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技術 イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法。

出願人 日本曹達株式会社
発明者 尾田一雄金作幸夫
出願日 2000年11月9日 (19年7ヶ月経過) 出願番号 2000-341617
公開日 2002年5月22日 (18年1ヶ月経過) 公開番号 2002-146577
状態 特許登録済
技術分野 非金属・化合物の電解製造;そのための装置
主要キーワード 塩化ナトリウム電解 測定データー 許容値α 運転再開後 ガス放散 重回帰分析法 電解槽温度 塩酸供給
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図面 (11)

課題

イオン交換膜法塩化アルカリ電解において、電解槽運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽に損傷がなく正常に運転を開始し、継続できるか否かの判断を簡便且つ速やかに行うことができる、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽運転方法を提供する。

解決手段

イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転するにあたり、運転を開始する前に電解槽を流れる防食電流電圧A(V)と、運転を開始した後の所定電流における電解電圧B(V)を測定し、前記A及びBが設定値以上の場合には運転を継続し、A又はBのいずれかが該設定値未満の場合には電解槽から発生する気体分析を行い、該分析の結果から電解槽の運転を継続するか停止かの判断を行うことを特徴とするイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転開始方法。

概要

背景

従来から、イオン交換膜を用いる食塩等の塩化アルカリ電気分解する方法(以下、「イオン交換膜法塩化アルカリ電解」という)が工業的規模で実施されている。イオン交換膜法塩化アルカリ電解では、通常、有機材料からなるイオン交換膜を挟んで、一方の陽極側は塩素及び強い酸化性雰囲気、他方の陰極側は強いアルカリ溶液が存在するので、イオン交換膜はきわめて過酷な状況に曝されていることになる。したがって、長期間にわたる操業ではイオン交換膜の経時的な劣化は避けがたい。また、このような劣化は、単にイオン交換膜の性能上の劣化にとどまらず、一般にピンホールと言われるような破損が生じた場合には、陽極側の塩素と陰極側の水素が混合し、最悪の場合は爆発する危険もある。さらに、イオン交換膜にピンホールが発生すると、高圧側のアルカリ陽極室へ流入し、塩素と反応して次亜塩素酸を生成し、これが電槽ガスケット腐食することによって、外部への液漏れの原因となり、電解槽寿命縮めることにもなる。

また、イオン交換膜法塩化アルカリ電解を停止している間は、電解槽の腐食等を防止するために、防食電流を流しておくのが一般的である。しかしながら、防食電流を流しているにもかかわらず、イオン交換膜や電解槽の表面が損傷してしまう場合があり、その状態で運転再開すると、陽極側の塩素と陰極側の水素が混合したり、電槽ガスケットを腐食して、外部への液漏れの原因となり、電解槽の寿命を縮めてしまうことになる。

したがって、イオン交換膜法塩化アルカリ電解にあっては、使用するイオン交換膜の劣化や電解槽の損傷等の異常をできるだけ早期に発見することが、事故防止及びコスト低減の意味からもきわめて重要となる。

従来、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽運転方法としては、例えば、次のものが知られている。
特開昭55−65379号公報には、複数個の電解槽の陽極室に共通の母管から分岐する枝管によって塩水を並列に供給し、陽極室液の一部を排出口より抜き出しながら電解を行うにあたり、排出口より抜き出される陽極室液のpH値を測定し、これに基づいて各電解槽に個別的に塩酸を供給し、pH値を4以下に保つことを特徴とするハロゲン化アルカリイオン交換膜法電解槽の運転方法が記載されている。

特開昭57−123989号公報には、電解槽に設けられた電流検出器及び電圧検出器によって電解槽運転時における電流量(I)及び電圧(V)を検出して電解槽の正常運転時における電流量(I)及び電圧(V)を用い、式:V=KI+e(eは理論電解電圧である)に基づいて予め求めたK値、及び予め設定した許容値α0を用いた式:V=KI+e+αを比較し、|α|>|α0|となったとき異常信号を発生するごとくして行う電解槽の運運制御方法が記載されている。

また、特開平8−74082号公報には、複数個のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転するにあたり、各電解槽の陽極室からの塩素ガス中の酸素濃度及び各槽への塩素供給量を各槽毎に測定し、該測定値に基づいて塩素ガス中の酸素濃度を0.1〜0.5(容量)%に保つように各電解槽に個別的に塩酸を供給し、且つ各槽の塩素原単位塩酸供給量/塩素発生量)を算出し、この算出価を予め定めた値と比較するか、或いは全槽の塩酸原単位の平均値との相対比較によって、電解槽の異常を検出することを特徴とする塩化アルカリのイオン交換膜法電解槽の運転方法が開示されている。

概要

イオン交換膜法塩化アルカリ電解において、電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽に損傷がなく正常に運転を開始し、継続できるか否かの判断を簡便且つ速やかに行うことができる、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法を提供する。

イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転するにあたり、運転を開始する前に電解槽を流れる防食電流の電圧A(V)と、運転を開始した後の所定電流における電解電圧B(V)を測定し、前記A及びBが設定値以上の場合には運転を継続し、A又はBのいずれかが該設定値未満の場合には電解槽から発生する気体分析を行い、該分析の結果から電解槽の運転を継続するか停止かの判断を行うことを特徴とするイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転開始方法。

目的

本発明は、かかる実状に鑑みなされたものであって、イオン交換膜法塩化アルカリ電解において、電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽に損傷がなく正常に運転を開始し、継続できるか否かの判断を簡便且つ速やかに行うことができる、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽運転するにあたり、運転を開始する前に電解槽を流れる防食電流電圧A(V)、及び運転を開始した後の所定電流における電解電圧B(V)を測定し、前記A及びBが設定値以上の場合には運転を継続し、A又はBのいずれかが該設定値未満の場合には電解槽から発生する気体分析を行い、該分析の結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行うことを特徴とするイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法

請求項2

前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体中に含まれる塩素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行う請求項1記載のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法。

請求項3

前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体を分析し、該気体中に含まれる塩素ガス及び酸素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行う請求項1記載のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法。

請求項4

前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体を分析し、該気体中に含まれる塩素ガス、酸素ガス及び水素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行う請求項1記載のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法。

請求項5

前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体を分析し、該分析の結果、該塩素ガス濃度が95(容量)%以上の場合、又は塩素ガス濃度が92(容量)%以上95(容量)%未満であり、酸素ガス濃度が7(容量)%未満で、かつ水素ガス濃度が0.25(容量)%未満の場合には運転を継続し、それ以外の場合には運転を停止する請求項1記載のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法。

請求項6

前記防食電流の電圧A(V)の設定値として、陽極液pH値P、槽温度T(℃)及び陰極液水酸化アルカリの濃度COH(重量%)を種々の条件下で測定した値を、一般式(1):a+bP+cT+dCOHに代入して、重回帰分析することによりa、b、c及びdを求め、得られた式から定められる値を用いる請求項1〜5のいずれかに記載のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転開始方法。

技術分野

0001

本発明は、イオン交換膜法による塩化アルカリ電解槽運転を安全に行うためのイオン交換膜法電解槽運転方法に関する。

背景技術

0002

従来から、イオン交換膜を用いる食塩等の塩化アルカリを電気分解する方法(以下、「イオン交換膜法塩化アルカリ電解」という)が工業的規模で実施されている。イオン交換膜法塩化アルカリ電解では、通常、有機材料からなるイオン交換膜を挟んで、一方の陽極側は塩素及び強い酸化性雰囲気、他方の陰極側は強いアルカリ溶液が存在するので、イオン交換膜はきわめて過酷な状況に曝されていることになる。したがって、長期間にわたる操業ではイオン交換膜の経時的な劣化は避けがたい。また、このような劣化は、単にイオン交換膜の性能上の劣化にとどまらず、一般にピンホールと言われるような破損が生じた場合には、陽極側の塩素と陰極側の水素が混合し、最悪の場合は爆発する危険もある。さらに、イオン交換膜にピンホールが発生すると、高圧側のアルカリ陽極室へ流入し、塩素と反応して次亜塩素酸を生成し、これが電槽ガスケット腐食することによって、外部への液漏れの原因となり、電解槽の寿命縮めることにもなる。

0003

また、イオン交換膜法塩化アルカリ電解を停止している間は、電解槽の腐食等を防止するために、防食電流を流しておくのが一般的である。しかしながら、防食電流を流しているにもかかわらず、イオン交換膜や電解槽の表面が損傷してしまう場合があり、その状態で運転を再開すると、陽極側の塩素と陰極側の水素が混合したり、電槽ガスケットを腐食して、外部への液漏れの原因となり、電解槽の寿命を縮めてしまうことになる。

0004

したがって、イオン交換膜法塩化アルカリ電解にあっては、使用するイオン交換膜の劣化や電解槽の損傷等の異常をできるだけ早期に発見することが、事故防止及びコスト低減の意味からもきわめて重要となる。

0005

従来、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法としては、例えば、次のものが知られている。
特開昭55−65379号公報には、複数個の電解槽の陽極室に共通の母管から分岐する枝管によって塩水を並列に供給し、陽極室液の一部を排出口より抜き出しながら電解を行うにあたり、排出口より抜き出される陽極室液のpH値を測定し、これに基づいて各電解槽に個別的に塩酸を供給し、pH値を4以下に保つことを特徴とするハロゲン化アルカリのイオン交換膜法電解槽の運転方法が記載されている。

0006

特開昭57−123989号公報には、電解槽に設けられた電流検出器及び電圧検出器によって電解槽運転時における電流量(I)及び電圧(V)を検出して電解槽の正常運転時における電流量(I)及び電圧(V)を用い、式:V=KI+e(eは理論電解電圧である)に基づいて予め求めたK値、及び予め設定した許容値α0を用いた式:V=KI+e+αを比較し、|α|>|α0|となったとき異常信号を発生するごとくして行う電解槽の運運制御方法が記載されている。

0007

また、特開平8−74082号公報には、複数個のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転するにあたり、各電解槽の陽極室からの塩素ガス中の酸素濃度及び各槽への塩素供給量を各槽毎に測定し、該測定値に基づいて塩素ガス中の酸素濃度を0.1〜0.5(容量)%に保つように各電解槽に個別的に塩酸を供給し、且つ各槽の塩素原単位塩酸供給量/塩素発生量)を算出し、この算出価を予め定めた値と比較するか、或いは全槽の塩酸原単位の平均値との相対比較によって、電解槽の異常を検出することを特徴とする塩化アルカリのイオン交換膜法電解槽の運転方法が開示されている。

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、上記した従来のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法のうち、陽極液のpH値を測定する方法は、運転時にすべての電解槽についてpH値を測定しなければならず、操作が非常に煩雑である。また、pH4を越える領域では電流効率の変動に対するpH値の感度が非常に低いので、pH値の変化により異常を検出することが困難である。さらに、pH値は測定時の液温のばらつき、サンプリング時のガス放散の影響により誤差を生じやすいという問題がある。

0009

また、電解槽運転時における電流量及び電圧を検出する方法は、pH値を測定することなく運転中に発生する電解槽の異常を早く発見できる点で比較的優れた方法であるといえる。しかしながら、電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、電解槽の運転が正常に再開できるか否か、及び電解槽の運転を正常に継続できるか否かの判断する場合には適用が難しい。

0010

一方、特開平11−61476号公報には、イオン交換膜塩化アルカリ電解槽の陽極室に所定アルカリ金属濃度アルカリ金属ハロゲン化物水溶液を満たし、陰極室所定濃度アルカリ金属水酸化物水溶液を満たし、所定温度通電を開始する方法が提案されている。

0011

この方法は、運転停止中において、陽極室と陰極室の電解液濃度バランス崩れることに着目し、この濃度バランスの崩れを正常に戻すことによって、正常な運転を開始する方法である。しかしながら、この方法はすべての電解槽の電解液の濃度測定を行わねばならず、煩雑であり、簡便性及び迅速性に欠けるという問題がある。

0012

このように、従来のイオン交換膜法塩化アルカリ電解の運転開始法及び運転(制御)法は、電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽等に損傷がなく正常に運転を再開できるか否か、及び運転を再開した後、正常に運転を継続できるか否かの判断を簡便且つ速やかに行うことができる方法ではなかった。特に、冬季積雪等によって発生しやすい送電線短絡事故等により不時停電が生じるような場合には、イオン交換膜及び電解槽の損傷をできるだけ軽減し、製造コストの上昇を抑えるためには、停電後できるだけ速やかに正常な運転を再開できることが重要である。

0013

本発明は、かかる実状に鑑みなされたものであって、イオン交換膜法塩化アルカリ電解において、電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽に損傷がなく正常に運転を開始し、継続できるか否かの判断を簡便且つ速やかに行うことができる、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0014

上記課題の解決を図るべく、本発明は、複数個のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転するにあたり、運転を開始する前に電解槽を流れる防食電流の電圧A(V)、及び運転を開始した後の所定電流における電解電圧B(V)を測定し、前記A及びBが設定値以上の場合には運転を継続し、A又はBのいずれかが設定値未満の場合には電解槽から発生する気体分析を行い、該分析の結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行うことを特徴とするイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転開始方法を提供する。

0015

本発明の運転方法においては、前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体中に含まれる塩素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかを判断するのが好ましい。

0016

本発明の運転方法においては、前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体中に含まれる塩素ガス及び酸素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかを判断するのがより好ましい。

0017

本発明の運転方法においては、前記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体中に含まれる塩素ガス、酸素ガス及び水素ガスの濃度を測定し、得られた測定結果から電解槽の運転を継続するか停止するかを判断するのがさらに好ましい。

0018

本発明の運転方法においては、記A又はBのいずれかが設定値未満の場合には、前記電解槽の陽極室から発生する気体を分析し、前記気体の分析の結果、塩素ガス濃度が95(容量)%以上の場合、又は塩素ガス濃度が92(容量)%以上95(容量)%未満であって、酸素ガス濃度が7(容量)%未満で、かつ水素ガス濃度が0.25(容量)%未満の場合には運転を継続し、それ以外の場合には運転を停止するのが特に好ましい。

0019

また、本発明の運転方法においては、前記防食電流の電圧A(V)の設定値としては、陽極液のpH値P、槽温度T(℃)及び陰極液水酸化アルカリの濃度COH(重量%)を種々の条件下で測定した値を、一般式(1):a+bP+cT+dCOHに代入して、重回帰分析しすることによりa、b、c及びdを求め、得られた式から定められるものを用いるのが好ましい。

発明を実施するための最良の形態

0020

以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられるイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の一例を図1に示す。実際の電解槽は、図1に示す単位を多層(10層〜20層程度)積層して構成されている。図1において、陽極室3では塩素イオンが陽極1に電子を放出し塩素となり、塩素ガスが発生する。また、陰極室4では水が陰極2から電子を受け取って水素ガスの発生と水酸化物イオンを生ずる。一方、イオン交換膜5により選択的にアルカリ金属イオンが移動し、これが水酸化物イオンと反応して水酸化アルカリとなる。

0021

また、各電解槽においては、イオン交換膜5により区切られた単位毎に陽極1と陰極2が備え付けられているが、それらは並列に接続されており、電解槽単位で電流及び電圧の測定が可能となっている。なお、イオン交換膜5としては、一般的には、カルボキシル基スルホ基を側鎖に有する陽イオン交換性フッ素樹脂が多く用いられる。また、塩化アルカリとしては、塩化ナトリウムが一般的である。

0022

本発明は、複数個のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽を運転する方法であって、運転を開始する前(以下、「通電前」ともいう)の防食電流の電圧A(V)、及び運転を開始した後(以下、「通電後」ともいう)の電解電圧B(V)を測定し、前記A及びBが設定値以上の場合には運転を継続し、A又はBのいずれかが設定値未満の場合には電解槽から発生する気体の分析を行い、該分析の結果から電解槽の運転を継続するか停止するかの判断を行うイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法である。本発明のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法の概要フローチャート図2に示す。

0023

本発明は、通電前に防食電流の電圧が所定値A(V)以上になっているか否かを確認することを第1の特徴とする。イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転を行っている場合に、何らかの理由により運転を停止する場合、あるいは運転を停止せざるを得ない場合がある。電解槽の運転を停止すると、電解槽の中は1種の電池のような状態になって、電解槽の中を電流が流れることが知られている。そして、この状態を放置しておくと、イオン交換膜に損傷を与えたり、電解槽や電極表面を腐食するおそれがある。そのため、従来から電解槽の運転を停止している間、電解槽に防食電流を流すことにより、イオン交換膜に損傷を与えたり、電解槽や電極表面を腐食するのを防止している。

0024

防食電流が流れている間、陽極室からは酸素ガスが発生し、陰極室から水素ガスが主に発生している。一定の防食電流が流れている状態では、ネルンストの式から、防食電流中の電槽電圧は陽極室及び陰極室のpH値に依存することが導かれる。防食電流の電圧と陽極室の電解液のpH値を実際に測定した結果を図3に示した。図3から、一般的に電解液のpH値が高い場合には防食電流の電圧が低くなることがわかる(図3に示す例においては、寄与率は約0.66である)。

0025

通電後においては、図4に示す測定例から明らかなように、陰極液のpH値と電槽電圧との間には相関関係は見られなかった。しかしながら、図5に示すように、通電前の陽極液のpH値と通電後の陽極液のpH値との間には一定の相関関係があることがわかった(図5に示す例においては、寄与率は約0.7である)。

0026

したがって、電解槽の運転再開前の防食電流の電圧が一定値以下の電解槽は、陽極液のpH値が異常に高くなっていること、通電前の陽極液のpH値と通電後の陽極液のpH値との間には一定の相関関係が見られること、及び、陽極液のpH値が異常である場合には運転再開後トラブル予測される。これらのことから、防食電流の電圧が所定値未満の場合には、電解槽の運転を再開後において再度運転が正常に継続できるか否かを判断することとした。

0027

防食電流の電圧は、槽温度や陰極液である水酸化ナトリウム水溶液の濃度等の因子によって影響を受ける。したがって、防食電流の電圧Vの設定値は、例えば次のようにして決定することができる。
防食電流の電圧に影響を及ぼす因子として、陰極液のpH値P、槽温度T(℃)及び陰極液の水酸化ナトリウム濃度COH(重量%)との間に1次の相関関係があると仮定して、一般式(1):V=a+bP+cT+dCOHが成り立つとする。
そして、種々の条件で陰極液のpH値P、槽温度T(℃)及び陰極液の水酸化ナトリウム濃度COH(重量%)を測定し、前記一般式(1)のa、b、c及びdの値を重回帰分析法により求める。

0028

得られた一般式(1)は、種々の条件(槽温度、陽極液のpH値、陰極液の水酸化ナトリウムの濃度)において、一般的に成り立つ。したがって、電解槽の運転を再開する前において、電解槽の運転を再開した後にトラブルの発生が予想される危険性の高い電解槽として、該電解槽の陽極液のpH値が、例えばpH12以上の場合とすると、一般式(1)のPに12を代入し、そのときの槽温度T及び陰極液の水酸化ナトリウムの濃度COHの測定値を代入することによって、防食電流の電圧の設定値A(V)を定めることができる。

0029

本発明は、防食電流の電圧が所定値以上であるか否かを判断することを特徴とするものであるから、該設定値を定める方法は上記に限定されることなく、他の方法、例えば、経験則等から定めることもできる。

0030

本発明は、通電後において、所定電流における電解電圧が所定値B(V)以上になっているか否かを確認することを第2の特徴とする。運転再開後、イオン交換膜法塩化アルカリ電解を実際に行う場合には、電解電流・電圧を徐々に増加させながら、電解が正常に再開できるか否かを逐次確認し、最終的に電解電流が50kA〜100kAの状態で電解の運転を行う。

0031

また、通電後においては陽極室からは塩素ガスが発生するが、電解槽に何らかのトラブルがある場合には、電解槽から発生する気体の成分組成が正常の場合と異なることが知られている。したがって、すべての電解槽の陽極室から発生する気体の分析を逐次行えば、電解槽が正常に運転されるものであるか否かを確認することができる。しかし、その操作は非常に煩雑であり、迅速性に欠ける。

0032

そこで、本発明では、陽極室から発生する塩素ガス濃度が低くなる場合には、電解槽に何らかのトラブルが発生していると判断されること、及び電解槽の陽極室から発生する塩素ガス濃度と電解電圧との間には一定の相関関係があることから、通電後電解電流及び電圧を上昇させていく過程で、所定の電流での電解電圧が所定値B(V)未満の場合には、電解槽に何らかのトラブルが発生している可能性が高いと判断することとした。

0033

電解槽の陽極室から発生する塩素ガス濃度と、電解電圧との間には一定の相関関係がある。したがって、電解電圧の所定値(B)は、塩素ガス濃度が低い場合の電解電圧の測定データー解析することにより、経験的に定めることができる。

0034

本発明は、通電前に防食電流の電圧が所定値A(V)未満の場合、又は通電後に電解電圧が所定値B(V)未満の場合には、電解槽から発生する気体の分析を行い、該分析の結果から運転を継続できるか又は運転を停止して電解槽の安全点検を行うべきか否かの判断を行うことを第3の特徴とする。

0035

本発明においては、分析する電解槽から発生する気体として、陽極室から発生する気体を分析するのが好ましい。陽極室から発生する可能性があるガスとしては、塩素ガス、酸素ガス及び水素ガスが挙げられる。電解槽が正常に運転されている場合には塩素ガスのみが発生するはずであり、電解槽に異常がある場合には塩素ガス濃度が相対的に低下し、酸素ガスや水素ガス濃度が高くなるからである。したがって、気体の分析としては、先ず塩素ガス濃度の測定を行い、塩素ガス濃度が所定値未満の場合には、酸素ガス濃度及び水素ガス濃度の測定を行うのがより好ましい。

0036

より具体的には、陽極室から発生する気体の分析を、例えば、図6に示すフローチャートに示す〜の手順で行うことができる。なお、図6に示すスローチャートにおいて、YはYesを、NはNoを意味する(以下のフローチャートにて同じである。)。
先ず、電解槽の陽極室から発生している気体に含まれる塩素ガス濃度を測定する。この段階で塩素ガス濃度がX(容量)%以上の場合には運転を継続できると判断する。
塩素濃度がY(容量)%にも満たない場合には危険であると考えられるため,運転を停止して電解槽の安全点検を行う。
塩素ガス濃度がX(容量)%未満であるがY(容量)%以上の場合には、酸素ガス濃度を測定する。酸素ガス濃度がZ(容量)%以上の場合には危険であると考えられるため,運転を停止して電解槽の安全点検を行う。
酸素ガス濃度がZ(容量)%未満の場合には水素濃度の測定する。ここで、水素ガス濃度がW(容量)%以上の場合には危険であると考えられるため、運転を停止して電解槽の安全点検を行う。
水素濃度がW(容量)%未満の場合には運転が継続できると判断する。

0037

本発明においては、気体の分析の方法には格別の制約はなく、従来公知の分析装置及び分析手段を採用できる。

0038

以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例においては、図1に示す単位を15層横に積層してなる電解槽を計30槽用いた。また、イオン交換膜法塩化ナトリウム電解槽の運転は、図7に示すフローチャートに従って行った。

0039

先ず、通常の電解槽の運転を行った後に電解槽の運転を停止した。運転を停止している間は、該電解槽に防食電流を一定電圧で流しつづけた。そのときの防食電流の電圧Vと陽極液のpH値Pとを、種々の電解槽温度T(℃)及び陰極液の水酸化ナトリウム濃度COH(重量%)の条件で測定した。電解槽温度Tが65℃、陰極液の水酸化ナトリウム濃度COHが29重量%の場合の測定結果を図8に示す。その他、電解槽温度60〜70℃、水酸化ナトリウム濃度28〜30重量%の範囲で測定を行った。

0040

次いで、一般式(1):V=a+bP+cT+dCOHが成立するとして、測定結果を用いて重回帰分析を行い、式:V=1.633−0.035P−0.001T+0.015COHを得た。すなわち、a=1.633、b=−0.035、c=−0.001、d=0.15となった。

0041

トラブルの発生のおそれが高いと判断される電解槽の陽極液のpH値を11.8、電解槽の平均温度Tを70℃及び水酸化ナトリウムの平均濃度COHを26重量%として、これらを一般式(1)に代入してVの値を求めると、V=1.54(V)が得られた。なお、トラブル発生のおそれが高いと判断される電解槽の陽極液のpH値は一般的には12以上と考えられるが、pH値は、安全性を考慮して11.8と設定した。

0042

運転再開後、電解電圧の測定を行った。本実施例では、電解槽の運転再開後の電解電圧を測定し、電解電流25kA(アンペア)での電圧が2.45V以上であれば、電解槽は正常に作動しているので、運転は継続できるとし、該電解電圧が2.45V未満の場合には、電解槽に異常があるおそれがあるので、陽極室から発生する気体の分析を行うこととした。

0043

また、電解電流10kAでは運転再開直後のため電圧が安定しておらず、電解電流が25kAになると電解電圧が次第に安定し、電解電圧はおよそ2.54V〜2.70Vで推移した。したがって、電解電圧が所定の値以上であるか否かの判断は、電流電圧25kAの場合で行うこととした。

0044

また、基準となる電解電圧の所定値(2.54V)は、次のようにして決定した。すなわち、電解電流(I)を0kA、10kA、25kAと変化させた場合における運転再開後の電解電圧(V)の経時変化を測定した。測定結果の一例を図9に示す(図9中、横軸は経過時間、縦軸は電解電圧(V)を示す)。そして、種々の電解槽について測定した結果から、正常な電解槽の場合には、25kAの電解電流で電解電圧が2.54V以上であることを経験的に見出した。

0045

なお、電解電流0kA(防食電流が流れている状態)では、防食電流の電圧(V)は1.54V〜1.7Vの間で推移しており、防食電流の電圧は正常であれば1.54V以上であるとこともわかった(I=0kAの場合)。

0046

電解電流が25kAで電解電流が2.54V未満の電解槽の場合は、該電解槽の陽極室から発生する気体の分析を行った。通電後の電解電流25kAでの電解電圧(V)と陽極室から発生する気体に含まれる塩素ガス濃度(容量%)を測定した結果を図10に示す。図10から、電解電圧が異常に低い場合(電解電圧=2.1V〜2.2V)には、陽極室から発生してくる塩素ガスの濃度は、電解電圧が約2.54V〜2.65Vの電解槽の場合に比して相対的に低いことがわかる。

0047

気体の分析結果から、具体的に電解槽の運転を継続するか停止すかの判断は、図10で得られた測定結果を参照して、次の手順で行うこととした。
先ず、電解槽の陽極室から発生する気体の一定量を採集し、該気体中に含まれる塩素濃度を測定した。測定の結果、塩素ガス濃度が95(容量)%以上の場合には正常であると判断し、運転を継続した。
塩素ガス濃度が92(容量)%以上であるが95(容量)%未満の場合には、酸素ガス濃度を測定した。酸素ガス濃度が7(容量)%以上の場合には、危険槽であると判断し、電解槽の運転を停止して安全点検を行った。
酸素濃度が7(容量)%未満の場合には、水素ガス濃度で判定した。水素ガス濃度が0.25(容量)%未満の場合には正常であると判断し、運転を継続した。
水素ガス濃度が塩素ガス濃度が0.25(容量)%以上の場合には、危険槽であると判断し、電解槽の運転を停止して安全点検を行った。

0048

この場合、塩素ガス濃度はオルザット分析法で測定し、酸素ガス濃度及び水素ガス濃度は、ガスクロマトグラフ法により測定した。

発明の効果

0049

以上説明したように、本発明によれば、従来のように、すべての電解槽の陽極液のpH値を測定するという煩雑な作業が不要であり、イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転を停止した後、運転を再開する場合に、イオン交換膜や電解槽に損傷がなく正常に運転を開始し、継続できるか否かの判断を簡便且つ迅速に行うことができる。

図面の簡単な説明

0050

図1イオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の1例の模式図(断面図)である。
図2本発明のイオン交換膜法塩化アルカリ電解槽の運転方法の手順を示すフローチャート図である。
図3通電前の防食電流の電圧と陽極液のpH値との関係を表す図である。
図4通電後の電解電圧と陽極液のpH値との関係を表す図である。
図5通電前と通電後の陽極液のpH値の関係を表す図である。
図6通電後の電解電圧が所定値未満の場合に陽極室から発生する気体の分析を行い、分析結果から電解槽の運転を継続できるか、運転を停止するかの判断手順を示したフローチャート図である。
図7実施例におけるイオン交換膜法塩化ナトリウム電解槽の運転方法の手順を示すフローチャート図である。
図8通電前の防食電流の電圧と陽極液のpH価との関係から重回帰式を求めた図である。
図9防食電流の電圧(I=0)と電解電流(I=10kA,25kA)での電解電圧の経時変化を表した図である。
図10電解電圧と陽極室から発生する塩素ガス濃度との関係を表した図である。

--

0051

1…陽極
2…陰極
3…陽極室
4…陰極室
5…イオン交換膜

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