図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2003年9月25日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

消化酵素トリプシン酵素活性阻害作用をもつトリプシンインヒビターとして有用な新規物質を提供することを目的とする。

解決手段

270〜280℃(分解)の融点と3697.5の分子量をもつ白色粉末として、トリプシンインヒビターである新規ペプチド、TU-5350物質がボーベリアエスピーAB5350株(FERM P-18715号)の培養により得られた。TU-5350物質は、35個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を有し、その構成アミノ酸は、下記の13種:

Thr、Ser、Glu、Pro、Gly、Ala、Cys、Ile、Leu、Phe、Lys、Trp、Arg

である。

概要

背景

マメ科植物、例えば大豆植物には、トリプシンインヒビターを含むいくつかのプロテアーゼインヒビターが存在することが知られている(Yamamotoら、J. Biochem. 94巻、849頁 (1983))。植物におけるトリプシンインヒビターの役割はよくわかっていないが、そのトリプシンインヒビターは昆虫発育を妨げることが報告されている(R. Johnsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86巻、9871頁 (1989))。しかし、植物におけるトリプシンインヒビターは約8,000〜20,000の大きい分子量を有する蛋白質であること、植物中のその生成量が微量であることから、植物から安価に製造することが難しい。このため、植物におけるトリプシンインヒビターは、その殺虫剤としての開発は行なわれていない。

一方、近年、マメ科植物のトリプシンインヒビター蛋白をコードする遺伝子を、異種植物に導入することにより、耐虫性植物を作る試みが行なわれている(R.Johnsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86巻、9871頁 (1989)、特開平11−075845号公報、等)。

また、トリプシンインヒビターは脊椎動物膵臓血漿、尿中に存在することが確認されており、消化酵素トリプシン活性阻害する蛋白質であるトリプシンインヒビターが知られる〔B. Kasselら、MethodsEnzymol. 19巻; 844頁(1970)〕。このような医薬用途に用いられている蛋白質性のトリプシンインヒビターとしては、アプロチニンから抽出可能な物質)や、ウリナスタチン(ヒトの尿から抽出可能な物質)が知られている。アプロチニンおよびウリナスタチンは自己消化が原因とされる急性膵炎治療薬として使用されている。

しかし、従来知られている蛋白質性のトリプシンインヒビターは、分子量が大きい物質であるから、その製造における精製にはゲル濾過法等の複雑な方法を用いなければならず、操作が煩雑になる欠点がある。また、その蛋白質性トリプシンインヒビターのほとんどが動植物から抽出法により製造されており、価格も高価にならざるを得ない。

微生物抗生物質の製造において使用されていることから明らかなように、微生物の使用は生理活性物質大量生産に適している。しかし、微生物が生産するトリプシンインヒビターとしては、現在までにわずかな物質しか知られておらず、そのトリプシン阻害効果も充分なものではなかった。その例としては、アンチパイン(H. Sudaら、J. Antibiotics, 25巻、263頁(1972))およびロイペプチン(H. Umezawaら、Chem. Pharm. Bull. 17巻、1986頁(1969))などがあげられる。

概要

消化酵素トリプシンに酵素活性阻害作用をもつトリプシンインヒビターとして有用な新規物質を提供することを目的とする。

270〜280℃(分解)の融点と3697.5の分子量をもつ白色粉末として、トリプシンインヒビターである新規ペプチド、TU-5350物質がボーベリアエスピーAB5350株(FERM P-18715号)の培養により得られた。TU-5350物質は、35個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を有し、その構成アミノ酸は、下記の13種:

Thr、Ser、Glu、Pro、Gly、Ala、Cys、Ile、Leu、Phe、Lys、Trp、Arg

である。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

トリプシンに対する阻害活性を有し且つ下記の物理化学性状と下記のアミノ酸配列部分構造を有する新規ペプチド、TU-5350物質。(1)外観白色粉末(2)比旋光度([α]D25) ; −268°(c 0.07、H2O):(3)融点; 270〜280℃(分解)(4)分子量 ; 3697.5(5)紫外線吸収スペクトル(H2O);λmax nm(ε) 223(83677)、280(10563、肩吸収)(6)赤外線吸収スペクトルKBr錠剤法);υmax (cm-1) 3100〜3650、2926、1645、1541(7)構成アミノ酸の種類は下記の13種である:Thr、Ser、Glu、Pro、Gly、Ala、Cys、Ile、Leu、Phe、Lys、Trp、Arg(8) 本TU-5350物質は35個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を有し、そのN末端の部分構造は下記の配列を有する:(N末端)Ser−Gly−Ile−Cys−Trp−Arg−Ala−Cys−Phe−Pro−Ser−Pro−Pro−Ser−Cys−Pro−Glu−Gly−Leu−Glu−Ala−Glu−Gln−Lys−*但し、上記の式中で * は未確定の10個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を表す。

請求項2

ボーベリア(Beauveria)属に属し、請求項1に記載の新規ペプチド、TU-5350物質を生産する能力を有する微生物培地中で培養し、その培養物中に新規ペプチド、TU-5350物質を生成蓄積せしめ、次いでその培養物から該TU-5350物質を採取することを特徴とする、新規ペプチド、TU-5350物質の製造法

請求項3

請求項1に記載の新規ペプチド、TU-5350物質を生産できる特性を持ち、かつ後記する菌学的特徴を有するボーベリア・エスピーAB5350(Beauveria sp.AB5350)株。

請求項4

請求項1に記載の新規ペプチド、TU-5350物質またはその塩を有効成分とする農園芸用殺虫剤

請求項5

請求項1に記載の新規ペプチド、TU-5350物質またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、トリプシンの過剰蓄積に起因した疾病治療用医薬組成物

技術分野

0001

本発明は消化酵素トリプシン阻害活性を有してトリプシンインヒビターとして有用である新規ペプチド、TU-5350物質(以下、単にTU-5350物質と称することもある)に関し、またその製造法およびその用途に関するものである。

0002

更に詳しく言えば、本発明は、ボーベリア属に属するTU-5350物質生産菌を培養して生産される新規ペプチド、TU-5350物質に関し、またこのTU-5350物質の製造法に関する。また本発明はTU-5350物質またはその塩を有効成分とする農園芸用殺虫剤、あるいはヒトのトリプシンの過剰蓄積に起因した疾病治療用医薬組成物に関する。しかもまた、本発明は、TU-5350物質の生産菌として有用である新規な微生物であるところの、ボーベリア・エスピーAB5350(Beauveria sp.AB5350)株に関するものである。本発明の新規ペプチド、TU-5350物質は、植物に対する害虫、特にヨトウガ殺虫活性あるいは幼虫生育抑制活性を有することから、農園芸用殺虫剤として有用である。また、TU-5350物質は強力なトリプシン阻害活性を有することから、トリプシンの過剰蓄積が原因で引き起こされる疾病、例えば人間の急性膵炎の治療用の医薬として期待される。

背景技術

0003

マメ科植物、例えば大豆植物には、トリプシンインヒビターを含むいくつかのプロテアーゼインヒビターが存在することが知られている(Yamamotoら、J. Biochem. 94巻、849頁 (1983))。植物におけるトリプシンインヒビターの役割はよくわかっていないが、そのトリプシンインヒビターは昆虫発育を妨げることが報告されている(R. Johnsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86巻、9871頁 (1989))。しかし、植物におけるトリプシンインヒビターは約8,000〜20,000の大きい分子量を有する蛋白質であること、植物中のその生成量が微量であることから、植物から安価に製造することが難しい。このため、植物におけるトリプシンインヒビターは、その殺虫剤としての開発は行なわれていない。

0004

一方、近年、マメ科植物のトリプシンインヒビター蛋白をコードする遺伝子を、異種植物に導入することにより、耐虫性植物を作る試みが行なわれている(R.Johnsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86巻、9871頁 (1989)、特開平11−075845号公報、等)。

0005

また、トリプシンインヒビターは脊椎動物膵臓血漿、尿中に存在することが確認されており、消化酵素トリプシンの活性を阻害する蛋白質であるトリプシンインヒビターが知られる〔B. Kasselら、MethodsEnzymol. 19巻; 844頁(1970)〕。このような医薬用途に用いられている蛋白質性のトリプシンインヒビターとしては、アプロチニンから抽出可能な物質)や、ウリナスタチン(ヒトの尿から抽出可能な物質)が知られている。アプロチニンおよびウリナスタチンは自己消化が原因とされる急性膵炎の治療薬として使用されている。

0006

しかし、従来知られている蛋白質性のトリプシンインヒビターは、分子量が大きい物質であるから、その製造における精製にはゲル濾過法等の複雑な方法を用いなければならず、操作が煩雑になる欠点がある。また、その蛋白質性トリプシンインヒビターのほとんどが動植物から抽出法により製造されており、価格も高価にならざるを得ない。

0007

微生物は抗生物質の製造において使用されていることから明らかなように、微生物の使用は生理活性物質大量生産に適している。しかし、微生物が生産するトリプシンインヒビターとしては、現在までにわずかな物質しか知られておらず、そのトリプシン阻害効果も充分なものではなかった。その例としては、アンチパイン(H. Sudaら、J. Antibiotics, 25巻、263頁(1972))およびロイペプチン(H. Umezawaら、Chem. Pharm. Bull. 17巻、1986頁(1969))などがあげられる。

0008

上述のように、トリプシンインヒビターは、農業場面に限らず医薬用途としても有用な物質である。したがって、新規で安全な殺虫活性物質は農業場面で待望されており、さらには、急性膵炎に有効な治療薬は少なく、それらの新規な物質とその利用場面の開発が強く望まれている。

0009

したがって、本発明の目的は、上記の課題に対応する望ましい性質をもつ新規で有用なトリプシンインヒビターを微生物の培養により提供することにあり、またそのような新規なトリプシンインヒビターの製造法を確立することにあり、それらによって、従来技術に伴う課題を解決しようとするものである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記課題を解決することを目的として研究を重ねた。その一環として、種々の土壌および植物などから微生物を分離し、その微生物が培養液中に生産するトリプシン阻害活性を示す物質を収得することについて鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、糸状菌一種であるボーベリア属に属する新規な菌株を培養し、その培養液中にトリプシン阻害活性を示す物質が生産されていることを発見した。そこで、研究の結果として、該微生物の培養物からトリプシン阻害活性物質を分離・精製・単離することに成功した。該物質はその化学構造および生物活性の対象、効果などを含めた諸性質の点で既知物質と一致しない新規なペプチド物質であることを確認し、これをTU-5350物質と称することにした。また、該TU-5350物質は、中程度の分子量を持つペプチドであるが、熱に対して比較的安定であり、濃縮など熱処理を要する工程でも失活しない。また、高分子蛋白の精製単離に通常用いられるゲル濾過法は該TU-5350物質の精製工程で必要とせず、低分子物質を精製単離する一般的方法で効率良く回収及び精製単離することができるという、TU-5350物質の安価な製造法が提供できることが判明した。

0011

すなわち、第1の本発明としては、トリプシンに対する阻害活性を有し且つ下記の物理化学性状と下記のアミノ酸配列部分構造を有する新規ペプチド、TU-5350物質を提供するものである。
(1)外観白色粉末
(2)比旋光度([α]D25) ; ‐268°(c 0.07、H2O):
(3)融点; 270〜280℃(分解)
(4)分子量 ; 3697.5
(5)紫外線吸収スペクトル(H2O);λmax nm(ε) 223(83677)、280(10563、肩吸収)
(6)赤外線吸収スペクトルKBr錠剤法);υmax (cm-1) 3100〜3650、2926、1645、1541
(7)構成アミノ酸の種類は下記の13種である:Thr、Ser、Glu、Pro、Gly、Ala、Cys、Ile、Leu、Phe、Lys、Trp、Arg
(8) 本TU-5350物質は35個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を有し、そのN末端の部分構造は下記の配列を有する:
(N末端)Ser−Gly−Ile−Cys−Trp−Arg−Ala−Cys−Phe−Pro−Ser−Pro−Pro−Ser−Cys−Pro−Glu−Gly−Leu−Glu−Ala−Glu−Gln−Lys−*
但し、上記の式中で*は未確定の10個のアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を表す。

0012

また、第2の本発明によると、ボーベリア属に属する前記の新規ペプチド、TU-5350物質の生産菌を培地中で培養し、その培養物から前記のTU-5350物質を採取することを特徴とする、ペプチド、TU-5350物質の製造法が提供される。

発明を実施するための最良の形態

0013

次に、第2の本発明によるTU-5350物質の製造法について説明する。本発明の方法で用いられるTU-5350物質の生産菌は、TU-5350物質またはその塩を産生する能力を有するものであれば、いかなる微生物でもよい。具体的な例としては、本発明者らが神奈川県足柄の土壌より新たに分離したボーベリア属の菌株AB5350があり、この菌株は本発明の方法に最も有効に用いられるTU-5350物質生産菌の一例である。

0014

このAB5350株の菌学的性質を以下に記載する。
(1) 各培地における生育状態
AB5350株のコーンミール寒天培地上における生育は良好であり、25℃、12日間培養で得られる集落の直径は40〜42mmに達する。集落はビロード状〜やや粉状を呈し、集落表面は淡白色で、裏面も淡白色を呈する。菌糸隔壁を有し、培地中および培地上に伸長する。菌糸は直径が1.5〜5.0μmで、無色、平滑であり、分枝する。AB5350株は、25℃で約1週間ほど培養すると、集落表面がやや粉状を呈し、分生子の形成が観察される。分生子柄気生菌糸から直接、あるいは短い柄から生じ、分生子柄の基部は亜球形状あるいはフラスコ状にふくらんでいる。分生子柄の大きさは4.0〜10.0×2.0〜3.0μmである。分生子柄の先端は細く伸び分生子形成に従ってジグザグ状を呈し、分生子柄の先端は長さ6.0〜20.0μm、幅1.0〜1.5μmである。分生子は単細胞で、無色、平滑、球形あるいは幅広だ円形を呈し、大きさが2.0〜4.0×1.5〜3.0μmであり、分生子柄の小突起状出芽形成するシンポジオ型分生子である。

0015

麦芽エキス培地上におけるAB5350株の生育は、コーンミール寒天培地上に比べやや遅く、25℃、12日間の培養で集落の直径は21〜22mmに達する。集落は綿毛状〜羊毛状を呈し、集落表面は白色で、裏面は淡黄白色〜淡白色を呈する。ポテトデキストロース寒天培地上でのAB5350株の生育は、麦芽エキス培地上における生育と同等で、25℃、12日間の培養で集落の直径は24〜25mmに達する。集落は綿毛状〜羊毛状を呈し、集落表面は白色で、裏面は淡黄白色〜淡白色を呈する。
(2)生理的性
生育温度
麦芽エキス寒天培地を用いて、5℃、10℃、15℃、20℃、24℃、27℃、30℃および37℃の各温度で培養した結果、AB5350株は10℃〜30℃まで何れの温度でも生育したが、5℃および37℃では生育しなかった。生育最適温度は24℃〜27℃と思われる。
生育pH
pHを3、4、5、6、7、8、9および10に調整した麦芽エキス液体培地を用いて、25℃で培養した結果、AB5350株はpH3〜10まで生育した。最適生育pHは、6〜8と思われる。

0016

以上の菌学的性質から、AB5350株の分類学上の位置をジェイ・エイフォンアークス著、ザ・ジェネラ・オブファンジャイ・スポレイティングイン・ピュア・カルチャー、第3版、ジェイ・クレイマー社、バダッツ、1981年 (J.A. von Arx, The Genera of Fungi Sporulating in Pure Culture, 3rd ed., J.Cramer, Vaduz, 1981)に従って検索した。その結果、本菌株はボーベリア属に属することが認められ、本発明者らは、AB5350株をボーベリア・エスピー・AB5350(Beauveria sp. AB5350)と命名した。

0017

なお、AB5350株は独立行政法人産業技術総合研究所生物寄託センターに寄託申請され、平成14年2月19日、FERM P-18715号として受託されている。

0018

以上、TU-5350物質生産菌の一例としてのAB5350株について説明したが、一般的には、菌類菌学上の性状は極めて変化しやすく、一定したものではないことがよく知られている。菌類は、自然的あるいは通常行われている紫外線照射X線照射変異誘発剤(例えば、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンおよびエチルメタンスルホネート等)または遺伝子組換えを用いる人為的変異手段により変異することは周知の事実である。このような自然変異株ならびに人工変異株も含め、ボーベリアに属し、TU-5350物質を生産する能力を有する菌株は、すべて本発明に使用することができる。

0019

TU-5350物質の製造にあたって、本発明の方法では、まず、ボーベリア属に属するTU-5350物質生産菌を通常の微生物が利用しうる栄養物を含有する培地中で培養する。TU-5350物質生産菌の培養においては、微生物の培養に用いられる通常の培養方法が適用される。栄養源としては、TU-5350物質生産菌が資化しうる炭素源および窒素源、ならびに無機塩などを適当な組成で含有する培地であれば、天然培地合成培地のいずれでも利用できる。

0020

資化しうる炭素源としては、グルコースシュクロースガラクトースデキストリングリセロール澱粉水飴糖蜜、動・植物油等を利用できる。また、窒素源としては、大豆粉小麦胚芽コーンスティープリカー綿実かす肉エキスペプトン酵母エキス硫酸アンモニウム硝酸ナトリウム尿素などを使用できる。そのほか必要に応じ、ナトリウムカリウムカルシウムマグネシウムコバルト塩素燐酸硫酸およびその他のイオンを生成することができる無機塩類を添加することは有効である。また、TU-5350物質生産菌の発育を助け、TU-5350物質の生産を促進するような無機物および(または)有機物を適当に添加することができる。

0021

培養方法としては、好気的条件での培養法、特に深部液体培養法が最も適している。培養に適当な温度は、15〜30℃であるが、多くの場合24〜30℃で培養する。TU-5350物質の生産は培地や培養条件によって異なるが、振とう培養タンク培養とも2〜10日の間でその蓄積が最高に達する。培養液中のTU-5350物質の蓄積量が最高に達したときに培養を停止し、培養液から発酵生産物を採取する一般的な方法に準じてTU-5350物質の採取を行うのがよい。これらの培地の組成、培地の液性培養温度撹拌速度および通気量等の培養条件は、使用する菌株の種類および外部条件等に応じて、好ましい結果が得られるように便宜調節あるいは選択する。液体培養において発泡がある場合はシリコン油、植物油および界面活性剤等の消泡剤を便宜使用する。

0022

このようにして得られた培養物中に蓄積されたTU-5350物質は、前述した物理化学的性状を有するので、その性状にしたがって培養物から回収し、分離精製することが可能である。特に、以下の方法により効率的に分離精製することができる。すなわち、蓄積したTU-5350物質を培養物中から採取するに際しては、通常の生理活性物質を培養物中から採取する方法が適用される。すなわち、培養物から濾過または遠心分離により菌体を分離し、得られた培養ろ液から、イオン交換樹脂合成吸着樹脂シリカゲルシラナイズドシリカゲル、アルミナセルロース珪藻土ゲル濾過剤、活性炭等を用いるカラムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィーによる活性物質吸脱着処理あるいは逆層カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーなどを行うことによってTU-5350物質を分離することができる。

0023

第3の本発明によると、新規な微生物として、前記のペプチド、TU-5350物質を生産できる特性を持ち、かつ前記の菌学的な特徴を有するボーベリア・エスピー株AB5350株が提供される。

0024

第4の本発明によると、前記のペプチド、TU-5350物質またはその塩を、有効成分として含有する、農園芸用殺虫剤が提供される。TU-5350物質を農園芸用殺虫剤の有効成分として用いる場合には、その使用目的に応じて単体でも用いることができるが、生物効果を助長、あるいは安定化するためにTU-5350物質を適当な担体および補助剤混和して成る組成物を調製し、これを適当な製剤とし、これを直接使用するかまたは必要に応じて水で希釈して用いる。

0025

第5の本発明によると、前記のペプチド、TU-5350物質またはその塩を有効成分として含有する医薬組成物が提供される。本医薬組成物は急性膵炎治療剤等の医薬品として期待される。TU-5350物質またはその塩を医薬に有効成分として使用する場合には、単独でも投与できるが、通常は担体、賦形剤と混合して散剤錠剤軟膏剤注射剤経口剤坐剤等の製剤として投与する。配合される担体、賦形剤は製薬学的許容されるものであればいずれでもよく、その種類および組成は投与経路投与方法によって適宜選択する。投与量は、年齢、体重等によって異なるが、通常は一日あたり成人に対して前記のU5350物質の1mg〜1,000mg程度を経口的あるいは非経口的(例えば静脈に注射)に投与する。

0026

次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは単なる一例であって、これによって本発明が限定されるものではない。また、ここに例示しなかった多くの変法あるいは修飾手段が用いられることは言うまでもなく可能なことであり、有効な手段となり得る。なお、実施例中に部とあるのは重量部を示している。

0027

実施例1
本例は、TU-5350物質の醗酵的製造例を例示する。TU-5350物質生産菌の培養に用いた生産培地は、ブドウ糖2.0%、デキストリン1.0%、ポリペプトン0.5%、マルトエキス0.5%、酵母エキス0.2%、炭酸カルシウウム 0.3%、V8ジュース(Cambel)の組成からなる(pH6.5)。前記の生産培地100mlを分注した500ml容バッフル付き三角フラスコ50本(培地5L分)を121℃で20分間滅菌した。滅菌された培地にフラスコ1本あたりボーベリア・エスピーAB5350株(FERM P-18715号)の斜面寒天培養菌体の1〜2白金耳植菌した。

0028

その後、ロータリーシェーカー(200rpm)上で、25℃で4日間、回転振とう培養した。培養終了後、得られた培養液を濾過することにより、培養濾液5Lを得た。トリプシン阻害活性のある培養濾液をDiaion HP-20カラムに吸着させ、蒸留水、30%メタノール水で洗浄後、80%メタノール水で溶出させた。溶出液減圧濃縮後、凍結乾燥して粉末を得た(収量;2.245g;トリプシンの酵素活性を50%阻害する該粉末の濃度 IC50=300μg/ml)。

0029

次に、前記の粉末を水に溶解させ、その水溶液中性の状態でAmberlite IRC-50(H+)(登録商標)カラムに通してTU-5350物質を吸着させた。カラムを蒸留水で洗浄後、0.5N-NH4OHで溶出させ、溶出液を減圧濃縮後、凍結乾燥によって粗精製粉末を得た(収量;450mg:トリプシンの酵素活性を50%阻害する該粉末の濃度IC50=60μg/ml)。更に、この粗精製粉末を水に溶解し、その水溶液をMCIGEL CHP-20P(登録商標)カラムに通して活性物質を吸着させ、蒸留水、35%メタノール水で洗浄後、55%メタノール水、80%メタノール水で段階的に溶出させた。トリプシン阻害活性物質は、55%メタノール水から80%メタノール水に移動層溶媒きり代えるあたりで溶出された。その溶出液活性画分減圧下に濃縮、乾燥して白色粉末を得た(収量;140mg;IC50=16μg/ml)。

0030

その白色粉末を最終的に、CAPCELLPAC C18(10φ×250mm)カラム(登録商標)による分取HPLCにかけることによって単一なTU-5350物質に精製された(収量;23.38mg)。TU-5350物質の純品は、トリプシンの酵素活性を50%阻害する濃度 IC50が5.2μg/mlであった。HPLC分析条件を以下に記す。
展開溶媒:0.01%TFAトリフルオロ酢酸)を含む20%アセトニトリル水
流速:1.6ml/min
検出光:UV235nm
溶出時間: 17.5分
このように精製単離したTU-5350物質は、上記HPLC及び各種機器分析の結果、単一の純粋物質であることが確認された。

0031

なお、各精製段階におけるTU-5350物質の純度指標は、トリプシン阻害活性の力価、すなわち後記のトリプシン阻害率(%)を測定すことから算出した。また、培養濾液からの単一な精製したTU-5350物質の収率は、60%であった。トリプシン阻害率(%)の測定方法は後記の試験例1に例示した。

0032

次に、本発明のTU-5350物質の生理活性を下記の試験例により説明する。
試験例1トリプシンに対するTU-5350物質の酵素阻害活性の試験
トリプシンは蛋白分解酵素の一種であり、例えば水に難溶なカゼインに作用させると、カゼインが加水分解により水に易溶アミノ酸あるいは低分子ペプチドまで消化分解される。カゼインの白濁した水溶液にトリプシンを作用させた場合に、反応前のカゼインの白濁液がトリプシンと反応後、半透明な水溶液になる。このような性質を利用して、トリプシンの酵素活性の阻害試験法構築した。

0033

すなわち、カゼインを寒天に封じ込めた寒天平板培地(カゼイン平板培地)を作成し、次に、トリプシンを染み込ませた抗生物質力価検定用ろ紙ディスク(直径8mm)をカゼイン平板培地におき、37℃で約一日作用させると、ろ紙ディスクの周辺のカゼインが消化分解し、半透明で円形酵素反応ゾーンが形成する。トリプシンの酵素活性の阻害試験は、予め供試のトリプシンインヒビターを添加して一定時間トリプシンに作用させて得た反応液を、抗生物質力価検定用ろ紙ディスク(直径8mm)に染み込ませ、そのろ紙ディスクを上記カゼイン平板培地上におき、平板培地上に形成される半透明で円形の酵素反応ゾーンの直径を測定する。トリプシンインヒビターの無添加の場合の試験区対照区)の酵素反応ゾーンの直径と、トリプシンインヒビターの添加の場合の試験区(処理区)の酵素反応ゾーンの直径を比較することでトリプシンの残存活性の評価を行った。

0034

以下に、本試験例で行った試験方法を詳記する。カゼイン平板培地は、1Lの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にカゼイン500mgを懸濁させ、更に500mMの塩化カルシウム10mlと寒天15gを加え、120℃で20分加圧滅菌後、シャーレに20ml分注して調製された。

0035

トリプシンインヒビターとトリプシンとの反応液の調製は次のように行った。すなわち、1M塩化カルシウム20μL、0.2Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.5) 20μLに100μg/ml濃度のトリプシン(ブタすい臓和光純薬製)20μLを加えて酵素溶液を調製し、このトリプシン溶液に対して、供試のトリプシンインヒビターを蒸留水で適当に希釈したトリプシンインヒビター水溶液140μLを加えた。その混合液の全量をトリス−塩酸緩衝液で200μLにした後、37℃で15分間保温してトリプシンとトリプシンインヒビターを反応させた(インヒビター添加試験区)。他方、前記のトリプシン溶液に対してトリプシンインヒビター無添加の蒸留水140μLを加えて37℃で15分間保温してトリプシン含有の反応溶液対照液)を調製し、これをコントロール(無添加試験区)とした。また、陽性比較対照区として、トリプシンインヒビターとして知られているロイペプチン(Leupeptin;和光純薬製)、大豆トリプシンインヒビター(和光純薬製)及びニワトリ卵白トリプシンインヒビター(和光純薬製)を用いて同様に試験した。

0036

次に、37℃で15分間保温後すぐの上記のトリプシンインヒビターとトリプシンとの反応溶液40μLを正確にはかりとり、これを直径8mmのろ紙ディスクに染みこませ、このろ紙ディスクを上記カゼイン平板培地上におき、37℃で20時間保温して、カゼインにトリプシンを作用させた。20時間保温後、カゼイン平板培地上でろ紙ディスク周辺に形成される半透明で円形の酵素反応ゾーンの直径を計測した。酵素反応ゾーンの直径から、ペーパーディスクの直径(8mm)を引いた直径の差の値は残存トリプシン活性比例関係にある。従って、インヒビターを添加した処理試験区の酵素反応ゾーンの直径と、インヒビター無添加であったコントロール試験区の酵素反応ゾーンの直径とを比べることによって、阻害されなかったトリプシンの残存活性が算出されるので、次の計算式からトリプシンインヒビターによるトリプシンの酵素活性の阻害率(%)を求めることができた。

0037

トリプシン酵素活性の阻害率(%)=100−{〔インヒビター添加試験区の酵素反応ゾーンの直径からペーパーディスクの直径(8mm)を引いた値〕÷〔インヒビター無添加試験区の酵素反応ゾーンの直径からペーパーディスクの直径(8mm)を引いた値〕}×100
また、トリプシン酵素活性の阻害率(%)は一定の濃度範囲のトリプシンインヒビター濃度の対数値と比例関係にあるので、トリプシンインヒビターの種々の濃度におけるトリプシン酵素活性の阻害率を求め、それらのデータを作図することによって、トリプシンの活性を50%阻害するのに要するトリプシンインヒビター濃度(IC50値)を算定した。得られた試験結果の一例を次の表1に示す。
ID=000002HE=040 WI=102 LX=0540 LY=2050
大豆及びニワトリ卵白トリプシンインヒビターは、それらの分子量が不明のためモル濃度でのIC50値を記載しなかった。

0038

試験例2ヨトウガ幼虫にたいす殺虫及び生育抑制試験
本試験においては、供試幼虫としてヨトウガ孵化幼虫を用い、にトリプシンインヒビターとしての本発明のTU-5350物質を加え、摂餌によりTU-5350物質を幼虫にとりこませた。このことによって得られる殺虫効果及び幼虫の生育抑制効果を、肉眼的に観察する方法で試験した。試験方法は以下のとおりである。

0039

人工飼料(インセクタLF、日本農産工業株式会社製の商品名)にTU-5350物質を濃度1000ppmの配合濃度になるように加えた。そのTU-5350物質添加飼料1gを直径3.5cmのプラスチックシャーレに入れた。そのシャーレにヨトウガ孵化直後幼虫を20頭/シャーレの割合で放虫し、27℃で8日間飼育した(処理区)。8日後に、殺虫活性及び幼虫の生育抑制活性を調査した。この調査に当って、生存している幼虫の体重を測定し、TU-5350物質の無添加区無処理区:コントロール)の幼虫の体重と比較することによって幼虫生育抑制活性を評価した。得られた結果の一例を次の表2に示した。

0040

ID=000003HE=130 WI=104 LX=0530 LY=0550
表2に示すように、無処理区の生存虫数が15頭であるが、これに対し処理区では7頭である。TU-5350物質は、明らかにヨトウガ幼虫に対し殺虫活性を示した。また、処理区における生存幼虫の体重平均が、無処理区の平均体重の3分の1以下であり、TU-5350物質はヨトウガ幼虫に明らかな生育抑制効果を示した。

発明の効果

0041

本発明の新規トリプシンインヒビター、AB5350物質は、以上に述べたようにトリプシン阻害活性をもち且つ殺虫活性又は昆虫生育抑制活性を有することから、新規な農園芸用殺虫剤および医薬として有用である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ