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技術 希土類焼結磁石

出願人 信越化学工業株式会社
発明者 榊一晃笠嶋匡樹浜田隆二美濃輪武久
出願日 2002年12月25日 (18年5ヶ月経過) 出願番号 2002-373632
公開日 2003年9月12日 (17年9ヶ月経過) 公開番号 2003-257721
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 コア、コイル、磁石の製造
主要キーワード 製品組み立て 耐水素性 欠け落ち 水素ガス試験 高圧水素雰囲気 レアアース バレル法 耐酸化性皮膜
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解決手段

R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる希土類焼結磁石において、該希土類焼結磁石体の表面に、直接又はn層(nは、整数でn≧1)の金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有することを特徴とする希土類焼結磁石。

効果

本発明のR2Fe14B系焼結磁石により、水素雰囲気中においても、水素脆性を引き起こさない、モーター等に使用できる希土類焼結磁石を得ることが可能となる。

概要

背景

希土類元素遷移金属金属間化合物においては、水素結晶格子間に侵入する、即ち、合金中に水素を吸蔵、放出する特性を持っており、その特性はいろいろな分野で利用されている。その例としては、LaNi5に代表とされる水素吸蔵合金による水素電池が挙げられ、また、希土類焼結磁石においても、R2Fe14B系合金粉砕方法として、更にR2Fe14B系ボンド磁石の製造方法(HDDR 特開平3−129702号公報)として利用されている。

しかしながら、合金中又は磁石中に水素を吸蔵・放出させた場合、水素脆性を引き起こしてしまう。そのため、水素雰囲気中において、希土類焼結磁石を用いたモーター等を使用した場合、希土類焼結磁石が水素脆化を引き起こし、素材ワレクラックもしくは粉化がおこるという問題が生じている。

現在、希土類焼結磁石には、R2Fe14B系、SmCo5系、Sm2Co17系等の種類がある。一般に、水素に対しては、2−17型結晶構造よりも1−5型結晶構造、1−5型結晶構造よりも2−7型結晶構造の方がプラトー圧が低い、即ち、レアアースリッチ(以下、Rリッチと称す)な合金の方が水素吸蔵されやすい傾向にあり、水素脆化しやすい。

R2Fe14B系磁石は、磁石中にRリッチ相を有するため、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下で、容易に水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。通常、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のためメッキ樹脂コーティングなどの表面処理がなされているが、水素脆化を防止する手段とはなっていない。この問題を解決する方法として、R2Fe14B系磁石の表面処理膜に水素吸蔵合金を含有させる方法を提案した(特開2000−285415号公報)。この方法により作製されたR2Fe14B系磁石は、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こさないものの、それを超える圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じると考えられる。

SmCo5系磁石も、R2Fe14B系磁石と同様に、Rリッチ相を有すると共に、主相であるSmCo5相のプラトー圧が約0.3MPaである。このことから、0.3MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。

Sm2Co17系磁石は、主相が2−17相であり、R2Fe14B系、SmCo5系に比べRリッチではないことと、Rリッチ相を含有しないため、水素脆性を引き起こしにくい。しかしながら、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、他の希土類焼結磁石と同様に、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じることがわかっている。

耐水素脆性を向上させるためには、Sm2Co17系磁石の表面にCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層を存在させればよいことが分かっている(特開2002−118009号公報)。磁石表面にCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層が存在していれば、3MPaを超える高圧水素雰囲気下においても水素脆性は起こさない。しかし、Sm2Co17系磁石及びCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層は、硬く、欠け易いため、製品組み立て等、取扱いの際、チッピング等を引き起こす場合がある。チッピング等を引き起こした希土類焼結磁石は、磁気特性には、ほとんど影響はないものの、耐水素性皮膜欠け落ちた部分が存在するため、耐水素脆性は大きく低下し、表面層のない場合と同等になってしまう。従って、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が起こるため、そのような雰囲気中では、使用することができない。即ち、Sm2Co17系磁石の機械的強度を向上させるか又はチッピングを防止することができれば、耐水素性を維持すると考えられる。

上記問題は、Sm2Co17系磁石の機械的強度の脆さに起因するものである。つまり、素材として、Sm2Co17系磁石よりR2Fe14B系磁石の方が機械的強度は強く、更に通常、耐酸化性皮膜を有しているため、チッピング等の可能性は低く、R2Fe14B系磁石に耐水素性皮膜を被覆できれば有効であると考えられる。

また、R2Fe14B系磁石は、Sm2Co17系磁石に比べ、耐食性が劣っている及び温度特性に劣っている等の欠点があるものの、主要元素が、高価なSm、Coではなく、安価なNd、Feであることから、原材料費が安価なだけでなく、現在量産されている最高磁気特性においても、Sm2Co17系磁石の32MGOeに対し、R2Fe14B系磁石の50MGOeの最大エネルギー積のように優れているという利点がある。即ち、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のための表面処理が施されていれば、常温において、極めて優れた永久磁石材料であり、そのため、優れた温度特性を必要としない場合又は150℃以上の温度がかからない場合であれば、通常、磁気回路の小型化、高効率化のためには、Sm2Co17系磁石ではなく、R2Fe14B系磁石が使われることが多い。つまり、磁気特性においても、Sm2Co17系磁石よりもR2Fe14B系磁石が耐水素性を有すれば、非常に有効であることは明らかである。

概要

R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる希土類焼結磁石において、該希土類焼結磁石体の表面に、直接又はn層(nは、整数でn≧1)の金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有することを特徴とする希土類焼結磁石。

本発明のR2Fe14B系焼結磁石により、水素雰囲気中においても、水素脆性を引き起こさない、モーター等に使用できる希土類焼結磁石を得ることが可能となる。

目的

本発明は、このような問題を解決したR2Fe14B系焼結磁石を提供するものである。即ち、従来の希土類焼結磁石の様に、水素雰囲気下で、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じるという問題を解決したR2Fe14B系焼結磁石を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
4件

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請求項1

R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる希土類焼結磁石において、該希土類焼結磁石体の表面に、直接又はn層(nは、整数でn≧1)の金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有することを特徴とする希土類焼結磁石。

請求項2

金属メッキ層と金属酸化物層及び/又は金属窒化物層との合計の厚さが1μm以上100μm以下であり、かつ金属酸化物層及び/又は金属窒化物層の厚さが0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の希土類焼結磁石。

請求項3

金属メッキの金属が、Cu、Ni、Co、Sn及びそれらの合金の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類焼結磁石。

技術分野

0001

本発明は、水素雰囲気に長時間晒されるモーター等に用いられるR2Fe14B系焼結磁石に関する。

背景技術

0002

希土類元素遷移金属金属間化合物においては、水素結晶格子間に侵入する、即ち、合金中に水素を吸蔵、放出する特性を持っており、その特性はいろいろな分野で利用されている。その例としては、LaNi5に代表とされる水素吸蔵合金による水素電池が挙げられ、また、希土類焼結磁石においても、R2Fe14B系合金粉砕方法として、更にR2Fe14B系ボンド磁石の製造方法(HDDR 特開平3−129702号公報)として利用されている。

0003

しかしながら、合金中又は磁石中に水素を吸蔵・放出させた場合、水素脆性を引き起こしてしまう。そのため、水素雰囲気中において、希土類焼結磁石を用いたモーター等を使用した場合、希土類焼結磁石が水素脆化を引き起こし、素材ワレクラックもしくは粉化がおこるという問題が生じている。

0004

現在、希土類焼結磁石には、R2Fe14B系、SmCo5系、Sm2Co17系等の種類がある。一般に、水素に対しては、2−17型結晶構造よりも1−5型結晶構造、1−5型結晶構造よりも2−7型結晶構造の方がプラトー圧が低い、即ち、レアアースリッチ(以下、Rリッチと称す)な合金の方が水素吸蔵されやすい傾向にあり、水素脆化しやすい。

0005

R2Fe14B系磁石は、磁石中にRリッチ相を有するため、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下で、容易に水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。通常、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のためメッキ樹脂コーティングなどの表面処理がなされているが、水素脆化を防止する手段とはなっていない。この問題を解決する方法として、R2Fe14B系磁石の表面処理膜に水素吸蔵合金を含有させる方法を提案した(特開2000−285415号公報)。この方法により作製されたR2Fe14B系磁石は、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こさないものの、それを超える圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じると考えられる。

0006

SmCo5系磁石も、R2Fe14B系磁石と同様に、Rリッチ相を有すると共に、主相であるSmCo5相のプラトー圧が約0.3MPaである。このことから、0.3MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。

0007

Sm2Co17系磁石は、主相が2−17相であり、R2Fe14B系、SmCo5系に比べRリッチではないことと、Rリッチ相を含有しないため、水素脆性を引き起こしにくい。しかしながら、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、他の希土類焼結磁石と同様に、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じることがわかっている。

0008

耐水素脆性を向上させるためには、Sm2Co17系磁石の表面にCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層を存在させればよいことが分かっている(特開2002−118009号公報)。磁石表面にCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層が存在していれば、3MPaを超える高圧水素雰囲気下においても水素脆性は起こさない。しかし、Sm2Co17系磁石及びCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層は、硬く、欠け易いため、製品組み立て等、取扱いの際、チッピング等を引き起こす場合がある。チッピング等を引き起こした希土類焼結磁石は、磁気特性には、ほとんど影響はないものの、耐水素性皮膜欠け落ちた部分が存在するため、耐水素脆性は大きく低下し、表面層のない場合と同等になってしまう。従って、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が起こるため、そのような雰囲気中では、使用することができない。即ち、Sm2Co17系磁石の機械的強度を向上させるか又はチッピングを防止することができれば、耐水素性を維持すると考えられる。

0009

上記問題は、Sm2Co17系磁石の機械的強度の脆さに起因するものである。つまり、素材として、Sm2Co17系磁石よりR2Fe14B系磁石の方が機械的強度は強く、更に通常、耐酸化性皮膜を有しているため、チッピング等の可能性は低く、R2Fe14B系磁石に耐水素性皮膜を被覆できれば有効であると考えられる。

0010

また、R2Fe14B系磁石は、Sm2Co17系磁石に比べ、耐食性が劣っている及び温度特性に劣っている等の欠点があるものの、主要元素が、高価なSm、Coではなく、安価なNd、Feであることから、原材料費が安価なだけでなく、現在量産されている最高磁気特性においても、Sm2Co17系磁石の32MGOeに対し、R2Fe14B系磁石の50MGOeの最大エネルギー積のように優れているという利点がある。即ち、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のための表面処理が施されていれば、常温において、極めて優れた永久磁石材料であり、そのため、優れた温度特性を必要としない場合又は150℃以上の温度がかからない場合であれば、通常、磁気回路の小型化、高効率化のためには、Sm2Co17系磁石ではなく、R2Fe14B系磁石が使われることが多い。つまり、磁気特性においても、Sm2Co17系磁石よりもR2Fe14B系磁石が耐水素性を有すれば、非常に有効であることは明らかである。

0011

特開2000−285415号公報

発明が解決しようとする課題

0012

本発明は、このような問題を解決したR2Fe14B系焼結磁石を提供するものである。即ち、従来の希土類焼結磁石の様に、水素雰囲気下で、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じるという問題を解決したR2Fe14B系焼結磁石を提供することを目的とする。

0013

本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、R2Fe14B系焼結磁石の表面に直接又は金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を形成することにより、高圧の水素雰囲気中でも水素脆性を引き起こさず、このため、水素雰囲気に長時間晒されるモーター等に好適に用いられるR2Fe14B系焼結磁石が得られることを知見し、本発明をなすに至った。

0014

即ち、本発明は、前記問題を解決するものとして下記(1)〜(3)の希土類焼結磁石を提供する。
(1)R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる希土類焼結磁石において、該希土類焼結磁石体の表面に、直接又はn層(nは、整数でn≧1)の金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有することを特徴とする希土類焼結磁石、(2)金属メッキ層と金属酸化物層及び/又は金属窒化物層との合計の厚さが1μm以上100μm以下であり、かつ金属酸化物層及び/又は金属窒化物層の厚さが0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする(1)記載の希土類焼結磁石、(3)金属メッキの金属が、Cu、Ni、Co、Sn及びそれらの合金の少なくとも1種であることを特徴とする(1)又は(2)記載の希土類焼結磁石。

0015

希土類焼結磁石における水素脆性は、希土類焼結磁石表面の水素分子が、金属の触媒作用により、解離し、水素原子となって、希土類焼結磁石体に侵入することにより引き起こされると推測されている。このことから、希土類焼結磁石表面の水素分子が、水素原子に解離さえしなければ、希土類焼結磁石は、水素脆性は起こさないと考えられる。即ち、希土類焼結磁石表面に水素分子を解離する触媒作用がなければ、水素脆性は引き起こされることはない。希土類焼結磁石表面や、通常、耐食性向上のために施される金属メッキ層は、水素分子を解離する触媒作用があるので、希土類焼結磁石は、水素脆性を起こしてしまう。しかし、金属酸化物層及び/又は金属窒化物層は、切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げ後の希土類焼結磁石体表面層や、金属メッキ層に比べ、水素分子を解離する触媒作用が非常に小さいため、水素分子は解離せず、高圧水素雰囲気下でも水素脆性は引き起こされることはない。

0016

以下に、本発明の詳細を説明する。本発明におけるR2Fe14B系焼結磁石合金組成の主成分は、R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを0重量%を超え15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を0重量%を超え8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる。前記Rの含有量が、20重量%未満であると保磁力が著しく減少し、また、35重量%を超えると残留磁束密度が著しく減少する。

0017

本発明のR2Fe14B系焼結磁石は、上記組成を有する希土類焼結磁石の表面に、直接又はn層(nは、整数でn≧1、好ましくは5≧n≧1、より好ましくは5≧n≧2)の金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有することにより、水素脆性が生じることを効果的に防止する。

0018

ここで、金属酸化物層、金属窒化物層は、上記磁石表面に各種気相メッキ法等で直接形成してもよく、まず金属メッキ層を形成した後、その上に各種気相メッキ法で形成してもよく、更には金属メッキ層を形成した後、この金属メッキ層の少なくとも表面を空気等の酸化性雰囲気窒素雰囲気中で加熱するなどして酸化及び/又は窒化することにより形成してもよい。最後の場合、形成した金属メッキ層の全体を酸化及び/又は窒化してもよい。

0019

この場合、金属メッキ層は、耐水素性を有していないが、耐食性の低いR2Fe14B系磁石の耐食性向上のために施される。

0020

また、金属メッキ層と金属酸化物層、金属窒化物層との合計の厚さは、1μm以上100μm以下であり、かつ最上層の金属酸化物層及び/又は金属窒化物層の厚さは、0.1μm以上100μm以下である。金属メッキ層と金属酸化物層、金属窒化物層との合計の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下であり、かつ金属酸化物層及び/又は金属窒化物層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。金属メッキ層と金属酸化物層、金属窒化物層との合計は、100μmを超える厚さでは、時間、コスト共にかかり、効率的な生産ができず、更に磁気特性に悪影響を及ぼす虞がある。また、1μm未満の厚さでは、焼結磁石体自身の耐衝撃性を向上させることはできないため、チッピング等を防ぐことはできず、更に金属メッキにムラができ易く、ピンホールが多くなるため、耐水素性の優れた金属酸化物層及び/又は金属窒化物層の形成が十分でなくなる場合がある。金属酸化物層及び/又は金属窒化物層は、100μmを超える厚さでは、磁石自身の水素脆性は防ぐものの、時間、コスト共にかかり、効率的な生産ができず、更にこの層自身の影響により磁気特性の劣化が生じるおそれがある。また、0.1μm未満の厚さでは、有効な耐水素脆性をもつことができない。

0021

上記のような表面に直接又は金属メッキ層を介して金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を有する焼結磁石を製造する方法は、特に制限されないが、上記組成の合金を鋳造し、これを粉砕し、更に好ましくはこれを微粉砕し、次いで、磁場中成形焼結熱処理を順次行って焼結磁石とし、更に表面を加工仕上げした後、金属メッキを施し、酸化及び/又は窒化処理を行い、更に樹脂塗装を施すことによって製造する方法が好適に採用される。

0022

即ち、一例を示すと、本発明のR2Fe14B系磁石は、上記組成範囲原料アルゴン等の非酸化性雰囲気中において、高周波溶解により溶解、鋳造する。

0023

次に、前記R2Fe14B系磁石合金を粗粉砕し、次いで特に限定はしないが、好ましくは平均粒径1〜10μmに微粉砕する。この粗粉砕は、例えば、不活性ガス雰囲気中で、ジョークラッシャーブラウンミルピンミル及び水素吸蔵等により行うことができる。また、前記微粉砕は、アルコールヘキサン等を溶媒に用いた湿式ボールミルアトライター、不活性ガス雰囲気中による乾式ボールミル不活性ガス気流によるジェットミル等により行うことができる。

0024

次に、前記微粉砕粉を、好ましくは10kOe以上、特に15kOe以上の磁場を印可することが可能な磁場中プレス機等により、好ましくは200kg/cm2以上2000kg/cm2未満の圧力により圧縮成形する。続いて、得られた圧縮成形体を、熱処理炉により、高真空中又はアルゴンなどの非酸化性雰囲気ガス中で、1000〜1200℃において、1〜2時間、焼結を行う。

0025

続いて、真空中又はアルゴンなどの非酸化性雰囲気ガス中で、焼結温度よりも低い温度で、好ましくは400〜700℃の温度で熱処理を施し、切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行う。この際、特に限定されるものではないが、希土類焼結磁石体に面取りがなされていることが望ましい。

0026

この表面加工仕上げ後、前記希土類焼結磁石体に、好ましくはn層(nは、整数でn≧1)の金属メッキ層を形成する。ここで、金属メッキ層は、多層になればなる程耐食性が向上する。従って、nは用途が要求する耐食性やその他の条件により選択される。ただ、製造上、コスト、効率性を考えると、n=1〜5が好ましい。前記金属メッキの金属は、Cu、Ni、Co、Sn及びそれらの合金の少なくとも1種からなり、メッキ厚さは、1〜100μm、特に1〜50μmが好ましい。好ましい具体例としては、下層にCuが形成され、更にNiを形成した多層メッキがよく、Cu−Ni、Cu−Ni−Ni、Ni−Cu−Ni等が挙げられる。この金属メッキを施す前処理として、特に限定されるものではないが、前記希土類焼結磁石体をアルカリ脱脂酸洗浄水洗することが望ましい。メッキの成膜方法としては、特に限定されるものではないが、電解メッキ法が望ましい。また、前記希土類焼結磁石体をメッキ液に浸漬する方法は、バレル法又は引っ掛け治具法のいずれでもよく、希土類焼結磁石体の寸法及び形状によって適当に選択される。

0027

なお、電解メッキ液としては、公知の組成のメッキ液を使用し、そのメッキ液に応じた公知の条件でメッキすることができるが、特にpH2〜12のメッキ液が好適である。また、組成の異なる金属を2層以上積層する場合は、最上層に対して直下層の腐食電位が貴となるようにすればよいが、Niを2層メッキする場合のように、皮膜中硫黄含有量を変えることで電位を制御する方法では、上層の硫黄含有量は約0.03%以下とし、下層には硫黄を含まないようにするとよい。その他の組み合わせでは、特に限定されるものではないが、例えば、最上層にNi、直下層にCuを組み合わせるなどの例がある。

0028

上記方法により金属メッキを形成した後、その金属メッキ表面に、金属、好ましくは上記金属メッキ層上層の金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を形成する。従って、金属酸化物金属窒化物としては、Cu、Ni、Co、Sn又はこれらの合金の酸化物、窒化物が好ましい。その方法としては、特に限定されるものではないが、真空蒸着イオンスパッタリングイオンプレーティング法等の気相メッキ法、化学的な方法、大気下、酸素分圧調整下、窒素下及び窒素加圧下などの雰囲気における熱処理、電解の処理等が挙げられる。ちなみに、上記金属酸化物層及び/又は金属窒化物層は、0.1〜100μmの厚さがあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜20μmである。

0029

次いで、このように処理された希土類焼結磁石体表面に樹脂塗装(吹き付け塗装電着塗装粉体塗装或いはディッピング塗装等のいわゆる樹脂塗装)を施すこともできる。樹脂塗装による皮膜は、耐水素性を有していないが、希土類焼結磁石が用いられたモーターなどが使用される雰囲気により耐酸性を有する必要があることや、輸送中やモーターなどに希土類焼結磁石が組み込まれる際、表面層に傷をつけないため成されることとなる。なお、樹脂塗装の樹脂は、特に限定されるものではないが、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系ポリエステル系及びポリウレタン系樹脂等が望ましい。また、樹脂塗装は、吹き付け塗装、電着塗装、粉体塗装或いはディッピング塗装等のいわゆる樹脂塗装法であり、樹脂塗装の厚さは、1μm以上3mm以下であって、好ましくは10μm以上1mm以下であるのが望ましい。1μm未満の厚さでは、均一に塗装するのが難しく、更に輸送中やモーターなどに希土類焼結磁石が組み込まれる際、表面層を防護する効果が得られにくい。また、3mmを超える厚さの樹脂塗装は、時間、コスト共にかかり、効率的な生産ができない。

0030

次に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0031

[実施例1,2]R2Fe14B系磁石合金は、Nd:29.0重量%、Dy:3.0重量%、Co:3.5重量%、B:1.0重量%、Cu:0.1重量%、Al:0.1重量%、残部Feの組成になるように配合し、アルゴンガス雰囲気中で、アルミナルツボを使用して高周波溶解炉で溶解し、鋳型鋳造することにより作製した。

0032

次に、前記R2Fe14B系磁石合金を、ジョークラッシャー、ブラウンミルで約500μm以下に粗粉砕後、窒素気流によるジェットミルにより平均粒径約3μmに微粉砕を行った。得られた微粉砕粉を、磁場中プレス機により10kOeの磁場中にて1.2t/cm2の圧力で成形した。得られた成形体は熱処理炉を用い、アルゴン雰囲気中で、1070℃、2時間焼結した後、冷却し、更に600℃、1時間、アルゴン雰囲気中で熱処理を行い、焼結磁石を作製した。得られた焼結磁石から、5×5×5mmに磁石を切り出した。

0033

次に、前記焼結磁石に電解Cuメッキ(10μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施した。この場合、ピロリン酸銅60g/L、ピロリン酸カリウム240g/L、シュウ酸カリウム30g/Lで調整したメッキ浴を用い、浴温度40℃、電流密度1.5A/dm2の条件で電解Cuメッキを行い、次いで、塩化Ni40g/L、硫酸Ni270g/L、ホウ酸30g/Lで調整したメッキ浴を用い、浴温度50℃、電流密度2.0A/dm2の条件で電解Niメッキを施した。その後、350℃、50時間、空気中の熱処理を施し、室温まで徐冷し、水素ガス試験用試料を得た。ここで得られた水素ガス試験用試料は、走査型電子顕微鏡により組織観察を行った。金属メッキ金属は酸化物が形成され、この上層の酸化物層の厚さを測定し、Vibrating Sample Magnetometer(以下、VSMと称す)により磁気特性の測定を行った。

0034

前記水素ガス試験用試料をそれぞれ耐圧容器に入れ、水素、3MPa、25℃、3日[実施例1]、5MPa、25℃、3日[実施例2]の条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観目視で観察し、更にVSMにより磁気特性の測定を行った。

0035

[実施例3,4]実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出した。前記磁石に対し、実施例1と同様な条件で電解Cuメッキ(10μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施し、その後、300℃、2時間、空気中の熱処理を施し、室温まで徐冷し、水素ガス試験用試料を得た。ここで得られた水素ガス試験用試料は、走査型電子顕微鏡により組織観察を行い、金属メッキ金属の酸化物層の厚さを測定し、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様に、3MPa、25℃、3日[実施例3]、5MPa、25℃、3日[実施例4]の条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察し、更にVSMにより磁気特性の測定を行った。

0036

[比較例1,2]実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出し、水素ガス試験用試料を得た。ここで得られた水素ガス試験用試料は、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様に、3MPa、25℃、3日[比較例1]、5MPa、25℃、3日[比較例2]の条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察した。

0037

[比較例3,4]実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出した。前記磁石に対し、実施例1と同様な条件で電解Cuメッキ(10μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施し、水素ガス試験用試料を得た。ここで得られた水素ガス試験用試料は、走査型電子顕微鏡により組織観察を行い、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様に、3MPa、25℃、3日[比較例3]、5MPa、25℃、3日[比較例4]の条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察した。

0038

0039

0040

0041

表3に、表面処理前及び水素ガス試験前後の磁石の磁気特性を示した。表面処理前及び水素ガス試験前後で、実施例2,4は、ほとんど磁気特性の変化はなかった。このことから、実施例2,4において、表面処理による磁気特性の劣化及び水素脆性がなかったことがわかる。比較例2,4は、水素処理により粉砕されてしまったため、水素処理後の磁気特性は、測定不能であった。

0042

以上、表1,2及び3から、比較例では、水素ガス試験により水素脆性が起こったのに対し、実施例では、水素ガス試験により水素脆性が起こらなかった。つまり、表面処理により磁気特性が劣化することなく、耐水素性が向上したことがわかる。

発明の効果

0043

本発明のR2Fe14B系焼結磁石により、水素雰囲気中においても、水素脆性を引き起こさない、モーター等に使用できる希土類焼結磁石を得ることが可能となる。

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