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技術 重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法

出願人 株式会社ダイヘンダイハツ工業株式会社
発明者 椋本厚司新明高史上園敏郎岡本真也
出願日 2001年11月27日 (19年1ヶ月経過) 出願番号 2001-360590
公開日 2003年6月10日 (17年6ヶ月経過) 公開番号 2003-164969
状態 特許登録済
技術分野 突合せ溶接及び特定物品の溶接 アーク溶接の制御
主要キーワード 不規則運動 バラツキ値 基準値信号 入熱状態 継手位置 rs中 小電流域 算出期間
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

短絡移行溶接中の毎周期ごとのアーク時間Tadが予め定めた基準値Tth以上になったことを判別して溶け落ち発生を予知溶接電流平均値を減少させて溶け落ち発生を防止する重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法において、溶接トーチ位置継手位置から上板側へ位置ずれすると溶け落ちの発生予知を誤検出する。

解決手段

本発明は、アーク時間のバラツキ値Ddが予め定めた基準値Dth未満のときは溶接トーチ位置が継手位置と一致又は下板側へ位置ずれしていると判別して上記溶け落ち防止制御を行い、上記アーク時間のバラツキ値Ddが上記基準値Dth以上のときは溶接トーチ位置が上板側へ位置ずれしていると判別して溶上記け落ち防止制御を行わない溶け落ち防止制御方法である。

概要

背景

板厚が数[mm]以下の薄板に対する消耗電極ガスシールドアーク溶接においては、溶接ワイヤの送給状態の変動、母材ワークの加工精度バラツキ溶滴移行及び溶融池不規則運動等によって溶接状態が変化して母材ワークへの入熱状態が変動すると、薄板であるために溶け落ちが発生しやすい。このために、薄板溶接にあっては、母材ワークの加工精度、種々の溶接条件等を厳格品質管理する必要がある。

また、薄板溶接においては、溶接ワイヤと母材との間で短絡状態アーク発生状態とを交互に繰り返す短絡移行溶接法が多く使用される。この理由は、短絡移行溶接法は、200[A]程度以下の小電流域で安定した溶接を行うことができ、かつ、母材への入熱を少なくすることができるためである。しかしながら、薄板溶接において、短絡移行溶接法を使用して溶接条件の品質管理を十分に行っていても前述した種々の変動要因によって溶接状態が変化し、その結果、溶け落ちが発生する場合がある。このために、短絡移行溶接中の溶接電圧又は溶接電流の少なくとも一つの検出信号を処理して母材の溶け落ち発生を予知し、溶接電流平均値を減少させて溶け落ちを未然に防止する方法が従来から提案されている。以下、薄板溶接において多く使用される重ね継手に対するすみ肉溶接(以下、重ねすみ肉溶接という)における従来技術の溶け落ち防止制御方法について説明する。

図1は、重ねすみ肉溶接のアーク発生部模式図であり、同図(A)は裏波が形成される良好な溶接状態の場合を示し、同図(B)は溶け落ちが発生する直前の状態を示す。同図では、溶接は手前に向かって進行しており、短絡移行溶接中のアーク発生状態を前方断面方向から観測した模式図である。以下、同図を参照して説明する。

同図(A)に示すように、溶接ワイヤ1は溶接トーチの先端に取り付けられたコンタクトチップ41から給電されて、予め定めた送給速度で送給される。母材ワークは重ね継手であるので、上板21及び下板22から形成される。同図では、溶接トーチ位置は、溶接ワイヤ1の送給方向が継手位置Pと一致する位置にある。溶接ワイヤ1の先端部と上板21及び下板22との間にアーク3が発生し、溶融池5が形成される。同図(A)は良好な溶接状態の場合であるので、下板22の裏面に裏波51が形成されている。このときのアーク長は、適正値のLa1[mm]である。

他方、同図(B)に示すように、溶け落ちが発生する直前には、溶融池5が下板22の裏面から垂れ下がった状態になるために、溶融池表面52の位置は下側に落ち込み、その結果、アーク長は上記の適正値La1[mm]よりも長いLa2[mm]になる。アーク長が長くなると、図2で後述するように、溶接電圧及び溶接電流に変化が生じるので、この変化を検出することによって溶け落ち発生を予知することができる。すなわち、溶け落ち発生予知方法とは、溶け落ち発生の直前に溶融池表面が落ち込んでアーク長が長くなったことを、溶接電圧又は溶接電流の変化で検出する方法である。

図2は、短絡移行溶接の電圧電流波形図であり、同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電流Iwの時間変化を示す。同図においては、時刻t3以前の期間中は前述した図1(A)に対応する良好な溶接状態にあり、時刻t3以降の期間中は前述した図1(B)に対応する溶け落ち発生直前の状態にある場合である。以下、同図を参照して、溶け落ち発生予知方法について説明する。

時刻t3以前の期間(良好な溶接状態)
時刻t3以前の期間中は、短絡状態とアーク発生状態とが略一定周期ごとに繰り返している。すなわち、時刻t1〜t2の期間中は、溶接ワイヤと母材とが短絡状態にあるために、同図(A)に示すように、溶接電圧Vwは数[V]程度の低い値となり、同図(B)に示すように、溶接電流Iwはこの期間中徐々に増加する。次に、時刻t2〜t3の期間中はアーク発生状態にあるために、同図(A)に示すように、アーク長に略比例した溶接電圧Vwが印加し、同図(B)に示すように、溶接電流Iwはこの期間中徐々に減少する。このアーク期間中アーク時間はTa1[ms]となり、このアーク期間中のアーク電圧平均値はVa1[V]となり、このアーク期間中のアーク電流の平均値はIa1[A]となる。時刻t3以前の期間中は良好な溶接状態にあるので、毎回の短絡時間及びアーク時間のバラツキは小さく、それぞれ略一定の値となる。

時刻t3以降の期間(溶け落ち発生直前の状態)
時刻t3以降の期間中は、溶け落ち発生直前の状態にあるために、図1(B)で前述したように、溶融池表面の位置が落ち込み、その結果、アーク期間中の平均アーク長は、時刻t3以前の期間よりも長くなる。このために、時刻t4〜t5のアーク時間Ta2[ms]は、時刻t3以前の期間のアーク時間Ta1[ms]よりも長くなる。同様に、同図(A)に示すように、時刻t3以降のアーク期間ごとのアーク電圧平均値Va2[V]は、時刻t3以前のアーク電圧平均値Va1[V]よりも大きくなる。さらには、同図(B)に示すように、時刻t3以降のアーク期間ごとのアーク電流平均値Ia2[A]は、時刻t3以前のアーク電流平均値Ia1[A]よりも小さくなる。一方、短絡時間は、時刻t3以前の期間と以降の期間とであまり差はなく略同じ値となる。したがって、アーク期間ごとの上述したアーク時間Ta、アーク電圧平均値Va又はアーク電流平均値Iaを検出し、その値の変化によって溶け落ち発生直前にアーク長が長くなることを判別して、溶け落ちの発生を予知することができる。

図3は、上述したアーク時間Taを利用した溶け落ち発生予知方法を示すアーク時間変化図である。同図は、溶接中のアーク期間ごとのアーク時間Taの時間変化を示す。同図の時刻t3は前述した図2の時刻t3と対応しており、時刻t3以降において溶け落ち発生直前の状態にある場合である。時刻t3以前の期間中は、良好な溶接状態にあるので、アーク時間Taは、前述した図2のときのTa1[ms]と略等しい値になる。時刻t3以降において溶け落ち発生直前の状態になると、アーク期間ごとのアーク時間Taは次第に長く(値は大きく)なる。したがって、アーク時間基準値Tth[ms]を予め設定しておき、上記のアーク時間Taがこのアーク時間基準値Tth以上の値になった時点(時刻t6)を判別して溶け落ちの発生を予知することができる。そして、この溶け落ち発生を予知したときには、溶接ワイヤの送給速度を遅くして溶接電流平均値を減少させたり、溶接速度を速くしたりすることによって、溶け落ちを未然に防止することができる。

上記において、溶け落ち発生予知の検出精度を向上させるために、アーク時間Taの移動平均値を算出して予知検出信号に用いる場合もある。このアーク時間移動平均値Tarは、以下のようにして算出する。すなわち、予め定めた移動平均値算出期間Tr[s]中に、n回のアーク期間があった場合において、それぞれのアーク時間をTa(n),Ta(n-1) … Ta(1)とすると、アーク時間移動平均値Tarは、下式で算出される。
Tar=(Ta(n)+Ta(n-1)+…+Ta(1))/n
したがって、毎周期のアーク期間終了時点ごとに、上式に従ってアーク時間移動平均値Tarを算出し、この算出値が予め定めたアーク時間基準値Tth以上になったことを判別して、溶け落ち発生を予知することができる。

また、上記においてはアーク時間Taを溶け落ち発生の予知信号として利用した場合を例示したが、図2で前述したように、この予知信号としてアーク時間平均値Va又はアーク電流平均値Iaを利用するこで、上記と同様にして溶け落ち発生を予知することができる。

概要

短絡移行溶接中の毎周期ごとのアーク時間Tadが予め定めた基準値Tth以上になったことを判別して溶け落ち発生を予知し溶接電流平均値を減少させて溶け落ち発生を防止する重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法において、溶接トーチ位置が継手位置から上板側へ位置ずれすると溶け落ちの発生予知を誤検出する。

本発明は、アーク時間のバラツキ値Ddが予め定めた基準値Dth未満のときは溶接トーチ位置が継手位置と一致又は下板側へ位置ずれしていると判別して上記溶け落ち防止制御を行い、上記アーク時間のバラツキ値Ddが上記基準値Dth以上のときは溶接トーチ位置が上板側へ位置ずれしていると判別して溶上記け落ち防止制御を行わない溶け落ち防止制御方法である。

目的

そこで、本発明では、溶接トーチ又は母材が所定の位置からずれたために溶接トーチ位置が継手位置から位置ずれしても、溶け落ち発生直前の状態を正確に予知することができ、かつ、誤検出することもない重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法を提供する。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

溶接ワイヤ母材との間で短絡状態アーク発生状態とを1周期として繰り返す短絡移行溶接中の溶接電圧又は溶接電流の少なくとも一つの検出信号を処理して母材の溶け落ち発生を予知溶接電流平均値を減少させて溶け落ちを防止する重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法において、前記1周期ごとのアーク時間バラツキ値が予め定めた基準値未満のときは溶接トーチ位置継手位置と一致又は下板側へ位置ずれしていると判別して前記溶け落ち防止制御を行い、前記アーク時間のバラツキ値が前記基準値以上のときは溶接トーチ位置が上板側へ位置ずれしていると判別して前記溶け落ち防止制御を行わないことを特徴とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法。

請求項2

請求項1に記載するアーク時間のバラツキ値を、現周期のアーク時間とアーク時間の移動平均値との減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法。

請求項3

請求項1に記載するアーク時間のバラツキ値を、予め定めた第1の移動平均値算出時間中のアーク時間移動平均値と、前記第1の移動平均値算出時間よりも長い予め定めた第2の移動平均値算出時間中のアーク時間移動平均値との減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法。

技術分野

0001

本発明は、溶接ワイヤ母材との間で短絡状態アーク発生状態とを交互に繰り返す短絡移行溶接において、溶接電圧又は溶接電流の少なくとも一つの検出信号を処理して母材の溶け落ち発生を予知し、溶接電流平均値を減少させて溶け落ちを防止する重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法に関する。

背景技術

0002

板厚が数[mm]以下の薄板に対する消耗電極ガスシールドアーク溶接においては、溶接ワイヤの送給状態の変動、母材ワークの加工精度バラツキ溶滴移行及び溶融池不規則運動等によって溶接状態が変化して母材ワークへの入熱状態が変動すると、薄板であるために溶け落ちが発生しやすい。このために、薄板溶接にあっては、母材ワークの加工精度、種々の溶接条件等を厳格品質管理する必要がある。

0003

また、薄板溶接においては、溶接ワイヤと母材との間で短絡状態とアーク発生状態とを交互に繰り返す短絡移行溶接法が多く使用される。この理由は、短絡移行溶接法は、200[A]程度以下の小電流域で安定した溶接を行うことができ、かつ、母材への入熱を少なくすることができるためである。しかしながら、薄板溶接において、短絡移行溶接法を使用して溶接条件の品質管理を十分に行っていても前述した種々の変動要因によって溶接状態が変化し、その結果、溶け落ちが発生する場合がある。このために、短絡移行溶接中の溶接電圧又は溶接電流の少なくとも一つの検出信号を処理して母材の溶け落ち発生を予知し、溶接電流平均値を減少させて溶け落ちを未然に防止する方法が従来から提案されている。以下、薄板溶接において多く使用される重ね継手に対するすみ肉溶接(以下、重ねすみ肉溶接という)における従来技術の溶け落ち防止制御方法について説明する。

0004

図1は、重ねすみ肉溶接のアーク発生部模式図であり、同図(A)は裏波が形成される良好な溶接状態の場合を示し、同図(B)は溶け落ちが発生する直前の状態を示す。同図では、溶接は手前に向かって進行しており、短絡移行溶接中のアーク発生状態を前方断面方向から観測した模式図である。以下、同図を参照して説明する。

0005

同図(A)に示すように、溶接ワイヤ1は溶接トーチの先端に取り付けられたコンタクトチップ41から給電されて、予め定めた送給速度で送給される。母材ワークは重ね継手であるので、上板21及び下板22から形成される。同図では、溶接トーチ位置は、溶接ワイヤ1の送給方向が継手位置Pと一致する位置にある。溶接ワイヤ1の先端部と上板21及び下板22との間にアーク3が発生し、溶融池5が形成される。同図(A)は良好な溶接状態の場合であるので、下板22の裏面に裏波51が形成されている。このときのアーク長は、適正値のLa1[mm]である。

0006

他方、同図(B)に示すように、溶け落ちが発生する直前には、溶融池5が下板22の裏面から垂れ下がった状態になるために、溶融池表面52の位置は下側に落ち込み、その結果、アーク長は上記の適正値La1[mm]よりも長いLa2[mm]になる。アーク長が長くなると、図2で後述するように、溶接電圧及び溶接電流に変化が生じるので、この変化を検出することによって溶け落ち発生を予知することができる。すなわち、溶け落ち発生予知方法とは、溶け落ち発生の直前に溶融池表面が落ち込んでアーク長が長くなったことを、溶接電圧又は溶接電流の変化で検出する方法である。

0007

図2は、短絡移行溶接の電圧電流波形図であり、同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電流Iwの時間変化を示す。同図においては、時刻t3以前の期間中は前述した図1(A)に対応する良好な溶接状態にあり、時刻t3以降の期間中は前述した図1(B)に対応する溶け落ち発生直前の状態にある場合である。以下、同図を参照して、溶け落ち発生予知方法について説明する。

0008

時刻t3以前の期間(良好な溶接状態)
時刻t3以前の期間中は、短絡状態とアーク発生状態とが略一定周期ごとに繰り返している。すなわち、時刻t1〜t2の期間中は、溶接ワイヤと母材とが短絡状態にあるために、同図(A)に示すように、溶接電圧Vwは数[V]程度の低い値となり、同図(B)に示すように、溶接電流Iwはこの期間中徐々に増加する。次に、時刻t2〜t3の期間中はアーク発生状態にあるために、同図(A)に示すように、アーク長に略比例した溶接電圧Vwが印加し、同図(B)に示すように、溶接電流Iwはこの期間中徐々に減少する。このアーク期間中アーク時間はTa1[ms]となり、このアーク期間中のアーク電圧平均値はVa1[V]となり、このアーク期間中のアーク電流の平均値はIa1[A]となる。時刻t3以前の期間中は良好な溶接状態にあるので、毎回の短絡時間及びアーク時間のバラツキは小さく、それぞれ略一定の値となる。

0009

時刻t3以降の期間(溶け落ち発生直前の状態)
時刻t3以降の期間中は、溶け落ち発生直前の状態にあるために、図1(B)で前述したように、溶融池表面の位置が落ち込み、その結果、アーク期間中の平均アーク長は、時刻t3以前の期間よりも長くなる。このために、時刻t4〜t5のアーク時間Ta2[ms]は、時刻t3以前の期間のアーク時間Ta1[ms]よりも長くなる。同様に、同図(A)に示すように、時刻t3以降のアーク期間ごとのアーク電圧平均値Va2[V]は、時刻t3以前のアーク電圧平均値Va1[V]よりも大きくなる。さらには、同図(B)に示すように、時刻t3以降のアーク期間ごとのアーク電流平均値Ia2[A]は、時刻t3以前のアーク電流平均値Ia1[A]よりも小さくなる。一方、短絡時間は、時刻t3以前の期間と以降の期間とであまり差はなく略同じ値となる。したがって、アーク期間ごとの上述したアーク時間Ta、アーク電圧平均値Va又はアーク電流平均値Iaを検出し、その値の変化によって溶け落ち発生直前にアーク長が長くなることを判別して、溶け落ちの発生を予知することができる。

0010

図3は、上述したアーク時間Taを利用した溶け落ち発生予知方法を示すアーク時間変化図である。同図は、溶接中のアーク期間ごとのアーク時間Taの時間変化を示す。同図の時刻t3は前述した図2の時刻t3と対応しており、時刻t3以降において溶け落ち発生直前の状態にある場合である。時刻t3以前の期間中は、良好な溶接状態にあるので、アーク時間Taは、前述した図2のときのTa1[ms]と略等しい値になる。時刻t3以降において溶け落ち発生直前の状態になると、アーク期間ごとのアーク時間Taは次第に長く(値は大きく)なる。したがって、アーク時間基準値Tth[ms]を予め設定しておき、上記のアーク時間Taがこのアーク時間基準値Tth以上の値になった時点(時刻t6)を判別して溶け落ちの発生を予知することができる。そして、この溶け落ち発生を予知したときには、溶接ワイヤの送給速度を遅くして溶接電流平均値を減少させたり、溶接速度を速くしたりすることによって、溶け落ちを未然に防止することができる。

0011

上記において、溶け落ち発生予知の検出精度を向上させるために、アーク時間Taの移動平均値を算出して予知検出信号に用いる場合もある。このアーク時間移動平均値Tarは、以下のようにして算出する。すなわち、予め定めた移動平均値算出期間Tr[s]中に、n回のアーク期間があった場合において、それぞれのアーク時間をTa(n),Ta(n-1) … Ta(1)とすると、アーク時間移動平均値Tarは、下式で算出される。
Tar=(Ta(n)+Ta(n-1)+…+Ta(1))/n
したがって、毎周期のアーク期間終了時点ごとに、上式に従ってアーク時間移動平均値Tarを算出し、この算出値が予め定めたアーク時間基準値Tth以上になったことを判別して、溶け落ち発生を予知することができる。

0012

また、上記においてはアーク時間Taを溶け落ち発生の予知信号として利用した場合を例示したが、図2で前述したように、この予知信号としてアーク時間平均値Va又はアーク電流平均値Iaを利用するこで、上記と同様にして溶け落ち発生を予知することができる。

発明が解決しようとする課題

0013

上述した溶け落ち防止制御方法では、図1で前述したように、溶接トーチ位置が継手位置と一致していることを前提条件としていた。しかしながら、溶接工程での実施工に当たっては、母材ワークの加工精度のバラツキ、母材ワークの治具への固定位置のバラツキ、溶接中の加工歪み等のために、図4で後述するように、溶接中に溶接トーチ位置が継手位置から位置ずれすることがよく発生する。このような位置ずれが発生した場合、従来技術では以下に説明するような解決すべき課題がある。以下、図面を参照して説明する。

0014

図4は、溶接トーチ位置の位置ずれを示す図である。同図(A)は溶接トーチ位置が継手位置と一致している場合を示し、同図(B)は溶接トーチ位置が下板側に位置ずれしている場合を示し、同図(C)は溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしている場合を示す。

0015

図5は、溶接トーチ位置の位置ずれに対する前述した図3に相当するアーク時間変化図である。同図(A)は溶接トーチ位置が継手位置と一致している場合を示し、同図(B)は溶接トーチ位置が下板側に位置ずれしている場合を示し、同図(C)は溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしている場合を示す。同図は、図3のときと同様に、時刻t3以降の期間において溶け落ち発生直前の状態になる場合である。以下、同図を参照して説明する。

0016

同図(A)の場合(位置ずれなし)
同図(A)の場合は、前述した図3のときと同一であるので詳しい説明は省略する。時刻t3以降においてアーク時間Taが次第に大きくなり、時刻t6においてアーク時間基準値Tth以上になったことを判別して、溶け落ちの発生を予知することができる。

0017

同図(B)の場合(下板側へ位置ずれ)
同図(B)に示すように、この場合にもアーク時間Taの変化は同図(A)の場合と略同様になる。したがって、時刻t3以降においてアーク時間Taが次第に大きくなり、時刻t6においてアーク時間基準値Tth以上になったことを判別して、溶け落ちの発生を予知することができる。

0018

同図(C)の場合(上板側に位置ずれ)
同図(C)に示すように、溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしている場合には、アーク時間Taは毎周期ごとに大きく変動するために、そのバラツキ値は大きくなる。また、上板側へ位置ずれしている場合、アークは上板と下板との2枚重ねの部分に発生するために、溶け落ちは発生しない。アーク時間Taのバラツキ値が大きくなる理由は、上板と下板との接触状態、隙間等の変動によって溶融池の振動状態不規則に変化し、その結果、溶融池表面位置が大きく変動してアーク長が変化するためである。同図(C)に示すように、アーク時間Taのバラツキ値が大きくなると、溶け落ち発生直前の状態でないにも係わらず、アーク時間Taがアーク時間基準値Tth以上にときどきなり、溶け落ち発生を誤検出することになる。この結果、、溶け落ちが全く発生しない状態にあるにも係わらず、溶接電流平均値を減少させることになり、不良なビード外観となる。

0019

上記において、アーク時間Taのバラツキ値を小さくするために、前述した移動平均値算出時間Trを非常に長くしてアーク時間移動平均値Tarを算出し予知信号として使用することが考えられる。しかし、この方法では、バラツキ値は小さくなるが、同図(A)又は同図(B)の場合において溶け落ち発生を予知する検出感度が鈍くなり、溶け落ち発生の直前を予知することができなくなる。

0020

そこで、本発明では、溶接トーチ又は母材が所定の位置からずれたために溶接トーチ位置が継手位置から位置ずれしても、溶け落ち発生直前の状態を正確に予知することができ、かつ、誤検出することもない重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法を提供する。

課題を解決するための手段

0021

第1の発明は、図5〜7に示すように、溶接ワイヤと母材との間で短絡状態とアーク発生状態とを1周期として繰り返す短絡移行溶接中の溶接電圧Vw又は溶接電流Iwの少なくとも一つの検出信号を処理して母材の溶け落ち発生を予知し溶接電流平均値を減少させて溶け落ちを防止する重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法において、上記1周期ごとのアーク時間Taのバラツキ値Ddが予め定めた基準値Dth未満のときは溶接トーチ位置が継手位置Pと一致又は下板側へ位置ずれしていると判別して上記溶け落ち防止制御を行い、上記アーク時間Taのバラツキ値Ddが上記基準値Dth以上のときは溶接トーチ位置が上板側へ位置ずれしていると判別して上記溶け落ち防止制御を行わないことを特徴とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。

0022

第2の発明は、図6に示すように、第1の発明に記載するアーク時間Taのバラツキ値Ddを、現周期のアーク時間Taと、アーク時間の移動平均値Tarとの減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。

0023

第3の発明は、図7に示すように、第1の発明に記載するアーク時間Taのバラツキ値Ddを、予め定めた第1の移動平均値算出時間Trs中のアーク時間移動平均値Tarsと、上記第1の移動平均値算出時間Trsよりも長い予め定めた第2の移動平均値算出時間Tr中のアーク時間移動平均値Tarとの減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。

発明を実施するための最良の形態

0024

以下に、本発明の実施の形態の例として、実施例1〜3について説明する。
[実施例1]実施例1の発明について、前述した図5を参照して説明する。同図(A)及び同図(B)に示すように、溶接トーチ位置が継手位置と一致している場合又は下板側に位置ずれしている場合には、アーク時間Taのバラツキ値は小さい。したがって、前述したように、アーク時間Taの時間変化を検出して、その値がアーク時間基準値Tth以上になったことを判別して溶け落ち発生を予知することができる。

0025

他方、同図(C)に示すように、溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしている場合には、アーク時間Taのバラツキ値が大きくなる。しかし、上板側に位置ずれしているときには、母材は上板と下板との2枚重ねであるので、溶け落ちは発生しない。したがって、溶け落ち発生の予知を行う必要はない。すなわち、アーク時間Taのバラツキ値が大きいときには、溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしていると判別して、溶け落ち発生の予知を行わないようにする。このことによって、溶け落ち発生の誤検出を防止することができる。

0026

上述したように、実施例1の発明は、アーク時間Taのバラツキ値が予め定めた基準値未満のときは溶接トーチ位置が継手中心位置と一致又は下板側へ位置ずれしていると判別して溶け落ち発生を予知して防止する制御を行い、アーク時間Taのバラツキ値が上記基準値以上のときは溶接トーチ位置が上板側へ位置ずれしていると判別して溶け落ち発生を予知して防止する制御を行わないようにする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。

0027

上記のアーク時間Taのバラツキ値としては、アーク時間Taの標準偏差、現周期のアーク時間Taとアーク時間移動平均値Tarとの差、短時間の間のアーク時間移動平均値Tarsと長時間の間のアーク時間移動平均値Tarとの差等の算出値を用いることができる。

0028

[実施例2]実施例2の発明は、上述したアーク時間のバラツキ値を、現周期のアーク時間Taとアーク時間の移動平均値Tarとの減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。以下、実施例2の発明について、図面を参照して説明する。

0029

図6は、実施例2の発明を実施するための溶接電源装置ブロック図である。出力制御回路INVは、商用交流電源3相200[V]等)を入力として、後述する誤差増幅信号Eaに従って、インバータ制御サイリスタ位相制御等によって溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。溶接ワイヤ1は、送給モータMに直結された送給ロール6の回転によって、溶接トーチ4を通って送給されて、母材2との間にアーク3又は短絡が発生して溶接が行われる。

0030

電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。アーク時間検出回路TADは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、現周期のアーク時間を検出して、アーク時間検出信号Tadを出力する。アーク時間移動平均値算出回路TARは、上記のアーク時間検出信号Tadを入力として、予め定めた移動平均値算出時間Trの間の移動平均値を算出して、アーク時間移動平均値信号Tarを出力する。

0031

減算回路SUBは、上記のアーク時間検出信号Tad及びアーク時間移動平均値信号Tarを入力として、|Tad−Tar|を演算して、アーク時間バラツキ値信号Ddを出力する。バラツキ基準値回路DTHは、予め定めたバラツキ基準値信号Dthを出力する。第2の比較回路CM2は、上記のアーク時間バラツキ値信号Ddとバラツキ基準値信号Dthとを比較して、Dd≧DthのときにはHighレベルの溶け落ち予知禁止信号Cm2を出力し、Dd<DthのときにはLowレベルの溶け落ち予知禁止信号Cm2を出力する。このことによって、アーク時間のバラツキ値が予め定めた基準値以上のときには、溶け落ち発生予知を禁止する。

0032

第1の比較回路CMは、上記のアーク時間移動平均値信号Tarと予め定めたアーク時間基準値Tthとを比較して、上記の溶け落ち予知禁止信号Cm2がLowレベルでかつTar≧Tthのときのみ、溶け落ち予知信号Cmを出力する。電流設定回路ISは、予め定めた電流設定信号Isを出力する。送給制御回路FCは、上記の溶け落ち予知信号Cmが出力されていないときには上記の電流設定信号Isに対応した送給速度で溶接ワイヤを送給するための送給制御信号Fcを出力し、上記の溶け落ち予知信号Cmが出力されているときには上記の電流設定信号Isに対応した送給速度よりも遅い送給速度で溶接ワイヤを送給するための送給制御信号Fcを出力する。このことによって、溶け落ち発生を予知したときは、送給速度を遅くすることで溶接電流平均値を減少させて、溶け落ち発生を未然に防止する。

0033

電圧設定回路VSは、溶接電圧Vwの平均値を設定するための予め定めた電圧設定信号Vsを出力する。誤差増幅回路EAは、上記の電圧検出信号Vdと電圧設定信号Vsとの誤差増幅して、誤差増幅信号Eaを出力する。

0034

[実施例3]実施例3の発明は、上述したアーク時間のバラツキ値を、予め定めた第1の移動平均値算出時間Trs中のアーク時間移動平均値Tarsと、上記第1の移動平均値算出時間Trsよりも長い予め定めた第2の移動平均値算出時間Tr中のアーク時間移動平均値Tarとの減算値とする重ねすみ肉溶接の溶け落ち防止制御方法である。以下、実施例3の発明について、図面を参照して説明する。

0035

図7は、実施例3の発明を実施するための溶接電源装置のブロック図である。同図において、前述した図6と同一の回路ブロックには同一符号を付し、それらの説明は省略する。以下、図6とは異なる回路ブロックについて説明する。

0036

第1のアーク時間移動平均値算出回路TARSは、アーク時間検出信号Tadを入力として、予め定めた第1の移動平均値算出時間Trsの間の移動平均値を算出して、第1のアーク時間移動平均値信号Tarsを出力する。減算回路SUBは、上記の第1のアーク時間移動平均値信号Tars及び(第2の)アーク時間移動平均値信号Tarを入力として、|Tars−Tar|を演算して、アーク時間バラツキ値信号Ddを出力する。これ以降の動作説明は、前述した図6と同様であるので省略する。

0037

なお、アーク時間移動平均値算出回路TARの出力信号であるアーク時間移動平均値信号Tarが、上述した第2のアーク時間移動平均値Trに相当する。また、第2の移動平均値算出時間Trは、第1の移動平均値算出時間Trsよりも数倍程度長い時間に設定する。例えば、Tr=200[ms]、Trs=80[ms]に設定する。

0038

上述した第1の移動平均値算出時間Trs、第2の移動平均値算出時間Tr及びバラツキ基準値Dthの値は、溶接ワイヤの種類、送給速度、シ—ルドガスの種類、母材ワークの板厚及び形状、溶接速度等によって、適正値に設定する。

発明の効果

0039

本発明の溶け落ち防止制御方法では、重ねすみ肉溶接において、アーク時間のバラツキ値が基準値以上のときには溶接トーチ位置が上板側に位置ずれしていると判別して溶け落ち防止制御を行わないことによって、溶け落ち発生を誤検出することがなく、常に正確に溶け落ち発生を予知することができるので、溶け落ちのない良好な溶接を行うことができる。

図面の簡単な説明

0040

図1従来技術の重ねすみ肉溶接のアーク発生部模式図
図2従来技術の短絡移行溶接の電圧・電流波形図
図3従来技術のアーク時間を利用した溶け落ち発生予知方法を示すアーク時間変化図
図4課題を説明するための溶接トーチ位置の位置ずれを示す図
図5課題を説明するための溶接トーチ位置の位置ずれに対するアーク時間変化図
図6実施例2の溶接電源装置のブロック図
図7実施例3の溶接電源装置のブロック図

--

0041

1溶接ワイヤ
2母材
21上板
22下板
3アーク
4溶接トーチ
41コンタクトチップ
5溶融池
51裏波
52 溶融池表面
6 送給装置の送給ロール
CM 第1の比較回路
Cm溶け落ち予知信号
CM2 第2の比較回路
Cm2 溶け落ち予知禁止信号
Ddアーク時間バラツキ値信号
DTHバラツキ基準値回路
Dth バラツキ基準値信号
EA誤差増幅回路
Ea誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
Ia、Ia1、Ia2アーク電流平均値
INV出力制御回路
IS電流設定回路
Is電流設定信号
Iw溶接電流
La1、La2アーク長
M 送給モータ
P継手位置
SUB減算回路
Ta、Ta1、Ta2 アーク時間
TAD アーク時間検出回路
Tad アーク時間検出信号
TAR アーク時間移動平均値算出回路
Tar (第2の)アーク時間移動平均値信号
TARS 第1のアーク時間移動平均値算出回路
Tars 第1のアーク時間移動平均値信号
Tr (第2の)移動平均値算出時間
Trs 第1の移動平均値算出時間
Tth アーク時間基準値
Va、Va1、Va2アーク電圧平均値
VD電圧検出回路
Vd電圧検出信号
VS電圧設定回路
Vs電圧設定信号
Vw 溶接電圧

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