが低い時は強度が低くなりすぎるので、Cの下限は0.03%とする。
0014
Si:0.35%以下(0を含む)
SiはMnと共同の脱酸剤として用いるが、過多に添加する時は鋼の硬度が上がり、その上脱酸生成物のけい素酸化物は硬く、工具寿命を劣化させるので、上限は0.35%とした。好ましくは0.10%添加し、Mnとの共同脱酸を実行し、鋳造前の溶鋼のO含有量を0.01〜0.025%に確実に保たせるため、後述のNb並びにV、Tiの1種又は2種を脱酸補助剤として用いる。
0015
Mn:0.30〜2.00%
熱間脆性の原因となる低融点のFeSの粒界析出を防ぐため、Mnを添加し安定なMnSを析出させる。この効果を有効に得るために0.30〜2.0%の範囲で添加することが必要である。
0017
S:0.35〜0.65%
S含有量が高いほど被削性が良好となること及びS含有量が多くなると熱間加工性が低下することは知られている。そのため従来Sの上限は0.35%としていた。本発明によるNb並びにV、Tiを脱酸補助剤とするSi−Mnの共同脱酸を実施すれば、Sの上限は0.65%としてもなんら熱間加工性を損ねることはない。
0018
O:0.0100〜0.0250%
溶鋼の脱炭精練末期の酸素量は約600〜1200ppmであるが、このような酸素レベルではリミングアクションにより連続鋳造が不可能となるので、普通Alによる強制脱酸を行なうが、本発明ではAlによる脱酸を行なうと硬いα型Al2O3が脱酸生成物として生成し、それが原因で切削時に工具寿命を低下させるので、本発明ではAlによる脱酸は意図的に行なわない。さらにSiも好ましくは0.10%添加にとどめSi−Mn共同脱酸限である約250ppmより100ppmの範囲に安定的にOレベルを保つため補助的にMnと同程度の脱酸力をもつNbやV及び少量のTiを用いて脱酸する。
0019
N:0.020%以下
本発明の特色はMn硫化物と鋼中におおよそ均等に分散析出させるため、析出核となる微細なNbN、VN、TiNをγ鉄中に析出させ、MnSをその各を中心に分散させようとするものである。そのためN含有率を最大0.020%必要とする。
0020
Al:0.005%以下(0を含む)
前述したように、Alによる強制脱酸は意図的に行なわないが、Alは使用するFeSi、FeNb、FeV、FeTi中に若干含有し、それの溶鋼への添加に伴い微量Alが鋼中に残留してしまう。したがって、その最大量を0.005%と制限する。
0021
Nb:0.02〜0.20%
本発明の目的の一つは前述のようにMnSの生成によってFeSの析出を抑え、加工性と共に被削性を向上させる点にあるが、脱酸助剤としてのNbは溶鋼が凝固する途中でγ鉄中に脱酸生成物、窒化物並びに炭窒化物を析出し、これらがMnSの析出核として有効に働き、硫化物介在物の微細化と共に析出個数を増し、かつ均等に分散して囲う性とひ削性を増大する。その量が0.02%未満及び0.20%を超えるとその効果が十分でない。
0022
V:0.05〜0.50%又は/及びTi:0.02〜0.20%
前述したように、これらの元素はSi−Mn共同脱酸の補助的役割を担わせ、溶鋼中の酸素量を100〜250ppmの範囲に安定して保持し、溶鋼の凝固後のMnSの形状を被削性に好影響を与える球形に近いものにし、且つ、上記Nbと同じく、MnSの析出を鋼中におおよそ均等に分散させるため、γ鉄中に析出するVの窒化物及び溶鋼中に析出するTiNが有効に作用する。その量はそれぞれ下限未満並びに上限を超えると効果が十分でない。
0024
前記鋼塊を直径40mmの丸棒に鍛伸し、供試材を作り、旋盤を使い旋削試験を行なった。試験条件を下記に示す。
供試材熱処理:焼準
工具:超硬チップSNGA120404
切削速度 :100m/分
切込み量:1mm
送り:0.02、0.05、0.10、 0.15、 0.20mm/rev
切削油:なし
評価項目:切屑の破砕性
0026
これらの結果から明らかなように、本発明の快削鋼は環境に有害な重金属を一切含有せず、従来の重金属含有快削鋼に勝るとも劣らない快削鋼を発明できた。被削性の評価は切屑の破砕性によって行なった。その破砕性の優劣の評価基準は図1に示す◎、○、△、×の4段階で評価した。本発明では表2に示すように、旋盤の各送り速度の全てにおいて◎であった。
0027
又、鋼中の硫化物の性状(平均サイズ、個数)を次の方法で調査した。被削性試験試料の延長である直径D:40mmの丸棒より鍛伸方向に対し横方向の断面すなわち横断面の表皮から直径の1/6(D/6)迄の箇所から顕微鏡試料を切り出し、400倍の光学顕微鏡により硫化物系介在物の平均サイズ、個数を調査した。横断面での介在物の観察は介在物の大きさやその分布状態を容易に把握できる。
発明の効果
0028
本発明によれば、環境に悪影響を与える重金属の添加による被削性の向上を図ることなく、しかも製造上の問題を起こすことなく重金属添加の場合に勝るとも劣らない被削性を有する含硫黄快削鋼を提供する。