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技術 脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法

出願人 大日本住友製薬株式会社
発明者 加藤茂明須澤美幸
出願日 2001年5月21日 (17年9ヶ月経過) 出願番号 2001-151658
公開日 2003年1月15日 (16年1ヶ月経過) 公開番号 2003-014738
状態 未査定
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析 突然変異または遺伝子工学 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード 高分子量域 単位配列 研究科 C領域 B領域 抑制機構 D領域 領域構造
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図面 (6)

課題

成長因子サイトカイン等に比べて、より安全且つ有効に未分化細胞脂肪細胞への分化を抑制することができる脂肪細胞分化抑制物質スクリーニング方法の提供、並びにより副作用の少ない抗炎症性物質のスクリーニング方法の提供。

解決手段

被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させ、両条件下におけるNFκBとPPARγの結合の度合を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法。

概要

背景

骨髄内の多分化能を持つ間葉系細胞は、脂肪細胞骨芽細胞軟骨細胞線維芽細胞などの細胞分化する[J. Cell. Biochem., 58, 393-402 (1995); Science, 289, 1501-1504 (2000)]。幹細胞バランスのとれた分化は、骨髄環境の適正な状態の維持に必須である。しかしながら、このバランスの調節機構は現在までほとんど知られていない。

一方、骨髄は老化とともに脂肪分が増加することが知られている。これは、「脂肪化」と呼ばれる現象であるが、この脂肪髄化とともに骨芽細胞系列の数が減少していくことが報告されており、若年齢と比較した場合の老年齢における骨形成の低下・骨量の減少の原因の一つであると考えられている[BIO Clinica 16(3), 227-32 (2001)]。つまり、骨粗鬆症変形性関節症骨折治癒遅延などの老化に伴う骨・軟骨疾患病態に、骨髄における脂肪細胞分化が大きく関わっているということを意味する。

脂肪細胞の分化促進において、ペルオキシソーム増殖活性化受容体γ(PPARγ)が重要な役割を果たしていると考えられている[Genes Dev. 14, 1293-307(2000), Mol. Cell 4, 597-609 (1999), Mol. Cell 4, 611-7 (1999)]。PPARγの脂肪細胞分化促進作用について、これまでに、脂肪細胞分化におけるマーカー遺伝子発現調節領域にPPARγが認識・結合し得るシスエレメント(PPRE)が存在し、PPARγはレチノイドX受容体α(RXRα)とヘテロ二量体を形成してこの配列に結合することによって、直接的にマーカー遺伝子の発現を促進すること[Cell Biochem. Biophys. 32 Spring, 187-204 (2000)]、線維芽細胞株にPPARγを過剰発現させ、PPARγアゴニストを添加すると脂肪細胞に分化すること[Cell 79(7), 1147-56 (1994)]、PPARγアゴニストによって骨髄未分化細胞株が脂肪細胞に分化すること[J. Biol. Chem. 270(22), 12953-6 (1995)]等が報告されており、PPARγは脂肪細胞分化を直接的に司る転写因子であることが示されている。

一方、IGF、EGF、TGFβ等の成長因子IL-1、TNFα等のサイトカイン類が脂肪細胞の分化を阻害することが知られていた[J. Clin. Invest., 89, 223-33 (1992); J. Cell. Biol., 108, 1105-13 (1989)等]。このうち、IGFやEGFは、それらの作用により活性化されたMAPキナーゼMAPK)がPPARγのN末端に存在するA/B領域リン酸化することで、PPARγのリガンド依存的転写活性化間接的に抑制することが報告されている[Science 274, 2100-3 (1996)]。しかしながら、MAPKはIL-1、TNFα、TGFβなどによっては活性化されないことから、IGFやEGFとは異なる分化抑制機構の存在が示唆された。

そこで、本発明者らは、PPARγの脂肪細胞分化促進作用に対するIL-1、TNFα、TGFβ等による負の調節機構の下流に位置するシグナル因子の同定を試みた。その結果、IL-1やTNFαは、TAK1/TAB1、NFκB誘導性キナーゼ(NIK)、IκBキナーゼ(IKK)と続くキナーゼカスケードを活性化することにより、NFκBを活性化して、PPARγによる脂肪細胞特異的遺伝子のリガンド依存的な転写活性化を抑制し、それによって脂肪細胞の分化を抑制していることが明らかとなった。

概要

成長因子やサイトカイン等に比べて、より安全且つ有効に未分化細胞の脂肪細胞への分化を抑制することができる脂肪細胞分化抑制物質スクリーニング方法の提供、並びにより副作用の少ない抗炎症性物質のスクリーニング方法の提供。

被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させ、両条件下におけるNFκBとPPARγの結合の度合を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法。

目的

従って、本発明の目的は、PPARγの標的DNA(すなわち、PPRE)への結合を直接的に制御する物質を同定し、当該物質とPPARγとの相互作用を利用して、PPARγの転写活性化作用を制御する物質、ひいては未分化細胞の脂肪細胞への分化及び脂肪細胞からの脱分化を制御する物質をスクリーニングする系を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させ、両条件下におけるNFκBとPPARγの結合の度合を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質スクリーニング方法

請求項2

NFκBとPPARγの結合の度合を測定する手段が、NFκB-PPARγ複合体量を測定するものである請求項1記載の方法。

請求項3

NFκBとPPARγの結合の度合を測定する手段が、PPREに結合したPPARγ量を測定するものである請求項1記載の方法。

請求項4

PPREに結合したPPARγ量を測定する手段がゲルシフトアッセイである請求項3記載の方法。

請求項5

NFκBとPPARγの結合の度合を測定する手段が、PPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子発現指標とするものである請求項1記載の方法。

請求項6

PPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む発現ベクターを導入され、且つNFκB、PPARγ及びRXRを発現するように操作された哺乳動物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下にPPARγのアゴニストを含む培地中で培養し、両条件下における該哺乳動物細胞内での該レポーター遺伝子の発現を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法。

請求項7

NFκB(p65)又はPPARγの一方を、転写因子DNA結合ドメインとの融合蛋白質として発現させるベクター、他方を転写因子の転写活性化ドメインとの融合蛋白質として発現させるベクター、及び該DNA結合ドメインにより認識・結合されるシスエレメントを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む発現ベクターを導入された宿主細胞を、被験物質の存在下及び非存在下に培地中で培養し、両条件下における該宿主細胞内での該レポーター遺伝子の発現を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法。

技術分野

aggacaaagg tca 13

背景技術

0001

本発明は、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質スクリーニング方法に関する。詳細には、本発明は、NFκBとPPARγの結合の度合指標とすることを特徴とする脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法に関する。

0002

骨髄内の多分化能を持つ間葉系細胞は、脂肪細胞骨芽細胞軟骨細胞線維芽細胞などの細胞分化する[J. Cell. Biochem., 58, 393-402 (1995); Science, 289, 1501-1504 (2000)]。幹細胞バランスのとれた分化は、骨髄環境の適正な状態の維持に必須である。しかしながら、このバランスの調節機構は現在までほとんど知られていない。

0003

一方、骨髄は老化とともに脂肪分が増加することが知られている。これは、「脂肪化」と呼ばれる現象であるが、この脂肪髄化とともに骨芽細胞系列の数が減少していくことが報告されており、若年齢と比較した場合の老年齢における骨形成の低下・骨量の減少の原因の一つであると考えられている[BIO Clinica 16(3), 227-32 (2001)]。つまり、骨粗鬆症変形性関節症骨折治癒遅延などの老化に伴う骨・軟骨疾患病態に、骨髄における脂肪細胞分化が大きく関わっているということを意味する。

0004

脂肪細胞の分化促進において、ペルオキシソーム増殖活性化受容体γ(PPARγ)が重要な役割を果たしていると考えられている[Genes Dev. 14, 1293-307(2000), Mol. Cell 4, 597-609 (1999), Mol. Cell 4, 611-7 (1999)]。PPARγの脂肪細胞分化促進作用について、これまでに、脂肪細胞分化におけるマーカー遺伝子発現調節領域にPPARγが認識・結合し得るシスエレメント(PPRE)が存在し、PPARγはレチノイドX受容体α(RXRα)とヘテロ二量体を形成してこの配列に結合することによって、直接的にマーカー遺伝子の発現を促進すること[Cell Biochem. Biophys. 32 Spring, 187-204 (2000)]、線維芽細胞株にPPARγを過剰発現させ、PPARγアゴニストを添加すると脂肪細胞に分化すること[Cell 79(7), 1147-56 (1994)]、PPARγアゴニストによって骨髄未分化細胞株が脂肪細胞に分化すること[J. Biol. Chem. 270(22), 12953-6 (1995)]等が報告されており、PPARγは脂肪細胞分化を直接的に司る転写因子であることが示されている。

0005

一方、IGF、EGF、TGFβ等の成長因子IL-1、TNFα等のサイトカイン類が脂肪細胞の分化を阻害することが知られていた[J. Clin. Invest., 89, 223-33 (1992); J. Cell. Biol., 108, 1105-13 (1989)等]。このうち、IGFやEGFは、それらの作用により活性化されたMAPキナーゼMAPK)がPPARγのN末端に存在するA/B領域リン酸化することで、PPARγのリガンド依存的転写活性化間接的に抑制することが報告されている[Science 274, 2100-3 (1996)]。しかしながら、MAPKはIL-1、TNFα、TGFβなどによっては活性化されないことから、IGFやEGFとは異なる分化抑制機構の存在が示唆された。

発明が解決しようとする課題

0006

そこで、本発明者らは、PPARγの脂肪細胞分化促進作用に対するIL-1、TNFα、TGFβ等による負の調節機構の下流に位置するシグナル因子の同定を試みた。その結果、IL-1やTNFαは、TAK1/TAB1、NFκB誘導性キナーゼ(NIK)、IκBキナーゼ(IKK)と続くキナーゼカスケードを活性化することにより、NFκBを活性化して、PPARγによる脂肪細胞特異的遺伝子のリガンド依存的な転写活性化を抑制し、それによって脂肪細胞の分化を抑制していることが明らかとなった。

0007

しかしながら、NFκBの活性化がどのようなメカニズムでPPARγによる転写活性化を抑制するのか、NFκBのさらに下流に位置するシグナル因子が存在するのか等については、未だ不明のままであった。

0008

PPARγの分化促進作用を負に調節することにより、未分化細胞の脂肪細胞への分化を抑制する物質は、脂肪髄化に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等の骨疾患の予防及び治療に有効であるものと期待される。また、老化とともに全身的に脂肪が蓄積されていくが、それをも予防あるいは治療され得ると期待される。しかしながら、IGFやEGF等の成長因子やそれらを活性化する因子は発癌を誘発するリスクがあるので、長期的な使用には適していない。また、IGFやEGFはMAPKによるPPARγのリン酸化を介してPPARγの転写活性化作用を抑制するが、本抑制機構は標的DNAへのPPARγの結合を抑制するものではないため、他の刺激共存した場合に転写活性化が起こる可能性があり、厳密な意味での調節作用が期待できないおそれがある。

0009

一方、IL-1やTNFαは細胞膜上に受容体を有し、細胞内の多様なシグナルカスケードを調節することが知られている。細胞成長因子のように発癌のリスクを高めるという欠点は少ないが、炎症の惹起等の他への影響が懸念される。

0010

このように、シグナルカスケードの上流に位置する因子を用いた場合、標的以外の因子の活性化による副作用や、標的因子への作用が希釈されることによる効果の減少といった問題が生じる。従って、PPARγの標的遺伝子への結合を直接的に抑制する因子を同定することは、副作用が少なく低用量で効力を発揮し得るより安全な脂肪細胞分化制御物質を探索する手段を提供し得るという点で、極めて重要である。

課題を解決するための手段

0011

従って、本発明の目的は、PPARγの標的DNA(すなわち、PPRE)への結合を直接的に制御する物質を同定し、当該物質とPPARγとの相互作用を利用して、PPARγの転写活性化作用を制御する物質、ひいては未分化細胞の脂肪細胞への分化及び脂肪細胞からの脱分化を制御する物質をスクリーニングする系を提供することである。

0012

本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、NFκBがPPARγの標的DNAへの結合を抑制することにより脂肪細胞への分化を抑制していること、しかもNFκBはPPARγに直接結合することによりPPARγのDNA結合能を抑制していることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成するに至ったものである。

0013

即ち、本発明は、被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させ、両条件下におけるNFκBとPPARγの結合の度合を比較することを特徴とする、脂肪細胞分化制御物質のスクリーニング方法を提供する。当該方法は、NFκBとPPARγを反応系に提供する手段と、両者の結合の度合を測定する手段によって様々な実施態様をとることができる。

0014

即ち、NFκB及びPPARγを反応系に提供する手段としては、(i) それらを発現するように操作された宿主細胞から細胞抽出液として提供する方法、(ii) それらを発現するように操作された宿主細胞から分離精製して(例えば、適当なタグを有する融合蛋白質として発現するように操作された宿主細胞から、当該タグと親和性を有する担体を用いて分離精製して)提供する方法、(iii) それらをコードするDNAを含む発現ベクターから無細胞翻訳系を用いてインビトロ合成して提供する方法、(iv) それらを発現するように操作された宿主細胞内で反応を行わせる方法等が挙げられる。

0015

また、NFκBとPPARγの結合の度合を測定する手段としては、(i) NFκB-PPARγ複合体を直接測定する方法、(ii) PPREに結合するPPARγ量を指標として測定する方法、(iii) PPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定する方法、(iv) two-hybrid系を用いて測定する方法等が挙げられる。これらの各手段についての具体的態様は、以下の「発明の実施の形態」において詳述される。

発明を実施するための最良の形態

0016

本発明の脂肪細胞分化制御物質のスクリーニング方法は、同時に抗炎症性物質のスクリーニング方法としての側面をも有する。PPARγリガンドであるチアゾリジン誘導体プロスタグランジンJ2は、NFκBの活性化を抑制することで、TNFα等の炎症性サイトカインの刺激により誘導されるシクロオキシゲナーゼ−2(COX-2)の発現を阻害することなどで消炎作用を発揮することが知られていたが[例えば、J. Biiol. Chem. 275(36), 28173-9 (2000)等]、NFκB活性化抑制の機序については未だに不明のままであった。本発明によりPPARγとNFκBとが直接結合することが明らかとなったことから、PPARγリガンドはNFκB-PPARγ複合体の形成を通じてNFκBによる炎症誘起性遺伝子発現誘導を抑制することが示された。従って、本発明のスクリーニング法により選抜されるNFκBとPPARγの結合を増強し得る物質は、抗炎症性物質の有力な候補化合物でもあり得る。

0017

本発明は、脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法を提供する。本発明において「脂肪細胞分化制御物質」とは、PPARγへのNFκBの結合を増強(もしくは阻害)することによりPPARγのPPREへの結合を抑制(もしくは促進)し、それによってPPARγによる脂肪細胞特異的遺伝子の転写活性化を抑制(もしくは促進)し、もって未分化細胞の脂肪細胞への分化を抑制(もしくは促進)し、あるいは脂肪細胞からの脱分化を促進(もしくは抑制)し得る物質をいう。また、本発明において「抗炎症性物質」とは、NFκBとPPARγの結合を増強することにより、NFκBによる炎症誘起性遺伝子の発現誘導を抑制し、もって消炎作用を発揮し得る物質をいう。

0018

本発明において使用されるNFκBは、PPARγに結合してPPARγのPPREへの結合を抑制し得るものである限り、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来のNFκBであってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工突然変異体であってもよい。NFκBはホモあるいはヘテロ二量体を形成して働く転写因子として知られ、p100,p105がプロセシングを受けて機能するp50,p52と、C-Rel,V-Rel,p65,RelB,Dorsal,Difなどのプロセシングを受けないものとがある。RelB以外はホモあるいはヘテロ二量体を形成して働くが、RelBはp50又はp52とのヘテロ二量体を形成してのみ機能する。後記実施例に示されるように、PPARγと結合能を有するのはp65サブユニットのLZ-RHD領域であることから、本発明におけるNFκBはp65サブユニットのみであってもよく、また、LZ-RHD領域を有する限り、N末及び/又はC末欠失したフラグメントであってもよい。あるいは、p65と相同性の高い因子群(C-Rel,V-Rel,RelB,Dorsal,Dif等)で、PPARγとの結合能が確認された因子又はそのフラグメントであってもよい。さらに、本発明のNFκBは、His-tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。本明細書においては、p65、及びPPARγと結合能を有するp65と相同性の高い因子並びにそれらのフラグメントを包括して、以下、「NFκB(p65)」と略称することとする。

0019

本発明のスクリーニング系において、NFκBは、好ましくは、NFκBをコードする遺伝子を含む細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。NFκBをコードする遺伝子は、当該細胞に内在のNFκB遺伝子であってもよいし、所定の宿主細胞に公知の手法を用いて導入された、外来のNFκBをコードするDNAであってもよい。いずれの場合においても、当該細胞は、PPARγをコードするDNAを含む発現ベクターを導入されたものであることが好ましい。

0020

NFκBはまた、NFκBをコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S-Met等の標識アミノ酸を用いて標識NFκBを容易に調製することができる。

0021

本発明において使用されるPPARγは、NFκBと結合し得るものである限り、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来のPPARγであってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工の突然変異体であってもよい。PPARγはN末から順にA-Fの領域構造分類されるが、NFκBとの結合に必須の領域はN末のA/B領域、あるいはC領域であることから、本発明におけるPPARγは、当該いずれかの領域を有する限り他の領域の一部又は全部を欠失したフラグメントであってもよい。本発明のスクリーニング系がPPARγのPPREへの結合を指標とするものである場合、PPARγは、PPREを認識してこれに結合する部位であるC領域を必ず含む必要がある。また、本発明のスクリーニング系がPPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標とする場合、PPARγは、リガンド結合依存的に転写を促進する領域であるC末のE/F領域をさらに含む必要がある。さらにまた、本発明のPPARγは、His-tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。

0022

本発明のスクリーニング系において、PPARγは、好ましくは、PPARγをコードするDNAを含む発現ベクターを公知の手法により導入した宿主細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。当該宿主細胞は、NFκBを内因的に発現する哺乳動物細胞であるか、あるいは外来のNFκBをコードするDNAを含む発現ベクターがさらに導入された細胞であることが好ましい。

0023

PPARγはまた、PPARγをコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液や小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S-Met等の標識アミノ酸を用いて標識PPARγを容易に調製することができる。

0024

NFκB及びPPARγはまた、それらを発現するように操作された宿主細胞として提供されてもよく、この場合、当該宿主細胞自体が反応系を構成する。

0025

本発明の脂肪細胞分化制御及び/又は抗炎症性物質のスクリーニング方法は、被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させ、両条件下におけるNFκBとPPARγの結合の度合を比較することを特徴とする。被験物質の存在下でNFκBとPPARγの結合が有意に増強(もしくは阻害)されれば、PPARγによる脂肪細胞特異的遺伝子の転写活性化が有意に抑制(もしくは促進)されるので、当該物質は脂肪細胞分化抑制(もしくは促進)剤の有力な候補となる。また、被験物質の存在下でNFκBとPPARγの結合が有意に増強されれば、NFκBによる炎症誘起性遺伝子の転写活性化が有意に抑制されるので、当該物質は消炎剤の有力な候補ともなる。

0026

本発明の脂肪細胞分化制御物質のスクリーニング方法は、NFκB及びPPARγを反応系に提供する手段並びにNFκBとPPARγの結合の度合を測定する手段を変更することにより、種々の実施態様をとることができる。

0027

本発明のスクリーニング方法の第一の態様は、抗NFκB抗体及び/又は抗PPARγ抗体を用いて、あるいはNFκB又はPPARγ自体を標識して、NFκB-PPARγ複合体を直接測定することによりNFκBとPPARγの結合を調べるというものである。B/F(固液)分離を行うアッセイ系であって、NFκB又はPPARγがタグを有する融合蛋白質として提供される場合は、固相化抗体に代えて当該タグと親和性を有する担体を使用することもできる。例えば、His-tagとの融合蛋白質であれば磁性ニッケルビーズ等、GST融合蛋白質であればグルタチオン固相化樹脂等が担体として挙げられる。このようなタグの使用は、NFκBやPPARγを細胞抽出液のまま反応系に投入するのではなく分離精製して提供する場合に、迅速且つ簡便な分離を可能にするのにも有用である。

0028

具体的には、以下の方法が例示される。
(1)被験物質の存在下及び非存在下にNFκBとPPARγとを接触させて一定時間インキュベートした後、NFκB-PPARγ複合体、遊離NFκB及び遊離PPARγを電気泳動により分離し、標識抗NFκB(p65)抗体及び標識抗PPARγ抗体を用いてNFκB-PPARγ複合体に相当するバンド強度を測定する。例えば、PPARγをコードするDNAを含む発現ベクターが導入され、且つIL-1やTNFα等の刺激により内在のNFκBが活性化された哺乳動物細胞の抽出液、あるいは外来のNFκB(p65)をコードするDNAを含む発現ベクターとPPARγをコードするDNAを含む発現ベクターとが導入された宿主細胞の抽出液に、被験物質を添加してあるいは添加しないでインキュベートした後、各反応液非変性ゲル電気泳動にかけ、RIもしくは非RI(酵素蛍光等)標識した各抗体でウェスタンブロッティングを行い、両方の抗体と交叉反応するバンドの強度を比較する。また、NFκB及び/又はPPARγを上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、NFκB又はPPARγのいずれか一方を35S-Met等を用いて標識しておけば、標識抗体プローブとしたウェスタンブロッティングを行う代わりに、泳動ゲルオートラジオグラフィーを行い、より高分子量の側のバンドの強度を比較すればよい。

0029

(2)あるいは、上記(1)において、反応液に抗NFκB(p65)抗体又は抗PPARγ抗体を加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗PPARγ抗体又は抗NFκB(p65)抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、検出されるバンドの強度を比較することもできる。免疫沈降は、好ましくは、プラスチックビーズセファデックス等の不溶性担体に固相化した抗体を用いて行うことができる。また、NFκB及び/又はPPARγを上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、NFκB又はPPARγのいずれか一方を35S-Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して泳動ゲルのオートラジオグラフィーを行い、検出されるバンドの強度を比較すればよい。

0030

(3)NFκB-PPARγ複合体の測定は、慣用イムノアッセイ系を用いて行うこともできる。例えば、反応液に抗NFκB(p65)抗体又は抗PPARγ抗体を加えて免疫沈降させ、液相を除去した後、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗PPARγ抗体又は抗NFκB(p65)抗体を用いてRIAEIA、FIA等を行い、検出されるシグナル強度を比較してもよい。また、NFκB及び/又はPPARγを上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、NFκB又はPPARγのいずれか一方を35S-Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させ、液相を除去した後にRIAを行うことによってもNFκB-PPARγ複合体を測定することができる。

0031

(4)あるいは、表面プラズモン共鳴蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にNFκB-PPARγ複合体を測定することができる。

0032

本発明のスクリーニング法の第二の態様は、NFκBとPPARγの結合の度合を、PPREに結合するPPARγ量を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べてPPREに結合するPPARγ量が有意に減少(もしくは増加)すれば、NFκBとPPARγの結合が当該物質により増強(もしくは阻害)されたことを示す。

0033

PPARγは、RXRとヘテロ二量体を形成してPPREに結合するので、本実施態様においては、NFκBとPPARγの反応混合液中にさらにRXRが共存する必要がある。RXRにはα、β、γの3種のサブタイプが知られており、本発明ではいずれを使用してもよい。また、PPARγとヘテロ二量体を形成してPPREに結合し得る限り特に制限はなく、天然由来のものの他、いかなる変異体も使用することができる。RXRは、好ましくは、RXRをコードするDNAを含む発現ベクターを導入された宿主細胞から、例えば細胞抽出液として提供され得る。好ましくは、当該細胞は、PPARγをコードするDNAを含む発現ベクターを同時に導入されたものである。

0034

本発明において「PPRE」とは、PPARγが転写活性化する脂肪細胞特異的遺伝子(分化マーカー遺伝子)のプロモーター領域に存在する、PPARγが認識・結合するDNA配列、あるいは当該配列において、1個又は数個塩基が欠失、置換又は付加されたDNA配列であってPPARγが認識・結合し得る配列をいう。例えば、アシルCoAオキシダーゼ由来のPPREが挙げられる。本発明で用いるPPREは、PPARγとの親和性を増強するために単位配列が2個以上タンデムに連結されたものであってもよい。

0035

PPREに結合するPPARγ量の測定は、上述の第一の態様におけるのと同様に、標識抗PPARγ抗体を用いて、あるいはPPARγ自体を標識することにより行うことができる。具体的には、上述のようにして調製されるNFκB及びPPARγ/RXRの反応混合液に、プラスチックビーズやセファデックス等の不溶性担体に固相化したPPREを加えてインキュベートし、B/F分離した後、固相に結合したPPARγをRIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗PPARγ抗体を用いたイムノアッセイにより測定することができる。また、PPARγを無細胞翻訳系を用いて合成する場合、PPARγを35S-Met等を用いて標識しておけば、B/F分離後の固相に結合したRI標識量を測定することにより、PPREに結合したPPARγ量を測定することができる。

0036

あるいは、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にPPREに結合したPPARγを測定することができる。

0037

好ましい実施態様においては、PPREに結合するPPARγ量は、ゲルシフトアッセイによって測定することができる。即ち、上述のようにして調製されるNFκB及びPPARγ/RXRの反応混合液に、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識したPPREを加えてインキュベートした後、反応液を電気泳動してPPRE-PPARγ/RXR複合体と遊離PPREとを分離し、高分子量域に検出されるバンドのシグナル強度を測定することにより調べることができる。

0038

本発明のスクリーニング法の第三の態様は、NFκBとPPARγの結合の度合を、PPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べて当該レポーター遺伝子の発現が有意に減少(もしくは増加)すれば、PPARγ/RXRヘテロ二量体による転写活性化が、被験物質によるNFκBとPPARγ/RXRの結合増強によって抑制(もしくは促進)されることを示す。

0039

本実施態様においては、PPARγをコードするDNA、RXRをコードするDNAを含む発現ベクター及びPPREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む発現ベクターを導入された哺乳動物細胞、あるいは、さらにNFκB(p65)をコードするDNAを含む発現ベクターを導入された宿主細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で培養し、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現を測定し、その発現量を比較する。また、PPARγによる標的遺伝子の転写活性化はリガンド依存的であるので、培養はトログリタゾン等のチアゾリジン誘導体やプロスタグランジンJ2などのPPARγアゴニストの共存下で行う必要がある。

0040

宿主哺乳動物細胞としては、ヒト、サルマウスラットハムスター等の細胞、就中ヒト由来細胞であることが好ましい。具体的には、COP、L、C127、Sp2/0、NS-1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、およびHeLa、293T等のヒト由来細胞などが例示される。

0041

レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼβ-ガラクトシダーゼβ-グルクロニダーゼクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼペルオキシダーゼ等をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。プロモーターは、哺乳動物細胞で機能するものであって、近傍にPPRE配列を含むものであれば特に制限はない。

0042

遺伝子導入は、慣用のリポソーム法やエレクトロポレーション法を用いて行うことができる。

0043

遺伝子導入された宿主細胞は、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清(望ましくは、活性炭処理により血清中脂溶性ホルモン類を除去した血清)を含む最少必須培地MEM)[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)[Virology, 8, 396 (1959)]、RPMI1640培地[J. Am. Med. Assoc., 199, 519 (1967)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]等を用いて培養することができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は、通常約30〜約40℃で、PPARγアゴニストの添加後、約3〜約72時間行なわれる。

0044

培養終了後、細胞を回収して適当な溶解バッファー中で破砕し、遠心により上清を得て細胞抽出液とし、これを用いてレポーター遺伝子の発現をアッセイすればよい。

0045

本発明のスクリーニング法の第四の態様は、NFκBとPPARγの結合の度合を、いわゆるtwo-hybrid系を用いてレポーター遺伝子の発現や細胞質シグナル伝達系の活性化を指標として測定するというものである。

0046

本実施態様においては、NFκB(p65)をコードするDNA又はPPARγをコードするDNAの一方を、GAL4等の転写因子のDNA結合ドメイン(BD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターと、他方のDNAを、VP16等の転写因子の転写活性化ドメイン(AD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターとを宿主細胞に導入し、得られる形質転換体を被験物質の存在下及び非存在下に培養して、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現量を測定・比較する。当該宿主細胞は、BDが認識・結合し得るシスエレメント(BD応答エレメント)をプロモーター領域に含むレポーター遺伝子を担持するものである。細胞内で発現したBD融合蛋白質はBD応答エレメントに結合するが、NFκBとPPARγが相互作用すれば、BD応答エレメント上にBDとADのhybridが形成され、その下流に位置するレポーター遺伝子の転写が活性化される。

0047

宿主細胞としては、上記第三の態様と同様の哺乳動物細胞が例示され、レポーター遺伝子発現ベクターとしては、上記のレポーター遺伝子発現ベクターにおいて、PPREをBD応答エレメントに置換したものが例示される。

0048

PPARγ及びNFκBはいずれもそれ自体が転写制御因子であることから、レポーター遺伝子の発現を指標とする測定系では、擬陽性又は擬陰性を生じる可能性がある。従って、BD及びADに代えて、例えばSOS蛋白質及びミリスレーションシグナルを用い、宿主細胞としてcdc25H株等の酵母温度感受性変異株を用いることにより、レポーター遺伝子の発現を指標とせずにNFκBとPPARγの相互作用を検出することもできる。

0049

以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。

0050

以下の実験において、マウス骨髄未分化細胞株ST2は10%FCS含有αMEMで培養した。各種因子による細胞処置は、TNFα (1ng/ml;GIBCOBRL),IL-1 (10 ng/ml; Pepro tech,Inc)で行った。

0051

また、使用されるベクターは以下のようにして入手した。NIK, NIK(629-947), IKKα, IKKα(K44A), IKKβ, NFκB, IκB発現ベクターは、名古屋大学大学院理学研究科本邦弘先生より供与されたものを使用した。p65, p50発現ベクターはヒトHeLaライブラリーよりcDNAを取得後、FLAG pcDNA3, Myc pcDNA3, pM, pVP16発現ベクターにサブクローンしたものを用いた。pcDNA-human PPARγ2は山之内製薬から供与されたものを使用した。GST-PPARγ発現ベクターはpcDNA-human PPARγ2をテンプレートにしGST-PPARγ(full), GST-PPARγ(1-138), GST-PPARγ(1-203), GST-PPARγ(1-311), GST-PPARγ(204-506), GST-PPARγ(312-506), GST-PPARγ(139-311)をGST4T-1(Amersham Pharmacia Biotech)に組み込んだものを用いた。GST-p65発現ベクターはGST-p65(full), GST-p65(1-48), GST-p65(49-298), GST-p65(299-538)の4種類を作成した。PPARの転写活性を検討するレポーターベクターとしては、3XPPRE(マウスアシルCoAオキシダーゼ遺伝子由来PPRE; 5'-GTCGACAGGGGACCAGGACAAAGGTCACGTTCGGGAGT -3';配列表配列番号1)DNAを、pGL3 Basic Luciferaseベクター(Promega)に組み込んだものを用いた。このベクターはプロモーターとしてtk(チミジンキナーゼ)を用いている。

0052

参考例1 NFκB活性増強によるPPARγの転写活性化能の抑制
PPARγとRXRα発現ベクター、それにPPREを挿入したレポーターベクターを同時に遺伝子導入し、トログリタゾンで誘導されるPPARγ/RXRαのヘテロ二量体を介するレポーター遺伝子の活性化能に及ぼすNFκB等の効果を検討した。0.25 μg/wellの3XPPREレポータープラスミド、0.2μgのPPAR/pcDNA3.1、他の発現ベクターを0.01-0.25μg加え、total量をpBluescriptM13にて1μgに合わせた。ST2細胞は12 well dishに40-50%コンフルエンスになるよう前日に植え継ぎトランスフェクションに用いた。OPTI-MEMI Reduced Serum Medium (GIBCOBRL)(以下、OPTI-MEMという)にplus reagent (GIBCOBRL)を加えたものでDNAを希釈し15分室放置したものをSolution A、LipofectamineをOPTI-MEMに希釈したものをSolution Bとし、Solution AおよびBを混合した後15分室温放置した。その間に細胞をOPTI-MEMで洗い、0.5mlのOPTI-MEMで培地交換を行った。Solution AとBの混合液滴下し、37℃で3時間インキュベートすることで遺伝子導入を行った後、培地交換し、その際被験リガンドを添加した。更に16時間インキュベートした後、1 well当たり150μlの溶解バッファーを加え5分間室温振とうして細胞破砕液を調製した。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual-Luciferasereporter assay system (Promega)を用いた。調製した細胞破砕液のうち10-25μlをプレート分注し、これをMicro Lumat LB96P (Wallac Berthold)により測定した。遺伝子導入の効率は内部標準として用いたCMV-Renilla Luciferaseベクター(Promega, 25 ng/well)からの発光量を指標に測定し、遺伝子導入効率補正した相対値で転写活性化能を表した。その結果を図1に示す。

0053

NFκBを活性化することが知られているIKKαあるいはIKKβの過剰発現(レーン3, 4)、もしくはH2O2処理(レーン8)、さらにNFκB(p50, p65)の過剰発現(レーン6)は、NIK(レーン7)と同様の抑制効果を示した。不活性型のIKKαは抑制効果を示さなかった(レーン5)。以上のことから、PPARγの転写活性化能の抑制作用は、NFκB活性を強めることで発揮されることが明らかになった。

0054

実施例1 PPARγとNFκBの相互作用の検討
転写因子GAL4のDNA結合ドメインとPPARγのN末領域(A/B-C)との融合蛋白質をコードする発現ベクター、VP16の転写活性化ドメインとp65もしくはp50との融合蛋白質をコードする発現ベクター、及びGAL4応答エレメントを含むプロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミドを参考例1と同様の方法によりトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図2Aに示す。

0055

PPARγN末領域(GAL4-PPARγ(A/B-C))とp65(pVP16-p65)を共発現させると転写活性が上昇したことから(レーン6)、PPARγN末領域とNFκBのp65には相互作用があると推察された。PPARγ N末領域とNFκBのp50には相互作用はないものと推察された(レーン7)。

0056

GAL4のDNA結合ドメインとPPARγのC末領域(D-E/F)との融合蛋白質をコードする発現ベクター、VP16の転写活性化ドメインとp65もしくはp50との融合蛋白質をコードする発現ベクター、及びGAL4応答エレメントを含むプロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミドを、トログリタゾン(Tro)の存在下及び非存在下に、参考例1と同様の方法によりトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図2Bに示す。

0057

Tro存在下で、PPARγC末領域(GAL4-PPARγ(D-E/F))とp65(pVP16-p65)を共発現させると転写活性が上昇したが(レーン7)、この活性上昇はp65を過剰発現させないとき(レーン6)より明らかに高かったことから、PPARγC末領域とp65には相互作用があることが示唆された。PPARγ C末領域とNFκBのp50には相互作用はないものと推察された(レーン8)。

0058

本実験結果から、PPARγのN末、C末いずれの領域にもp65が相互作用すること、またN末、C末いずれの場合も、NFκBによる転写抑制は認められなかったことから、NFκBがPPARγの転写活性化領域の機能を直接抑制することだけが、NFκBによるPPARγの転写活性化能の抑制に寄与している可能性は少ないと推察された。

0059

実施例2 GST-pull down法によるPPARγとNFκBの直接相互作用の検討
PPARγの種々の部分領域とp65, p50との相互作用、及びp65の種々の部分領域とPPARγとの直接相互作用を以下のように検討した。

0060

(GST融合蛋白質の発現及び精製の確認)pGEX(アマシャムファルマシアバイオテク)にクローン化した融合蛋白発現ベクターをもつ大腸菌を3-5mlのLB(Amp+)培地で培養し、この前培養液1mlを400mlのLB(Amp+)に植菌して37℃で培養した。O.D.600=0.4-0.5になったらIPTGを終濃度0.1mMになるよう加え、以降30℃で培養した。90分後6000rpm, 2min, 4℃で遠心して大腸菌を集菌し、20mlの冷やした1xPBSに懸濁した。ソニケーター(レベル9 、10秒 3回)により大腸菌を破砕したのち、破砕液に1mlの20% Triton-X 100を加え、30分間、4℃で振盪した。7,500rpm、5分間遠心した上清を別のファルコンチューブに移し、1XPBSで2回洗浄平衡化済みのGlutathione-Sepharose 4B(Amarsham Pharmacia Biotech)を200ml加え、30分間、4℃で振盪した。1,500rpm、2分間遠心することでGlutathione-Sepharose 4Bを回収した。上清を捨てGlutathione-Sepharoseを1.5mlのエッペンチューブに移したのち、1mlの1xPBSに撹拌、1,500rpm、2分間遠心を5回繰り返しGlutathione-Sepharose 4Bを洗浄した。GST融合蛋白の発現量の確認は、SDS-PAGEにより行った。

0061

インビトロ翻訳)インビトロ翻訳反応はPromega社のTNTCoupled Reticulocyte Lysate SystemKitを用いた。PPARγ/pcDNA3、p50/pcDNA3もしくはp65/pcDNA3 1μg,ウサギ網状赤血球溶解液25μl,反応バッファー 2μl, T7RNAポリメラーゼ1μl,RNaseインヒビター1μl (TOYOBO),アミノ酸混合物(Met-) 1μl, 35S-Met 4μl (アマシャムファルマシア)を加え、H2Oで全量を50μlにし、以上を混合したのち30℃で2時間インキュベートした。インプットサンプルは2xSDS-PAGEサンプルバッファーを加え煮沸することで作製した。

0062

(GST-pull downアッセイ)GST融合蛋白質の結合したGlutathione-Sepharose4B 25μlを1検体分とし1.5mlエッペンチューブに計り取った。これにインビトロ翻訳反応液10μlと、300μlのNET-N+(50mM Tris-Cl(pH7.5), 150mM NaCl, 5mMEDTA(pH8.0), 0.5% NP40, 1mMPMSF, 1mg/mlアプロチニン)を加え軽く混合した。30分間時々混ぜながら上に置き、1500rpm, 1min, 4℃で遠心し上清を捨てた。300-500μlのNET-N+を加え混ぜた後、再度1500rpm, 1min, 4℃で遠心し上清を捨てた。300-500μlのNET-N+を用いての洗浄操作を5回繰り返した後、25μlの2xSDS-PAGEサンプルバッファーを加え煮沸し、SDS-PAGEにより検出した。結果を図3A及び図3Bに示す。

0063

NFκBは、p50ではなくp65がPPARγと直接結合すること、特にPPARγのN末部分と強く結合することが明らかとなった。さらにp65は、N末端及びC末端領域ではなく、LZ-RHD領域でPPARγと結合することが明らかとなった。

0064

実施例3 PPARγ/RXRαヘテロ2量体のPPRE結合能に及ぼすNFκB活性化の効果
(ゲルシフトアッセイ)リン酸カルシウム法を用いてPPARγ、RXRα等のベクターを293T細胞にトランスフェクトし、適宜サイトカイン処理を行った後、この細胞の核抽出液を作製し、ゲルシフトアッセイを行った。すなわち遺伝子導入後、1xPBSで洗浄し、バッファーA(10mMHEPES-KOH(pH7.8), 10mM KCl, 0.1mMEDTA(pH8.0), 1mM DTT, 0.5mMPMSF, 2μg/mlアプロチニン, 2μg/ml ペプスタシン, 2μg/mlロイペプチン)に溶解させ、ボルテックスで混合した。6000rpm, 1min., 4℃で遠心後、上清を捨て、沈殿物を100μlのバッファーC(50mM Hepes-KOH(pH7.8), 420mM KCl, 0.1mM EDTA(pH8.0), 5mM MgCl2, 20% Glycerol)に溶かした。30分間、4℃で回転撹拌し、15000rpm, 4℃で遠心し、上清を核抽出物として回収した。DNAプローブにはPPRE(AGGACAAAGGTCA;配列番号2)を用い、γ-ATPとT4キナーゼによる末端標識を、37℃、1時間の反応で行った。その後70℃で10分間、室温で1時間放置した。カラムによる精製を行った後、およそ1000cpm/μlの濃度にプローブを希釈した。上記材料を用いてゲルシフトアッセイを行った。すなわち、核抽出物1μlとpoly dIdC(2μg/μl)を反応液(100mM KCl, 10mM HEPES(pH7.9), 1mM DTT, 0.1%Nonidet P-40, 7.5%グリセロール)1μgBSAを混ぜ、氷中で15分静置した。その後標識プローブ1μlを混ぜ室温で20-30分静置し、Dyeを加えゲル(1×TBE, 6%アクリルアミド)と1×TBE buffer下で、130V定電圧の条件で泳動を行った。泳動後ゲルを乾燥させ、BAS 2000(Fuji film)で解析を行った。抗体によるスーパーシフトの確認には抗PPARγ2抗体(ABR)を用いた。結果を図4に示す。

0065

TNFα (0.1 , 1 ng/ml,:レーン5,6)、IL-1 (1.0, 10 ng/ml:レーン8,9)、H2O2 (0.1, 1 mM:レーン11,12)各処置は、PPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合を抑制した。また、この結合にはPPARγが含まれていることが抗体によるスーパーシフトにより明らかである(レーン14)。以上のことから、サイトカインによるPPARγの転写活性化能の抑制作用は、PPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合を抑制することにより発揮されていることが示された。

発明の効果

0066

実施例4 PPARγ/RXRαヘテロ2量体のPPRE結合能に及ぼすNFκB及びNIKの効果
実施例3と同様のゲルシフトアッセイを、各種因子を過剰発現させて行った。結果を図5に示す。NFκBの構成因子であるp65, p50いずれの因子によってもPPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合は抑制されたが(レーン3,4)、両因子の存在で更に強力に抑制された(レーン5)。NIKによってもDNA結合は抑制されたが(レーン7)、IκB(32A/36A)の存在によりNFκBシグナルを遮断すると、DNA結合抑制はキャンセルされた(レーン8)。以上のことから、NFκBシグナルによるPPARγの転写活性化能の抑制作用は、PPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合を抑制することにより発揮されていることが示された。

0067

本発明のスクリーニング法により選抜される脂質細胞分化抑制物質は、PPARγとNFκBとの結合を増強することにより、PPARγによる脂肪細胞特異的遺伝子の転写活性化を直接的にブロックするので、従来脂肪細胞分化抑制作用が知られていた成長因子やサイトカイン等に比べて、より安全且つ有効に未分化細胞の脂肪細胞への分化を抑制することができ、あるいは脂肪細胞からの脱分化を促進することができる。従って、本発明のスクリーニング法は、例えば、脂肪髄化に起因する種々の骨・軟骨結合組織疾患の予防及び治療剤、さらに老化に伴う全身組織への脂肪蓄積に起因する種々の疾患の予防及び治療剤の有力な候補化合物を提供し得る点で極めて有用である。他方、本発明のスクリーニング法により選抜される脂質細胞分化促進物質は、すでに臨床応用されているチアゾリジン誘導体と同様にインスリン抵抗性改善剤の有力な候補化合物となり得る。また、本発明のスクリーニング法により選抜される抗炎症性物質は、NFκBとPPARγとの結合を増強することにより、COX-2のような炎症誘起性遺伝子のNFκBによる発現誘導を抑制するので、当該スクリーニング方法は、より副作用が少ないといわれるCOX-2選択阻害的消炎剤と異なった作用メカニズムによる消炎剤の有力な候補化合物を提供し得る。

図面の簡単な説明

0068

Sequence Listing
<110> Sumitomo Pharmaceuticals
<120> Method for screening of substance suppressing adipocyte
differentiation.
<130> A4703
<160> 2
<210> 1
<211> 38
<212> DNA
<213> Mus musculus
<400> 1
gtcgacaggg gaccaggaca aaggtcacgt tcgggagt 38
<210> 2
<211> 13
<212> DNA
<213> Mus musculus
<400> 2

0069

図1Troにより誘導されるPPARγの転写活性化能に及ぼすIKKα、IKKβ、不活性化IKK、NFκB、NIK及びH2O2処理の効果を示す図である。
図2PPARγN末領域とp65又はp50の相互作用(A)及びPPARγC末領域とp65又はp50の相互作用(B)を示す図である。
図3PPARγの種々の部分領域とp65又はp50の結合能(A)及びp65の種々の部分領域とPPARγの結合能(B)を示す図である。
図4PPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合能に及ぼすTNFα、IL-1及びH2O2処理によるNFκB活性化の効果を示す図である。
図5PPARγ/RXRαヘテロ二量体のPPREへの結合能に及ぼすNFκBの抑制効果、及びIκBαによるNFκB不活性化によるNFκBの抑制効果のキャンセルを示す図である。

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