図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
従来より、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示装置として、液晶表示装置が広く用いられている。背面にバックライト光源を配置して全面に設置した液晶素子の透過光を表示に利用する透過型液晶表示装置は、カラーフィルタを採用して良好なカラー表示を実現し、各種分野に用途が拡大している。
しかし、透過型液晶表示装置では、光源の消費電力が表示装置の消費電力の大半をしめるという課題がある。また、透過型液晶表示装置においては、周囲光(外光)が非常に強い場合、表示内容を観察者に表示する表示光が相対的に弱くなり、表示内容の確認が困難になる、いわゆるウォッシュアウト現象を生じ易いという課題を有している。
そこで、上記課題を回避するために、反射型液晶表示装置の利用が考えられた。反射型液晶表示装置は、透過型液晶表示装置のような光源を装備せずに外光を表示に利用することによって、低消費電力化を実現している。また、この光源の容積および重量を削減できるという特徴を有している。さらに、表示光の強度が外光の強度に比例するため、ウォッシュアウトを生じないという特徴を有している。このため、携帯型機器の表示装置として有望視されている。
しかしながら、反射型液晶表示装置は、外光が弱い環境では、表示内容の確認が困難になるという課題を有している。また、光の吸収を伴うカラーフィルタを使用すると、さらに表示光が弱くなり、カラー表示と明度の両立が難しいという課題も備えている。つまり、このカラーフィルタの吸収を弱くして明度を大きくするとカラーフィルタの色再現範囲が狭くなり、色再現範囲を広く設定すると明度が低下するものである。
そこで、反射型液晶表示装置の上記各課題を解決するために、次に示す手段が開示されている。
(手段1)反射特性を制御し明度を向上させる。特に、オフアクシス性を付与する。
(手段2)外光が弱い場合に反射表示の光源となる補助光源を備える。
(手段3)透過表示部分を設け、外光が弱い場合に透過表示を利用する。
(手段4)ホログラムカラー反射層を使用して反射表示を行う。
(手段5)反射型液晶における傾斜方向での特性計算方法として、理想的な鏡面反射層を用いた場合に光路を反転させて計算する。
手段1は、反射特性を適切に制御することにより、表示明度を向上させるものである。この反射特性制御手段は、拡散性制御とオフアクシス反射とが開示されている。
拡散性は、反射層が金属層によって作製されている場合には、金属層の形状を平面形状ではなく曲面とすることによって付与される。この曲面の形状は反射後の光の方向分布を制御する役割を果たし、これを適切に設計・製作することによって反射表示の輝度が向上する。このとき、拡散性が強いほど、さまざまな方向からの光を表示に使用できるため、外光の光の分布に依存し難い、安定した表示輝度を実現する。
また、拡散性が弱く鏡面性が強いほど、表示装置の方向を調整した場合の表示輝度が向上する。つまり、安定した表示輝度を実現しつつ、表示輝度を向上させるには、拡散性を適切に制御する必要がある。
このために、登録特許第2698218号公報に開示されている滑らかな凹凸面上に金属反射層を配置した拡散反射層が有効である。この例においては、外光の光線が入射した反射層の微小な局所平面の方向に応じて、さまざまな方向に拡散反射される。また、例示しないが、散乱性を有する光透過膜を光路中に配置することによっても実現可能である。
また、特表平8−505716号公報に開示されているように、体積ホログラムの反射層を用いる場合には、ホログラムの干渉構造を与えるホログラム格子ベクトル(グレーティングベクトル)が適切に分布するようにホログラムを露光して作製することによって拡散性が制御可能である。これは、グレーティングベクトルの方向分布が反射の拡散性を決定付けるためである。このホログラム層が液晶層に近接して配置された例は、特開平10−111501号公報に開示されている。
オフアクシス性は、金属層の場合は傾斜した反射面を有するように金属層の反射面を形成することで実現され、ホログラム層の場合にはグレーティングベクトルの方向分布が傾いているようにホログラム作製することで実現される。
これらの反射層の拡散反射作用やオフアクシス作用を利用した明度向上に有効な手段の場合、表示面に正対する観察者の方向に進む光は、主に、表示面の法線方向に対して傾斜した方向から入射した方向から入射した光となる。このため、表示装置の表示面側に位置する観察者の影によって表示輝度が低くなったり、表示面の最前面による周囲光源の映り込みが表示内容に重なって、視認性を悪化させるという課題が克服される。
手段2は、補助光源によって反射型液晶表示装置の明度を向上させようとするものである。反射型表示装置に重ねるように配置した平面形状のシースルー型の補助光源であるフロントライト装置の例が登録特許第3012426号公報中の第6の実施例に開示されている。このフロントライト装置を反射型液晶表示装置に積層配置して点灯すると、外光が弱い場合であっても、反射型液晶表示装置の表示内容が観察可能になる。
また、この様に反射型液晶表示装置に積層配置するものでなくとも、反射型液晶表示装置の表示面から見て観察者側から表示面を照明可能な適当な光源を付加しても類似の効果が期待できる。
手段2においては、補助光源の点灯時間を長く設定したり、点灯時の明るさを最小限に設定して補助的に点灯させることで、消費電力削減と暗環境での視認性が両立できる。
手段3は、特開平11−242226号公報に開示されているように、反射層の全体または一部に光透過性を有する部位を設けて、透過型表示装置と同じようにバックライト装置を補助光源として利用する。これによって、暗環境ではバックライト装置を点灯させて視認性を確保できる。また、外光が非常に強い場合には、反射表示が視認性の確保に役立つ。しかし、反射表示だけを見ると、反射層に光透過性を付与するために反射率が低下し、視認性が低下する。
手段4は、ホログラムカラー反射層を用いて反射型液晶表示装置を作製する手段である。ホログラムカラー反射層を使用した場合には、液晶組成物に二色性色素を混入して吸光度を制御するゲストホストモード(以下、GHモードと略記)との組み合わせが特開平8−313898号公報に開示されている。
手段5は、反射型液晶での正面での反射特性や、傾斜時の視野角特性を求める手段であり、本願発明者等が出願した特開2000−18619号公報に既に実際に使用されている。この例では、外光は、液晶層に入射し、液晶層で偏光状態を変化させ、平面形状の反射層によって表示面法線成分が反転した方向に反転し、ふたたび液晶層を通過して偏光状態を変化させる。この手法によれば、同開示に示されるような反射層に拡散性がない場合に限って表示装置の特性が計算可能である。つまり、光が正面方向から入射して正面方向に出射する場合や、光が傾斜した方向から入射し、その正反射方向に出射する場合にのみ、特性が計算可能である。
概要
良好なコントラスト等の表示特性に優れた液晶表示装置、その製造方法およびその製造装置を提供する。
光の偏光により画像を表示するための光学素子101、102を設ける。画像を表示するために、光学素子101、102からの光を通過させて偏光する液晶層106を設ける。液晶層106を通過した光を拡散して反射し、液晶層106および光学素子101、102を介して上記光による画像を表示するための反射層109とを基板110上に設ける。液晶層106の液晶配向61を、入射する光の各方位における強度分布と、反射層109および光学素子101、102による偏光特性とを考慮して設定する。
目的
課題1-1 は、反射層の液晶層を往復する場合の入射時と出射時との方向が任意に選べないという課題である。拡散性が有る反射層では、外光の方向によって定まる入射方向と、拡散反射した光が出射していく出射方向の組み合わせを任意に定めて計算する必要がある。この結果、外光がさまざまな方向から表示装置を照明している場合には、たとえ観察方向が一方向であったとしても、様々な方向から入射する光が、観察方向に与える特性を計算する必要がある。このような入射方向と出射方向とを任意に選択可能な設計手段は開示されていない。
課題1-2 は、反射層が偏光依存性を示す場合には従来の設計手法では、適切に計算できないという課題である。実際の金属層やホログラム層では、拡散した光には偏光依存性が生じるが、これを適切に取り扱って液晶表示装置の設定を行う手法は開示されていない。
課題1-3 は、反射層が偏光度を変化させるような場合には、特性の計算が不可能であったという課題である。拡散性を伴う金属層やホログラフ層では拡散に伴う偏光度の変化が生じるが、これを適切にあつかって液晶表示装置の設定を行う手法は開示されていない。
課題4は、ゲストホストモードの明表示と暗表示とのコントラスト比が、概ね5:1程度となるため、並置したRGB等のサブピクセルの特定の色が明表示で他の色が暗表示であっても、暗表示されているサブピクセルの反射光がノイズとなって色純度を劣化させることに原因がある。例えば、並置したRGBのサブピクセルで画素が構成されているときに、Rだけを明表示、GおよびBを暗表示しても、Rサブピクセルの明表示の反射光に、G、Bのサブピクセルの暗表示の反射光が、G、Bのサブピクセルの明表示時の1/5程度だけ重なって、観察者にはこれらが混合したものが観察されてしまうという課題である。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
光を偏光させる光学素子と、画像を表示するために、上記光学素子からの光を通過させて偏光状態を変調する液晶層と、液晶層を通過した光を拡散して反射し、上記液晶層および光学素子を介して上記光による画像を表示するための反射層とを基板上に有し、液晶層の液晶配向は、入射する光の各方位における強度分布と、反射層および光学素子による偏光特性とを考慮して設定されていることを特徴とする液晶表示装置。
請求項2
液晶層の暗表示を示す液晶配向のうち、液晶層の中央層部分の液晶配向が、入射する光の各方位における強度分布の小さい方向に設定されていることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
請求項3
請求項4
光源から観察者に至る光路中に、偏光に依存した光透過特性を示し、少なくとも液晶を含む光学異方性素子と、偏光に依存した光反射特性を示す反射層とが配置されている液晶表示装置の製造方法であって、光学異方性素子の偏光透過特性を光の進行方向に算出し、反射層の偏光反射特性を求め、偏光透過特性と偏光反射特性とを表示光路の光の進行順に合成して液晶表示装置の表示特性を求め、上記表示特性から液晶の液晶配向を設定することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
請求項5
請求項6
液晶の液晶配向を計算する第1計算手段と、液晶配向の結果を記憶する第1記憶手段と、液晶を含む光学異方性素子の配置を記憶する第2記憶手段と、光学異方性素子の配置と液晶配向の結果とに基づいて複数の方向に透過する光に対して光学異方性素子の偏光透過特性を算出する第2計算手段と、偏光透過特性を記憶する第3記憶手段と、反射層の偏光依存反射特性を計算または測定する第3計算・測定手段と、第3記憶手段によって記憶された偏光透過特性から全く逆の方向に通過する光に対する透過特性を計算する第4計算手段と、第3記憶手段に記憶された合成偏光透過特性の特定の方向の特性と、第3計算・測定手段によって得られた偏光反射特性と、第4計算手段により求められた合成偏光透過特性の特性の方向の逆に進む場合の特性と、から合成される液晶表示装置の合成反射特性を計算する第5計算手段とを有することを特徴とする液晶表示装置の製造装置。
請求項7
第3計算・測定手段は、Muellerマトリクスを用いるようになっていることを特徴とする液晶表示装置の製造装置。
技術分野
背景技術
0002
従来より、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示装置として、液晶表示装置が広く用いられている。背面にバックライト光源を配置して全面に設置した液晶素子の透過光を表示に利用する透過型液晶表示装置は、カラーフィルタを採用して良好なカラー表示を実現し、各種分野に用途が拡大している。
0003
しかし、透過型液晶表示装置では、光源の消費電力が表示装置の消費電力の大半をしめるという課題がある。また、透過型液晶表示装置においては、周囲光(外光)が非常に強い場合、表示内容を観察者に表示する表示光が相対的に弱くなり、表示内容の確認が困難になる、いわゆるウォッシュアウト現象を生じ易いという課題を有している。
0004
そこで、上記課題を回避するために、反射型液晶表示装置の利用が考えられた。反射型液晶表示装置は、透過型液晶表示装置のような光源を装備せずに外光を表示に利用することによって、低消費電力化を実現している。また、この光源の容積および重量を削減できるという特徴を有している。さらに、表示光の強度が外光の強度に比例するため、ウォッシュアウトを生じないという特徴を有している。このため、携帯型機器の表示装置として有望視されている。
0005
しかしながら、反射型液晶表示装置は、外光が弱い環境では、表示内容の確認が困難になるという課題を有している。また、光の吸収を伴うカラーフィルタを使用すると、さらに表示光が弱くなり、カラー表示と明度の両立が難しいという課題も備えている。つまり、このカラーフィルタの吸収を弱くして明度を大きくするとカラーフィルタの色再現範囲が狭くなり、色再現範囲を広く設定すると明度が低下するものである。
0006
そこで、反射型液晶表示装置の上記各課題を解決するために、次に示す手段が開示されている。
(手段1)反射特性を制御し明度を向上させる。特に、オフアクシス性を付与する。
(手段2)外光が弱い場合に反射表示の光源となる補助光源を備える。
(手段3)透過表示部分を設け、外光が弱い場合に透過表示を利用する。
(手段4)ホログラムカラー反射層を使用して反射表示を行う。
(手段5)反射型液晶における傾斜方向での特性計算方法として、理想的な鏡面反射層を用いた場合に光路を反転させて計算する。
0008
拡散性は、反射層が金属層によって作製されている場合には、金属層の形状を平面形状ではなく曲面とすることによって付与される。この曲面の形状は反射後の光の方向分布を制御する役割を果たし、これを適切に設計・製作することによって反射表示の輝度が向上する。このとき、拡散性が強いほど、さまざまな方向からの光を表示に使用できるため、外光の光の分布に依存し難い、安定した表示輝度を実現する。
0009
また、拡散性が弱く鏡面性が強いほど、表示装置の方向を調整した場合の表示輝度が向上する。つまり、安定した表示輝度を実現しつつ、表示輝度を向上させるには、拡散性を適切に制御する必要がある。
0010
このために、登録特許第2698218号公報に開示されている滑らかな凹凸面上に金属反射層を配置した拡散反射層が有効である。この例においては、外光の光線が入射した反射層の微小な局所平面の方向に応じて、さまざまな方向に拡散反射される。また、例示しないが、散乱性を有する光透過膜を光路中に配置することによっても実現可能である。
0011
また、特表平8−505716号公報に開示されているように、体積ホログラムの反射層を用いる場合には、ホログラムの干渉構造を与えるホログラム格子ベクトル(グレーティングベクトル)が適切に分布するようにホログラムを露光して作製することによって拡散性が制御可能である。これは、グレーティングベクトルの方向分布が反射の拡散性を決定付けるためである。このホログラム層が液晶層に近接して配置された例は、特開平10−111501号公報に開示されている。
0012
オフアクシス性は、金属層の場合は傾斜した反射面を有するように金属層の反射面を形成することで実現され、ホログラム層の場合にはグレーティングベクトルの方向分布が傾いているようにホログラム作製することで実現される。
0013
これらの反射層の拡散反射作用やオフアクシス作用を利用した明度向上に有効な手段の場合、表示面に正対する観察者の方向に進む光は、主に、表示面の法線方向に対して傾斜した方向から入射した方向から入射した光となる。このため、表示装置の表示面側に位置する観察者の影によって表示輝度が低くなったり、表示面の最前面による周囲光源の映り込みが表示内容に重なって、視認性を悪化させるという課題が克服される。
0014
手段2は、補助光源によって反射型液晶表示装置の明度を向上させようとするものである。反射型表示装置に重ねるように配置した平面形状のシースルー型の補助光源であるフロントライト装置の例が登録特許第3012426号公報中の第6の実施例に開示されている。このフロントライト装置を反射型液晶表示装置に積層配置して点灯すると、外光が弱い場合であっても、反射型液晶表示装置の表示内容が観察可能になる。
0015
また、この様に反射型液晶表示装置に積層配置するものでなくとも、反射型液晶表示装置の表示面から見て観察者側から表示面を照明可能な適当な光源を付加しても類似の効果が期待できる。
0017
手段3は、特開平11−242226号公報に開示されているように、反射層の全体または一部に光透過性を有する部位を設けて、透過型表示装置と同じようにバックライト装置を補助光源として利用する。これによって、暗環境ではバックライト装置を点灯させて視認性を確保できる。また、外光が非常に強い場合には、反射表示が視認性の確保に役立つ。しかし、反射表示だけを見ると、反射層に光透過性を付与するために反射率が低下し、視認性が低下する。
0018
手段4は、ホログラムカラー反射層を用いて反射型液晶表示装置を作製する手段である。ホログラムカラー反射層を使用した場合には、液晶組成物に二色性色素を混入して吸光度を制御するゲストホストモード(以下、GHモードと略記)との組み合わせが特開平8−313898号公報に開示されている。
0019
手段5は、反射型液晶での正面での反射特性や、傾斜時の視野角特性を求める手段であり、本願発明者等が出願した特開2000−18619号公報に既に実際に使用されている。この例では、外光は、液晶層に入射し、液晶層で偏光状態を変化させ、平面形状の反射層によって表示面法線成分が反転した方向に反転し、ふたたび液晶層を通過して偏光状態を変化させる。この手法によれば、同開示に示されるような反射層に拡散性がない場合に限って表示装置の特性が計算可能である。つまり、光が正面方向から入射して正面方向に出射する場合や、光が傾斜した方向から入射し、その正反射方向に出射する場合にのみ、特性が計算可能である。
発明が解決しようとする課題
0020
ところが、上記従来の各手段1〜5においては以下の各課題を生じている。
(課題1)手段1や手段5では、反射特性制御を適切に考慮した液晶層の設計手段が開示されていない。反射層に偏光依存性がある場合や拡散反射層が取り扱えない。
(課題2)手段2の補助光源の照射方向分布を考慮した液晶層の設計手段が開示されていない。
(課題3)手段3では反射率が低下する。これを解決するためには手段1が必要となる。
(課題4)手段4では、ホログラムカラー反射層の良好な色再現特性を生かした表示が不可能である。
0021
課題1は、手段1では、光に拡散性やオフアクシス性を付加するために使用する金属反射層またはホログラム反射層が実際に示す性質に起因する現象を適切に取り扱えていないことである。また、手段5の液晶層の傾斜方向での視野角特性の設計にも、これらの反射層が示す性質を反映できない。
0022
これは、主に以下の三つの各課題(1-1, 1-2, 1-3 )からなる。
0023
課題1-1 は、反射層の液晶層を往復する場合の入射時と出射時との方向が任意に選べないという課題である。拡散性が有る反射層では、外光の方向によって定まる入射方向と、拡散反射した光が出射していく出射方向の組み合わせを任意に定めて計算する必要がある。この結果、外光がさまざまな方向から表示装置を照明している場合には、たとえ観察方向が一方向であったとしても、様々な方向から入射する光が、観察方向に与える特性を計算する必要がある。このような入射方向と出射方向とを任意に選択可能な設計手段は開示されていない。
0024
課題1-2 は、反射層が偏光依存性を示す場合には従来の設計手法では、適切に計算できないという課題である。実際の金属層やホログラム層では、拡散した光には偏光依存性が生じるが、これを適切に取り扱って液晶表示装置の設定を行う手法は開示されていない。
0025
課題1-3 は、反射層が偏光度を変化させるような場合には、特性の計算が不可能であったという課題である。拡散性を伴う金属層やホログラフ層では拡散に伴う偏光度の変化が生じるが、これを適切にあつかって液晶表示装置の設定を行う手法は開示されていない。
0026
課題2は、補助光源装置には、フロントライト装置やその他の光源であっても、光の放射方向によって光度あるいは輝度が変化する、いわゆる配光特性が存在する。これは、液晶表示装置から見た場合には、補助光源の光源からの光の強度が照射方向ごとに異なった分布(照射方向分布)を有していることとなり、その光を適切に表示に利用しようとすると、必然的に、照明光の方向と観察方位を考慮した液晶表示装置の設計が必要となる。しかし、このような液晶表示装置の設計手法は開示されていない。
0027
課題3は、課題1に帰結する。半透過半反射型液晶表示装置では、反射表示に加えて透過表示を利用するために、反射層に透過部位を設けたり、反射層全体を半透過半反射性のハーフミラーに設定したりすることが必要である。何れの場合であっても、反射率が低下するために、反射型液晶表示装置に比べて反射表示の視認性低下が避けられない。そこで、反射表示の明度を確保すべく手段1を採用するためには、前述の課題1の解決を図る必要がある。
0028
課題4は、ゲストホストモードの明表示と暗表示とのコントラスト比が、概ね5:1程度となるため、並置したRGB等のサブピクセルの特定の色が明表示で他の色が暗表示であっても、暗表示されているサブピクセルの反射光がノイズとなって色純度を劣化させることに原因がある。例えば、並置したRGBのサブピクセルで画素が構成されているときに、Rだけを明表示、GおよびBを暗表示しても、Rサブピクセルの明表示の反射光に、G、Bのサブピクセルの暗表示の反射光が、G、Bのサブピクセルの明表示時の1/5程度だけ重なって、観察者にはこれらが混合したものが観察されてしまうという課題である。
0029
すなわち、上記各従来の、外光を取り入れ、反射することにより画像を表示する表示装置では、表示面に対し半球状の各入射方位から入射する外光において、強度分布(つまり、強度に大小がある場合)を生じており、そのような外光による表示画質の向上を安定化できないという問題を有している。
課題を解決するための手段
0030
本発明の液晶表示装置は、以上の課題を解決するために、光を偏光させる光学素子と、画像を表示するために、上記光学素子からの光を通過させて偏光状態を変調する液晶層と、液晶層を通過した光を拡散して反射し、上記液晶層および光学素子を介して上記光による画像を表示するための反射層とを基板上に有し、液晶層の液晶配向は、入射する光の各方位における強度分布と、反射層および光学素子による偏光特性とを考慮して設定されていることを特徴としている。
0031
上記液晶表示装置においては、液晶層の暗表示を示す液晶配向のうち、液晶層の中央層部分の液晶配向が、入射する光の各方位における強度分布の小さい方向に設定されていることが好ましい。
0032
上記の構成によれば、例えば光学素子として偏光板を用いた一枚偏光板モードの液晶層において、例えば、液晶表示装置の観察者の胴体の方向(つまり、照明光の影となる方向)を、液晶層の電圧反射率特性の暗表示部分に反転特性が現れる方向に設定する。
0033
言い換えると、上記構成では、ツイステッドネマティック配向、ホモジニアス配向等の場合、液晶層の中間層の液晶分子の暗表示時の液晶配向のうち、液晶層の中央層部分の液晶配向が、その配向方向の延長方向に観察者の胴体が配置されるように上記配向方向が設定される。
0034
このことにより、上記構成においては、観察者の胴体といった照明光の期待できない入射方向と視野角依存性が悪い方向とを一致させて、照明光の期待できる入射方向に対する表示特性を最適化つまり表示特性を向上させることが可能となる。
0036
上記の構成によれば、光の偏光により画像を表示するための光学素子を、液晶層上、つまり上記光学素子が液晶層より観察者側に配置されていることにより、良好なコントラストが得られる表示モードである一枚偏光板モードとすることができ、そのような一枚偏光板モードは前述の課題4を解決するためには有効なものである。
0037
また、上記構成では、一枚偏光板モードが偏光を表示に利用するものであるため、ホログラム反射層が拡散性やオフアクシス性を有していても、このホログラム反射層を用いた表示特性を良好に予測して、ホログラム反射層の拡散性やオフアクシス性に合わせた液晶層の設定が可能となる。この結果、上記構成では、色再現性等の表示特性をより改善できる。
0038
本発明の液晶表示装置の製造方法は、前記の課題を解決するために、光源から観察者に至る光路中に、偏光に依存した光透過特性を示し、少なくとも液晶を含む光学異方性素子と、偏光に依存した光反射特性を示す反射層とが配置されている液晶表示装置の製造方法であって、光学異方性素子の偏光透過特性を光の進行方向に算出し、反射層の偏光反射特性を求め、偏光透過特性と偏光反射特性とを表示光路の光の進行順に合成して液晶表示装置の表示特性を求め、上記表示特性から液晶の液晶配向を設定することを特徴としている。
0039
上記液晶表示装置の製造方法においては、光源からの照明光の方向に合わせて入射時の光の方向を選択し、この選択された入射光の方向に基づいて表示特性を求めることが望ましい。
0040
上記方法によれば、光学異方性素子の偏光透過特性を光の進行方向に算出することにより、光学異方性素子の入射時の特性と出射時の特性とを求める際に、光の方向を独立して取り扱うことができる。また、上記方法では、反射層の偏光反射特性を求めるので、反射層の偏光反射特性を適切に取り扱う、つまり偏光による反射率の違いや位相差を適切に取り扱うことができる。
0041
さらに、上記方法においては、偏光透過特性と偏光反射特性とを表示光路の光の進行順に合成して液晶表示装置の表示特性を求めているので、偏光透過特性と偏光反射特性とから適切に全体の表示特性を予測できて、光学異方性素子に光が入射して、反射層で反射し、光学異方性素子を再び通過して出射するまでを適切に取り扱うことができる。これにより、上記方法では、例えば、液晶表示装置の表示特性と、光の配光特性とを考慮した液晶表示装置が得られ、表示品質をより向上できる。
0042
本発明の液晶表示装置の製造装置は、前記の課題を解決するために、液晶の液晶配向を計算する第1計算手段と、液晶配向の結果を記憶する第1記憶手段と、液晶を含む光学異方性素子の配置を記憶する第2記憶手段と、光学異方性素子の配置と液晶配向の結果に基づいて複数の方向に透過する光に対して光学異方性素子の偏光透過特性を算出する第2計算手段と、偏光透過特性を記憶する第3記憶手段と、反射層の偏光依存反射特性を計算または測定する第3計算・測定手段と、第3記憶手段によって記憶された偏光透過特性から全く逆の方向に通過する光に対する透過特性を計算する第4計算手段と、第3記憶手段に記憶された合成偏光透過特性の特定の方向の特性と、第3計算・測定手段によって得られた偏光反射特性と、第4計算手段により求められた合成偏光透過特性の特性の方向の逆に進む場合の特性と、から合成される液晶表示装置の合成反射特性を計算する第5計算手段とを有することを特徴としている。
0043
上記製造装置では、第3計算・測定手段は、Muellerマトリクスを用いるようになっていることが好ましい。
0044
上記構成によれば、前記製造方法を製造装置として実現でき、前記製造方法に記載の作用・効果を備えており、良好な表示特性を有する液晶表示装置を安定に得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
0046
〔実施の形態1〕以下、本発明の具体的な計算手法に関して説明する。また、本手法を利用して液晶層の設計を行った実施の形態に関して説明する。まず、取り扱う液晶層の構造について説明する。本実施の形態1にて扱う液晶表示装置の構造は、図2に示すように、ガラス基板110上に、拡散反射層(反射層)109、透明電極108、配向膜(光学素子)107、液晶層(光学素子)106、配向膜(光学素子)105、透明電極104、ガラス基板103、位相差板(光学素子)102、および偏光板(光学素子)101が、この順にて積層されている。
0047
このような液晶表示装置1では、自然光等の外光2が、偏光板101から入射され、各層や各膜を通って拡散反射層109にて反射され、続いて、上記と逆の光路により偏光板101から出射して表示光3となる。このとき、液晶層106では、画像情報に応じて電界が印加され、液晶層106を通る光の偏光を制御することにより、上記光が出射することを遮断したり、通過させたりして、上記画像情報に応じた画像を再現できるようになっている。
0048
このような液晶表示装置1の構造上の特徴は、光学異方性媒体として取り扱いが可能な光透過体である偏光板101ないし透明電極108が、拡散反射層109上に配置されていることである。拡散反射層109は、上部より入射する外光2に対し、拡散性を付与し、かつ、反射性も示すものである。
0049
光学異方性媒体のうち、偏光板101、位相差板102、液晶層106は、偏光によって異なる光透過特性を示し、他の部材と比べて比較的大きな光学異方性を示すものである。
0050
このとき、偏光板101は、偏光方向によって光透過率が大きく異なるという異方性を有している。また、位相差板102は、媒体の性質と光学軸方向とによって光学的に一軸性結晶と同じであったり、二軸性結晶と同じであったりと、さまざまな光学的な性質を示すものである。さらには、液晶層106は、任意の液晶組成物によって構成された層状の媒体であり、その液晶配向は任意に選択できる。ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、TN配向、STN配向、ハイブリッド配向、その他の任意の液晶配向が使用可能である。
0051
また、図示しないが、偏光を表示に利用したものとして、液晶組成物に二色性色素を混入して構成されるGHモードであってもよい。GHモードでは、位相差板102は使用せず、偏光板101と二色性色素を混入した液晶層106でホモジニアス配向したものの組み合わせであるハイルマイヤー型GHモードであってもよく、偏光板101や位相差板102が使用されずに、二色性色素を混入した液晶層106で 180度以上のツイスト配向したものだけで表示を行うホワイトテイラー型GHモードであってもよい。
0053
また、光学異方性媒体のうち、透明電極104、配向膜105、配向膜107および透明電極108は、通常は等方性であるが、直上や直下の媒体と異なる屈折率を有していて、光が表示面法線に対し傾斜した方向に透過する場合には、界面で偏光依存性が発現する。
0054
これらも光学異方性媒体として取り扱うことが可能である。透明電極108は、透明電極104と共に液晶層106に電圧を印加するために使用されるが、透明電極108の電極としての作用は、拡散反射層109がこれを兼ねていてもよい。この場合には、透明電極108は使用されず、考慮する必要は無い。
0055
以下、このような構造の液晶表示装置の光学特性を計算する手法に関して、順を追って説明する。
0056
(電磁波のノーテーション)本発明での式の表現に用いる電磁波の表記についてまず説明する。時刻をt、光の進行方向にとった座標をzとし、波数ベクトルの大きさをkとするような平面波を記述する。複素数を〜で区別して、複素数表示での電界と、実際の実数電界との関係を式(1)に示す。
0057
0058
ここで、Pは入射面に含まれた面内の成分で、Sは入射面に垂直な成分であり、偏光の電界の符号は図3(a)および図3(b)に示したような符号に定める。つまり、第一軸をP、第二軸をS、第三軸をk方向とする右手系に定める。また、P成分と、S成分との間の位相差は、式(2)に記載のように定義する。
0059
0061
(偏光の取り扱い)金属層による反射では、偏光に依存した反射特性が実現する。金属層が平面である場合を考えて、式(3)で定義されるようにS偏光の反射係数rS と、P偏光の反射係数rP を考える。
0062
0063
ここで、拡散反射層109への入射光の電界をincident、出射光の電界をreflected で区別した。金属層の性質は、式(4)のように定義されるようなrP をrS で除して絶対値をとったものがtan ΨとなるようなパラメータΨ、および偏光間に拡散反射層109が与える位相差Δを用いて特徴付けられる。以下、この二つの数値を偏光パラメータと呼ぶことにする。
0064
0066
(計算に必要な物性値)これらの偏光パラメータは、通常の薄膜における光学特性計算手法である有効フレネル係数の計算や特性マトリクス法やその他の方法によって求めることも可能である。この場合、予め、入射側媒体、拡散反射層109、拡散反射層109裏面の媒体に関して複素屈折率を測定し、拡散反射層109の膜厚を求める必要がある。
0067
(Jones計算法による拡散反射層109特性の記述)このような偏光に依存した反射媒体の特性は、偏光解消が無い場合、通常の偏光計算手段であるJones 計算法では、Jonesマトリクスによって記述される。
0068
Jones計算法では、偏光はJonesベクトルと呼ばれる複素成分の2次元列ベクトルEで表現される。このベクトルの基底ベクトルは、通常、直交する直線偏光であるP偏光と、S偏光が選ばれる。これらの偏光方向を表す基底ベクトルをそれぞれeP 、eS とすると、前述のJones ベクトルは、式(5)のように表される。
0069
0070
このとき、Eをこれらの各基底ベクトルの成分で成分表示して、式(6)のように表される。
0071
0072
このP成分とS成分とは、式(1)に記載されるような波の位相を表現する因子を含んでいてもよい。しかし、実際に観察される量が式(7)にて示される強度Iであって、P成分とS成分とに共通の位相因子を掛けても観測結果に差がでないことから、多くの場合、P成分とS成分との共通の因子を除いて表示する場合が多い。
0073
0074
また、Jones計算法では、一般の光透過体や反射体といった光学素子は、このJonesベクトルで表された入射光および出射光の間の線形作用素として記述できる。つまり、光学素子の作用素をJとし、入射光および出射光のJones ベクトルをそれぞれEin、Eout とすると式(8)のように記述できる。
0075
0077
0078
なお、これ以降、Jones計算手法では、数値が常に複素数である。したがって、複素数の表示を省略する。
0079
(拡散反射層109のJonesマトリクス表示)拡散反射層109が式(4)の偏光パラメータを有する場合の拡散反射層109のJonesマトリクスは、式(10)のように記述できる。
0080
0081
このとき、入射光のJonesベクトルEinと、出射光のJones ベクトルEout とは、式(11)のように記述できる。
0082
0083
この様に、平坦な拡散反射層109での偏光依存性である偏光パラメータは、Jones計算法で取り扱いが可能である。
0084
(実際の拡散反射層109での拡散やオフアクシスに伴う偏光変化)液晶層106を通過した外光2は、金属反射層1091の微小な局所平面の法線方向にしたがって反射されたり、ホログラム反射層1093の局所グレーティングベクトルの方向にしたがって反射される。このとき、拡散反射特性は、この局所的な法線方向やグレーティングベクトルの方向の方向分布にしたがって決定される。
0085
この個々の外光2の反射では、拡散反射層109の局所反射面に斜入射する正反射が起きているため、この光線の上記局所反射面に対する入射面内のP偏光と入射面に垂直なS偏光との間に振幅差や位相差が生じる。つまり、偏光依存性の反射を示す。これは、金属反射層1091であっても、ホログラム反射層1093であっても生じる現象である。
0086
特に、オフアクシス性の拡散反射層109を使用した場合には、たとえ正面に位置する観察者に対しても、表示に使われる主な光は、拡散反射層109に対して斜めの方向から入射し、正面の方向に反射される光である。したがって、オフアクシス性の拡散反射層109では、主な光に対しても、傾斜方向から光が入射しており、偏光依存性の反射が生じる。
0087
この計算を実行するためには、任意の光の入射方向から光が入射して、任意の光の出射方向に光が出射していく場合に関して、拡散反射層109や液晶層106の光学特性を計算できる必要がある。
0088
(拡散反射層109における光線近似)実際の拡散反射層109においては、図4に断面を示したように、曲面形状の金属層等が利用されている。図4の凹凸曲面を有する金属層は、凹凸形成層1092によって形成された凹凸面に金属反射層1091が形成され、その上に平坦化層1090が形成されている。平坦化層1090が光学的に等方的な透明樹脂で作製されている場合であっても、金属反射層1091に対して斜入射する光線に対しては、金属反射層1091が偏光依存性を示す。したがって、拡散反射層109は偏光依存性を示す。また、図示しないが、平坦化層1090が省略された構造のものであっても、同様に扱うことが可能である。
0089
図4に示したような構造のものを適切に取り扱うためには、既に特開平11−326615号公報に記載のように、拡散反射層109の金属面を仮想的に微小領域に分割して取り扱うことが有効である。このとき、この微小領域では、金属反射面は平面形状と見なすことができる。図5に、この概念を示す。拡散反射層109における金属反射層1091は凹凸形状を有しているが、これを有限要素に分割して、各要素を代表する微小な局所反射面1097、その局所反射面1097の局所反射面法線ベクトル1096、拡散反射層109全体における反射層法線ベクトル1095を考えることにより、その局所反射面1097がたとえ平面であったとしても、要素数を十分に増やすことで、拡散反射層109全体の特性が近似できる。以下、さらにこの局所反射面1097の方向と反射特性とに関して、その取り扱いを説明する。
0090
(方向の関係:金属反射層1091の場合)図5に示すように、この局所反射面1097の法線方向である局所反射面法線ベクトル1096と表示装置の法線方向を示す反射層法線ベクトル1095とは、一般には異なった方向となっている。また、光の入射方向と出射方向の何れか一方は、他方とこの局所反射面1097の方向とによって定められる。このような局所反射面1097が入射光と出射光との反射を実際に起こしていると見なして取り扱うことができることを光線近似と呼ぶことにする。
0091
この関係を図6に図示する。局所反射面1097を示す局所平面の法線方向を用いて、入射光が鏡面変換されて出射光となる現象を記述すると、入射光の方向を定める単位光線ベクトル1098と出射光の方向を定める単位光線ベクトル1099をそれぞれ、nin、nout とするとき、局所反射面1097の単位法線ベクトルnm は、式(12)のように表記できる。
0092
0093
つまり、図5の拡散反射層109に対する入射方向と出射方向とを決めることが、そのような反射を生じさせる局所反射面1097の方位を定めることを意味する。それに伴って、局所反射面1097に対する入射角θが定まる。これは、図6から明らかなように、式(13)によって求まる。
0094
0095
(偏光座標軸の指定)次に、このような拡散反射層109での偏光の取り扱いに関して図7に基づいて説明する。局所反射面1097の法線ベクトル(不図示)と光の光線ベクトルとが定まると、この局所反射面1097に対する入射面が定義される。これは、局所反射面1097の法線ベクトルと光の光線ベクトルとを含む面である。この面に対する面内偏光と面直偏光の方位を、それぞれ、Pi偏光およびSi偏光と呼び、この様に選んだ偏光の座標系をPiSi系と呼ぶことにする。
0096
これに対して、入射時および出射時の光線ベクトルを含むような面であって、図7のxy面に対して垂直となるような面に対する面内偏光と面直偏光の方向の座標系をPS系と呼ぶことにする。なお、図7のxy面は巨視的な拡散反射層109の平面と平行である。
0097
(平面反射層で近似する場合の偏光座標軸と、利用に適した座標軸)ところで、後述する液晶層106の偏光計算では、PS系で計算を行う方が都合が良い。仮に、PiSi系で液晶層106の計算を実行しようとすると、光の入射方向と出射方向とを指定してからでないと液晶層106の計算が実行できない。
0098
しかしながら、PS系では、入射時と出射時の液晶の特性を分離して計算が実行できる。つまり、入射方向と出射方向との組み合わせを考慮する前に計算可能となるという利点が生じる。したがって、液晶層106の計算では、PS系が都合が良い。
0099
この液晶層106との組み合わせを考慮した場合には、PiSi系で表現された拡散反射層109の特性も、PS系で表現することが必要である。一方、金属反射層1091の偏光反射特性は、PiSi系で表現した場合に、平面の値で近似できる。したがって、この近似の結果を、より計算に適したPS系で表現する必要が有る。
0101
0102
また、PS系における入射光および出射光のS偏光の方向は、光の入射方向および出射方向と、巨視的な拡散反射層109の平面によって定められる。ここで、図7に記載のxyz座標系に対して通常の定義で定める極座標表示でnin、nout を表現すると有用である。これらの極座標表示である(θin、φin)、(θout 、φout )を用いると、PS系での入射光のS偏光の単位方向ベクトルvin、および出射光のS偏光の単位方向ベクトルvout は、xyz座標の成分表示をすると、式(15)に示したものとなる。
0103
0104
これを利用して、PiSi系のSi偏光方向nSiと、PS系のS偏光の方向vinまたはvout とがなす角度を求め、PiSi系とPS系との座標回転を行う。つまり、入射時のS偏光とSi偏光との間の角度ηin、Si偏光と出射時のS偏光との間の角度をηout とすると、これらは式(16)によって計算される。
0105
0106
この角度は、図8に示すように、座標系の回転角を表しているので、Jonesマトリクスも、回転変換によって座標系の変換が可能となる。PiSi系のPi軸およびSi軸方向の単位ベクトルを基底ベクトルにして表現したJones マトリクスをJi とすると、入射時と出射時ともにPS系となるように表現された作用素であるJones マトリクスJは、式(17)によって求まる。
0107
0108
このようにして、局所反射面1097に対して定められる拡散反射層109の性質が、拡散反射層109全体のPS系で表現される。
0109
以上のように、図2に示すような液晶表示装置において、空気中での入射方向および反射方向(出射方向)を定めると、媒体中での入射方向および反射方向が定まる。これを式(12)に代入すれば、媒体中での局所反射面1097の方位を定めることができる。
0110
また、式(13)に代入すれば金属反射層1091への入射角が求まる。このような入射角での金属反射層1091の特性を局所反射面1097での特性と見なして、PiSi系での拡散反射層109の特性が式(10)で求まり、式(17)にて与えられる座標変換によってPS系で表現される。
0111
(液晶層106の計算手法)次に、液晶層106の偏光透過特性の計算について説明する。表示装置に使用する液晶層106は、通常、配向処理された基板に保持されているネマティック液晶組成物の薄膜層である。この液晶層106の厚みは大きくとも10μm程度であって、配向欠陥が無いような一様配向では、光の散乱をほとんど生じない。従って、従来の手法と同様に、光の拡散性を考慮することなく、平面波で光を取り扱った液晶層106の偏光光学計算を実施することで、十分にその特性が予測できる。
0112
(液晶層106の特性計算)液晶層106の光学特性計算は、PS系で計算し、任意の入射方向および任意の出射方向に伝播する光に対して、これらの組み合わせを考慮する。実際には、計算時間の制限から、入射方向や出射方向を有限数に分割し、その分割区域を代表するサンプル方向に対して計算を実施する。この計算を実行するに当たり、通常の液晶の光学特性を計算する手法が全て使用可能である。
0113
また、液晶層106の配向計算には連続体理論に基づく有限要素法が有効である。多くの場合には、液晶層106の厚み方向のみの関数として液晶配向場が記述できる場合を取り扱う、いわゆる、一次元モデルの計算によって良好な計算が実施できる。必要に応じて、液晶層106の層平面方向の位置についての配向の依存性を考慮した二次元や三次元の連続体理論およびその有限要素法によって液晶配向を求めてもよい。
0114
次に、光学特性は、偏光特性を適切に計算できる手法が使用できる。この場合、一軸性光学結晶の偏光計算手法を応用して、液晶層106を有限数の薄膜からなる一軸性光学結晶の積層体で近似し、その各層の光学特性を偏光光学計算法で計算して液晶層106全体の光学特性を近似計算する。使用できる偏光光学計算法は、Jonesマトリクス法やそれを傾斜した方向に拡張した拡張Jones マトリクス法、あるいは、光の界面反射による効果を適切に計算可能なBerrmannの4×4計算法等である。
0116
(逆向きの液晶の偏光特性)本願発明者らの検討によると、光学異方性媒体の光学計算を実行する際には、入射時か出射時か、何れか一方の計算を実行し、残りは他から換算できる。以下に、その理由を説明する。
0117
ある光の伝播方向に対してJonesマトリクスで表現された光学素子は、一般に、光の方向を反転させた場合のJones マトリクスに書き換え可能である。ある媒体を光が通過する際に、Jones マトリクスJ(F) とし、同じ媒体を全く逆の方向に通過する際のJones マトリクスJ(R) とすると、波数ベクトルkが逆転するために、式(18)の関係がある。
0118
0119
つまり、J(F) が計算できている状態では、容易にJ(R) が計算可能である。なお、Tは、直後の行列の転置行列を取ることを示している。この性質により液晶層106の偏光光学計算の負荷を減らすことが可能になる。つまり、光学異方性媒体の光学計算を実行する際には、入射時か出射時か、何れか一方の計算を実行し、他方は式(18)から換算するだけで十分である。
0120
(局所反射面の存在割合)実際の拡散反射層109では、拡散反射性を示すために、さまざまな方向に対し、その形状に応じた反射光強度分布を有する反射が実現する。この拡散反射層109の形状は、その場所ごとに異なった方向を向いた局所反射面1097で近似的に表すことができる。この場合には、局所反射面1097の方向分布と、入射光分布とが、反射光強度分布を決定する。
0121
しかし、本実施の形態では、反射光強度分布の取り扱いを簡略化している。その簡略化は、表示装置の入射方向および出射方向の組み合わせ毎に、その方向の組み合わせに応じて定まる局所反射平面だけが常に同じだけ存在するものと仮定した(仮定1)。この仮定により、入射方向および出射方向の組み合わせを決めると、その組み合わせが入射方向および出射方向となるような反射面の存在が保証され、光学計算が実行可能となる。
0122
以上のような具体的計算方法に基づき、金属反射層1091による拡散反射層109および一枚の偏光板を使用した液晶設計での反射型液晶表示装置の拡散表示時の特性計算を実施した。
0123
実施例1(オフアクシス反射に対して計算した例:金属層の例)
(構造の説明)図2に示すような液晶表示装置の表示特性の計算を実施した。ここで、液晶層106は、偏光板101および位相差板102の光学作用と共に用いられて、1枚の偏光板で表示を行う1枚偏光板モードであって、金属層で作製された凹凸を有する金属反射層1091によって液晶層106に入射した光が拡散反射され、さらに、液晶層106を通過して表示装置を出射して表示光3となり、観察される。計算に用いた各パラメータを表1に示す。
0124
0125
(各光学部材の説明)偏光板101は、消光比が無限大の理想偏光フィルムであり、位相差板102であるλ/4板は、ポリカーボネート製延伸フィルムによって作製されたリタデーションが 160 nm の場合の特性を使用した。また、液晶層106は、代表的なフッ素系液晶組成物であるメルク社製(ZLI-4792)の物性パラメータ(弾性定数、誘電定数、光学定数等)を使用した。液晶層106の層厚は 1.6μmとし、液晶層106のΔnと液晶層106の層厚dとの積であるΔnd値は 162 nm に設定した。
0126
また、図9に示すように、液晶の配向膜105に処理する配向処理方位113は、液晶の配向膜107を処理する配向処理方位114に対し反平行となっている。上記位相差板(λ/4板)102の遅相軸方位112は、偏光板の吸収軸方位111と互いに45°の角度を成すように、かつ、各配向処理方位113、114に対し、それぞれ直交するように、配置した。
0127
(拡散反射層109の特性)拡散反射層109は、アルミニウムの実測の複素屈折率の数値に基づき、薄膜の計算手法である特性マトリクス法によって求めた。膜厚は 200 nm で、屈折率1.5の透明媒体で挟まれている条件での偏光反射特性を求めた。計算によって特性を算出したのは、局所反射面に任意の角度で入射する光に対して、特性マトリクス法の計算で容易に偏光反射特性が計算可能なためである。任意の金属であっても薄膜の状態での複素屈折率を別途測定しておけば、同様の計算が可能である。
0129
0130
0131
(計算結果の説明)計算結果は、表示装置の示し得る最大の反射率が 100%となるように規格化して表示している。すなわち、仮に偏光板やその他の部材も吸収が全くなく、拡散反射層109の反射率が 100%であるときには、 100%となるように表示している。
0132
図10は、方向条件D1での反射率の電圧依存性を示すものである。正面では、電圧1.6Vで反射率が36%から38%であったが、電圧 5Vでの反射率は、条件D2ないし条件D5のそれぞれの方向条件で、図11に示すように、0.98%、3.52%、1.70%、0.07%となった。このように、方向によって暗表示の反射率が異なっている。その結果として、明表示の反射率を暗表示の反射率で除して得られるコントラスト比は、方向条件によって大きく異なっている。
0133
同じ方向への出射光であって、入射光の傾斜角が同じであっても、光の入射方向により大きくコントラスト比が異なるのは、入射時の液晶層106を傾斜して光が通過するためであり、本発明の計算方法によって傾斜した方向での偏光依存性と正面の方向に出射する場合の偏光依存性が適切に計算されているためである。以上に示したように、液晶層106の法線方向から傾斜して入射した光に対して適切に表示特性の計算が実施されたことが判る。
0134
〔実施の形態2〕以下に、体積ホログラム反射層1093の場合の計算手法に関して説明する。また、本手法を利用して液晶層106および偏光板・位相差板の設計を行った実施例についても以下に説明する。
0135
(取り扱う液晶層106の構造)本実施の形態2で扱う液晶表示装置の構造は、図2と同様であるが、上記の実施例1とは拡散反射層109が異なる。その構造上の特徴は、図12に示すように、拡散反射層109が体積ホログラムによって作製されていることである。拡散反射層109が体積ホログラムによって作製されている場合であっても、上部より入射する外光2に対し、拡散性を付与し、かつ、反射性も示す。以下に、特にホログラム反射層1093の取り扱いを金属反射層1091の場合と比較して説明する。
0136
(偏光の取り扱い)体積ホログラム層等による反射では、波長によって大きく異なった反射特性を示すという特徴があり、また、金属層以上に偏光に強く依存した反射特性が実現する場合がある。ホログラムの屈折率層構造がガラス基板110に対して傾斜した構造を備えず、グレーティングベクトルがガラス基板110に対して垂直である場合には、金属層の場合と同様、通常のエリプソメトリーで測定されるような、S偏光の反射係数rS と、Ψ、およびΔを用いて特徴付けられる。
0137
このホログラム(オンアクシスホログラム)では、金属反射層1091と同様にエリプソメトリーで特性が実測可能である。このように拡散反射層109の偏光パラメータは、ホログラム反射層1093であっても実測可能である。また、ホログラム反射層1093であっても、式(10)にしたがって、偏光反射特性をJones計算法の形式に書き直すことができる。
0138
(取り扱うホログラムの構造)図12に示すように、ホログラム反射層1093には、場所毎に異なる層法線方向を有する多層膜状の屈折率変調構造が作製されている。図12のホログラム反射層1093は、典型的には、接着層1094を介してガラス基板110上に配置されており、ホログラム反射層1093上に配置された平坦化層1090を備えている。
0139
これによって、図12に示したように、特定方向から拡散反射層109に入射する光を拡散反射させる。このとき、入射光は、一般には、局所的なホログラム層法線に対して傾斜した方向からホログラム反射層1093に入射する。この場合も、通常の誘電体多層膜鏡と同様に、局所的なホログラム反射層1093に対して傾斜して入射する光は、偏光依存性を示す。また、図4や図5に記載の金属反射層1091に対して示したような凹凸形状を作製して、この上に誘電体多層膜鏡を蒸着法で作製したような拡散反射層109に対しても、本実施の形態の手法が使用できる。
0140
(ホログラム反射層1093にも適用可能な手法)拡散性を有するホログラム反射層1093では、金属反射層1091と同様に光線近似が適用できる。これは、図12でホログラム反射層1093の曲面状を、部分部分で曲率のない平面の多層膜構造によって近似可能であることに対応している。これらを適切に取り扱うためには、この局所構造を通常の多層膜として計算することが有効である。
0141
以下、さらに、この局所構造の多層膜面の方向と反射特性とに関してその取り扱いを説明する。
0142
(方向の関係:ホログラム反射層1093の場合)ホログラム反射層1093では、体積ホログラムのグレーティングベクトルが、場所により異なった方向や角度で傾斜していることによって拡散反射が実現している。このとき、金属反射層1091の場合と異なり、反射は特定の面だけではなく、屈折率の層状変調構造の各層から反射される。この様子を図13に示す。ホログラム反射層1093の場合には、金属反射層1091の場合のような局所反射面ではなく、厚み方向にわたって反射が実現するため、局所反射構造1100を考える。
0143
ホログラム反射層1093であっても、光線近似を考えると、入射光方向ベクトル1098は、ホログラム反射層1093によって反射されて出射光方向ベクトル1099となる。つまり、ホログラムの層状構造の法線ベクトルとなるグレーティングベクトル1101を、金属反射層1091の場合における局所平面の法線方向と同様に取り扱うことができる。つまり、入射方向および出射方向に応じたグレーティングベクトルの方向は、式(12)を使用すればよい。また、ホログラム反射層1093に対する入射角の求め方、局所反射面でのPi軸およびSi軸の特性から通常のP軸およびS軸での表現への変換方法は、凹凸形状の金属反射層1091の場合と同様である。
0144
(ホログラム反射層1093の作製過程の説明)体積ホログラムの実際の作製工程では、露光時の光強度によって屈折率が変化するような感光性樹脂層が、レーザー光に代表されるコヒーレント光によって干渉露光される。露光工程では、光は参照光と物体光の二光束に分けて互いの光束間でのコヒーレンスを保ったまま未露光の感光性樹脂層に照射され、感光性樹脂層中で干渉構造を形成する。このときの干渉構造が感光性樹脂層に図13に示したような屈折率分布として記録され、三次元空間内で屈折率が一方向に周期的に変化し、他の二方向には一様となるような分布が実現する。この層状の屈折率の分布によって、作製後にはブラッグ反射が実現し、ホログラム反射層1093として作用する。
0145
(ホログラムの層間隔の定め方)ここで、上記の局所反射構造1100に対して、どのような層間隔を想定するのが適切であるか、説明する。体積ホログラムでは、その層間隔によって偏光反射特性の波長依存性が異なったものとなる。その層間隔は、ホログラム層の露光時の干渉構造によって定まる。その干渉構造は、干渉露光時の波長や、光束の照射方位に依存している。したがって、干渉露光時の波長および光束の方向を定めれば、実際のホログラムの構造を反映した層間隔が求まり、適切な反射特性の計算が可能となる。
0146
ここで、ホログラム反射層においても、グレーティングベクトルKの方向は、実施の形態1で説明したように、光の入射方向および出射方向に合わせて決定する。この場合、グレーティングベクトルKと、そのグレーティングベクトルKを作り出す物体光と参照光には、特別な関係がある。つまり、露光時の物体光と参照光の光のホログラム反射層1093中での波数ベクトルをそれぞれkref 、kobj とすると、グレーティングベクトルKは、式(19)のようにして求められる。
0147
0148
ところで、Kは方向だけが判っていて、kref は参照光が平行光である場合には、大きさと方向とが判っている。また、物体光と参照光とが同じ波長の光であるために、kobj はkref と大きさが等しい。これらの条件と式(19)より、kobj の方向、およびKの大きさが求まる。このようにしてグレーティングベクトルKの大きさを求めると、式(20)のようになる。
0149
0150
ここで、LはグレーティングベクトルKが波数ベクトルとなるような振動構造における周期で、屈折率変調構造の周期である。λexp はホログラム作製時の干渉露光に用いる光の(真空中での)波長で、nexp はホログラムの感光性樹脂層における露光波長での屈折率である。θH は参照光の波数ベクトルとグレーティングベクトルのなす角である。
0151
以上のようにして、式(12)でnm を求めるようにして既に方向が定まっているグレーティングベクトルKは、参照光の方位を定めることによって、その大きさまで求まる。つまり、屈折率変調層の振動周期Lが求まる。
0152
(チャープ構造の表現)実際のフォトポリマー(感光性樹脂)を使用した体積ホログラムによるホログラム反射層1093では、最大屈折率と最小屈折率との差である屈折率の変調量は、大きくとも0.1程度である。このような屈折率変調幅の小さい屈折率分布では、ホログラム反射層1093の反射特性は非常に狭い反射波長帯域しか得られない。このことは、可視波長帯域の一部だけが反射表示に使用されており、明るい表示が得られ難いことを意味する。
0153
そこで、屈折率振動の周期をホログラム反射層1093の厚み方向の位置によって変化させて反射帯域の拡大を図るように、いわゆるチャープ構造を採用した場合を想定した。この様子を模式的に図14(a)および図14(b)に示す。図14(a)のホログラム反射層1093は、液晶層106に近づく側に設けたホログラム反射層1093aと、液晶層106から遠い側に設けたホログラム反射層1093bとを有している。ホログラム反射層1093aと、ホログラム反射層1093bとの間での屈折率変調周期は、図14(b)に示すように、互いに異なっている。
0154
このように、ホログラム反射層1093の膜厚方向の位置によって屈折率変調周期が異なることによって、ホログラム反射層1093aと、ホログラム反射層1093bとで異なる波長に対して反射が実現し、反射波長帯域が広がる。
0155
本実施の形態では、図14(a)に示すように、ホログラム反射層1093の液晶層106側では、屈折率振動周期が長く、液晶層106側から離れる(つまり接着層1094に近づく)にしたがって、短くなるように設定した。
0156
以後の計算では、最も接着層1094に近いホログラム反射層1093では、チャープ処理以前の屈折率振動周期が実現したものとし、最も液晶層106に近いホログラム反射層1093の表面では、周期がチャープ処理以前の 115%程度になるように定めた。
0157
グレーティングベクトルがz軸方向に対して傾斜している場合にも、傾斜していない場合と同様の比率でz座標の値によってチャープ構造が実現しているとした。また、実際のホログラム反射層1093では、拡散性モノマーの不均一分布によってチャープ構造が実現可能である。
0158
(ホログラム反射層1093の特性計算)ホログラムの反射特性は、非常に多数の層からなる誘電体多層膜の近似で計算される。具体的には、図14(b)にて示したホログラム反射層1093の各位置での屈折率の振動を、屈折率が一様な薄い層の積層体で近似する。つまり、図15(a)に示す実際の屈折率の振動を、図15(b)に示すような屈折率が一様な薄い層の積層体で近似する。これによって、既存の薄膜の反射特性の計算手法である特性マトリクス法によって光学特性が計算可能である。
0159
なお、近似による誤差を小さくするためにはホログラムの屈折率振動を忠実に再現するように十分薄い多数の積層薄膜で近似する必要がある。しかし、ホログラム反射層1093の偏光反射特性の計算時間は、この積層数の増大に応じて増える。したがって、計算時間と精度との兼ね合いにより決定する。本願発明者の検討では、ホログラムの屈折率振動を、振動周期当たり10層ないし14層程度で近似すれば十分であった。
0160
(局所反射面1097の存在確率に関する仮定)実施の形態1で用いた仮定1と同様に、ホログラム反射層1093においても、それぞれの表示装置の入射方向および出射方向の組み合わせ毎に、その方向の組み合わせに応じて定まるグレーティングベクトルKが 100%の割合で存在するものと仮定した(仮定2)。
0161
(液晶層106の計算手法)また、液晶層106の計算手法は、金属反射層1091の場合と同様である。
0162
実施例2(オフアクシス反射に対して計算した例:ホログラムの例)
図2の拡散反射層109が、図12に示すホログラム反射層1093である場合について、液晶表示装置の表示特性の計算を実施した。液晶層106の配置は、実施例1と同様、図9に示したものとした。実施例1と異なる条件は、上記拡散反射層109だけであり、これらを表4に示す。
0163
0164
(ホログラム反射層1093の特性)ホログラム反射層1093は、膜厚が20μm、屈折率平均値が 1.5、屈折率の最小値と最大値との差は、0.09とした。体積ホログラムのホログラム反射層1093は、作製手法を考慮して層間隔を定めた。つまり、RGBの三色の反射層が画素毎に作製されることを想定して、RGBのそれぞれの反射層の作製時の露光波長を 568 nm 、488 nm、407 nmとした。このような三色の着色反射層が、表示面の面積割合として1/3づつの面積で配置されているとした。
0165
参照光の照射方位は、何れの波長でも、30度傾斜し、ガラス基板110の裏面から照射されるとした。つまり、図14(a)に示す座標軸の定め方で、(x,y,z)=(0,0.5,0.866)によって表されるベクトル(つまり、極座標表示による場合には、傾斜角θが30度、方位角が90度の方向を向いたベクトル)が参照光の空気中での光線の向きとなるようにした。露光波長におけるホログラム層の露光前の屈折率は、何れの場合も 1.5とした。
0166
(液晶層106との組み合わせ)実施例1で用いた表2と同じ方位の条件に対して、電圧反射率曲線を計算した。その結果を表5に示す。
0167
0168
(計算結果の説明)計算結果は、実施例1と同様、表示装置の示す最大の反射率が 100%となるように規格化して表示している。図16は、方向条件D1での反射率の電圧依存性を示すものである。正面では、電圧1.6Vで反射率が 12.95%、電圧 5Vで反射率が0.22%となってコントラスト比が58:1であった。ここで、図10に比べて反射率が小さくなっているのは、計算に用いた550 nmの波長では、R画素とB画素は、ほとんど反射せず、G画素のみが高い反射を示し、この三種類の画素の平均値を計算しているためである。
0169
また、図17の曲線C8に示した方向条件D5の場合には、550 nmの波長に対して、R画素およびB画素だけでなく、G画素の反射率も小さな値となるために、全体の反射率がさらに小さくなっている。参照光が一定の条件であっても、方向条件が異なる場合にはグレーティングベクトル方向が異なる。このため、方向条件によって、層間隔が異なり、したがって特性の波長に対する反射率が変化する。これは多層膜反射の性質であり、曲線C8に示される反射率が小さいことは本発明の計算手法がこれを適切に取り扱っている証拠である。
0170
また、実施例1と比較すると、ホログラム反射層1093が偏光特性を示すために、コントラスト比が変化している。方向条件D1では、金属反射層1091およびホログラム反射層1093の何れの場合も、反射層方向がガラス基板110に垂直になっている場合であり、何れの反射層1091、1093でもP偏光とS偏光との間での区別がなくなり、全く同じコントラスト比である58:1となっている。
0171
しかし、方向条件D2からD5では、方向条件D3が最も低いコントラスト比を示し、方向条件D5が最も高いコントラスト比を示す点では類似の傾向が認められるものの、その数値が異なっている。つまり、金属反射層1091でのP偏光とS偏光との間に生じる反射率の違いや位相差と、ホログラム反射層1093のそれらとは異なっており、これが、表示特性に影響している。以上に示したように、ホログラム反射層1093を使用した場合であっても、適切に表示特性の計算が実施できることが判る。
0172
〔実施の形態3〕
(反射層の偏光解消特性)一般には、拡散反射性の反射層では、偏光度が保存されず、多くの場合には、偏光が解消する方向に変化する。これは、偏光が非偏光(自然光)に近づく現象で、偏光解消とも呼ばれ、反射層で複数回反射する多重反射による偏光の攪乱や、微視的な部分毎の光学的性質の違い等に基づく。現実に即した設計を実行するには、これらの現実の反射層を良好に取り扱い、表示装置全体の性能を予測する必要がある。
0173
(偏光度による光の分類)これらの非偏光を含めた一般の偏光の取り扱いは、Schurcliffによる「偏光とその応用」(原著:Polarized Light 、Harvard University Press 1962 、和訳:共立出版、1965)に詳細な記述が在る。ここから、本実施の形態の説明に必要な内容を適宜引用して説明する。
0174
偏光度は、光に対して定まる属性の一つであり、その光の偏光の度合いを示す量である。これが0の場合には全く偏光していない光(自然光)であり、1の場合には、消光比が無限大の理想的偏光子を通過した直後の光のように、完全に偏光している(完全偏光)。また、偏光度が0より大きく1未満の場合には、部分偏光と呼ばれている(表6を参照下さい)。
0175
0176
(反射層の偏光解消性)反射層による偏光解消とは、反射光の偏光度が入射光の偏光度より低下する現象である。例えば、直線偏光や円偏光、あるいは任意の楕円偏光だけからなる偏光度1の完全偏光を反射層に入射させた場合に、出射光の偏光度が1未満になってしまうような現象である。
0177
(偏光度を取り扱うことの必要性)偏光度が1の完全偏光は、直線偏光であっても、円偏光であっても、あるいは楕円偏光であっても、全て適当な位相差板102の使用による位相差制御によって、相互に変換可能である。しかし、いったん偏光度が1でなくなった場合には、位相差の制御だけで偏光度を回復することは不可能となる。
0178
反射層が偏光解消性を有するとき、これを偏光板を利用する液晶表示装置に適用すると、黒表示が困難になる。黒表示が困難な場合には、白黒表示でコントラスト比が悪化するだけでなく、カラー表示では色再現範囲の悪化を招く。このため、良好な明暗表示および良好な色彩表示のために偏光度が適切に取り扱える設計手法が必要となる。
0179
(偏光度が取り扱える計算方法:Jones計算法とMueller 計算法との比較)このような偏光度は、Jones 計算法では表現できず、表7に示すMueller 計算法を用いることで、適切に考慮可能である。
0180
0181
Jones 計算では、先行する実施の形態で説明したように、光の性質は、それぞれが複素数の2成分の列ベクトル(Jonesベクトル)で記述され、拡散反射層109や透過媒体といった光学媒体(光学素子)の性質は、それぞれが複素数の2行2列の行列(Jonesマトリクス)で記述される。つまり、反射後の偏光状態は、媒体を表現するJones マトリクスを、入射光を表すJones ベクトルに作用させて得られるJones ベクトルで表現される。
0182
一方、偏光度が取り扱えるMueller計算法では、光は実数4成分の列ベクトル(Stokesベクトル)で記述され、光学媒体の性質は実数要素の4行4列の行列(Muellerマトリクス)によって記述される。この場合も、反射後の偏光状態は、媒体を表現するMueller マトリクスを、入射光を表すStokesベクトルに作用させて得られるStokesベクトルで表現される。
0183
(Stokesベクトルの意味)直線偏光の方位の表記を図3に合わせ、P偏光方位を基準(0°)としてS偏光方位に向かって正にとなるように偏波面方位を角度で指定した場合、Stokesベクトルは、前述の「偏光とその応用」に記載のように、光の強度を表す第0成分(S0 )と、偏波面方位0°の光の成分である第1成分(S1 )、偏波面方位45°の光の成分である第2成分(S2 )、および右廻り円偏光成分を表す第3成分(S3 )によって表現される四次元の列ベクトルで表現される。
0184
例としては、Sを正の定数として、全く偏光成分を備えない自然光は、 T(S、0、0、0)、偏波面方位90°の直線偏光は、 T(S、−S、0、0)、完全な右廻り円偏光は、 T(S、0、0、S)となる。なお、前述の「偏光とその応用」では、成分名をS0 から順にI、M、C、Sと表現しているが、同じものである。
0185
(偏光度の定義)「偏光とその応用」によると、表6に示したような偏光度Vは、Stokesベクトルの成分を用いて、式(21)のように定義される。
0186
0188
(Jones計算法とMueller 計算法との比較)ある光学素子がJonesマトリクスで表現される場合には、常にMueller マトリクスで表現することが可能である。ある素子の偏光特性をJones マトリクスJで表現できたとき、その偏光特性をMueller マトリクスMで表現するには、本願発明者の計算によると、式(22)の変換に従えばよい。
0189
0191
なお、この逆である、MuellerマトリクスからJones マトリクスの算出は、常に可能とは限らない。これは、Mueller計算法は光学系全体の幾何学的形状のばばらつきを平均化した平均的状態であったり、熱・統計的な平均状態をも含めて記述しているためである。
0192
また、ヒトの目の網膜は、光の振動数に比べれば十分に長い時間の平均の明るさ(観察対象の輝度)に応じて光刺激を受けているため、Mueller計算法に基づく計算結果が実際の観察で検出される量に対応する。
0193
(液晶層106でのMuellerマトリクス)液晶層106での光の伝播は、既に先行する実施の形態に示したように、偏光光学計算にて求めることが可能となる。実施の形態1や2に記載のように、この液晶層106の伝播現象が一般的なJones計算法等によって計算されて、その結果がJones マトリクスで表現されていれば、式(22)にしたがって、Muellerマトリクスに変換することが可能である。
0194
また、式(18)によって、液晶層106を通過する光の入射時か出射時か何れか一方のJonesマトリクスが求まっていると、他方に対してもJones マトリクスが求まる。故に、液晶層106は入射時および出射時の何れかでJones マトリクスで表現されていれば、入射時および出射時の両方のMueller マトリクスが求まる。
0195
(理論的な拡散反射層109のMuellerマトリクス)拡散反射層109のMueller マトリクスの算出は、上述の偏光解消がない場合には、Jones マトリクスを求めることに帰着する。つまり、理論的にrsとΨおよびΔが求められるような拡散反射層109に対しては、これを式(10)を従ってJones マトリクスに変換し、式(22)によってMueller マトリクスを求めることができる。
0196
また、例えば、金属反射層1091のように、予めエリプソメトリーで複素屈折率を測定するといった若干の実験的な解析に基づき、特性マトリクス法によってrsとΨおよびΔが定められてもよい。さらに、拡散を取り扱う、より詳細な理論であるBeckmannの散乱理論等によって偏光毎にJonesマトリクスを計算してもよい。
0197
さらに、実施例2に示したように理論的に表現可能な体積ホログラムもまた、Jonesマトリクスが求められるため、Mueller マトリクスが算出可能である。体積ホログラムの反射特性を求める、より詳細な理論計算手法である結合波理論等によってJones マトリクスが算出可能であれば、それであっても、Mueller マトリクスに変換することによって、適切に取り扱うことができる。
0198
(実験的な拡散反射層109のMuellerマトリクス)また、理論的に性質を表現し難いが、巨視的な性質は測定可能な拡散反射層109は、測定によってMueller マトリクスを定めることが可能である。このような測定には、例えば、サンプルに様々な偏光状態の光が照射できて、出射光を様々な位相差板や偏光子の組み合わせによって検波できる検出器を備えた偏光解析装置が使用可能である。
0199
ここで、一般の偏光解析装置(エリプソメータ)であれば、平面状のサンプルに対する正反射方向での測定を行う。しかし、散乱性を有しているような拡散反射層109では、正反射方向から外れた方向での測定データも表示特性の計算に有用であり、これを取得するよう実験的に工夫が必要となる。
0200
(まとめ)以上より、外光2が液晶層106に入射する際の表面から拡散反射層109に向かって伝播する入射時の特性と、拡散反射層109の反射特性と、さらに液晶層106を拡散反射層109から表面に向かって伝播する出射時の特性との全ての計算がMueller計算法で計算可能となる。
0201
実施例3(Muellerマトリクスによる計算と、Jones マトリクスによる計算の比較)
実施例1および実施例2に記載の反射型液晶表示装置に対して、Mueller マトリクス法によって計算を実施した。その結果、有意の差が見出せない同様な結果が得られた。
0202
実施例4(Muellerマトリクス計算で偏光度が保存する場合と保存しない例)
Mueller マトリクスによって表現された拡散反射層109で、偏光保存特性が異なる場合に適切に表示特性が計算できるか否かを確認した。
0203
(反射層の表現)拡散反射層109には、位相差のない光の反転だけを実現する理想反射層と、理想反射層と同じ反射率特性でありながら、偏光度を0にする偏光解消性反射層とを用いた。それぞれのMuellerマトリクスMim、Md は、式(23)、式(24)のようになる。
0204
0205
0206
このMim、およびMd を用いて液晶表示装置の正面入射、正面出射での表示特性を計算した。液晶層106の設定は、実施例1と同様に、表1に記載の液晶層106の設定を使用した。その結果、電圧に対する反射率は、図18(a)および図18(b)に示すように変化した。図18(a)は、Mimの場合の特性であり、図18(b)は、Md の場合の特性である。
0207
これらから判るように、Mimの場合には、液晶層106で制御された偏光が反射後にも偏光の情報を保っており、液晶表示装置の明暗表示が実現する。一方、Md の場合を示す曲線C10では、全く電圧の変化に対して明暗の変化を示さない。
0208
この結果は、偏光解消性が強い反射層では、反射層で偏光に関する情報の一切が失われて、単に光の強度だけが伝達されるために、偏光を表示に利用する表示モードと組み合わせても良好に変調できないということを意味している。以上のように、本発明の手法により偏光解消が適切に取り扱い可能であることを示している。
0209
実施例5(実測の拡散反射層109のMuellerマトリクスを利用した場合)
金属反射層1091を有する拡散反射層109のMueller マトリクスを実測した。測定波長は 550 nm で、入射方向は30度入射で0度受光であった。この実測値を表8に示す。
0210
なお、Muellerマトリクスの要素の添字は、4行4列の要素を00、01、…、32、33と表現し、Stokesベクトルの添字の使い方である0から3に一致させている。また、測定値は、 0.1が1.0E-1、0.01が1.0E-2等と表現される指数表示を必要に応じて用いている。
0211
0212
ここで、反射率は理想的な鏡面反射層を1とする反射率を算出している。この場合、拡散反射による反射光の広がりのために、各要素の測定値が小さな数値となっている。そこで、自然光に対する反射層の反射率を与える要素であるM00の値が1となるように全体を規格化した。この結果を表9に示す。
0213
0214
また、このMuellerマトリクスで示される拡散反射層109が代表的な偏光をどのように変化させて出射させるかを求めた。入射光は全て偏光度が1であるが、出射後は一般には偏光度が変化するため、出射光のStokesベクトルを用いて式(21)から計算される偏光度も併せて求め、その結果を表10および表11に示す。
0215
0216
0217
これによって、実際の拡散反射層109では、偏光度1の入射光の偏光度が0.78〜0.92程度に悪化していることを確認した。しかも、それは、拡散反射層109に達する直前の偏光状態に依存している。実施例4の結果と上記結果より、正確な液晶表示装置の特性予測には、偏光度の変化を正確に取り入れることができるMuellerマトリクス法が必要であることがわかる。
0219
0220
以上の結果から、実際の偏光依存性や偏光解消性を適切に取り入れた拡散反射層109の実測データを使用しても、液晶表示特性の計算が可能であることを確認した。
0222
(概略説明)反射型液晶表示装置の設計(製造方法)においては、図20に示すように、主に、物性データの準備段階S1、液晶配向計算段階S2、計算方位および光学配置決定段階S3、光学異方性媒体偏光透過特性計算段階S4、表示特性計算段階S5、表示特性適否判断段階S6、光学配置調整段階S7、液晶配置・駆動条件調整段階S8の各工程を有している。
0223
また、これらによって使用されるデータとしては、液晶物性パラメータF1、光学素子パラメータF2、反射層パラメータF3が使用される。これらの途中段階では、液晶配向データF4や、計算方向・光学配置データF5、光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6が得られ、反射表示特性データF7が準備される。この反射表示特性データF7によって、S6にて表示特性の適否判断がなされる。適否判断では、反射表示特性データF7を基準データF8(図示せず)と比較する。この基準に適さない場合は、S7で光学配置が再調整されたり、S8で液晶配向の配置・駆動電圧条件が再調整される。また、この基準に適する場合は終了する。
0224
(各段階の説明)
(S1の説明)S1の物性データ準備段階では、液晶物性パラメータF1、光学素子パラメータF2、反射層パラメータF3、基準データF8が準備される。液晶物性パラメータF1は、液晶組成物の弾性定数K11、K22、K33、固有ツイスト量、誘電率ε⊥、ε‖、波長毎の屈折率ne 、no 、等の液晶配向計算に必要なパラメータである。
0225
光学素子パラメータF2は、液晶表示装置1に配置する光学素子である偏光板101、位相差板102、ガラス基板110、透明電極104、108、配向膜105、107等の光透過性部材の偏光に対する性質であり、それぞれ以下のような性質で定められる。
0226
偏光板101の場合、吸収軸方位の透過率や透過軸方位の透過率から、それぞれの軸での吸収係数が求まり、二種類の複素屈折率の虚部を与える。また、複素屈折率の実部は、偏光板101の基材ポリマーの値となる。これらを用いると、偏光板101は吸収を有する一軸性複屈折媒体で近似され、偏光透過特性の計算が可能となる。一軸性であったり、二軸性であったりとその性質に応じて必要なパラメータを定める。ガラス基板110や配向膜105、107等は、等方性媒体として複素屈折率を定めればよい。光学素子パラメータF2における、以上のような光学的なパラメータは、可視波長範囲で波長毎に定められ、波長毎の偏光透過特性の計算に利用される。
0227
反射層パラメータF3は、拡散反射層109を数値モデルとして与える場合には、材質が金属であるかホログラムであるかに応じて、適切な物性パラメータが与えられる。これは、実施の形態2で示したように適切な物性パラメータが指定される。例えば、金属反射層1091の場合には、金属の複素屈折率、平坦化層1090や凹凸形成層1092の屈折率が与えられる。また、ホログラム反射層1093の場合には、ホログラム材料の屈折率平均値、屈折率変調量等が与えられる。また、実験に基づく測定値であってもよい。この場合には、Muellerマトリクスの形式でこの測定値が与えられるが、入射方位と出射方位毎に多量のデータが必要となる。反射層パラメータF3も、光学素子パラメータF2と同様、波長毎に与えられて可視波長範囲での計算に使用される。
0229
(S2の説明)S2では、液晶配向が計算される。これは、液晶物性パラメータF1および指定した液晶層106構造に基づいて、電圧を様々な状態に変化させた液晶配向が計算される。つまり、液晶配向は電圧印加電極による電圧に応じて、連続体理論に基づいて配向を変化させる。この配向変化を、様々な電圧に対して数値データとして計算する。液晶配向の計算は、一次元モデルや二次元モデル、三次元モデルで計算されるが、殆どの場合には一次元モデルで十分である。この一次元モデルでは、通常、1μmから10μm程度の液晶層106をさらに薄い多数の層に分割し、各層での液晶配向の代表的な方向が与えられる。これが、各電圧毎に計算され、その結果が液晶配向データF4として蓄えられる。
0230
(S3の説明)S3では、液晶層106と共に使用する光学素子全てを含めて、光学配置を決定する。これによって、例えば、一枚偏光板型の反射型液晶表示装置であれば、偏光板の種類および配置、位相差板の枚数や種類および配置が決定される。また、別の例であるゲストホスト型液晶であれば、混入する二色性色素濃度を指定する。
0231
また、ここで計算に使用する光の入射方向も決定される。入射方向は、S6の判断が可能となるだけ十分に細かい角度ステップで計算を行えばよい。例えば、傾斜角は5度ステップ、方位角は10度ステップ等に設定して計算すればよい。このとき、実施の形態1ないし3で説明したように、入射時および出射時の何れかを計算すると、他方はJonesマトリクスの反転特性から容易に算出される。
0232
例えば、傾斜角30度、方位角45度から表示装置に入射する光に対する偏光透過特性を表すJonesマトリクスJ(R) は、傾斜角30度、方位角45度に向かって出射する光に対する偏光透過特性を表す、Jones マトリクスJ(F) から式(18)によって計算される。したがって、S3で計算する方向は、入射時もしくは出射時の何れか一方を十分に細かい角度ステップで計算する。このようにして決めた光学素子の配置や計算に使用する方向は、計算方向・光学配置データF5のデータとして保持する。
0233
(S4の説明)S4では、偏光板101や位相差板102、液晶層106といった光学異方性媒体を全て透過した光に対する偏光透過特性を計算する。これには、既に実施の形態1で説明したような様々な計算手法を用いることが可能である。光学異方性媒体では、通常は偏光解消が生じないため、計算結果はJonesマトリクスの形式で光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6に保持する。
0234
(S5の説明)S5では、光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6に保持されている光学異方性媒体の偏光透過特性と、反射層パラメータF3に保持されている反射層パラメータとを使用して反射表示の表示特性を計算する。この表示特性は、反射表示特性データF7に反射表示特性データとして保持される。なお、この段階の詳細な工程については後述する。
0235
(S6の説明)S6では、反射表示特性データF7に反射表示特性データを、予め設定した基準データF8と比較して表示の良否を判定する。ここで、良否判定の基準としては、コントラスト比であってもよく、一定以上の明るさ(反射率)であってもよい。あるいは色彩値を用いてホワイトバランス等も用いられる。これらの従来の反射型液晶表示装置の判定規準に基づいて設定可能である。
0236
(S7の説明)S7では、S3で指定した各種条件を変更して、目的とする表示装置の特性を最適化する。例えば、偏光板101の方向を変更したり、位相差板102の方向を変更したり、位相差板102の枚数を変更したり、位相差板102の材質を変更したりする。
0237
(S8の説明)S8では、液晶配向を決定付ける条件を調整して、目的とする表示装置の特性を最適化する。例えば、液晶組成物を変更したり、液晶配向のツイスト角を変更したり、液晶層106厚を変更したりする。
0238
(方向・波長のループの位置)ここで、例えばS6では、様々な方向から液晶表示装置1に入射する外光2に対して、様々な方位から観察した場合の表示特性を判断材料とする。また、可視波長範囲の様々な波長に対する特性を求め、この反射スペクトル特性を利用して、測色学的な特性も求める。
0239
このためには、それに使用する反射表示特性データF7は、既に様々な方位の外光の方向に対する、各波長毎のデータを有していなければならない。このためには、S5だけではなく、S4においても、既に様々な方位の外光2の方向に対する各波長でのデータを有している必要がある。
0240
そこで、これらの各方向に対する繰り返し計算のループは、外光2の方向と出射光の方向との組み合わせ毎に、S4とS5とが逐次実行されてもよいし、S4およびS5が単独で各方向に対する繰り返し計算のループを含んでいてもよい。
0241
また、各波長に対する繰り返し計算のループも同様であり、本発明がこれらによって制限されることはない。以上のS1からS8に至る各工程で反射型液晶表示装置の表示特性が最適化される。
0242
(表示特性計算の詳細)次に、表示特性計算段階S5の詳細を、図21に基づき説明する。なお、光の透過方向および波長に対する繰り返しループは、S4とS5とでそれぞれ別々に実行される場合を説明する。また、光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6は、液晶層106に印加する電圧毎に、光の透過方向および波長毎に計算されたJonesマトリクスを保持したデータとなっている。また、上記Jones マトリクスは、拡散反射層109から観察者に至る出射時の特性が計算されているものとする。これが、入射時のものである場合であっても構わないことは言うまでもない。
0243
(S501の説明)S501では、表示特性の計算に使用する光透過方向、波長、液晶層106への印加電圧といったパラメータを指定する。これは、光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6のJones マトリクスデータから抽出可能な条件の何れのものを使用するかを指定するもので、最適化するのに必要なものだけがあればよい。
0244
(ループの説明)S502からS509までは、S501で指定した条件より選んだ特定の方向、特性の波長に関して計算を実行し、ループ計算を実行する。また、S502およびS503は出射時の特性に対する処理であり、S504ないしS509は入射時の特性に対する処理である。
0245
(S502の説明)S502では、Jonesマトリクスの補正を行う。通常、偏光透過特性を計算すると、空気中に保持された媒体の、空気中から媒体に入射して、再度、空気中に出射した場合を計算する。このとき、媒体と空気との界面での界面反射まで考慮した計算がなされている場合には、界面反射による偏光依存性が含まれたJonesマトリクスJair が得られる。
0246
界面反射の補正は、図2に示す液晶層106と拡散反射層109との間に空気が存在しないような実際の液晶表示装置1の特性の計算では、本来、不必要な計算である。したがって、この界面反射分を補正して、媒体中でのJonesマトリクスJmedia を求める必要がある。Jmedia およびJair がPS系で表現されている場合には、具体的には、式(25)にしたがって界面補正を実施する。
0247
0248
ここで、θは空気中での傾斜角であり、χi およびχo は、光の入射側の媒体中での傾斜角および光の出射側の媒体中での傾斜角である。なお、S502は、光学異方性媒体JonesマトリクスデータF6が算出される過程で補正が必要無い状態になっていれば、省略される。
0249
(S503の説明)S502で準備された媒体中でのJonesマトリクスを式(22)に基づいて、Mueller マトリクスに換算する。換算されたMueller マトリクスはF61として保持され、出射時の反射層の直上から表示装置を出射するまでの偏光変換特性が数値データとして表現されている。
0250
(S504の説明)S504は、F6の出射時のJonesマトリクスデータを入射方向のものに変換する工程である。これは、既に実施の形態1で説明したように、式(18)に基づいて行う。これによって、S4で計算する計算量が削減され、F6のデータサイズが半分になる。
0251
(S505、S506の説明)S505、S506は、出射時のS502およびS503と同様の工程である。この工程によってF62の入射時のMuellerマトリクスが計算される。
0252
(S507の説明)S507は、拡散反射層109の特性計算過程である。ここでは、計算する拡散反射層109の種類によって反射層パラメータF3に基づき、多層の計算を実施したり、金属の反射特性の計算を実施したり、あるいは、実測したMuellerマトリクスをそのまま使用したりする。何れの場合であっても、Mueller マトリクスの形式で偏光反射特性を実現し、これをF63として保持する。この工程については、さらに詳細に後述する。
0253
(S508の説明)S508では、Mueller計算法で、偏光板101等の光学異方性媒体全体の入射時の特性と、拡散反射層109の特性と、さらに出射時の光学異方性媒体の特性を合成する。これは、式(26)に示すような行列の積を演算すればよい。
0254
0255
ここに、Muellerマトリクスは、光学異方性媒体の入射時をMin、出射時をMout 、反射層をMref 、合成系のものをMtotal とした。また、これらが波長、入射方向、出射方向に依存していることも明示した。
0256
この段階で、外光2が液晶表示装置1に入射して、表示光3となって観察者に至る光路に配置された光学素子の偏光依存性が適切に考慮された特性が計算機上で実現する。
0257
(S509の説明)S509では、反射型液晶表示装置の合成マトリクスから、反射率を抽出する。これは、S508で求めた、Mueller マトリクスの00成分をそのまま使用すればよい。この理由は、外光2は、通常では、偏光光源ではなく自然光に光源を想定すればよいことと、ヒトの目の偏光特性は、多くの場合には無視できるためである。前者によりStokesベクトルで、T (S,0,0,0)と表されるような自然光にS509で求めた合成系のMueller マトリクスが作用する場合を考える。また、後者により、Stokesベクトルとしての表示光3のうち、ヒトの目に観察される成分が第0成分と考えてよいからである。
0258
なお、この性質からは、Min、Mout は16要素全てを求める必要はない。つまり、Minは00要素、10要素、20要素、30要素を求めれば十分であり、Mout は00要素、01要素、02要素、03要素を求めれば十分である。これらの省略をS503やS506で行っておくことにより、計算精度に影響を与えずに、F61やF62のデータの削減や計算速度の向上が可能である。なお、照明光が偏光を示す場合には、これをあらわすStokesベクトルにMtotal を作用させ、その結果のStokesベクトルの第0成分をとればよい。
0259
(S510、S511の説明)S510は計算波長を変えてS502ないしS509のループを繰り返すために波長を次の条件に変える工程であり、S511は光の方向を次の条件に変える工程である。
0260
(S512の説明)S512は、S502ないしS509をループして各波長の反射率が計算された後、その可視波長範囲の数値を利用して色座標の計算をする段階である。これにより、測色学的に正しい視感反射率や色座標の予測が可能となる。このようにして計算されたデータは、その入射方向および出射方向における反射表示特性データF7として保持される。以上のS501からS512に至る工程で、反射表示特性データF7が計算される。
0261
(S507の詳細説明)S507の反射層特性の計算手法は、図22に示すように、S513ないしS523の各工程にて計算される。それらS513ないしS523の各工程について、順次、以下に説明する。
0262
(S513、S514の説明)S513で拡散反射層109の種類や特徴を指定する。例えば、金属反射層1091かホログラム反射層1093かである。あるいは実測データを使用するかが定められる。このとき、金属反射層1091では、どのような材質の膜にするのか、ホログラム反射層1093では、露光波長や参照光方向が定められる。また、実験データであれば、その種類が定められる。
0263
S514では、この拡散反射層109がどのような種類であるかによって、計算工程は分岐される。これ以降は、ホログラム反射層1093の計算値を使用する場合、金属反射層1091の計算値を使用する場合、あるいは、実測値を使用するかによって異なった工程となる。
0264
(S515の説明)S515からS518は、拡散反射層109として、ホログラム反射層1093の計算値を使用する場合の説明である。S515では、ホログラム反射層1093の層法線方向を算出する。式(12)にしたがってグレーティングベクトルの方向を決め、屈折率変調多層膜構造の層法線方向を算出する。また、式(13)によって、ホログラム反射層1093に対する入射角が算出できる。
0265
(S516の説明)次のS516では、屈折率周期構造を計算機上で実現する。このときには、実施の形態2で説明したように、ホログラム反射層1093の露光時の波長および参照光の方位を指定する。この露光波長と、参照光方位とS515で求めたグレーティングベクトルの方向から、ホログラム反射層1093が露光された時点での干渉構造による層間隔が求まる。つまり、式(19)および式(20)によってチャープ構造を形成する以前の層間隔(振動周期)Lを決める。さらに、チャープ条件を定めて、最終的に作製されるホログラム反射層1093の層厚方向にとった各位置でのLの依存性が詳細に決まる。さらに、この屈折率分布を、十分に近似できる、図15(b)に示したような不連続屈折率(離散的な)の多層構造で近似する。
0266
(S517の説明)S517では、S516によって作製された屈折率周期構造の不連続屈折率による近似体の反射特性を、多層膜の計算手法である特性マトリクス法によって求める。このとき、多層膜の反射特性計算手法では、拡散反射層109の透過特性も同時に求まるが、これはその後の計算には使用しないため、反射特性のみを保持する。
0267
(S518の説明)S518は、S517で求めた反射特性をPiSi系でのMuellerマトリクスで表現する工程である。S517では、入射偏光に対する出射偏光の関係が求まるので、容易にJones マトリクスで表現できる。これを式(22)に代入すれば、容易にPiSi系でのMueller マトリクスで表現することが可能となる。
0268
(S519の説明)S519は、この時点で求まっている拡散反射層109のPiSi系でのMuellerマトリクスを液晶層106との計算に使用可能なPS系での表現に変換する。このとき、式(27)に示すようなMueller マトリクスで偏光の回転変換を使用する。
0269
0270
ここで、Mref-i は、PiSi系でのMuellerマトリクスである。Mref は、入射時と出射時ともにPS系となるように表現されたMueller マトリクスである。式(27)は、式(17)に実現したJones マトリクスに対応したMueller計算法である。なお、S518およびS519は、Jones マトリクスの段階で式(17)に応じてPS系で表現されてから、式(22)を用いてMueller マトリクスに変換してもよい。
0271
(S520の説明)S520からS522までは金属反射層1091の反射特性を計算する場合の工程である。S520ではホログラム反射層1093の場合と同様に、式(12)にしたがって金属反射層1091の法線方向を算出する。これにより、拡散反射層109での金属反射層1091の局所反射面1097となる局所平面の法線方位が算出される。
0272
(S521の説明)S521では、局所平面の法線方位から算出された局所反射面1097に対する入射角と拡散反射層109のデータを用いて、特性マトリクス法によって偏光反射特性を計算する。S517と同様に、透過率データを使用せず、反射率データのみ使用する。
0273
(S522の説明)S522は、S518と同様に、金属反射層1091の偏光反射特性から、PiSi系でのMuellerマトリクスを求める。
0274
(S523の説明)S523は、Muellerマトリクスの実測データを使用する場合の工程である。実測で拡散反射層109のMueller マトリクスを求めるには、その拡散反射層109の表面に屈折率が 1.5前後の透明層を配置して、空気に接する面を平滑にしておく必要がある。
0275
なぜなら、実際に液晶層106と組み合わせて使用される場合には、なぜなら、実際に液晶層106と組み合わせて使用される場合には、屈折率が 1.5前後の媒体である液晶層106や平坦化層1090から実際に反射が実現する拡散反射層109に光が入射するからである。
0276
図4や図12に示した拡散反射層109では、平坦化層1090によって既に平滑な表面が実現しているが、例えば図23に示すような、露出した凹凸面の場合には、図24に示すように、光学的に等方的で屈折率が判っているマッチングオイル1102やカバーガラス1103を配置したり、その他の手法によって、実際に使用する場合の屈折率に近い状態に合わせる必要がある。
0277
さらに、このようにして拡散反射層109の表面を処理して求めたMuellerマトリクスは、空気と屈折率が高い平滑面との界面で偏光依存性を示す反射を含む特性となる。そこで、これを補正する必要がある。この補正のための式を式(28)に示す。
0278
0279
S523は、この補正を実行して、屈折率媒体内の入射光と反射して屈折率媒体内にある出射光に対するMuellerマトリクスを求める工程である。以上に説明したS513ないしS523の各工程で反射層のMueller マトリクスが計算される。
0280
〔実施の形態5〕上述した設計手法によると、複数の方向から照射される光に対して表示のコントラストが評価可能となる。この具体的な実施の形態に関して以下に説明する。
0281
液晶表示装置を組み込んだ電子機器が観察者の手の届く範囲等の比較的近い位置で使用されている場合であって、周囲光による環境光のみを表示に利用する場合には、観察者の頭部や胴体は、周囲光を遮ることになる。このため、観察者の観察する光は、主に、観察者の頭部や胴体以外の方向からとなる。この様子の図29(a)および図29(b)に示した。
0282
図29(a)に示すように、液晶表示装置1は、観察者21により把持され、表示面を観察者21により観察されている状態のときがある。この状態において、液晶表示装置1は、観察者21が液晶表示装置1の近くに位置するために、複数ある各照明装置91による光や壁面92からの照り返し等のうち、観察者21以外の方向からの光によって主に照明される。
0283
すなわち、上記状態では、液晶表示装置1の表示面から観察者21側を見たときには、図29(b)に示すように、観察者21が表示面側に配置することになる。図29(b)においては、液晶表示装置1から見た観察者21側の半球を表示面の法線方向を中心にとって、半径方向を光の入射角、周方向を方位角にとって表示であり、同心円は傾斜角10度毎に示してある。
0284
図29(b)に示す観察者21方向から明るい周囲光が表示面に入ることは、通常生じない。つまり、図29(b)の×印で示す四種類の各方向94の内、観察者21の影となる方向から液晶表示装置1の表示面が照明される場合は考えなくてよい。
0285
また、次の例として、図30(a)および図30(b)に示すように、液晶表示装置1の表示面に対し、フロントライト装置71が積層配置されており、フロントライト装置71を点灯して使用する場合を説明する。液晶表示装置1からみたフロントライト装置71の光の照射には、特性の方向パターンがある。この様子を図30(a)および図30(b)に示した。
0286
図30(a)に示すように、フロントライト装置71の光の放射特性には、液晶表示装置1を特定の方向から照明するような性質がある。液晶表示装置1からみると、フロントライト装置71の実際の例では、図30(b)に示すように、方向範囲72に示す方向から光が照射され、それ以外の方向からはほとんど照射されない。つまり、図30(b)に、×印で示す四種類の各方向94のうち、光の照射範囲に含まれない方向から液晶表示装置1が照明される場合は考えなくともよい。
0287
これらの例に示したように、液晶表示装置1に入射する光の方向が予め指定できる場合が存在する。このような場合には、この光が入射する方向に対して液晶表示装置1の反射特性を最適化することが可能である。より一般的には、光が入射し得る半球方向全てに対して、その方向からの光の強さに応じて、重みを考慮することによって、実際の照明環境を考慮した液晶表示装置1等の表示装置の設定が可能となる。
0288
これを具体的に実行するには、光が入射し得る方位に関して液晶表示装置1の反射率を求めておき、この反射率と反射面の割合に応じて、光源の方向分布を光の強さに応じて掛け合わせて和をとればよい。このとき、光の強さとは、表面法線方向からの光源傾き角をθとしたときに、液晶表示装置1から光源を観察した場合の輝度にcos θをかけたものとなる。以上のような手法によって、実際の光に合わせて表示装置の最適化が可能となる。
0289
〔実施の形態6〕実施の形態4に示した液晶設計システムを使用して実際に液晶設計を最適化した例を次に示す。本実施の形態では、実施例6、実施例7、および比較例1を用いて実際の最適化例を説明する。
0290
図2に示す反射型液晶表示装置を設計した。本実施の形態では、液晶層106は、ツイステッドネマティック配向であり、位相差板は二枚の一軸性延伸フィルムによるポリカーボネート積層フィルムを使用し、その一枚のリタデーションを調整して表示特性が変化する様子を示す。
0291
液晶層106は、左70度にツイスト配向したものであり、さらに、液晶層106のΔndは 237 nm になるように設定した。本設定は、本願発明者らが既に出願した液晶表示装置の例として、WO98/48320号に既に開示されたものである。この開示では、液晶層106の設計は、正面入射おはよび正面観察の条件でのみ最適化されているが、本実施の形態では、傾斜方向から液晶に光が入射し、正面観察をした場合であり、実施の形態4に記載の設計システムでこれを実行したものである。
0292
各光学素子の各平面配置を図25に示す。実施例6、実施例7および比較例1で全て同じ平面配置を用いているが、位相差板102が二枚の積層体にて構成されており、偏光板101側の位相差板102は、遅相軸方位112−1と、 270nm に固定されたリタデーションを有している。また、図25に示す、111、113、114については、前述の図9に示したものと同一のものである。
0293
また、液晶層106側の位相差板102は、遅相軸方位112−2と、変化させたリタデーションを有している。上記の変化させた最適化を実施するためのリタデーションは、実施例6、実施例7および比較例1にて最適化を実施するために変化させている。最適化に当たり、前述の表2に記載の各方向条件D2、D3、D4、D5を使用した。実施例6、実施例7および比較例1の各設定条件を表13に示す。
0294
0295
この設定条件による解析計算結果を図26ないし図28に示す。この計算は、可視波長領域である 380 nm から 780 nm にわたって 10 nm毎に計算し、標準比視感反射率を求めたものである。
0296
比較例1、実施例6および実施例7の各結果を、この順にて図26、図27、図28にそれぞれ示す。図26に示した比較例1では、計算した四つの方向条件で、良好な暗い表示が実現せず、不合格とすべきものである。
0297
これに対し、図27に示した実施例6では、全四つの方向のうち、一方向でコントラストが不良で他の一方向のみが良好な表示となり、残りの二方向からの光に対しては、それらの中間の特性を示す。これは、使用環境における周囲の光が特定の方向から入射することが想定できる状況には問題が少ない。例えば、常に特定の一方向からの照明が想定できる状況では、良好な表示が実現する反射型液晶表示装置といえる。
0298
また、図28に示した実施例7では、方向条件D3を示す曲線C15において、3 Vから4 V付近で明暗の反転現象が見られる。これは、3 V付近の反射率が最小値を示して、それ以上の電圧を印加すると反射率が上昇する現象である。一方、この解析結果では、それ以外の方向条件の全てで、3 Vから5 V付近までの各電圧での反射率が、比較例1、実施例6の同電圧の反射率が高い曲線と比べて、小さな値となっている。また、それらの反射率の差も少ない。つまり、実施例7の光の入射方向で計算に使用した四方向のうち、三方向の特性がよくそろったものとなっている。この様に、方向条件D3を除いた方向からの光に対して良好な表示が実現する。
0299
ここで、この方向条件D3の光の入射方向を観察者の胴体に向けるように配置すると、明暗の反転が現れる方向条件D3からの光が観察者によって遮られる。これによって、方向条件D3の方向の光が、ほとんど入射することがないように配置できる。観察者の胴体以外の他の方向からの光に対しては変動の少ない表示特性が実現し、方向条件D3の方向の光はほとんど入射することがない。つまり、各方向条件D2ないしD5の四方向に対して実際に照明される割合が高い三方向に対して良好な表示が実現する。
0300
以下に、この方向条件D3の光の入射方向を観察者の胴体に向けるように、液晶表示装置1を配置または設定(液晶表示装置1の把持位置を設定)する好ましい配置を、図1および図31に基づいて説明する。図31に示すように、液晶表示装置1は、その方向条件D3の方向を観察者21の胴体の方向に向くように配置できるようになっている。
0301
このような液晶表示装置1の液晶層106では、図1に示すように、黒表示を実現している液晶層106の中央層の液晶配向61が向く方向はyz平面に含まれているので、その液晶分子方向の直線をzが正の半空間に延長した半直線62が観察者21の方向に向けられるように配置されている。
0302
図28の曲線C15に示されるような反転現象の現れる方向は、拡散反射層109に拡散性やオフアクシス性があって入射方位と出射方位とが独立して選択できるような液晶表示モードである場合には、図1に示す黒表示付近での液晶層106中央の液晶配向の方向と概ね一致する。このことは、一枚の偏光板モードの反射表示モードを利用する場合で、位相差板は一軸性複屈折媒体で面内に遅相軸を有する位相差板を用いる場合には常に成り立つ。このため、このような液晶層106と観察者21との方向の配置が適切である。
0303
以上のように、実施の形態4で説明した液晶層106の設計手法によって、最適化を実行すると、液晶層106の液晶配向と観察者の胴体の方向を適切に設定することが好ましいことが判る。この結果、液晶層106中央の液晶配向方向に観察者の胴体が配置されるように構成することにより、周囲光の様々な条件で良好な表示特性を実現する液晶表示装置1が実現する。
0304
〔実施の形態7〕ホログラム反射層でのGHモードと一枚偏光板モードとの比較を以下に説明する。まず、ホログラム反射層で作製したカラー反射層で、副画素毎に異なる色彩を示すように作製されたカラー反射層は、個々のカラーフィルタの表示色の色純度が高いという特徴を有している。このカラーフィルタと組み合わせる液晶層106として、一枚偏光板モードを選んだ場合(実施例8)と、GHモードを選んだ場合(比較例2)について表示色の違いを比較する。なお、ホログラム反射層については、前述の実施例2に記載の例を使用する。
0305
実施例8
実施例7に示した位相差板102および液晶層106の設定と同様の設定の液晶モードが実施例2に記載のホログラム反射層1093に重ねて使用される例について、色再現範囲を求めた。光が表示装置を照明する照明条件は、表3に示した各方向条件D2、D4、D5の三方向から照明されているとし、その重みは全て等しいとした。これは、前述の実施の形態5にて既に示したように、90度毎に方位を区切った場合には何れかの一方向は観察者の影となって、周囲光による照明が期待できないためである。
0306
まず、このホログラム反射層1093と液晶層106との組み合わせにおける電圧反射率曲線を求めた。これを図32に示す。図32の縦軸は視感反射率であり、横軸は、印加電圧である。これにより、明表示は2 V、暗表示は4 Vと定めた。
0307
これら三曲線を等しい重みで平均したとき、RGBの各副画素が全て明表示および暗表示となるときは、視感反射率は、それぞれ 10.32%および0.84%で、コントラスト比は、12.3:1であった。
0308
次に、この明表示および暗表示を、RGBの各副画素で8種類の異なる組み合わせに選んだ場合の色度座標を求めた。色度座標は、CIE1931 の色度座標を使用し、光源スペクトルは標準光源D65とした。色度座標を求めた点灯状態は、RGBのうち何れか一つもしくは二つが明表示となっていて、他が暗表示となっている場合の色度を計算した。この色度を図34の多角形P2にて示した。ここで、図34に示される多角形P1は、実施例2のホログラム反射層1093の色度を示すものである。
0309
比較例2
GHモードの液晶モードが実施例2のホログラム反射層1093に重ねて使用される例について、色再現範囲を求めた。液晶層106は、表14に記載した各パラメータで計算を実施した。
0310
0311
外光2が液晶表示装置1を照明する照明条件は、実施例8と同様である。この条件での電圧反射率曲線を図33に示す。これは、外光2として各方向条件D2、D4、D5の三方向から光が入射する場合の曲線で、各方向条件D2、D4での各曲線がほぼ重なっている。これにより、明表示は4 V、暗表示は 2.5Vと定めた。
0312
これら三曲線を等しい重みで平均したとき、RGBの各副画素が全て明表示および暗表示となるときの視感反射率は、それぞれ 10.38%および2.25%で、コントラスト比は、 4.6:1であった。
0313
次に、色度座標を求めた。色度座標は実施例8と同様に求めた。この色度を図34の多角形P3にて示した。図34に示した各多角形P2、P3は、RGBの各副画素が明表示と暗表示とを混在させて使用される場合の色再現領域にほとんど等しい。つまり、RGBの全てが明表示の場合の視感反射率がほぼ同様であるにもかかわらず、GHモードは、一枚偏光板モードよりも小さな色再現領域しか確保できていない。
0314
このように、従来開示されているGHモードとホログラム反射層1093との組み合わせに比べて、一枚偏光板モードとホログラム反射層1093との組み合わせでは、よりホログラム反射層1093の広い色再現領域を利用した設定が可能となる。
0315
なお、実施例8では、照明の方向条件を三種類の方向で等しい重みで選んだが、特性の光源に合わせて方向条件を限定して、よりコントラストの良好な表示が実現するような配置を実現できる。このとき、ホワイトバランスが適切に確保されている場合には、実施例8のような計算を行うと、ホログラム反射層1093の色再現範囲を示す多角形P1に近い範囲までの色再現範囲を確保できることが、本発明の液晶表示装置の設計手法によって容易に確認できることは言うまでもない。
0316
これに対し、GHモードでは、図33からも判るように、暗表示の視感反射率が方向条件に依存しない。つまり、比較例2においては、以上に示した詳細な最適化を行っても、色再現範囲の改善は望めないことが判る。
0317
以上に示したように、本実施の形態によれば、ホログラム反射層1093の広い色再現範囲を利用する液晶表示モードとしては、一枚偏光板モードがGHモードに比べて優れていることが明らかとなった。また、この一枚偏光板モードに対し、これに先行する本発明の他の実施の形態に明示した液晶表示装置の設定手法は特に好適である。
発明の効果
0318
本発明の液晶表示装置は、以上のように、液晶層の液晶配向は、液晶層に入射する光の各方位における強度分布と、反射層および光学素子による偏光特性とを考慮して設定されている構成である。
0319
それゆえ、上記構成は、液晶配向が光の各方位における強度分布と、反射層および光学素子による偏光特性とを考慮して設定されているので、例えば、表示特性が、他の方向より劣る方向が存在しても、その劣る方向と、光の入射量が他の方位より少ない方位とを合わせるように、液晶配向を設定することによって、表示品質の劣化を回避して、表示品質を従来より確実に改善できるという効果を奏する。
0320
本発明の液晶表示装置の製造方法は、以上のように、光学異方性素子の偏光透過特性を光の進行方向に算出し、反射層の偏光反射特性を求め、偏光透過特性と偏光反射特性とを表示光路の光の進行順に合成して液晶表示装置の表示特性を求め、上記表示特性から液晶組成物の液晶配向を設定する方法である。
0321
本発明の液晶表示装置の製造装置は、以上のように、液晶の液晶配向を計算する第1計算手段と、液晶配向の結果を記憶する第1記憶手段と、液晶を含む光学異方性素子の配置を記憶する第2記憶手段と、光学異方性素子の配置と液晶配向の結果に基づいて複数の方向に透過する光に対して光学異方性素子の偏光透過特性を算出する第2計算手段と、偏光透過特性を記憶する第3記憶手段と、反射層の偏光依存反射特性を計算または測定する第3計算・測定手段と、第3記憶手段によって記憶された偏光透過特性から全く逆の方向に通過する光に対する透過特性を計算する第4計算手段と、第3記憶手段に記憶された合成偏光透過特性の特定の方向の特性と、第3計算・測定手段によって得られた偏光反射特性と、第4計算手段により求められた合成偏光透過特性の特性の方向の逆に進む場合の特性と、から合成される液晶表示装置の合成反射特性を計算する第5計算手段とを有する構成である。
0322
それゆえ、上記方法および構成は、例えば、液晶表示装置の表示特性と、光の配光特性とを考慮した液晶表示装置が得られ、上記液晶表示装置の表示品質をより向上できることを確実化できるという効果を奏する。
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成