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技術 分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法

出願人 日本電気株式会社
発明者 羽根正巳
出願日 2001年2月28日 (19年2ヶ月経過) 出願番号 2001-055227
公開日 2002年9月13日 (17年7ヶ月経過) 公開番号 2002-260975
状態 特許登録済
技術分野 半導体装置の製造処理一般
主要キーワード 化学反応経路 時間区切り エネルギーパス 各構成原子 微小距離移動 初期形態 原子間ポテンシャル 障壁エネルギー
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

反応パスを容易に想像できない場合であっても反応経路を算出できるとともに、半導体装置結晶シリコン中点欠陥拡散経路及び障壁エネルギーの算出を可能とする。

解決手段

化学反応前後の物質原子配置としての構造変化を計算し、その化学反応の経路遷移エネルギーを求める計算手法において、まず、求めたい反応パスの大筋を見出すために、ある十分な有限温度での分子動力計算を行う。次に、これら安定構造間の構造遷移を計算する場合、初期安定構造So及び最終安定構造Sbを選択し、各原子が対応するSoからSbへの直線方向へ射影した成分をゼロとし、3N次元内直線の鉛直平面へ射影した力をもとに、その超平面内で構造の緩和を行い、緩和した構造から、最終安定構造Sbへの直線変位方向を改めて求め、この手順を安定構造Soが最終安定構造Sbに達するまで繰り返す。

概要

背景

半導体装置の製造工程をコンピュータ上でシミュレーションする場合には、現象素過程である化学反応についての適切なモデル、たとえば、化学反応式などのような、エネルギーの吸収や放出等の現象を定量的に表現でき、かつ、数学アルゴリズムとして記述可能なモデルが必要となる。

その数学的モデル構築するには、複数の原子関与する反応(たとえば、シリコン結晶中格子間シリコン原子拡散経路等)において、仮に、この反応経路が容易に想像できない場合であっても、少ない計算時間で最低障壁エネルギーの反応パスを見つけだせることが望ましい。

ところで、原子配置分子構造を計算するシミュレーション方法、例えば、分子動力学シミュレーションなどを用いて、ある任意の初期状態から局所安定あるいは最安定構造を求めるには、各原子にはたらく力を計算し、その力に沿って原子を動かしながら、すべての原子にはたらく力がゼロになる構造を算出すればよい。すなわち、原理的には、すべての安定構造は、初期の原子配置を無数に変えれば求めることができる。

また、ある化学反応のモデルを決定するということは、反応に関与する局所安定あるいは最安定構造間の原子配置の変化、すなわち反応経路と、反応経路に沿った遷移エネルギーを求めるということである。たとえば、関与する原子が一〜二個であり、かつ、反応パスが単純かつ事前に想像できるような場合は、critical−path法を用いることで、反応パスのエネルギー障壁を求めることができる。

なお、critical−path法については、次の文献(従来文献1)に詳しい。
K.Kato,J.Phys.Condens.Matter,vol.5,pp.6387−6406,(1993)

さらに、パスが判らなくても、まず、やみくもに(ランダムに)ある構造の周りで反応が進みそうな方向を探し、ある数学的な拘束条件仮定して、その反応方向を採用するかしないかを決めて、結果的に計算された反応経路を採用するという手法もある。

この計算手法は、次の文献(従来文献2)に詳しい。
M.Naster,V.V.Bulatov and S.Yip, “Saddle−point configurations for self−interstitial migration in silicon,” Phys.Rev.B,vol.53,No.20,pp.13521−13527(1996)

概要

反応パスを容易に想像できない場合であっても反応経路を算出できるとともに、半導体装置の結晶シリコン中点欠陥の拡散経路及び障壁エネルギーの算出を可能とする。

化学反応前後の物質の原子配置としての構造変化を計算し、その化学反応の経路と遷移エネルギーを求める計算手法において、まず、求めたい反応パスの大筋を見出すために、ある十分な有限温度での分子動力計算を行う。次に、これら安定構造間の構造遷移を計算する場合、初期安定構造So及び最終安定構造Sbを選択し、各原子が対応するSoからSbへの直線方向へ射影した成分をゼロとし、3N次元内直線の鉛直平面へ射影した力をもとに、その超平面内で構造の緩和を行い、緩和した構造から、最終安定構造Sbへの直線変位方向を改めて求め、この手順を安定構造Soが最終安定構造Sbに達するまで繰り返す。

目的

本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、反応パスを容易に想像できない場合であっても反応経路を算出できるとともに、障壁エネルギーの最も低い反応経路を求めることができ、かつ、半導体装置の結晶シリコン中の点欠陥の拡散経路についての化学反応シミュレーションを可能とする分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法の提供を目的とする。

効果

実績

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牽制数
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請求項1

化学反応前後の物質原子配列及び/又は分子構造の変化を計算し、前記化学反応の経路及び/又は遷移エネルギーを算出する分子構造遷移シミュレーション方法であって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、前記有限温度及び前記有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、前記分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、前記複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、前記初期安定構造の構成原子と、この初期安定構造の構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記初期安定構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記初期安定構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、前記微小距離だけ移動した初期安定構造の各構成原子にはたらく力のうち、3N次元において前記直線変位方向へ射影した前記力の線分をゼロとし、かつ、前記直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した前記力にもとづき、前記鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、前記緩和した構造の構成原子と、この緩和した構造の構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記緩和した構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記緩和した構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、前記緩和した構造の各構成原子の位置が、前記緩和した構造の各構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、前記第六手順から前記第七手順までの処理を繰り返すことを特徴とする分子構造遷移シミュレーション方法。

請求項2

前記第三手順が、前記有限温度及び前記有限時間における前記分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、前記物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を前記局所安定構造として複数求める処理からなることを特徴とする請求項1記載の分子構造遷移シミュレーション方法。

請求項3

点欠陥を有するシリコン結晶の原子配列及び/又は分子構造の変化を計算し、拡散経路及び/又は遷移エネルギーを算出する点欠陥遷移シミュレーション方法であって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、前記有限温度及び前記有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、前記分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、前記複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、前記初期安定構造において点欠陥を構成する原子と、この点欠陥構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記点欠陥構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記点欠陥構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、前記微小距離だけ移動した各点欠陥構成原子にはたらく力のうち、3N次元において前記直線変位方向へ射影した前記力の線分をゼロとし、かつ、前記直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した前記力にもとづき、前記鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、前記緩和した構造の点欠陥構成原子と、この緩和した構造の点欠陥構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記緩和した構造の各点欠陥構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記緩和した構造の各点欠陥構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、前記緩和した構造の各点欠陥構成原子の位置が、前記緩和した構造の各点欠陥構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、前記第六手順から前記第七手順までの処理を繰り返すことを特徴とする点欠陥遷移シミュレーション方法。

請求項4

前記第三手順が、前記有限温度及び前記有限時間における前記分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、前記シリコン結晶の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を前記局所安定構造として複数求める処理からなることを特徴とする請求項3記載の点欠陥遷移シミュレーション方法。

請求項5

化学反応前後の物質の原子配列及び/又は分子構造の変化を計算するとともに、前記化学反応の経路及び/又は遷移エネルギーを算出する処理を分子構造遷移シミュレーション装置に実行させるプログラムであって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、前記有限温度及び前記有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、前記分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、前記複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、前記初期安定構造の構成原子と、この初期安定構造の構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記初期安定構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記初期安定構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、前記微小距離だけ移動した初期安定構造の各構成原子にはたらく力のうち、3N次元において前記直線変位方向へ射影した前記力の線分をゼロとし、かつ、前記直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した前記力にもとづき、前記鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、前記緩和した構造の構成原子と、この緩和した構造の構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、前記緩和した構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に前記緩和した構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、前記緩和した構造の各構成原子の位置が、前記緩和した構造の各構成原子に対応する前記最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、前記第六手順から前記第七手順までの処理を繰り返す処理を分子構造遷移シミュレーション装置に実行させることを特徴とする分子構造遷移シミュレーションプログラム

請求項6

前記第三手順が、前記有限温度及び前記有限時間における前記分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、前記物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を前記局所安定構造として複数求める処理からなることを特徴とする請求項5記載の分子構造遷移シミュレーションプログラム。

技術分野

0001

本発明は、分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法に関し、特に、半導体装置の設計・製造プロセスのシミュレーション等に利用される化学反応経路及び遷移エネルギーを算出する分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法に関する。

背景技術

0002

半導体装置の製造工程をコンピュータ上でシミュレーションする場合には、現象素過程である化学反応についての適切なモデル、たとえば、化学反応式などのような、エネルギーの吸収や放出等の現象を定量的に表現でき、かつ、数学アルゴリズムとして記述可能なモデルが必要となる。

0003

その数学的モデル構築するには、複数の原子関与する反応(たとえば、シリコン結晶中格子間シリコン原子拡散経路等)において、仮に、この反応経路が容易に想像できない場合であっても、少ない計算時間で最低障壁エネルギーの反応パスを見つけだせることが望ましい。

0004

ところで、原子配置や分子構造を計算するシミュレーション方法、例えば、分子動力学シミュレーションなどを用いて、ある任意の初期状態から局所安定あるいは最安定構造を求めるには、各原子にはたらく力を計算し、その力に沿って原子を動かしながら、すべての原子にはたらく力がゼロになる構造を算出すればよい。すなわち、原理的には、すべての安定構造は、初期の原子配置を無数に変えれば求めることができる。

0005

また、ある化学反応のモデルを決定するということは、反応に関与する局所安定あるいは最安定構造間の原子配置の変化、すなわち反応経路と、反応経路に沿った遷移エネルギーを求めるということである。たとえば、関与する原子が一〜二個であり、かつ、反応パスが単純かつ事前に想像できるような場合は、critical−path法を用いることで、反応パスのエネルギー障壁を求めることができる。

0006

なお、critical−path法については、次の文献(従来文献1)に詳しい。
K.Kato,J.Phys.Condens.Matter,vol.5,pp.6387−6406,(1993)

0007

さらに、パスが判らなくても、まず、やみくもに(ランダムに)ある構造の周りで反応が進みそうな方向を探し、ある数学的な拘束条件仮定して、その反応方向を採用するかしないかを決めて、結果的に計算された反応経路を採用するという手法もある。

0008

この計算手法は、次の文献(従来文献2)に詳しい。
M.Naster,V.V.Bulatov and S.Yip, “Saddle−point configurations for self−interstitial migration in silicon,” Phys.Rev.B,vol.53,No.20,pp.13521−13527(1996)

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、従来のcritical−path法を用いるには、パスが予め判明していることを前提としているため、構造遷移に寄与する原子数が多く、かつ、反応パスが容易に想像できない場合には、最低のエネルギーパスや反応パスのエネルギー障壁を求めることは困難であった。

0010

また、従来文献2に記載の従来の計算手法を用いた場合は、やみくもに(ランダムに)化学反応の進むであろう方向が探されることから、障壁エネルギーの最も低い反応経路の導き出される確率が低かった。したがって、この計算手法により求められた反応経路が、現実の化学反応経路とは一致しない場合があった。特に、たとえば、半導体装置に多用される結晶シリコン中の点欠陥の拡散経路を算出するにあたっては、製品高品質化信頼性向上の観点から、従来文献2に記載の計算手法の利用が躊躇されていた。

0011

さらに、すべての安定構造は、原理的には、初期の原子配置を無数に変えることで求められるものの、反応経路に沿った山の頂点鞍点)の構造については、各原子にはたらく力に沿って原子を動かし、すべての原子にはたらく力がゼロになるような構造を見つけるという計算を単純に行ったとしても、その構造を見つける以前にどこかの局所安定構造に落ち込んでしまうこととなる。このため、異なる安定構造間を遷移する反応経路のうち、もっとも障壁エネルギーの低い反応経路を求めることはできなかった。

0012

また、critical−path法や従来文献2に記載の計算手法は、ある特定の原子を強制的に動かし、まわりの原子が受ける力を緩和させながら反応を進めていくこととしていたため、原子によっては最低障壁エネルギーより高い反応経路を見出すことがあり、この場合の多くは、目的の遷移先の構造にたどりつけないうちに別の非現実的な反応経路を計算上選択してしまって、計算が破綻(力が緩和しきれなくなる)するか、又は、そのまま間違った経路を計算してしまっていた。

0013

本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、反応パスを容易に想像できない場合であっても反応経路を算出できるとともに、障壁エネルギーの最も低い反応経路を求めることができ、かつ、半導体装置の結晶シリコン中の点欠陥の拡散経路についての化学反応シミュレーションを可能とする分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0014

この目的を達成するため、本発明の請求項1記載の分子構造遷移シミュレーション方法は、化学反応前後の物質原子配列及び/又は分子構造の変化を計算し、化学反応の経路及び/又は遷移エネルギーを算出する分子構造遷移シミュレーション方法であって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、有限温度及び有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、初期安定構造の構成原子と、この初期安定構造の構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、初期安定構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に初期安定構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、微小距離だけ移動した初期安定構造の各構成原子にはたらく力のうち、3N次元において直線変位方向へ射影した力の線分をゼロとし、かつ、直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した力にもとづき、鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、緩和した構造の構成原子と、この緩和した構造の構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、緩和した構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に緩和した構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、緩和した構造の各構成原子の位置が、緩和した構造の各構成原子に対応する最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、第六手順から第七手順までの処理を繰り返す方法としてある。

0015

分子構造遷移シミュレーション方法をこのような方法とすると、予め化学反応の経路が判らなくても、局所安定構造を介した大まかな(直線的な)反応経路を、有限温度の分子動力学計算で求めておくことができるため、間違った経路を採ったり、計算が破綻することなく、障壁エネルギーの最も低い反応経路と、遷移エネルギーの算出が可能となる。したがって、任意の素過程を表す化学反応を定量的に特定できるので、この定量的な化学反応を応用した数学モデルを構築でき、かつ、素過程モデルを組み合わせた高度かつ複雑な物理現象計算機シミュレーションが可能になる。

0016

また、請求項2記載の分子構造遷移シミュレーション方法は、第三手順が、有限温度及び有限時間における分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を局所安定構造として複数求める処理からなる方法としてある。

0017

分子構造遷移シミュレーション方法をこのような方法とすれば、求めたい反応パスの大筋を見出すことが可能な十分な有限温度での分子動力学計算の計算結果を用いて、局所安定構造を求めることができる。すなわち、通常、有限個の原子からなる構造の安定状態をすべて厳密に列挙することは容易でないものの、分子動力学計算の時間区切りが十分多ければ、十分多様な初期励起状態から安定な構造を探索するように計算できることになるため、局所的に安定な構造をほとんどこの時点で求めることができる。

0018

また、請求項3記載の点欠陥遷移シミュレーション方法は、点欠陥を有するシリコン結晶の原子配列及び/又は分子構造の変化を計算し、拡散経路及び/又は遷移エネルギーを算出する点欠陥遷移シミュレーション方法であって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、有限温度及び有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、初期安定構造において点欠陥を構成する原子と、この点欠陥構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、点欠陥構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に点欠陥構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、微小距離だけ移動した各点欠陥構成原子にはたらく力のうち、3N次元において直線変位方向へ射影した力の線分をゼロとし、かつ、直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した力にもとづき、鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、緩和した構造の点欠陥構成原子と、この緩和した構造の点欠陥構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、緩和した構造の各点欠陥構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に緩和した構造の各点欠陥構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、緩和した構造の各点欠陥構成原子の位置が、緩和した構造の各点欠陥構成原子に対応する最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、第六手順から第七手順までの処理を繰り返す方法としてある。

0019

点欠陥遷移シミュレーション方法をこのような方法とすると、予め化学反応の経路が判らなくても、局所安定構造を介した大まかな反応経路を有限温度の分子動力学計算で求めておくことができるため、シリコン結晶中の代表的な点欠陥である格子間シリコン原子の拡散経路と、その障壁エネルギーの計算が可能となる。

0020

また、請求項4記載の点欠陥遷移シミュレーション方法は、第三手順が、有限温度及び有限時間における分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、シリコン結晶の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を局所安定構造として複数求める処理からなる方法としてある。

0021

点欠陥遷移シミュレーション方法をこのような方法とすれば、障壁エネルギーの最も低い反応経路を導き出すために必要な局所安定構造を、反応パスの大筋を見出すためにある十分な有限温度での分子動力学計算の結果にもとづき求めることができる。

0022

また、請求項5記載の分子構造遷移シミュレーションプログラムは、化学反応前後の物質の原子配列及び/又は分子構造の変化を計算するとともに、化学反応の経路及び/又は遷移エネルギーを算出する処理を分子構造遷移シミュレーション装置に実行させるプログラムであって、有限温度及び有限時間を設定する第一手順と、有限温度及び有限時間における分子動力学計算を行う第二手順と、分子動力学計算の計算結果にもとづき、局所安定構造を複数求める第三手順と、複数の局所安定構造の中から、初期形態となる局所安定構造と、最終形態となる局所安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする第四手順と、初期安定構造の構成原子と、この初期安定構造の構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、初期安定構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に初期安定構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する第五手順と、微小距離だけ移動した初期安定構造の各構成原子にはたらく力のうち、3N次元において直線変位方向へ射影した力の線分をゼロとし、かつ、直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した力にもとづき、鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う第六手順と、緩和した構造の構成原子と、この緩和した構造の構成原子に対応する最終安定構造の構成原子との間の直線変位方向を、緩和した構造の各構成原子ごとに設定し、これら設定した直線変位方向に緩和した構造の各構成原子をそれぞれ微小距離だけ移動する処理を行う第七手順とを有し、緩和した構造の各構成原子の位置が、緩和した構造の各構成原子に対応する最終安定構造の構成原子のそれぞれの位置に到達するまで、第六手順から第七手順までの処理を繰り返す処理を分子構造遷移シミュレーション装置に実行させる構成としてある。

0023

分子構造遷移シミュレーションプログラムをこのような構成とすると、設定された有限温度及び有限時間内での分子動力学計算、この分子動力学計算の計算結果にもとづく局所安定構造の算出、初期安定構造及び最終安定構造の設定、直線変位方向への移動等の処理を分子構造遷移シミュレーション装置に実行させることができる。

0024

このため、分子構造遷移シミュレーションプログラムにより分子動力学計算等の処理が実行された分子構造遷移シミュレーション装置においては、分子動力学計算が十分な有限温度において行われることから、反応パスを容易に想像できない場合であっても、求めたい反応パスの大筋を見出すことができる。さらに、分子構造遷移シミュレーションプログラムにより、障壁エネルギーの最も低い反応経路の算出や、化学反応のシミュレーションを分子構造遷移シミュレーション装置に実行させることができる。

0025

また、請求項6記載の分子構造遷移シミュレーションプログラムは、第三手順が、有限温度及び有限時間における分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を局所安定構造として複数求める処理からなる構成としてある。

0026

分子構造遷移シミュレーションプログラムをこのような構成とすれば、有限時間内に分子動力学計算の計算結果として得られた励起状態を含む構造のすべてを用いて、物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造を局所安定構造として複数求める処理を、分子構造遷移シミュレーション装置に行わせることができる。

発明を実施するための最良の形態

0027

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の分子構造遷移シミュレーション方法、そのプログラム及び点欠陥遷移シミュレーション方法の実施形態について、図1を参照して説明する。同図は、本実施形態の分子構造遷移シミュレーション方法を実行する分子構造遷移シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。

0028

同図に示すように、分子構造遷移シミュレーション装置1は、演算部10と、入力部20と、出力部30と、記憶部40と、制御部50とを有している。ここで、演算部10は、化学反応前後の物質の原子配列及び/又は分子構造の変化を計算し、化学反応の経路及び/又は遷移エネルギーを算出する。

0029

すなわち、演算部10は、有限温度及び有限時間を設定する処理と、これら有限温度及び有限時間における分子動力学計算を行う処理と、分子動力学計算により求められた励起状態を含む構造のすべてを用いて、物質の全原子にはたらく力がすべて緩和される安定構造(局所安定構造)を複数求める処理とを行う。なお、有限温度及び有限時間は、入力部20から入力された値を用いることができる。

0030

また、演算部10は、分子動力学計算の計算結果、及び、局所安定構造を記憶部40へ送り記憶させる。そして、演算部10は、求めた複数の局所安定構造の中から、初期形態となる安定構造と、最終形態となる安定構造とを選択して、それぞれ初期安定構造及び最終安定構造とする処理と、初期安定構造の構成原子と、最終安定構造の構成原子のうち、初期安定構造の構成原子に対応する構成原子との間の直線変位方向を設定し、この直線変位方向に初期安定構造の全原子を微小距離だけ進める処理を行う。

0031

さらに、演算部10は、初期安定構造の構成原子にはたらく力のうち、3N次元(Nは原子数)において直線変位方向へ射影した力の線分をゼロとし、かつ、直線変位方向に対する鉛直平面へ射影した力にもとづき、鉛直平面の超平面内において構造の緩和を行う処理と、緩和した構造の構成原子と、最終安定構造の構成原子のうち、緩和した構造の構成原子に対応する構成原子との間の直線変位方向を設定し、この直線変位方向に緩和した構造の全原子を微小距離だけ移動する処理を行う。

0032

本発明において、3N次元とは、物質の各原子が有する次元のそれぞれをいう。すなわち、各原子のそれぞれは、X方向、Y方向及びZ方向の異なる次元を有するため、物質全体としては、原子数に相当するN個の3次元空間が存在することになる。

0033

また、演算部10は、緩和した構造の構成原子の位置が、最終安定構造の構成原子のうち、緩和した構造の構成原子に対応する構成原子の位置に到達するまで、緩和した構造から最終安定構造への直線変位方向の設定、構成原子の移動等の処理を繰り返す。

0034

入力部20は、遷移シミュレーションを行うために必要なデータを入力する。この必要なデータには、たとえば、分子動力学計算のために設定される有限温度及び有限時間が含まれる。有限温度は、化学反応が起こるに足るだけのある十分な任意数種類の温度であり、また、有限時間は、反応が十分な回数起こるだけの時間である。出力部30は、遷移シミュレーションの計算結果を画面出力する。

0035

記憶部40は、入力部20で入力されたデータ、遷移シミュレーションの計算に必要なパラメータ、演算部10における遷移シミュレーションの計算経過及び結果などを記憶する。なお、分子構造遷移シミュレーション装置1の構成各部が実行する分子構造遷移シミュレーションの処理は、この処理の手順が組まれた分子構造遷移シミュレーションプログラムにより実行される。この分子構造遷移シミュレーションプログラムについては、後述する。

0036

制御部50は、入力部20から入力されたデータを記憶部40へ送り、記憶させる。また、制御部50は、演算部10で行われる演算処理に必要なデータを記憶部40から取り出して演算部10へ送るとともに、演算部10における演算結果を出力部30へ送り、画面表示させる。

0037

次に、本実施形態の分子構造遷移シミュレーション方法について、図2を参照して説明する。同図は、本実施形態の分子構造遷移シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。

0038

まず、モデル化した化学反応が起こるだけの十分な有限温度における分子動力学計算を行う(ステップ10)。分子動力学計算の時間区切りごとの構造は、それぞれ化学反応の途中経過ではあるが、化学反応に最低限必要な障壁エネルギー以上の余剰エネルギーを熱的に得て過剰に励起された構造である。また、十分な有限温度での分子動力学計算を行うことにより、求めたい反応パスの大筋を見出すことができる。

0039

これら時間区切りごとの構造のすべてを用いて、全原子にはたらく力がすべて緩和するような安定構造(局所安定構造)を求める(ステップ11)。一般に、有限個の原子からなる構造の安定状態を、すべて厳密に列挙することは容易ではないが、分子動力学計算の時間区切りが十分多ければ、十分多様な初期励起状態から安定な構造を探索するように計算できることになり、局所的に安定な構造がほとんどこの時点で求めることができる。また、分子動力学計算は、時間軸上の変位も記録されているので、見つかった安定構造間の反応経路の大筋も推定することができる。

0040

次いで、複数の安定構造の中から初期形態の安定構造(初期安定構造)と、最終形態の安定構造(最終安定構造)とを選択し、それぞれ初期安定構造を安定構造Sa、最終安定構造を安定構造Sbとし、これら安定構造のうち、安定構造Saについて、安定構造Sa=安定構造So=安定構造Siとする(ステップ12)。

0041

ただし、本発明において安定構造Soとは、安定構造Siにより示される複数の安定構造のうち、説明の便宜上、安定構造Saに相当する安定構造をいう。また、安定構造Siとは、複数の安定構造So,S1,S2,S3,・・・,Snのそれぞれをいう。

0042

図3に示すように、安定構造Saの構成原子と、安定構造Sbの構成原子のうち安定構造Saの構成原子に対応する構成原子との間の直線変位方向を設定する。すなわち、初期形態及び最終形態の二つの異なる安定構造の構成原子がそれぞれ対応する実空間位置間の直線変位方向を求める。

0043

この求めた直線変位方向へ、各原子を微小距離δvだけ進める(ステップ13)。そして、図4に示すように、各原子にはたらく力を3N次元(Nは原子数)で、安定構造Soから安定構造Sbへの直線方向へ射影した成分をゼロとし、3N次元内直線の鉛直平面へ射影した力にもとづき、その超平面内で構造の緩和を行う(ステップ14)。

0044

この緩和した安定構造を安定構造Siとみなし、このみなされた安定構造Siのうち安定構造Soが安定構造Sbに到達したか否かが判断される(ステップ15)。判断の結果、到達しているときは、遷移シミュレーションを終了する。一方、到達していないときは、緩和した安定構造Siから、最終の安定構造Sbへの直線変位方向を改めて求め、ステップ13からステップ15までの手順を繰り返す。

0045

次に、本実施形態の分子構造遷移シミュレーション方法の具体例について、図2を参照して説明する。この分子構造遷移シミュレーション方法の具体例として、ここでは、シリコン結晶中の代表的な点欠陥である格子間シリコン原子の拡散経路と、その障壁エネルギーの計算結果を求める方法(点欠陥遷移シミュレーション方法)について説明する。

0046

なお、点欠陥遷移シミュレーション方法についても、点欠陥の拡散経路等の計算手順は、図2に示す分子構造遷移シミュレーション方法とほぼ同様であるため、同図の手順に対応させて説明する。また、本発明において、点欠陥構成原子とは、完全な原子配列のずれを生じさせている原子をいい、たとえば、格子間原子イオン)、置換原子(イオン)及び原子(イオン)の欠損などがある。

0047

まず、有限温度下での分子動力学計算を行う(ステップ10に対応)。分子動力学計算のための原子間ポテンシャルとして、Stillinger−weberポテンシャルを用いることができる。ただし、シリコン結晶状態を含むあらゆる形態をうまく再現できるポテンシャルであれば、どのようなものを用いても本発明の実施には支障がない。

0048

ここで、たとえば、シリコン原子を1000個及び格子間シリコン原子1個、計1001個のシリコン原子群を単位セルとし、その単位セルを直交3次元実空間で周期的に無限個配置した系において、1073K、1173K、及び1273Kの3種類の温度(単位はKelvin)で、それぞれ1.0ナノ秒(1.0ns)の間、微小時間刻み1.0フェムト秒(1.0fs=10−15秒)毎に格子間シリコン原子の運動を計算する。

0049

次いで、各原子にはたらく力の方向に原子を動かして、全原子にはたらく力がゼロになるような局所安定構造を求める(ステップ11に対応)。たとえば、1fs毎のすべての有限温度下の分子動力学計算結果である原子配置それぞれを計算上絶対零度まで冷却する計算を行った結果、たとえば、図5に示すような原子配置が得られる。なお、この得られた原子配置の構造を、本発明においては、便宜上、拡張110ダンベル構造というものとする。

0050

格子間シリコン原子の拡張は、この拡張した110ダンベル構造の原子位置がそれぞれ遷移し、その遷移エネルギー障壁を熱的に超えれば別の位置のダンベル構造へ移動する現象と見なすことができる。この遷移エネルギー障壁の値を求める計算は、図2のステップ12からステップ15までに対応する。

0051

すなわち、ある拡張110ダンベル構造を初期構造とし、そのもっとも近い移動先の拡張110ダンベル構造を終状態の構造として選び出し、単位セル内の1001個すべての原子位置についての安定構造を安定構造Siとする(ステップ12に対応)。

0052

そして、安定構造Siから安定構造Sbへの直線変位方向を求め、この方向に各原子を微小距離δvだけ進める(ステップ13に対応)。なお、図3及び図4に示した微小距離δvについては、移動が直線的に起こると仮定した場合の経路座標上の距離の100分の1から1000分の1の値を採用することができるが、この値を厳密に限定する必要はない。

0053

その後、各原子にはたらく力を3N次元(Nは原子数)で、安定構造Soから安定構造Sbへの直線方向へ射影した成分をゼロとし、3N次元内直線の鉛直平面へ射影した力にもとづき、その超平面内で構造の緩和を行う(ステップ14に対応)。この緩和した安定構造を安定構造Siとみなし、このみなされた安定構造Siのうち安定構造Soが安定構造Sbに到達したか否かが判断される(ステップ15に対応)。

0054

判断の結果、到達しているときは、遷移シミュレーションを終了する。一方、到達していないときは、緩和した安定構造Siから、最終の安定構造Sbへの直線変位方向を改めて求め、ステップ13からステップ15までの手順を繰り返す。

0055

この遷移シミュレーションの結果、図6に示すように、反応の経路座標、及び、その経路座標に沿ったエネルギー遷移状態が求まり、最大のエネルギー障壁の高さは、計算の誤差を含めても、0.9eVとなる。分子動力学計算の結果として全原子の変位量の2乗の和を時間軸上でプロットし、このプロットを直線とみなした場合の傾きが格子間シリコン原子の拡散係数DIに相当する。

0056

この拡散係数をステップ1の計算時にあてはめて抽出した結果、以下の式のような温度Tに依存した値となる。
DI=0.039exp(−0.89/kT)[cm2/s] …(1)
なお、式(1)中のkは、ボルツマン定数である。

0057

式(1)から、格子間シリコン原子の拡散活性化エネルギーは0.89eVであることが判る。これは、本方法によって特定できた格子間シリコン原子の拡散反応経路に沿った遷移エネルギー0.9eVに相当する値である。なお、[従来の技術]に挙げた従来文献2に記載の計算手法を用いて、この遷移エネルギーを求めると、1.62eVとなる。つまり、この手法を用いた場合は、まちがった反応経路が算出されてしまうことになる。

0058

次に、分子構造遷移シミュレーション装置に分子構造遷移シミュレーション方法を実行させる分子構造遷移シミュレーションプログラムについて、説明する。上記の実施形態におけるコンピュータ(分子構造遷移シミュレーション装置)の分子動力学計算機能、局所安定構造の算出機能、直線変位方向の設定機能及び構成原子の移動機能等は、記憶部40に記憶された分子構造遷移シミュレーションプログラムにより実現される。

0059

すなわち、分子構造遷移シミュレーションプログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、コンピュータの各構成要素に指令を送り、所定の処理、たとえば、演算部10における分子動力学計算の演算処理、局所安定構造の算出処理などを行わせる。これによって、分子動力学計算の演算処理や局所安定構造の算出処理等は、分子構造遷移シミュレーションプログラムとコンピュータとが協働した分子構造遷移シミュレーション装置により実現される。

0060

なお、分子動力学計算の演算処理や局所安定構造の算出処理等を実現するための分子構造遷移シミュレーションプログラムは、コンピュータのROMに記憶される他、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、たとえば、外部記憶装置及び可搬記録媒体等に格納することができる。外部記憶装置とは、CD−ROM等の記憶媒体を内蔵し、分子構造遷移シミュレーション装置に外部接続されるメモリ増設装置をいう。一方、可搬記録媒体とは、記録媒体駆動装置ドライブ装置)に装着でき、かつ、持ち運び可能な記録媒体であって、たとえば、フレキシブルディスクメモリカード光磁気ディスク等をいう。

0061

そして、記録媒体に記録されたプログラムは、コンピュータのRAMにロードされて、CPUにより実行される。この実行により、上述した本実施形態の分子構造遷移シミュレーション装置の機能が実現される。さらに、コンピュータで分子構造遷移シミュレーションプログラムをロードする場合、他のコンピュータで保有された分子構造遷移シミュレーションプログラムを、通信回線を利用して自己の有するRAMや外部記憶装置にダウンロードすることもできる。このダウンロードされた分子構造遷移シミュレーションプログラムも、CPUにより実行され、本実施形態の分子構造遷移シミュレーション装置の分子動力学計算の演算機能や局所安定構造の算出機能等を実現する。

発明の効果

0062

以上のように、本発明によれば、求めたい反応パスの大筋を見出すために所定の有限温度での分子動力学計算を行うことにより、この分子動力学計算の計算結果にもとづいて、局所安定構造を介した大まかな反応経路を求めることができる。この大まかな反応経路は、実際に反応が起こる経路にほぼ等しくなる。このため、予め化学反応の経路が判らなくても、障壁エネルギーの最も低い経路と、それに沿った遷移エネルギーの値とを算出できる。したがって、従来の計算手法における計算の破綻の発生や非現実的な反応経路の算出がなくなる。

0063

また、算出された化学反応経路及び遷移エネルギーにもとづき、任意の素過程を表す化学反応を定量的に特定できるため、この化学反応を応用した数学モデルの構築を可能とし、かつ、素過程モデルを組み合わせた高度かつ複雑な物理現象の計算機シミュレーションを行うことができる。

0064

さらに、求めたい反応パスの大筋を見出すことが可能な十分な有限温度での分子動力学計算の計算結果を用いて、局所安定構造を求めることとすれば、通常、有限個の原子からなる構造の安定状態をすべて厳密に列挙することは容易でないものの、分子動力学計算の時間区切りが十分多いときに、十分多様な初期励起状態から安定な構造を探索するように計算できるため、局所安定構造を早期に求めることができる。

0065

また、半導体装置に用いられるシリコン結晶の有する点欠陥の遷移についても、分子動力学計算の計算結果にもとづいて求められた複数の安定構造のうち、初期安定構造及び最終安定構造を選択し、これらの間の実空間位置間の直線変位方向を求め、この方向に初期安定構造の構成原子を微小距離移動させ、さらに各原子にはたらく力のうち3N次元で直線変位方向へ射影した成分をゼロとし、かつ、3N次元内直線の鉛直方向へ射影した力にもとづき、その超平面内で構造の緩和を行い、緩和した構造から最終安定構造への直線変位方向を改めて求め、これら手順を最終安定構造に到達するまで繰り返すことにより、その点欠陥の遷移の現実的なシミュレーションを可能とする。

0066

さらに、分子構造遷移シミュレーションプログラムは、コンピュータ(分子構造遷移シミュレーション装置)の各構成要素へ所定の指令を送ることにより、このコンピュータに分子動力学計算の計算処理や局所安定構造の算出処理等を実行させることができる。これによって、分子動力学計算の計算処理や局所安定構造の算出処理等は、分子構造遷移シミュレーションプログラムとコンピュータとが協働した分子構造遷移シミュレーション装置により実行される。

図面の簡単な説明

0067

図1本発明の分子構造遷移シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
図2本発明の分子構造遷移シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
図3本発明の分子構造遷移シミュレーション方法において、化学反応経路を求める手順を示す模式図である。
図4本発明の分子構造遷移シミュレーション方法において、超平面内における構造の緩和を求める手順を示す模式図である。
図5本発明の分子構造遷移シミュレーション方法において、分子動力学計算の結果得られた分子構造を示す構造図である。
図6本発明の分子構造遷移シミュレーション方法により得られた反応経路座標に対する障壁エネルギーの推移を示す折れ線グラフである。

--

0068

1分子構造遷移シミュレーション装置
10演算部
20 入力部
30 出力部
40 記憶部
50 制御部

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