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技術 ダイカスト用アルミニウム合金、アルミニウムダイカスト製品およびその製造方法

出願人 日本軽金属株式会社日産自動車株式会社
発明者 北岡山治倉増幸雄角慎一郎朝来野修一猪狩隆彰津島健次塩田正彦神戸洋史
出願日 2001年8月7日 (20年2ヶ月経過) 出願番号 2001-238947
公開日 2002年7月26日 (19年3ヶ月経過) 公開番号 2002-206133
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理 チル鋳造・ダイキャスト
主要キーワード アルミニウムダイカスト製品 歪線図 継手部品 バランス組成 高速変形 ダイカスト後 トランスミッション部品 ダイカスト用合金
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図面 (13)

課題

鋳造後に溶体化処理を施す必要がなく、万一の衝突時を想定した高歪速度下においても安定的に高い強度と高い伸びが得られ、しかも鋳造性、とりわけ耐鋳造割れ性に優れたダイカスト用アルミニウム合金と共に、当該合金からなるアルミニウムダイカスト製品およびその製造方法を提供する。

解決手段

質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用いて、好ましくは高真空ダイカスト法によりダイカスト製品に鋳造する。続いて、130〜400℃での人工時効処理安定化処理歪み取り焼鈍塗装焼き付け等を実施して自動車車体部品サスペンション取り付け部品などに適用する。

概要

背景

ダイカスト鋳造法は、薄肉鋳物鋳造が可能、寸法精度が高い、生産性が高い、形状自由度が高い、などの特徴により、自動車用エンジン部品トランスミッション部品に広く使用されている。

また、近年では、車体を構成するスペースフレーム接手センターピラー等に、真空ダイカスト法で鋳造した後、熱処理を施すことにより引張強さ、0.2%耐力伸びなどの機械的性質を向上させたアルミニウム合金ダイカスト鋳物が使用されるようになってきている。

このような自動車車体部品へも適用可能なダイカスト用アルミニウム合金としては、特開平8−41575号公報に記載されているようなAl−Si−Mg−Mn系のアルミニウム合金が使用されている。

しかし、このようなアルミニウム合金材料は、優れた機械的性能を得るために、ダイカスト鋳造後に、溶体化処理および時効処理を施す必要がある。したがって、溶体化処理後水冷時に発生した歪を矯正するための矯正工程が必要となり、生産性が悪く、コストも高くなる。

そこで、ダイカスト鋳造後に、このような溶体化処理を施す必要のないダイカスト用アルミニウム合金が、特開平5−9638号公報、特開平11−293375号公報、特開平11−80875号公報、さらには文献(Use of Low IronDie Casting Alloys for the Automotive Industry: Properties and Applications, DIECASTING ENGINEERJanuary/February 1998)に開示されている。

概要

鋳造後に溶体化処理を施す必要がなく、万一の衝突時を想定した高歪速度下においても安定的に高い強度と高い伸びが得られ、しかも鋳造性、とりわけ耐鋳造割れ性に優れたダイカスト用アルミニウム合金と共に、当該合金からなるアルミニウムダイカスト製品およびその製造方法を提供する。

質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を用いて、好ましくは高真空ダイカスト法によりダイカスト製品に鋳造する。続いて、130〜400℃での人工時効処理安定化処理歪み取り焼鈍塗装焼き付け等を実施して自動車車体部品サスペンション取り付け部品などに適用する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなることを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金

請求項2

Ti含有量が0.10%以上であることを特徴とする請求項1記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項3

質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.05〜0.20%、B:0.001〜0.10%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなることを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金。

請求項4

質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下、Zr:0.05〜0.30%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなることを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金。

請求項5

Mn含有量が1.0%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項6

Si含有量が2.5%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項7

Si含有量が2.0%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項8

Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Si mass%)が2.0以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項9

Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Si mass%)が1.8以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。

請求項10

請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金溶湯高真空ダイカスト法によって鋳造することを特徴とするアルミニウムダイカスト製品の製造方法。

請求項11

Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Simass%)が1.8以上の請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を得た後、130℃〜300℃の温度で人工時効処理ないしは安定化処理を施すことを特徴とするアルミニウムダイカスト製品の製造方法。

請求項12

請求項11に記載の人工時効処理、安定化処理に代えて、ダイカスト後歪み取り焼鈍ないしは塗装焼き付け、またはその両方を実施することを特徴とするアルミニウムダイカスト製品の製造方法。

請求項13

Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Simass%)が2.0以下の請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を得た後、150℃〜400℃の温度で安定化処理を施すことを特徴とするアルミニウムダイカスト製品の製造方法。

請求項14

請求項8ないし請求項13のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするアルミニウムダイカスト製品。

請求項15

自動車のAピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフスペースフレーム接手あるいはサスペンション取付部であることを特徴とする請求項14記載のアルミニウムダイカスト製品。

請求項16

自動車のサスペンションアームサブフレームまたはサスペンションのリンク部品であることを特徴とする請求項14記載のアルミニウムダイカスト製品。

技術分野

0001

本発明は、ダイカスト鋳造後に溶体化処理を施すことなく、優れた機械的性質を得ることができ、鋳造性、特に耐鋳造割れ性に優れたダイカスト用アルミニウム合金と、このようなアルミニウム合金を用いたダイカスト製品およびその製造方法に関するものである。

背景技術

0002

ダイカスト鋳造法は、薄肉鋳物鋳造が可能、寸法精度が高い、生産性が高い、形状自由度が高い、などの特徴により、自動車用エンジン部品トランスミッション部品に広く使用されている。

0003

また、近年では、車体を構成するスペースフレーム接手センターピラー等に、真空ダイカスト法で鋳造した後、熱処理を施すことにより引張強さ、0.2%耐力伸びなどの機械的性質を向上させたアルミニウム合金ダイカスト鋳物が使用されるようになってきている。

0004

このような自動車車体部品へも適用可能なダイカスト用アルミニウム合金としては、特開平8−41575号公報に記載されているようなAl−Si−Mg−Mn系のアルミニウム合金が使用されている。

0005

しかし、このようなアルミニウム合金材料は、優れた機械的性能を得るために、ダイカスト鋳造後に、溶体化処理および時効処理を施す必要がある。したがって、溶体化処理後水冷時に発生した歪を矯正するための矯正工程が必要となり、生産性が悪く、コストも高くなる。

0006

そこで、ダイカスト鋳造後に、このような溶体化処理を施す必要のないダイカスト用アルミニウム合金が、特開平5−9638号公報、特開平11−293375号公報、特開平11−80875号公報、さらには文献(Use of Low IronDie Casting Alloys for the Automotive Industry: Properties and Applications, DIECASTING ENGINEERJanuary/February 1998)に開示されている。

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、上記公報や文献に記載されているようなAl−Mg−Mn(−Zr)系の材料は、鋳造時に割れが発生しやすいという問題点があった。

0008

一方、このような自動車用車体部品として、Aピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフ、スペースフレームの接手、サスペンション取付部などの部品は、万一の衝突時における安全性確保のために、高速変形領域下でも安定的に高強度と大きな伸びが得られることが重要であるが、従来では、アルミニウムダイカスト鋳物の静的な強度や伸びについては言及されているものの、1000/sレベルの高歪速度域において安定的に高い強度と伸びを得るための方策については確立されておらず、このような問題点を解決することが従来のダイカスト用アルミニウム合金およびダイカスト製品における課題となっていた。

0009

本発明は、溶体化処理の必要がない従来のダイカスト用アルミニウム合金やこのような合金からなるダイカスト製品における上記課題に着目してなされたものであって、鋳造後に溶体化処理を施すことなく、Aピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフ、スペースフレームの接手部品、サスペンション取付部部品などの自動車用車体部品に適用することができ、衝突時のような高歪速度下においても安定的に高い強度と高い伸びが得られ、しかも鋳造性、とりわけ耐鋳造割れ性に優れたダイカスト用アルミニウム合金、および当該合金からなるアルミニウムダイカスト製品、さらにこのようなダイカスト製品の製造方法を提供することを目的としている。

課題を解決するための手段

0010

本発明の請求項1に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなる構成としたことを特徴としており、当該アルミニウム合金においては、請求項2に記載しているように、Ti含有量を0.10%以上、すなわち0.10〜0.20%の範囲とすることができる。

0011

本発明の請求項3に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.05〜0.20%、B:0.001〜0.10%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなる構成とし、本発明の請求項4に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、質量比で、Si:1.0〜3.5%、Mg:2.5〜4.5%、Mn:0.3〜1.5%、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下、Zr:0.05〜0.30%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなる構成としたことを特徴としている。

0012

そして、本発明に係わる上記ダイカスト用アルミニウム合金においては、請求項5に記載しているように、Mn含有量を1.0%以上、すなわち1.0〜1.5%の範囲とすることができ、さらに請求項6に記載しているように、Si含有量を2.5%以上、すなわち2.5〜3.5%の範囲とすることができると共に、請求項7に記載しているように、Si含有量を2.0%以下、すなわち1.0〜2.0%の範囲とすることができ、ダイカスト用アルミニウム合金におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。

0013

さらに、本発明の請求項8に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Si mass%)を2.0以下とすることで高強度が得られる構成とし、本発明の請求項9に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、Mg含有量とSi含有量の比(Mg mass%/Simass%)を1.8以上とすることで高延性が得られる構成としたことを特徴としている。

0014

本発明の請求項10に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法は、上記ダイカスト用アルミニウム合金溶湯高真空ダイカスト法によって鋳造する構成とし、請求項11に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、Mg含有量とSi含有量の比が1.8以上の本発明のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を製造し、さらに130℃〜300℃の温度で人工時効処理ないしは安定化処理を施す構成としており、この人工時効処理ないしは安定化処理は請求項12に示すように、歪み取り焼鈍ないしは塗装焼き付けまたはその両方に代えて実施することが可能である。さらに、請求項13に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、Mg含有量とSi含有量の比が2.0以下の本発明のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を製造し、さらに150℃〜400℃の温度で安定化処理を施す構成としている。

0015

さらに、本発明の請求項14に係わるアルミニウムダイカスト製品は、上記アルミニウムダイカスト製品の製造方法により製造されたものであり、請求項15に係わるアルミニウムダイカスト製品は、自動車のAピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフ、スペースフレーム継手あるいはサスペンション取り付け部であり、請求項16に係わるアルミニウムダイカスト製品は、自動車のサスペンションアームサブフレームまたはサスペンションのリンク部品であることを特徴としている。

0016

以下に、本発明の合金成分および熱処理条件などの限定理由を作用と共に説明する。

0017

(1)Si:1.0〜3.5%
Siは、ダイカスト鋳造時の鋳造割れ性の改善に効果のある元素である。しかしながら、1.0%未満ではその効果は小さく、逆に3.5%を越えるとMg−Si系の金属間化合物が多量に晶出し、高歪速度領域での伸びが低下するので、1.0〜3.5%の範囲とした。ここで、鋳造割れ性の改善に重点を置く場合は、Si:2.5〜3.5%の範囲で使用することが望ましく、高歪速度領域での伸びに重点を置く場合には、Si:1.0〜2.0%の範囲で使用することが望ましい。

0018

(2)Mg:2.5〜4.5%
Mgは、アルミニウム合金のマトリックス中に固溶するとともに共存するSiと共にMg2Siを形成し、強度を向上させる元素である。しかしながら、2.5%未満では強度向上の効果が小さく、4.5%を越えると応力腐食割れが発生し易くなるので、2.5〜4.5%の範囲とした。

0019

(3)Mn:0.3〜1.5%
Mnは、凝固中にAl6Mnを晶出することにより高温強度を向上させ、ダイカスト後製品取り出し時における製品の変形を抑制すると同時に、ダイカスト時に製品の金型への焼付きを抑制するのに効果的な元素である。しかしながら、0.3%未満では十分な高温強度および金型への焼付き防止効果が得られず、1.5%を越えると粗大なAl−Mn系の金属間化合物が晶出し、伸び(特に、高歪速度域での伸び)が減少するので、0.3〜1.5%の範囲とした。なお、Mnによるこのような効果をより確実なものとするためには、1.0〜1.5%の範囲とすることが望ましい。

0020

(4)Fe:0.15%以下
Feは、ダイカスト鋳造時の金型への焼付きを防止するのに有効な元素である。しかしながら、Fe含有量が増加すると針状のFe系金属間化合物の晶出量が増加し、伸びや靭性が低下するので0.15%以下とした。

0021

(5)Ti:0.20%以下、あるいはTi:0.05〜0.20%、かつB:0.001〜0.10%
Ti、あるいはTiとBは、初晶α(Al)相を微細化し、ダイカスト鋳物の機械的性質を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、Ti単独の場合には0.10%未満、TiとBが共存している場合ではTi:0.05%未満かつB:0.001%未満ではその効果が小さく、また、Ti:0.020%、B:0.10%を越えると、TiAl3粒子やTiB2粒子が粗大化し、初晶α(Al)相の微細化効果が減少するので、このような効果を確実なものとするためには、Ti:0.10〜0.20%、あるいはTi:0.05〜0.20%、かつB:0.001〜0.10%の範囲とすることが望ましい。

0022

(6)Zr:0.05〜0.30%
Zrも,初晶α(Al)相を微細化し、ダイカスト鋳物の機械的性質を向上させるのに有効な元素なので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、0.05%未満ではその効果が小さく、0.30%を越えると粗大なAl−Zr系の金属間化合物が晶出するようになり、伸び(特に、高歪速度域下での伸び)が低下してくるので、添加する場合には0.05〜0.30%の範囲とした。

0023

(7)Mg含有量とSi含有量の比:2.0以下
本発明合金においては、Mg含有量とSi含有量の比により、その機械的性質や時効硬化特性が異なる。すなわち、MgとSiが過不足なくMg2Siを形成するバランス組成のよりも、Mg含有量とSi含有量の比が小さい(すなわち、Mg含有量に対して、Si含有量が相対的に多い)場合は、凝固時にSi粒子が晶出してくるようになるため、強度が上昇する。従って、鋳造したままの状態で高強度を得るために、Mg含有量とSi含有量の比:2.0以下とした。

0024

(8)Mg含有量とSi含有量の比:1.8以上
Mg含有量とSi含有量の比がバランス組成よりも大きい(すなわち、Mg含有量に対して、Si含有量が相対的に少ない)場合は、過剰Mgの存在によりMg2Siの固溶度が減少し、強度は低下するが、延性は向上する。従って、鋳造したままの状態で高延性を得るために、Mg含有量とSi含有量の比:1.8以上とした。

0025

(9)人工時効処理ないしは安定化処理温度:130℃〜300℃
Mg含有量とSi含有量の比がバランス組成よりも大きい(すなわち、Mg含有量に対して、Si含有量が相対的に少ない)場合は、Mg2Siの固溶度が減少しているために、ダイカスト時の過飽和固溶しているMg2Siの量が多く、ダイカスト後の入熱により時効硬化現象を示す。従って、更なる高強度が望まれる場合には、130℃〜300℃の温度で所定の時間熱処理を施すことにより、所望の特性に調整することが可能である。この時効硬化現象は、ダイカスト製品への入熱によって発現する現象であるので、入熱の手段を人工時効処理や安定化処理に代えて、ダイカスト後の歪み取り焼鈍や塗装工程での焼き付け入熱としても同様の効果が得られる。

0026

(10)安定化処理温度:150〜400℃
Mg含有量とSi含有量の比がバランス組成よりも小さい(すなわち、Mg含有量に対して、So含有量が相対的に多い)場合は、Mg2Siの固溶度の低下がほとんど生じないために、時効硬化挙動をほとんど示さない。しかしながら、安定化処理を施すことにより晶出物の形態を制御し、延性を改善することが可能である。従って、高延性が望まれる場合には、150℃〜400℃の温度で安定化処理を施す事により、所望の特性に調整することが可能である。

0027

本発明に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、上記成分組成を備え、MgとMnの添加による固溶強化と、MgとSiの添加による析出強化により十分な強度が得られると同時に、伸びに対して有害なFeを所定の限度内に低減するとともに、Mnの添加によりFeの悪影響を最小限に止めているために十分な延性が確保されていることから、当該アルミニウム合金を用いることによって、鋳造後に溶体化処理を施すことなく、高歪み速度域下で高い強度と高い伸びを備えたアルミニウムダイカスト製品が安定的に得られ、例えば、自動車のAピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフ、スペースフレーム継手部品、サスペンション取り付け部部品、サスペンションアーム、サブフレーム、サスペンションのリンク部品などに好適に用いられる。

0028

また、上記ダイカスト溶アルミニウム合金を用いて、これらのアルミニウムダイカスト製品を鋳造するに際しては、高真空ダイカスト法を用いることが望ましい。すなわち、高真空ダイカスト法の適用によって、製品中へのガスの巻き込みが低減され、本発明合金が有する優れた機械的性質、特に伸び及び靭性を最大限に活かしたアルミニウムダイカスト製品が得られることになる。

0029

さらに、本発明に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、上記ダイカスト用アルミニウム合金を用いてダイカスト製品を鋳造したのち、人工時効処理、安定化処理を施すこともできる。この人工時効処理や安定化処理は、ダイカスト後の歪み取り焼鈍ないしは塗装焼き付け、またはその両方に代えることも可能である。

0030

すなわち、本発明に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、上記したように、鋳造後何ら熱処理を施すことなく、優れた静的、動的強度および伸びが得られるものであるが、さらなる高強度が望まれる場合や、強度と伸びのバランスの改善が必要な場合には、人工時効処理や安定化処理を施すことによって、得られたダイカスト製品が所望の特性を備えたものに調整されることになる。

発明の効果

0031

本発明の請求項1に係わるダイカスト用アルミニウム合金は、合金成分として、Si,Mg,Mn,FeおよびTiをそれぞれ所定範囲で含有するものであるから、Mgの添加による固溶強化、析出硬化およびダイカスト鋳造後の自然時効により十分な強度が得られると同時に、伸びに対して有害なFeを可能な限り低減することにより優れた伸びをも確保することができ、さらにはTiの添加により初晶α(Al)を微細化してより高い強度と伸びを備えたダイカスト製品を得ることができるという極めて優れた効果をもたらすものである。

0032

本発明の請求項2に係わるダイカスト用合金においては、請求項1に係わるダイカスト用アルミニウム合金に対して、Ti含有量を0.10〜0.20%(質量比)の範囲に限定し、請求項3に係わるダイカスト用アルミニウム合金においては、Ti含有量を0.05〜0.20%(質量比)の範囲に限定すると共に、質量比で0.001〜0.10%のBを添加し、請求項4に係わるダイカスト用アルミニウム合金においては、質量比で0.05〜0.30%のZrを添加したものであるから、初晶α(Al)相がより高度に微細化され、ダイカスト製品の強度および伸びをさらに向上させることができ、本発明の請求項5に係わるダイカスト用合金においては、Mn含有量を1.0〜1.5%(質量比)の範囲に限定したものであるから、当該合金におけるMnの作用をより確実なものとして、高温強度と特に高歪速度域での伸びを向上させることができ、本発明の請求項6に係わるダイカスト用合金においては、Si含有量を2.5〜3.5%(質量比)の範囲に限定したものであるから、当該合金におけるSiの作用をより確実なものとして、耐鋳造割れ性を向上させることができ、本発明の請求項7に係わるダイカスト用合金においては、Si含有量を1.0〜2.0%(質量比)に限定したものであるから、特に高歪速度域での伸びを向上させることができる。

0033

本発明の請求項8に係わるダイカスト用アルミニウム合金においては、Mg含有量とSi含有量の比が2.0以下であるから、凝固時におけるSi粒子の晶出により、鋳造のままの状態で高強度のダイカスト製品を得ることができ、本発明の請求項9に係わるダイカスト用アルミニウム合金においては、Mg含有量とSi含有量の比が1.8以上であるから、強度は若干低下するものの、鋳造のままの状態で高延性を備えたダイカスト製品を得ることができる。

0034

本発明の請求項10に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、上記ダイカスト用アルミニウム合金の鋳造に際して、高真空ダイカスト法を用いるようにしているので、製品中へのガスの巻き込みが低減され、本発明合金の優れた機械的性質を低下させることなく、特に伸びや靭性に優れたアルミニウムダイカスト製品を得ることができ、請求項11に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、Mg含有量とSi含有量の比が1.8以上である本発明のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を製造し、さらに130℃〜300℃の温度で人工時効処理ないしは安定化処理を施すようにしており、請求項12に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、この人工時効処理ないしは安定化処理に代えて歪み取り焼鈍ないしは塗装焼き付け、あるいはその両方に代えて実施するようにしていることから、アルミニウムダイカスト製品の延性をさらに向上させることができ、請求項13に係わるアルミニウムダイカスト製品の製造方法においては、Mg含有量とSi含有量の比が2.0以下である本発明のアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳物を製造したのち、150℃〜400℃の温度で安定化処理を施すようにしているので、アルミニウムダイカスト製品の強度をさらに向上させることができるという優れた効果がもたらされる。

0035

本発明の請求項14に係わるアルミニウムダイカスト製品は、上記アルミニウムダイカスト製品の製造方法によるものであるから、ダイカスト鋳造後に溶体化処理を施すことなく、優れた機械的性質、特に高歪速度域下での高い強度と伸びを備えダイカスト製品とすることができ、請求項15および請求項16に記載しているように、自動車のAピラー、Bピラー、Cピラー、ルーフ、スペースフレーム接手、サスペンション取付部、サスペンションアーム、サブフレーム、サスペンションのリンク部品に適用することができる。

0036

以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。

0037

試験1〉表1に示す組成のアルミニウム合金を750℃で溶製したのち、介在物の除去と脱ガスを目的として、アルゴンガスによるバブリング処理を実施した。

0038

0039

次に、溶製したアルミニウム合金材料を720℃の温度までそれぞれ自然冷却したのち、鋳物の製品部が図1に示すような形状となる鉄製の鋳造割れ性評価用鋳型重力鋳造を行った。

0040

そして、重力鋳造の後、得られた鋳物の温度が100℃以下程度となるまで当該鋳型中で冷却を行い、図2に模式的に示すような位置に発生したわれの数を調査することによって、これらアルミニウム合金の鋳造割れ性を評価した。このときの割れ発生数を合金中のSi含有量に対して整理した結果を図3に示す。

0041

図3の結果から、Siの添加量を増すことによって、割れの発生が抑制され、耐鋳造割れ性が改善されることが判明した。すなわち、Si添加量が1.1%になると、割れ発生数がSi量0.4%の場合の1/2にまで低減し、2.5%以上の添加によって割れが皆無となることが確認された。

0042

〈試験2〉上記実施例と同様に、表2に示す組成のアルミニウム合金を750℃で溶製したのち、介在物の除去と脱ガスを目的として、アルゴンガスによるバブリング処理を実施した。

0043

0044

次に、型締め力320トン高真空ダイカスト装置を使用し、金型に粉体離型剤を塗布したのち、鋳造圧力:60MPa、高速射出速度:3.5m、スリーブ内真空度:0.96気圧真空バルブ部の真空度:0.95気圧の条件で各アルミニウム合金のダイカスト鋳造を実施した。なお、鋳造時の溶湯温度は、680℃であり、鋳造に使用した金型の製品部形状は、図4に示すように、50mm×130mm×2mmの平板形状とした。

0045

そして、上記平板ダイカスト材から、図5に示すようなJIS 13B号テストピースをそれぞれ切り出し、静的引張試験に供した。この静的引張試験は、インストロン型の万能試験機を使用して、0.001/sの歪速度で実施した。

0046

また、上記平板ダイカスト材から、さらに図6に示す形状のテストピースをそれぞれ切り出し、動的引張試験に供した。この動的引張試験は、図7に示すようなOne−Bar Method高速引張試験機を使用して、1000/sの歪速度で実施した。静的引張試験、動的引張試験結果を表3に示す。なお、これら引張試験に際しては、静的、動的引張試験共に、繰り返し数を5とし、試験結果を5回の平均値で示した。また、動的引張試験における応力歪線図は、図8に示すような形状となるため、図中に示す「降伏後の最大応力」の値をもって各ダイカスト材の強度を評価した。

0047

0048

表3に示すように、本発明の実施例に係わる合金を使用したアルミニウムダイカスト材においては、静的、動的共に優れた機械的性質が得られることが確認された。これは、MgとMnの添加による固溶強化およびMgとSiの添加による析出強化による強度向上と、Feを可能な限り低減するとともに、Mnの添加によりFeの悪影響を最小限に止めていることによる伸びの向上によるものと考えられる。さらには、Ti、Ti+B、あるいはZrの添加による静的、動的両面での機械的性質の向上が確認された。なお、表3の結果から、Siの添加量が3.5%を超えると、動的引張試験における伸びが低下する傾向が認められた。また、Mn添加量の増減は、強度にほとんど影響を与えないものの、伸びについてはMn添加量の減少と共に向上する傾向が認められた。しかしながら、Mn量を0.3%未満とした試料においては、ダイカスト時に金型への焼き付きの傾向が認められるようになった。

0049

表3に示した引張試験の結果を、含有しているMg量とSi量の比との関係で整理したものが図9および図10である。これらの図に示すように、Mg/Si比:2.0程度を境として、Mg/Si比がそれより大きいものでは伸びが大きく、強度が小さくなる傾向が認められ、一方、Mg/Si比がそれより小さいものでは伸びが小さく、強度が大きくなる傾向が認められた。但し、この結果では、Si含有量が大きく振れているため、一概にMg/Si比の影響であると判断できないため、さらに詳細な評価を行った。

0050

〈試験3〉これまでの実施例と同様に、表4に示す組成のアルミニウム合金を750℃で溶製したのち、介在物の除去と脱ガスを目的として、アルゴンガスによるバブリング処理を実施した。

0051

0052

次に、型絞め力320トンの高真空ダイカスト装置を使用し、金型に粉体離型剤を塗布したのち、鋳造圧力:60MPa、高速射出速度:3.5m、スリーブ内真空度:0.96気圧、真空バルブ部の真空度:0.95気圧の条件で各アルミニウム合金のダイカスト鋳造を実施した。なお、鋳造時の溶湯温度は、860℃であり、鋳造に使用した金型の製品部形状は、図4に示すように、50mm×130mm×2mmの平板形状とした。

0053

そして、上記平板ダイカスト材から、図5に示すようなJJIS 13B号テストピースをそれぞれ切出し、静的引張試験に供した。この静的引張試験は、インストロン型の万能試験機を使用して、0.001/sの歪み速度で実施した。

0054

図11に示すように、本発明合金の強度(0.2%耐力)は、Mg添加量の絶対値には関係なくMg/Si比が2.0以下のもので上昇する傾向を示した。これは、Mg含有量に対して、Si含有量が相対的に多いため、凝固時にSi粒子が晶出し、強度が上昇するものと考えられる。一方、図12に示すように、本発明合金の伸びは、Mg添加量の絶対値には関係なくMg/Si比が1.8に満たないもので急激に低下する傾向を示した。これは、Mg含有量に対して、Si含有量が相対的に少ないため、過剰Mgの存在によりMg2Siの固溶度が減少し、強度は低下するが、伸びは向上したものと考えられる。従って、鋳造したままの状態で高強度を得るためには、Mg/Si比が2.0以下となるようにMg含有量とSi含有量を調整することが望ましく、鋳造したままで高延性を得るためには、Mg/Si比が1.8以上となるようにMg含有量とSi含有量を調整することが望ましい。

0055

次いで、Mg/Si比が小さい実施例13の材料とMg/Si比が大きい実施例16の材料とを、250℃の温度に恒温保持し、その際の硬さ変化を調査した結果を図13に示す。図13に示すように、Mg/Si比が小さい実施例13の材料では、熱負荷により硬さは低下するだけであるのに対して、Mg/Si比が大きい実施例16の材料では、熱負荷により硬さが一旦上昇した後、低下するという時効硬化挙動を示した。ここで、Mg/Si比が大きい材料で時効硬化挙動が認められる理由としては、過剰Mgの存在によりMg2Siの固溶度が減少しているために、ダイカスト時の過飽和固溶しているMg2Siの量が多く、ダイカスト後の入熱により析出するものと考えられる。これらより、本発明合金においては、Mg/Si比とダイカスト後の入熱の制御により、強度と伸びのバランスを自由にコントロールすることが可能である。

図面の簡単な説明

0056

図1本発明の実施例1において鋳造割れ性の評価に用いた鋳型による製品形状を示す斜視図である。
図2図1に示した鋳造割れ性評価用鋳物に発生した割れの状態を例示する斜視図である。
図3鋳造割れ性に及ぼすSi含有量の影響を示すグラフである。
図4実施例の試験2において鋳造したダイカスト材の形状を示す平面図である。
図5図4に示したダイカスト材の静的引張試験に供した試験片形状を示す平面図である。
図6図4に示したダイカスト材の動的引張試験に供した試験片形状を示す平面図である。
図7One−Bar Method高速引張試験機の構成を示す概略図である。
図8動的引張試験における応力−歪線図の代表例を示すグラフである。
図9実施例の試験2における各合金の強度に及ぼすMg/Si比の影響を示すグラフである。
図10実施例の試験2における各合金の伸びに及ぼすMg/Si比の影響を示すグラフである。
図11実施例の試験3における各合金の強度に及ぼすMg/Si比の影響を示すグラフである。
図12実施例の試験3における各合金の伸びに及ぼすMg/Si比の影響を示すグラフである。
図13実施例13および実施例16に係わる合金を250℃に恒温保持した場合の時間的な硬さ変化を示すグラフである。

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