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技術 下地被膜を有しない、磁束密度が高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 早川康之山上日出雄高島稔今村猛黒沢光正
出願日 2002年1月9日 (19年5ヶ月経過) 出願番号 2002-001917
公開日 2003年7月18日 (17年10ヶ月経過) 公開番号 2003-201516
状態 特許登録済
技術分野 コア、コイル、磁石の製造 電磁鋼板の製造 軟質磁性材料
主要キーワード コロダイルシリカ 連続打ち 大型モータ 大型発電機 ガラス被膜 打ち抜き速度 湿潤水 素材成分
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2003年7月18日)のものです。
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課題

インヒビタを使用せずに製造する場合であっても、磁束密度が十分に高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板を有利に得ることができる製造方法を提案する。

解決手段

質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜8.0 %およびMn:0.005〜3.0 %を含む溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで低酸化性または非酸化性雰囲気中にて再結晶焼鈍を行い、再結晶焼鈍後のC量を 0.005〜0.025 %の範囲としたのち、必要に応じて焼鈍分離剤に適用してから、最終仕上焼鈍を行い、この最終仕上焼鈍時 900℃以上の温度域にて分圧:10vol%以上の水素雰囲気を導入することにより、C量を 50ppm未満まで低減する。

概要

背景

大型のモータ発電機の鉄心材料としては、鉄損によるエネルギー損失重視して、方向性電磁鋼板が用いられている。方向性電磁鋼板を積層して使用する大型発電機鉄心固定子)は、扇型形状のセグメントを多数打ち抜き、これらを積層して組み立てる方法が用いられている。

このような積層方式を用いる場合、ティース部を中心として複雑な形状に打ち抜く必要があることの他、数トン以上もの鉄心材料を処理するため打ち抜き回数が膨大な数となることから、打ち抜きに際し、金型の磨耗の少ない打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板が求められている。

方向性電磁鋼板の表面には、通常、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とした下地被膜グラス被膜)が被覆されているが、このフォルステライト被膜は、無方向性電磁鋼板に被覆されている有機樹脂系の被膜に比べると著しく硬質なため、打ち抜き金型の磨耗が大きい。そのため、金型の再研磨または交換が必要となり、需要家における鉄心加工時の作業効率の低下およびコストアップを招くことになる。また、スリット性切断性も同様に、フォルステライト被膜の存在により劣化する。

方向性電磁鋼板の打ち抜き加工性を改善する方法として、フォルステライト被膜を酸洗機械的手法で除去することも可能であるが、コスト高となるだけでなく、表面性状が悪化し、磁気特性も劣化するという大きな問題がある。また、特公平6−49948 号公報および特公平6−49949 号公報には、最終仕上焼鈍時に適用する MgOを主体とする焼鈍分離剤中薬剤を配合することによってフォルステライト被膜の形成を抑制する技術が、また特開平8−134542号公報には、Mnを含有する素材シリカアルミナを主体とする焼鈍分離剤を適用する技術が、それぞれ提案されている。しかしながら、これらの方法では、コイルの層間における最終仕上焼鈍雰囲気の変動によってフォルステライトが部分的に形成されることが多く、完全にフォルステライトの生成を抑制した製品板を得ることは極めて困難であった。

この点、発明者らは、先に、インヒビタ成分を含有しない高純度素材において、固溶窒素の粒界移動抑制効果を利用して二次再結晶発現させる技術を、特開2000−129356号公報において提案し、さらにCを低減した成分を用い、再結晶焼鈍における雰囲気低酸化性とすることによって酸化被膜の生成を抑制する技術を、特開2001−32021 号公報において提案した。これらの技術により、フォルステライトを形成しない方向性電磁鋼板を安価に製造することができるようになった。そして、このような方向性電磁鋼板は、表面に硬質なフォルステライト被膜を有しないので、打ち抜き加工性を重視する大型モータや大型発電機用として有利に適合する。

概要

インヒビタを使用せずに製造する場合であっても、磁束密度が十分に高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板を有利に得ることができる製造方法を提案する。

質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜8.0 %およびMn:0.005〜3.0 %を含む溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで低酸化性または非酸化性雰囲気中にて再結晶焼鈍を行い、再結晶焼鈍後のC量を 0.005〜0.025 %の範囲としたのち、必要に応じて焼鈍分離剤に適用してから、最終仕上焼鈍を行い、この最終仕上焼鈍時 900℃以上の温度域にて分圧:10vol%以上の水素雰囲気を導入することにより、C量を 50ppm未満まで低減する。

目的

しかしながら、インヒビタを使用せずに製造した場合、インヒビタを使用して製造した場合に比べると、得られる磁束密度が低いというところに問題を残していた。本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、インヒビタを使用せずに製造する場合であっても、磁束密度が十分に高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板を有利に製造することができる方法を提案することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜8.0 %およびMn:0.005〜3.0 %を含む溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで低酸化性または非酸化性雰囲気中にて再結晶焼鈍を行い、再結晶焼鈍後のC量を 0.005〜0.025 %の範囲としたのち、必要に応じて焼鈍分離剤に適用してから、最終仕上焼鈍を行い、この最終仕上焼鈍時に 900℃以上の温度域にて分圧:10 vol%以上の水素雰囲気を導入することによりC量を 50ppm未満まで低減することを特徴とする、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とする下地被膜を有しない、磁束密度が高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項2

前記溶鋼として、Alを100ppm以下、N,S,Seをそれぞれ 50ppm以下に低減した溶鋼を用いることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項3

前記溶鋼中に、さらに質量%で、Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005 〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有させることを特徴とする請求項1または2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、主として大型のモータ発電機の鉄心材料として用いられる、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とする下地被膜グラス被膜)を有しない、磁束密度が高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

大型のモータや発電機の鉄心材料としては、鉄損によるエネルギー損失重視して、方向性電磁鋼板が用いられている。方向性電磁鋼板を積層して使用する大型発電機鉄心固定子)は、扇型形状のセグメントを多数打ち抜き、これらを積層して組み立てる方法が用いられている。

0003

このような積層方式を用いる場合、ティース部を中心として複雑な形状に打ち抜く必要があることの他、数トン以上もの鉄心材料を処理するため打ち抜き回数が膨大な数となることから、打ち抜きに際し、金型の磨耗の少ない打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板が求められている。

0004

方向性電磁鋼板の表面には、通常、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とした下地被膜(グラス被膜)が被覆されているが、このフォルステライト被膜は、無方向性電磁鋼板に被覆されている有機樹脂系の被膜に比べると著しく硬質なため、打ち抜き金型の磨耗が大きい。そのため、金型の再研磨または交換が必要となり、需要家における鉄心加工時の作業効率の低下およびコストアップを招くことになる。また、スリット性切断性も同様に、フォルステライト被膜の存在により劣化する。

0005

方向性電磁鋼板の打ち抜き加工性を改善する方法として、フォルステライト被膜を酸洗機械的手法で除去することも可能であるが、コスト高となるだけでなく、表面性状が悪化し、磁気特性も劣化するという大きな問題がある。また、特公平6−49948 号公報および特公平6−49949 号公報には、最終仕上焼鈍時に適用する MgOを主体とする焼鈍分離剤中薬剤を配合することによってフォルステライト被膜の形成を抑制する技術が、また特開平8−134542号公報には、Mnを含有する素材シリカアルミナを主体とする焼鈍分離剤を適用する技術が、それぞれ提案されている。しかしながら、これらの方法では、コイルの層間における最終仕上焼鈍雰囲気の変動によってフォルステライトが部分的に形成されることが多く、完全にフォルステライトの生成を抑制した製品板を得ることは極めて困難であった。

0006

この点、発明者らは、先に、インヒビタ成分を含有しない高純度素材において、固溶窒素の粒界移動抑制効果を利用して二次再結晶発現させる技術を、特開2000−129356号公報において提案し、さらにCを低減した成分を用い、再結晶焼鈍における雰囲気低酸化性とすることによって酸化被膜の生成を抑制する技術を、特開2001−32021 号公報において提案した。これらの技術により、フォルステライトを形成しない方向性電磁鋼板を安価に製造することができるようになった。そして、このような方向性電磁鋼板は、表面に硬質なフォルステライト被膜を有しないので、打ち抜き加工性を重視する大型モータや大型発電機用として有利に適合する。

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、インヒビタを使用せずに製造した場合、インヒビタを使用して製造した場合に比べると、得られる磁束密度が低いというところに問題を残していた。本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、インヒビタを使用せずに製造する場合であっても、磁束密度が十分に高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板を有利に製造することができる方法を提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、インヒビタ成分を含有しない素材を用いて、フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板を製造する場合、最終焼鈍工程おける二次再結晶をCが残存する状態で行うことにより磁束密度が向上すること、またその後の高温域水素雰囲気を導入することにより最終仕上焼鈍工程で脱炭が可能であることの新規知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するものである。

0009

すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜8.0 %およびMn:0.005 〜3.0 %を含む溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで低酸化性または非酸化性雰囲気中にて再結晶焼鈍を行い、再結晶焼鈍後のC量を 0.005〜0.025 %の範囲としたのち、必要に応じて焼鈍分離剤に適用してから、最終仕上焼鈍を行い、この最終仕上焼鈍時に 900℃以上の温度域にて分圧:10 vol%以上の水素雰囲気を導入することによりC量を 50ppm未満まで低減することを特徴とする、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とする下地被膜を有しない、磁束密度が高くかつ鉄損の低い方向性電磁鋼板の製造方法。

0010

2.前記溶鋼として、Alを100ppm以下、N,S,Seをそれぞれ 50ppm以下に低減した溶鋼を用いることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

0011

3.前記溶鋼中に、さらに質量%で、Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005 〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有させることを特徴とする請求項1または2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

発明を実施するための最良の形態

0012

以下、本発明を由来するに至った実験について説明する。質量%で、C:0.015 %、Si:3.2 %およびMn:0.05%を含み、A1を 25ppm、Nを 10ppm、その他の成分を 30ppm以下に低減したインヒビター成分を含まない鋼A、および脱ガス処理によりCを大きく低減したC:0.003 %、Si 3.2%およびMn:0.05%を含み、Alを 35ppm、Nを8ppm 、その他の成分を 30ppm以下に低減したインヒビター成分を含まない鋼Bの各スラブを、連続鋳造にて製造した。ついで、1120℃に加熱後、熱間圧延により 2.4mm厚の熱延板としたのち、窒素雰囲気中にて 900℃で20秒均熱熱延板焼鈍後急冷し、冷間圧延により最終板厚:0.34mmの冷延板とした。ついで、水素:50 vol%、窒素:50 vol%、露点:−30℃の雰囲気中にて 900℃で均熱30秒の再結晶焼鈍を行ったのち、最終仕上焼鈍を施した。この最終仕上焼鈍は、露点:−20℃の窒素雰囲気にて常温から 900℃まで50℃/hの速度で昇熱し、この温度に50時間保定したのち、水素分圧を種々に変化させた水素−窒素混合雰囲気に切り替え、さらに1000℃まで10℃/hの速度で昇温する条件で行った。

0013

図1に、焼鈍雰囲気切り替え後の水素分圧と磁束密度(B8 )との関係について調べた結果を示す。同図に示したとおり、Cを多量に含有する鋼Aの方が、C量の低い鋼Bよりも磁束密度が優れていることが分かる。また、鋼Aにおいて、水素分圧が 10vol%以上になると磁束密度の急激な向上が認められたが、 30vol%を超えると磁束密度の改善効果飽和に達した。

0014

また、図2に、焼鈍雰囲気切り替え後の水素分圧と鉄損(W17/50 )との関係について調べた結果を示す。同図に示したとおり、鋼Aでは、水素分圧を増加させることにより著しい鉄損の改善が認められたのに対し、鋼Bでの鉄損改善量は僅かにすぎなかった。

0015

さらに、図3に、焼鈍雰囲気切り替え後の水素分圧と鋼中C量との関係について調べた結果を示す。同図によれば、水素分圧が10%を超えると、鋼Aについても鋼中C量を 50ppm未満まで低減できることが分かる。すなわち、900 ℃以上の温度域で水素雰囲気を導入することにより、効果的に脱炭が進行して、著しい磁束密度の向上と鉄損の改善がもたらされたものと考えられる。

0016

従来、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍によりガラス被膜を形成させる方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍後に30〜200ppmのCを含有させて磁束密度の向上を図る技術が、特開昭58−11738 号公報にて開示されている。しかしながら、最終仕上焼鈍によりガラス被膜を形成させる方法では、最終仕上焼鈍時に脱炭することは困難であり、最終仕上焼鈍後もCが残留する。このため、この技術の場合、磁気時効現象で鉄損が劣化するのを防止するために、最終仕上焼鈍時に形成されたガラス被膜を、最終仕上焼鈍後、酸洗により除去したのち、再度脱炭焼鈍真空焼鈍炭素を減少させるという、極めてコスト高な製造工程を必要する。また、ガラス被膜を酸洗で除去する方法では、表面の平滑性が損なわれるため、鉄損の劣化が余儀なくされる。さらに、脱炭焼鈍は酸化性雰囲気で行われるため表面に酸化膜が形成されて鉄損が一層劣化する。

0017

これに対し、本発明は、最終仕上焼鈍時にフォルステライト被膜を形成しない方法であるため、仕上焼鈍雰囲気中の水素と反応させることにより、平滑な表面を保ったまま、脱炭を行うことが可能である。そのため、本発明では、従来の最終仕上焼鈍時にフォルステライト被膜を形成させる技術と比較して、極めて低い鉄損を得ることができるのである。

0018

以上述べたように、本発明では、二次再結晶焼鈍をCが残存する状態で行うことによって、高い磁束密度を得ることができ、またその後に高温で水素雰囲気を導入し、最終仕上焼鈍工程で脱炭を行うことによって、鉄損の低減を図ることができるのである。

0019

本発明に従い、二次再結晶焼鈍をCが 0.005〜0.025 %残存する状態で施すことによって、高い磁束密度が得られる理由については、必ずしも明らかではないが、Nと同様に侵入型元素であるCの固溶状態での存在が、二次再結晶における粒界移動の選択性を高めることによるものと推定される。また、最終仕上焼鈍工程の高温域で水素雰囲気を導入することにより脱炭する機構については、鋼板表面における炭化水素の生成による炭素の消費であると推定されるが、詳細は明らかでない。

0020

以下、本発明において、素材であるスラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%(mass%)を意味する。
C:0.08%以下
C量が溶製段階で0.08%を超えると、再結晶焼鈍時にCを 0.025%以下まで低減するのが困難となるので、Cは0.08%以下に制限した。なお、C量があまりに少ないと再結晶焼鈍後に最低必要なC:0.005 %が得られず、また磁束密度の低下を招くので、C量の下限は 0.005%程度とするのが好ましい。

0021

Si:2.0 〜8.0 %
Siは、鋼の電気抵抗を増大し鉄損を低減するのに有用な元素であるので、2.0%以上含有させる。しかしながら、含有量が 8.0%を超えると加工性が著しく低下して冷間圧延が困難となる。そこでSi量は 2.0〜8.0 %の範囲に限定した。

0022

Mn:0.005 〜3.0 %
Mnは、熱間加工性を改善するために有用な元素であるが、含有量が 0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方 3.0%を超えると磁束密度の低下を招くので、Mn量は 0.005〜3.0 %の範囲とする。

0023

本発明では、従来知られているAlN,MnSe, MnS等のインヒビタを使用することも可能ではあるが、インヒビタを使用せずに二次再結晶を発現させる方法を適用することが、インヒビタ固溶のための高温スラブ加熱や、インヒビタ除去のための高温純化焼鈍を省略して簡略な製造工程で低鉄損を得る上で、特に有利である。その場合、インヒビタ形成元素であるAlは 100 ppm以下、またNは 50ppm以下好ましくは 30ppm以下まで低減しておくことが、良好な二次再結晶を発現させるために好適である。また、その他のインヒビタ形成元素であるS, Seについても 50ppm以下、好ましくは 30ppm以下に低減することが有利である。その他、窒化物形成元素であるTi, Nb, B, Ta, V等についても、それぞれ 50ppm以下に低減することが鉄損の劣化を防止する上で有効である。

0024

以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.01〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005 〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni量は0.01〜1.50%とした。また、Sn,Sb,Cu, P, Crはそれぞれ、鉄損の向上に有用な元素であるが、いずれも上記範囲の下限値に満たないと鉄損の向上効果が小さく、一方上限量を超えると二次再結晶粒発達阻害されるので、それぞれSn:0.01〜0.50%,Sb:0.005 〜0.50%,Cu:0.01〜0.50%,P:0.005 〜0.50%,Cr:0.01〜1.5 %の範囲で含有させる必要がある。

0025

そして、鋼板表面にはフォルステライト(Mg2SiO4) を主体とした下地被膜を有しないことが、良好な打ち抜き性を確保するための大前提である。

0026

次に、本発明の製造工程について説明する。上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、転炉電気炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用いてスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて 100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。

0027

ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は 800〜1100℃の範囲が好適である。熱延板焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施したのち、再結晶焼鈍行う。上記の冷間圧延において、圧延温度を 100〜250 ℃に上昇させて圧延を行うことや、冷間圧延の途中で 100〜250 ℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる上で有効である。最終冷延後の再結晶焼鈍は、低酸化性または非酸化性雰囲気で 800〜1000℃の範囲で行うことが好適である。ここで、低酸化性または非酸化性雰囲気とは、酸素を含有しない露点:40℃以下、好ましくは露点:0℃以下の雰囲気であり、窒素、Ar、水素およびそれらの混合雰囲気が工業的に使用し易い。

0028

上記の再結晶焼鈍後にC量を 0.005〜0.025 %に調整することが高い磁束密度を確保する上で最も肝要な点である。すなわち、再結晶焼鈍後のC量が 0.005%未満の場合には、固溶Cによる磁束密度向上効果が得られず、一方 0.025%を超えた場合はγ変態により二次再結晶粒が発達しないので、いずれも磁気特性は大幅に劣化する。

0029

C量を制御する方法としては、製鋼段階でC量をこの範囲に制御し、その後の焼鈍工程をすべて非脱炭雰囲気で行う方法が最も簡便であるが、製鋼段階での低減が困難な場合には、再結晶焼鈍あるいは熱延板焼鈍、中間焼鈍雰囲気を湿潤水素雰囲気とし、適切な時間だけ焼鈍することにより、最終仕上焼鈍までに脱炭して、上記のC量範囲に制御する必要がある。また、最終冷間圧延後、あるいは再結晶焼鈍後に浸珪法によってにSi量を増加させる技術を併用してもよい。

0030

本発明では、鋼板表面に、フォルステライト(Mg2SiO4)を主体とした下地被膜を形成しないことが、良好な打抜き性を確保するための大前提である。従って、基本的に焼鈍分離剤を適用せずに最終仕上焼鈍を施すことが、(Mg2SiO4)を主体とする下地被膜(グラス被膜)を有しない均一な表面を得るために特に好ましい。なお、最終仕上焼鈍に際し、コイルの密着が起こるような高温を要する場合には、焼鈍分離剤を通用するが、その際にはフォルステライトを形成するMgOは使用せず、シリカやアルミナ等を用いる。また、塗布を行う際にも、水分を持ち込まず酸化物生成を抑制する目的で静電塗布を行うことなどが有効である。さらに、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。

0031

最終仕上焼鈍工程において、まず二次再結晶組織を発達させる。最終仕上焼鈍の雰囲気は窒素を含有することが、二次再結晶を発現させるために有用である。そして表面酸化物の生成を抑制して良好鉄損を得るために低酸化性または非酸化性雰囲気を用いる。最終仕上焼鈍は二次再結晶発現のために 800℃以上で行う必要があるが、 800℃までの昇温速度は、磁気特性に大きな影響を与えないので任意の条件でよい。そして、最終仕上焼鈍における二次再結晶終了後、焼鈍温度が 900℃以上になった時点で、水素雰囲気を導入して脱炭を進行させ、C量を 50ppm未満まで低減することが、低鉄損を得る上で重要である。ここに、水素雰囲気を導入する温度が 900℃未満では脱炭反応の進行が極めて遅いので水素雰囲気導入温度は 900℃以上とする。また、水素雰囲気の分圧が10 vol%未満では脱炭の進行が極めて遅いので、水素雰囲気の分圧は10 vol%以上とする。

0032

上記の最終仕上焼鈍後に平坦化焼鈍を行って形状を矯正することができる。この平坦化焼鈍は乾燥雰囲気中で行うことが表面酸化を防止して良好な鉄損を得る上で望ましい。上記の平坦化焼鈍後に表面に絶縁コーティングを施す。ここに、良好な打ち抜き性を確保するためには、樹脂を含有する有機系または半有機系コーティングとするのが望ましいが、溶接性を重視する場合には無機系コーティングを適用しても良い。

0033

なお、本発明による方向性電磁鋼板の用途は、大型モータや発電機用に最適であるが、必ずしもこれだけに限定されるものではなく、打ち抜き加工性を重視する方向性電磁鋼板の用途すべてに適用することができる。また、素材としてインヒビターを使用せず、スラブの高温加熱、高温純化焼鈍を施す必要がないので、低コストにて大量生産可能であるという大きな利点がある。

0034

実施例1
表1に示す素材成分になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。なお、表1に示していない成分についてはすべて 50ppm以下に低減した。これらのスラブを、1080℃に加熱後、熱間圧延により 2.3mm厚の熱延板とした。ついで、 850℃, 30秒均熱の熱延板焼鈍後、常温での冷間圧延により0.34mmの最終板厚に仕上げた。ついで、水素:25 vol%、窒素:75 vol%、露点:−30℃の雰囲気中にて 930℃, 均熱10秒の再結晶焼鈍を施した。その後、焼鈍分離剤を適用せずに、窒素:50 vol%, Ar:50 vol%の混合雰囲気中にて 800℃まで50℃/hの速度で昇温し、800 ℃以上を10℃/hの速度で 880℃まで昇温し、この温度に50時間保持したのち、露点:−30℃の水素雰囲気に切り替えて1070℃まで10℃/hの速度で昇温する、最終仕上焼鈍を行った。この最終仕上焼鈍後のC量は各鋼とも0.0030%以下まで低減されていた。ついで、乾燥窒素−水素混合雰囲気中にて 875℃, 60秒間の平坦化焼鈍を行って、形状を矯正したのち、重クロム酸アルミニウムエマルジョン樹脂エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300 ℃で焼き付け製品とした。

0035

かくして得られた製品板について、圧延方向の磁束密度(B8 )と鉄損(W17/50 )を測定した。また、打ち抜き性の評価をするために、50トンプレス機にて、50mmφ(材質SKD−11)、打ち抜き速度:350ストローク/分、クリアランス:6%で、市販の打ち抜き油を使用して、カエリ高さが50μm に達するまで製品板の連続打ち抜きを行った。得られた結果を表1に併記する。

0036

0037

同表に示したとおり、再結晶焼鈍後にC量を 0.005〜0.025 %残存させたまま、二次再結晶焼鈍を施し、その後に高温域で脱C処理を施すことにより、磁束密度と鉄損が共に優れ、しかも打ち抜き加工性が良好な製品板を得ることができた。

0038

実施例2
表2に示す素材成分になる鋼スラブを、1125℃に加熱したのち、熱間圧延により 2.8mm厚の熱延板とした。なお、表2に示されない成分はすべて 50ppm以下に低減した。これらの熱延板に、1000℃,均熱60秒の熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延により0.34mmの最終板厚に仕上げた。ついで、水素:50 vol%、窒素:50vol%、露点:−50℃の雰囲気にて 900℃, 均熱20秒の再結晶焼鈍を施した。その後、焼鈍分離剤を適用せずに、 900℃まで10℃/hの速度で昇温し、この温度に75時間保持したのち、露点:−20℃の水素雰囲気に切り替えて1000℃まで10℃/hの速度で昇温する、最終仕上焼鈍を行った。この最終仕上焼鈍後のC量は各鋼とも0.0030%以下まで低減されていた。ついで、露点:−35℃の水素雰囲気中にて 875℃, 60秒間の平坦化焼鈍を行って、形状を矯正したのち、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂、エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300 ℃で焼き付けて製品とした。

0039

かくして得られた製品板について、圧延方向の磁束密度(B8 )と鉄損(W17/50 )を測定した。また、打ち抜き性の評価をするために、50トンプレス機にて、50mmφ(材質:SKD−11)、打ち抜き速度:350ストローク/分、クリアランス:6%で、市販の打ち抜き油を使用して、カエリ高さが50μm に達するまで製品板の連続打ち抜きを行った。得られた結果を表2に併記する。

0040

0041

同表によれば、本発明で規定した成分の素材を用いて、C量を 0.005〜0.025%残存させたままで最終仕上焼鈍を施すことにより、磁束密度および鉄損が共に優れ、しかも打ち抜き加工性が良好な製品板を得ることができた。

0042

実施例3
表3に示す素材成分になる鋼スラブを、1280℃に加熱したのち、熱間圧延により 2.2mm厚の熱延板とした。なお、表3に示されない成分はすべて 50ppm以下に低減した。これらの熱延板に、 900℃で30秒均熱する熱延板焼鈍を施したのち、250 ℃の温度の冷間圧延により最終板厚:0.26mmの冷延板に仕上げた。ついで、露点:30℃の窒素−水素混合雰囲気中にて 900℃で均熱30秒の再結晶焼鈍を行ったのち、焼鈍分離剤としてコロダイルシリカを適用して、露点:−20℃の窒素雰囲気中にて 900℃まで50℃/hの速度で昇温したのち、この温度に20時間保持し、ついで露点:−20℃の水素雰囲気に切り替え、1150℃まで50℃/hの速度で昇温する、最終仕上焼鈍を行った。 最終仕上焼鈍終了後のC量は各鋼とも0.0030%以下に低減されていた。ついで、露点:−20℃の窒素−水素混合雰囲気中にて 900℃, 10秒間の平坦化焼鈍を行って、形状を矯正したのち、第1燐酸アルミニウムアクリルスチレン樹脂ホウ酸を混合した組成のコーティング液を塗布し、300 ℃で焼き付けて製品とした。

0043

かくして得られた製品板について、圧延方向の磁束密度(B8 )と鉄損(W17/50 )を測定した。また、打ち抜き性の評価をするために、50トンプレス機にて、50mmφ(材質:SKD−11)、打ち抜き速度:350ストローク/分、クリアランス:6%で、市販の打ち抜き油を使用して、カエリ高さが50μm に達するまで製品板の連続打ち抜きを行った。得られた結果を表3に併記する。

0044

0045

同表に示したとおり、本発明で規定した成分の素材を用いて、C量を 0.005〜0.025 %残存させたままで最終仕上焼鈍を施すことにより、磁束密度および鉄損が共に優れ、しかも打ち抜き加工性が良好な製品板を得ることができた。

発明の効果

0046

かくして、本発明によれば、再結晶焼鈍を非酸化性または低酸化性雰囲気で行い、 C量を0.005 〜0.025 %残存させたままで二次再結晶焼鈍を施し、その後、高温で水素雰囲気を導入して脱炭を進行させることにより、フォルステライト(Mg2SiO4)を主体とする下地被膜(グラス被膜)を有しない、高磁束密度かつ低鉄損で、しかも打ち抜き加工性が良好な方向性電磁鋼板の製品を得ることができる。

図面の簡単な説明

0047

図1最終仕上焼鈍後段における水素分圧と磁束密度(B8 )との関係を示したグラフである。
図2最終仕上焼鈍後段における水素分圧と鉄損(W17/50 )との関係を示したグラフである。
図3最終仕上焼鈍後段における水素分圧と最終仕上焼鈍後の鋼中C量との関係を示したグラフである。

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