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図面 (13)

課題

シュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができるシュワン細胞の培養方法を提供すること。

解決手段

酵素処理した末梢神経片を、5〜15%FCS含有BS培地で0〜60時間培養した後、無血清BS培地で12〜60時間培養して、線維芽細胞増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーション誘導し、次いで、1〜10%FCS含有BS培地で7日以上培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させる。また、上記無血清BS培地での培養後、系外に取り出した末梢神経片を、無血清BS培地とFCS含有BS培地で順次培養してシュワン細胞を増殖させることもできる。さらに、シュワン細胞を生体吸収性シート上で培養すると、培養シュワン細胞再生材料が得られる。

概要

背景

ニューロンとも呼ばれる神経細胞は、神経細胞体と該神経細胞体から多数出ている樹状突起と長く伸びる1本の軸索から構成されており、軸索はNGFなどの神経成長因子接着分子、あるいは他の細胞の働きにより標的細胞に辿り着き、そこでシナプスを形成する。かかる軸索の周りシュワン細胞細胞膜により重層状態で覆われている。このように、末梢神経系において、グリア細胞種を構成するシュワン細胞は、脊椎動物において軸索を取り囲み絶縁する髄鞘の形成に関与する。また、末梢神経では、変性した軸索はマクロファージなどによって取り除かれるが、同時にIL−1の刺激により、シュワン細胞が分裂し、新しいシュワン細胞はNGFを分泌して、切断されたところから軸索の伸長を促す。このように、シュワン細胞は、末梢神経損傷における神経再生誘導する材料として有用であると考えられている。そして従来、シュワン細胞の培養方法としては、以下の方法が知られている。

T. K. Morrisseyらの方法(J. Neurosci 11, 2433-2442, 1991)
摘出したラットの末梢神経を1mm大に刻み、10%FCS仔ウシ血清)を含んだ培地DMEM)中で培養する。はじめの4週間は、目的とするシュワン細胞だけでなく線維芽細胞なども多数増殖するため、1週間に2回ほどディッシュ、培地の交換を要する。そののち、シュワン細胞だけがミグレーションしてくるようになるため、神経片をディッシュより除去した後、該神経片を同じ培地条件下で培養する。この方法によると、十分な細胞数(2×104個/mg)を獲得できるまでには6〜8週間を要するとされている。

Gerburg Keilhoffらの方法(J. Neurosci. Methods89, 17-24, 1999)
ラットの末梢神経をあらかじめ生体内で切断し、変性(predegenerated)させておき、1〜3週間後に摘出した末梢神経を2mm大に刻み酵素ディスパーゼコラゲナーゼ、ヒアルニラーゼ)にて細胞レベルまで分散し、10%FCS(仔ウシの血清)を含んだ培地(DMEM)中で培養する。この方法によると、コントロール群と比較すると有意に多数のシュワン細胞が獲得できるとされている。

Li R−Hの方法(J. Neurosci. Methods67, 57-69, 1996)
摘出したラットの末梢神経を3mm大に刻み、神経成長因子、10%FCS(仔ウシの血清)を含んだ培地(DMEM)中に浸し3日間変性させる。その後酵素にて細胞レベルにまで分散し、得られた細胞を、血清を含まないDMEM中で培養する。この方法によると、2週間で10倍量の純粋なシュワン細胞を獲得できるとされている。

Francisco J. R.らの方法(Exp. Neurol. 161, 571-584, 2000)
マウスの末梢神経をあらかじめ生体内で切断し、変性(predegenerated)させておき、1週間後に摘出した末梢神経を、酵素(トリプシン、コラゲナーゼA、DNase-1)にて細胞レベルにまで分散し、得られた細胞を、1%FCSを含んだ調整培地中で培養する。調整培地は、シュワン細胞が多数培養されていた培地(神経栄養因子が多量に含まれていると考えられる)と新鮮なDMEM/F−12培地を1:1で混合したものである。この方法によると、1ヶ月で180個/mm2まで増えるとされている。

平田らの方法(特開2000−83655)
大人哺乳動物の末梢神経をワーラー変性させた後神経を採取し、コラゲナーゼを用いて細胞を分散し、フィブロネクチンコーティングした培養皿を用いて血清を含む培地で数時間培養する。線維芽細胞の接着を確認した後、非接着のシュワン細胞を集め、ラミニンでコーティングした培養皿内で培養する。この培養皿内で培養中に線維芽細胞の混入が認められた場合にはカルシウムキレート剤を含む緩衝液を用いてシュワン細胞を選択的に集め、新しいラミニンコーティング培養皿に移すことにより、シュワン細胞の純度を高める

概要

シュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができるシュワン細胞の培養方法を提供すること。

酵素処理した末梢神経片を、5〜15%FCS含有BS培地で0〜60時間培養した後、無血清BS培地で12〜60時間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーションを誘導し、次いで、1〜10%FCS含有BS培地で7日以上培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させる。また、上記無血清BS培地での培養後、系外に取り出した末梢神経片を、無血清BS培地とFCS含有BS培地で順次培養してシュワン細胞を増殖させることもできる。さらに、シュワン細胞を生体吸収性シート上で培養すると、培養シュワン細胞再生材料が得られる。

目的

本発明の課題は、シュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができるシュワン細胞の培養方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーション誘導し、次いで、前記血清含有培地[a]よりも血清含量が低い血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させることを特徴とするシュワン細胞の培養方法

請求項2

酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養し、その後、末梢神経片を系外に取り出し、該取り出した末梢神経片を無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞の増殖を誘導し、次いで、血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させ、必要に応じてこの操作を繰り返し行うことを特徴とするシュワン細胞の培養方法。

請求項3

培地[a]、培地[b]及び培地[c]が、BS培地であることを特徴とする請求項1又は2記載のシュワン細胞の培養方法。

請求項4

血清含有培地[a]での所定の期間の培養が、5〜15%FCS含有BS培地での0〜60時間の培養であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法。

請求項5

無血清培地[b]での所定の期間の培養が、BS培地での12〜60時間の培養であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法。

請求項6

血清培地[c]での所定の期間の培養が、1〜10%FCS含有BS培地での7日以上の培養であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法。

請求項7

生体吸収性シート上で培養することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法。

請求項8

請求項7記載のシュワン細胞の培養方法により得られる培養シュワン細胞再生材料

技術分野

0001

本発明は、末梢神経損傷における神経再生誘導する材料として有用なシュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができるシュワン細胞の培養方法に関する。

背景技術

0002

ニューロンとも呼ばれる神経細胞は、神経細胞体と該神経細胞体から多数出ている樹状突起と長く伸びる1本の軸索から構成されており、軸索はNGFなどの神経成長因子接着分子、あるいは他の細胞の働きにより標的細胞に辿り着き、そこでシナプスを形成する。かかる軸索の周りはシュワン細胞の細胞膜により重層状態で覆われている。このように、末梢神経系において、グリア細胞種を構成するシュワン細胞は、脊椎動物において軸索を取り囲み絶縁する髄鞘の形成に関与する。また、末梢神経では、変性した軸索はマクロファージなどによって取り除かれるが、同時にIL−1の刺激により、シュワン細胞が分裂し、新しいシュワン細胞はNGFを分泌して、切断されたところから軸索の伸長を促す。このように、シュワン細胞は、末梢神経損傷における神経再生を誘導する材料として有用であると考えられている。そして従来、シュワン細胞の培養方法としては、以下の方法が知られている。

0003

T. K. Morrisseyらの方法(J. Neurosci 11, 2433-2442, 1991)
摘出したラットの末梢神経を1mm大に刻み、10%FCS仔ウシ血清)を含んだ培地DMEM)中で培養する。はじめの4週間は、目的とするシュワン細胞だけでなく線維芽細胞なども多数増殖するため、1週間に2回ほどディッシュ、培地の交換を要する。そののち、シュワン細胞だけがミグレーションしてくるようになるため、神経片をディッシュより除去した後、該神経片を同じ培地条件下で培養する。この方法によると、十分な細胞数(2×104個/mg)を獲得できるまでには6〜8週間を要するとされている。

0004

Gerburg Keilhoffらの方法(J. Neurosci. Methods89, 17-24, 1999)
ラットの末梢神経をあらかじめ生体内で切断し、変性(predegenerated)させておき、1〜3週間後に摘出した末梢神経を2mm大に刻み酵素ディスパーゼコラゲナーゼ、ヒアルニラーゼ)にて細胞レベルまで分散し、10%FCS(仔ウシの血清)を含んだ培地(DMEM)中で培養する。この方法によると、コントロール群と比較すると有意に多数のシュワン細胞が獲得できるとされている。

0005

Li R−Hの方法(J. Neurosci. Methods67, 57-69, 1996)
摘出したラットの末梢神経を3mm大に刻み、神経成長因子、10%FCS(仔ウシの血清)を含んだ培地(DMEM)中に浸し3日間変性させる。その後酵素にて細胞レベルにまで分散し、得られた細胞を、血清を含まないDMEM中で培養する。この方法によると、2週間で10倍量の純粋なシュワン細胞を獲得できるとされている。

0006

Francisco J. R.らの方法(Exp. Neurol. 161, 571-584, 2000)
マウスの末梢神経をあらかじめ生体内で切断し、変性(predegenerated)させておき、1週間後に摘出した末梢神経を、酵素(トリプシン、コラゲナーゼA、DNase-1)にて細胞レベルにまで分散し、得られた細胞を、1%FCSを含んだ調整培地中で培養する。調整培地は、シュワン細胞が多数培養されていた培地(神経栄養因子が多量に含まれていると考えられる)と新鮮なDMEM/F−12培地を1:1で混合したものである。この方法によると、1ヶ月で180個/mm2まで増えるとされている。

0007

平田らの方法(特開2000−83655)
大人哺乳動物の末梢神経をワーラー変性させた後神経を採取し、コラゲナーゼを用いて細胞を分散し、フィブロネクチンコーティングした培養皿を用いて血清を含む培地で数時間培養する。線維芽細胞の接着を確認した後、非接着のシュワン細胞を集め、ラミニンでコーティングした培養皿内で培養する。この培養皿内で培養中に線維芽細胞の混入が認められた場合にはカルシウムキレート剤を含む緩衝液を用いてシュワン細胞を選択的に集め、新しいラミニンコーティング培養皿に移すことにより、シュワン細胞の純度を高める

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の課題は、シュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができるシュワン細胞の培養方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、シュワン細胞の大量かつ効率的な培養方法について鋭意研究し、BS細胞を用いて、血清濃度コントロールすることにより、線維芽細胞の成長をコントロールしながらシュワン細胞を培養すると、シュワン細胞を大量かつ効率的に得ることができることを見い出した。すなわち、末梢神経を最初から無血清培地で培養するとFGFなどシュワン細胞を増殖させる因子を分泌する線維芽細胞の増殖がほとんど認められない。すなわち線維芽細胞の補助の無いシュワン細胞のミグレーションは充分に誘導されないことから、最初は10%程度のFCS等血清含有培地で培養することが好ましいこと、しかし血清含有培地で培養を続けると、シュワン細胞より増殖速度が大きい線維芽細胞により結果的にシュワン細胞のミグレーションが充分に誘導されたことから、無血清培地に切り換え、かかる無血清培地で多量のシュワン細胞のミグレーションを短期間に誘導することが好ましいこと、短期間に多量に誘導したシュワン細胞のミグレーションを持続させ、さらに培養したシュワン細胞の生存期間延長させるには、少量の線維芽細胞の存在下で培養することが好ましく、このため2.5%程度のFCS等低濃度の血清含有培地で培養すればよいことを見い出した。また、用いた末梢神経を別のディッシュに移して同じ方法で培養すると、次々とシュワン細胞を量産することができることも見い出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。

0010

すなわち本発明は、酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーションを誘導し、次いで、前記血清含有培地[a]よりも血清含量が低い血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させることを特徴とするシュワン細胞の培養方法(請求項1)や、酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養し、その後、末梢神経片を系外に取り出し、該取り出した末梢神経片を無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞の増殖を誘導し、次いで、血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させ、必要に応じてこの操作を繰り返し行うことを特徴とするシュワン細胞の培養方法(請求項2)や、培地[a]、培地[b]及び培地[c]が、BS培地であることを特徴とする請求項1又は2記載のシュワン細胞の培養方法(請求項3)や、血清含有培地[a]での所定の期間の培養が、5〜15%FCS含有BS培地での0〜60時間の培養であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法(請求項4)や、無血清培地[b]での所定の期間の培養が、BS培地での12〜60時間の培養であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法(請求項5)や、血清培地[c]での所定の期間の培養が、1〜10%FCS含有BS培地での7日以上の培養であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法(請求項6)や、生体吸収性シート上で培養することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のシュワン細胞の培養方法(請求項7)や、請求項7記載のシュワン細胞の培養方法により得られる培養シュワン細胞再生材料(請求項8)に関する。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明のシュワン細胞の培養方法としては、酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーションを誘導し、次いで、前記血清含有培地[a]よりも血清含量が低い血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞をミグレーションさせる方法であれば特に制限されるものではなく、また、本発明のシュワン細胞の培養方法には、用いた末梢神経片を繰り返し使用し、さらに神経架橋に際し生体吸収性チューブなどの架橋材料内に培養細胞とともに、神経片を細断STEPSTONEと呼ばれる神経再生の際の足場とする方法として最後まで利用する態様も含まれる。

0012

すなわち、酵素処理した末梢神経片を血清含有培地[a]で所定の期間培養した後、無血清培地[b]で所定の期間培養し、その後、末梢神経片を系外に取り出し、取り出した末梢神経片を無血清培地[b]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞のミグレーションを誘導し、次いで、血清培地[c]で所定の期間培養して、線維芽細胞の増殖コントロール下にシュワン細胞を増殖させるシュワン細胞の培養方法や、このシュワン細胞の培養方法を順次繰り返し行うシュワン細胞の培養方法も、本発明に含まれる。そして、このシュワン細胞の培養方法に用いた末梢神経片は、最終的に移植再生材料として有効に使用することもできる。

0013

上記酵素処理される末梢神経片としては、生体から直接摘出した末梢神経を細断したものでもよいが、生体内で切断した(切断された)後、変性させた(変性した)末梢神経を細断したものが、シュワン細胞が分裂し、新しいシュワン細胞が得られる点で好ましい。末梢神経の由来も特に限定されず、ラット、マウス、ウサギウマ、ヒト等を例示することができる。

0014

上記末梢神経片を処理する酵素としては、末梢神経片に作用して、細胞レベルまで分散しうる酵素であればどのようなものでもよく、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニラーゼ、トリプシン等を具体的に例示することができ、これらは単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、その使用濃度も特に制限されないが、ディスパーゼとコラゲナーゼを併用する場合は、1.25U/ml程度のディスパーゼと0.05%程度のコラゲナーゼを具体的に挙げることができる。

0015

上記血清含有培地[a][c]及び無血清培地[b]における培地としては、シュワン細胞が増殖しうるものであればどのような培地でもよいが、例えば、Dulbecco改変MEM(DME)とHamらのF12との1:1混合培地であるDME/F12(1:1)や、DME/F12(3:1)や、Iscove改変Dulbecco培地(IMDM)/F12(1:1)や、DME/F12(1:1)に5μg/mlのインシュリン(insulin)、50μg/mlのトランスフェリン(transferrin)、2×10-8Mのプロゲステロン(progesterone)、100μMのプトレッシン(putrescine)及び3×10-8Mのセレニウム(selenium)(Na2SeO3として)が補われたBS培地(Bottenstein&Sato medium;MethodsEnzymol. 58, 94-109, 1979)を挙げることができ、中でもBS培地を好適に例示することができる。

0016

本発明においては、酵素処理した末梢神経片は、まず、血清含有培地[a]で所定の期間培養されるが、かかる血清含有培地[a]での所定の期間の培養としては、5〜15%FCS、好ましくは8〜12%FCS、より好ましくは10%FCSを含有する培地、好ましくはBS培地での0〜60時間、好ましくは12〜36時間、より好ましくは24時間の培養を挙げることができる。かかる血清含有培地[a]での所定の期間の培養により、シュワン細胞と線維芽細胞とが共に増殖する。次いで、無血清培地[b]で所定の期間培養されるが、かかる無血清培地[b]での所定の期間の培養としては、無血清の培地、好ましくはBS培地での12〜60時間、好ましくは24〜48時間の培養を挙げることができる。この無血清培地での培養により、線維芽細胞の増殖が抑制され、多量のシュワン細胞のミグレーションが短期間で誘導される。続いて、血清培地[c]で所定の期間培養が実施されるが、かかる血清培地[c]での所定の期間の培養としては、1〜10%FCS、好ましくは1〜5%FCS、より好ましくは2.5%FCSを含有する培地、好ましくはBS培地での7日以上、好ましくは2〜5週間程度の培養を挙げることができ、この場合、1週間に2回の割合で培地を取り換えることが好ましい。この低濃度の血清含有培地での培養により、前記短期間に多量に誘導したシュワン細胞のミグレーションが持続され、シュワン細胞を大量に増殖することができる。また、上記培養は、通常、5%CO2存在下37℃で行われる。

0017

上記血清含有培地[a]での培養期間が0時間、すなわち、血清含有培地[a]で培養することなく、当初から無血清培地[b]で培養する実施の形態も本発明に包含される。かかる場合、無血清培地[b]で線維芽細胞の増殖が当初から抑制され、血清含有培地[a]で培養した場合よりもシュワン細胞の比率が高い培養シュワン細胞が得られることになる。

0018

また、上記シュワン細胞の培養は、通常ガラス製、プラスチック製等の培養皿ディッシュ表面で行われる。培養皿ディッシュとして、ラミニンやフィブロネクチンをコーティングしたペトリディッシュを用いることや、培地にNGF等の各種増殖因子を添加することもできる。また、培養皿ディッシュ等の中に載置したシートチューブスポンジ、不織布、メッシュ高次構造体の表面上で培養することもできる。これら表面に、その疎水性を減じるためにコロナ放電処理を施したり、ラミニンコーティング処理やフィブロネクチンコーティング処理、ゼラチンコーティング処理を施すこともできる。これらシート等の材料は特に制限されないが、末梢神経再生材料の点からして、生体吸収型材料を用いることが好ましい。生体吸収型材料のうち、合成高分子材料としては、ポリグリコール酸ポリL−乳酸、L−乳酸−グリコール酸共重合体グリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体、L−乳酸−ε−カプロラクトン共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等を具体的に例示することができ、天然高分子としては、コラーゲンゼラチンフィブリン多糖類等を具体的に例示することができる。

0019

本発明の生体吸収性シート上で培養するシュワン細胞の培養方法における生体吸収性シートには、便宜上、生体吸収型ストリップ状シート、生体吸収型メッシュ、生体吸収型ストリップ状メッシュ等も含まれる。これら本発明の生体吸収性シート上で培養された培養シュワン細胞は、末梢神経再生材料として好適に使用することができる。特に、その表面に培養シュワン細胞が接着した生体吸収性シートをロール状(断面渦巻き状)に丸めたものは、それを人工末梢神経として末梢神経の切断部位ギャップに適用すると、移植後のシュワン細胞の生着率が高く、切断部位において末梢神経の再生が容易に生起し、また再生された後、基材としてのシートを摘出する必要もないことから、優れた末梢神経再生材料となる。

0020

以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1(新しい神経片によるシュワン細胞の培養方法)
10週齢雌ラット(日本SLC社製)5匹の片側の坐骨神経全身麻酔下で展開し、股関節後方にて坐骨神経を切断した。この際神経再生を生じないように切断中断端絹糸にて結紮した上、大殿筋肉に埋没した。以上の操作後、創を閉鎖しラットをケージに戻した。これにより切断部より遠い部位で軸索、髄鞘の変性が進行し、未分化なシュワン細胞が増殖する神経切断後10日の時点で全身麻酔下に坐骨神経を摘出した。摘出した坐骨神経を2mm大に切断し、0.05%コラゲナーゼと1.25U/mlのディスパーゼを含むBS培地(DMEMを自家調整)中に浸し、2、3回ピペッティング後、5%CO2存在下37℃で12時間インキュベートした。遠心分離(1000回転5分)後、上清を捨て、MEM(+)を添加し、2、3回ピペッティングを行った。5%CO2存在下37℃で5分間インキュベートした後、遠心分離(1000回転5分)し、その後上清を捨て、神経片をディッシュ上に並べ、BS培地のみで洗浄(2、3回ピペッティング)した。

0021

次に、ディッシュに神経片が浮かばないように、10%FCS添加BS培地を静かに注いだ。このとき神経片が培地より上に出るぐらい薄く撒いた[図1参考写真1)]。翌日、培地をFCS不添加のBS培地に交換した。4日目にはシュワン細胞が8000〜10000個ほどミグレーションしていた[図2(参考写真2)]ので、神経片を取り除き、培地を2.5%FCS添加BS培地に交換した。以後、週2回培地交換すると、14日目には1×106個ほどのシュワン細胞を得ることができた[図3(参考写真3)]。シュワン細胞を固定し、位相差顕微鏡でのシュワン細胞[図4A(参考写真4A)]、公知のシュワン細胞特異的なマーカーである抗L1抗体図4B(参考写真4B)]、抗S−100抗体[図4C(参考写真4C)]、抗GFAP抗体図4D(参考写真4D)]にて免疫染色し、免疫組織化学的に分析した。その結果、培養物中に占めるシュワン細胞の割合は85〜92%であった。

0022

実施例2(再使用神経片によるシュワン細胞の培養方法)
また、上記取り除いた神経片は違うシャーレに移してBS培地のみで、実施例1と同様に培養した。こちらも3日後に培地を交換して、6日目には8000〜10000個ほどのシュワン細胞を得ることができた。これらのシュワン細胞に、DNA合成マーカーであるBrdUを添加し、BrdUを取り込んだ細胞を常法により染色した[図5(参考写真5)]ところ、シュワン細胞の増殖が亢進していることが確かめられた。以後同様にディッシュを変えつつ、1ヶ月培養したところと、2〜3×106個/20mgのシュワン細胞を得ることができた[図6(参考写真6)]。実施例1同様に免疫組織化学的に分析したところ、培養物中にしめるシュワン細胞の割合は95〜97%であった。

0023

実施例3(生体吸収性シート上でのシュワン細胞の培養)
L−乳酸−グリコール酸共重合体(50:50配合)よりなる生体吸収性シート表面にコロナ放電処理を施し、さらにその上にラミニン処理(10μg/ml濃度のラミニンを含むPBS中、37℃で1時間インキュベーション)を施し、2週齢の雌のウイスターラット(Wistar Rat)より摘出した末梢神経片をおき、BS培地にて実施例1記載の条件下で培養した。培養5日目には神経片より多数細胞のミグレーションが認められた[図7(参考写真7)]。これがシュワン細胞であることを確認するためにシュワン細胞特異的な抗S−100抗体で染色した[図8(参考写真8)]。これにより生体吸収性シート上にシュワン細胞がミグレーションし、生育していることを確認した。

0024

実施例4(培養シュワン細胞再生材料を用いた軸索再生
10週齢の雌ウイスターラットの片側の坐骨神経を全身麻酔下で展開し、股関節後方にて坐骨神経を1cm切除した。かかる坐骨神経の欠損部に、実施例3で調製した培養シュワン細胞生着生体吸収性シートをロール状に丸めた培養シュワン細胞再生材料[図9(参考写真9)]を人工末梢神経として移植した[図10(参考写真10)]。移植3週間後に、再度全身麻酔下に移植した人工末梢神経を摘出し、神経再生の程度を目視下[図11(参考写真11)]及び顕微鏡下[図12(参考写真12)]に確認した。これらの観察結果より、ロール状にしたシュワン細胞シートでは神経の軸索再生が明らかに認められ、対照としてのシュワン細胞不在のロール状再生材料を用いた場合[図13(参考写真13)]と比較した結果、上記培養シュワン細胞再生材料における軸索再生が、シュワン細胞不在ロール状再生材料における軸索再生に比べ、有意に優れていることが判明した。

発明の効果

0025

本発明によると、FCS等の血清の濃度と添加時期を調整することで、線維芽細胞の増殖をコントロールし、シュワン細胞のみがミグレーションするのに適当な条件を作出することができ、また、培地としてBS培地等を用いることにより、無血清での大量のシュワン細胞のミグレーションが可能となり、短期間に効率的にシュワン細胞を得ることができる。また、本発明のシュワン細胞の培養方法においては、培養ディッシュを交換することなく大量に培養できるので、シート上に培養した細胞を何層にも重ねることで、シュワン細胞の3次元モデルが作製できる。さらに、高価な神経増殖因子を用いることがなく、安価に培養シュワン細胞を提供することができる。

図面の簡単な説明

0026

図1本発明によるシュワン細胞培養当初の様子を示す図である。
図2本発明によるシュワン細胞培養4日目の培養状況を示す図である。
図3本発明によるシュワン細胞培養14日目の培養状況を示す図である。
図4本発明によるシュワン細胞培養後の位相差顕微鏡でのシュワン細胞(A)、抗L1抗体での免疫染色(B)、抗S−100抗体での免疫染色(C)、抗GFAP抗体での免疫染色(D)の結果を示す図である。
図5本発明によるシュワン細胞のBrdUの取込み結果を示す図である。
図6本発明によるシュワン細胞培養4週目の培養状況を示す図である。
図7本発明の生体吸収シート上でのシュワン細胞の培養状況を示す図である。
図8本発明の生体吸収シート上での培養したシュワン細胞を抗S−100抗体で免疫染色した図である。
図9本発明の培養シュワン細胞生着生体吸収性シートをロール状に丸めた培養シュワン細胞再生材料を示す図である。
図10本発明のロール状生体吸収性シートを用いたインビボでの神経の架橋状態を示す図である。
図11本発明の培養したシュワン細胞シート移植3週後の状態を示す図である。
図12本発明のロール状にした軸索の再生が良好に認められるシュワン細胞シートの顕微鏡下の結果を示す図である。
図13比較例の生体吸収性チューブのみで架橋した神経再生の様子を示す図である。

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