図面 (/)

技術 ヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法並びにこれを用いた平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法

出願人 公益財団法人名古屋産業科学研究所
発明者 中山晋介鳥橋茂子
出願日 2002年3月8日 (18年11ヶ月経過) 出願番号 2002-064237
公開日 2003年9月19日 (17年5ヶ月経過) 公開番号 2003-262632
状態 未査定
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析 電気化学的な材料の調査、分析 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード マイクロカバー カットオフ電流 ディレート 容量電流 シリコンリング コネクチン 電流固定 自発性収縮
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2003年9月19日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (11)

課題

微細平滑筋組織を用いて平滑筋組織の自発性運動ペースメーカー機能の研究を容易にする方法を提供すること及び微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を容易にする方法を提供すること。

解決手段

ヒト・動物の平滑筋組織をマイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。前記の細胞塊は、少なくとも平滑筋細胞、抗c−kit抗体陽性細胞を含むことが好ましい。また、マイクロメーターオーダーの細胞塊が、80〜150μmの範囲内にあることが好ましい。ヒト・動物の平滑筋組織を取り出しあるいは薬剤等が予め投与されたヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、これをマイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法

概要

背景

平滑筋組織は、血管、気管支消化器泌尿生殖器など全身組織独特自発性運動を司る筋肉であり、その自発性運動は、いわゆるスローウェーブ(slow wave)と呼ばれる緩徐な自発性の膜電位変動によって駆動されることが知られている。また、このスローウェーブは自律神経末梢系のペースメーカーの作用で調整されていると考えられている。平滑筋組織の自発性運動は、ヒト・動物が生きていくために不可欠なものであり、これが障害されれば腸閉塞尿失禁腸管不全など様々な疾患や症状に陥ることがある。

このように平滑筋組織の自発性運動は、ヒト・動物にとって重要な役割を担っているにも拘わらず、その機序については解明されていない点が多く、最近、スローウエーブのペースメーカーとして重要な役割を演じているのが、筋層間神経叢を含む癌原遺伝子c−kitを発現する細胞群である可能性が示されている(Ward,Burns,Torihashi&Sanders,1994;etc.)が、未だ結論に至っていない。また、超高齢化社会到来を間近に控え、尿失禁など平滑筋組織に障害を持つ高齢患者の増加が予想されるものの、これまで平滑筋組織の障害の治療、とりわけ腸管の障害を治療する薬剤は十分に提供されているとは言い難く、この点からも平滑筋組織の自発性運動の機序についての早期の解明が期待されるところである。

概要

微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織の自発性運動やペースメーカー機能の研究を容易にする方法を提供すること及び微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を容易にする方法を提供すること。

ヒト・動物の平滑筋組織をマイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。前記の細胞塊は、少なくとも平滑筋細胞、抗c−kit抗体陽性細胞を含むことが好ましい。また、マイクロメーターオーダーの細胞塊が、80〜150μmの範囲内にあることが好ましい。ヒト・動物の平滑筋組織を取り出しあるいは薬剤等が予め投与されたヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、これをマイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法

目的

本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織の自発性運動やペースメーカー機能の研究を容易にする方法を提供することを課題とする。また、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を容易にする方法を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

ヒト・動物平滑筋組織マイクロメーターオーダーの直径の細胞塊微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢ペースメーカー機能の評価方法

請求項2

平滑筋組織が、腸管リンパ管気管支膀胱子宮尿管輸精管から選ばれたいずれか一種である請求項1記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項3

細胞塊は、少なくとも平滑筋細胞、抗c−kit抗体陽性細胞を含む請求項1又は請求項2記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項4

細胞塊は、平滑筋組織を酵素で処理し、更にこれを培養して行われたものである請求項1〜請求項3のいずれか記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項5

マイクロメーターオーダーの細胞塊が、80〜150μmの範囲内にある請求項1〜請求項4のいずれか記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項6

細胞塊を用いて、平滑筋組織の自発性運動の発生・観察、平滑筋組織の電気的特性電気生理学的手段を用いた測定、平滑筋組織の免疫組織化学による解析あるいは蛍光標識した細胞シグナル変動の観察を行う請求項1〜請求項5のいずれか記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項7

電気生理学的手段が、パッチクランプ法又は細胞外電極法である請求項6記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項8

平滑筋組織の自発性運動の発生・観察あるいは電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定を、デジタルビデオカメラステム又はアナログビデオシステムを用いて行う請求項6記載又は請求項7記載のヒト・動物の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項9

平滑筋組織の自発性運動の発生・観察あるいは電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定が32〜38℃の温度下で行われる請求項6〜請求項8のいずれか記載のヒト・動物の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法。

請求項10

ヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織に薬剤等を作用させ、請求項1〜請求項9のいずれか記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法を用いて行う平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法

請求項11

薬剤等が予め投与されたヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織を請求項1〜請求項9のいずれか記載のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法を用いて行う平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法。

請求項12

ヒト・動物からの平滑筋組織の取り出しが、バイオプシーにより行われる請求項10又は請求項11記載の平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法。

技術分野

0001

本発明は、ヒト・動物平滑筋組織自発性運動自律神経末梢ペースメーカー機能の研究に有用なこれらの評価方法及び平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法に関する。

背景技術

0002

平滑筋組織は、血管、気管支消化器泌尿生殖器など全身組織独特の自発性運動を司る筋肉であり、その自発性運動は、いわゆるスローウェーブ(slow wave)と呼ばれる緩徐な自発性の膜電位変動によって駆動されることが知られている。また、このスローウェーブは自律神経末梢系のペースメーカーの作用で調整されていると考えられている。平滑筋組織の自発性運動は、ヒト・動物が生きていくために不可欠なものであり、これが障害されれば腸閉塞尿失禁腸管不全など様々な疾患や症状に陥ることがある。

0003

このように平滑筋組織の自発性運動は、ヒト・動物にとって重要な役割を担っているにも拘わらず、その機序については解明されていない点が多く、最近、スローウエーブのペースメーカーとして重要な役割を演じているのが、筋層間神経叢を含む癌原遺伝子c−kitを発現する細胞群である可能性が示されている(Ward,Burns,Torihashi&Sanders,1994;etc.)が、未だ結論に至っていない。また、超高齢化社会到来を間近に控え、尿失禁など平滑筋組織に障害を持つ高齢患者の増加が予想されるものの、これまで平滑筋組織の障害の治療、とりわけ腸管の障害を治療する薬剤は十分に提供されているとは言い難く、この点からも平滑筋組織の自発性運動の機序についての早期の解明が期待されるところである。

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、平滑筋細胞を単離し培養しても、その形態・機能は変化しやすく、単細胞では自発性運動の発生、観察が難しいという課題があった。このため、平滑筋組織の研究は平滑筋組織の大きな切片を用いて行われるのが一般的で、ペースメーカー機能を研究するために不可欠な微細な平滑筋組織の電気的特性の探求は難しいという課題があった。また、同様の視点から平滑筋組織に作用する薬剤等の検定も難しいという課題があった。

0005

本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織の自発性運動やペースメーカー機能の研究を容易にする方法を提供することを課題とする。また、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を容易にする方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね本発明に想到した。すなわち、本発明は、ヒト・動物の平滑筋組織をマイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化し、該細胞塊を用いて行う平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法に関する。なお、以下の説明において、自発性収縮を自発性運動と同義で用いることがある。

0007

細胞塊は、少なくとも平滑筋細胞及び抗c−kit抗体陽性細胞が含まれることが好ましい。

0008

細胞塊は、平滑筋組織を酵素で処理し、更にこれを培養して行うことができる。

0009

細胞塊の大きさは、直径で80〜150μmの範囲内にあることが好ましい。

0010

また、細胞塊を用いて、自発性運動の発生・観察、平滑筋組織の電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定、平滑筋組織の免疫組織化学による解析あるいは蛍光標識した細胞内変動の観察を行うことができる。

0011

平滑筋組織の自発性運動の発生・観察あるいは電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定は、デジタルビデオカメラステム又はアナログビデオシステムを用いて行うことができる。

0012

ヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織に薬剤等を作用させ、上記のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を行うことができる。

0013

また、薬剤等が予め投与されたヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織を上記のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を行うことができる。

0014

上記の平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法において、ヒト・動物からの平滑筋組織の取り出しをバイオプシーにより行うことができる。

発明を実施するための最良の形態

0015

本発明のヒト・動物の平滑筋組織の自発性運動及び自律神経末梢系ペースメーカー機能の評価方法あるいは平滑筋組織に作用する薬剤等の検定方法は、ヒト、動物の腸管、リンパ管、気管支、膀胱子宮尿管輸精管など平滑筋組織に広く適用できる。動物は、マウスラットモルモットサルなど様々な動物に広く用いることができ、平滑筋組織の自発性運動やペースメーカーの研究あるいは平滑筋組織に作用する薬剤等の検定に資することができる。

0016

平滑筋組織は、マイクロメーターオーダーの直径の細胞塊に微細化して用いられ、特に80〜150μmに微細化するのが好ましい。また、細胞塊には、少なくとも平滑筋細胞及び抗c−kit抗体陽性細胞が含まれることが好ましい。

0017

細胞塊は、直径でマイクロメーターオーダーまで微細化できれば、どのような方法で行っても良く、例えば眼科用ハサミ解剖用のメスなどで物理的に微細化しても良い。あるいはヒトや動物から取り出された平滑筋組織を酵素により処理し、更にこれを培養して得ることもできる。酵素は、平滑筋組織のマトリックスコラーゲン消化するためにコラゲナーゼを用いることができる。

0018

平滑筋組織の自発性運動とペースメーカー機能の評価は、上記で得られた細胞塊を用いて、自発性運動の発生・観察、電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定、平滑筋組織の免疫組織化学による解析あるいは蛍光標識した細胞内シグナル変動の観察を行うことができる。本発明の方法は、微細な細胞塊を用いるため、電気的刺激を行いやすく、様々な角度から平滑筋組織の電気的特性を評価することができる。電気生理学的手段は、特に限定されないが、パッチクランプ法又は細胞外電極法が好ましく、パッチクランプ法をより好ましく用いることができる。自発性運動の発生・観察、電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定は、デジタルビデオカメラシステム又はアナログビデオシステムを用いて行うことが好ましく、これにより、平滑筋組織の自発性運動の観察や電気的特性の測定が容易となる。デジタルビデオカメラシステム又はアナログビデオシステムは、市販のものを用いることができる。また、平滑筋組織の細胞塊に薬剤や抗体を投与して、細胞塊の形態変化を観察することもできる。上記の自発性運動の発生・観察、電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定は、32〜38℃の温度下で行うことが好ましい。

0019

平滑筋組織の免疫組織化学による解析は、各細胞等に特異的な抗体をマーカーとして用い、自発性運動を行う平滑筋組織の細胞組成等を把握することで、自発性運動の機序を解明するための研究に資することができる。また、蛍光標識した細胞内変動の観察により、細胞内CaやNaなどの変動を観察することができる。

0020

ヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織を細胞塊に微細化し、これに薬剤等を作用させ、この細胞塊を用いて平滑筋組織の自発性運動の発生・観察、電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定など様々評価を行い、薬剤等が平滑筋組織に及ぼす作用を検定することができる。これにより、平滑筋組織に作用する被検薬剤スクリーニングを行うことも可能となる。ここで、薬剤等とは一定の薬理活性を有する薬剤は勿論のこと、生理活性などが不明な物質をも包含するものである。

0021

また、薬剤等が予め投与されたヒト・動物の平滑筋組織を取り出し、取り出された平滑筋組織を細胞塊に微細化し、この細胞塊を用いて自発性運動の発生・観察、電気的特性の電気生理学的手段を用いた測定など様々な評価を行い、投与された薬剤等が平滑筋に及ぼす作用を検定することもでき、動物を用いた場合には平滑筋組織に作用する投与された被検薬剤のスクリーニングを行うことが可能となる。また、ヒトの場合には、薬剤の副作用の検定を行うことも可能となる。

0022

また、ヒト・動物からの平滑筋組織の取り出しが、バイオプシーにより行うことができる。本発明によれば、マクロメーターオーダーの直径を有する微細な細胞塊を用いることができるので、バイオプシーにより取り出された平滑筋組織を用いて薬剤等の検定に資することができる。

0023

次いで、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0024

試験方法
1.培養細胞と細胞塊の調製
雌雄のBALB/C系マウス(生後10〜20日)を断頭し、直ちに小腸切開(5cm長)した後、筋層間神経叢と共に平滑筋層(輪状筋層及び縦走筋層)を注意深く摘出し、これを細切した。得られた平滑筋の小片をコラゲナーゼ(1.3mg/ml、No.034−10533;和光化学社製)、トリプシンインヒビター(2mg/ml、タイプ1−S;シグマ社製)、ATP(0.27mg/ml、生化学工業社製)及び牛血清アルブミン(2mg/ml;シグマ社製)を含むCa2+無添加ハンクス溶液中、37℃で35〜45分インキュベートした。インキュベート後、平滑筋の小片を酵素無添加・Ca2+無添加溶液(コラゲナーゼとトリプシン−インヒビターのいずれも含まない)でリンスし、先のったガラスピペットで細かく砕いた。得られた小さな細胞塊を培養ディシュ(マウスのコラーゲンでコートされた直径25mm、厚さ0.12〜0.17mmのマイクロカバーグラス上に直径約20mmのシリコンリングが載せられて構成)上に播種した。次いで、細胞塊を10%胎児牛血清(シグマ社製)と抗生物質ストレプトマイシン(30μg/ml)とペニシリン(30単位/ml);ライフテクノロジー社製)が添加されたダルベコー改良イーグル溶液(日本製薬社製)中に保持した。

0025

2.電気的特性の測定
培養ディシュを保温用ガラスプレート(DC−MP10DMサプライ社製)上に載せ、細胞塊を測定前約15〜30分、‘ノーマル’溶液で平衡化した。細胞塊における収縮活性を、デジタルビデオカメラシステム(ARGUS HiSCa;浜松ホトクス社製又はGV−D800と接続したMTV6368;ソニー社製)を用いて記録し、自発性収縮の周期に与える温度の影響を調べた。自発性収縮を示す細胞塊の辺縁近傍に局在する細胞の膜電流パッチクランプアンプアクパッチ200A;アクソンインストロメンツ社製)を用いる電圧固定法により測定し、その結果をAD/DAコンバーターTL−1;アクソンインストロメンツ社製)を用いてデジタル化した。ノイズを抑制するために、2kHzのカットオフ電流負荷した。K+イオン富むピペット溶液を用いた場合、パッチピペット抵抗値は2.5〜5MΩであった。他に記述されない限り、細胞膜は−60mVで電圧固定した。電気的特性の測定は、35℃で行った。なお、上記の‘ノーマル’溶液の組成は、次の通りである。NaCl,125;KCl,5.9;CaCl2,2.5;MgCl2,1.2;グルコース,11.8;ヘペス,11.8;(トリス塩基でpH7.4に調整)。また、ピペット溶液の組成は、次の通りである。K−アスパルテート,110;KCl,20;MgCl2,4;EGTA,0.1;ATP,4;GTP,0.1;ヘペス,20;(pH7.2)。ATP(2Na塩)とGTP(3Na塩)は生化学工業社製、EGTA(遊離酸)、1−ヘプタノール、テトロドキシン(TTX)及びニフェジピンはシグマ社製を用いた。

0026

3.免疫組織化学及び電子顕微鏡写真撮影
抗c−kit抗体陽性細胞の同定のため、培養された細胞塊を蛍光色素(アレクサフルオロ594)が結合された抗c−kit抗体(ACK2、10μl/ml)で5分間処理した。その細胞塊を‘ノーマル‘溶液で洗浄し、4℃でアセトンを用いて定着した。免疫活性は、レーザー共焦点顕微鏡を用いて調べた。また、ギャップジャンクションチャネル分布を調べるために、細胞塊を10分間(4℃)メタノールに混ぜ、初期抗体として抗コネクチン−43抗体(1:10;トランスダクションラボ製)で定着した。その後、細胞塊を10mMPBSリン酸緩衝生理食塩液;pH7.4)で洗浄し、抗マウスIgG抗体(1:100)が結合されたFITCとインキュベートした。同じ処理を酵素処理培養処理がされていない平滑筋組織切片由来の輪状筋層中のギャップジャンクションを染色するために行った。また、吸着試験は、コネクチン43抗原(トランスダクションラボ製)を用いて行ったが、非特異的な蛍光信号はほとんど検出されなかった。平滑筋細胞は、抗γ−腸アクチン抗体(1:200:アイシーエヌ製)で同定した。

0027

電子顕微鏡撮影に供するために、細胞塊を2.5%グルタルアルデヒド、1.25mMCaCl2及び3%スクロースを含むカコディレート緩衝液(50mM,pH7.4)で固定した。更に、同じ緩衝液中の酸化オスミウム後固定し、蒸留水に溶解した飽和ウラニルアセテートで染色を止めた。その後、細胞塊はエタノール脱水し、エポキシ樹脂包埋した。半値幅切片(1μm厚み)は、リン酸緩衝液(pH7.4)中の2%トルイジンブルーで染色した。また、超薄切片は、ウラニルアセテートとクエン酸鉛で二重染色し、透過型電子顕微鏡(H−7100、日立社製)を用いて行った。

0028

4.統計処理
数値データは、平均値±標準偏差(S.D.)で示した。平均値間相違は、t−検定により評価した。0.05以下のP値は、統計学的な有意差を示す。ピアソン回帰係数(r)は、回帰分析において用られる。

0029

試験結果〕
1.培養した細胞塊の自発性収縮
培養1日目に、培養ディシュに付着した細胞塊の辺縁近傍にいくつかの細胞が偏在していた。酵素処理により単離された細胞塊では、自発性の周期的な収縮がほとんどの細胞で認められ、収縮は数日間続いた。図1にそのような細胞塊の例を示す(35℃で約12サイクル/分の収縮周期)。収縮をディジタルビデオシステムに接続した顕微鏡で観察すると、図2に示すように、収縮周期の温度依存性が明らかとなった。すなわち、実験した24細胞中の20細胞は、30℃で6.2±2.5サイクル/分の収縮周期であったのが、35℃で20分間加温すると24細胞中の22細胞の収縮周期は統計的有意差で増加し、平均の収縮周期は12.3±4.4サイクル/分となった。

0030

2.細胞塊の細胞組成と構造
図3(A)及び図3(B)は、細胞塊から得られたコントラスト蛍光染色像を示す。図3(B)で、細胞塊は蛍光色素が結合された抗c−kit抗体で染色されている。この蛍光染色像は、消化管ペースメーカー細胞推定される抗c−kit抗体陽性小腸細胞のネットワーク示唆していた。同じ方法で染色された細胞塊のほとんどが、同じようなネットワークを構築している。図3(C)は、抗コネクチン−43抗体で染色された他の細胞塊から得られた蛍光染色像を示し、これにより細胞塊に包含される細胞はギャップジャンクションチャネルを介して電気的に繋がっていることが示唆された。他方、図3(D)の蛍光染色像は、マウス小腸の酵素処理も培養処理もされない平滑筋組織切片由来の輪状筋層の全細胞におけるコネクチン−43の分布を示すものである。図3(C)と図3(D)とを比較すると、両者におけるギャップジャンクションチャネルの分布が異なるようにみえるが、本発明に係る培養された細胞塊は、前記のチャネルに事実上影響を及ぼしていなかった。

0031

図3(E)と図3(F)に示すコントラストと蛍光染色像は、図5(A)に示す電気的特性の記録のために用いたのと同じ細胞塊から得られたものである。図3(F)は、細胞塊を抗γ−腸アクチン抗体で染色したものである。四角で囲んだところは、電気的特性の記録のために用いた箇所である。図4(A)は、トルイジンブルーで染色された細胞塊の半値幅切片を示している。ここには、小腸細胞の他に平滑筋細胞と神経細胞が細胞塊中に包含されている。平滑筋細胞と神経細胞は、実験で用いたすべての細胞塊に認められた。図4(B)〜図4(D)は、図4(A)で各々SM、N及び矢印の順に示される平滑筋細胞、抗c−kit抗体陽性細胞及び神経細胞から得られた電子顕微鏡写真像を示している。平滑筋細胞は、厚薄の多数の筋フィラメントで満たされ(図4(B))、神経細胞は大きな核と体節を有する(図4(D))。他方、図4(C)に示すように、抗c−kit抗体陽性細胞は多数のミトコンドリア(m)と小胞(矢印)を有する電子濃度の高い細胞質に特徴がある。

0032

3.内向き電流オシレーション
全細胞のパッチクランプ法を細胞塊の辺縁に局在する小腸細胞に用いた。図3(F)に示すように、これらの細胞はほとんどが平滑筋であった。パッチピペットは、K+に富む溶液で満たし、−60mVで電位固定し、35℃で実験したところ、内向き電流のオシレーションが一定の間隔で繰り返し発生した。図5(A)はそのような内向き電流のオシレーションを示すもので、図3(F)の四角で囲んだ箇所の平滑筋細胞を用いて測定した。内向き電流のオシレーションの周波数は、34細胞で9.8〜27.6サイクル/分(平均16.6±3.7サイクル/分)であり、一方、振幅は99〜2704pAまで変動した(平均644±566pA)。細胞塊の辺縁から離れた位置にある細胞から得られた内向き電流のオシレーションは、振幅がより小さかった。同じ細胞塊の2以上の細胞について実験したところ、内向き電流のは振幅がかなり異なっていてもほとんど同じ周波数を示した。オシレーションする内向き電流の半値幅(ICD50)は、1107±502ms(n=34)であった。全細胞の膜電流における入力抵抗は、23.0±9.5MΩ(n=17)で、内向き電流の振幅に有意差のある影響を及ぼすものではなかった。また、電流固定法で測定した静止電位、あるいは電圧固定法で電流を0にして保持電圧を調整して得られた静止電位は、−40〜−68mVの範囲にあり平均で−54.5±6.7mV(n=29)であった。

0033

全細胞のパッチクランプ法を室温(20〜25℃)で行った場合、ほんの少しの細胞が内向き電流のオシレーションを示したのみで、しかもオシレーションの間隔は不規則でその振幅は小さかった(図5(B)参照)。また、室温で自発性収縮は観察できなかった。

0034

図6は、オシレーションの周波数と細胞塊の大きさとの関係を示す。相関係数が小さいことから(r=0.064、n=26、P値=0.755)、直径100μm以下の小腸細胞でも自発性収縮を起動できることが示唆された。また、静止膜電位(r=0.222、n=29、P値=0.248)も内向き電流の振幅(r=0.156、n=34、P値=0.377)もオシレーションの頻度との相関はなかった。他方、ICD50は、オシレーションの周波数と相関するようであった(r=−0.409、n=34、P値=0.016、図7参照)。加えて、図2に示した自発性収縮の活性の実験に用いた細胞塊は、自発性収縮の周期と細胞塊の大きさとの間に有意な相関がなく、膜電流の解析結果とよく合致した(図6参照)。

0035

4.種々のチャネル阻害剤の影響
内向き電流のオシレーションの基本的な機序を調べるため、電位感受性Na+とCa+チャネルの阻害剤を用いた。図8は、その実験例を示す。コントロールとなる内向き電流のオシレーション(a)を観察した後、神経のNa+チャネルを完全に阻害する250nMのテトロドトキシン(以下、TTXと略す)を用いたところ、内向き電流のオシレーション(b)にほとんど影響がなかった。同じ結果が、他の2細胞からも得られた。すなわち、平均(n=3)の振幅、周波数及びICD50は各々101.5±9.0%、99.3±5.8%及び104.9±11.7%であった。これらから、オシレーションは細胞塊に含まれる興奮性の神経の周期的な活性によるものでないことが示唆された。

0036

更に、1細胞で10μMのアトロピンを用いたところ、内向き電流のオシレーションにほとんど影響がなかった。電流(c)は、TTXの存在下、1μMのニフェジピンを加えたものを示す。この濃度は、平滑筋のL型Ca2+チャネルのICD50値を十分に増加させるに足る濃度で、スローウエーブの脱分極時にCa2+を流入させることができる。5細胞において(TTXの存在下及び不存在下)、ニフェジピン(1μM)を用いると振幅と周波数が各々0.4±7.3%、−5.4±8.6%変化した。この結果より、L型Ca2+チャネルは内向き電流のオシレーションの起動に必要ではないことが示唆された。10μMのニフェジピンを用いた場合(n=4)、図8(d)に示すように、内向き電流のオシレーションの振幅は、30.7±13.2%まで減少したが、周波数とICD50は比較的変化しなかった(各々−5.5±9.9%、−3.7±13.7%)。10μMより高濃度のニフェジピンを用いて引き起こされる抑制は、モルモットの胃に微小電極を用いて測定されたスローウエーブの振幅の変化とよく一致した。

0037

Ni2+(〜40μM)の低濃度は、心臓ペースメーカーのT型電圧感受性Ca2+チャネルを阻害することで知られている。しかしながら、図9(A)に示すように、40μMのNi2+を用いても、小腸の細胞塊の内向き電流にほとんど影響がなかった。Ni2+の濃度を120μMまで上げると、内向き電流のオシレーションは有意に抑制され、間隔は不規則(n=4)であった。図9(B)は、入力抵抗を測定するために−1mV(4ms)の短矩形パルスを負荷することにより誘導される膜電流を示している。120μMのNi2+が内向き電流のオシレーションを抑制する場合、入力抵抗は約30%まで増加した。また、Ni2+の代わりに、100μMのCd2+を用いた場合、図10に示すようにほとんど完全に内向き電流のオシレーションを阻害した(n=4)。これらの結果より、非選択的カチオンチャネルは、小腸のペースメーカーにおいて重要な役割を演じているのかも知れない。

0038

図11は、ギャップジャンクションの阻害剤であるヘプタノールの効果を調べたものである。3〜10mMのヘプタノールを用いると、自発性収縮の活性が終わる前に、次第に内向き電流のオシレーションの振幅が減少し、その間隔も不規則となった。図11(A)は、5mMのヘプタノールを用いた後、内向き電流のオシレーションが2〜3分で終わる様子を示している。この処理で、完全に自発性収縮が抑制された。図11(B)は、図11(A)で調べたのと同じ細胞で入力抵抗を測定したものを示し、図9(B)と同じ矩形パルスを負荷した。ヘプタノール(5mM)を用いることにより、入力抵抗(15.9MΩから測定不能まで)は有意に増加し、結果として一過性容量電流が現れ、電気的な結合の切断の兆候があった。5mMのヘプタノールに曝露している間に記録された蓄電量を積算して見積もられた細胞の(細胞膜)電気容量は、27.3±4.8pFであった(n=4)

0039

上記試験により得られた知見を要約すると以下の通りである。
(1)本発明に係る微細な細胞塊を用いても、平滑筋組織の自発性運動の発生、観察が可能であった。また、平滑筋組織の自発性運動は、細胞塊の大きさと相関なく発生することが判明した。
(2)本発明に係る微細な細胞塊は、平滑筋細胞とペースメーカーと推測される抗c−kit抗体陽性細胞を含んでいた。
(3)本発明に係る微細な細胞塊は、マウス小腸の酵素処理も培養処理もされない平滑筋組織切片由来の組織の有する内向き電流のオシレーションの特徴を良く保存していた。
(4)内向き電流のオシレーションは、スローウエーブの活性と良く対応していた。
(5)平滑筋細胞の相互の電気的結合が、ペースメーカーの活性に何らかの寄与をしていることが示唆された。

発明の効果

0040

本発明によれば、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織の自発性運動やペースメーカー機能の研究を容易にするため、平滑筋組織の自律性運動の機序の解明に寄与することができ、ひいては平滑筋組織の障害に起因する様々な疾患や症状の予防、治療に寄与して医学領域に福音をもたらすことができる。また、本発明によれば、微細な平滑筋組織を用いて平滑筋組織に作用する薬剤等の検定を容易にするため、平滑筋組織に作用する薬剤等のスクリーニングや薬剤等の副作用の検定などが容易となり、医学、薬学領域に福音をもとらすことができる。

図面の簡単な説明

0041

図1自発性収縮を行う本発明に係る細胞塊の顕微鏡写真を示す。
図2自発性収縮の周期と温度との関係を表したグラフである。
図3(A)本発明に係る細胞塊を蛍光染色する前の顕微鏡写真を示す。
(B)(A)の細胞塊を抗c−kit抗体で蛍光染色した顕微鏡写真を示す。(C)本発明に係る細胞塊を抗コネクチン−43抗体で蛍光染色した顕微鏡写真を示す。(D)平滑筋組織切片の輪状筋層由来の全細胞を抗コネクチン−43抗体で蛍光染色した顕微鏡写真を示す。(E)本発明に係る細胞塊を蛍光染色する前の顕微鏡写真を示す。(F)(E)の細胞塊を抗γ−腸アクチン抗体で蛍光染色した顕微鏡写真を示す。
図4(A)本発明に係る細胞塊の電子顕微鏡写真を示す。
(B)(A)の細胞塊における平滑筋細胞の電子顕微鏡写真を示す。(C)(A)の細胞塊における抗c−kit抗体陽性細胞の電子顕微鏡写真を示す。(D)(A)の細胞塊における神経細胞の電子顕微鏡写真を示す。
図535℃と25℃での本発明に係る細胞塊のオシレーションを示す。
図6本発明に係る細胞塊の大きさと自発性収縮の周期との関係を示すグラフである。
図7本発明に係る細胞塊のICD50と自発性収縮の周期との関係を示すグラフである。
図8チャネル阻害剤による本発明に係る細胞塊のオシレーションを示す。
図9チャネル阻害剤による本発明に係る細胞塊のオシレーションを示す。
図10チャネル阻害剤による本発明に係る細胞塊のオシレーションを示す。
図11チャネル阻害剤による本発明に係る細胞塊のオシレーションを示す。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ