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技術 ダンパー機構

出願人 株式会社エクセディ
発明者 橋本恭行
出願日 2001年3月9日 (20年3ヶ月経過) 出願番号 2001-067421
公開日 2002年9月18日 (18年8ヶ月経過) 公開番号 2002-266943
状態 特許登録済
技術分野 防振装置 機械的に作動されるクラッチ
主要キーワード 胴部端面 隙間角度 正負両側 実用回転域 本ダンパー クッショニング ストッパー面 摩擦機構
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

微小捩じり振動に対する低ヒステリシストルク発生隙間を有するダンパー機構の音・振動性能を向上させる。

解決手段

クラッチディスク組立体は、入力回転体2と、スプラインハブ3と、ダンパー部4と、大摩擦機構13と、摩擦抑制機構とを備えている。ダンパー部4は、入力回転体2とスプラインハブ3とを回転方向に連結する第2バネ8を有し、入力回転体2がスプラインハブ3に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と、回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とを含む捩じり特性を有する。大摩擦機構13は、入力回転体2とスプラインハブ3が相対回転し第2バネ8の弾性力が作用すると、摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、第2バネ8の弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないための回転方向隙間θACnを、捩じり特性の正側と負側の一方でのみ確保している。

概要

背景

車輌に用いられるクラッチディスク組立体は、フライホイールに連結・切断されるクラッチ機能と、フライホイールからの捩じり振動を吸収・減衰するためのダンパー機能とを有している。一般に車両の振動には、アイドル時異音(ガラ音)、走行時異音(加速減速ラトル,こもり音)及びティップイン・ティップアウト低周波振動)がある。これらの異音や振動を取り除くことがクラッチディスク組立体のダンパーとしての機能である。

アイドル時異音とは、信号待ち等でシフトニュートラルに入れ、クラッチペダルを放したときにトランスミッションから発生する「ガラガラ」と聞こえる音である。この異音が生じる原因は、エンジンアイドリング回転付近ではエンジントルクが低く、エンジン爆発時のトルク変動が大きいことにある。このときにトランスミッションのインプットギアカウンターギアとが歯打ち現象を起こしている。

ティップイン・ティップアウト(低周波振動)とは、アクセルペダルを急に踏んだり放したりしたときに生じる車体の前後の大きな振れである。駆動伝達系剛性が低いと、タイヤに伝達されたトルクが逆にタイヤに伝達されたトルクが逆にタイヤ側からトルクに伝わり、その揺り返しとしてタイヤに過大トルクが発生し、その結果車体を過渡的に前後に大きく振らす前後振動となる。

アイドリング時異音に対しては、クラッチディスク組立体の捩じり特性においてゼロトルク付近が問題となり、そこでの捩じり剛性は低い方が良い。一方、ティップイン・ティップアウトの前後振動に対しては、クラッチディスク組立体の捩じり特性をできるだけソリッドにすることが必要である。

以上の問題を解決するために、2種類のばね部材を用いることにより2段特性を実現したクラッチディスク組立体が提供されている。そこでは、捩じり特性における1段目(低捩じり角度領域)における捩じり剛性及びヒステリシストルクを低く抑えているために、アイドリング時の異音防止効果がある。また、捩じり特性における2段目(高捩じり角度領域)では捩じり剛性及びヒステリシストルクを高く設定しているため、ティップイン・ティップアウトの前後振動を十分に減衰できる。

さらに、捩じり特性2段目においてたとえばエンジンの燃焼変動に起因する微小捩じり振動が入力されたときに、2段目の大摩擦機構を作動させないことで、微小捩じり振動を効果的に吸収するダンパー機構も知られている。

概要

微小捩じり振動に対する低ヒステリシストルク発生隙間を有するダンパー機構の音・振動性能を向上させる。

クラッチディスク組立体は、入力回転体2と、スプラインハブ3と、ダンパー部4と、大摩擦機構13と、摩擦抑制機構とを備えている。ダンパー部4は、入力回転体2とスプラインハブ3とを回転方向に連結する第2バネ8を有し、入力回転体2がスプラインハブ3に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と、回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とを含む捩じり特性を有する。大摩擦機構13は、入力回転体2とスプラインハブ3が相対回転し第2バネ8の弾性力が作用すると、摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、第2バネ8の弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないための回転方向隙間θACnを、捩じり特性の正側と負側の一方でのみ確保している。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

入力回転体と、前記入回転体相対回転可能に配置された出力回転体と、前記入力回転体と前記出力回転体とを回転方向に連結するばね部材を有し、前記入力回転体が前記出力回転体に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と前記入力回転体が前記出力回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とを含む捩じり特性を有するダンパー部と、前記入力回転体と前記出力回転体が相対回転し前記ばね部材の弾性力が作用すると摩擦を発生可能な摩擦機構と、前記ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では前記摩擦機構に作用させないための回転方向隙間を、前記捩じり特性の正側と負側の一方でのみ確保している、摩擦抑制機構と、を備えたダンパー機構

請求項2

前記摩擦抑制機構は、前記捩じり特性の負側でのみ、前記回転方向隙間を確保している、請求項1に記載のダンパー機構。

請求項3

入力回転体と、前記入力回転体と相対回転可能に配置された出力回転体と、前記入力回転体と前記出力回転体とを回転方向に連結するためのばね部材を有し、捩じり特性において1段目と前記ばね部材が圧縮され前記1段目より剛性の高い2段目とを有し、前記2段目は前記入力回転体が前記出力回転体に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と前記入力回転体が前記出力回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とにそれぞれ存在する、ダンパー機構と、前記2段目において前記入力回転体と前記出力回転体が相対回転し前記ばね部材の弾性力が作用すると摩擦を発生可能な摩擦機構と、前記ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では前記摩擦機構に作用させないための回転方向隙間を、前記捩じり特性の正側2段目と負側2段目の一方でのみ確保している、摩擦抑制機構と、を備えたダンパー機構。

請求項4

前記摩擦抑制機構は、前記捩じり特性の負側2段目でのみ、前記回転方向隙間を確保している、請求項3に記載のダンパー機構。

技術分野

0001

本発明は、ダンパー機構、特に、動力伝達系における捩じり振動減衰するためのダンパー機構に関する。

背景技術

0002

車輌に用いられるクラッチディスク組立体は、フライホイールに連結・切断されるクラッチ機能と、フライホイールからの捩じり振動を吸収・減衰するためのダンパー機能とを有している。一般に車両の振動には、アイドル時異音(ガラ音)、走行時異音(加速減速ラトル,こもり音)及びティップイン・ティップアウト低周波振動)がある。これらの異音や振動を取り除くことがクラッチディスク組立体のダンパーとしての機能である。

0003

アイドル時異音とは、信号待ち等でシフトニュートラルに入れ、クラッチペダルを放したときにトランスミッションから発生する「ガラガラ」と聞こえる音である。この異音が生じる原因は、エンジンアイドリング回転付近ではエンジントルクが低く、エンジン爆発時のトルク変動が大きいことにある。このときにトランスミッションのインプットギアカウンターギアとが歯打ち現象を起こしている。

0004

ティップイン・ティップアウト(低周波振動)とは、アクセルペダルを急に踏んだり放したりしたときに生じる車体の前後の大きな振れである。駆動伝達系剛性が低いと、タイヤに伝達されたトルクが逆にタイヤに伝達されたトルクが逆にタイヤ側からトルクに伝わり、その揺り返しとしてタイヤに過大トルクが発生し、その結果車体を過渡的に前後に大きく振らす前後振動となる。

0005

アイドリング時異音に対しては、クラッチディスク組立体の捩じり特性においてゼロトルク付近が問題となり、そこでの捩じり剛性は低い方が良い。一方、ティップイン・ティップアウトの前後振動に対しては、クラッチディスク組立体の捩じり特性をできるだけソリッドにすることが必要である。

0006

以上の問題を解決するために、2種類のばね部材を用いることにより2段特性を実現したクラッチディスク組立体が提供されている。そこでは、捩じり特性における1段目(低捩じり角度領域)における捩じり剛性及びヒステリシストルクを低く抑えているために、アイドリング時の異音防止効果がある。また、捩じり特性における2段目(高捩じり角度領域)では捩じり剛性及びヒステリシストルクを高く設定しているため、ティップイン・ティップアウトの前後振動を十分に減衰できる。

0007

さらに、捩じり特性2段目においてたとえばエンジンの燃焼変動に起因する微小捩じり振動が入力されたときに、2段目の大摩擦機構を作動させないことで、微小捩じり振動を効果的に吸収するダンパー機構も知られている。

発明が解決しようとする課題

0008

捩じり特性2段目においてたとえばエンジンの燃焼変動に起因する微小振動が入力されたときに、2段目の大摩擦機構を作動させないためには、高剛性ばね部材が圧縮された状態で、高剛性ばね部材と大摩擦機構との間に所定角度回転方向隙間が確保されている必要があるこの回転方向隙間の角度は、例えば0.2°〜1.0°程度の微小角度であり、入力プレート入力回転体)がスプラインハブ出力回転体出力側回転体に対して回転方向駆動側(正側)に捩じれた正側2段目と、その反対側(負側)に捩じれた負側2段目の両方において存在する。

0009

特に、従来は回転方向隙間を構成する構造が正側2段目と負側2段目で同一の機構によって実現されているため、この回転方向隙間が捩じり特性正側と負側の両方において必ず発生し、しかもその角度の大きさが同一である。

0010

しかし、車両の特性に応じて、回転方向隙間の大きさを捩じり特性の正負両側で異ならせることが好ましい場合もあり、さらには正負の片側では前記回転方向隙間を設けないことが望ましい場合も考えられる。

0011

具体的には、捩じり特性の負側には、減速時共振回転数において振動のピークを低減させるために前記回転方向隙間は必要である。しかし、FF車などでは、実用回転域共振ピークが残ることが多く、捩じり特性の正側に前記回転方向隙間を確保していると、共振回転数付近で音・振動性能が悪化する。

0012

本発明の課題は、微小捩じり振動に対する低ヒステリシストルク発生隙間を有するダンパー機構の音・振動性能を向上させることにある。

課題を解決するための手段

0013

請求項1に記載のダンパー機構は、入力回転体と、出力回転体と、ダンパー部と、摩擦機構と、摩擦抑制機構とを備えている。出力回転体は、入力回転体と相対回転可能に配置されている。ダンパー部は、入力回転体と出力回転体とを回転方向に連結するばね部材を有し、入力回転体が出力回転体に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と入力回転体が出力回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とを含む捩じり特性を有する。摩擦機構は、入力回転体と出力回転体が相対回転しばね部材の弾性力が作用すると、摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないための回転方向隙間を、捩じり特性の正側と負側の一方でのみ確保している。

0014

このダンパー機構の摩擦抑制機構は、捩じり特性の正負の一方にのみ摩擦機構を作動させないための回転方向隙間を確保しているため、車両の特性に応じて、回転方向隙間を捩じり特性の正側又は負側のいずれか一方に設けることで、加速・減速の両方で音・振動性能を向上させることができる。

0015

請求項2に記載のダンパー機構では、請求項1において、摩擦抑制機構は、捩じり特性の負側にのみ、回転方向隙間を確保している。このダンパー機構では、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間は捩じり特性の負側にのみ設けられている。したがって、例えば実用回転域に共振ピークが残るFF車などに本ダンパー機構を採用すると、正側の共振回転数付近での音・振動性能が悪化しにくい。この結果、車両の加減速ともに音・振動性能が向上する。

0016

請求項3に記載の摩擦抑制機構は、入力回転体と、出力回転体と、ダンパー部と、摩擦機構と、摩擦抑制機構とを備えている。出力回転体は、入力回転体と相対回転可能に配置されている。ダンパー部は、入力回転体と出力回転体とを回転方向に連結するためのばね部材を有し、捩じり特性において、1段目と、ばね部材が圧縮され1段目より剛性の高い2段目とを有している。2段目は入力回転体が出力回転体に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と、入力回転体が出力回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とにそれぞれ存在する。摩擦機構は、2段目において入力回転体と出力回転体が相対回転しばね部材の弾性力が作用すると摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないための回転方向隙間を、捩じり特性の正側2段目と負側2段目の一方でのみ確保している。

0017

このダンパー機構の摩擦抑制機構は、捩じり特性の正負2段目の一方にのみ摩擦機構を作動させないための回転方向隙間を確保しているため、車両の特性に応じて、回転方向隙間を捩じり特性の正側2段目又は負側2段目のいずれか一方に設けることで、加速・減速の両方で音・振動性能を向上させることができる。

0018

請求項4に記載のダンパー機構では、請求項3において、摩擦抑制機構は、捩じり特性の負側2段目にのみ、回転方向隙間を確保している。このダンパー機構では、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間は捩じり特性の負側2段目にのみ設けられている。したがって、例えば実用回転域に共振ピークが残るFF車などに本ダンパー機構を採用すると、正側の共振回転数付近での音・振動性能が悪化しにくい。この結果、車両の加減速ともに音・振動性能が向上する。

発明を実施するための最良の形態

0019

図1に本発明の一実施形態のクラッチディスク組立体1の断面図を示し、図2にその平面図を示す。クラッチディスク組立体1は、車輌のクラッチ装置に用いられる動力伝達装置であり、クラッチ機能とダンパー機能とを有している。クラッチ機能とはフライホイール(図示せず)に連結及び離反することによってトルクの伝達及び遮断をする機能である。ダンパー機能とは、バネ等によりフライホイール側から入力されるトルク変動等を吸収・減衰する機能である。

0020

図1においてO−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸すなわち回転中心線である。また、図1の左側にエンジン及びフライホイール(図示せず)が配置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。さらに、図2のR1側がクラッチディスク組立体1の回転方向駆動側(正側)であり、R2側からその反対側(負側)である。なお、以下に示す具体的な角度の数値は各角度の相対的関係の理解を容易にするために用いられており、本発明はこれら数値には限定されない。

0021

クラッチディスク組立体1は、主に、入力回転体2(クラッチプレート21,リティーニングプレート22,クラッチディスク23)と、出力回転体としてのスプラインハブ3と、入力回転体2とスプラインハブ3との間に配置されたダンパー部4とから構成されている。ダンパー部4は、第1バネ7, 第2バネ8及び大摩擦機構13などを含んでいる。

0022

入力回転体2はフライホイール(図示せず)からのトルクが入力される部材である。入力回転体2は、主に、クラッチプレート21と、リティーニングプレート22と、クラッチディスク23とから構成されている。クラッチプレート21とリティーニングプレート22は共に板金製の円板状かつ環状の部材であり、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。クラッチプレート21はエンジン側に配置され、リティーニングプレート22はトランスミッション側に配置されている。クラッチプレート21とリティーニングプレート22は後述する板状連結部31により互いに固定され、その結果軸方向の間隔が定めされるとともに一体回転するようになっている。

0023

クラッチディスク23は、図示しないフライホイールに押し付けられる部分である。クラッチディスク23は、クッショニングプレート24と、第1及び第2摩擦フェーシング25とから主に構成されている。クッショニングプレート24は、環状部24aと、環状部24aの外周側に設けられ回転方向に並ぶ複数のクッショニング部24bと、環状部24aから半径方向内側に延びる複数の連結部24cとから構成されている。連結部24cは4カ所に形成され、各々がリベット27(後述)によりクラッチプレート21に固定されている。クッショニングプレート24の各クッショニング部24bの両面には、摩擦フェーシング25がリベット26により固定されている。

0024

クラッチプレート21及びリティーニングプレート22の外周部には、回転方向に等間隔で4つの窓孔35がそれぞれ形成されている。各窓孔35には、内周側と外周側にそれぞれ切り起こし部35a,35bが形成されている。この切り起こし部35a, 35bは後述の第2バネ8の軸方向及び半径方向への移動を規制するためのものである。また、窓孔35には、第2バネ8の端部に当接又は近接する当接面36が円周方向両端に形成されている。

0025

クラッチプレート21及びリティーニングプレート22には、それぞれ中心孔37(内周縁)が形成されている。この中心孔37内には出力回転体としてのスプラインハブ3が配置されている。スプラインハブ3は、軸方向に延びる筒状のボス52と、ボス52から半径方向に延びるフランジ54とから構成されている。ボス52の内周部には、トランスミッション側から延びる図示しないシャフト係合するスプライン孔53が形成されている。フランジ54には回転方向に並んだ複数の外周歯55及び後述の第1バネ7を収容するための切欠き56等が形成されている。切欠き56は半径方向に対向する2カ所に形成されている。

0026

ハブフランジ6は、スプラインハブ3の外周側で、かつ、クラッチプレート21とリティーニングプレート22との間に配置された円板状の部材である。ハブフランジ6は、第1バネ7を介してスプラインハブ3と回転方向に弾性的に連結され、さらには第2バネ8を介して入力回転体2に弾性的に連結されている。図7〜9に詳細に示すように、ハブフランジ6の内周縁には複数の内周歯59が形成されている。

0027

内周歯59は前述の外周歯55の間に配置され、回転方向に所定の隙間をあけて配置されている。外周歯55と内周歯59とは回転方向に互いに当接可能である。すなわち外周歯55と内周歯59とによりスプラインハブ3とハブフランジ6との捩じり角度を規制するための第1ストッパー9が形成されている。ここでいうストッパーとは、所定角度までは両部材の相対回転を許容するが、所定角度になると互いに当接しそれ以上の相対回転を禁止する構造をいう。外周歯55とその円周方向両側の内周歯59との間にはそれぞれ第1隙間角度θ1が確保されている。具体的には、外周歯55から見てR2側の内周歯59との間の第1隙間角度θ1pは8°であり、外周歯55から見てR1側の内周歯59との間の第1隙間角度θ1nは2°である。このように第1隙間角度θ1pとθ1nは角度の大きさが異なり、θ1pはθ1nより大きい。

0028

さらに、ハブフランジ6の内周縁には、フランジ54の切欠き56に対応して切欠き67が形成されている。切欠き56, 67内には、それぞれ1つずつ合計2つの第1バネ7が配置されている。第1バネ7は低剛性のコイルスプリングであり、2つの第1バネ7は並列に作用する。第1バネ7は円周方向両端においてスプリングシート7aを介して切欠き56, 67の円周方向両端に係合している。以上の構造によって、スプラインハブ3とハブフランジ6とが相対回転する際には第1隙間角度θ1の範囲内で第1バネ7が回転方向に圧縮される。

0029

ハブフランジ6には回転方向に等間隔で4つの窓孔41が形成されている。窓孔41は回転方向に長く延びる形状である。図5及び図6に示すように、窓孔41の縁は、円周方向両側の当接部44と、外周側の外周部45と、内周側の内周部46とから構成されている。外周部45は連続して形成されており窓孔41の外周側を閉じている。なお、窓孔41の外周側は一部が半径方向外方に開いた形状であってもよい。ハブフランジ6において各窓孔41の円周方向間には切欠き42が形成されている。切欠き42は半径方向内側から外側に向かって円周方向長さが長くなる扇形状であり、円周方向両側に縁面43が形成されている。

0030

各窓孔41が形成された部分の半径方向外側には、突起49が形成されている。すなわち突起49はハブフランジ6の外周縁48からさらに半径方向外側に延びる突起形状である。突起49は、回転方向に長く延びており、ストッパー面50が形成されている。

0031

第2バネ8はクラッチディスク組立体1のダンパー機構に用いられる弾性部材すなわちバネである。各第2バネ8は、同心に配置された1対のコイルスプリングから構成されている。各第2バネ8は各第1バネ7に比べて大型であり、バネ定数が大きい。第2バネ8は各窓孔41, 35内に収容されている。第2バネ8は、回転方向に長く延びており、窓孔41全体にわたって配置されている。第2バネ8の円周方向両端は、窓孔41の当接部44と当接面36とに当接又は近接している。プレート21, 22のトルクは第2バネ8を介してハブフランジ6に伝達され得る。プレート21, 22とハブフランジ6とが相対回転すると、第2バネ8は両者の間で圧縮される。具体的には、第2バネ8は当接面36とその円周方向反対側の当接部44との間で回転方向に圧縮される。このとき4つの第2バネ8は並列に作用している。

0032

リティーニングプレート22の外周縁には、回転方向に等間隔で4カ所に板状連結部31が形成されている。板状連結部31は、クラッチプレート21とリティーニングプレート22とを互いに連結するものであり、さらに後述するようにクラッチディスク組立体1のストッパーの一部を構成している。板状連結部31は、リティーニングプレート22から一体に形成された板状部材であり、回転方向に所定の幅を有している。板状連結部31は、各窓孔41の円周方向間すなわち切欠き42に対応して配置されている。板状連結部31は、リティーニングプレート22の外周縁から軸方向に延びるストッパー部32と、ストッパー部32の端部から半径方向内側に延びる固定部33とから構成されている。ストッパー部32はリティーニングプレート22の外周縁からクラッチプレート21側に延びている。固定部33は、ストッパー部32の端部から半径方向内側に折り曲げられている。ストッパー部32は円周方向両側にストッパー面51を有している。固定部33の半径方向位置は窓孔41の外周側部分に対応しており、円周方向位置は回転方向に隣接する窓孔41の間である。この結果、固定部33はハブフランジ6の切欠き42に対応して配置されている。切欠き42は固定部33より大きく形成されており、このため組立時にリティーニングプレート22をクラッチプレート21に対して軸方向に移動させたときには固定部33は切欠き42を通って移動可能である。固定部33はクッショニングプレート24の連結部24cに平行にかつトランスミッション側から当接している。固定部33には孔33aが形成されており、孔33a内には前述のリベット27が挿入されている。リベット27は、固定部33とクラッチプレート21とクッショニングプレート24とを一体に連結している。さらに、リティーニングプレート22において固定部33に対応する位置にはかしめ用孔34が形成されている。

0033

次に、板状連結部31のストッパー部32と突起49とからなる第2ストッパー10について説明する。第2ストッパー10はハブフランジ6と入力回転体2との間で隙間角度θ4までの領域で両部材の相対回転を許容し、捩り角度がθ4になると両部材の相対回転を規制するための機構である。なお、この隙間角度θ4の間で第2バネ8はハブフランジ6と入力回転体2との間で圧縮される。具体的には、突起49から見てR2側のストッパー部32との間にある第4隙間角度θ4pは26゜であり、突起49から見てR1側ストッパー部32との間にある第4隙間角度θ4nは23.5゜である。このようにθ4pはθ4nと大きさが異なり、θ4pはθ4nより大きい。以上に述べたθ4pとθ4nの関係を実現するために、突起49はストッパー部32の円周方向間に中心位置から円周方向にずれて配置されている。

0034

フリクションプレート11は、スプラインハブ3の外周側において、クラッチプレート21とハブフランジ6との間、及びハブフランジ6とリティーニングプレート22との間に配置された1対のプレート部材である。フリクションプレート11は円板状かつ環状のプレート部材であり、入力回転体2とスプラインハブ3との間でダンパー部4の一部を構成している。フリクションプレート11の内周縁には複数の内周歯66が形成されている。内周歯66はハブフランジ6の内周歯59と軸方向に重なるように配置されている。図5〜7に詳細に示すように、内周歯66は内周歯59に比べて円周方向幅が広く、その円周方向両側に両端がはみでている。内周歯66は、スプラインハブ3の外周歯55と回転方向に所定の隙間をあけて配置されている。すなわちこの隙間の範囲内でスプラインハブ3とフリクションプレート11とは相対回転可能となっている。外周歯55と内周歯59とにより、スプラインハブ3とフリクションプレート11との相対回転角度を規制する第3ストッパー12が形成されている。第3ストッパー12は、図7に示すように、外周歯55と内周歯66との間に第2隙間角度θ2の隙間を確保している。具体的には、外周歯55から見てR2側の内周歯66との間にある第2隙間角度θ2pは7.5°であり、外周歯55から見てR1側の内周歯66との間にある第2隙間角度θ2nは1.5°である。このようにθ2pはθ2nと大きさが異なり、大きい。第2隙間角度θ2pは第1隙間角度θ1pより小さく、第2隙間角度θ2nは第1隙間角度θ1nより小さい。

0035

1対のフリクションプレート11のうちリティーニングプレート22側に配置されたフリクションプレート11には、半径方向外側に延びる複数の突出部61が形成されている。各突出部61はハブフランジ6の窓孔41の間に配置されている。窓孔41の先端には、半円形状の位置合わせ切欠き61aが形成されている。この切欠き61aは、ハブフランジ6に形成された位置合わせ用の切欠き98やプレート21,22に形成された位置合わせ用の孔に対応している。

0036

1対のフリクションプレート11同士は、複数のピン62により相対回転不能かつ軸方向の位置決めがされている。ピン62は、胴部と、胴部から軸方向両側に延びる頭部とから構成されている。1対のフリクションプレート11同士はピン62の胴部端面に軸方向から当接することによって互いに対して軸方向に接近することが制限されている。フリクションプレート11の頭部はフリクションプレート11に形成された孔内に挿入され自らと胴部との間にフリクションプレート11を挟んでいる。各フリクションプレート11とハブフランジ6との間には、それぞれスペーサ63が配置されている。スペーサ63は各フリクションプレート11の内周部とハブフランジ6の内周側環状部分との間にそれぞれ配置された環状のプレート部材である。スペーサ63にはピン62の胴部が挿入される孔が形成されており、ピン62と孔の係合によってスペーサ63はフリクションプレート11と一体回転する。スペーサ63においてハブフランジ6に対向し当接する側の面には摩擦係数を減らすためのコーティングが施されている。ハブフランジ6にはピン62が貫通する複数の孔69が形成されている。ピン62は孔69に対して円周方向両側に所定角度だけ相対移動可能である。すなわちピン62の胴部と孔69の円周方向両側端面との円周方向間に第3隙間角度θ3の隙間が確保されている。これにより第4ストッパー14が形成されている。ピン62から見てR2側の孔69端面との間には第3隙間角度θ3pが確保されている、ピン62から見てR1側の孔69端面との間には第3隙間角度θ3nが確保されている。第3隙間角度θ3pとθ3nは大きさが異なり、θ3pは0.50°であり、θ3nは0.70°である。なお、第3隙間角度θ3pの大きさは、第1隙間角度θ1pと第2隙間角度θ2pの差に等しい(θ3p=θ1p−θ2p)。また、第3隙間角度θ3nの大きさは、第1隙間角度θ1nと第2隙間角度θ2nの差より大きい(θ3n>θ1n−θ2n)。

0037

以上に述べたピン62と孔69との相対的位置関係は、ピン62が図7に示す中立状態において孔69に対してR2側にずれていることを意味している。より具体的にはピン62の円周方向中心位置は孔69の円周方向中心位置よりR2側に位置している。この位置関係は、ピン62の位置を移動させること、又はハブフランジ6の孔69の大きさを円周方向両側で変えることで実現される。

0038

次に、摩擦発生機構を構成する各部材について説明する。第2摩擦ワッシャー72は、トランスミッション側のフリクションプレート11の内周部とリティーニングプレート22の内周部との間に配置されている。第2摩擦ワッシャー72は主に樹脂製の本体74から構成されている。本体74の摩擦面は、トランスミッション側のフリクションプレート11のトランスミッション側面に当接している。本体74の内周部からはトランスミッション側に係合部76が延びている。係合部76は、リティーニングプレート22に対して相対回転不能に係合されるとともに軸方向に係止されている。本体74の内周部トランスミッション側には複数の凹部77が形成されている。本体74とリティーニングプレート22との間には第2コーンスプリング73が配置されている。第2コーンスプリング73は、第2摩擦ワッシャー72の本体74とリティーニングプレート22との間で圧縮された状態で配置されている。これにより、第2摩擦ワッシャー72の摩擦面は第1フリクションプレート11に強く圧接されている。第1摩擦ワッシャー79はフランジ54とリティーニングプレート22の内周部との間に配置されている。すなわち、第1摩擦ワッシャー79は第2摩擦ワッシャー72の内周側でかつボス52の外周側に配置されている。第1摩擦ワッシャー79は樹脂製である。第1摩擦ワッシャー79は、主に環状の本体81から構成されており、環状の本体81からは複数の突起82が半径方向外側に延びている。本体81はフランジ54に当接しており、複数の突起82は第2摩擦ワッシャー72の凹部77に相対回転不能に係合している。これにより、第1摩擦ワッシャー79は第2摩擦ワッシャー72を介してリティーニングプレート22と一体回転可能である。第1摩擦ワッシャー79とリティーニングプレート22の内周部との間には第1コーンスプリング80が配置されている。第1コーンスプリング80は第1摩擦ワッシャー79とリティーニングプレート22の内周部との間で軸方向に圧縮された状態で配置されている。なお、第1コーンスプリング80の付勢力は第2コーンスプリング73の付勢力より小さくなるように設計されている。また、第1摩擦ワッシャー79は第2摩擦ワッシャー72に比べて摩擦係数が低い材料から構成されている。このため、第1摩擦ワッシャー79によって発生する摩擦(ヒステリシストルク)は第2摩擦ワッシャー72で発生する摩擦より大幅に小さくなっている。

0039

クラッチプレート21の内周部とフランジ54及びフリクションプレート11の内周部との間には第3摩擦ワッシャー85と第4摩擦ワッシャー86が配置されている。第3摩擦ワッシャー85及び第4摩擦ワッシャー86は樹脂製の環状部材である。第3摩擦ワッシャー85はクラッチプレート21の内周縁に相対回転不能に係合し、その内周面はボス52の外周面摺動可能に当接している。すなわち、クラッチプレート21は第3摩擦ワッシャー85を介してボス52に半径方向の位置決めをされている。第3摩擦ワッシャー85はフランジ54に対して軸方向エンジン側から当接している。第4摩擦ワッシャー86は第3摩擦ワッシャー85の外周側に配置されている。第4摩擦ワッシャー86は環状の本体87と、環状の本体87から軸方向エンジン側に延びる複数の係合部88を有している。本体87は軸方向エンジン側のフリクションプレート11に当接する摩擦面を有している。係合部88はクラッチプレート21に形成された孔内に相対回転不能に係合している。また、係合部88はクラッチプレート21の軸方向エンジン側面に当接する爪部を有している。第3摩擦ワッシャー85と第4摩擦ワッシャー86は互いに相対回転不能に係合している。なお、第3摩擦ワッシャー85と第4摩擦ワッシャー86は別体の部材であり、第4摩擦ワッシャー86は第3摩擦ワッシャー85に対して摩擦係数が高い材料から構成されている。

0040

以上に述べた摩擦機構において、第2摩擦ワッシャー72及び第4摩擦ワッシャー86とフリクションプレート11との間に比較的高いヒステリシストルクを発生させる大摩擦機構13(摩擦機構)が形成されていることになる。さらに、第1摩擦ワッシャー79及び第3摩擦ワッシャー85と、フランジ54との間に低ヒステリシストルクを発生する小摩擦機構15を形成している。

0041

次に、図10を用いてクラッチディスク組立体1の構成についてさらに説明する。図10はクラッチディスク組立体1のダンパー機構としての機械回路図である。この機械回路図は、ダンパー機構における各部材の回転方向の関係を模式的に描いたものである。したがって一体回転する部材は同一の部材として取り扱っている。

0042

図10から明らかなように、入力回転体2とスプラインハブ3との間にはダンパー部4を構成するための複数の部材が配置されている。ハブフランジ6は入力回転体2とスプラインハブ3との回転方向間に配置されている。ハブフランジ6はスプラインハブ3に第1バネ7を介して回転方向に弾性的に連結されている。また、ハブフランジ6とスプラインハブ3との間には第1ストッパー9が形成されている。第1ストッパー9における第1隙間角度θ1pの間で第1バネ7は圧縮可能である。ハブフランジ6は入力回転体2に対して第2バネ8を介して回転方向に弾性的に連結されている。また、ハブフランジ6と入力回転体2との間には第2ストッパー10が形成されている。第2ストッパー10における第4隙間角度θ4pの間で第2バネ8は圧縮可能となっている。以上に述べたように、入力回転体2とスプラインハブ3と直列に配置された第1バネ7と第2バネ8とにより回転方向に弾性的に連結されている。ここでは、ハブフランジ6は2種類のバネの間に配置された中間部材として機能している。また、以上に述べた構造は、並列に配置された第1バネ7及び第1ストッパー9からなる第1ダンパーと、並列に配置された第2バネ8と第2ストッパー10からなる第2ダンパーとが、直列に配置された構造として見ることもできる。また、以上に述べた構造を入力回転体2とスプラインハブ3とを回転方向に弾性的に連結するダンパー部4として考えることができる。第1バネ7全体の剛性は第2バネ8全体の剛性よりはるかに小さく設定されている。そのため、第1隙間角度θ1までの捩り角度の範囲で第2バネ8はほとんど回転方向に圧縮されない。

0043

フリクションプレート11は、入力回転体2とスプラインハブ3との回転方向間に配置されている。フリクションプレート11は、スプラインハブ3とハブフランジ6との間で相対回転するように配置されている。フリクションプレート11は、スプラインハブ3との間に第3ストッパー12を構成し、ハブフランジ6との間に第4ストッパー14を構成している。さらに、フリクションプレート11は、大摩擦機構13を介して入力回転体2に回転方向に摩擦係合している。以上に述べたフリクションプレート11は、入力回転体2, スプラインハブ3及びハブフランジ6の間に配置されることで摩擦連結機構5を構成している。

0044

次に、図10におけるダンパー機構の各隙間角度θ1p〜θ4pの関係について説明する。ここで説明する隙間角度は、スプラインハブ3から入力回転体2をR2側に見た各角度である。第1ストッパー9における第1隙間角度θ1pは第1バネ7が円周方向に圧縮される角度範囲となっており、第2ストッパー10における第4隙間角度θ4pは第2バネ8が回転方向に圧縮される角度範囲となっている。第1隙間角度θ1pと第4隙間角度θ4pとの合計がクラッチディスク組立体1全体としてのダンパー機構の正側最大捩り角度である。

0045

第3隙間角度θ3pは、第1隙間角度θ1pと第2隙間角度θ2pの差に等しくなっているため、正側2段目においては、微小捩り振動が入力された時に大摩擦機構13を作動させないための正側2段目隙間角度は確保されないようになっている。

0046

次に、図15におけるダンパー機構の各隙間角度θ1n〜θ4nの関係について説明する。ここで説明する隙間角度は、スプラインハブ3から入力回転体2をR1側に見た各角度である。第1ストッパー9における第1隙間角度θ1nは第1バネ7が円周方向に圧縮される角度範囲を示しており、第2ストッパー10における第4隙間角度θ4nは第2バネ8が回転方向に圧縮される角度範囲を示している。第1隙間角度θ1nと第4隙間角度θ4nとの合計がクラッチディスク組立体1全体としてのダンパー機構の負側最大捩り角度である。第1隙間角度θ1nから第2隙間角度θ2nを引いた差をさらに第3隙間角度θ3nから引いたものが、捩り特性の負側2段目において微小捩り振動が入力された時に大摩擦機構13を作動させないための負側2段目隙間角度θACnの大きさとなっている。負側2段目隙間角度θACnの大きさはこの実施形態では0.2゜と従来に比べて大幅に小さくなっており、0.15〜0.25゜の範囲にあることが好ましい。

0047

また、負側2段目隙間角度θACnは軸方向に伸び連結部材としてのピン62とハブフランジ6の孔69との間に形成されるため、精度を高く保つことができる。この結果、1°未満の微小角度を実現できる。なお、孔69は一部が開いた切り欠き形状であってもよい。

0048

また、負側2段目隙間角度θACnがフリクションプレート11と第2バネ8との間に設けられている構造にも、本発明を採用できる。また、図15に示すように、入力回転体2とスプラインハブ3との間には小摩擦機構15が設けられている。小摩擦機構15は入力回転体2とスプラインハブ3が相対回転する際には常に滑りが生じるようになっている。この実施形態では、小摩擦機構15は主に第2摩擦ワッシャー79及び第3摩擦ワッシャー85によって構成されているが、他の部材によって構成されていても良い。また、小摩擦機構15で発生するヒステリシストルクは場合によっては最大限低いことが望ましい。

0049

次に、複数の機械回路図を用いてクラッチディスク組立体1におけるダンパー機構の動作を詳細に説明する。図10〜14は、スプラインハブ3が入力回転体2に対してR2側に捩じれている捩じり特性正側の状態(図20の右側)での各部材の動作や関係を説明するための図である。図15〜19は出力回転体が入力回転体2に対してR1側に捩じれている捩じり特性負側の状態(図20の左側)での各部材の動作や関係を説明するための図である。

0050

図10の中立状態からスプラインハブ3を入力回転体2に対してR2側に捩っていく。このとき入力回転体2はスプラインハブ3に対してR1側すなわち回転方向駆動側に捩れていくことになる。図10の状態からスプラインハブ3がR2側に3゜捩れると図11の状態に移行する。この動作時に、第1バネ7がスプラインハブ3とハブフランジ6との間で回転方向に圧縮され、小摩擦機構15で滑りが生じる。この結果、低剛性・低ヒステリシストルクの特性が得られる。そして、第1ストッパー9と第3ストッパー12とでそれぞれ隙間角度が3゜小さくなる。図11の状態からさらにスプラインハブ3が4.5゜捩れると図12の状態に移行する。この動作時にも第1バネ7がスプラインハブ3とハブフランジ6との間で回転方向に圧縮され、小摩擦機構15で滑りが生じる。図12では、図10の中立状態からR2側にθ2p捩じれたため、第3ストッパー12においてスプラインハブ3とフリクションプレート11とが当接し、第1ストッパー9において第1ストッパー9の第1隙間角度θ1pから第3ストッパー12の第2隙間角度θ2pを引いた隙間角度が確保されている。さらに図12の状態からスプラインハブ3がR2側に0.5゜(θ1p−θ2p)捩れると、図13の状態に移行する。この動作中に、大摩擦機構13において滑りが生じ、高ヒステリシストルクが発生している。そのため、低剛性・高ヒステリシストルクの領域が低剛性・低ヒステリシストルクの端に形成されている。また、フリクションプレート11は、スプラインハブ3と一体回転し、ハブフランジ6に対してR2側に変位する。つまり、ピン62は孔69内でR2側に移動し、孔69のR2側縁に当接する(図8)。図13では、第1ストッパー9においてスプラインハブ3の外周歯55とハブフランジ6の内周歯59とが互いに当接し、第4ストッパー14においてピン62が孔69のR2側縁に当接している。このように、フリクションプレート11とハブフランジ6との間に回転方向隙間は形成されていない。図13では第1ストッパー9が当接しているため、これ以上は第1バネ7が圧縮されない。図13の状態からさらにスプラインハブ3がR2側に捩れると、図14の状態に移行する。この動作中にハブフランジ6が第2バネ8を入力回転体2との間で圧縮していく。この時、フリクションプレート11と入力回転体2との間で滑りが生じることで、大摩擦機構13において摩擦が発生する。この結果、高剛性・高ヒステリシストルクの特性が得られる。

0051

なお、この捩り角度2段目においてフリクションプレート11とハブフランジ6との間には回転方向隙間が確保されていないため、捩り振動が入力された場合には、第2バネ8が圧縮された状態から伸びる際にはすぐに第2バネ8の弾性力がフリクションプレート11に作用し、その結果大摩擦機構13において滑りが生じる。

0052

次に、図15に示す中立状態からスプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に捩れていくときの動作を説明する。このときに入力回転体2はスプラインハブ3に対してR2側にすなわち回転方向駆動側と反対側に捩れていくことになる。図15に示す状態からスプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に1°捩れると、図16の状態に移行する。この動作時にスプラインハブ3とハブフランジ6との間で第1バネ7が圧縮され、小摩擦機構15において滑りが発生する。この結果、低剛性・低ヒステリシストルクの特性が得られる。図16では、第1ストッパー9と第3ストッパー12においてそれぞれ隙間角度が1゜小さくなる。図16の状態からスプラインハブ3がさらに入力回転体2に対してR1側に1゜捩れると、図17の状態に移行する。この動作時にもスプラインハブ3とハブフランジ6との間で第1バネ7が圧縮され、小摩擦機構15において滑りが発生する。図17では、図15の中立状態からR1側にθ2n捩じれたため、第3ストッパー12においてスプラインハブ3とフリクションプレート11とが互いに当接し、第1ストッパー9において第1ストッパー9の第1隙間角度θ1nから第3ストッパー12の第2隙間角度θ2pを引いた隙間角度が確保されている。図17の状態からスプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に0.5゜(θ1n−θ2n)捩れると、図18の状態に移行する。この動作中には、大摩擦機構13において滑りが生じ、高ヒステリシストルクが発生している。そのため、低剛性・高ヒステリシストルクの領域が低剛性・低ヒステリシストルクの端に形成されている。また、フリクションプレート11は、スプラインハブ3と一体回転し、ハブフランジ6に対して回転方向に変位する。つまり、ピン62が孔69内でR1側に移動する。図18では、第1ストッパー9においてスプラインハブ3とハブフランジ6とが互いに当接している。このため、これ以上は第1バネ7が圧縮されない。図18に示す状態では、第4ストッパー14において第1隙間角度θ1nからθ2nを引いたものをさらに第3隙間角度θ3nから引いた負側2段目隙間角度θACn(0.2°)が形成されている(図9)。図18の状態からさらにスプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に捩れると、図19の状態に移行する。この動作時に、第2バネ8が回転方向に圧縮され、同時に大摩擦機構13で滑りが生じる。この結果、高剛性・高ヒステリシストルクの特性が得られる。なお、フリクションプレート11はハブフランジ6と一体回転するため、図18から図19への移行するときにおいても第4ストッパー14において負側2段目隙間角度θACnが確保されている。図19の状態から捩り振動が入力されると、第2バネ8は圧縮された状態から伸縮を繰り返す。第2バネ8が伸びるときに、θACnの範囲内では第2バネ8の弾性力はフリクションプレート11に作用せず、その結果大摩擦機構13で滑りが生じない。すなわち負側2段目隙間角度θACnは、捩り特性負側2段目において微小捩り振動に対して大摩擦機構13で滑りを生じさせない摩擦抑制機構として機能している。

0053

次に、図20の捩じり特性線図を参照して、具体的にクラッチディスク組立体1に各種捩り振動が入力された時の捩り特性の変化について説明する。車両の前後振動のように振幅の大きな捩り振動が発生すると、捩り特性は正負の2段目間で変動を繰り返す。この時2段目の高ヒステリシストルクによって車両の前後振動は速やかに減衰される。

0054

次に、例えばエンジンブレーキをかけた減速時においてエンジンの燃焼変動に起因する微小捩り振動がクラッチディスク組立体1に入力されたとする。この時、図21にしめすように、スプラインハブ3と入力回転体2とは負側2段目隙間角度θACnの範囲内で大摩擦機構13を作用させず相対回転可能である。すなわち捩り特性線図において隙間角度θACn範囲内では第2バネ8が作動するが、大摩擦機構13では滑りが生じない。つりま、捩じり角度θACnの範囲では、2段目のヒステリシストルクH2より小さなヒステリシストルクHACが得られる。ヒステリシストルクHACはヒステリシストルクH2の1/10程度であることが好ましい。このように、捩じり特性の負側において大摩擦機構13を所定角度範囲内では作動させない回転方向隙間を設けたため、エンジンブレーキをかけた減速時にエンジンからの燃焼変動に対して共振回転数のピークを低くできる。

0055

捩じり特性の正側において大摩擦機構13を所定角度範囲内で作動させない回転方向隙間を設けなかったため、実用回転域に共振ピークが残ることが多いFF車などの場合、共振回転数付近で音・振動性能が悪化しない。

0056

このように、捩じり特性の正負両側のうち一方にのみ摩擦機構を所定角度範囲内で作動させない回転方向隙間を確保しているため、加速・減速の両方で音・振動性能が向上する。

0057

本発明に係るダンパー機構は、クラッチディスク組立体以外にも採用可能である。例えば、2つのフライホイールを回転方向に弾性的に連結するダンパー機構等である。

0058

本発明に係るダンパー機構と他のダンパー機構の構造をFF車に採用した場合の騒音レベルの比較を行った。
(1)加速時の振動レベル
図22上部分のグラフは、4速全開加速時におけるエンジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転速度変動(ΔNM)の変化を示している。図22下部分のグラフは、4速全開加速時におけるエンジン回転速度(NE)に対する伝達率(ΔNM/ΔNE)の変化を示している。グラフにおける太い破線エンジン回転変動を表し、二点鎖線は従来の構造(ねじり特性正側に微小ねじり角の回転方向隙間が形成されている構造)を表している。従来の構造では、2000回転の付近で大きな共振ピークが現れており、これは大きな騒音が生じていることを意味する。

0059

本発明の構造(捩じり特性正側に微小捩じり角の回転方向隙間が形成されていない構造)は、第1実施例を一点鎖線で、第2実施例を実線で表している。第1実施例の一点鎖線の構造は、ヒステリシストルクが比較的小さい構造であり、共振点におけるピークが従来の構造に対して小さくなっている。このため、図22下部分のグラフで示すように、伝達率は共振点以外では1以下であり、共振点付近でも従来より小さくなっている。また、第2実施例の実線の構造は、ヒステリシストルクが比較的大きい構造であり、共振点におけるピークがほとんど消滅し、エンジン回転変動とほぼ同等になっている。この結果、図22下部分のグラフで示すように、伝達率はほぼ全体にわたって1以下であり、共振点付近でも概ね1程度又はそれ以下である。

0060

上より、FF車においては、加速時には、本願発明の構造が従来の構造に比べてトランスミッションの回転変動すなわち騒音レベルを大幅に低減できることが分かる。
(2)減速時の振動レベル
図23上部分のグラフは、4速全閉減速時におけるエンジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転速度変動(ΔNM)の変化を示している。図23下部分のグラフは、4速全閉減速時におけるエンジン回転速度(NE)に対する伝達率(ΔNM/ΔNE)の変化を示している。グラフにおける太い破線はエンジン回転変動を表し、捩じり特性正側に微小捩じり角の回転方向隙間が形成されていない構造は、第1実施例を一点鎖線で、第2実施例を実線で表している。第1実施例の一点鎖線の構造は、ヒステリシストルクが比較的小さい構造であり、第2実施例の実線の構造は、ヒステリシストルクが比較的大きい構造である。いずれの実施例においても、エンジン回転変動に対してトランスミッション回転速度変動やがいくぶん小さくなっている。

0061

二点鎖線は、本願発明の構造に対応しており、捩じり特性負側に微小ねじり角の回転方向隙間が形成されている構造を表している。この構造では、エンジン回転変動に対してトランスミッション回転速度変動が大幅に小さくなっている。すなわち、従来の構造に比べて伝達率が大幅に小さくなっており、その特徴は2000〜4000回転領域で顕著である。

0062

以上より、FF車においては、減速時には、本願発明の構造が他の構造に比べてトランスミッションの回転変動すなわち騒音レベルを大幅に低減できることが分かる。
(3)実験結果のまとめ
以上の実験結果により、本願発明は、捩じり特性負側では従来と同様に微小ねじり角の回転方向隙間を残して減速時の騒音レベルを低く抑えつつ、捩じり特性正側で従来と異なり微小ねじり角の回転方向隙間をなくして加速時の共振ピークを低減又は消滅させている。この結果、加速・減速の両方で音・振動性能が向上し、全体として優れた振動減衰性能を有している。

発明の効果

0063

本発明に係るダンパー機構では、捩じり特性の正負の一方にのみ摩擦機構を作動させないための回転方向隙間を確保している。したがって、車両の特性に応じて、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間を捩じり特性の正側又は負側のいずれか一方に設けることで、加速・減速の両方で音・振動性能を向上させることができる。

図面の簡単な説明

0064

図1クラッチディスク組立体の縦断面概略図。
図2クラッチディスク組立体の平面図。
図3図1部分拡大図
図4図1の部分拡大図。
図5各部分の捩り角度を説明するための平面図。
図6各部分の捩り角度を説明するための平面図。
図7各部分の捩り角度を説明するための平面図。
図8各部分の捩り角度を説明するための平面図。
図9各部分の捩り角度を説明するための平面図。
図10クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図11クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図12クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図13クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図14クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図15クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図16クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図17クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図18クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図19クラッチディスク組立体のダンパー機構の機械回路図。
図20ダンパー機構の捩じり特性線図。
図21図20の部分拡大図。
図22実験例における、4速全閉減速時におけるエンジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転速度変動(ΔNM)の変化を示すグラフ。
図234速全閉減速時におけるエンジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転速度変動(ΔNM)の変化を示すグラフ。

--

0065

1クラッチディスク組立体
2入力回転体
3スプラインハブ
4ダンパー部
5摩擦連結機構
6ハブフランジ
7 第1バネ
8 第2バネ(ばね部材)
9 第1ストッパー
10 第2ストッパー
11中間プレート
12 第3ストッパー
13 大摩擦機構(摩擦機構)
14 第4ストッパー
21クラッチプレート
22リティーニングプレート
62ピン
69 孔
θACn 負側2段目隙間角度(摩擦抑制機構)

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