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図面 (7)

課題

貯蔵安定性の高い近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材を提供する。

解決手段

A成分及び/又はB成分を含有する近赤外光吸収性組成物。

A成分:銅イオン一般式1の第1のリン酸エステル化合物及び一般式2の第2のリン酸エステル化合物より成る成分、

B成分:第1のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応による第1のリン酸エステル銅化合物、及び第2のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応による第2のリン酸エステル銅化合物より成る成分。

[RはH、C1〜C10のアルキル基ハロゲン基アルコキシ基ニトロ基又はフェニル基、pは0〜5の整数、mは1〜2。]

[R1はH又はCH3、R2はH、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基、ニトロ基又はフェニル基、R3はC1〜C10のアルキレン基、qは0〜4、rは1〜5、q+rは1〜5の整数、nは1〜2。]

概要

背景

概要

貯蔵安定性の高い近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材を提供する。

A成分及び/又はB成分を含有する近赤外光吸収性組成物。

A成分:銅イオン一般式1の第1のリン酸エステル化合物及び一般式2の第2のリン酸エステル化合物より成る成分、

B成分:第1のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応による第1のリン酸エステル銅化合物、及び第2のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応による第2のリン酸エステル銅化合物より成る成分。

[RはH、C1〜C10のアルキル基ハロゲン基アルコキシ基ニトロ基又はフェニル基、pは0〜5の整数、mは1〜2。]

[R1はH又はCH3、R2はH、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基、ニトロ基又はフェニル基、R3はC1〜C10のアルキレン基、qは0〜4、rは1〜5、q+rは1〜5の整数、nは1〜2。]

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性の高い近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有して成ることを特徴とする近赤外光吸収性組成物。(A)成分:銅イオン、下記式(1)で表される第1のリン酸エステル化合物、及び下記式(2)で表される第2のリン酸エステル化合物より成る成分(B)成分:前記第1のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第1のリン酸エステル銅化合物、及び、前記第2のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第2のリン酸エステル銅化合物より成る成分

請求項

ID=000004HE=030 WI=092 LX=0590 LY=0650

請求項

ID=000005HE=050 WI=096 LX=0570 LY=1000

請求項2

前記(A)成分及び/又は前記(B)成分を溶解又は分散させる溶媒を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外光吸収性組成物。

請求項3

前記溶剤重合性を有する有機溶媒であることを特徴とする請求項2に記載の近赤外光吸収性組成物。

請求項4

請求項3に記載の近赤外光吸収性組成物を重合して成ることを特徴とする近赤外光吸収材

技術分野

0001

本発明は近赤外領域の光(近赤外光)に対して吸収特性を有する近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材に関する。

0002

近赤外光吸収性組成物として、従来から、リン酸ジフェニル及び銅イオンを含有して成るものが知られている。

発明が解決しようとする課題

0003

しかしながら、上記従来の近赤外光吸収性組成物は以下に示す課題を有していた。

0004

即ち、前述した従来の近赤外光吸収性組成物において、リン酸ジフェニル及び銅イオンをメチルメタクリレート等の溶剤中に溶解又は分散させると、その直後には近赤外光吸収性を示すものの、比較的短時間に沈殿を生じ、この沈殿物をろ過して得られるろ液はほとんど近赤外光吸収性を示さず、もはや近赤外光吸収性組成物として使用することができなくなる。即ち、前述した従来の近赤外光吸収性組成物は、溶剤に溶解又は分散させた場合に貯蔵安定性が十分とは言えなかった。

0005

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性の高い近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

上記目的を達成するために、本発明者らは、リン酸エステル化合物銅化合物との反応で得られる化合物分光学特性について鋭意研究を重ねたところ、特定の化学構造を有するリン酸エステル化合物を含む組成物、しかも、異なるリン酸エステル化合物の混合組成物が、上記課題を解決するのに有効であることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の近赤外光吸収性組成物は、下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有して成ることを特徴とする。
(A)成分:銅イオン、下記式(1)で表される第1のリン酸エステル化合物、及び下記式(2)で表される第2のリン酸エステル化合物より成る成分
(B)成分:第1のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第1のリン酸エステル銅化合物、及び、第2のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第2のリン酸エステル銅化合物より成る成分

0007

0008

0009

本発明の近赤外光吸収性組成物によれば、上記(A)成分及び/又は(B)成分を溶剤中に溶解又は分散させると、第1及び第2のリン酸エステル化合物のリン酸基と銅イオンとが配位結合及び/又はイオン結合により結合し、この銅イオンは第1及び第2のリン酸エステル化合物に囲まれた状態で溶剤中に溶解又は分散され、この銅イオンのd軌道間の電子遷移によって近赤外光が選択吸収される。このとき、上記第1のリン酸エステル化合物及び上記第2のリン酸エステル銅化合物が混在すると、可視光と近赤外光との境界に当たる波長域(概ね750nm前後;以下、「境界波長領域」という)の長波長側の近赤外光に対する吸収率が高められることが確認された。また、この場合、同短波長側の可視光の透過率は高められ、近赤外光の吸収率の向上と相俟って、近赤外光の吸収率に対する可視光の吸収率が十分に低減される。これは、上記第1及び第2のリン酸エステル化合物が混在することによって、近赤外光の波長に相当する銅イオンの電子遷移が促進されるといった、両リン酸エステル化合物の相互の影響によるものと思われる。したがって、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を向上させることが可能となる。また、上記第1のリン酸エステル化合物及び銅化合物、又は第1のリン酸エステル銅化合物のみを溶剤中に溶解又は分散させて溶液を調製した場合、この溶液は、調製直後には近赤外光吸収性を示すものの、比較的短時間に沈殿を生じる。ところが、その近赤外光吸収性組成物に上記第2のリン酸エステル化合物又は第2のリン酸エステル銅化合物を含めて溶液としたものは、長期にわたって沈殿を生じず、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を長期にわたって発現することが確認された。したがって、本発明の近赤外光吸収性組成物は、上記第1及び第2のリン酸エステルを含有することにより、溶液とした場合に、近赤外光に対する選択吸収性及び可視光に対する選択透過性を長期にわたって維持することができ、貯蔵安定性が極めて高くなる。

0010

また、本発明の近赤外光吸収性組成物は、上記(A)成分及び/又は上記(B)成分を溶解又は分散させる溶剤を更に含有することを特徴とする。

0011

この近赤外光吸収性組成物によれば、長期間にわたって沈殿を生じず、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を長期にわたって維持することができ、貯蔵安定性が極めて高くなる。更に、本発明の近赤外光吸収性組成物は、例えば、可視光に対する透光性を有するガラス材樹脂材等に極めて簡易に塗布することができ、種々の大きさや形状を有する物品等の任意の部位や面に塗布することも平易となり、大型平板状ディスプレイ用パネル等へも適用が可能となる。しかも、溶剤を樹脂とすれば、樹脂フィルム等の薄膜状の近赤外光吸収性材料を極めて簡易に得ることもできる。

0012

上記溶剤は、重合性を有する有機溶媒であることが好ましい。

0013

この場合でも、本発明の近赤外光吸収性組成物は、長期間にわたって沈殿を生じないため、その有機溶媒と、近赤外光吸収性組成物のうちの式(2)で表される第2のリン酸エステル化合物及び/又は第2のリン酸エステル銅化合物とを共重合させることも可能となり、樹脂化が可能となる。

0014

さらに本発明の近赤外光吸収材は、上記近赤外光吸収性組成物を重合して成ることを特徴とする。

0015

本発明の近赤外光吸収材は、近赤外光吸収性組成物の吸収スペクトル又は透過スペクトルとほぼ同じ形状を有する。従って、本発明の近赤外光吸収材は、近赤外光吸収性組成物と同様に近赤外光吸収材として極めて有効である。

発明を実施するための最良の形態

0016

以下、本発明の近赤外光吸収性組成物及び近赤外光吸収材について詳細に説明する。まず、本発明の近赤外光吸収性組成物について説明する。

0017

本発明の近赤外光吸収性組成物は、下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有して成るものである。

0018

〈(A)成分〉(A)成分は、銅イオン、上記式(1)で表される第1のリン酸エステル化合物及び上記式(2)で表される第2のリン酸エステル化合物より成るものである。上記銅イオンは、銅塩により供給されるが、この銅塩の具体例としては、酢酸銅酢酸銅一水和物蟻酸銅ステアリン酸銅安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅ナフテン酸銅クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物や水和物、或いは水酸化銅塩化銅硫酸銅硝酸銅塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物や水和物が挙げられる。これらの有機酸塩のなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅が好ましく用いられ、また、これらの無機酸銅のなかでは、水酸化銅が好ましく用いられる。なお、(A)成分には、銅イオン以外の金属イオン(以下、「他の金属イオン」という。)が含有されていてもよく、他の金属イオンとしては、ナトリウムカリウムカルシウム、鉄、マンガンマグネシウムニッケル等の金属によるイオンが挙げられる。

0019

また、上記第1のリン酸エステル化合物は、例えば、下記第1の方法、第2の方法、第3の方法等のいずれかによって製造される。

0020

〔第1の方法〕:この第1の方法は、無溶媒又は適宜の有機溶剤中で、下記式(3)で表される化合物と五酸化リンとを反応させる方法である。

0021

0022

式(3)で表される化合物を用いると第1のリン酸エステル化合物を得ることができる。上記式(3)で表される化合物の好適な具体例としては、得られる第1のリン酸エステル化合物の銅化合物における近赤外光吸収特性が優れている点で、X1がフェニル基であるもの、すなわちフェノールが挙げられる。

0023

なお、上述の如く、式(3)で表される化合物にはフェノールが含まれるが、本発明では、式(3)で表される化合物を、便宜上、総称して以下「特定のアルコール」という。ここで、特定のアルコールと五酸化リンとの反応に用いられる有機溶剤としては、五酸化リンと反応しない有機溶剤であって、例えば、ヘキサンシクロヘキサンヘプタンオクタンベンゼントルエンキシレン石油スピリット等の炭化水素系溶剤クロロホルム四塩化炭素ジクロロエタンクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテルジイソプロピルエーテルジブチルエーテルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤アセトンメチルエチルケトンジブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられ、これらの中では、トルエン、キシレンが好ましい。

0024

この[第1の方法]において、特定のアルコールと五酸化リンとの反応条件は、特定のアルコールがフェノールの場合、反応温度が0〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜96時間、好ましくは4〜72時間である。

0025

また、この第1の方法においては、例えば、特定のアルコール及び五酸化リンをモル比で3:1となる割合で用いることにより、上記式(1)及び上記式(2)に示す水酸基の数が2(式(1)に示すm及び式(2)に示すnが1)であるリン酸モノエステル化合物(以下、「モノエステル」という)と、これら水酸基の数が1(式(1)に示すm及び式(2)に示すnが2)であるリン酸ジエステル化合物(以下、「ジエステル」という)との割合が略1:1の混合物が得られる。また、特定のアルコールと五酸化リンとの割合及び反応条件を適宜選択することにより、モノエステルとジエステルとの割合は、モル比で99:1〜40:60となる範囲内で調整される。

0026

〔第2の方法〕:この第2の方法は、無溶媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとを反応させ、得られる生成物に水を添加して加水分解する方法である。オキシハロゲン化リンとしては、オキシ塩化リンオキシ臭化リンを用いることが好ましく、特に好ましくはオキシ塩化リンである。また、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの反応に用いられる有機溶剤としては、オキシハロゲン化リンと反応しない有機溶剤であって、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられ、これらの中では、トルエン、キシレンが好ましい。そして、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜110℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜20時間、好ましくは2〜8時間である。また、この第2の方法においては、例えば、特定のアルコール及びオキシハロゲン化リンをモル比で1:1となる割合で用いることにより、モノエステルを得ることができる。

0027

〔第3の方法〕:この第3の方法は、無溶媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとを反応させることにより、ホスホン酸エステル化合物を合成し、その後、得られたホスホン酸エステル化合物を酸化する方法である。三ハロゲン化リンとしては、三塩化リン三臭化リンを用いることが好ましく、特に好ましくは三塩化リンである。また、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの反応に用いられる有機溶剤としては、三ハロゲン化リンと反応しない有機溶剤であって、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられ、これらの中では、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。そして、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜90℃、好ましくは40〜75℃であり、反応時間が1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。

0028

また、上記ホスホン酸エステル化合物を酸化する手段としては、ホスホン酸エステル化合物に、例えば、塩素ガス等のハロゲンを反応させることによりホスホハロデート化合物を合成し、このホスホロハロリデート化合物を加水分解する手段を利用することができる。ここで、ホスホン酸エステル化合物とハロゲンとの反応温度は0〜40℃が好ましく、特に好ましくは5〜25℃である。また、ホスホン酸エステル化合物を酸化する前に、このホスホン酸エステル化合物を蒸留して精製してもよい。この第3の方法においては、例えば、特定のアルコール及び三ハロゲン化リンをモル比で3:1となる割合で用いることにより、ジエステルが高い純度で得られる。また、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの割合及び反応条件を選択することにより、モノエステルとジエステルとの混合物が得られ、このとき、その割合はモル比で99:1〜1:99となる範囲で調整される。

0029

以上の第1〜第3の方法で得られた第1のリン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、下記式(4)−a及び下記式(4)−bで表される化合物が挙げられる。これら第1のリン酸エステル化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、それらの銅化合物における近赤外光吸収特性の観点からは、ジエステルである式(4)−bで表されるリン酸エステル化合物を使用することが好ましい。

0030

0031

一方、上記第2のリン酸エステル化合物は、例えば下記方法によって製造される。

0032

即ち、この方法では、まず下記式(5)で表されるフェノール化合物反応触媒下、溶媒中で下記式(6)で表される化合物と反応させて下記式(7)で表される化合物を得る。

0033

0034

0035

0036

上記反応触媒としては、(メタアクリル酸ハロゲン化物と反応しない酸捕集剤であって、例えばトリメチルアミントリエチルアミントリプロピルアミントリイソプロピルアミントリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンピリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等が挙げられ、取扱いの容易さから、トリメチルアミンが好ましく用いられる。また、上記反応で用いられる溶媒としては、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応しない溶媒であって、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、メチレンクロライド、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤等が挙げられ、反応転化率の点から、メチレンクロライドが好ましく用いられる。また、このときの反応条件は、反応温度が−20〜100℃、好ましくは−10〜60℃であり、反応時間が0.1〜48時間、好ましくは0.5〜20時間である。

0037

次に、上記式(7)で表される化合物に水もしくは弱塩基弱酸を加えて加水分解し、下記式(8)で表される化合物を得る。また、このときの反応条件は、反応温度が5〜100℃、好ましくは10〜90℃であり、反応時間が1〜50時間、好ましくは2〜30時間である。

0038

0039

次に、上記式(8)で表される化合物を、溶媒中でオキシハロゲン化リンと反応させて、上記第2のリン酸エステル化合物を得ることができる。

0040

ここで、溶媒としては、オキシハロゲン化リンと反応しない有機溶剤であって、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、メチレンクロライド、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これら溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中では、トルエン、キシレンが好ましい。また、オキシハロゲン化リンとしては、例えばオキシ塩化リン、オキシ臭化リンを用いることが好ましく、特に好ましくはオキシ塩化リンである。また、このときの反応条件は、反応温度が0〜110℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜20時間、好ましくは2〜8時間である。

0041

上記方法で得られた第2のリン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、下記式(9)−a、(9)−bで表される化合物が挙げられる。

0042

0043

これら第2のリン酸エステル化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。

0044

〈(B)成分〉(B)成分は、第1のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第1のリン酸エステル銅化合物、及び、第2のリン酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られる第2のリン酸エステル銅化合物より成るものである。第1又は第2のリン酸エステル化合物(以下、「特定のリン酸エステル化合物」という)と銅化合物との反応は、適宜の条件下で両者を接触させることにより行われる。具体的には、下記(イ)、(ロ)、(ハ)の方法等を用いることが可能である。
(イ)特定のリン酸エステル化合物と銅塩(銅化合物)とを混合して両者を反応させる方法。
(ロ)適宜の有機溶剤中において特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを反応させる方法。
(ハ)特定のリン酸エステル化合物が有機溶剤中に含有されて成る有機溶剤層と、銅塩が溶解又は分散されて成る水層とを接触させることにより、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを反応させる方法。

0045

また、この特定のリン酸エステル化合物と銅塩との反応条件は、反応温度が0〜150℃、好ましくは20〜120℃であり、反応時間が0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間、好ましくは1〜7時間である。なお、銅塩としては、(A)成分の説明において述べた銅塩と同様のものが用いられる。

0046

上記(ロ)の方法において用いられる有機溶剤としては、用いられる特定のリン酸エステル化合物を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物メチルアルコールエチルアルコールイソプロピルアルコール等のアルコール類メチルセロソルブエチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類酢酸エチル等のエステル類、ヘキサン、ケロシン石油エーテル等が挙げられる。また、(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類スチレンα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重合性を有する有機溶剤も用いられる。

0047

一方、上記(ハ)の方法において用いられる有機溶剤としては、水に不溶又は難溶であって、用いられる特定のリン酸エステル化合物を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されず、例えば、(ロ)の方法において用いられる有機溶剤として例示したもののうち、芳香族化合物、エーテル類、エステル類、ヘキサン、ケロシン、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。

0048

また、特定のリン酸エステル化合物と銅塩との反応においては、銅塩から陰イオンである酸成分が遊離される。このような酸成分は、本発明の近赤外光吸収性組成物中に樹脂を含めたときに、その近赤外光吸収性組成物の耐湿性及び熱安定性を低下させる原因となり得るため、必要に応じて除去することが好ましい。上記(イ)又は(ロ)の方法によりリン酸エステル銅化合物を製造する場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを反応させた後、生成された酸成分((ロ)の方法においては生成された酸成分及び有機溶剤)を蒸留によって除去することができる。さらに、上記(ハ)の方法によってリン酸エステル銅化合物を製造する場合には、酸成分を除去する好ましい方法として、水に不溶又は難溶の有機溶剤に特定のリン酸エステル化合物が含有されて成る有機溶剤層に、アルカリを添加することによって中和した後、この有機溶剤層と銅塩が溶解又は分散された水層とを接触させることより、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とを反応させ、その後、有機溶剤層と水層とを分離する方法がある。ここで、アルカリとしては、水酸化ナトリウム水酸化カリウムアンモニア等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この方法によれば、銅塩から遊離される酸成分とアルカリとによって水溶性の塩が形成され、この塩が水層に移行するとともに、生成される特定のリン酸エステル銅化合物は有機溶剤層に移行するため、この水層と有機溶剤層とを分離することにより、酸成分が除去される。

0049

また、第1及び第2のリン酸エステル化合物と、銅イオンとの割合は、銅イオン1モルに対して第1及び第2のリン酸エステル化合物における水酸基又は水酸基由来酸素原子が0.5〜10モル、特に1.5〜5モルとなる割合であることが好ましい。この割合が0.5モル未満である場合には、本発明の近赤外光吸収性組成物中に樹脂を含める場合に銅イオンを樹脂中へ分散させることが困難となる傾向にある。この割合が10モルを超える場合には、銅イオンとの配位結合及び/又はイオン結合に関与しない水酸基の割合が過大となるため、近赤外光吸収性組成物の吸湿性が比較的大きくなる傾向にある。よって、この割合を0.5〜10モルとすれば、近赤外光吸収性組成物において銅イオンを樹脂中に良好に分散させて近赤外光吸収特性を高めることができるとともに、耐吸湿性に優れた近赤外光吸収性組成物とすることが可能となる。

0050

さらにまた、本発明の近赤外光吸収性組成物に樹脂を含める場合には、銅イオンの含有割合が近赤外光吸収性組成物全体の0.1〜60重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.3〜15重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%となるように調整される。この割合が0.1重量%未満であるときには、近赤外光吸収特性が高められない傾向にあり、一方、この割合が60重量%を超えるときには、銅イオンを樹脂中に分散させることが極めて困難となる傾向にある。

0051

また、前述の銅イオンの使用割合は、銅イオンを含む全金属イオンにおける50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。この割合が50重量%を超える場合には、銅イオンとリン酸エステル化合物との結合配位が他の金属イオンの影響を受けるため、近赤外光吸収率が十分大きい近赤外光吸収性組成物を得ることが困難な傾向にある。

0052

このような本発明の近赤外光吸収性組成物によれば、上述した(A)成分及び/又は(B)成分を溶剤中に溶解又は分散させると、第1及び第2のリン酸エステル化合物のリン酸基と銅イオンとが配位結合及び/又はイオン結合により結合し、この銅イオンは、リン酸エステルに囲まれた状態で溶剤中に溶解又は分散され、この銅イオンのd軌道間の電子遷移によって近赤外光が選択吸収される。このとき、第1及び第2のリン酸エステル銅化合物が混在すると、境界波長領域の長波長側の近赤外光に対する吸収率が高められる。また、同短波長側の可視光の透過率は高められ、近赤外光の吸収率の向上と相俟って、近赤外光の吸収率に対する可視光の吸収率が十分に低減される。これは、上記第1及び第2のリン酸エステル化合物が混在することによって、近赤外光の波長に相当する銅イオンの電子遷移が促進されるといった、両リン酸エステル化合物の相互の影響によるものと思われる。したがって、近赤外光吸収性組成物における近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を向上させることが可能となる。

0053

また、上記第1のリン酸エステル化合物及び銅化合物、又は第1のリン酸エステル銅化合物のみを含む溶液を近赤外光吸収性組成物として調製した場合、この溶液は調製直後には近赤外光吸収性を示すものの、比較的短時間で沈殿を生じる。ところが、その近赤外光吸収性組成物に上記第2のリン酸エステル化合物又は第2のリン酸エステル銅化合物を含めたものは、長期にわたって沈殿が生じず、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を長期間にわたって発現することが確認された。したがって、本発明の近赤外光吸収性組成物は、上記第1及び第2のリン酸エステルを含有することにより、溶液とした場合に、近赤外光に対する選択吸収性及び可視光に対する選択透過性を長期にわたって維持することができ、貯蔵安定性が極めて高くなる。

0054

また、第1のリン酸エステル化合物はフェニル基を有するため、近赤外光に対して十分な吸収効果を得ることができるとともに、フェニル基以外のアリール基を有するリン酸エステル化合物を用いた場合に比して、近赤外光の吸収率に対する可視光の吸収率の比が小さく、かつ、溶剤への溶解性に優れる。したがって、本発明の近赤外光吸収性組成物によれば、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を一段と向上させることが可能となる。

0055

さらに、第1のリン酸エステル化合物が、上記式(1)におけるmが2のものであると、上記式(1)におけるmが1のものであるリン酸モノエステル化合物及び/又はその銅化合物を成分として含む場合に比して、近赤外光の吸収率に対する可視光の吸収率の比がより小さくなり、かつ、近赤外光の吸収率がより大きくなる。その結果、近赤外光吸収性組成物における近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を一層向上させることができる。

0056

また、第1のリン酸エステル化合物及び/又は第1のリン酸エステル銅化合物と、第2のリン酸エステル化合物及び/又は第2のリン酸エステル銅化合物との含有割合が、重量比で1:99〜99:1、好ましくは1:99〜70:30であると好適である。

0057

上記第1のリン酸エステル化合物及び/又は第1のリン酸エステル銅化合物の含有割合が1未満であると、近赤外光吸収性組成物が第1のリン酸エステル化合物及び/又は第1のリン酸エステル銅化合物のみから成る場合に対して、境界波長領域の前後の波長における吸光度差異が十分に高められない傾向にある。一方、上記含有割合が99を超えると、溶剤に溶解させた場合、数日〜数週間経過後にその溶液において沈殿が生じやすくなる傾向にある。

0058

〈溶剤を含有する近赤外光吸収性組成物(液状組成物)〉本発明の近赤外光吸収性組成物は、上記(A)成分及び/又は(B)成分を溶解又は分散させる溶剤を更に含有することが好ましい。以下、溶剤を含有する近赤外光吸収性組成物を液状組成物と言う。

0059

このような液状組成物によれば、長期間にわたって沈殿を生じず、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性を長期にわたって維持することができ、貯蔵安定性が極めて高くなる。更に、この液状組成物は、例えば、可視光に対する透光性を有するガラス材や樹脂材等に極めて簡易に塗布することができ、種々の大きさや形状を有する物品等の任意の部位や面に塗布することも平易となり、大型平板状のディスプレイ用パネル等へも適用が可能となる。

0060

この液状組成物は、溶剤を蒸発させて生成される薄膜が光学的に透明であれば、それ自体は透明なもの、半透明なもの、又は不透明なものであってもよい。この溶剤としては、水又は有機溶媒を用いることができ、有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル酢酸ブチル、酢酸ブチルセルソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ヘキサン、ケロシン、石油エーテル等が用いられる。また、有機溶媒として、例えばメチルメタクリレート、(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重合性を有する有機溶媒を用いることもできる。

0061

ここで、上記液状組成物は、上記有機溶剤のうち、例えばメチルメタクリレート等の重合性を有する有機溶媒を用いる場合に特に有効である。

0062

即ち、近赤外光吸収性組成物として、第1のリン酸エステル化合物及び/又は第1のリン酸エステル銅化合物のみ含むものを用いると、比較的短時間で沈殿が生じる傾向があるが、本発明の液状組成物は、長期間沈殿を生じることがなく、従って、樹脂化が可能となる。

0063

また、本発明の液状組成物中の上記(A)成分及び/又は(B)成分の含有割合は、使用される溶剤の種類や、近赤外光吸収性組成物の用途又は使用目的によって異なるが、調合後の粘度の観点から、通常、溶剤100質量部に対して、0.1〜1900質量部、好ましくは1〜900質量部、特に好ましくは5〜400質量部となる範囲で調整される。

0064

〈溶剤として樹脂を含む近赤外光吸収性組成物(樹脂組成物)〉本発明の近赤外光吸収性組成物において、上記第1及び第2のリン酸エステル化合物、第1及び第2のリン酸エステル銅化合物は、樹脂との相溶性に優れており、また、上述したように、銅イオンが樹脂中に良好に分散されるので、本発明の近赤外光吸収性組成物に、溶剤として樹脂を含有させることにより、優れた近赤外光吸収特性を有する近赤外光吸収性組成物を得ることができる。以下、樹脂を含む近赤外光吸収性組成物を樹脂組成物と言う。上記のような樹脂としては、上述した(A)成分及び/又は(B)成分の分散性に優れる樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、以下に示すアクリル系樹脂、又はアクリル系樹脂以外の樹脂を好ましく用いることができる。

0065

アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体から得られる重合体が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニルプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。

0066

また、アクリル系樹脂としては、上記の(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、この(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合が可能な他の共重合性単量体との共重合体も用いられる。このような共重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の不飽和カルボン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレンビニル安息香酸ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。

0067

アクリル系樹脂以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンポリプロピレンポリ塩化ビニルポリカーボネイト、さらにはスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重合体が挙げられる。以上の樹脂は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。

0068

また、上記樹脂の単量体として単官能性のもののみを用いる場合には、熱可塑性の樹脂が得られ、単量体の一部又は全部として多官能性のものを用いる場合には、熱硬化性の樹脂が得られる。これら樹脂は、使用目的、用途及び加工成形方法等に応じて適宜選択される。ただし、樹脂として熱可塑性樹脂を用いれば、樹脂組成物の成形加工性が向上するという利点がある。

0069

上記樹脂組成物は、上記(A)成分及び/又は上記(B)成分を上記樹脂中に含有させることにより調製され、このとき、(A)成分及び/又は(B)成分の含有割合は、樹脂組成物の用途又は使用目的によって異なるが、成形性(又は成型性)の観点から、通常、樹脂100質量部に対して、0.1〜400質量部、好ましくは0.3〜200質量部、特に好ましくは1〜100質量部となる範囲で調整される。また、樹脂組成物における銅イオンの割合は、例えば、樹脂組成物全体の0.1〜20重量%であることが望ましく、この場合、可視光透過性に優れた樹脂組成物を確実に得ることが可能となる。また、樹脂組成物を調製するための具体的な方法は、特に限定されるものではないが、以下の方法によると好適である。

0070

この方法は、樹脂中に、(A)成分及び/又は(B)成分を添加して混合する方法である。この方法は、樹脂として熱可塑性樹脂を用いるときに利用される。具体的には、溶融させた樹脂中に、(A)成分及び/又は(B)成分を添加して混練する方法、樹脂を適宜の有機溶剤に溶解、分散又は膨潤させ、この溶液に(A)成分及び/又は(B)成分を添加して混合した後、この溶液から有機溶剤を除去する方法がある。

0071

上記の方法において、樹脂と(A)成分及び/又は(B)成分とを混練する手段としては、熱可塑性樹脂の溶融混練法として一般に用いられている手段、例えば、ミキシングロールによって溶融混練する手段、ヘンシェルミキサー等によって予備混合した後、押出機によって溶融混練する手段が挙げられる。一方、上記の方法で用いられる有機溶剤としては、上記樹脂を溶解、分散又は膨潤し得るものであれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類塩化メチレン等の塩素系炭化水素類、ジメチルアクリルアミド、ジメチルフォルムアミド等のアミド化合物等が挙げられる。

0072

以上の樹脂組成物の調製において、(A)成分を用い、銅イオンを供給する銅塩として有機酸又は無機酸の銅塩を用いる場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とが反応する結果、銅塩から陰イオンである酸成分が遊離される。このような酸成分は、必要に応じて除去されることが好ましい。

0073

そのための方法としては、樹脂組成物を適宜の有機溶剤に浸漬させることにより、酸成分を抽出する方法が挙げられる。ここで、有機溶剤としては、遊離される酸成分を溶解することができ、用いられる樹脂に対して適度な親和性(樹脂を溶解しないが、この樹脂中に浸透する程度の親和性)を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類、n−ペンタンn−ヘキサン、n−ヘプタン、クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素等の脂肪族系炭化水素類及びそのハロゲン化物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類等が挙げられる。

0074

ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその共重合体の部分鹸化物を含む樹脂組成物〉アクリル系樹脂以外の樹脂として、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はその共重合体の部分鹸化物を含む樹脂組成物は、ガラス材又はプラスチック材から成る基材に対する接着性に優れており、かつ、それ自体が柔軟性を有し、さらに温度依存性が小さいという特性を持っている。したがって、このような樹脂組成物を用いると、接着剤を用いなくとも基材への接着が確実であり、よって、成形加工性に優れた近赤外光吸収性を有する成形品を簡易に得ることができるとともに、その成形品の温度変化に対する耐性を向上させることができる。

0075

また、上述のアクリル系樹脂を含めて、これら樹脂に上記(A)成分及び/又は(B)成分を含有して成る樹脂組成物は、他の成分として樹脂と相溶性を有する種々の可塑剤を含有することが好ましく、これにより、近赤外光吸収成分として用いられる銅イオンの樹脂成分中への分散性を高めることができる。このような可塑剤の具体例としては、リン酸トリクレジルリン酸トリフェニル等のリン酸エステル系可塑剤ジオクチルフタレートジブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤ジブチルセバケート、ブチルリシノレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルサクシネート等の脂肪酸系可塑剤、ブチルフタリルブチルグリコレートトリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、ポリエチレングリコール等のグリコール系可塑剤等が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外線吸収剤、その他の抗酸化剤、安定剤等を更に含有させることもできる。

0076

〈近赤外光吸収材〉本発明の近赤外光吸収材は、上記近赤外光吸収性組成物のうち、溶剤として重合性を有する有機溶媒を含有する液状組成物を重合して成ることを特徴とする。より詳細には、本発明の近赤外光吸収材は、溶剤として重合性を有する有機溶媒を含有する液状組成物において液状組成物中の第2のリン酸エステル化合物及び/又は第2のリン酸エステル銅化合物と、上記重合性を有する有機溶媒とを共重合して成るものである。

0077

この近赤外光吸収材は、液状組成物の吸収スペクトル又は透過スペクトルとほぼ同じ形状を有する。従って、本発明の近赤外光吸収材は、液状組成物と同様に近赤外光吸収材として極めて有効である。

0078

上記近赤外吸収剤は、以下の方法によって製造される。即ち、重合性の有機溶媒(単量体)中に、(A)成分(ここでは、第1及び第2のリン酸エステル化合物と銅塩を混合したもの)及び/又は(B)成分を含有させて単量体組成物を調製し、この単量体組成物をラジカル重合処理する方法である。この方法において、単量体組成物のラジカル重合処理の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、通常のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法、例えば、塊状(キャスト)重合法、懸濁重合法、乳化重合法溶液重合法等の公知の方法を利用し得る。

0079

以上の近赤外光吸収材の調製において、(A)成分を用い、銅イオンを供給する銅塩として有機酸又は無機酸の銅塩を用いる場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とが反応する結果、銅塩から陰イオンである酸成分が遊離される。このような酸成分は、必要に応じて除去されることが好ましい。そのための方法としては、重合性の有機溶媒(単量体)中に、(A)成分(ここでは、第1及び第2のリン酸エステル化合物と銅塩を混合したもの)及び/又は(B)成分を含有させて単量体組成物を調製した後、単量体組成物の重合処理を行う前に、この単量体組成物を冷却処理することにより、酸成分を析出させて分離するといった方法が例示される。 なお、この方法においては、(A)成分を構成する銅イオンを供給する銅塩として、遊離される酸成分が単量体に溶解しにくいもの、或いは有機酸又は無機酸塩以外の銅塩を用いることが好ましく、具体的には、安息香酸等の芳香環を有するカルボン酸の銅塩や水酸化銅が挙げられる。

0080

ディスプレイ前面板〉本発明による近赤外光吸収性組成物又は近赤外光吸収材を、プラズマディスプレイパネル( Plasma Display Panel ;以下単にPDPという)等の電子ディスプレイ前面板、いわゆるディスプレイ前面板に適用すると極めて好適である。これら電子ディスプレイに備わる発光体の中には、波長800nm〜1100nmの近赤外光を発生するものがあり、電子ディスプレイの前面から出射された近赤外光が、電子ディスプレイ周辺で使用されるTV等の近赤外光リモートコントロールシステム赤外線リモコン)の誤動作を引き起こすといった問題がある。特に、PDPにおいては、発光体電極間封入されている希ガス(Xe,Ne)の放電励起が利用されており、他の電子ディスプレイに比して高強度の近赤外光が発光される。このような事情から、近赤外光の吸収特性及び可視光の透過性に優れたディスプレイ前面板が望まれている。

0081

そこで、例えば、ディスプレイ前面板を上記樹脂組成物で作製したり、ディスプレイ前面板の表面に上記液状組成物を塗布したりすることにより、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性に極めて優れたディスプレイ前面板を得ることが可能となる。以下、本発明の近赤外光吸収性組成物又は近赤外光吸収材を用いたディスプレイ前面板について説明する。

0082

図1は、本発明の近赤外光吸収性組成物を用いたディスプレイ前面板の一例を示す構成図であって、図1(a)は断面図であり、図1(b)は積層構造を示す分解斜視図である。図1に示すディスプレイ前面板1は、PDPの前面に取り付けられる光学的に透明な板状体であり、略平板状を成し透明部材11の一方の面に、導電性を有する細線縦横に編み込まれてメッシュ状を成すシールドメッシュ13が、樹脂製、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の透明フィルム14で覆われるように貼付されて成っている。また、透明部材11の他方面の全域には反射低減膜12が形成されている。さらに、シールドメッシュ13と接していない透明フィルム14の面には反射防止膜15が形成されている。

0083

また、透明部材11としては、以下の3種類の形態が好適である。
[第1の形態]:樹脂組成物、又はガラス若しくは透明な樹脂板等から成る透明基板にその樹脂組成物が貼合されたもの。
[第2の形態]:上記透明基板に近赤外光吸収性組成物から成る近赤外光吸収層としての近赤外光吸収性膜16が形成されたもの。
[第3の形態]:本発明の近赤外光吸収性組成物自体を成形したもの、又は上記透明基板に、成形した近赤外光吸収性組成物が貼合されたもの。

0084

上記第1の形態で使用される樹脂組成物に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂スチレン系樹脂ポリエステル樹脂セルロース系樹脂が好ましく、可視光透過性、耐候性、成形加工性等の観点からは、アクリル系樹脂が特に好ましい。アクリル系樹脂から成る樹脂組成物を用いると、ディスプレイに表示された映像が暗くならずに観賞し易く、また、耐久性に優れるとともに、加工形状の制約が少ないディスプレイ前面板1を得ることができる。

0085

また、上記第2の形態では、例えば、本発明の液状組成物を上記透明基板面に塗布し、溶剤を蒸発させることにより、透明部材11上に近赤外光吸収性膜16が形成される。或いは、上記透明基板面上に、(B)成分そのもの又は(B)成分を含む粉末粉体スプレー等で吹き付けて付着させてもよいし、接着剤等の粘着性物質を介してこれら粉体を付着させてもよい。

0086

他方、上記第3の形態による透明部材11は、溶剤を含まない近赤外光吸収性組成物を、例えば加圧成形することにより、フィルム状又は板状の成形品として製造される。この第3の形態による透明部材11を用いると、近赤外光吸収特性に優れるとともに、樹脂等による若干の可視光の吸収をもなくすことが可能となる。

0087

ここで、上記各形態の透明部材11を備えるディスプレイ前面板1においては、波長800nm〜1000nmの波長領域におけるディスプレイ前面板1としての近赤外光の透過率が20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下となるように、本発明の近赤外光吸収性組成物又は近赤外光吸収材中の(A)成分及び/又は(B)成分の種類、濃度、層厚(塗布又は積層される場合はその層の厚さ、樹脂に分散される場合は樹脂層の厚さ)が調整されている。このようにすれば、例えば、赤外線通信等で主に利用されている波長950nm近傍の近赤外光が十分に減衰されるので、ディスプレイの周囲に赤外線リモコン等がある場合でもそれらが誤動作するおそれが少ない。

0088

また、シールドメッシュ13を、例えば、銅やニッケルといった遷移金属被覆されたプラスチック繊維編成すると、数MHz〜数100MHzの周波数範囲電磁波を有効にかつ確実に遮へいすることができる。また、反射低減膜12及び反射防止膜15は、例えば、二酸化ケイ素酸化アルミニウム等の低屈折率材料から成る薄膜と、二酸化チタン酸化イットリウム等の高屈折率材料の薄膜とを交互に積層することに形成することができる。

0089

図2は、図1に示すディスプレイ前面板1の使用状態を示す斜視図である。図2に示すように、ディスプレイ前面板1は、反射防止膜15が形成された面を前方にして、PDP2のパネル面21を覆うように配置される。そして、PDP2のパネル面21から発せられた近赤外光は、近赤外光吸収層により吸収されて強度が20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下に減じられる。一方、PDP2のパネル面21から近赤外光と同時に発せられる可視光は、ディスプレイ前面板1に含まれる近赤外光吸収性組成物によって殆ど吸収されない。したがって、図2に示すPDP2の周辺に、近赤外光で作動するような機器が置かれていても、PDP2のパネル面21から出射される近赤外光がそれら機器の誤動作を起こすことを有効に防止できるとともに、パネル面21に映し出される映像等を支障なく観賞することができる。

0090

また、PDP2のパネル面21からは電磁波が放出されるが、このような電磁波は、図1に示すシールドメッシュ13によって有効に遮蔽されるので、PDP2の観賞中にこのような電磁波に曝されることがない。さらに、このシールドメッシュ13は、金属並の導電性を有するため、ディスプレイ前面板1に静電気が殆ど帯電せず、静電気によりディスプレイ前面板1に埃等が付着することが防止される。またさらに、シールドメッシュ13が、プラスチック繊維を主成分としているものであると、ディスプレイ前面板1を軽量化することが可能である。しかも、シールドメッシュ13は柔軟性に富むので、ディスプレイ前面板1が凹凸形状を有する場合でも容易に貼合できる利点がある。

0091

また、ディスプレイ前面板1側からパネル面21へ入射する外光(主に自然光電灯からの光)は、ディスプレイ前面板1の反射防止膜15に入射すると、反射防止膜15を形成する屈折率の異なる多層の作用によって反射することが防止されるので、PDP2の周囲が明るくても、外光の反射によってパネル面21の映像等が見え難くなることが防止される。このとき、上記外光のごく一部は反射防止膜15を透過するが、この透過光は反射低減膜12によって反射が低減されるので、外光の反射によってパネル面21に写った映像等が見え難くなることが一層防止される。

0092

熱線吸収性コーティング剤〉近赤外光や赤外光熱線であり、本発明の近赤外光吸収性組成物又は近赤外光吸収材を熱線吸収性が必要とされる部材へ適用しても好適である。以下、このような適用例として、熱線吸収性コーティング剤、熱線吸収性複合体、及び熱線吸収性粘着剤等について説明する。熱線吸収性コーティング剤としては、上述した液状組成物が有用であり、溶剤を蒸発させて生成される薄膜が光学的に透明であれば、熱線吸収性コーティング剤自体は、透明なもの、半透明なもの又は不透明なものであってもよい。

0093

また、本発明の液状組成物における(A)成分及び/又は(B)成分の溶剤への溶解性又は分散性を高めるために、或いは、熱線吸収性コーティング剤によってコーティングした面の平坦性等を高めるために、液状組成物は、溶解補助剤等を添加剤として含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、レベリング剤消泡剤としての各種の界面活性剤が好ましく用いられる。熱線吸収性コーティング剤における上記(A)成分及び/又は上記(B)成分の含有割合は、使用される液状媒体の種類や、熱線吸収性コーティング剤の用途又は使用目的によって異なるが、調合後の粘度の観点から、通常、液状媒体100質量部に対して、0.1〜1900質量部、好ましくは1〜900質量部、特に好ましくは5〜400質量部となる範囲で調整されると好適である。

0094

〈熱線吸収性複合体〉熱線吸収性複合体としては、透光性を有する基材の一方の面に、本発明の近赤外光吸収性組成物を用いた近赤外光吸収層が設けられたものが有用であり、この近赤外光吸収層に透光性を有するもうひとつの基材が貼合されていてもよい。基材を構成する材料としては、可視光透過性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、熱線吸収性複合体の用途に応じて適宜選択されるが、硬度耐熱性耐薬品性、耐久性等の観点から、無機ガラス若しくは有機ガラス等のガラス材、又は、例えば、ポリカーボネイト、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート塩化ビニル系樹脂ポリスチレンポリエステル等のプラスチック材料を用いると好適である。また、2つの基材が用いられる場合、これら基材は同じ種類の材料で構成されていてもよく、或いは互いに異なる材料で構成されていてもよい。さらに、基材の近赤外光吸収層と接していない面が硬化処理されていると、その面の損傷防止及び耐久性の観点から好ましい。また、基材には更に他の透光性材料より成る層が設けられていてもよい。

0095

近赤外光吸収層としては、透光性を有するフィルム状或いはシート状材料又は透光性を有する板材の一方又は両方の面に、前述した熱線吸収性コーティング剤を塗布して溶剤を蒸発させたものが好ましく用いられる。ここで、用いられる透光性を有するフィルム状或いはシート状材料又は透光性を有する板材としては、上記基材を形成するようなガラス材やプラスチック材より成るものを用いることができる。また、近赤外光吸収層としては、上述の樹脂組成物を用いても好適である。この場合の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、優れた透光性を有するものが好ましく、具体的には、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂ポリエステル系樹脂ポリウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体及びその部分鹸化物等が挙げられる。これら樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ、ガラス材やプラスチック材への接着性の観点から、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体又は該共重合体の部分鹸化物が特に好ましい。また、可視光透過性や成型加工性の観点等からは、アクリル系樹脂が好ましい。

0096

これら樹脂を含有する樹脂組成物から成る近赤外光吸収層には、他の成分として樹脂成分と相溶性を有する種々の可塑剤や、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外線吸収剤、その他の抗酸化剤、安定剤等を含有させてもよい。また、近赤外光吸収層を形成するための各成分を混合して調製する手段としては、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合する方法、ロール混練機、或いは混練押出機等により混練混合する方法を用いることができる。また、各成分を適宜の有機溶剤に分散させ、この分散液から有機溶剤を除去する手段を用いることができる。さらに、近赤外光吸収層用の樹脂成形体を製造する手段としては、熱可塑性樹脂の成形加工法である溶融押出成形法カレンダー成形法プレス成形法などを用いることができる。また、近赤外光吸収層を基材に接着させる手段としては、プレス法、マルチロール法減圧法などの加圧又は減圧により接着する方法、オートクレーブ等を用いて加熱することにより接着させる方法、又はこれらの組み合わせによる手段を用いることができる。そして、樹脂として、上述したポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその部分鹸化物を用いると、近赤外光吸収層と基材とが十分な強度で接着された熱線吸収性複合体が得られる。

0097

このようにして形成される近赤外光吸収層は、その厚さが0.1〜10mm、特に0.3〜5mmであることが好ましい。近赤外光吸収層の厚さが0.1mm未満の場合には、近赤外光吸収性が十分に高い近赤外光吸収層を得ることが困難な傾向にあり、得られる熱線吸収性複合体の熱線吸収性が不十分なものとなる傾向にある。一方、近赤外光吸収層の厚さが10mmを超える場合には、可視光の透過率が高い近赤外光吸収層を得ることが困難な傾向にあり、得られる熱線吸収性複合体の可視光透過性が低いものとなる傾向にある。なお、熱線吸収性複合体の基材及び近赤外光吸収層の少なくとも一つの面には、反射低減層又は反射防止層が設けられていてもよい。この反射低減層又は反射防止層としては、無機酸化物無機ハロゲン化物等より成る公知の材料を用いて、真空蒸着イオンプレーティングスパッタリングといった種々公知の方法によって形成させることができる。また、必要に応じて、特定波長の可視光を吸収する可視光吸収剤、例えば、波長500nm〜600nmを選択的に吸収するコバルトイオンを含む金属イオン含有成分等やその他の添加剤が樹脂組成物中に混合されていてもよい。

0098

〈熱線吸収性粘着剤〉熱線吸収性粘着剤としては、粘着性を有する樹脂を含む樹脂組成物が有用である。粘着性を有する樹脂としては、粘着性を有するアクリル系樹脂を好ましく用いることができ、これは、粘着成分を構成するアクリル系樹脂の単量体を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。このようなアクリル系樹脂の単量体としては、アルキル基炭素数が4〜12であって、ホモポリマーガラス転移点が−70℃〜−30℃であるアクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができ、具体的には、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートデシルアクリレート等が挙げられる。

0099

また、粘着性を有するアクリル系樹脂を得るための単量体組成物には、上記の粘着成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体の他に、凝集成分を構成する単量体及び改質成分を構成する単量体を含有させることが望ましい。この凝集成分を有する単量体としては、粘着成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体と共重合可能なものであって、得られる共重合体のガラス転移点を高める作用を有するものが用いられ、具体的には、炭素数が1〜3の低級アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル酢酸ビニル塩化ビニリデンアクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。また、上記改質成分として用いられる単量体としては、上記粘着成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体と共重合可能であって、官能基を有するものが用いられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸マレイン酸マレイン酸モノエステル等のカルボキシル基含有化合物、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有化合物アクリルアミドメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等の酸アミド化合物、グリシジルアクリレートグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。

0100

上記単量体組成物における各単量体の使用割合は、用いられる単量体の種類、得られるアクリル系樹脂組成物の使用目的等によって異なるが、通常、粘着成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体が30〜95質量%、凝集成分として用いられる単量体が5〜50質量%、改質成分として用いられる単量体が0.1〜10質量%である。また、この単量体組成物を重合処理する方法としては、溶液重合法及び乳化重合法を用いることができる。これら重合処理に用いられる触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイドアゾビスイソブチルニトリル過硫酸アンモニウム過硫酸カリウム等の過酸化物が挙げられる。溶液重合法により単量体組成物の重合処理を行う場合には、重合溶媒として種々の有機溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル等のエステル類、芳香族炭化水素類、ケトン類等が挙げられる。また、乳化重合法により単量体組成物の重合処理を行う場合には、乳化剤として、通常の乳化重合に使用されている公知の種々のものを用いることができる。

0101

そして、上記のように単量体組成物を重合処理することにより、粘着性を有するアクリル系樹脂がポリマー溶液又はラテックスの状態で得られる。熱線吸収性粘着剤は、このようにして得られたポリマー溶液又はラテックスに、上述した(A)成分及び/又は(B)成分を混合することにより得ることができ、必要に応じて、特定波長の可視光を吸収する可視光吸収剤、例えば、波長500nm〜600nmを選択的に吸収するコバルトイオンを含む金属イオン含有成分等や、その他の添加剤を混合してもよい。ここで、熱線吸収性粘着剤における上記(A)成分及び/又は上記(B)成分の含有割合は、粘着性を有するアクリル系樹脂の透光性や粘着性を損なわない範囲でできるだけ多い方が望ましいが、粘着性を有するアクリル系樹脂100質量部に対して、0.1〜400質量部、好ましくは0.3〜200質量部、より好ましくは1〜100質量部の範囲で調整されると好適である。

0102

また、以上説明した熱線吸収性コーティング剤、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤は、熱線の遮蔽が要求される透光性部材等へ好ましく適用されるものであり、具体例としては、住宅やその他の建造物窓材自動車電車等の車両の窓材、航空機船舶等の車両の窓材といった採光眺望を得るための部材へ適用すると好適である。上述した熱線吸収性コーティング剤、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤を適用した窓材は、熱線遮蔽性を得るために可視光を吸収するような遮光部材を用いる場合に比して、同等以上の熱線吸収性を有しつつ、可視光透過性に優れているので、窓の外部の風景視認性に優れており、開放感を得易い傾向にある。また、熱的及び化学的定性耐環境性に優れて劣化し難い透光性部材を得ることができる。

0103

また、他の用途としては、植物栽培雰囲気を覆う温室施設構築するための農業用被覆材が挙げられる。温室施設は内部の保温を目的としているが、夏季には外部からの熱線によって内部の温度が必要以上に上昇してしまう虞がある。上述した熱線吸収性コーティング剤、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤を適用した被覆材によれば、そのような過剰な温度上昇を有効に抑制して、温室施設の利用期間延長でき、稼働率を向上することが可能となる。また、可視光透過性に優れているので、温室外部からの内部の視認性も向上される。また、熱的及び化学的安定性や耐環境性に優れて劣化し難い被覆材を得ることが可能である。

0104

以下、本発明の内容を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0105

〈実施例1〉第2のリン酸エステル化合物として、下記式(10)で表されるものを合成した。

0106

0107

この化合物の合成は以下のようにして行った。

0108

まず、メチレンクロライド300mlを収容した容器内に、下記式(11)で表される4−(2−ハイドロキシルエチル)フェノール(化合物1)40gと、トリエチルアミン64.46gを投入し、室温で10分間攪拌した。

0109

0110

この溶液を0℃に冷却し、滴下ロートを用いてメタクリロイルクロライド90gを30分かけて滴下した後、この状態で1時間保持し、化合物1とメタクリロイルクロライドとを反応させて下記式(12)で表される化合物2を含む溶液を得た。

0111

0112

この溶液をろ過し、ろ液に酢酸エチルを加えた。そして、ろ液を減圧蒸留させメチレンクロライドのみを除去した。このろ液に水を加えて酢酸エチルで化合物2を抽出した。次に、このろ液を1%塩酸溶液飽和塩ナトリウム溶液洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを添加した。そして、このろ液を更に減圧濃縮した後、この濃縮液に、酢酸エチルとn−ヘキサンとが体積比で1:3となるようにn−ヘキサンを加えてキャリア溶液を作製し、このキャリア溶液をカラムクロマトグラフィーに通して化合物2を精製した。

0113

この化合物2を20.17g、水80ml、メタノール320mlに加えて室温で20分間攪拌した。その後、これらに炭酸水素ナトリウムを加え、室温で10分間攪拌した。その後、この溶液を70℃に加熱し、9時間かけて化合物2と炭酸水素ナトリウムとを反応させて、下記式(12)で表される化合物3を含む溶液を得た。

0114

0115

この溶液を冷却後、1%塩酸を加え、酢酸エチルで化合物3を抽出した。そして、この有機層を飽和塩化ナトリウムで洗浄後、無水硫酸ナトリウムを加えた。次いで、有機層を更に減圧濃縮した後、この濃縮液に、酢酸エチルとn−ヘキサンとが体積比で1:3となるようにn−ヘキサンを加えてキャリア溶液を作製し、このキャリア溶液をカラムクロマトグラフィーに通して白色粉末を得た。得られた白色粉末を石油エーテルで洗浄し、ろ過した。こうして得られた白色粉末を減圧乾燥し、化合物3を得た。得られた化合物3は11.61gであり、その収率は76.6%であった。

0116

上記化合物3を45.39g、ピリジン17.42g、トルエン90mlに添加し、この溶液を室温で攪拌し溶解させた。一方、オキシ塩化リン16.88g及びトルエン45mlを混合し、室温で10分間攪拌した。この溶液に、先に調製した化合物3を含む溶液を滴下ロートを用いて1時間かけて滴下して混合した後、この混合溶液を6.5時間還流した。そして、この混合溶液を冷却した後、水900mlを加えた。その後、これを85℃で5時間加熱し、化合物3とオキシ塩化リンとを反応させ、上記式(10)で表されるリン酸エステル化合物(以下、「PP2MP」という)を含む溶液を得た。この溶液からPP2MPを酢酸エチルで抽出し、1%塩酸、飽和塩化ナトリウムで洗浄後、無水硫酸ナトリウムを添加した。そして、この有機層を減圧濃縮し、PP2MP39.91gを得た。

0117

上記PP2MP1.86gと、第1のリン酸エステル化合物としての式(4)−bで表されるリン酸ジフェニル(東京化成工業(株)製;以下、「DIPHP」という)0.98gとの混合物を、メチルメタアクリレート(以下、「MMA」という)6.6g中に溶解し、これに更に安息香酸銅0.8gを加え、室温で数分間攪拌した。その後、この溶液を80℃に調整したオイルバスで2時間加熱した後、室温で放置した。こうして近赤外光吸収性組成物を得た。

0118

こうして得られた近赤外光吸収性組成物について貯蔵安定性、即ち近赤外光吸収性組成物としての状態をどれだけ維持できるかどうかを調べた。その結果、約10分経過しても析出物は確認されず、近赤外光吸収性組成物としての状態を長時間にわたって維持できることが分かった。

0119

更に、得られた近赤外光吸収性組成物の光学特性を調べるために、近赤外光について透過スペクトル及び吸収スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定および吸収スペクトルの測定は、(株)日立製作所製U−4000分光光度計を用いて行った。スペクトル測定時の光路長は、透過、吸収ともに1mmとした。その結果を図3図4に示す。

0120

図3図4から明らかなように、近赤外光吸収性組成物は、可視光と近赤外光との境界に当たる波長域(概ね750nm前後;以下、「境界波長領域」という)における近赤外領域側の光に対する吸収度、及び同可視領域側の光に対する透過度が高められており、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性に十分に優れることが分かった。

0121

更に、上記近赤外光吸収性組成物に沈殿が見られなかったため、上記近赤外光吸収性組成物において、該溶液100質量部に対し開始剤パーブチル−Oを2質量部添加し、45℃で16時間、60℃で8時間、90℃で3時間順次加熱を行うことによりPP2MPとMMAとを共重合させ、近赤外吸収剤を得た。

0122

こうして得られた近赤外光吸収材の光学特性を調べるために、近赤外光吸収材について、上記近赤外光吸収性組成物と同様にして透過スペクトル及び吸収スペクトルを測定した。その結果を図5図6に示す。

0123

図5図6から明らかなように、近赤外光吸収材についても、近赤外光吸収性組成物と同様に、境界波長領域における近赤外領域側の光に対する吸収度、及び同可視領域側の光に対する透過度が高められており、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性に十分に優れることが分かった。

0124

〈比較例1〉上記PP2MPとDIPHPとの混合物に代えて、DIPHP1.96gをMMAと混合した以外は実施例1と同様にして、近赤外光吸収性組成物を得た。

0125

こうして得られた近赤外光吸収性組成物について貯蔵安定性、即ち近赤外光吸収材としての状態をどれだけ維持できるかどうかを調べた。その結果、約10分経過後に析出物が確認された。この近赤外光吸収性組成物を更に冷凍庫に入れ冷却したところ、青い析出物が確認されたので、これをろ過した後、再び冷凍庫に入れ冷却した。すると、まだ青い析出物が確認されたため、再度これをろ過した。

0126

こうして得られたろ液について実施例1と同様にして透過スペクトル及び吸収スペクトルを測定した。その結果を図3図4に示す。

0127

図3図4から明らかなように、ろ液については、境界波長領域における可視領域側の光に対する透過度が高められているものの、近赤外領域側の光に対する吸収度は低くなっており、近赤外光の選択吸収性が不十分であることが分かった。

0128

更に、上記ろ液100質量部に対し開始剤パーブチル−Oを2質量部添加し、45℃で16時間、60℃で8時間、90℃で3時間順次加熱を行うことによりMMAを重合させ、近赤外吸収剤を得た。

0129

こうして得られた近赤外光吸収材について実施例1と同様にして透過スペクトル及び吸収スペクトルを測定した。その結果を図5図6に示す。

0130

図5図6から明らかなように、実施例1の近赤外光吸収材と同様に、本比較例に係る近赤外光吸収材についても、境界波長領域における可視領域側の光に対する透過度が高められているものの、近赤外領域側の光に対する吸収度は低くなっており、近赤外光の選択吸収性が不十分であることが分かった。

0131

以上の結果より、近赤外光の吸収に寄与する銅イオンの大部分が、ろ過により取り除かれた析出物中に存在しており、上記ろ液には銅イオンがほとんど含まれていないことが分かった。

発明の効果

0132

以上説明した通り、本発明の近赤外光吸収性組成物によれば、境界波長領域における近赤外領域側の光に対する吸収度、及び同可視領域側の光に対する透過度が高められ、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性に十分に優れるとともに、貯蔵安定性が極めて高くなる。

0133

また、本発明の近赤外光吸収材は、境界波長領域における近赤外領域側の光に対する吸収度、及び同可視領域側の光に対する透過度が高められ、近赤外光の選択吸収性及び可視光の選択透過性に十分に優れる。

図面の簡単な説明

0134

図1本発明の近赤外光吸収性組成物を用いたディスプレイ前面板の一例を示す構成図であって、図1(a)は断面図であり、図1(b)は積層構造を示す分解斜視図である。
図2図1に示すディスプレイ前面板の使用状態を示す斜視図である。
図3実施例1及び比較例1で得られた近赤外光吸収性組成物についての透過スペクトルである。
図4実施例1及び比較例1で得られた近赤外光吸収性組成物についての吸収スペクトルである。
図5実施例1及び比較例1で得られた近赤外光吸収材についての透過スペクトルである。
図6実施例1及び比較例1で得られた近赤外光吸収材についての吸収スペクトルである。

--

0135

1…ディスプレイ前面板、2…PDP(ディスプレイ)、16…近赤外光吸収性膜(近赤外光吸収性組成物から成る近赤外光吸収層)。

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