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技術 TiAl基合金及びその製造方法並びにそれを用いた動翼

出願人 三菱重工業株式会社
発明者 新藤健太郎鉄井利光
出願日 2001年5月28日 (19年6ヶ月経過) 出願番号 2001-159463
公開日 2002年12月13日 (18年0ヶ月経過) 公開番号 2002-356729
状態 特許登録済
技術分野 鍛造 タービンロータ・ノズル・シール タービンロータ・ノズル・シール 非鉄金属または合金の熱処理 タービンの細部・装置
主要キーワード 平衡領域 塑性変形率 変形機構 ラメラー組織 TiAl相 断面積減少率 ディスク部分 熱間鍛造法
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2002年12月13日)のものです。
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図面 (10)

課題

耐熱合金として必要な高温強度衝撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及びその製造方法、並びにこれを用いた動翼を提供する。

解決手段

本発明のTiAl基合金は、α2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメラー粒が配列し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー粒内のα2相どうしの間隔すなわちラメラ間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%であるTiAl合金およびその製造方法を採用した。また、上記構成のTiAl基合金を用いて動翼を構成した。

概要

背景

近年、過給機タービン等の動翼航空機に用いる材料として、軽量(比重約4)で耐熱性に優れるTiAl基合金が注目されている。特に、大型の回転動翼の場合、動翼の構成部材が軽量であるほど遠心応力が少なくなるので、最高到達回転数の向上や動翼の大面積化、さらには動翼のディスク部分への負荷応力の低減を図ることができる。

このTiAl基合金は、高温強度に優れた金属間化合物であるTiAlやTi3Alを主体とする合金であり、上述の如く耐熱性に優れているが、室温での延性に劣るという問題があり、従来からその対策として組織の制御や第3元素の添加が種々行われている。例えば、特開平6−49565号公報には、TiAl基合金の常温延性を向上させるため第3元素としてCrやVを添加し、さらに強度の向上を図るため、TiAl相とTi3Al相を交互に積層して成る層状組織ラメラー相)領域を金属組織中に形成させる技術が開示されている。又、Kimは、平均粒径30〜3000μmのラメラー粒を有するTiAl基合金において、ラメラー粒の平均粒径が大きくなるほど、室温での延性と引張応力が低下することを報告している(Young-Won Kim.Intermetallics. (6) 1998 pp.623-628.)。

本発明者らは、特願2000−259831号において、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜50μmのラメラー粒が密に配列してなる微細組織を有し、その一つの組織形態(以下、組織1と言う)として、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜50μmのラメラー粒が密に配列している組織、ならびにもう一つの組織形態(以下、組織2と言う)として、該ラメラー粒の間隙をβ相を主体とする基地網目状に埋め、この基地の比率が10%以上、40%以下である組織の2種類の微細組織を特徴とするTiAl基合金によって、室温での延性、特に、室温での衝撃特性の向上を実現できることを提案している。

概要

耐熱合金として必要な高温強度、衝撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及びその製造方法、並びにこれを用いた動翼を提供する。

本発明のTiAl基合金は、α2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメラー粒が配列し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー粒内のα2相どうしの間隔すなわちラメラ間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%であるTiAl合金およびその製造方法を採用した。また、上記構成のTiAl基合金を用いて動翼を構成した。

目的

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、耐熱合金として必要な高温強度、衝撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、上記の優れた特性を有するTiAl基合金からなる動翼を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
1件

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請求項1

α2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメラー粒が分散し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー粒内のラメラー間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%であることを特徴とするTiAl基合金

請求項2

Al:38〜45原子%、Mn:3〜10原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のTiAl基合金。

請求項3

Al:38〜45原子%、CrまたはVのうち1種以上:3〜10原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のTiAl基合金。

請求項4

1〜2.5原子%のNbを含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のTiAl基合金。

請求項5

Mo,W,Zrから選ばれる1種以上の元素を0.5〜2原子%含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のTiAl基合金。

請求項6

0.1〜0.4原子%のC(炭素)を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のTiAl基合金。

請求項7

Si,Ni,Taから選ばれる1種以上の元素を0.2〜1.0原子%含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のTiAl基合金。

請求項8

少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原子%のMnを含有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工程と、該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程とを備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。

請求項9

少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原子%のCr及び/またはVを含有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工程と、該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程とを備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。

請求項10

前記TiAl基合金素材として、1〜2.5原子%のNbを含有するものを用いることを特徴とする請求項8または9に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項11

前記TiAl基合金素材として、0.1〜0.4原子%のC(炭素)を含有するものを用いることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項12

前記第1加熱工程の保持温度が、1150〜1350℃であることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項13

前記第2加熱工程の保持温度が、1000℃〜1350℃であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項14

前記加工最終温度が1000℃であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項15

前記加工工程の冷却速度を50〜700℃/分として加工することを特徴とする請求項8ないし14のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項16

前記第2加熱工程の冷却速度を5〜50℃/分として加工することを特徴とする請求項8ないし15のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項17

前記加工工程において、前記高速塑性加工による有効歪みが、0.8以上となるように前記TiAl基合金素材を加工することを特徴とする請求項8ないし16のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項18

前記加工工程において、前記高速塑性加工による有効歪みが、1.2〜4.0となるように前記TiAl基合金素材を加工することを特徴とする請求項17に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項19

前記高速塑性加工として鍛造法を用いることを特徴とする請求項8ないし18のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項20

前記鍛造法が、高速四面鍛造であることを特徴とする請求項19に記載のTiAl基合金の製造方法。

請求項21

請求項1ないし7のいずれか1項に記載のTiAl基合金を用いたことを特徴とする動翼

技術分野

0001

本発明は、TiAl基合金及びその製造方法並びにそれを用いた動翼に関するものである。

背景技術

0002

近年、過給機タービン等の動翼や航空機に用いる材料として、軽量(比重約4)で耐熱性に優れるTiAl基合金が注目されている。特に、大型の回転動翼の場合、動翼の構成部材が軽量であるほど遠心応力が少なくなるので、最高到達回転数の向上や動翼の大面積化、さらには動翼のディスク部分への負荷応力の低減を図ることができる。

0003

このTiAl基合金は、高温強度に優れた金属間化合物であるTiAlやTi3Alを主体とする合金であり、上述の如く耐熱性に優れているが、室温での延性に劣るという問題があり、従来からその対策として組織の制御や第3元素の添加が種々行われている。例えば、特開平6−49565号公報には、TiAl基合金の常温延性を向上させるため第3元素としてCrやVを添加し、さらに強度の向上を図るため、TiAl相とTi3Al相を交互に積層して成る層状組織ラメラー相)領域を金属組織中に形成させる技術が開示されている。又、Kimは、平均粒径30〜3000μmのラメラー粒を有するTiAl基合金において、ラメラー粒の平均粒径が大きくなるほど、室温での延性と引張応力が低下することを報告している(Young-Won Kim.Intermetallics. (6) 1998 pp.623-628.)。

0004

本発明者らは、特願2000−259831号において、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜50μmのラメラー粒が密に配列してなる微細組織を有し、その一つの組織形態(以下、組織1と言う)として、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜50μmのラメラー粒が密に配列している組織、ならびにもう一つの組織形態(以下、組織2と言う)として、該ラメラー粒の間隙をβ相を主体とする基地網目状に埋め、この基地の比率が10%以上、40%以下である組織の2種類の微細組織を特徴とするTiAl基合金によって、室温での延性、特に、室温での衝撃特性の向上を実現できることを提案している。

発明が解決しようとする課題

0005

ところで、上記TiAl基合金は、従来自動車用ターボタービンホイール等の小型部品への利用を目的として開発が進められた経緯があり、このような自動車部品などの複雑な形状を有する小型部品に用いるTiAl基合金は、目的の形状に近い形状が得られる精密鋳造によって製造されることが一般的である。この鋳造により製造されたTiAl基合金の鋳造品には、機械加工性に劣るという問題があったが、上記の自動車用の小型部品では、精密鋳造により目的形状に近い形状が得られるために、鋳造後の機械加工量を少なくすることができるため、鋳造品の機械加工性はそれほど問題視されていなかった。しかし、このTiAl基合金を過給機やタービン等の動翼や航空機に適用しようとすると、製造される部品が大型となり、また、これらの大型部品は、一般に機械加工量が多くなるため、難削材であるTiAl基合金の機械加工性の向上が望まれていた。

0006

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、耐熱合金として必要な高温強度、衝撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、上記の優れた特性を有するTiAl基合金からなる動翼を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ね、TiAl基合金の機械加工性には、TiAl基合金の金属組織中に含まれるβ相が大きく影響していること、またTiAl基合金の高温強度を向上させるためには、TiAl基合金の金属組織中にラメラー組織を形成させることが必須であること、そして、これらラメラー組織とβ相を含む金属組織を適切に制御することにより、TiAl基合金の機械加工性と高温強度とを両立させ得ることを知見した。この知見に基づき、金属組織中のラメラー粒の面積分率、平均粒径、ラメラー間隔(ラメラー粒内のα2相どうしの間隔)と、β相の面積分率を種々に変化させたところ、これらの組織構造が適切な範囲に制御されたTiAl基合金において、十分な高温強度を備え、かつ機械加工性が大幅に改善されるという知見を得、本発明の完成に至ったものである。

0008

又、本発明は、TiAl基合金の機械加工性を改善する方法として、TiAl基合金素材を(α+β)相の平衡温度領域に保持した後に、その後の冷却過程高速塑性加工し、さらにこの加工材を(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する熱処理を行うことを着想し、さらにそのための具体的な方法を見出したものである。

0009

本発明は、上記の目的を達成するために、以下の構成を採用した。本発明のTiAl基合金は、α2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメラー粒が分散し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%であることを特徴とする。

0010

すなわち、本発明のTiAl基合金は、ラメラー粒と、γ粒およびこれらの間隙を埋めるβ相とからなるTiAl基合金の金属組織を、上記範囲となるように制御したものである。このような金属組織とすることにより、金属組織中に形成されたラメラー粒自体により十分な高温強度とともに、ラメラー粒間のβ相の効果によって高温変形能が向上し、塑性加工とともに機械加工が容易となる。なお、機械加工時刃先の温度は高温になるため、高温変形能が良くなることで、機械加工性は向上する。これにより、従来難削材であったTiAl基合金を動翼や航空機部品などの大型部品に使用した場合に、効率よく加工を行うことが可能となる。

0011

以下に、本発明のTiAl基合金の要件である、ラメラー粒の面積分率、ラメラー間隔、およびβ相の面積分率について説明するが、本発明者らは、後述の実施例において上記ラメラー粒の面積分率、ラメラー間隔、ラメラー粒の平均粒径、およびβ相の面積分率の範囲が適切であることを検証している。これについては、後述の実施例に詳述する。

0012

ラメラー粒の面積分率(30〜70%):α2相と、γ相が交互に積層された構造を有するラメラー粒が、金属組織中に形成されることにより、TiAl基合金の強度を向上させることができるが、ラメラー粒の面積分率が大きくなるほど、高温延性が低下する。すなわち、ラメラー粒の面積分率が30%未満であると、機械加工性は良好であるが、高温強度が不足する。またラメラー粒の面積分率が70%を越えると、高温延性が不足するために、機械加工性が不十分なものとなる。従って、機械加工性と高温強度を両立させる範囲としてラメラー粒の面積分率を30〜70%とした。

0013

ラメラー間隔(0.4〜1.5μm):ラメラー間隔は、広すぎると高温強度が不十分なものとなり、狭すぎると機械加工性が低下する。これは、ラメラー間隔が狭いほど、転位等の変形機構が働かなくなるため、強度に優れたものとなるが、同時に、延性が低下するためである。従って、機械加工性と高温強度を両立しうる範囲として、ラメラー間隔を0.4〜1.5μmとした。

0014

β相の面積分率(5〜15%):このβ相はラメラー粒及びγ相に比して高温延性が高く、高温強度が小さいため、ラメラー粒の間隙を埋める基地にβ相を析出させると、高温延性が向上するが、高温強度は低下する。従って、機械加工性と高温強度を両立し得る範囲としてβ相の面積分率を5〜15%とした。

0015

次に、本発明のTiAl基合金は、Al:38〜45原子%、Mn:3〜10原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなる、またはAl:38〜45原子%、CrまたはVから1種以上:3〜10原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなることが好ましい。係る構成によれば、機械加工性に係るβ相の面積分率を適切な範囲に制御することができるので、優れた機械加工性を備えたTiAl基合金が得られる。

0016

本発明のTiAl基合金においては、1〜2.5原子%のNbを含有することが好ましい。前記範囲のNbを添加することにより、TiAl基合金の耐酸化性を向上させることができる。従って、係る構成によれば、高温強度、機械加工性とともに耐酸化性にも優れたTiAl基合金が得られる。このような耐酸化性に優れたTiAl基合金は、比較的高温で用いるのに好適である。本発明のTiAl基合金においては、Mo,W,Zrから選ばれる1種以上の元素を0.5〜2原子%含有する構成とすることもできる。このような構成としても、上記Nbを添加したものと同様に、耐酸化性に優れたTiAl基合金とすることができる。

0017

本発明のTiAl基合金においては、0.1〜0.4原子%のC(炭素)を含有することが好ましい。前記範囲のCを添加することにより、TiAl基合金の高温強度をより向上させることができる。従って、係る構成によれば、機械加工性が良好であり、特に高温強度に優れたTiAl基合金が得られる。本発明のTiAl基合金においては、Si,Ni,Taから選ばれる1種以上の元素を0.2〜1.0原子%含有する構成とすることもできる。このような構成としても、上記Cを添加したものと同様に、高温強度に優れたTiAl基合金とすることができる。

0018

次に、本発明のTiAl基合金の製造方法は、少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原子%のMnを含有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工程と、該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程とを備えたことを特徴とする。

0019

また、本発明のTiAl基合金の製造方法は、少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原子%のCr及び/またはVを含有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工程と、該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程とを備えたことを特徴とする構成であってもよい。

0020

これらの構成によれば、所定の組成を有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持し、その後に塑性加工することにより、鋳造欠陥を無くすことができるとともに、加工歪みと相変態相乗効果で組織を微細化することができる。さらに、その後に、TiAl基合金素材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+γ)相の平衡温度領域に保持して、ラメラー粒及びβ相の面積分率やラメラー粒の粒径を制御し、優れた機械加工性と、高温強度を備えたTiAl基合金を製造することができる。前記塑性加工としては、押出圧延自由鍛造型鍛造を使用することができる。

0021

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記TiAl基合金素材として、3〜10原子%のMn、Cr、Vから選ばれる1種以上を含有するものを用いる。これらの元素が添加されたTiAl基合金素材において、これらの含有量によりラメラー粒とβ相の面積分率を制御できるので、所望の高温強度と機械加工性を備えたTiAl基合金を得ることができる。

0022

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記第1加熱工程の保持温度が、1150〜1350℃であることが好ましい。本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記加工最終温度が1000℃であることが好ましい。本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記加工工程の冷却速度を50〜700℃/分として加工することが好ましい。本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記第2加熱工程の冷却速度を5〜50℃/分として加工することが好ましい。

0023

Alを38〜45原子%含むTiAl基合金の(α+β)相の平衡温度領域の下限は、組成により1120〜1220℃まで分布しているから、1150〜1350℃の(α+β)相の平衡温度領域に保持した後、加工最終温度である1000℃まで冷却する間に塑性加工を施し、ラメラー粒形成の起点となる歪みを与えて微細な組織とする。この間の冷却速度は50〜700℃/分が適当である。また、前記第2加熱工程における冷却速度は、5〜50℃/分が適当である。

0024

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記第2加熱工程の保持温度が、1000〜1350℃であることが好ましい。第2加熱工程における保持温度を前記範囲とすることにより、ラメラー粒およびβ相の面積分率を適切な範囲に制御することができる。

0025

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記TiAl基合金素材として、1〜2.5原子%のNbを含有するものを用いることもできる。このような素材を用いることにより、耐酸化性に優れたTiAl基合金を容易に製造することができる。

0026

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記TiAl基合金素材として、0.1〜0.4原子%のC(炭素)を含有するものを用いることもできる。このような素材を用いることにより、特に優れた高温強度を備えたTiAl基合金を容易に製造することができる。

0027

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記加工工程において、前記高速塑性加工による有効歪みが、0.8以上となるように前記TiAl基合金素材を加工することが好ましい。

0028

本発明に係るTiAl基合金の製造方法にあっては、前記TiAl基合金素材の加工度を大きくするほど、金属組織の微細化が進行し、機械加工性と、高温強度の両方を向上させることができる。そして、その加工度を有効歪みで0.8以上とすることにより、十分な高温強度を備え、かつ機械加工性に優れたTiAl基合金を製造することができる。

0029

ここで、前記有効歪みとは、種々の塑性加工による強度変化を実用的な線図で比較検討する場合に、加工法で異なった表示をする加工度を統一するために導入される概念である。例えば、据え込み鍛造における圧下率ηと、高速四面鍛造における断面減少率qは、下記(数1)に示す式により有効歪みψFと関係づけることができ、この有効歪みにより両者の加工度を比較することが可能になる。本願発明においては、この有効歪みの概念を用いてTiAl基合金素材の加工度を定義している。

0030

0031

ここで、据え込み鍛造における圧下率ηは鍛造前後の材料の厚さをそれぞれh1,h2とすると、下記(数2)に示す式で表されるものであり、高速四面鍛造における断面積減少率qは、鍛造前後の材料の断面積をそれぞれA1,A2とすると、下記(数3)に示す式で表されるものである。

0032

0033

0034

さらには、前記加工工程において、前記高速塑性加工による有効歪みが、1.2〜4.0となるように前記TiAl基合金素材を加工することがより好ましい。すなわち、前記TiAl基合金素材の加工度をより高めることにより、さらに機械加工性と高温強度に優れたTiAl基合金を製造することが可能になる。

0035

本発明のTiAl基合金の製造方法においては、前記高速塑性加工として鍛造法を用いることが好ましい。また、大きな有効歪み量を短時間に得る鍛造方法として高速四面鍛造法が挙げられる。前記高速塑性加工によるTiAl基合金素材の加工度が大きいほど、組織を微細化することができるので、加工度を大きくできるこれらの鍛造法を採用することにより、より高温強度と機械加工性に優れたTiAl基合金を製造することが可能となる。

0036

本発明の動翼は、先のいずれかに記載のTiAl基合金を用いたことを特徴とする。このような構成とすることにより、高温強度および衝撃特性に優れているので、エンジンの過給機や各種タービンの動翼とすれば、信頼性を維持しつつ、回転数の上昇によるエネルギー効率の向上や、軽量化に貢献することが可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0037

以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。

0038

[TiAl基合金]先ず、以下に本実施形態のTiAl基合金について説明する。図1は本実施形態のTiAl基合金の顕微鏡組織の模式図である。図1において、TiAl基合金10は、平均粒径の1〜65μmのラメラー粒3が配列してなる微細組織を有しており、各ラメラー粒3の間隙を埋めるように基地4が形成されている。このラメラー粒3はα2相(Ti3Al)1’とγ相(TiAl)2’が交互に積層された、層状のいわゆるラメラー組織からなり、各ラメラー粒3における積層方向はそれぞれ異なっている。又、基地4の面積分率は30%を越えて70%未満であり、図1に示すように、β相5とγ相2が等軸的に複合化した組織である。そして、積層方向が異なるラメラー組織により、材料に生じる亀裂がジグザグになるので、亀裂が進行し難くなり、材料の靱性や強度が向上するものと考えられる。

0039

本発明においては、平均粒径1〜65μmのラメラー粒が金属組織中に配列されていることが特徴の一つである。さらに好ましくは、平均粒径1〜30μmのラメラー粒が密に配列されていると、金属組織がより微細となり、高温延性および高温強度が向上する。又、すべてのラメラー粒のうち、粒径20μm以下のラメラー粒が40%以上含まれていると、金属組織の微細化、高温強度の向上の点でより好ましい。ここで、本発明における「平均粒径」は、JIS−G0552に規定する方法で測定される。

0040

ここで、ラメラー粒の平均粒径を1μm未満とすることは工業的に困難であり、又、平均粒径が65μmを超えると、高温延性および高温強度が低下する。そして、平均粒径1〜65μmのラメラー粒、より好ましくは平均粒径1〜30μmのラメラー粒を金属組織中に密集して形成させると、ラメラー粒自体により強度が向上するとともに、粒径の小さいラメラー粒が密集するために金属組織が微細になり、高温強度が向上する。又、詳しくは後述するが、本発明においては熱間鍛造後に所定の冷却速度で冷却が行われ、この冷却速度は通常の熱処理のように炉内で徐冷する場合に比べて大きいため、ラメラー間隔もより狭まり、これによっても強度が向上する効果が得られる。

0041

本発明のTiAl基合金は、その金属組織中のラメラー粒3の平均粒径(1〜65μm)、面積分率(30〜70%)、ラメラー間隔(0.4〜1.5μm)、及びβ相の面積分率(5〜15%)が所定の範囲に制御されて構成されている。このような範囲にそれぞれを制御することにより、十分な高温強度と、優れた機械加工性を備えたTiAl基合金とされている。従って、本発明のTiAl基合金を用いるならば、大型部材でありながら軽量の蒸気タービンの動翼などを製造することが可能であり、また角材等からの削り出しによってこれらの大型部品を製造する場合にも、容易に機械加工が可能である。

0042

また、機械加工が容易であることにより、加工時間を短くすることができるとともに、加工精度の向上も望める。さらには、加工時のビビリ欠損を起こりにくくすることができるので、加工用工具寿命延ばすことができる。従って、動翼や航空機部品、自動車部品などに本発明のTiAl基合金を用いるならば、製造時間の短縮、歩留まりの向上、製造コストの低減が可能である。

0043

上記本発明のTiAl基合金は、他の元素として、C,Si,Ni,W,Nb,B,Hf,Ta,Zr,Moの群から選ばれる1種以上を合計で0.1〜3原子%含有していてもよい。これらの微量元素は、適宜高温強度、クリープ強度、耐酸化性を向上させるものである。この場合、各元素の合計含有量が0.1原子%未満であると、上記した効果が不充分であり、又、3原子%を超えても効果が飽和するとともに耐衝撃性の低下をもたらすため望ましくない。

0044

尚、上記の微量元素のうち、Nb,Mo,W,Zr,Hfは、TiAl基合金の耐酸化性を向上させるために添加され、C,Si,Ni,Taは高温強度を向上させる目的で添加される。また、それぞれの添加量は、使用される微量元素により適宜最適な添加量を選択すればよい。例えば、耐酸化性を向上させるためのNbの添加量は1〜2.5原子%が好ましく、高温強度を添加させるためのCの添加量は、0.1〜0.4原子%が好ましい。

0045

[TiAl基合金の製造方法]
(製造工程)次に、本発明に係るTiAl基合金の生成過程について、図2及び図3に基づいて説明する。なお、金属組織の生成過程は、Ti−Al−X(Xは、Mn,Cr,Vのうち1種以上)の3元系合金のいずれをを用いた場合でもほぼ同様であるので、以下では、Ti−Al−Mnの3元系合金におけるラメラー粒の生成過程について説明する。図2は各工程をTi−Al−Cr,Ti−Al−Mn,Ti−Al−V(Cr,V,Mn含有量はいずれも10原子%)の状態図に対応させて説明したものであり、この図に示すように実線で示すTi−Al−Mn系合金の(α+β+γ)相領域は、Ti−Al−Cr,Ti−Al−V系合金のほぼ中間に位置している。

0046

図2において、まず、Alを38〜45原子%、Mnを3〜10原子%含む、所定の組成のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域である1150〜1350℃内の温度TAに保持する(第1加熱工程)。次に、保持温度TAから高速塑性加工の最終温度TBに至るまで冷却しながら高速塑性加工を行なう(加工工程)。つまり、本発明の製造方法は、α+β域から材料を冷却させ、ラメラー相への相変態を生じさせながら、同時に塑性加工を行なう点で、1種の加工熱処理といえる。

0047

上記の加工工程における高速塑性加工としては、押出、圧延、自由鍛造、型鍛造などを適用することができるが、この加工工程における加工度を大きくするほど、TiAl基合金の結晶粒径を細かくでき、これにより高温強度と機械加工性を向上させることができるので、加工度を大きくすることができる鍛造法を採用することが好ましい。

0048

次いで、加工後の素材を再度加熱する(第2加熱工程)。この時の保持温度は、(α+β)相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域または(β+γ)相の平衡温度領域とされる。以上の工程により、金属組織が適切に制御されていることにより、十分な高温強度と、優れた機械加工性を兼ね備えるTiAl基合金が得られる。

0049

ところで、本発明のTiAl基合金においては、Ti−Al−X(X;Cr,V,Mnのうち1種以上)の3元系合金が用いられているが、これは、以下の理由による。まず、2元系のTiAl基合金であってもAl濃度45〜48原子%とすることにより機械的特性をある程度良好にすることは可能である。ところが、図3のTi−Alの2元系状態図に示すように、かかる成分のTiAl基合金のα相領域の温度は1300℃を超え、(α+β)相の平衡領域では1400℃以上となっている。つまり、α相の単一領域に加熱して製造する場合であっても1300℃以上に素材を加熱する必要があり、また、この製造方法で作製されたTiAl基合金は基地中にβ相をほとんど含まないものであるため、機械加工性が十分ではない。さらに、β相を基地中に析出させて機械加工性を向上させようとすると、保持温度を(α+β)相の平衡領域内とするために1400℃以上に加熱する必要があり、この温度に材料を保持することは加熱炉の性能の制限から工業的には極めて困難である。

0050

従って、本発明では、第3元素としてCr,V,Mnから選ばれる1種以上を3〜10原子%の範囲で含有させることにより、図2の状態図に示すように(α+β)相の平衡温度領域の下限を、1150〜1250℃程度にまで低下させている。これにより、通常の加熱炉を用いた場合でも問題なく製造が可能である。

0051

また、第3元素であるCr,V,Mnは、TiAl基合金の使用目的に応じて適切なものが選択され、その含有量も目的に応じて選択される。具体的には、上記3つの元素は、TiAl基合金のα相及び(α+β)相の平衡温度領域の下限を低下させる効果を有する点は共通しているが、高温強度の点では、α相あるいは(α+β)相の平衡温度領域の下限が最も高いCrを含有するものが最も優れている。その一方で、機械加工性においてはMnを含有するものが最も優れている。これは、Mnを含有させると、TiAl基合金を構成するラメラー粒3のα2相1’、γ相2’、およびβ相5の硬度が低下するので、加工工程における塑性加工性や、実際に動翼などへの加工を行う際の機械加工性が向上するためである。

0052

(金属組織)次に、上記の各工程(第1加熱工程、加工工程、第2加熱工程)で生じる金属組織について以下に説明する。上記第1加熱工程では、(α+β)相の平衡温度領域である1150〜1350℃内の温度TAに保持されているので、金属組織はα相とβ相が共存した状態となる。この第1加熱工程工程から平衡状態の(β+γ)相に到達する際は,α相中からγ相が特定の方位関係を持って析出することで,α相とγ相が積層したラメラー組織が形成される。本発明において高速塑性加工はα相とβ相の共存状態で行なわれ、この時、金属組織中に加工歪みが多数導入される。そして、この加工歪みを起点としてα相中の多くの部位からγ相が析出するので、金属組織中に多数のラメラー粒が形成されることになる。そして、塑性加工の最終段階である加工工程では、各ラメラー粒が充分に成長する前に、隣接するラメラー粒が競合した時点で粒成長が妨げられるので、結果として、粒径の小さなラメラー粒が多数密集した微細組織が得られる。なお、ラメラー粒間の基地はβ相とγ相とを主体とする組織となる。そして、このβ相は、低温では規則化したB2構造となる。

0053

さらに、上記の素材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+γ)相の温度に再加熱して保持することにより、金属組織の再構成が行われ、加熱温度によりラメラー粒およびβ相の面積分率を制御することができ、加熱時間でラメラー粒の粒径を制御することができ、さらに加熱後の冷却速度によりラメラー間隔を制御することができる。特に、この第2加熱工程において冷却速度を変化させるならば、上記第1加熱工程及び加工工程では制御することが困難なラメラー間隔を容易に制御することができるので、所定のラメラー間隔を有するTiAl基合金を得ることができる。

0054

ここで、上記の高速塑性加工として熱間鍛造法を適用できるのは、上記第1加熱工程において、素材を(α+β)相の平衡温度領域に加熱し、金属組織中に高温延性の優れたβ相を導入していることによる。また、上記のような熱間鍛造を行うことにより、素材中の鋳造欠陥が無くなるので、TiAl基合金を動翼などに加工する際に、TiAl基合金に割れ欠けが発生しにくくなり、この点においても本発明の製造方法により作製されたTiAl基合金は機械加工性に優れていると言える。

0055

製造条件による金属組織制御)以上の構成の製造方法においては、TiAl合金の素材の組成および各工程における製造条件によりTiAl基合金の金属組織を制御することが可能である。以下に各工程における製造条件と、それに伴う金属組織の変化の傾向について説明する。

0056

組成:Cr,V,Mnの含有量によりラメラー粒3および基地4に析出するβ相5の面積分率を制御することができる。含有量が多いほどβ相が多く析出して機械加工性は向上するが、高温強度が低下するので、3〜10原子%の範囲内で使用目的に応じて設定すればよい。

0057

第1加熱工程:第1加熱工程においては、その保持温度によりラメラー粒3及びβ相5の面積分率を制御することができる。

0058

加工工程:加工工程においては、高速塑性加工による加工度により、ラメラー粒3の結晶粒径を制御することが可能である。すなわち、加工度を大きくするほどラメラー粒の粒径が小さくなり、機械加工性と、高温強度の両方が向上する。

0059

第2加熱工程:第2加熱工程では、加熱温度、加熱時間、冷却速度により金属組織の制御を行うことができる。すなわち、加熱温度が高いほど、平衡状態に近づくためにラメラー粒の面積分率が大きくなり、加熱時間が長いほど、ラメラー粒の粒径は大きくなる。また、冷却速度が大きいほどラメラー間隔は小さくなる。(α+β+γ)相領域および(β+γ)相領域の熱処理では加熱温度および時間が大きくなるほどラメラー粒の面積分率は小さく、β相の面積分率は大きく、ラメラー間隔は大きくなる。なお、この熱処理では冷却速度の影響は少ない。つまり以上示した、これらの傾向に基づいて適切な条件を設定すればよい。

0060

(高速塑性加工)上記した高速塑性加工を行う工程(加工工程)においては、塑性変形率毎秒10%以上の高速として、ラメラー組織の起点となる歪みを与える。この場合、材料が高いひずみ速度下で変形を受けるので、高速塑性加工時の材料をなるべく高温に保ち、その変形能を大きくすることが必要である。そのため塑性加工の最終温度TBを1000℃以上とすることが好ましい。塑性加工の最終温度TBが1000℃未満であると、加工時の材料温度が低くなるので、変形能が低下して材料が割れる虞があるからである。

0061

(鍛造法)本発明に係るTiAl基合金の製造方法においては、高速塑性加工の手段として鍛造法を用いることが好ましい。これは、前記加工工程におけるTiAl基合金素材の加工度を大きくするほど、TiAl基合金の金属組織を微細化することが可能であり、これにより、より優れた高温強度と機械加工性を備えたTiAl基合金を製造することができるからである。具体的には、前記高速塑性加工による有効歪みが、0.8以上となるように前記TiAl基合金素材を加工することが好ましく、前記高速塑性加工による有効歪みが、1.2〜4.0となるように前記TiAl基合金素材を加工することがより好ましい。なお、大きな有効歪みを短時間に得る方法としては高速四面鍛造が挙げられる。

0062

ここで、図4を参照して、据え込み鍛造と高速四面鍛造について説明する。図4(a)は、据え込み鍛造による加工過程を示す模式図であり、図4(b)は、高速四面鍛造による加工過程を示す模式図である。図4(a)に示す据え込み鍛造は、鋳塊を加工して作製された円柱状のTiAl基合金素材40Aを、平坦な加工面41aを有する加工部41,41で挟み込み、この加工部41,41により前記素材40Aの軸方向(図示上下方向)に圧下して円盤状のTiAl基合金素材42を得る。

0063

一方、図4(b)に示す高速四面鍛造は、鋳塊を加工して作製された円柱状のTiAl基合金素材40Bを、その側面を4つの加工部43A,43B,44A,44Bが取り囲むように配置し、これらの加工部43A,43B,44A,44Bに設けられた平坦な加工面43a、43b、44a、44bにより前記素材40Bを側面から加工する。この高速四面鍛造は、対向して配置された一対の加工部43A,43Bにより素材40Bを挟み込むように押圧して加工し、続いて対向して配置されたもう一対の加工部44A,44Bにより素材40Bを挟み込むように押圧して加工する。つまり、加工部43A,43Bによる加工と、加工部44A,44Bによる加工を交互に連続して行い、角柱状のTiAl基合金素材46を得るものである。

0064

高速四面鍛造により得られるTiAl基合金の形状は、四角柱状であるため、例えばタービンの動翼などに用いる際に、少ない加工量で動翼の形状を得ることができる。また、加工量が少なくてすむので材料を節約することができ、加工時間も短くすることができるので、製造コストの点で有利である。

0065

[動翼]最後にこれらの組成を有する本発明のTiAl基合金を使用した動翼について説明する。図5に動翼の外観形状を例示する。この図5に示す動翼において、動翼50は羽根50Aと基部50Bから成り、基部50Bを円盤状のディスク(図示省略)の外周の溝部に打ち込むことにより、動翼の全体が構成される。なお、上記動翼50の他、ディスク自体を本発明のTiAl基合金を用いて製造してもよい。

0066

本発明の動翼は、軽量でしかも耐衝撃性に優れているので、航空機用船舶用あるいは各種産業用ガスタービンや蒸気タービンの動翼に使用することが可能で、信頼性を維持したままタービンの高性能化と軽量化に寄与するものとなる。

0067

[第1実施例]第1実施例では、TiAl基合金の金属組織の違いによる特性への影響を検証するために、加工工程後の熱処理条件を種々に変化させてTiAl基合金を作製し、機械加工性及び高温強度の評価を行った。

0068

(実施例1)
工程1.TiAl基合金素材の作製
表1に示すようにAl:42原子%、Mn:5原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなる組成を有するるTiAl基合金をプラズマスカル溶解した後、鋳造してインゴットとし、さらに適宜切り出して表面層を除去し、95mmφ×109mmの円柱状の鍛造用素材を得た。

0069

工程2.高速塑性加工(鍛造)
この素材を1250℃で1時間保持した後取り出し、2800トン冷間プレス機にて厚みが43.5mmの所定形状になるまで据え込みで鍛造し、円盤状にした。鍛造は、炉から押出材を取り出してから約30秒で行ない、鍛造後空冷放置した。

0070

工程3.塑性加工後の熱処理
次に、上記にて得られた試料を、1250℃で10分間保持した後取りだし、ラメラー粒径30μmの実施例1のTiAl基合金試料を得た。

0071

(実施例2)次に、実施例2の試料として、上記工程3における熱処理として、1350℃で10分間施した以外は、上記実施例1と同様にして、TiAl基合金を作製した。

0072

(比較例1)次に、比較例1の試料として、上記工程3の熱処理を施さない以外は、上記実施例1と同様にして、TiAl基合金を作製した。すなわち、比較例1の試料は、鍛造ままのTiAl基合金である。

0073

(比較例2,3)次に、比較例2,3の試料として、上記工程3の熱処理条件を、それぞれ900℃で1時間保持、1370℃で10分間保持とした以外は、上記実施例1と同様にしてTiAl基合金を作製した。

0074

〔試料の特性評価
(機械加工性の評価)本実施例において、TiAl基合金の機械加工性を評価するために行った加工試験概要を図面を参照して以下に説明する。図6は、本加工試験の実施方法を説明するための斜視図であり、図7は、図6に示すエンドミルを拡大して示す上面図である。

0075

本例の加工試験においては、図6に示すように、TiAl基合金試料30の側面上側の面にスクエアエンドミル31の側面を当て、このエンドミル31を回転させてその側面により試料30を切削した。エンドミル31の送り方向は、試料30の被加工面30Aにほぼ平行な方向とし、試料30とエンドミル31との接触面(被加工部30B)の幅Rdは2mm、高さAdは8mmとした。

0076

上記切削加工試験を、エンドミル31の送り速度F(mm/min)を変化させて行い、エンドミルのビビリや欠損が起こらない最大の送り速度Fを比較することにより機械加工性を評価した。この送り速度Fは、図7に示す送り量Szを一定とし、エンドミル31の回転数N(min-1)を変化させることにより調整した。この際、送り量Szは以下の式1により与えられるので、送り速度Fは、式2のようになり、送り速度Fが大きいほど、単位時間当たりの切削量が大きくなる。

0077

従って、ビビリや欠損が発生しない最大の送り速度が大きいほど、機械加工性に優れるTiAl基合金であることを示している。また、この送り速度が200mm/min以上であれば、例えば動翼などに加工する際のように加工量が多くとも実用的な製造が可能になるので、本実施例では送り速度が、200mm/minに達するか否かで機械加工性を評価した。

0078

(式1) Sz=F/nN=πFD/1000nV
(式2) F=Sz×nV/πD

0079

上記の式1において、F(mm/min)はエンドミル31の送り速度、nはエンドミル31の刃数、N(min-1)はエンドミル31の回転数を示している。また、D(mm)はエンドミル31の直径、V(m/min)は、エンドミル31の切削速度(エンドミル31外周の周速)を示している。

0080

以下に、この切削加工試験に用いた加工工具および加工条件を示す。
加工工具
種類:スクエアエンドミル
型番SSUP4200ZX(住友電工社製)
母材:超硬
コーティング:TiAlNコーティング
形状:直径D 20mm
長さL 128mm
刃数n 4枚刃
ねじれ角40°
突き出し量: 60mm
切削条件
切削速度V(m/min) 30
回転数N(min-1) 477〜796
半径方向切り込み深さRd(mm) 2
切削幅Ad(mm) 8
送り量Sz(mm/刃) 0.05〜0.3
送り速度F(mm/min) 95〜430
切削油剤水溶性

0081

(高温強度の評価)本例では、高温(700℃)における引張試験を行い、その引張強さを比較することにより、各実施例及び比較例のTiAl基合金試料の高温強度を評価した。また、本発明においては、この引張強さが、65kgf/mm2以上であれば、十分な高温強度を備えているものとして評価を行った。これは、上記の引張強さを備えているならば、タービンの動翼などの用途に問題なく適用できるからである。

0082

(評価結果)上記の方法による機械加工性と、高温強度の試験結果を表1に併せて記載する。この表に示すように、上記工程3における加熱温度を1350℃以下とした実施例1,2の試料は、その金属組織において本発明の要件を満たしており、いずれも送り速度が200mm/minを越え、また引張強さも65kgf/mm2以上であり、十分な高温強度と、優れた機械加工性を兼ね備えたTiAl基合金であることが確認された。

0083

これに対し、上記工程3の熱処理を行わなかった比較例1の試料は、最大の送り速度が95mm/minと極端に悪くなった。これは、比較例1の試料は鍛造ままであり,急激に冷えたため、ラメラー粒の間隔が0.3μmと小さくなり、延性に劣るためである。また、加熱条件を900℃で1時間とした比較例2の試料は、ラメラー間隔が0.3μmと鍛造ままと大差ないため、本発明の要件を満たしていない。この比較例2の試料は、機械加工性と高温強度のいずれも目標値に到達しなかった。また、上記工程3における加熱温度を1370℃とした比較例3の試料は、ラメラー粒の面積分率が81%であり、本発明の要件を満たしていない。この比較例3の試料は、高温強度は81kgf/mm2と目標に達していたが、機械加工性が目標値に達しなかった。

0084

(金属組織の観察)上記実施例1と、比較例3の試料の金属組織の電子顕微鏡像図8および図9に示す。これらの図に示す構成要素のうち、図1の模式図に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付している。図8に示す実施例1の試料の金属組織においては、ラメラー粒3が適度な間隔を有して配置され、ラメラー粒3の間隙をγ相2とβ相5とからなる基地4が埋めて構成されている。つまり、図9に示すラメラー粒3は、金属組織の大部分において基地4を介して配置されている。一方、図9に示す比較例3の試料の金属組織は、ラメラー粒の面積分率が多く,間隙を埋める基地4の面積分率が小さい。また金属組織中の大部分のラメラー粒3は、隣接するラメラー粒3と接するようにして配置されている。

0085

図8に示す実施例1の試料の金属組織は、比較的高温の硬度の小さいβ相5を含む基地4が、ラメラー粒どうしの間隙を埋めている。従って、この金属組織からは、機械加工時の変形が硬度の大きい,つまり機械加工性を低下させるラメラー粒により阻害されにくく、機械加工性に優れた合金であることが示唆されている。これに対して、図9に示す比較例3の試料の金属組織は、ラメラー粒3の面積分率が多い。従って、この金属組織からは、加工時の変形がラメラー粒3に阻害されて、機械加工性に劣る合金であることが示唆されている。

0086

0087

[第2実施例]第2実施例では、上記工程3における保持時間により、TiAl基合金のラメラー粒径を変化させ、表1に示す実施例3および比較例4のTiAl基合金試料を作製し、機械加工性及び高温強度の評価を行った。

0088

(実施例3)上記工程3における加熱条件を、1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様として実施例3のTiAl基合金試料を作製した。

0089

(比較例4)上記工程3における加熱条件を、1280℃で1時間とした以外は、上記実施例3と同様として比較例4のTiAl基合金試料を作成した。

0090

(評価結果)上記にて作製された実施例3および比較例4の試料について、機械加工性及び高温強度の評価を行った結果を表1に示す。この表に示すように、本発明の要件を満たす実施例3の試料は、優れた機械加工性を備えていることが確認された。また、実施例3の試料の電子顕微鏡組織は、実施例1の試料と同様の組織を呈していた。これに対して、比較例4の試料は、ラメラー粒の粒径が72μmであり、本発明の要件を満たしていない。この比較例4の試料は、送り速度が191mm/minであり、目標値に達していない。これは、ラメラー粒が粗大化したことにより高温延性が低下したためである。

0091

[第3実施例]本実施例では、上記工程3における冷却速度を変化させて表1に示す実施例4,5および比較例5のTiAl基合金試料を作製し、機械加工性及び高温強度の評価を行った。

0092

(実施例4)上記工程3における加熱条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4のTiAl基合金試料を作製した。

0093

(実施例5)次に、上記工程3における冷却速度を30℃/minとした以外は、上記実施例4と同様にして、実施例5のTiAl基合金試料を作製した。

0094

(比較例5)次に、上記工程3における冷却速度を60℃/minとした以外は、上記実施例4と同様にして、比較例5のTiAl基合金試料を作製した。

0095

(評価結果)上記にて作製された実施例4,5、比較例5の試料の機械加工性および高温強度の評価結果を表1に示す。表1に示すように、実施例4,5および比較例5の試料の金属組織を比較すると、ラメラー粒の間隔のみが異なっており、それぞれ1.5μm、0.4μm、0.2μmとされている。そして、表1に示すように、その金属組織の構成が本発明の要件を満たす実施例4および実施例5の試料は、最大の送り速度が300mm/minを越えており、特に優れた機械加工性を備えていることが確認された。一方、ラメラー粒の間隔が0.2μmの比較例5の試料は、機械加工性が191mm/minであり、目標値に達しなかった。尚、実施例4,5の試料の電子顕微鏡組織は、実施例1と同様の組織を呈していた。

0096

[第4実施例]第4実施例では、β相の面積分率の適切な範囲を検証するために、表1に示すようにMn含有量を種々に変化させた実施例6,7および比較例6,7のTiAl基合金試料を作製し、機械加工性および高温強度の評価を行った。

0097

(実施例6,7)実施例6の試料は、表1に示すように、TiAl基合金素材としてTi−41Al−5Mnなる組成の素材を用い、上記工程3における加熱条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様にして作製した。実施例7の試料は、TiAl基合金素材としてTi−44Al−3Mnなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例6と同様にして作製した。

0098

(比較例6,7)比較例6の試料は、TiAl基合金素材としてTi−45Al−2Mnなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例6と同様にして作製した。比較例7の試料は、TiAl基合金素材としてTi−40Al−6Mnなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例6と同様にして作製した。

0099

(評価結果)上記にて作製された実施例6,7および比較例6,7のTiAl基合金試料について、機械加工性及び高温強度の評価結果を表1に示す。表1に示すように、実施例6,7および比較例6,7の試料のβ相の面積分率は、それぞれ15%、5%、1%、24%とされている。そして、本発明の要件を満たす実施例6,7の試料は、最大の送り速度が300mm/minを越えており、特に機械加工性に優れたTiAl基合金であることが確認された。また、これら実施例6,7の試料は、引張強さにおいても目標値に達しており、十分な高温強度を備えていることが確認された。また、これら実施例6,7の試料の電子顕微鏡組織は、実施例1の試料と同様の組織を呈していた。

0100

一方、β相の面積分率が1%とされた比較例6の試料は、最大の送り速度が191mm/minであり、目標値に達しなかった。また、β相の面積率が24%とされた比較例7の試料は、最大の送り速度は430mm/minと優れていたものの、引張強さが55kgf/mm2であり、高温強度が不足していた。

0101

[第5実施例]第5実施例では、表2に示すように、添加元素としてNbを添加した試料を作製し、これらの試料について耐酸化性および機械加工性を評価した。

0102

(実施例8,9)実施例8の試料は、表2に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−5Mn−1Nbなる組成の素材を用い、上記工程5における加熱条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様にして作製した。実施例9の試料は、表2に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−5Mn−2Nbなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例8と同様にして作製した。

0103

(比較例8)比較例8の試料は、表2に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−4.5Mn−3Nbなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例8と同様にして作製した。

0104

(評価結果)このようにして得られた実施例8,9の円盤状のTiAl基合金の電子顕微鏡組織は、実施例1と同様の組織を呈していた。また、このようにして得た実施例8,9および比較例8、ならびに実施例1の試料について、機械加工性試験と共に,800℃×500hの大気酸化試験を行い、それぞれの試料の酸化増量から耐酸化性を比較した。これらの結果を表2に併記する。実施例8,9のTiAl基合金は、Nb以外がこの合金と同じである実施例1の試料に比べ、酸化増量は大幅に低下している。つまり、Nbは本発明のTiAl基合金の耐酸化性向上には非常に有効であることが判る。なお、この効果はW、Ni、Hf、Zrにおいても同様である。

0105

また、Nbを3原子%添加した比較例8の試料は、酸化増量はさらに低下しているものの、最大の送り速度が、143mm/minであり目標値に達しなかった。従って、Nbの添加量は、3原子%未満とすることが好ましい。

0106

0107

[第6実施例]第6実施例では、表3に示すように、添加元素としてC(炭素)を添加した試料を作製し、これらの試料について高温強度および機械加工性を評価した。

0108

(実施例10,11)実施例10の試料は、表3に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−5Mn−0.1Cなる組成の素材を用い、上記工程5における加熱条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様にして作製した。実施例11の試料は、表3に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−5Mn−0.4Cなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例10と同様にして作製した。

0109

(比較例9)比較例9の試料は、表3に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−5Mn−0.6Cなる組成の素材を用いた以外は、上記実施例10と同様にして作製した。

0110

(評価結果)このようにして得られた実施例10,11の円盤状のTiAl基合金試料の電子顕微鏡組織は、実施例1と同様の組織を呈していた。また、このようにして得たTiAl基合金試料の高温強度と機械的特性を上記と同様にして測定した。これらの結果を表3に併記する。実施例10のTiAl基合金試料は、C以外がこの試料と同じである実施例1の合金に比べ、高温強度が向上しているが、その反面機械加工性の指標である最大の送り速度は若干低下している。また、実施例11の試料についても同様の傾向を示した。つまり、Cは本発明のTiAl基合金に対して若干の機械加工性の低下をもたらすものの、高温強度向上には非常に有効であることが判る。なお、この効果はSi、B、Taにおいても同様である。

0111

また、Cを0.6原子%添加した比較例9の試料は、実施例1の試料に比して高温強度の向上が著しいが、最大の送り速度が191mm/minであり、目標値に達しなかった。従って、本発明のTiAl基合金に対して、0.1〜0.4原子%のCを添加するならば、優れた機械加工性を維持してかつ高温強度を向上させることができる。

0112

0113

[第7実施例]第7実施例では、上記工程2の高速塑性加工における加工度が、TiAl基合金の特性に与える影響を検証するために、塑性加工の方法として、据え込み鍛造と高速四面鍛造を行った試料を作製し、これらの試料について機械加工性と高温強度の評価を行った。

0114

(実施例12,13)実施例12,13の試料は、上記工程2において、図4(b)に示す高速四面鍛造により高速塑性加工を施し、上記工程3における熱処理の条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と同様にして作製した。

0115

(評価結果)先に記載の有効歪みの概念により、それぞれの有効歪みを導出し、同時に据え込み鍛造により加工された実施例1の試料についても、有効歪みを導出した。それぞれの有効歪みを表4に示す。

0116

このようにして得られた実施例12,13の円盤状のTiAl基合金試料の電子顕微鏡組織は、実施例1と同様の組織を呈していた。また、このようにして得たTiAl基合金試料の高温強度と機械的特性を上記と同様にして測定した。これらの結果を表4に併記する。表4に示すように、高速四面鍛造により加工度を向上させた実施例12,13の試料は、機械加工性と高温強度のいずれも実施例1の試料と比して優れたものであった。これは、高速塑性加工時の加工度を向上させたことにより、金属組織を構成する結晶粒が微細化したためである。従って、高速塑性加工時の加工度をより大きくするならば、本発明のTiAl基合金の機械加工性および高温強度を、より優れたものとすることができる。

0117

発明の効果

0118

以上、詳細に説明したように、本発明のTiAl基合金は、α2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメラー粒が分散し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%である構成としたことので、金属組織中に形成されたラメラー粒自体により十分な高温強度とともに、ラメラー粒間のβ相の効果によって高温変形能が向上し、また同時に,機械加工時の刃先温度は高温であることから塑性加工が容易となる。これにより、従来難削材であったTiAl基合金を動翼や航空機部品などの大型部品に使用した場合に、効率よく加工を行うことが可能となる。

0119

また、本発明のTiAl基合金に、1〜2.5原子%のNbを添加して構成するならば、優れた機械加工性と、耐酸化性を兼ね備えたTiAl基合金とすることができる。

0120

あるいはまた、本発明のTiAl基合金に、0.1〜0.4原子%のC(炭素)を添加して構成するならば、優れた機械加工性と、特に優れた高温強度を兼ね備えたTiAl基合金とすることができる。

0121

次に、本発明のTiAl基合金の製造方法は、TiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持し、その後に塑性加工することにより、欠陥が無くなるとともに、加工歪みと相変態の相乗効果で組織が微細化される。さらに、その後に、TiAl基合金素材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+γ)相の平衡温度領域に保持して、適当な速度で冷却することでラメラー粒及びβ相の面積分率やラメラー粒の粒径およびラメラー間隔を制御し、優れた機械加工性と、高温強度を備えたTiAl基合金を製造することができる。

0122

次に、本発明によれば、機械加工性に優れた上記本発明のTiAl基合金を用いたことにより、動翼を形成するために必要な機械加工にかかるコストを低減することができるので、低コストの動翼を提供することができる。また、上記本発明のTiAl基合金を用いた動翼は、十分な高温強度を備えているので航空機用、船舶用あるいは各種産業機械用のガスタービンや蒸気タービンの動翼として使用すれば、タービンの性能向上と軽量化に大いに役立つものとなる。

図面の簡単な説明

0123

図1図1は、本発明に係るTiAl基合金の金属組織の電子顕微鏡像を模式的に示す図である。
図2図2は、Ti−Al−Cr,Ti−Al−Mn,Ti−Al−Vの3元系合金の模式状態図である。
図3図3は、Ti−Alの2元系合金の模式状態図である。
図4図4(a)は、据え込み鍛造の加工過程を示す模式図であり、図4(b)は、高速四面鍛造の加工過程を示す模式図である。
図5図5は、本発明に係る動翼の一例を示す平面図である。
図6図6は、本発明の実施例における加工試験の方法を説明するための構成図である。
図7図7は、図6に示すエンドミルとその近傍を拡大して示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施例1のTiAl基合金の電子顕微鏡像である。
図9図9は、比較例3のTiAl基合金の電子顕微鏡像である。

--

0124

1…α2相、2…γ相、3…ラメラー粒、4…基地、5…β相、10…TiAl基合金、50…動翼

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