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目的

解決手段

生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値に基づいて、個体のストレス状態を検出する。

概要

背景

ストレスとは、生物個体(個体)にある刺激ストレッサー)が加えられたときにその個体が示す防御反応を意味し、精神的ストレス物理的ストレス化学的ストレス、生物的ストレス等、ストレッサーの種類によって分類される。人間関係トラブル緊張、不安、騒音高温酸素欠乏または過剰、病原菌侵入等の刺激(ストレッサー)が存在すると、これらの刺激に対する反応がストレスとして個体の身体・精神・行動等に現れるが、刺激の量や時間の過重で個体の適応能力を越えると身体の変調をきたす恐れが生じる。今までに多くの疾患においてストレスとの関係が研究され、ストレスに起因する疾患は現代病の一つとして注目されるようになってきた。現代社会はストレス社会といわれ、ストレス状態を把握して予防や解決の手段をとることが、日常生活の上でも身近な課題となってきている。

個体がストレスに暴露されると、そのストレスはまず大脳皮質知覚され、視床下部に伝達された後、交感神経系興奮によってカテコールアミン分泌の増大が引き起こされる。また一方では、視床下部から下垂体に伝達され、コルチゾール分泌が増大することが知られている。Urhausen A.らは、運動選手トレーニング管理において、血中のカテコールアミン等の量を測定して、厳しいトレーニングにより選手が受けるストレスの状態をチェックする指標として用いることを提案している(Sports Med., 20(4), 251-276 (1995))。しかしその一方で、一般に血中カテコールアミンの測定は困難であることが知られている。すなわち、カテコールアミンが血中において非常に分解されやすく誤差が生じやすいこと等から、安定的な測定が困難であることが知られているほか、血中カテコールアミン濃度とストレスの状態が必ずしも一致しないとの知見が得られている(Elmfeldt D, Blood Press, 3(6), 356-363 (1994))。

このように、ストレスに起因する疾患との関連や、運動選手のトレーニング管理等、様々な場面において個体のストレス状態を把握することが求められているが、ストレス状態の十分な検出方法確立されていなかった。

V-1蛋白質は、本発明者らによって、生後発達期の哺乳類の脳において一過性発現が増大する分子として発見された新規蛋白質である(Eur. J. Biochem.,207, 615-620 (1992))。V-1蛋白質は、cDNAクローニングによって、117個のアミノ酸から成り、分子の中央に蛋白質間相互作用に必要な分子モチーフであるアンキリンリピート配列が2回半繰り返される構造を持った蛋白質であることが明らかになっている。

Northern Blot法及びin situハイブリダイゼーション法を用いてV-1遺伝子の発現プロフィル解析すると、脳ではV-1mRNAが広範に分布し、特に海馬小脳などの領域で高い発現が認められる。それ以外にも、免疫系器官である脾臓胸腺消化器系小腸膵臓循環器系心臓泌尿器系腎臓、及び内分泌系副腎などの各臓器においてV-1 mRNAの発現が観察される。また、脳におけるV-1 mRNAの発現は神経細胞局在し、その発現量は神経細胞によって変化していること、及び、中枢及び末梢神経系神経細胞に広範に分布しているV-1蛋白質も細胞により発現レベル相違があることが解明されている(Mol. Brain Res., 40, 203-213 (1996))。

さらに本発明者らは、神経細胞分化モデル実験系であるラット副腎由来PC12D細胞を用いてV-1遺伝子の過剰発現実験を実施し(J. Biol. Chem., 273, 27051-27054 (1998))、その結果、V-1蛋白質が、カテコールアミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素(Tyrosine hydroxylase; TH)、芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase; AADC)及びドーパミンβ−水酸化酵素(Dopamine β-hydroxylase; DBH)のmRNA発現を促進し、ドーパミンやノルアドレナリン生合成著明に増大させる活性を持つこと、すなわち、V-1蛋白質がカテコールアミン生合成促進因子であることを示した。

しかし、上記のとおり、V-1蛋白質が生体内神経伝達物質として重要なカテコールアミンに深く関わる因子であること等は解明されていたものの、V-1蛋白質の発現は生体内において非常に広範に認められており、この蛋白質が持つ機能や発現等の詳細な解明は未だ不十分であった。

概要

生物個体のストレス状態の検出方法を提供する。

生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値に基づいて、個体のストレス状態を検出する。

目的

本発明は、生物個体のストレス状態を検出する方法、さらに詳しくは、生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量に基づいて、個体のストレス状態を検出する方法を提供するためになされたものである。

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値に基づいて、個体のストレス状態を検出することを特徴とするストレス状態の検出方法

請求項2

V-1遺伝子発現量の測定がNorthern Blot法で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項3

V-1蛋白質量の測定が免疫学的測定法で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。

請求項4

ストレス暴露された個体または生物試料に被検物質投与し、該個体または生物試料におけるV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変化を検出し、V-1遺伝子発現またはV-1蛋白質の存在が、消失または低下した場合に、該物質がストレス状態を緩和させる効果を有すると判定することを特徴とする、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬スクリーニング方法

請求項5

請求項4に記載の方法によって選択される物質を製剤化することを特徴とする、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬の製造方法。

請求項6

ストレスに起因する疾患が消化性潰瘍または循環器疾患である、請求項4または5に記載の方法。

請求項7

請求項4に記載の方法によって選択されるストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬。

請求項8

少なくともV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定するための試薬を含み、請求項1に記載のストレス状態の検出方法に用いるためのキット

技術分野

0001

本発明は、生物個体ストレス状態検出方法に関する。詳しくは、生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値に基づいて、個体のストレス状態を検出する方法に関する。

背景技術

0002

ストレスとは、生物個体(個体)にある刺激ストレッサー)が加えられたときにその個体が示す防御反応を意味し、精神的ストレス物理的ストレス化学的ストレス、生物的ストレス等、ストレッサーの種類によって分類される。人間関係トラブル緊張、不安、騒音高温酸素欠乏または過剰、病原菌侵入等の刺激(ストレッサー)が存在すると、これらの刺激に対する反応がストレスとして個体の身体・精神・行動等に現れるが、刺激の量や時間の過重で個体の適応能力を越えると身体の変調をきたす恐れが生じる。今までに多くの疾患においてストレスとの関係が研究され、ストレスに起因する疾患は現代病の一つとして注目されるようになってきた。現代社会はストレス社会といわれ、ストレス状態を把握して予防や解決の手段をとることが、日常生活の上でも身近な課題となってきている。

0003

個体がストレスに暴露されると、そのストレスはまず大脳皮質知覚され、視床下部に伝達された後、交感神経系興奮によってカテコールアミン分泌の増大が引き起こされる。また一方では、視床下部から下垂体に伝達され、コルチゾール分泌が増大することが知られている。Urhausen A.らは、運動選手トレーニング管理において、血中のカテコールアミン等の量を測定して、厳しいトレーニングにより選手が受けるストレスの状態をチェックする指標として用いることを提案している(Sports Med., 20(4), 251-276 (1995))。しかしその一方で、一般に血中カテコールアミンの測定は困難であることが知られている。すなわち、カテコールアミンが血中において非常に分解されやすく誤差が生じやすいこと等から、安定的な測定が困難であることが知られているほか、血中カテコールアミン濃度とストレスの状態が必ずしも一致しないとの知見が得られている(Elmfeldt D, Blood Press, 3(6), 356-363 (1994))。

0004

このように、ストレスに起因する疾患との関連や、運動選手のトレーニング管理等、様々な場面において個体のストレス状態を把握することが求められているが、ストレス状態の十分な検出方法は確立されていなかった。

0005

V-1蛋白質は、本発明者らによって、生後発達期の哺乳類の脳において一過性発現が増大する分子として発見された新規蛋白質である(Eur. J. Biochem.,207, 615-620 (1992))。V-1蛋白質は、cDNAクローニングによって、117個のアミノ酸から成り、分子の中央に蛋白質間相互作用に必要な分子モチーフであるアンキリンリピート配列が2回半繰り返される構造を持った蛋白質であることが明らかになっている。

0006

Northern Blot法及びin situハイブリダイゼーション法を用いてV-1遺伝子の発現プロフィル解析すると、脳ではV-1mRNAが広範に分布し、特に海馬小脳などの領域で高い発現が認められる。それ以外にも、免疫系器官である脾臓胸腺消化器系小腸膵臓循環器系心臓泌尿器系腎臓、及び内分泌系副腎などの各臓器においてV-1 mRNAの発現が観察される。また、脳におけるV-1 mRNAの発現は神経細胞局在し、その発現量は神経細胞によって変化していること、及び、中枢及び末梢神経系神経細胞に広範に分布しているV-1蛋白質も細胞により発現レベル相違があることが解明されている(Mol. Brain Res., 40, 203-213 (1996))。

0007

さらに本発明者らは、神経細胞分化モデル実験系であるラット副腎由来PC12D細胞を用いてV-1遺伝子の過剰発現実験を実施し(J. Biol. Chem., 273, 27051-27054 (1998))、その結果、V-1蛋白質が、カテコールアミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素(Tyrosine hydroxylase; TH)、芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase; AADC)及びドーパミンβ−水酸化酵素(Dopamine β-hydroxylase; DBH)のmRNA発現を促進し、ドーパミンやノルアドレナリン生合成著明に増大させる活性を持つこと、すなわち、V-1蛋白質がカテコールアミン生合成促進因子であることを示した。

0008

しかし、上記のとおり、V-1蛋白質が生体内神経伝達物質として重要なカテコールアミンに深く関わる因子であること等は解明されていたものの、V-1蛋白質の発現は生体内において非常に広範に認められており、この蛋白質が持つ機能や発現等の詳細な解明は未だ不十分であった。

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、生物個体のストレス状態を検出する方法、さらに詳しくは、生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量に基づいて、個体のストレス状態を検出する方法を提供するためになされたものである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記のような現状に鑑みて研究を重ねた結果、個体がストレスに暴露されると交感神経系臓器のV-1蛋白質発現が増加すること、および、盲腸においても低酸素ストレスによってV-1蛋白質発現の上昇が引き起こされること、すなわち、生物試料中のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変動を調べれば個体のストレス状態を検出できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。

0011

すなわち本発明によれば、(1)生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値に基づいて、個体のストレス状態を検出することを特徴とするストレス状態の検出方法、(2)V-1遺伝子発現量の測定がNorthern Blot法で行われることを特徴とする上記(1)に記載の方法、(3)V-1蛋白質量の測定が免疫学的測定法で行われることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方法、(4)ストレスに暴露された個体または生物試料に被検物質投与し、該個体または生物試料におけるV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変化を検出し、V-1遺伝子発現またはV-1蛋白質の存在が、消失または低下した場合に、該物質がストレス状態を緩和させる効果を有すると判定することを特徴とする、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬スクリーニング方法、(5)上記(4)に記載の方法によって選択される物質を製剤化することを特徴とする、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬の製造方法、(6)ストレスに起因する疾患が消化性潰瘍または循環器疾患である、上記(4)または(5)に記載の方法、(7)上記(4)に記載の方法によって選択されるストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬、(8)少なくともV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定するための試薬を含み、上記(1)に記載のストレス状態の検出方法に用いるためのキット、が提供される。

発明を実施するための最良の形態

0012

以下、本発明を更に詳細に説明する。なお、本明細書において、Northern Blot法等の分子生物学的な手法、蛋白質の抽出、Western Blot法等の蛋白質化学的な手法等は、特に明記しない限り、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(T. Maniatis et al., Cold Spring Harbor Laboratory (1982))、新生化学実験講座(日本生化学会編;東京化学同人)等の実験書に記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。

0013

本明細書において、ストレスとは、医学的には、生物個体(個体)にある刺激(ストレッサー)が加えられたときにその個体が示す防御反応を意味する。ストレスは大きく分けて、(1)精神的ストレス、(2)物理的ストレス、(3)化学的ストレス、(4)生物的ストレス等に分類される。それぞれの誘因(ストレッサー)としては、(1)人間関係のトラブル、精神的苦痛、緊張、不安等、(2)騒音や高温等、(3)酸素の欠乏または過剰、薬剤等、(4)病原菌の侵入等、が挙げられ、これらの刺激に対する反応が個体の身体・精神・行動等に現れることが知られている。刺激の量や時間の過重で個体の適応能力を越えると身体の変調をきたす恐れが生じ、ストレスに起因する種々の疾患を引き起こすことがあるため、ストレスにさらされている個体の状態(以下、これを「ストレス状態」と称することがある)を把握することは重要である。個体のストレス状態を把握することにより、ストレスに起因する疾患の予防などを目的とした日常的な健康管理、トレーニング管理等に役立てることができる。また、ストレス状態を検出すれば、その結果に基づいて、ストレスに起因する疾患の危険度および/または進行状態を検出することもできる。

0014

ストレスに起因する種々の疾患のうち、例えば、精神的ストレスおよび/または物理的ストレスに起因するとされる疾患としては、消化性潰瘍、本態性高血圧症神経性狭心症偏頭痛腰痛症メニエール症候群不眠症自律神経失調症、抑鬱状態、神経症等が挙げられるが、この中でも特に胃潰瘍十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍は発症頻度が高く、本発明の方法を用いて危険度および/または進行状態を検出する対象として好ましい。

0015

また、化学的ストレスに起因する疾患としては、例えば、酸素欠乏低酸素状態)に起因する疾患等が挙げられる。個体が低酸素状態にさらされた場合に起こる疾患としては、高山病潜水病等が挙げられ、組織が低酸素状態にさらされる疾患の例としては、脳血管疾患心血管疾患等の循環器疾患、老人性虚血等が挙げられる。この中でも、本発明の方法を用いて危険度および/または進行状態を検出する対象としては、循環器疾患が好ましい。

0016

本発明のストレス状態の検出方法は、生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量に基づいて生物個体のストレス状態を検出することを特徴とする方法である。ここで、V-1遺伝子とは、V-1蛋白質をコードする遺伝子を意味する。V-1遺伝子およびV-1蛋白質の詳細は、Eur. J. Biochem., 207, 615-620 (1992)、Mol.Brain Res., 40, 203-213 (1996)、J. Biol. Chem., 273, 27051-27054 (1998)等に開示されている。個体中のV-1遺伝子発現量およびV-1蛋白質量は、個体のストレス状態により変化する。従って、個体より得られる生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、その値により個体のストレス状態を検出・判定することができる。ここで、個体とは、ストレッサーによって何らかのストレス反応を示すものであって、V-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変化が検出可能なものであればよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット等の哺乳類が挙げられる。用いられる生物試料としては、ストレス状態を検出する個体から得られたいかなる試料でもよいが、中でも、血液、尿、唾液等の体液、また、臓器、組織、細胞やそれらの抽出液等が好ましく用いられる。

0017

これらの生物試料中の測定すべきV-1遺伝子またはV-1蛋白質は、遺伝子または蛋白質そのものであっても、それらに由来する部分断片であってもよい。V-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の測定方法としては、それ自体公知通常用いられる方法が挙げられる。V-1遺伝子発現量の測定には、例えば、Northern Blot法等が、V-1蛋白質量の測定には、免疫学的測定法、例えば、Western Blot法、ELISA法などの酵素免疫測定法放射免疫測定法等が好ましく用いられる。これらの測定法の詳細は、前記した論文等に開示されている。

0018

前記のとおり、V-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量は個体が、刺激(ストレッサー)が加えられる、すなわち、ストレスに暴露されることにより変化するため、生物試料のこれらの値を測定し、該測定値に基づいて個体のストレス状態を検出することができる。すなわち、あらかじめ特定のストレス状態にある個体から得られた生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定しておき、この測定値と被検個体から得られた生物試料の測定値とを比較したり、ストレスに暴露された個体と暴露されていない個体の生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、その結果を比較すれば、個体のストレス状態の程度を知ることができる。

0019

また、生物試料のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の測定値に基づいて個体のストレス状態を判定し、それに基づいてストレスに起因する疾患の危険度および/または進行状態を検出することができる。例えば、あらかじめ特定の疾患に罹患している個体から得た生物試料を用いてV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定し、該測定値と疾患の危険度および/または進行状態とを関連付けた検量線数値表等を作成しておき、これを用いて、目的の個体におけるV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の測定値に基づき該疾患の危険度および/または進行状態を検出することができる。

0020

すなわち、本発明の方法により、刺激(ストレッサー)が加えられた個体のストレス状態、または、ストレスに起因する疾患の危険度および/または進行状態の検出を、煩雑な検査等を行うことなく、該個体から得られた生物試料を用いて簡便に行うことができるため、個体に与える負担が少なく特別な検査機器等も必要としない。検出された結果は、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療の指標として用いることができる他、日常的な生活管理やトレーニング管理等にも役立てることができる。

0021

本発明の検出方法を用いて、前記したストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬のスクリーニングを行うことができる。すなわち、ストレスに暴露された個体または生物試料に被検物質を投与し、該個体または生物試料におけるV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変化を検出して、V-1遺伝子発現またはV-1蛋白質の存在が消失または低下した場合に、該物質がストレス状態を緩和させる効果を有すると判定することにより、被検物質のスクリーニングを行うことができる。

0022

スクリーニングに用いるストレスに暴露された個体や生物試料としては、刺激(ストレッサー)が加えられることによりV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変化が測定・検出できるものであればいかなるものでもよいが、例えば、実験用ラット、マウス、モルモット等に実験的に刺激(ストレッサー)を与えてストレスに暴露させた個体を用いることができる。また、生物試料としては、実験用ラット、マウス、モルモット等から摘出した各種の臓器、組織、細胞等が挙げられる。具体的には、例えば、ラットの副腎、輸精管、モルモットの盲腸紐等が好ましい。

0023

実験的に個体をストレスに暴露させる方法としては、例えば、水浸拘束法、薬剤投与法、低酸素状態にさらす方法等が挙げられる。特に実験的に刺激(ストレッサー)を与えて消化性潰瘍を罹患させる方法としては、Watanabe K.らの方法(Folia Pharmacol. Jpn., 114, 141-148(1999))等が好ましく用いられる。生物試料をストレスに暴露させる方法としては、例えば、低酸素状態にさらす方法、薬剤投与法等を用いることができる。

0024

個体のV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量は、個体から得られる生物試料、例えば、前記した血液や尿等の体液、臓器、組織、細胞やそれらの抽出液等について、前記した方法によって測定すればよい。個体の代わりに生物試料を用いる場合にも、同様にV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定すればよい。用いる被検物質としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物合成化合物発酵生産物細胞抽出液植物抽出液動物組織抽出液等が挙げられ、これらの物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。個体に被検物質を投与する方法としては、例えば、経口投与静脈注射等の通常用いられる公知の方法が挙げられ、被検物質の性質等に合わせて適宜選択すればよい。また、被検物質の投与量についても、投与方法、被検物質の性質等に合わせて適宜選択することができる。生物試料に被検物質を投与する方法としては、臓器等の場合は栄養液等に被検物質を添加する方法、細胞等の場合は培養上清に被検物質を添加して培養する方法等が挙げられる。被検物質の添加量は、体液の種類や組成、細胞の培養状態、または被検物質の性質等により適宜決定すればよい。

0025

かくして被検物質を投与した個体または生物試料を用いて、V-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の測定を行い、測定値に基づいて、被検物質のストレス状態の緩和作用についてスクリーニングを行うことができる。すなわち、個体または生物試料中のV-1遺伝子発現またはV-1蛋白質の存在が被検物質の投与により消失または低下した場合に、該物質がストレス状態を緩和させる効果を有すると判定することができる。効果の判定を行う際には、被検物質を投与しない非投与群との比較を行うことが好ましい。

0026

かくして得られるストレス状態を緩和させる効果を有すると判定された物質は、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬として用いることができる。また、上記のスクリーニング方法で得られた物質から誘導される化合物も同様に用いることができる。上記スクリーニング方法で選択された物質は、それ自体既知の方法により、さらに必要に応じて試験管内や生体内で薬理学的または生理学的性質を調べ、所望の活性を有する物質を選択することにより、実際に医薬として応用可能な物質を得ることができる。

0027

これらの物質は塩を形成していてもよく、水和物並びに溶媒和物等であってもよい。該物質の塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などの薬学的に許容し得る塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩カリウム塩などのアルカリ金属塩カルシウム塩マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミントリエチルアミンピリジンピコリン、2,6−ルチジンエタノールアミンジエタノールアミントリエタノールアミンシクロヘキシルアミンジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸臭化水素酸硫酸リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸酢酸プロピオン酸フマル酸シュウ酸酒石酸マレイン酸クエン酸コハク酸リンゴ酸メタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸安息香酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニンリジンオルチニンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸グルタミン酸などとの塩が挙げられる。

0028

上記の方法を用いて選択された物質は、それ自体単独で前記のストレスに起因する疾患、例えば、消化性潰瘍、循環器疾患等の患者に投与することができるが、これらの有効成分の1種又は2種以上を混合して投与することもできる。また、薬理学的に許容される製剤用添加物等を用いて該物質を医薬品組成物として製剤化し、これを投与するのが好ましい。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤カプセル剤顆粒剤細粒剤散剤丸剤マイクロカプセル剤リポソーム製剤トローチ下剤液剤エリキシル剤乳剤懸濁剤等として経口的に、あるいは無菌水性液もしくは油性液として製造した注射剤や、座剤、軟膏貼付剤等として非経口的に使用できる。これらは、例えば、該物質を生理学的に認められる担体香味剤賦形剤ベヒクル防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態混和し、充填又は打錠等の当業界で周知の方法を用いて製造することができる。これらの医薬品組成物における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。

0029

例えば、錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、ゼラチンコーンスターチトラガントアラビアゴム等の結合剤、結晶性セルロース等の賦形剤、セルロースマンニトール、又はラクトース等の充填剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の膨化剤、澱粉ポリビニルポリピロリドン澱粉誘導体、又はナトリウム澱粉グリコラート等の崩壊剤ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤ショ糖乳糖又はサッカリン等の甘味剤ペパーミントアカモノ油又はチェリー等の香味剤等が用いられる。また、錠剤は必要に応じて腸溶性コーティング剤等を用いてコーティングを施すこともできる。カプセルについては、前記の添加剤にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。

0030

また例えば、注射剤として用いる無菌医薬品組成物は、注射用水のようなベヒクル中の活性物質胡麻油、椰子油等の天然産出植物油等を溶解又は懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム等)等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコールエタノール等)、ポリアルコールプロピレングリコールポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤ポリソルベート80TM、HCO−50等)等と併用することができる。油性液としては、例えば、ゴマ油大豆油等が用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジルベンジルアルコール等と併用することができる。また、上記の医薬品組成物には、例えば、緩衝剤リン酸塩緩衝液酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤塩化ベンザルコニウム塩酸プロカイン等)、安定剤(ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(ベンジルアルコール、フェノール等)、及び酸化防止剤等を配合してもよい。かくして調製される注射用の水性液は、通常、該物質を上記のような媒体に溶解させて濾過滅菌してから、適当な滅菌済みバイアル又はアンプルに充填して製造される。安定性を高めるために、該医薬品組成物を凍結させた後にバイアル中の水を真空下で除去してもよい。油性液についても水性液の場合と実質的に同様に製造できるが、該化合物を上記媒体に懸濁させた後にエチレンオキシド等により滅菌することによって好適に製造できる。

0031

かくして得られる医薬品組成物は、例えば、ヒトやヒト以外の動物に対して、前記したようなストレスに起因する疾患、例えば、消化性潰瘍、循環器疾患等の予防又は治療薬として投与することができる。該組成物に含まれる前記化合物の投与量は、対象疾患、症状、対象臓器投与対象、投与方法等により適宜決定して用いることができる。また、一日の投与量を一〜数回に分けて投与するのが望ましい。

0032

本発明のキットは、少なくともV-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量を測定するために用いる試薬を含み、上記したストレス状態の検出を行うために用いるものである。該キットを用いれば個体のストレス状態の検出をより簡便に行うことができ、その結果を、ストレス状態の日常的な管理やトレーニング管理、緊急検査等に好適に利用できる。

0033

該キットは、本発明の検出方法を行うことができるものであれば、いかなる構成のものでもよい。例えば、ELISA法を用いてV-1蛋白質量を検出する場合、少なくとも抗V-1蛋白質抗体と酵素標識された二次抗体を含み、その他に生物試料中のV-1蛋白質(抗原)を吸着させるための固相酵素基質希釈液洗浄液などの緩衝液等を含んでいてもよい。また、V-1遺伝子発現量を測定する場合、例えば、Northern Blot法を行うために必要な試薬類を含む。これらのキットは、それ自体既知の試薬等を組み合わせて作製することができる。

0034

以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例より何ら限定されるものではない。
実施例1.V-1蛋白質の発現量に及ぼす水浸拘束ストレスの影響
個体に胃潰瘍を引き起こすモデル実験として知られている水浸拘束実験を用いて、ストレスにより個体に生じる変化を検討した。水浸拘束実験は、Jap. J. Pharmacol., 18, 9 (1968)の記載に準じて行った。
(1)水浸拘束実験
イスター系雄ラット(生後約50日)を身動きできないストレスケージ夏目製作所製)に拘束し、首まで23℃の水中に浸かるように固定した。水中に固定後、1および3時間後にラットをクロロホルム吸入麻酔し、頸動脈から放血致死させ、交感神経系臓器である副腎および輸精管を速やかに摘出し、液体窒素で凍結して、-80℃で保存した。対照としては、水浸拘束によるストレスにさらされていないウイスター系雄ラット(生後約50日)を上記(1)と同様の方法で麻酔・致死させて、摘出した各臓器を凍結保存したものを用いた。

0035

(2)V-1蛋白質の検出および定量
上記(1)で調製した各試料中のV-1蛋白質量を、Western Blot法を用いて検出および定量した。まず、上記(1)で調製した各試料(水浸拘束ラットおよび対照ラットの副腎、輸精管)を、それぞれガラスホモジナイザー(WHEATON社製)を用いて組織が液状に均一になるまで手でホモジナイズし、14,000×gで15分間遠心した。遠心後、各試料の上清40μg蛋白質量をそれぞれ分取して、18%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(10-20mA、2時間)を行った。次いで、SDS-PAGE後のゲル中の蛋白質を、あらかじめ氷冷したBlotting Buffer(20mM Tris-HCl、192mM Glycine、0.01% SDS、20% Methanol)を満たしたミニバッファトランスファー装置バイオクラフト社製)を用いてPolyscreenPVDFTransfer Membrane(MEMLife science products社製)に転写した。転写は、氷冷しながら、60Vで3時間行った。

0036

次に、転写後の膜を用いて、通常用いられるWestern blot法によりV-1蛋白質の検出を行った。すなわち、得られた膜にV-1蛋白質抗体(Mol. Brain Res., 40, 203 (1996))およびHorse-radish-labelled protein A(Amersham PharmaciaBiotech社製)をそれぞれ順に反応させ、これに検出試薬としてSuperSignal West Pico(PIERCE社製)を反応させて、発せられたシグナルによりX線フィルム感光させて現像した。

0037

その結果、水浸拘束ストレスを1時間または3時間与えられたラットにおいて、輸精管では、対照ラットと比較して1時間でV-1蛋白質量が約2倍に増加しており、3時間後もほぼ同レベルに増加したままであった。副腎では、水浸拘束1時間後にはV-1蛋白質量の顕著な変化は認められなかったが、3時間後には約2倍に増加していた。従って、水浸拘束ストレスによるV-1蛋白質上昇は、副腎に比較して輸精管の方がより顕著に観察されることが解った。図1に、輸精管および副腎におけるV-1蛋白質量の変化を検出したWestern Blot法による電気泳動写真を示した。

0038

(3)抗潰瘍薬による胃潰瘍形成の抑制実験
水浸拘束ストレスによる胃潰瘍形成とV-1蛋白質量との相関を検討するために、抗潰瘍薬であるヒスタミン2型受容体拮抗薬の一つとして知られるファモチジンを用いた実験を行った。まず、1日絶食させたラットを用意し、ファモチジン投与群と非投与群に分け、投与群については水中に固定する15分前にファモチジン(SIGMA社製)10 mg/Kgを皮下投与してから、両群を上記(1)と同様に水中に3時間固定して水浸拘束ストレスを与えた。3時間経過後、それぞれ速やかに麻酔・致死させて輸精管を摘出し、液体窒素で凍結して-80℃に保存した後に、上記(1)と同様に処理を行ってSDS-PAGE用試料とした。Western Blot法によるV-1蛋白質の検出および定量は、上記(2)と同様に行った。また、両群のラットを開腹して胃を摘出し、胃の長腕方向に縦に切開して胃内部を観察し、潰瘍の有無を確認して写真撮影を行った。対照としては、普通に食餌させたラット(naive control)と、1日絶食させたラット(starvation control)から、いずれもファモチジンの前投与および水浸拘束は行わずに、輸精管および胃を摘出して用いた。

0039

その結果、ファモチジンを投与せずに水浸拘束ストレスを与えたラット(constrain)では、3時間後には、過去の報告(Folia Pharmacol. Jpn., 114, 141-148(1999))と同様に胃潰瘍形成の指標となる胃幽門部出血幽門部全域に観察された。これに対し、ファモチジン投与群(constrain with famotidine)では、胃幽門部の出血はほとんど観察されなかった。図2に、naive control、starvation control、constrain、constrain with famotidineのラットそれぞれの胃内部の写真を示した。

0040

また、Western Blot法による解析において、ファモチジン非投与群ではV-1蛋白質レベルが明らかに増加していたのに対して、ファモチジン投与群では水浸拘束ストレスを与えてもV-1蛋白質の増加が観察されなかった。このことから、ファモチジンが胃潰瘍の形成を抑制するだけでなく、水浸拘束ストレスによるV-1蛋白質レベルの増加を抑制する効果も有することが示された。さらに、水浸拘束ストレスによるV-1蛋白質の増加の経時変化は、胃を切開して確認した胃潰瘍形成の経時変化とほぼ一致することが解った。図3に、各ラットの輸精管におけるV-1蛋白質量の変化をWestern Blot法により解析した結果を示した。

0041

V-1蛋白質の発現上昇によりカテコールアミン生合成が促進されることが報告されていることから(J. Biol. Chem., 273, 27051 (1998))、水浸拘束ストレスによるV-1蛋白質発現増加は交感神経系の緊張をもたらすことが推測される。従って、抗潰瘍薬のファモチジンはV-1蛋白質増加を抑制することにより交感神経緊張緩解し、胃潰瘍形成を抑制する効果を有することが示唆された。

0042

実施例2.V-1蛋白質の発現量に及ぼす低酸素ストレスの影響
モルモット盲腸紐は酸素依存性が高く、収縮反応酸素濃度に強く依存するため、低酸素によって機能障害を受けやすいことが知られている(J. Physiol. Lond., 424, 41-56 (1990))。そこで、モルモット盲腸紐を用いて、低酸素ストレス暴露の実験を行った。
(1)低酸素ストレス実験
まず、モルモットを頚椎脱臼後、頸動脈から放血させて致死させ、直ちに盲腸紐を摘出した。摘出した盲腸紐は絹糸ステンレス棒に固定し、ビーカー内で50〜100mlの栄養液(136.8mM NaCl、5.4mM KCl、2.0mM CaCl2、1.0mM MgCl2、11.9mM NaHCO3、5.6mMブドウ糖)中に盲腸紐全体が浸るように保持した。これを37℃の恒温水槽インキュベートし、好気的条件(対照)としては95%酸素5%二酸化炭素低酸素条件としては95%窒素5%二酸化炭素を、それぞれ混合ガスボンベを用いて通気した。各々の条件でインキュベート後、30、60および120分でそれぞれ盲腸紐を取り出して直ちに液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。

0043

(2)V-1蛋白質の検出および定量
上記実施例1.の(2)と同様に、Western Blot法によるV-1蛋白質の検出および定量を行った。すなわち、上記(1)で調製した各試料(盲腸紐)を、それぞれガラスホモジナイザー(WHEATON社製)用いて筋肉の固まりが無くなるまでを目安に手でホモジナイズし、14,000×gで15分間遠心した。遠心後、各試料の上清40μg蛋白質量をそれぞれ分取し、4-20%ポリアクリルアミドグラディエントゲル(バイオメイト社製)にアプライしてSDS-PAGE(20mA、2時間)を行った。次いで、SDS-PAGE後のゲル中の蛋白質を、あらかじめ氷冷したBlotting Buffer(20mM Tris-HCl、192mM Glycine、0.01% SDS、20% Methanol)を満たしたミニバッファートランスファー装置(バイオクラフト社製)を用いてPolyscreenPVDFTransfer Membrane(MEMLife science products社製)に転写した。転写は、60Vで3時間、氷冷しながら行った。

0044

次に、転写後の膜を用いて、通常用いられるWestern blot法によりV-1蛋白質の検出を行った。すなわち、得られた膜にV-1蛋白質抗体(Mol. Brain Res., 40, 203 (1996))およびHorse-radish-labelled protein A(Amersham PharmaciaBiotech社製)をそれぞれ順に反応させ、これに検出試薬としてSuperSignal West Pico(PIERCE社製)を反応させて、発せられたシグナルによりX線フィルムを感光させて現像した。現像したフィルム画像の取り込みおよびシグナルの定量は、LAS-1000 plus(FUJIFILM社製)を用いて行った。

0045

その結果、好気的条件下(対照:control)では摘出モルモット盲腸紐のV-1蛋白質量はインキュベート後30分および120分においてほぼ一定であった。一方、盲腸紐を低酸素条件に暴露した場合(hypoxia)は、30分後にはV-1蛋白質量の増加が認められ、2時間後には対照の約1.5倍に増加することが解った。図4にV-1蛋白質量の経時変化のグラフを示した。縦軸はV-1蛋白質量(%;通気30分後のcontrolのV-1蛋白質量を100%とする)、横軸はインキュベート時間(分)である。

0046

(3)V-1mRNAの検出および定量
次に、Northern Blot法を用いて、V-1mRNA発現量の検出および定量を行った。まず、上記(1)で調製した各試料(盲腸紐)のうち、好気的条件下(対照)および低酸素条件下で60分のインキュベートを行った盲腸紐を用いて、ChomcyznskiおよびSacchiらの方法(AGPC法)(Annal. Biochem., 162, 156-159 (1987))に従ってtotal RNAを抽出した。得られた各totalRNA溶液から10μg相当量を分取して、1%アガロースゲルに供し、電気泳動(45V、6時間)を行った後、ニトロセルロース膜の上にアガロースゲルをのせ、さらに10枚以上の濾紙を重ねてのせて、1kgのおもりで圧力をかけながら一昼夜放置し、ニトロセルロース膜(Schleisher&Schuell社製)に転写した。次に、32PラベルしたV-1cDNAプローブ(J.Biol. Chem., 269, 9946-9951 (1994))を用いてハイブリダイゼーション(43℃で一晩放置)を行った。得られたニトロセルロース膜によりX線フィルム(Kodak社製)を感光させて、V-1 mRNAの検出を行った。

0047

その結果、盲腸紐を低酸素条件下に暴露させた場合(N2 60min)には、好気的条件下(O2 60min)で処理した場合に比べて、V-1mRNAの発現量がインキュベート後1時間で明らかに上昇することが解った。好気的条件下および低酸素条件下で1時間インキュベートを行った試料のNorthern Blot法による解析の結果を、図5に示した。

0048

1時間という短時間でmRNAの変化が観察されたことから、V-1蛋白質の低酸素ストレスに対する代謝応答が非常に速いことが確認された。すなわち、モルモット盲腸紐におけるV-1蛋白質量の増加は、転写活性の上昇に起因するmRNA翻訳レベルの増大を介しており、V-1蛋白質は転写調節の変化により低酸素ストレスに早期に反応する因子であることが解った。

0049

これらの結果から、V-1遺伝子発現およびV-1蛋白質量は時間もしくは分単位で速やかにストレスに応答して変化することが明らかになった。また、これらの変化は、全身を水中に拘束されることによる精神的および肉体的なストレスや、細胞レベルでの低酸素暴露のような物理化学的ストレスなど、ストレスの種類に関わらず同様に検出できることが解った。すなわち、V-1遺伝子発現量またはV-1蛋白質量の変動を調べれば、個体のストレス状態を検出できることが示された。

発明の効果

0050

本発明の方法を用いれば、個体のストレス状態の検出や、ストレスに起因する疾患の危険度および/または進行状態の検出を、該個体から得られる生物試料を用いて簡便に行うことができる。また、ストレスに起因する疾患の予防および/または治療薬のスクリーニングを行うことができる。

図面の簡単な説明

0051

図1水浸拘束ストレスを与えたラットの輸精管および副腎における、V-1蛋白質量の経時的変化をWestern Blot法を用いて検出した電気泳動の写真である。
図2水浸拘束ストレスによる胃潰瘍形成に対するファモチジン前投与の効果を、ラットの胃を切開して確認した写真である。
図3水浸拘束ストレスによる胃潰瘍形成に対するファモチジン前投与の効果を示すために、ラット輸精管におけるV-1蛋白質量の変化をWestern Blot法を用いて検出した電気泳動の写真である。図中、「14-3-3β protein」は内部標準物質を、「V-1(ng)」はpositive controlとして用いた「組換えV-1蛋白質(蛋白質量)」を示す。
図4低酸素ストレスを与えたモルモット盲腸紐におけるV-1蛋白質量の変化を示したグラフである。図中、白丸は好気的条件(control)、黒丸は低酸素条件(hypoxia)を示し、縦軸はV-1蛋白質量(%;通気30分後のcontrolのV-1蛋白質量を100%とする)、横軸はインキュベート時間(分)を示す。
図5低酸素ストレスを与えたモルモット盲腸紐におけるV-1mRNAの変化をNorthern Blot法を用いて検出した写真である。図中、「O2 control」は好気的条件(対照)、「N2 60min」は低酸素条件を示す。

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