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技術 溶接用アルミニウム合金ワイヤ

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 梶原桂杉崎康昭水野雅夫森下誠萩野谷光
出願日 2001年12月26日 (18年2ヶ月経過) 出願番号 2001-395127
公開日 2003年7月8日 (16年7ヶ月経過) 公開番号 2003-191094
状態 特許登録済
技術分野 溶接材料およびその製造
主要キーワード ジェットチューブ アーク継続 コンジット内 ダイス角度 アルミニウム製部材 矯正ロール間 Mn含量 X線材料
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

コイル状に巻かれた状態でも良好な送給性を確保することによって、安定したアーク溶接が可能な溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供する。

解決手段

コイル状に巻かれた溶接用のアルミニウム合金ワイヤであって、コイル巻き腹側表面における残留応力引張応力である溶接用アルミニウム合金ワイヤ。前記コイル巻きの背側表面における残留応力は、300MPa以下の引張応力であることが好ましい。

概要

背景

船舶や車両などに用いられているアルミニウムアルミニウム合金溶接する際には、アーク溶接法(例えば、TIG溶接法や消耗電極式ガスシールドアーク溶接法など)が従来から採用されている。特に消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶接法やMIG溶接法など)では連続溶接が可能であり、広く用いられている。

図1は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接装置の一例を説明する図である。スプール1に巻かれた5〜10kg程度の溶接用アルミニウム合金ワイヤ(以下、「溶接用ワイヤ」や単に「ワイヤ」と称する場合がある)2は、送給装置3に備えられたガイドローラ4を介した後、プッシュ方式の送給ローラ5で送り出され、フレキシブルコンジットチューブ6を介してその端部に接続された溶接トーチ(以下「トーチ部」と称する場合がある)7内に送られる。溶接トーチ7内では、通電チップ(以下「チップ部」と称する場合がある)8によってワイヤに接触給電され、ワイヤ先端母材9との間にアークが発生する。この発生したアークによって母材9は溶融して掘り下げられ、一方ワイヤは大気遮断されたシールドガス中溶滴状となり、母材9側に移行して溶融プールを生成し、この溶融プールが凝固することによって溶接部が形成される。

上記の様な溶接を行う際に良好な溶接部を得るためには、コンジェットチューブ内やトーチ部、チップ部などにおける溶接用ワイヤの送給性が重要な要件となる。つまり、溶接用ワイヤの送給性が悪くなると、通電チップを通過する際のワイヤ通過速度(送給速度)が不安定になるので、良好な溶接部が得られるように予め設定されている溶接電流アーク電圧との関係が維持できなくなるからである。このような不具合現象を一般に「アーク不安定」と称しており、この結果良好な溶接部を形成できず、融合不良形状不良を起こすのである。さらに、通電チップを通過する際のワイヤの通過速度が不安定になると、ワイヤがチップ部において過剰に通電され、溶融したワイヤがチップ部へ融着するといった事態を招くこともある。

ワイヤの送給性を向上させたアーク溶接アルミニウムワイヤとして、例えば、特開平5-277786号公報には、線状の溶接用アルミニウムワイヤの表面に油を付着させたものが提案されている。しかし、油を付け過ぎると水素増加によるブローホールの発生といった新たな問題が生じることがあった。

一方、溶接用アルミニウム合金ワイヤとしては、Al−Mg系合金(例えば、JIS Z3232 A5356,A5183,A5556,A5554など)が広く用いられているが、これは鋼ワイヤ等と比べると柔らかいので、送給ローラで削られ易く、アルミ微粉コンジットチューブ内堆積してワイヤの定速送給を阻害することがある。そこで、本発明者らはワイヤ表面平滑度を高めることによって送給ローラで削られ難いワイヤを先に提案しており(特開平7-32186号公報)、効果を挙げている。しかしながら、このワイヤを製造する際の条件制御が難しく、さらなる改良が望まれていた。

概要

コイル状に巻かれた状態でも良好な送給性を確保することによって、安定したアーク溶接が可能な溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供する。

コイル状に巻かれた溶接用のアルミニウム合金ワイヤであって、コイル巻き腹側表面における残留応力引張応力である溶接用アルミニウム合金ワイヤ。前記コイル巻きの背側表面における残留応力は、300MPa以下の引張応力であることが好ましい。

目的

本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイル状に巻かれたワイヤであっても良好な送給性を確保することによって、安定したアーク溶接が可能な溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

コイル状に巻かれた溶接用アルミニウム合金ワイヤであって、コイル巻き腹側表面における残留応力引張応力であることを特徴とする溶接用アルミニウム合金ワイヤ。

請求項2

前記コイル巻きの背側表面における残留応力が300MPa以下の引張応力である請求項1に記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。

請求項3

合金元素として、Mg:1.5〜6質量%を含有するものである請求項1または2に記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。

請求項4

他の合金元素として、Cr:0.01〜0.5質量%およびMn:0.01〜1.2質量%、を夫々含有し、且つ、Fe:1質量%以下(0質量%を含む)、に抑制したものである請求項1〜3のいずれかに記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。

技術分野

0001

本発明は、溶接用アルミニウム合金ワイヤに関するものであり、より詳細には、コイル状に巻かれた溶接用アルミニウム合金ワイヤの送給性を向上させる技術に関するものである。

背景技術

0002

船舶や車両などに用いられているアルミニウムやアルミニウム合金を溶接する際には、アーク溶接法(例えば、TIG溶接法や消耗電極式ガスシールドアーク溶接法など)が従来から採用されている。特に消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶接法やMIG溶接法など)では連続溶接が可能であり、広く用いられている。

0003

図1は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接装置の一例を説明する図である。スプール1に巻かれた5〜10kg程度の溶接用アルミニウム合金ワイヤ(以下、「溶接用ワイヤ」や単に「ワイヤ」と称する場合がある)2は、送給装置3に備えられたガイドローラ4を介した後、プッシュ方式の送給ローラ5で送り出され、フレキシブルコンジットチューブ6を介してその端部に接続された溶接トーチ(以下「トーチ部」と称する場合がある)7内に送られる。溶接トーチ7内では、通電チップ(以下「チップ部」と称する場合がある)8によってワイヤに接触給電され、ワイヤ先端母材9との間にアークが発生する。この発生したアークによって母材9は溶融して掘り下げられ、一方ワイヤは大気遮断されたシールドガス中溶滴状となり、母材9側に移行して溶融プールを生成し、この溶融プールが凝固することによって溶接部が形成される。

0004

上記の様な溶接を行う際に良好な溶接部を得るためには、コンジェットチューブ内やトーチ部、チップ部などにおける溶接用ワイヤの送給性が重要な要件となる。つまり、溶接用ワイヤの送給性が悪くなると、通電チップを通過する際のワイヤ通過速度(送給速度)が不安定になるので、良好な溶接部が得られるように予め設定されている溶接電流アーク電圧との関係が維持できなくなるからである。このような不具合現象を一般に「アーク不安定」と称しており、この結果良好な溶接部を形成できず、融合不良形状不良を起こすのである。さらに、通電チップを通過する際のワイヤの通過速度が不安定になると、ワイヤがチップ部において過剰に通電され、溶融したワイヤがチップ部へ融着するといった事態を招くこともある。

0005

ワイヤの送給性を向上させたアーク溶接アルミニウムワイヤとして、例えば、特開平5-277786号公報には、線状の溶接用アルミニウムワイヤの表面に油を付着させたものが提案されている。しかし、油を付け過ぎると水素増加によるブローホールの発生といった新たな問題が生じることがあった。

0006

一方、溶接用アルミニウム合金ワイヤとしては、Al−Mg系合金(例えば、JIS Z3232 A5356,A5183,A5556,A5554など)が広く用いられているが、これは鋼ワイヤ等と比べると柔らかいので、送給ローラで削られ易く、アルミ微粉コンジットチューブ内堆積してワイヤの定速送給を阻害することがある。そこで、本発明者らはワイヤ表面平滑度を高めることによって送給ローラで削られ難いワイヤを先に提案しており(特開平7-32186号公報)、効果を挙げている。しかしながら、このワイヤを製造する際の条件制御が難しく、さらなる改良が望まれていた。

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイル状に巻かれたワイヤであっても良好な送給性を確保することによって、安定したアーク溶接が可能な溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

上記課題を解決することのできた本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤとは、コイル状に巻かれた溶接用のアルミニウム合金ワイヤであって、コイル巻き腹側表面における残留応力引張応力である点に要旨を有し、前記コイル巻きの背側表面における残留応力が300MPa以下の引張応力であることが好ましい。

0009

但し、本発明において、「表面」とはワイヤの最表面から深さ100μmまでの領域とする。

0010

また、本発明に係る溶接用アルミニウムワイヤの合金元素として、Mg:1.5〜6質量%を含有することが好ましい。他の合金元素として、Cr:0.01〜0.5質量%およびMn:0.01〜1.2質量%、を夫々含有し、且つ、Fe:1質量%以下(0質量%を含む)、に抑制したものであると一層の効果を奏する。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明者らは、上記課題を解決すべく様々な角度から検討した結果、アーク不安定になる現象は、
コンジットチューブ(送給経路)が長い場合や、
溶接トーチの近傍でコンジットチューブを強く曲げた場合、
コンジェットチューブの巻き径が小さい場合、
時間連続して溶接を行う場合、
などに顕著に生じることを知った。そして、これらの様な場合であってもワイヤの送給性を向上させることによって、安定したアーク溶接を実現できる溶接用アルミニウム合金ワイヤの実現を目指してさらに鋭意検討を重ねた。その結果、コイル状に巻かれた溶接用ワイヤの表面残留応力を制御すれば、上記課題を見事に解決できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について説明する。

0012

上記の様な場合に特にアーク不安定が発生する原因について検討したところ、この原因は溶接用ワイヤに付いた癖にあることが分かった。すなわち、上述した様に溶接用ワイヤはスプールに巻かれているのが一般的であるが、このとき溶接用ワイヤは塑性変形して「巻き癖」が付いているのである。そして、巻き癖の付いた溶接用ワイヤが、コンジットチューブ内を通ると、溶接用ワイヤとコンジェットチューブ内壁との間に摩擦力が発生するので、送給径路が長ければ長いほど摩擦力が大きくなり送給速度を不安定にし、これによってアークの発生も不安定になるのである。また、コンジェットチューブが径路の途中で強く曲げられている場合や、コンジェットチューブが小さい径で束ねられている場合では、これらのチューブ内を溶接用ワイヤが通るときに塑性変形して「癖」が付くことがある。さらに、一つのスプールに巻かれたワイヤを用いて長時間連続溶接すると、スプールに巻かれている溶接用ワイヤの巻き径は徐々に小さくなるので、これに伴って溶接用ワイヤの「巻き癖」も顕著になるのである。

0013

溶接用ワイヤがスプールに巻かれる理由は、ワイヤにある程度の巻き癖を付けることによって溶接が行いやすくなるからである。図2に巻き癖が付いている従来の溶接用アルミニウム合金ワイヤの模式図を示す。図中10はスプールから開放したときの溶接用アルミニウム合金ワイヤ、11はワイヤの腹側(内側)、12はワイヤの背側(外側)を夫々示している。また、ワイヤ10に併記した矢印13および14は、ワイヤ表面における圧縮方向13の残留応力(以下、「圧縮応力」と称する場合がある)と、ワイヤ表面における引張方向14の残留応力(以下、「引張応力」と称する場合がある)を夫々示している。

0014

図2に示す様に、巻き癖が付いている従来の溶接用アルミニウム合金ワイヤは、ワイヤ10の腹側11表面における残留応力が圧縮方向13であり、ワイヤ10の背側12表面における残留応力が引張方向14となっている。巻き癖はワイヤの腹側と背側との応力差によって発生し、この応力差が大きいと巻き癖が強くなる。この様な巻き癖が強いワイヤを用いて溶接すると、送給装置やコンジェットチューブにワイヤを送給してもワイヤに付いている癖が直り難いので、チューブとワイヤとの間に摩擦力が発生する。そして、この摩擦力がワイヤの送給性に影響を与えるのである。

0015

本発明者らは、「巻き癖」や「癖」が付きにくいワイヤであるか、またはワイヤに付いた「巻き癖」や「癖」が直りやすければ、送給性が良好で安定したアークを実現できるのではないかという着想の下で検討した。そして、本発明者らは、この様なワイヤを実現するためには、コイル状に巻かれた溶接用のアルミニウム合金ワイヤの腹側表面における残留応力が引張応力であれば良いことを明らかにした。これを図面を用いて説明する。

0016

図3は、本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤの模式図を示し、前記図2と対応する部分には同一の符号を付してある。図3に示す様に、溶接用ワイヤの腹側11表面に残留している応力が引張方向14であると、コイル状に巻かれているワイヤを送給装置に送る際に、ワイヤ自身に巻き癖を直そうとする力が働くので、巻き癖を直すためにワイヤに加える力は小さくて良い。また、ワイヤ自身に癖を直そうとする働きがあるので、ワイヤがチューブ内等を通過して癖が付いても直りやすいのである。よって、巻き癖や癖が直りやすくなるので、ワイヤの送給性を向上させることができ、安定したアークを実現できる。尚、本発明において、ワイヤの「表面」とは、ワイヤの最表面から深さ100μmまでの領域とする。

0017

本発明では、ワイヤをコイル巻きにしたときの腹側(つまりコイル状にしたときの内側)表面における残留応力が引張応力であれば、その大きさは特に限定されないが、ワイヤの送給性を向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上が望ましい。但し、前記引張応力が大き過ぎると、ワイヤをコイル状に巻き難くなるので、その上限は300MPa程度にすることが好ましい。

0018

一方、コイル状にワイヤを巻くとワイヤの背側表面における残留応力は一般に引張方向の応力になるが、この様なワイヤの巻き癖を直す際は、背側表面における残留応力程度の力が少なくとも必要となる。従って、コイル状にワイヤを巻いたときの背側表面における残留応力をできるだけ小さくすると、ワイヤに付いた癖を直しやすくできる。本発明では、前記コイル巻きの背側表面における引張応力が、好ましくは300MPa以下、より好ましくは290MPa以下であることが望ましい。尚、その下限は特に限定されないが、背側表面における引張応力を極端に低くし過ぎると、腹側表面に残留させる引張応力を制御することが困難となるので、ワイヤの背側表面における残留応力の下限値は0MPaではなく、好ましくは5MPa、より好ましくは10MPaが望ましい。

0019

本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤの成分組成は特に限定されず、種々の元素を含有したアルミニウム合金および不可避不純物(Zr,V,Ag,Bi,Pb,Gaなど)からなるが、溶接後における継手部の強度を確保するという観点から合金元素として、Mgを含有することが好ましい。Mgを含有するときの好ましい範囲とその規定理由は下記の通りである。

0020

Mg:1.5〜6%(「質量%」の意味。以下同じ)
Mgは、溶接後の継手部で固溶強化を起こし、継手部の強度を高める元素である。この様な効果を得るためには、Mgを好ましくは1.5%以上、より好ましくは1.6%以上含有することが望ましい。しかし、過剰に含有すると、ワイヤを伸線加工する際に割れが発生し易くなるので、好ましくは6%以下、より好ましくは5.8%以下にするのが良い。

0021

また、必要に応じて他の合金元素としてCrとMnを夫々含有すると共に、Feを1%以下に抑制することが好ましい。CrおよびMnの好ましい範囲およびその規定理由と、Feの含有を抑制する理由は下記の通りである。

0022

Cr:0.01〜0.5%
Crは、溶接後の継手部におけるAlの結晶粒微細化すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させる元素であり、その効果を得るためには0.01%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.02%以上含有するのが良い。しかし、その含量が0.5%を超えると、溶接後に粗大な金属間化合物を生成して継手強度を低下させる原因になるので、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.45%以下にするのが良い。

0023

Mn:0.01〜1.2%
Mnは、溶接後の継手部におけるAlの結晶粒を微細化すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させる元素であり、また、AlやFeと結合してAl−Fe−Mn系の化合物を生成することができるので、継手強度を向上させることができる。この様な効果を得るためには、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上含有するのが良い。しかし、Mn含量が1.2%を超えると、溶接後の継手部に巨大な化合物を生成して強度を低下する原因となるので、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.15%以下にするのが良い。

0024

Fe:1%以下(0%を含む)
Feは、一般的にアルミニウムワイヤ中に不純物として含有しているが、その含有量が1%を超えると溶接後の継手部分に化合物を生じやすくなり、この化合物が継手強度を低下させる原因となる。よって、本発明ではFe含有量を1%以下に抑制することが好ましく、より好ましくは0.9%以下にすることが望ましい。

0025

本発明において、例えばMgを含有する溶接用ワイヤであって、その成分組成が5000系のものであれば、上記MgやCr,Mn,Fe以外の元素として、Siを不純物元素として含有することがあるが、Si含有量が1%超になると、溶接後の継手部にMg−Si系化合物などを生成して、継手部の強度を低下させる原因になるので、Si含有量を好ましくは1%以下、より好ましくは0.9%以下に抑制することが望ましい。

0026

さらに、上記以外の元素として、必要に応じてCuやZn,Ti,Sn,Ni,Bなどの各元素をワイヤに含有させると、溶接後の継手部における強度をさらに高めることができるので好ましい。各元素の含有量の上限は夫々0.1%であり、二種以上の元素を含有するときは総量で0.2%以下にすることが推奨される。

0027

従来の溶接用アルミニウム合金ワイヤを製造方法するに際しては、スプールに巻いたワイヤを開放したときにワイヤが広がり過ぎない様にするためや、ワイヤの取り扱いを容易にするために、伸線加工で得られたワイヤに予め強めの巻き癖を付けた後スプールに巻きつけることが一般的である。ワイヤに予め強めの巻き癖を付ける方法としては、例えば、スプールにワイヤを巻きつけるに際し、ワイヤを自然に開放したときに形成するループの径がスプールの径よりも小さくなる様に矯正ロールを用いてワイヤに癖を付けてからスプールに巻きつける方法や、スプールにワイヤを巻きつける際の張力を大きくする方法が挙げられる。しかし、この様な従来の方法では、図2に示した様にコイル巻きの腹側表面における残留応力が圧縮応力になっていた。

0028

一方、本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、コイル巻きの腹側表面における残留応力が引張応力となる様に製造する必要があるが、具体的な方法は特に限定されない。例えば、下記に示す方法が挙げられる。

0029

本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤをロール伸線によって製造する際には、伸線加工での圧下率減面率)を制御すれば良い。具体的には、最終伸線パスの減面率を10〜15%程度として、従来の様にダイス伸線で製造した際における最終伸線パスの減面率よりも若干低くすれば良い。

0030

また、本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤをダイス伸線によって製造する際には、減面率やダイスの角度を制御すれば良い。具体的には、最終伸線パスの減面率を5〜15%程度として、従来のダイス伸線における最終伸線パスの減面率よりも若干低くすると共に、ダイスの角度を10〜20°程度の低角側にすれば良い。

0031

さらに、本発明においても従来と同様に、伸線加工で得られたワイヤをスプールに巻きつける前に、矯正ロールを用いてワイヤに予め癖を付けるが、このとき本発明では、上記ロール伸線またはダイス伸線で得られたワイヤに強めの癖を付けることが好ましい。ワイヤに癖を付ける工程を図面を用いて具体的に説明する。

0032

図4は、伸線加工で得られたワイヤに癖を付けるための工程の一例を示した図である。図中20は伸線加工(つまり上記ロール伸線またはダイス伸線)で得られたアルミニウム合金ワイヤ、21a〜21cは矯正ロール、22はスプールを夫々示している。また、図中の矢印23は矯正ロールの押し込み量を示している。尚、スプール22に併記した矢印は、スプールの回転方向を示している。

0033

伸線加工で得られたワイヤ20は、例えば図4に示す様に設けられた3つの矯正ロール間蛇行して通過することによって癖が付けられる。そして、癖が付けられたワイヤ20がスプールに巻きつけられる。本発明では、矯正ロール(例えば21bと21c)の押し込み量23を大きくすることによって、癖の強さを変化させることができる。具体的には、ロール押し込み量23を1.5mm以上として、従来の矯正ロールでのロール押し込み量(従来は1mm以下程度)よりも若干大きめにすれば良い。

0034

ワイヤ表面における残留応力の測定方法としては、例えば、X線回折装置を用いる方法が挙げられる。測定原理は、例えば「X線応力測定法」,(1981),日本材料学会編,養賢堂、や、「X線応力測定法基準」,(1982),日本材料学会X線材料強度部門委員会、などに記載されている。具体的な測定条件は、下記実施例で詳述する。

0035

本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤの径は特に限定されないが、通常ワイヤ径がφ0.8〜3mm程度のものをコイル巻きすれば良い。

0036

本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶接法やMIG溶接法など)で用いることが好ましく、特にMIG溶接法に採用するのが好適である。

0037

また、本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、種々のアルミニウム製部材を溶接する際に用いることができる。アルミニウム製部材の材質としては、3000系(Al−Mn−Mg系)、5000系(Al−Mg系)および6000系(Al−Mg−Si系)など公知のものが例示できる。

0038

以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。

0039

JIS Z3232のA5356に示される成分組成を有するアルミニウム合金の鋳塊(φ150×4000mm)に均質化処理(540℃、4時間)を施し、これを490℃で熱間圧延してφ5〜20mm程度の線材とした。この線材を冷間伸線した後、ワイヤ表面の皮を削ってφ3〜7mm程度のワイヤ原線とし、この原線をロール伸線またはダイス伸線でφ1.2mmの線材に加工した。

0040

ロール伸線では、最終伸線パスにおける減面率、スプールにワイヤを巻く前のロール押し込み量(前記図4参照)および巻き取りの設定を適宜変えることによって、ワイヤ表面における残留応力を制御した。

0041

ダイス伸線では、最終伸線パスにおける減面率、ダイス角度、スプールにワイヤを巻く前のロール押し込み量(前記図4参照)および巻き取りの設定を適宜変えることによって、ワイヤ表面における残留応力を制御した。

0042

ロール伸線またはダイス伸線によって得られた線材は、スプール径の異なる下記A〜Cの何れかに巻き取った。これを供試材(溶接用アルミニウム合金ワイヤ)とする。

0043

<巻き取りの設定>
A:強め(スプール径:φ250mm)
B:中程度(スプール径:φ300mm)
C:弱め(スプール径:φ350mm)

0044

表1に伸線方法、最終伸線パスにおける減面率(%)、ダイス角度(°)、巻き取りの設定、ロール押し込み量、を夫々示す。また、下記装置を用いて供試材(ワイヤ)表面の残留応力を測定する。測定位置は、前記図3に示した供試材の腹側15と背側16の最表面で夫々行い、測定結果を表2に示す。尚、引張方向の残留応力(引張応力)を「+」で、圧縮方向の残留応力(圧縮応力)を「−」で示した。

0045

<残留応力の測定>
測定装置
PSP微小X線応力測定装置」(商品名:理学電気株式会社製)
[測定条件]
特性X線:Cr−kα
フィルター:V
X線ビーム径:φ0.5mm
管電圧:40kV
管電流:30mA
回折面:Al(311)
回折角:139.3度
測定方法:傾斜法
測定方向:軸方向
応力定数:−165.78MPa/deg
照射時間:200秒間
測定部位:ワイヤの腹側と背側における最表面
ψ角:0°,10°,20°,30°,40°,45°
表1に示した供試材を、下記に示す溶接装置で溶接した際の送給性、送給抵抗、アーク安定性および安定アーク継続時間を夫々調べた。その結果を表2に示す。

0046

<溶接装置>
電源:CPDWP350
送給装置:「CMWH147」(商品名:ダイヘン社製)
トーチ:「WTCA2501」(商品名:ダイヘン社製)
コンジットチューブ:「プラライナU2962M06」(商品名:ダイヘン社製)、3m
チップ:「TIP023010」(商品名:トーキンアーク社製)のφ1.2mmCO2チップ。

0047

溶接条件
条件:220A、25V
ワイヤの送り速度:50cm/min
溶接時間:最大2分間
径路:全長3mのコンジットチューブの途中にφ170mmのループを1つ作り、且つ、トーチ直上で曲率半径100mmに曲げた(前記図1参照)。

0048

<送給性>溶接中に前記図1の送給装置からワイヤが送り出されるときの抵抗を測定することによって、送給性を評価した。このときの評価基準は、◎:送給抵抗値が80N以下で送給抵抗値の変動も小さい、○:送給抵抗値が小さく良好、△:時折送給抵抗値が変動、×:抵抗値が大きく不良、である。

0049

<アーク安定性>溶接中の溶接電流およびアーク電圧の変動でアーク安定性を評価した。このときの評価は、◎:溶接電流およびアーク電圧の変動が小さく溶接部のビード形状も良好、○:溶接電流およびアーク電圧の変動が小さい、△:時折変動する、×:悪い、である。

0050

<安定アーク継続時間>アーク溶接を最大2分間行い、チップの融着の有無を見た。

0051

下記に示す条件で溶接した後に、コンジット内に堆積したアルミ合金粉の量を測定した。

0052

<アルミ合金粉量>溶接条件:170A,22〜23V、送り速度:50cm/minで溶接した後、コンジット内に堆積したアルミ合金粉を溶剤で流しながら濾紙採取し、アルミ合金粉の発生量を比較した。但し、供試材によって溶接時間が異なるので、5分間に発生したアルミ合金粉量に換算した値を表2に示す。

0053

0054

0055

表2から明らかな様に、供試材No.1〜7は、本発明の要件を満足しているので、ワイヤの送給性が良好である。よって、安定したアークを得ることができる。また、ワイヤがチューブ内を通過する際に、ワイヤとチューブとの間に発生する摩擦力が小さいので、ワイヤが削れることはなく、チューブ内に発生するアルミニウム合金粉の量が少ない。

0056

特に、供試材No.1,3,4は、ワイヤ表面の残留応力の腹側と背側のバランスが良いので、ワイヤの送給性やアーク安定性に非常に優れている。

0057

一方、供試材No.8とNo.9は、本発明の要件を満足していない比較例であり、ワイヤの送給性が悪い。よって、アーク安定性にも劣る。

発明の効果

0058

上記のような構成を採用すると、コイル状に巻かれた溶接用アルミニウム合金ワイヤの送給性を向上させることができるので、安定したアークを実現できるワイヤを提供することができた。

図面の簡単な説明

0059

図1消耗電極式ガスシールドアーク溶接法の一例を説明する図である。
図2従来の巻き癖が付いている溶接用アルミニウム合金ワイヤを示す模式図である。
図3本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤを示す模式図である。
図4伸線加工で得られたワイヤに癖を付けるための一工程例である。

--

0060

1:スプール2:溶接用ワイヤ
3:送給装置4:ガイドローラ
5:送給ローラ6:コンジットチューブ
7:溶接トーチ8:通電チップ
9:母材10:溶接用アルミニウム合金ワイヤ
11:ワイヤの腹側(内側) 12:ワイヤの背側(外側)
20:ワイヤ 21a〜21c:矯正ロール
22:スプール 23:押し込み量

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