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概要
背景
従来のサスペンション制御装置の一例として特開平5−330325号公報に示すものがある。この公報に示す第2実施例の装置は、車両の車体と車軸との間に介装された減衰係数可変型のショックアブソーバと、ショックアブソーバの減衰係数を調整するアクチュエータと、車体に取り付けられて車体の上下方向の加速度を検出する加速度センサと、この加速度センサが検出した加速度を積分して車体の上下方向の速度を求める積分回路と、車体の上下方向の加速度の絶対値を求めて、前記積分して求めた車体の上下方向の速度をこの絶対値で割って、この値を車体と車軸間の相対速度として当該相対速度(後述の相対速度M)に基づいて、アクチュエータにショックアブソーバの減衰係数を調整させて車体の制振を行うようにしている。
この場合、ショックアブソーバは、後述するスカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させた方法により目標減衰係数を定め、この目標減衰係数に基づいてアクチュエータに供給する制御信号(電流)に対応して減衰係数が変えられるようにしている。そして、減衰係数の大きさが所定値に定められることにより、相対速度に対応した(例えば略比例する)大きさの減衰力を発生する(相対速度−減衰力特性を確保する)と共に、減衰係数ひいては目標減衰係数を換えることにより相対速度−減衰力特性を調整できるようになっている。
前記従来技術のサスペンション制御装置は、スカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させて制御している。ここで、スカイフックダンパ理論では、
V:車体(ばね上)の上下絶対速度
X:車軸(ばね下)の上下絶対速度
CZ:絶対座標系との間に設けたショックアブソーバ(ダンパ)の減衰係数とした場合、車体と車軸との間に設けたショックアブソーバ(ダンパ)の減衰係数C1を次のように得るようにしている。
すなわち、V(V−X)>0であるなら、
C1 =CZ V/(V−X) … (1)
としている。
また、V(V−X)<0であるなら、
C1 =0 … … … (2)
としている。
これに対して、前記従来技術のサスペンション制御装置では、ストロークセンサを用いずに、車体に設けた上下加速度センサのみを用いてばね上の上下加速度を検出し、この上下加速度に基づいて以下のように減衰係数C1を決定するようにしている。そして制御則によって、前記式(1)中のばね上とばね下との実際の相対速度(V−X)は、相対速度(V−X)を平均的な一定値(M)とみなし、以下のような制御則によって近似している。前記従来技術のサスペンション制御装置では、前記スカイフックダンパ理論に基づいて、以下のように減衰係数C1を得るようにしている。
すなわち、V(V−X)>0であるなら、
C1 =Kv V/M … … (1a)
また、V(V−X)<0であるなら、
C1 =Cmin(小さい値) … … (2a)
としている。前記式(1a)、(2a)において、Kv:定数〔Kv =CZ/(V−X)〕、Cmin≠0である。
概要
制御精度の向上を図ることができるサスペンション制御装置を提供する。
相対速度が初期設定値V2以上の相対速度領域にある場合、スカイフックダンパ理論に近似させた制御則において相対速度として初期設定値V2を用いて予め得られる指令電流I1に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分B−E)に代えて、指令電流I1より小さい値の指令電流I2に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分C−F)を制御に用いようにする。実相対速度における減衰力をE点からF点(すなわち、点Bで示されるFsky(B−D)の補正前目標減衰力に相当する大きさ)に下げることができ、制御精度の向上を図ることができる。
目的
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、制御精度の向上を図ることができるサスペンション制御装置を提供することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
車両のばね上とばね下との間に介装され、アクチュエータへの指示電流に応じて減衰特性を調整可能なショックアブソーバと、車両のばね上の振動を検出するばね上振動検出手段と、該ばね上振動検出手段が検出した検出信号から得られる前記ばね上—ばね下間の相対速度に基づいて前記ショックアブソーバの減衰特性を制御する制御手段と、を備え、前記ショックアブソーバの減衰特性は、前記ショックアブソーバの減衰バルブの開弁点以上の相対速度領域で相対速度に略比例して変化し、かつその変化率が、前記指示電流の大きさに応じて変更されるものであり、前記制御手段は、前記指示電流を、前記減衰バルブの開弁点以上の予め定めた初期設定値に基づいて得た目標減衰力に基づいて設定するサスペンション制御装置であって、前記制御手段は、前記相対速度が前記初期設定値より大きい場合、前記初期設定値に対応する目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して小さい目標減衰力を指令電流の設定に用いることを特徴とするサスペンション制御装置。
請求項2
請求項1記載の構成において、前記相対速度が前記初期設定値より小さい場合、前記初期設定値に対応する目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して大きい目標減衰力を指令電流の設定に用いることを特徴とするサスペンション制御装置。
技術分野
0001
本発明は、車両に用いられるサスペンション制御装置に関する。
背景技術
0002
従来のサスペンション制御装置の一例として特開平5−330325号公報に示すものがある。この公報に示す第2実施例の装置は、車両の車体と車軸との間に介装された減衰係数可変型のショックアブソーバと、ショックアブソーバの減衰係数を調整するアクチュエータと、車体に取り付けられて車体の上下方向の加速度を検出する加速度センサと、この加速度センサが検出した加速度を積分して車体の上下方向の速度を求める積分回路と、車体の上下方向の加速度の絶対値を求めて、前記積分して求めた車体の上下方向の速度をこの絶対値で割って、この値を車体と車軸間の相対速度として当該相対速度(後述の相対速度M)に基づいて、アクチュエータにショックアブソーバの減衰係数を調整させて車体の制振を行うようにしている。
0003
この場合、ショックアブソーバは、後述するスカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させた方法により目標減衰係数を定め、この目標減衰係数に基づいてアクチュエータに供給する制御信号(電流)に対応して減衰係数が変えられるようにしている。そして、減衰係数の大きさが所定値に定められることにより、相対速度に対応した(例えば略比例する)大きさの減衰力を発生する(相対速度−減衰力特性を確保する)と共に、減衰係数ひいては目標減衰係数を換えることにより相対速度−減衰力特性を調整できるようになっている。
0004
前記従来技術のサスペンション制御装置は、スカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させて制御している。ここで、スカイフックダンパ理論では、
V:車体(ばね上)の上下絶対速度
X:車軸(ばね下)の上下絶対速度
CZ:絶対座標系との間に設けたショックアブソーバ(ダンパ)の減衰係数とした場合、車体と車軸との間に設けたショックアブソーバ(ダンパ)の減衰係数C1を次のように得るようにしている。
0005
すなわち、V(V−X)>0であるなら、
C1 =CZ V/(V−X) … (1)
としている。
0006
また、V(V−X)<0であるなら、
C1 =0 … … … (2)
としている。
0007
これに対して、前記従来技術のサスペンション制御装置では、ストロークセンサを用いずに、車体に設けた上下加速度センサのみを用いてばね上の上下加速度を検出し、この上下加速度に基づいて以下のように減衰係数C1を決定するようにしている。そして制御則によって、前記式(1)中のばね上とばね下との実際の相対速度(V−X)は、相対速度(V−X)を平均的な一定値(M)とみなし、以下のような制御則によって近似している。前記従来技術のサスペンション制御装置では、前記スカイフックダンパ理論に基づいて、以下のように減衰係数C1を得るようにしている。
0008
すなわち、V(V−X)>0であるなら、
C1 =Kv V/M … … (1a)
また、V(V−X)<0であるなら、
C1 =Cmin(小さい値) … … (2a)
としている。前記式(1a)、(2a)において、Kv:定数〔Kv =CZ/(V−X)〕、Cmin≠0である。
発明が解決しようとする課題
0009
ところで、上述した従来技術では、ばね下とばね上の相対速度を一定(相対速度M)とみなして目標減衰定数を定め、目標減衰定数に基づいて一定の相対速度−減衰力特性が定められるため、相対速度が遅い時と速い時で目標減衰力と実際に発生する減衰力に誤差が生じ、当該領域において制御精度の向上を図ることが望まれている。
0010
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、制御精度の向上を図ることができるサスペンション制御装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0011
請求項1記載の発明は、車両のばね上とばね下との間に介装され、アクチュエータへの指示電流に応じて減衰特性を調整可能なショックアブソーバと、車両のばね上の振動を検出するばね上振動検出手段と、該ばね上振動検出手段が検出した検出信号から得られる前記ばね上—ばね下間の相対速度に基づいて前記ショックアブソーバの減衰特性を制御する制御手段と、を備え、前記ショックアブソーバの減衰特性は、前記ショックアブソーバの減衰バルブの開弁点以上の相対速度領域で相対速度に略比例して変化し、かつその変化率が、前記指示電流の大きさに応じて変更されるものであり、前記制御手段は、前記指示電流を、前記減衰バルブの開弁点以上の予め定めた初期設定値に基づいて得た目標減衰力に基づいて設定するサスペンション制御装置であって、前記制御手段は、前記相対速度が前記初期設定値より大きい場合、前記初期設定値に対応する目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して小さい目標減衰力を指令電流の設定に用いることを特徴とする。請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、前記相対速度が前記初期設定値より小さい場合、前記初期設定値に対応する目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して大きい目標減衰力を指令電流の設定に用いることを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
0012
以下、本発明の一実施の形態に係るサスペンション制御装置を図1ないし図5に基づいて説明する。図1において、自動車(車両)を構成する車体1(ばね上)と4個(図には一つのみを示す。)の車輪2(ばね下)との間には、ばね3と減衰特性を調整可能なショックアブソーバ4とが並列に介装されており、これらが車体1を支持している。
0013
車体1上には、車体1の絶対座標系に対する上下方向の加速度(ばね上加速度)aを検出する加速度センサ6(ばね上振動検出手段)が取り付けられている。加速度センサ6が検出したばね上加速度a(検出信号)はコントローラ7(制御手段)に供給される。なお、ショックアブソーバ4及びばね3は、4個の車輪2に対応してそれぞれ4個設けられているが、便宜上そのうち一つのみを図示している。
0014
ショックアブソーバ4は、図示しない減衰バルブを備える減衰力発生部(図示省略)と、この減衰力発生部を駆動するアクチュエータ8とを備えている。ショックアブソーバ4は、図5に示すように、前記減衰バルブの開弁点V1を境に相対速度と減衰力との対応関係が変化し、開弁点V1以上の相対速度領域で減衰力が相対速度に略比例する減衰特性(線分J−E、線分K−F参照)を有している。そして、開弁点V1以上の相対速度領域での減衰特性の傾き(変化率)は、アクチュエータ8に供給する指令電流の大きさに応じて変更されるようなっている。
0015
例えば、図5に示すように、指令電流としてI1が定められると、相対速度が0から開弁点V1までの相対速度領域では点A,Jで示すように略二次曲線状の特性を示し、開弁点V1以上の相対速度領域では、点J,B,Eで示すように減衰力が相対速度に比例する特性を示す。同様に指令電流としてI2(I1>I2)が定められると、相対速度が0から開弁点V1までの相対速度領域では点A、Kで示すように略二次曲線状の特性を示し、開弁点V1以上の相対速度領域では、点C,D,Fで示すように減衰力が相対速度に比例する特性を示し、相対速度—減衰特性は、開弁点V1を境に異なるものとなっている。また、開弁点V1以上の相対速度領域では、指令電流がI1及びI2の何れの場合も減衰力が相対速度に比例する特性を示すが、指令電流I1を指令電流I2に代えると、線分J−Eで示される減衰特性及び線分J−Eで示される減衰特性を対比して明らかなように、その傾きが小さくなる。
0016
また、コントローラ7は、スカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させた方法により、値が開弁点V1以上である予め定めた一定の初期設定値V2(相対速度値)に基づいて目標減衰力を定め、この目標減衰力に基づいて得られるアクチュエータ8に供給する指令電流Iに対応して、相対速度−減衰特性を調整し得るようにしている。本実施の形態では、上述した方法で定められる指令電流Iを予めI1とし、ショックアブソーバ4は、通常時〔通常セミアク(セミアクティブ)制御時〕には、図5の線分A−J−Eで示される相対速度−減衰特性を発揮するようにしている。指令電流I1は、初期設定値V2に対応する点Bにおける目標減衰力Fskyから生成している。本実施の形態では、後述する図4に示すように、ステップS3でYes(相対速度が初期設定値V2に比して遅い)と判定すると、前記通常セミアク制御を実施し(ステップS4)、ステップS3でNo(相対速度が初期設定値V2に比して遅くない)と判定すると、線分A−K−Fで示される相対速度−減衰特性制御(この制御を便宜上、補正セミアク制御という。)を行う。
0017
コントローラ7は、図2に示すように、次の(ア)〜(キ)の構成要素を含んでいる。
(ア)ばね上加速度aを積分して上下方向の速度(ばね上絶対速度)Vを求める積分回路10、(イ)積分回路10で求めたばね上絶対速度Vとスカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させた方法を用いて得られる目標減衰力c(図5では例えば点B、点Cで示される)を計算する減衰力演算部11、(ウ)減衰特性が切り替わる開弁点V1を検出すると共に、積分回路10で求めたばね上絶対速度Vを用いて相対速度を推定し、相対速度を示す情報及び開弁点V1を示す情報を開弁情報dとして出力する開弁点検出部12、(エ)開弁点検出部12の開弁情報d(図5では開弁点V1)から減衰バルブが開弁状態かどうかを判定する開弁点判定部13、(オ)減衰バルブが開弁状態であり相対速度が初期設定値V2以上である場合に、減衰力演算部11で計算されて上述したように予め定められた目標減衰力c(図5では例えば点Bで示される補正前目標減衰力Fsky)に代えて新たな目標減衰力〔図5では例えば点Cで示される補正後目標減衰力Fsemi2〕を求める目標減衰力補正部14(なお、この目標減衰力補正部14の演算処理により前記補正セミアクティブ制御が行われる。)、(カ)相対速度が初期設定値V2未満である場合には前記予め定められた目標減衰力c(図5では例えば点Bで示される補正前目標減衰力Fsky)に対して、また、相対速度が初期設定値V2以上である場合には目標減衰力補正部14が求めた補正後目標減衰力に制御ゲインK1をかけて指示減衰力fを計算する指示減衰力計算部15、(キ)指示減衰力計算部15で計算した指示減衰力f(補正後目標減衰力に基づいて得られる指示減衰力f又は補正が行なわれないで補正前目標減衰力に基づいて得られる指示減衰力f)から所定の相対速度—減衰特性(線分A−K−Fで示される相対速度−減衰特性等)に対応する指令電流I(アクチュエータ8の駆動電流)を求め、求められた指令電流Iをアクチュエータ8に供給させる減衰特性算出部16。
0018
コントローラ7は、上述した通常セミアクティブ制御及び補正セミアクティブ制御を選択的に実施するが、この選択は図4のフローチャートで示されるように行われる。まず、制御方法(通常セミアクティブ制御及び補正セミアクティブ制御)の決定処理を開始する(ステップS1)と、開弁点検出部12は、減衰特性が切り替わる開弁点V1を検出すると共に、積分回路10で求めたばね上絶対速度Vを用いて相対速度を推定する(この相対速度を推定する手段を便宜上、相対速度推定手段17という。)〔ステップS2〕。
0019
次のステップS3で、相対速度が初期設定値V2に比して遅いか否かの判定を行う。ステップS3で、Yes(相対速度が初期設定値V2に比して遅い)と判定すると、上述したように前記通常セミアク制御を実施し(ステップS4)、ステップS3でNo(相対速度が初期設定値V2に比して遅くない)と判定すると、線分A−K−Fで示される補正セミアクティブ制御を行う(ステップS5)。
0020
前記相対速度推定手段17としては、例えば図3に示す回路が用いられている。図3において、相対速度推定手段17は、加速度センサ6からの加速度aが入力され、後述するように実際の相対速度の位相とばね上共振周波数帯域近傍で同じ位相に調整するための位相調整フィルタ20と、位相調整された信号g1をローパスフィルタ21a及びハイパスフィルタ21bを通して処理して信号g2を生成するゲイン調整フィルタ21と、信号g2の絶対値を求める絶対値算出手段22とからなっている。位相調整フィルタ20は、位相進み要素を含むものになっており、実際の相対速度に対して所定角度進んでいるばね上加速度aの位相を所定角度進ませて、例えば位相差を180度にして、相対速度の位相にばね上加速度aの位相を合わせるようにし、この位相調整した信号を推定相対速度(信号g1)としている。ゲイン調整フィルタ21は、位相調整フィルタ20の出力部に並列接続されるローパスフィルタ21a及びハイパスフィルタ21bから構成されている。ゲイン調整フィルタ21は、ローパスフィルタ21a及びハイパスフィルタ21bからの出力を加え合わせてバンドパス信号g2(推定相対速度)を得て、このバンドパス信号g2(推定相対速度)を絶対値算出回路22に出力する。絶対値算出回路22は、バンドパス信号g2(推定相対速度)の絶対値を求めてこれを推定相対速度として出力するようにしている。
0021
なお、上述した相対速度の推定を行なう場合、次のような事項を利用し、簡便に相対速度の推定を行なったり、相対速度の推定をより確実に行うことも可能である。すなわち、(1)高速道路は路面が良好なものであると推定されることから高速道路を走行している際にはショックアブソーバ4に備えられるピストンの上下速度は比較的遅い。また、(2)車速が速い場合には、高速道路などのように路面状態が良好な道路を走行していると推定されるので、前記ピストンの上下速度は比較的遅いと推定される。また、(3)ばね上加速度が所定時間内でしきい値を超えた回数が少ない場合、前記ピストンの上下速度は比較的遅いと推定される。さらに、(4)ばね上加速度の値が小さいと、路面状態が比較的良好であり、前記ピストンの上下速度は比較的遅いと推定される。
0022
次に、前記目標減衰力補正部14について説明する。目標減衰力補正部14は、開弁情報d(開弁点V1を示す情報及び相対速度を示す情報)により初期設定値V2以上の相対速度領域があると判断した場合に、以下に示されるように目標減衰力を補正する。まず、積分回路10が求めたばね上絶対速度Vから、補正前目標減衰力Fsky〔減衰力(B点)〕を算出する。ここでは、B点の補正前目標減衰力Fskyを算出することになる。
0023
しかし、実際には、相対速度は初期設定値V2に限られない。そのため、実際に発生する減衰力は目標とする減衰力と異なる。例えば、実相対速度が図2右側に示される値であるとする。この場合、実相対速度は初期設定値V2に比して大きく、図2に示されるように、実際に発生する減衰力(点Eにおける減衰力)は大きくなる。このため、このまま減衰力を発生させてしまうと、目標とした減衰力が得られず、制御精度の低下を招くことになる。そこで、このような制御精度の低下を抑制するために、補正を行なう。この補正内容を図2に基づいて説明する。
0024
説明の便宜上、予め指令電流IとしてI1が定められ、補正により指令電流IをI2とする場合を例にする。図2において、三角形AEGと三角形ABD、三角形AFGと三角形ACDは相似であり、以下の関係がある。
Fsky(B−D) :Fsemi2(C−D)
=Fsemi(E−G):Fsky(F−G) … … (3)
Fsky(B−D) :補正前目標減衰力、
Fsemi2(C−D) :補正後目標減衰力
Fsemi(E−G):補正後発生減衰力
Fsky(F−G) :補正前発生減衰力
0025
ばね力を無視すると、補正前発生減衰力Fsemiは、式(4)となるので、補正後目標減衰力Fsemi2は、式(3)を変形した式(5)で示される。
Fsemi=m・a … … (4)
m:車体質量
a:車体絶対加速度
Fsemi=(Fsky)2/m・a … … (5)
0026
補正後目標減衰力Fsemi2(すなわち、指令電流I2)の減衰力を発生するように指令電流Iを生成する〔指令電流IをI1からI2に変更する〕ことによって、目標減衰力と発生減衰力の誤差を少なくできる。つまり、このような指令電流Iの変更(補正)を行なわずに、制御則において相対速度として初期設定値V2を用いて予め得られる指令電流I1に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分B−E)では、実相対速度に対する減衰力が点Eで示される減衰力を発生し、目標減衰力に比して過大になってしまう。
0027
これに対し、本実施の形態では、上述したように指令電流IをI1からI2に変更して、指令電流I2に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分C−F)が用いられるようにすることから、実相対速度における減衰力をE点からF点(すなわち、点Bで示されるFsky(B−D)の補正前目標減衰力に相当する大きさ)に下げることができ、制御精度の向上を図ることができる。
0029
また、上記実施の形態では、開弁情報d(開弁点V1を示す情報及び相対速度を示す情報)により、相対速度が初期設定値V2以上の相対速度領域にあると判断した場合に、指令電流IをI1からI2に変更して、指令電流I1に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分J−B)に代えて指令電流I2に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分C−F)が用いられるようにする場合を例にしたが、上記内容に代えて、又は、上記内容に加えて、下記の内容を実施するように構成してもよい。すなわち、開弁情報d(開弁点V1を示す情報及び相対速度を示す情報)により、相対速度が開弁点V1から初期設定値V2までの相対速度領域にあると判断した場合には、指令電流IをI1からI1より大きい値の指令電流I3に変更して、指令電流I1に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分J−B)に代えて指令電流I3に対応する相対速度—減衰特性(図5で線分L−N)が用いられるようにする。このように構成することにより、実相対速度が初期設定値V2に比して小さい場合に、実際に発生する減衰力が目標とした減衰力より小さくなり減衰力不足となることが抑制され、その分、良好な制御精度を確保することができる。
0030
上記実施の形態では、サスペンション制御装置が用いられる車両が自動車である場合を例にしたが、これに代えて、車体の上下加速度を鉄道車両の車体の左右加速度に置き換え、車体の上下絶対速度を車体の左右絶対速度、車軸を台車に置き変えることにより、鉄道車両に用いることができる。
発明の効果
0031
請求項1記載の発明によれば、相対速度が初期設定値より大きい場合、前記初期設定値に対応して予め求められる目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して小さい目標減衰力を指令電流の設定に用いるので、実相対速度で得られる減衰力が小さくなり、その値を前記初期設定値に対応して予め求められる目標減衰力に近付けることができ、その分、制御精度の向上を図ることができる。すなわち、スカイフックダンパ理論に基づく制御方法に近似させて相対速度を一定値とした制御理論に基づく制御で期待される減衰力に、より近い大きさの減衰力を発生させることができ、減衰力過大や、減衰値力不足による乗り心地の悪化やふらつき現象の発生を防止できる。また、車高センサを用いずに、良好にサスペンション制御を行うので、装置の低廉化を図ることができると共に、性能の向上を図ることができる。請求項2記載の発明によれば、相対速度が初期設定値より小さい場合、前記初期設定値に対応する目標減衰力に代えて、当該目標減衰力に比して大きい目標減衰力を指令電流の設定に用いるので、実相対速度で得られる減衰力が大きくなり、その値を前記初期設定値に対応して予め求められる目標減衰力に近付けることができ、その分、制御精度の向上を図ることができる。
図面の簡単な説明
0032
図1本発明の一実施の形態に係るサスペンション制御装置を模式的に示す図である。
図2図1のサスペンション制御装置のコントローラを示すブロック図である。
図3図1のコントローラに用いる相対速度推定手段(開弁点検出部)を示すブロック図である。
図4図1のコントローラの演算内容を示すフローチャートである。
図5図1のショックアブソーバの相対速度−減衰特性を示す図である。
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0033
4ショックアブソーバ
7コントローラ
14目標減衰力補正部
15 指示減衰力計算部
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