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課題

実際のプレス成形に即して絞り成形性を評価する方法と、それに基づいて薄鋼板を製造する方法を提供する。

解決手段

鋼板機械的性質として、r値ランクフォード値)を求め、次いで、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にてr値を補正し、得られたrx値に基づいて絞り性を評価する。

rx=ro ×exp(−Kμ)

rx :補正r値

ro :引張試験機で得られたr値

K :潤滑状態に起因した定数

μ :表面摩擦係数

定数Kは、1.5 〜2.5 である。

概要

背景

薄鋼板は、プレス成形性、特に、絞り成形性に優れることから、自動車用を始めとする車体パネル、あるいは、家電建材向けの小物加工部品等に、広く使用されている。その際に、絞り形成性は、従来から、JIS Z 2254に記載の塑性歪み比であるランクフォード値(r値)と極めて良好な相関があり、この値を絞り成形性の指標として採用し、かつ、材料設計の指標として広く使用されてきた。

従来から、良好な絞り成形性を持つ材料の提供を目的として、例えば、特開平10−237554号、特開平10−237548号の各公報に記載のように、素材の成分、その熱間圧延条件、その後の冷間圧延焼鈍条件を規定して、良好な集合組織を持つ薄鋼板が製造可能となり、高いr値の材料の提供が提案されてきた。

概要

実際のプレス成形に即して絞り成形性を評価する方法と、それに基づいて薄鋼板を製造する方法を提供する。

鋼板機械的性質として、r値(ランクフォード値)を求め、次いで、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にてr値を補正し、得られたrx値に基づいて絞り性を評価する。

rx=ro ×exp(−Kμ)

rx :補正r値

ro :引張試験機で得られたr値

K :潤滑状態に起因した定数

μ :表面摩擦係数

定数Kは、1.5 〜2.5 である。

目的

素材供給メーカーとしては、r値のより高い材料を提供する方が好ましく、したがって、適正材料は常にオーバーグレードにならざるを得ないのが現状である。しかし、実際のプレス成形性に即した r値をもった適正な薄鋼板を提供することは、素材供給メーカーにおいても、重要な課題である。

ここに、本発明の課題は、実際のプレス成形に即した材料を提供するための製造方法およびそのときの成形性の評価方法を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

鋼板機械的性質として、r値ランクフォード値)を求め、次いで、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にてr値を補正し、得られたrx値に基づいて絞り性を評価する方法。rx=ro ×exp(−Kμ)rx :補正r値ro :引張試験機で得られたr値K :潤滑状態に起因した定数μ :表面摩擦係数

請求項2

前記定数Kが、1.5 〜2.5 の範囲である、請求項1に記載の絞り成形性の評価方法

請求項3

鋼板のr値(ランクフォード値)を、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にて補正し、得られたrx値が所定値になるように該r値および表面摩擦係数を変更する薄鋼板の製造方法。rx=ro ×exp(−Kμ)rx :補正r値ro :引張試験機で得られたr値K :潤滑状態に起因した定数μ :表面摩擦係数

請求項4

ro値を1.65以下に調整した薄鋼板に、表面に潤滑処理を施すことにより、前記rx値を1.15以上とする、請求項3記載の薄鋼板の製造方法。

請求項5

前記rx値の調整に際して、薄鋼板表面に無機系の潤滑処理皮膜、もしくは、潤滑剤を含んだ有機系潤滑処理皮膜を形成し、その際の皮膜の付着量と、鋼板表面粗度の関係が、下式の関係を満足するように調整する、請求項3または4記載の薄鋼板の製造方法。Cwt ≧ 0.4×(Ra)2Cwt(g/m2):潤滑処理皮膜の付着量Ra(μm ):鋼板表面平均粗さ(JIS BO601)

技術分野

0001

本発明は、成形性に優れた薄鋼板の製造方法と、そのときの薄鋼板の成形性の評価方法に関する。

0002

より具体的には、本発明は、実際のプレス成形性を加味した材料設計方法に関するものである。また、その設計思想をもとに、実際のプレス成形性により適合する管理をすることにより、低グレード品でも高グレード品と同等のプレス成形性を有する材料を提供することができる薄鋼板の製造方法に関する。

背景技術

0003

薄鋼板は、プレス成形性、特に、絞り成形性に優れることから、自動車用を始めとする車体パネル、あるいは、家電建材向けの小物加工部品等に、広く使用されている。その際に、絞り形成性は、従来から、JIS Z 2254に記載の塑性歪み比であるランクフォード値(r値)と極めて良好な相関があり、この値を絞り成形性の指標として採用し、かつ、材料設計の指標として広く使用されてきた。

0004

従来から、良好な絞り成形性を持つ材料の提供を目的として、例えば、特開平10−237554号、特開平10−237548号の各公報に記載のように、素材の成分、その熱間圧延条件、その後の冷間圧延焼鈍条件を規定して、良好な集合組織を持つ薄鋼板が製造可能となり、高いr値の材料の提供が提案されてきた。

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、r値が高く、成形性の良好な高グレードの薄鋼板は、その材料コストが高いため、近年、実際の加工成形性にあった適正な材料グレード選定により、鋼板コストを低減しようという要望があり、材料の低グレード化の指向が強まりつつある。また、実際には、機械的性質が良好で、高いr値を有する材料でも、さほど複雑な成形性が要求されないような形状でも、実際のプレス成形においては、プレス割れが発生することがよくあり、単純に、JIS Z 2254に準拠して測定されるr値(以下、ro値、単にroと表示することもある)だけで成形性を評価するのでは、実際のプレス成形性を充分に反映しきれているとは言い難く、実際のプレス成形性に即した適正なr値の材料を提供できないという問題がある。

0006

素材供給メーカーとしては、r値のより高い材料を提供する方が好ましく、したがって、適正材料は常にオーバーグレードにならざるを得ないのが現状である。しかし、実際のプレス成形性に即した r値をもった適正な薄鋼板を提供することは、素材供給メーカーにおいても、重要な課題である。

0007

ここに、本発明の課題は、実際のプレス成形に即した材料を提供するための製造方法およびそのときの成形性の評価方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

そこで、本発明者らは、これらの課題を達成すべく、種々の検討を重ねた結果、従来のようにro値だけで成形性を評価するのでは実際のプレス成形性を充分に反映しきれていない原因として、実際のプレス成形に際しては、鋼板と金型が接触しながらプレス成形され、その際には、表面の状態により摺動性が大きく変化し、素材変形抵抗に大きく影響されることに着目した。従来のように、JIS Z 2254の引張試験方法で求められるroは、材料そのものの持つ機械的性質を反映しているにすぎず、表面抵抗の影響が全く加味されていない理想潤滑状態での素材のもつ特性を評価していないためと考えられ、roの値だけでは、実際のプレス成形に即した材料の提供、もしくは、材料設計がなされないのである。

0009

本発明者らは、素材そのものの持つ高いr値の材料だけでは、実際のプレス成形性に即した材料を適切に提供できないことから、材料コスト低減に伴う材料のグレードダウン要請に対しても、より実態に即した r値の指標をもって、薄鋼板の材料設計を行う必要があると考え、従来のJIS Z 2254にて求められるroの値に、表面抵抗を加味して、補正したr値(以下、rx)を採用する必要があると考え、各種検討を行った。

0010

(1)本発明者らは、プレス割れの原因としては、摺動抵抗、特に、プレス時に面接触する平板摺動時の摩擦係数について着目して、それらを考慮して補正されたrxにてプレス成形性を評価することで、より実態に即したプレス成形性に優れた材料が提供できることを知った。

0011

(2)roが異なる材料であっても、同等のrxとなるように、表面の摺動性を変化させることで、roの小さい低グレードの材料を、roの高い高グレードの材料と同等の絞り性形成を有する材料とすることが可能となることを知った。

0012

(3)同一成分で、同一熱間圧延条件、そして同一冷間圧延条件で製造した材料であっても、最終製品段階での摺動性を調整することで、絞り成形性の異なる材料を作り分けることが可能となるために、製造条件集約することが可能となり、途中での製造条件の変動が抑制され、材料ロスを極力抑えることが可能になることを知った。

0013

(4)最終工程での表面状態のみを制御することで所期の絞り成形性を備えた材料を提供できることは、材料コスト面から非常に有意義であり、前述の補正後のrxを逆に利用、管理することで、より適正な材料を安定的に提供できるのである。

0014

(5)その際の表面潤滑状態(摩擦係数)の制御方法としては、無機系の硬質皮膜、もしくは、潤滑剤を含んだような有機系の潤滑剤樹脂の処理が効果的であるが、摩擦係数を適正に制御するためには、その処理量と、鋼板の表面粗度を適正にすればよい。

0015

(6)従来から、例えば、特開平11−57611 号公報に記載されているように、塗膜の特性に着目して、その摩擦係数を抑制した潤滑皮膜を形成させようという方法は開示されている。また、特開平9−13178 号公報に記載のように、塗装鋼板において、鋼板表面の粗度と、塗膜表面の摩擦係数を規定したものは開示されている。

0016

しかしながら、同じグレードの材料についてより適正なプレス成形性を確保するために、あるいは、高グレード材なみの成形性を低グレード材で確保するために、潤滑皮膜量、および、その表面粗度を適正化することにより、潤滑状態を制御しようという考え方はみあたらない。

0017

ここに、本発明は次の通りである。
(1)鋼板の機械的性質として、r値(ランクフォード値)を求め、次いで、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にてr値を補正し、得られたrx値に基づいて絞り性を評価する方法。

0018

rx=ro ×exp(−Kμ)
rx :補正r値
ro :引張試験機で得られたr値
K :潤滑状態に起因した定数
μ :表面摩擦係数
(2)鋼板に起因しない潤滑状態に起因する定数Kが、1.5 〜2.5 の範囲である、上記(1) に記載の絞り成形性の評価方法。

0019

(3)鋼板のr値(ランクフォード値)を、当該鋼板の表面摩擦係数に応じて、下式の関係にて補正し、得られたrx値が所定値になるように該r値および表面摩擦係数を変更する薄鋼板の製造方法。

0020

rx=ro ×exp(−Kμ)
rx :補正r値
ro :引張試験機で得られたr値
K :潤滑状態に起因した定数
μ :表面摩擦係数
(4)ro値を1.65以下に調整した薄鋼板に、表面に潤滑処理を施すことにより、前記rx値を1.15以上とする、上記(3) に記載の薄鋼板の製造方法。

0021

(5)前記rx値の調整に際して、薄鋼板表面に無機系の潤滑皮膜、もしくは、潤滑剤を含んだ有機系皮膜を形成し、その際の付着量と、鋼板表面粗度の関係が、下式の関係を満足するように調整する、上記(3) または(4) に記載の薄鋼板の製造方法。

0022

Cwt ≧ 0.4×(Ra)2
Cwt(g/m2):潤滑処理皮膜
Ra(μm ):鋼板表面平均粗さ(JIS BO601)

発明を実施するための最良の形態

0023

次に、本発明における材料設計の基になった考え方を説明する。従来のJIS Z 2254に記載の引張試験によるr値の測定方法、つまり、roの求め方は、表面の潤滑状態を全く加味していない評価方法であり、いわば、全く表面摩擦抵抗を考慮していない理想潤滑状態の際のプレス成形性を反映していると考えられる。

0024

しかしながら、実際の薄鋼板のプレス成形においては、金型との接触によって、必ず摩擦抵抗が存在するために、実際のプレス成形性は、理想潤滑状態のもつroから推測される絞り成形性ほどのプレス成形性が得られない。

0025

したがって、本発明にあっては、実際のプレス成形性を考える際には、材料そのものが持つ理想潤滑状態である絞り成形性から、摩擦抵抗によって低下する分を考慮すれば、実態に即した絞り成形性が推測されるr値が得られると考えるのである。

0026

摩擦抵抗については、鋼板そのものが持つ摩擦抵抗以外に、金型の材質、金型の表面粗度、あるいは、状況によって加工時に加工油を使用するような場合においては、その油のもつ摩擦係数等、当該薄鋼板以外の摩擦抵抗を変化させる要因が考えられる。したがって、鋼板そのものが持つ摩擦抵抗と鋼板に付随しないプレス成形時に発生する摩擦抵抗の合わさった摩擦抵抗が、最終的な絞り成形性に影響を及ぼすと考えられる。

0027

本発明者らは、これらの実態に即して、以下の式に当てはめることで、実際のプレス成形性を反映させたr値に補正できるのではないかと考え、後述のように、種々の r値(ro)の異なる冷延鋼板を準備し、その上に、潤滑処理を施すことで、絞り性形成(限界絞り比)がどのように変化するかを調査、その際の絞り成形から想定されるr値を実際のプレス成形に即した補正 r値と考え、鋼板の表面摩擦係数(μ)と補正r値(rx)の関係を整理した結果、 rx=ro×exp(−Kμ)の関係を有していることが判明した。

0028

その際に、鋼板に起因しない要因である定数Kを求めるために、金型をエメリー紙にて研磨させ、金型表面を強制的にあらすことで、鋼板そのものに依存しない要因であるKを変化させることで、上述のように、表面摩擦係数μ(以下、単に摩擦係数) とrxの関係を調査し、Kをもとめた。その結果、Kとしては、1.5〜2.5 の範囲内であり、通常のプレス条件下においては、多少の金型損耗も考えられるため、2.0 近傍であると予想されることが判明した。

0029

本発明においてrxを調整する手段として当然ながらroをも変更することも考えられ、すでに公知のようにroは鋼組成、熱間圧延条件、冷間圧延条件、そして焼鈍条件を調整することで集合組織の形態を変えることで変更することができる。しかし、実際上、本発明の利益を活用するには潤滑状態の変更が好ましい。

0030

なお、本発明において採用すべきro値としては、圧延方向に対して、3方向の平均である平均r値(=ro°+r90°+2r45°)/4を採用することがより好ましいが、日本鉄鋼連盟規格に基づき、軟鋼板では、圧延方向、高張力鋼板では、圧延方向に対して直角方向のr値を代表値として採用してもよい。

0031

本発明の好適態様においては、鋼板の摩擦係数としては、図1に示す平板摺動試験を用い、その際の押さえ荷重の差(=ΔP)と引抜き荷重との差(=ΔF)の比を用い、摩擦係数の代表値とする。

0032

すなわち、工具鋼のダイの表面を#1000エメリー紙で研磨してこれを両側からP=8、12KNの荷重押さえながら、鋼板を引き抜き、そのときの荷重下を下記式に代入して摩擦係数を求める。

0033

0034

この理由は、平板摺動試験は、比較的素材変形を伴わない試験方法であり、さらに、荷重差の比を採用することで、より素材変形抵抗の影響を除去できるからである。但し、摩擦係数の測定は、その他の試験方法、例えば、鋼板表面に、鋼球押さえつけるような摩耗摩擦試験方法等で測定した値を採用することも可能であるが、その際は、摩擦係数が、異なる可能性もあるので、その場合には本発明における評価方法での摩擦係数値に補正する必要がある。

0035

また、本発明における対象となる薄鋼板としては、冷延鋼板ままの状態だけでなく、合金化溶融亜鉛めっき皮膜溶融亜鉛めっき皮膜、もしくは、電気亜鉛めっき皮膜電気亜鉛Ni合金化めっき皮膜等の表面処理を施しためっき鋼板(以下、亜鉛系めっき鋼板)においても適用が可能である。さらには、前記亜鉛系めっき鋼板の上にクロメート等の化成処理、さらに、その上に、樹脂コーティングした有機複合被覆鋼板においても適用が可能である。但し、亜鉛系めっき鋼板、および、その上層に後処理を施した表面処理鋼板においては、めっき皮膜、化成処理皮膜、もしくは、樹脂皮膜そのものが持つ摺動特性が変化するので、それらの鋼板に適した摩擦係数値を採用する必要がある。

0036

次に、本発明における補正r値の考え方を利用することにより、ro値の小さい低グレード材でも、潤滑性の向上による摩擦抵抗を抑制させることで、高グレード材用途への適用を可能とする例を示す。

0037

一般的に、軟鋼板は、例えば、日本鉄鋼連盟規格に記載されているように、その絞り成形性のグレードから、グレード順に、JSC270C、D、E、F、Gのように分かれており、一般的には、JSC270E以上が、高グレードの絞り成形用材料と考えられている。

0038

これらの高グレード材は、r値(=本発明で言うro) として、1.65超の材料が一般的であり、それ以下の材料が、低グレード材として扱われることが多い。したがって、本発明のrx式に基づき、ro≦の1.65の材料でも、ro>1.65の材料(できれば、r値として0.1 以上の差を付けないと製造バラツキを考えた際に、優位差があるとは言えないため、好ましくは、ro≧1.75が必要)と等価のrxを確保できればよい。因みに、前述の補正式によれば、そのためには、鋼板摩擦係数を0.12以下、好ましくは、0.10以上とすることが必要であることが推測される。

0039

すなわちJIS Z 2554にて求められるro値の材料に対して、目標とされるrx(潤滑処理を施していない場合の高グレード材のrx)となるように、最終製品で潤滑処理を施すことにより、例えば、roが1.65以下の材料であっても、その際の摩擦係数としては、0.12以下に制御することで、roが1.70以上の材料と等しいプレス成形性を有する材料として提供することができる。

0040

このように本発明によれば、絞り成形性のグレードの低い材料(例えば、日本鉄鋼連盟規格におけるJAC270C、D相当材)に対して、上述のような材料設計思想に基づき、表面潤滑状態を上げた表面処理を施し、摩擦係数を制御することで、絞りグレードの高い材料(例えば、日本鉄鋼連盟規格におけるJAC270E、F、G相当)の材料を提供する方法を具体化することが可能となった。

0041

本発明における鋼板摩擦係数の制御方法としては、当該薄鋼板の成形後に求められる性能を阻害しない潤滑皮膜を形成することが好ましい。例えば、自動車車体パネルにおいて、低グレード材にて表面潤滑処理を施して、高グレード材と同等の材料を提供しようと考えた際には、プレス成形後塗装下地処理として、化成処理性を行うことが一般的であるが、その際には、表面処理を施しても良好な化成処理性を確保できることが前提となる。

0042

このような潤滑皮膜としては、亜鉛系めっき鋼板表面上に、リン酸亜鉛等の酸素酸亜鉛ベースにした皮膜を形成させたものや、シリケートのような珪酸塩皮膜を形成させたもの、Fe−Zn系、Ni系の金属めっきを施した2層めっき、もしくは、めっき鋼板に、化学的処理により、めっき鋼板表面を強制的に酸化させることでZn、Ni系の金属酸化物を表面に形成させた、無機系皮膜処理が挙げられる。また、冷延鋼板ベースでは、ミルボンドを代表とする有機樹脂や、更なる潤滑性の向上を目的として、ポリエチレンワックステフロン(登録商標)等の潤滑剤を添加した有機樹脂を形成させる有機系の潤滑処理も挙げられる。

0043

本発明において、いずれの潤滑処理においても、鋼板そのものが持つ摩擦係数を制御することが重要であり、その制御方法としは、潤滑皮膜が持つ摺動性とともに、鋼板の表面粗度の影響が大きく、鋼板の粗度が適正でなければ、鋼板そのものの摩擦係数の制御が困難であり、本発明の期待するところの、適正グレードの材料を提供するに当たって、重要なrxを制御することができなくなる。

0044

本発明者らは、種々の潤滑処理を行った際の鋼板摩擦係数を調査した結果、鋼板の表面粗度と、潤滑処理量を制御することで、鋼板摩擦係数の制御が可能であることを見いだした。

0045

すなわち、種々の潤滑処理量と鋼板表面粗度との影響を調査した結果、鋼板表面に形成される潤滑皮膜厚が、鋼板の表面摩擦係数に大きな影響を及ぼしており、潤滑処理量であるCwt(g/m2) と鋼板表面粗度の指標であるJIS B O601に規定しているところの鋼板表面粗さ Ra(μm)の2乗の比が一定量以上ないと、摺動時に、金型焼き付きを起こし、摩擦係数が上昇することが判明した。

0046

そこで、本発明で目標としている鋼板の摩擦係数0.12以下、好ましくは、0.10以下を確保するためには、その潤滑処理量Cwt と平均粗さRaで、Cwt/(Ra)2 ≧0.4 、好ましくは、Cwt(Ra)2≧0.6 が必要であり、これより少ないと、目標とする鋼板摩擦係数が得られない場合がある。

0047

(実施例1)本発明の基になる補正r値、つまりrxの考え方の有効性について説明する。表1に記載の板厚=0.8mm で、ro値(3方向の平均r値を採用)の異なる冷延鋼板をベースに、
理想的な潤滑状態に近い評価として、厚さ25μm のポリエチレンシールを両面に貼り付け、鋼板の摩擦係数(以下、μ)を0.02に調整したものと、
日本油脂製の有機系の潤滑皮膜として、MC560Jを0.5 〜2.5g/m2 まで塗布し、鋼板の摩擦係数μを0.05、0.10、0.13に調整したもの、
潤滑処理を施していないで、μが0 .15 のものという鋼板の摩擦係数を変化させた材料を準備し、それぞれプレス成形性を調査した。

0048

0049

各鋼板の摩擦係数は、図1に示す条件にて確認、調整した。また、プレス成形性については、図2に示す条件(その際の金型の表面粗度は、エメリー紙No.1000 、500 、250 にて研磨)にて、成形限界絞り比(LDR) を測定した。このときの限界絞り比は下記式で求めた。

0050

0051

その際の調査結果について、図3、4に示す。図3より、材料特性とLDR とは、良好な相関関係が認められ、roの増大に伴い、LDR は上昇し、良好なプレス成形性が確保できることが判る。しかしながら、摩擦係数とLDR の関係で整理した結果を示す図4からは、摩擦係数の増大に伴い、同一グレード材でもプレス成形性の指標となるLDR が低下しており、同一グレードでも、μの違いにより、LDRは変化することから、実際のプレス成形性においては、roのみでは、成形性を予測することが困難であることが判る。

0052

以上の結果から、roに加えて、摩擦係数を加味しなければ、実プレス成形に即した材料の提供は困難であり、摩擦係数を加味したr値の補正を行うのである。すなわち、図3からも、LDR は、r値と極めて良好な相関が認められ、また、図4から、同一roの材料間では、摩擦係数により、一義的にLDR が決定することから、あるLDR 値を確保できるr値は、自ずと決定、予測することが可能である。そこで、今回の各種材料について、そのLDR 値から予測できるr値が、実プレス成形を反映したr値であると考えられ、そのr値を補正r値(rx)とした。

0053

これらの結果を、図5および図6に示す。図5より、プレス成形性から予想されるLDHとその値から補正されたrx値は、どのグレード材によらず良好な相関関係が認められることから、rxがプレス成形の指標としての妥当性を示している。また、図6から、そのrxをもとに、摩擦係数とrxとroの比の自然対数をとった(=−1n(rx/ro)) 際に、どのグレード材でも、摩擦係数と全く同一で、かつ、良好な相関が認められることから、rx=Ko×ro×exp(−μ)の関係になることが判る。

0054

なお、この際のKoは、本プレス試験時に特有の定数であり、鋼板表面抵抗以外に起因する摩擦抵抗に起因する定数であると推測できる。
(実施例2)実施例1の結果から、鋼板表面抵抗以外の要因で、rxが変動することが明らかになったが、この原因としては、金型の表面抵抗の影響が予想され、鋼板表面上に潤滑剤として塗油されている油剤による潤滑状態が同一であると仮定すると、金型の表面状態の影響が大きいと予想される。

0055

そこで、金型表面粗度を変更させた場合に、図6と同様の摩擦係数と−1n(rx/ro)の関係について整理した。その際に、本発明の骨子である実際のプレス成形に沿ったrxを決定するためには、金型潤滑状態も実際のプレス成形に近い形に反映させる必要があるために、図2に記載のプレス成形性評価方法も、鋼板表面に塗油した潤滑油としては、一般防錆油(パーカー興産製の NOX−RUST550HN)を1.5g/m2 塗油して、LDR を測定した。

0056

また、その際の金型表面粗度としては、一般的に、エメリー紙のNo.1000 〜No.250で研磨した。この理由は、金型に焼き付きが発生した際には、その擬着物を除去するために、一般的には、エメリー紙にて除去する場合が多く、その際に使用される番手として、一般的に使用されるものであるためである。

0057

なお、その際に、試験に供したサンプルは、実施例1と同等の材料であるが、実施例1の結果から、明らかなように、鋼板の摩擦係数と、−1n(rx/ro)の関係で整理すると、全く材料グレードの影響を受けないことから、本実施例では、JSC270F での結果のみを図示する。

0058

図7に、その結果を示すが、これにより、エメリー紙の番手が小さく、研磨により金型表面があれてくるほど、−1n(rx/ro)が大きくなり、rxが低下してくることが判る。−1n(rx/ro)と鋼板摩擦係数μは、直線関係が認められ、その傾きが、エメリー紙No.1000 研磨で1.5 、No.250研磨で、2.5 である。

0059

したがって、実際のプレス金型で、使用されるエメリー紙の番手から判断すると、鋼板要因以外の摩擦抵抗として考えられる、摺動抵抗分の金型に起因する摩擦抵抗の要因である常数Kは、実際のプレス成形性では、だいたい1.5 〜2.5 の範囲内にある。

0060

(実施例3)以上の結果から、実際のプレス成形性においては、その絞り性を判断する際には、従来の機械的性質の代表値であるroを採用することでは、充分に実プレス成形性を反映しきれず摩擦抵抗を加味した補正r値であるrxを採用することが重要であることが判った。

0061

本例では、rxを用いることにより、低グレード材でも、摩擦抵抗を抑制させることで、高グレード材と同等の成形性が確保できる例を示す。サンプルとして、表2に示す板厚=0.8mm の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GA鋼板)であるJAC270D とJAC270F とを準備し、JAC270D については、その鋼板粗度の変更、および、各種潤滑処理を施すことにより、鋼板の摩擦係数μを変化させ、その際のLDR を調査することにより、JAC270F と同等レベルのプレス成形性が確保できるか、確認試験を行った。

0062

その際の潤滑処埋方法としては、
GA鋼板に、硫酸Fe溶液に浸漬させ、陰極電解させることにより、電析させたFeめっきをその付着量で0.5 〜3.Og/m2 まで変動させた2層めっき、
GA鋼板をリン酸亜鉛水溶液に浸漬させることにより、リン酸亜鉛皮膜を付着量で0.3 〜1.5g/m2 まで変動させた無機潤滑処理鋼板
シリカを10%含有したアクリル樹脂液中に、潤滑剤としてポリエチレンワックスをその固形分量に対して5%添加した有機樹脂溶液をGA鋼板上に塗布、乾燥させ、その皮膜量が、0.2 〜2.Og/m2 まで変動させた有機複合被覆鋼板の3種類を実施した。

0063

その際のμについては、図1に記載の方法にて測定し、プレス成形性評価方法としては、図2に記載のLDR にて調査を実施し、何も処理を施していないJAC270F とのLDR の違いによって、プレス成形性の合否判定を行った。

0064

すなわち、JAC270F でのエメリー紙の#1000で、金型を粗面化した場合には、rx≧2.20、その際のLDR が、2.20〜2.25、#250 で粗面化した場合には、rx≧1.15、LDR が、2.00〜2.10であったため、JAC270D で潤滑処理を施し摩擦係数を制御した際に、rxとして1.15以上が必要で、その際に、2.00以上のLDR 値が確保できる場合に、材料のグレードダウンが可能と判断でき、合格と評価し、rxとして、1.35、LDR として、2.20以上が確保できた際には好適と判断した。

0065

これらの結果を表2にまとめて記載する。表2中のNo.1、2 のJAC270F に対して、No.3〜6、9、10、15、16から、潤滑処理を施さなかったもの、もしくは、潤滑皮膜量が少ないGA鋼板では、満足するrxが得られず、またLDR 値の確保ができていない。また、No.12 から、μ=0.12では、LDR 値は確保できているものの、rxが未達であり、ややプレス性形成に劣ると考えられる。同様に、No.17 からも、μ=0.12では、エメリー紙#250 で研磨した非常にあれた金型状態では、rx、LDR 値は確保できているが、#1000で金型研磨した場合に、rxがやや小さく、プレス成形性としてやや劣ると考えられる。

0066

したがって、より高いLDR 値が要される場合は、鋼板摩擦係数として、不足になる場合があることがあり、No.7、12、18から、好適なμとしては、0.10以下であることが判る。

0067

0068

さらに、表2の結果から、鋼板摩擦係数μと、潤滑皮膜厚に相当するCwt/(Ra)2 との関係を図示した結果を図8に示す。図8から、Cwt/(Ra)2 とμとの間には、その潤滑処理の種類に関係なく、良好な相関関係が認められ、材料のグレードダウン化が可能と判断する鋼板の摩擦係数μ≧0.12を確保するには、Cwt/(Ra)2≧0.4 あればよいことが、より好ましい鋼板の摩擦係数であるμ≧0.10を確保するには、Cwt/(Ra)2 ≧0.6 以上あれば充分であることが判る。

0069

図8は各種潤滑処理において、その鋼板粗度、および、潤滑皮膜量を変化させた際の潤滑処理条件 (=Cwt/(Ra)2) と鋼板摩擦係数との関係を表すグラフである。

0070

なお、本発明における材料のグレードダウン化の目標として、本実施例においては、ro≧1.75から、ro≦1.65の材料、具体的には、ro=1.75〜1.80の材料を、潤滑処理を適正化させることにより、ro=1.57〜1.65の材料ヘグレードダウンが可能かの実証を試みたが、図8から、潤滑処理による鋼板摩擦係数は予測されることから、素材そのものが持つroと、鋼板粗度、および、潤滑処理量を決定することで、実際のプレス成形性時に要求されるrxを任意に変化させることが可能であり、逆に言えば、roの固定された材料でも、その潤滑処理条件を適正化させることで、rxの管理が可能であり、また、要求されるrxに合わせた薄鋼板が提供可能である。

発明の効果

0071

本発明から、プレス成形時の鋼板のもつ摩擦係数を加味して、r値を補正することにより、従来から絞り成形性の指標として採用されてきたr値よりも、よりプレス成形性を反映させたr値を提供することが可能となった。この補正されたr値を採用することにより、より、実際のプレス成形性に適した材料を提供することが可能となる。

0072

また、鋼板摩擦係数は、潤滑処理の適用と、その際の表面粗度の適正化で制御が可能であることから、本発明の補正されたr値を適用すれば、製品の最終工程で鋼板摩擦を制御することにより、モノグレードでも、各種グレード材を作り分けることが可能となるため、低グレード材でも、高グレード材と同等の材料を提供することが可能となることから、その工業的貢献度は、極めて多大なものと判断する。

図面の簡単な説明

0073

図1鋼板摩擦係数の測定方法、および、その評価方法を表す概念図である。
図2限界絞り比の測定方法、および、その評価方法を表す概念図である。
図3各種グレード材でのroとLDR の関係を表すクラフである。
図4各種グレード毎での鋼板摩擦係数とLDR との関係を表すグラフである。
図5各種グレード材での補正されたrx値とLDR の関係を表すグラフである。
図6各種グレード材毎での鋼板摩擦係数とrx/ro比の自然対数値との関係を表すグラフである。
図7エメリー紙により、金型表面粗度を変更させた場合の鋼板摩擦係数とrx/ro比の自然対数値との関係を表すグラフである。
図8各種潤滑処理において、その鋼板粗度、および、潤滑皮膜量を変化させた際の潤滑処理条件(=Cwt/(Ra)2)と鋼板摩擦係数との関係を表すグラフである。

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