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技術 転がり軸受用グリース組成物

出願人 日本精工株式会社協同油脂株式会社
発明者 横内敦倉石淳杉森庸一郎藤田安伸中道治柴山淳木村浩
出願日 2000年8月2日 (20年3ヶ月経過) 出願番号 2000-234739
公開日 2002年2月12日 (18年9ヶ月経過) 公開番号 2002-047499
状態 特許登録済
技術分野 ころがり軸受け ころがり軸受 潤滑剤
主要キーワード 長繊維状物 短繊維状物 荷重変換器 微小滑り 脂肪酸リチウム塩 流体潤滑膜 エアースピンドル 油膜厚
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

音響耐久性に優れるとともに、軸受トルクの低減を実現し得るグリース組成物を提供する。

解決手段

分子構造中に極性基を有する潤滑油無極性潤滑油とを配合した基油中に、長径部の長さが少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を含有してなることを特徴とする転がり軸受用グリース組成物。

概要

背景

エアコンファン、HDDスピンドルなどに使用されるモータは、近年環境規制を配慮し、モータからの発熱を抑制するために小型化、低出力化が促進されている。このため、これらの用途に使用される転がり軸受では、トルク特性が重要な機能として求められている。

転がり軸受の動摩擦トルクは、転がり接触面の微小滑りによる摩擦軸受内の滑り接触部における滑り摩擦グリース粘性抵抗が原因で発生する。このうちグリースの粘性抵抗は、基油動粘度及びグリースのちょう度に影響を受けることが知られている。従って、基油の動粘度は流体潤滑膜が形成された際の油のせん断抵抗によるため、この動粘度の低減が転がり軸受の動摩擦トルクを低減させる上で大きな解決策となる。また、グリースのちょう度は軸受回転時、軸受内部でせん断を受ける際のチャネリング性に関わるため、このちょう度を低減することも効果的である。

しかしながら、基油の動粘度を低減させると、例えばエアコンのファンモータでは、インバータ制御により比較的低速で運転されることがあるために油膜厚の確保が難しくなる。また、一般に動粘度の低い基油は耐熱性が低く、音響耐久性に問題が出てくる。一方、グリースのちょう度の低減は増ちょう剤の配合量の増加を招くため、グリース中の基油の量が相対的に少なくなり、またグリースの機械的せん断抵抗力が高まるため、結果として軸受潤滑面への基油の供給量が減り、潤滑性を長期にわたり安定に維持することができなくなる。

このように、基油の動粘度及びグリースのちょう度の低減には限度があり、上記した用途の転がり軸受に封入されるグリースでは、基油の動粘度として10〜500mm2/s(40℃)、またグリースのちょう度としてNLGINo.2〜3グレード、もしくは増ちょう剤配合量として5〜20質量%の範囲が適当とされている。

また、このような背景から、特に音響特性を要求されるモータでは、エステル油を基油とし、これに脂肪酸リチウム塩を増ちょう剤として配合したグリースが封入されている。これは、エステル油は鉱油に比べて耐熱性が高く、またその分子構造中に極性基を有しており、この極性基が金属表面への吸着性を高めて摩擦特性を良好にし、音響耐久性を向上させる作用を有することによる。

概要

音響耐久性に優れるとともに、軸受トルクの低減を実現し得るグリース組成物を提供する。

分子構造中に極性基を有する潤滑油無極性潤滑油とを配合した基油中に、長径部の長さが少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を含有してなることを特徴とする転がり軸受用グリース組成物。

目的

本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、音響耐久性に優れるとともに、軸受トルクの低減を実現し得るグリース組成物を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
6件

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請求項1

分子構造中に極性基を有する潤滑油無極性潤滑油とを配合した基油中に、長径部の長さが少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を含有してなることを特徴とする転がり軸受グリース組成物

技術分野

0001

本発明は各種の転がり軸受封入されるグリース組成物に関する。

背景技術

0002

エアコンファン、HDDスピンドルなどに使用されるモータは、近年環境規制を配慮し、モータからの発熱を抑制するために小型化、低出力化が促進されている。このため、これらの用途に使用される転がり軸受では、トルク特性が重要な機能として求められている。

0003

転がり軸受の動摩擦トルクは、転がり接触面の微小滑りによる摩擦軸受内の滑り接触部における滑り摩擦グリース粘性抵抗が原因で発生する。このうちグリースの粘性抵抗は、基油動粘度及びグリースのちょう度に影響を受けることが知られている。従って、基油の動粘度は流体潤滑膜が形成された際の油のせん断抵抗によるため、この動粘度の低減が転がり軸受の動摩擦トルクを低減させる上で大きな解決策となる。また、グリースのちょう度は軸受回転時、軸受内部でせん断を受ける際のチャネリング性に関わるため、このちょう度を低減することも効果的である。

0004

しかしながら、基油の動粘度を低減させると、例えばエアコンのファンモータでは、インバータ制御により比較的低速で運転されることがあるために油膜厚の確保が難しくなる。また、一般に動粘度の低い基油は耐熱性が低く、音響耐久性に問題が出てくる。一方、グリースのちょう度の低減は増ちょう剤の配合量の増加を招くため、グリース中の基油の量が相対的に少なくなり、またグリースの機械的せん断抵抗力が高まるため、結果として軸受潤滑面への基油の供給量が減り、潤滑性を長期にわたり安定に維持することができなくなる。

0005

このように、基油の動粘度及びグリースのちょう度の低減には限度があり、上記した用途の転がり軸受に封入されるグリースでは、基油の動粘度として10〜500mm2/s(40℃)、またグリースのちょう度としてNLGINo.2〜3グレード、もしくは増ちょう剤配合量として5〜20質量%の範囲が適当とされている。

0006

また、このような背景から、特に音響特性を要求されるモータでは、エステル油を基油とし、これに脂肪酸リチウム塩を増ちょう剤として配合したグリースが封入されている。これは、エステル油は鉱油に比べて耐熱性が高く、またその分子構造中に極性基を有しており、この極性基が金属表面への吸着性を高めて摩擦特性を良好にし、音響耐久性を向上させる作用を有することによる。

発明が解決しようとする課題

0007

上記のように、音響耐久性の改善にはある程度効果的な解決策が見い出されているものの、軸受トルクの低減に効果的なグリース組成物が得られていないのが現状である。

0008

本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、音響耐久性に優れるとともに、軸受トルクの低減を実現し得るグリース組成物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を行った結果、特定形状の増ちょう剤並びにそれと組み合わせる基油を見い出し、本発明を完成するに至った。

0010

即ち、上記の目的は、本発明の、分子構造中に極性基を有する潤滑油無極性潤滑油とを配合した基油中に、長径部の長さが少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を含有してなることを特徴とする転がり軸受用グリース組成物により達成される。

発明を実施するための最良の形態

0011

以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。

0012

本発明のグリース組成物の基油は、分子構造中に極性基を有する潤滑油(以下「極性基含有潤滑油」と呼ぶ)と、無極性潤滑油との混合油である。極性基含有潤滑油としては、エステル構造を有する潤滑油またはエーテル構造を有する潤滑油が好適である。

0013

エステル構造を有する潤滑油は、特に制限はないが、二塩基酸分岐アルコールとの反応から得られるジエステル油炭酸エステル油芳香族三塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られる芳香族エステル油一塩基酸多価アルコールとの反応から得られるポリオールエステル油などを好適に挙げることができる。これらは、単独でも複数種を併用してもよい。以下に、それぞれの好ましい具体例を例示する

0014

ジエステル油としては、ジオクチルアジペートDOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジオクチルアジペート(DOZ)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)、メチルアセチルシノレート(MAR−N)などが挙げられる。

0015

芳香族エステル油としては、トルオクチトリメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテートテトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。

0016

ポリオールエステル油としては、以下に示す多価アルコールと一塩基酸とを適宜反応させて得られるものが挙げられる。多価アルコールに反応させる一塩基酸は単独でもよいし、複数用いてもよい。さらに、多価アルコールとニ塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステルとして用いてもよい。多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトールDPE)、ネオペンチルプリコール(NPG)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール(MPPD)などが挙げられる。また、一塩基酸としては、主にC4〜C16の一価脂肪酸が用いられる。具体的には、酪酸吉草酸カプロン酸カプリル酸エナント酸ペラルゴン酸カプリン酸ウンデカン酸ラウリン酸ミスリン酸パルミチン酸牛脂脂肪酸スレアリン酸、カプロレイン酸、パルミトレイン酸ペトロセリン酸オレイン酸エライジン酸アスクレピン酸、バクセン酸ソルビン酸リノール酸リノレン酸アビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。

0017

炭酸エステル油としては、直鎖又は分岐アルキル基炭素数が6〜30のものが好ましい。

0018

また、エーテル構造を有する潤滑油として、例えば(ジ)アルキルジフェニルエーテル油、(ジ)アルキルポリフェニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油などを挙げることができる。

0019

上記の極性基含有潤滑油は単独でもよいし、複数を併用してもよい。また、トルク特性及び音響耐久性を考慮すると、中でもポリオールエステル油、芳香族エステル油が好ましい。

0020

一方、無極性潤滑油としては鉱油、合成炭化水素油あるいはこれらの混合油を使用できる。具体的には、鉱油としてパラフィン系鉱油ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成炭化水素油としてポリα−オレフィン油などを挙げることができる。中でも、音響耐久性を考慮すると、合成炭化水素油が好ましい。

0021

上記の極性基含有潤滑油と無極性潤滑油とは、極性基含有潤滑油が基油全量の5〜70質量%、特に10〜70重量%を占めるように配合することが好ましい。極性基含有潤滑油の配合量が5質量%未満では、音響耐久性並びにトルク低減に十分な効果が得られない。後述されるように、本発明のグリース組成物ではその製造に際して、予め無極性潤滑油中で長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を合成し、溶解した後、ゲル体を作製し、このゲル体と極性基含有潤滑油とを混合する。従って、極性基含有潤滑油の配合量が70質量%を超えると、無極性潤滑油の量が少なすぎて金属石けん系増ちょう剤の合成に悪影響が出てくる。

0022

また、極性基含有潤滑油と無極性潤滑油とを配合してなる基油の動粘度は、従来と同様の25〜200mm2/s(40℃)の範囲で構わないが、上記の製造方法を円滑に行う上で、極性基含有潤滑油として2000〜100000mm2/s(40℃)の動粘度のものを用いることが好ましい。

0023

本発明のグリース組成物において、増ちょう剤は、長径部が少なくとも3μmである長繊維状物を含む金属石けんである。金属石けんの種類としては特に、1価または/及び2価の有機脂肪酸または有機ヒドロキシ脂肪酸と、金属水酸化物とを合成して得られる有機脂肪酸金属塩または有機ヒドロキシ脂肪酸金属塩が好ましい。有機脂肪酸としては、特に限定されないが、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、牛脂脂肪酸などが挙げられる。また、有機ヒドロキシ脂肪酸としては、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸などが挙げられる。一方、金属水酸化物としては、アルミニウムバリウムカルシウムリチウムナトリウムなどの水酸化物が挙げられる。

0024

上記の有機脂肪酸または有機ヒドロキシ脂肪酸と、金属水酸化物との組み合わせは特に制限されるものではないが、ステアリン酸、牛脂脂肪酸またはヒドロキシステアリン酸(特に12−ヒドロキシステアリン酸)と、水酸化リチウムとの組み合わせが、軸受性能に優れることから好ましい。また、必要に応じて、複数種を併用することもできる。

0025

長径部が少なくとも3μmの長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を得るには、上記の有機脂肪酸または有機ヒドロキシ脂肪酸と、金属水酸化物とを、基油成分である無極性潤滑油中で反応させる。長繊維状物の生成条件は特に制限されることはないが、一例として、次の生成方法を挙げておく。

0026

即ち、合成炭化水素油中にヒドロキシステアリン酸を溶解し、水酸化リチウムと反応させてリチウム石けんを作製する。次いで、このリチウム石けんを210℃以上に加温し、基油中に溶解する。冷却後、一旦200℃の時点で約60分保持し、その後140℃まで1℃/分の速度でゆっくり冷却する。そして、140℃以下となった時点で、140℃に加熱した追加の基油を加え、3段ロールミルをかけ、目的の長繊維状の増ちょう剤を含有するグリースが得られる。尚、増ちょう剤量は、従来のグリース組成物と同様の5〜20質量%で構わず、有機脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸、金属水酸化物の配合量を適宜選択する。

0027

得られた金属石けんには、長径部が3μm以上の長繊維状物が含まれるが、その割合は増ちょう剤全量の30質量%以上を占めることが好ましく、それより少ないと軸受トルクの低減に十分な効果が得られない。また、この長繊維状物の長径部は、3μm以上であることが好ましい。但し、長繊維状物の長径部が長くなりすぎると、回転時に転がり軸受の接触面に入り込んだときの振動が大きくなり、特に初期音響特性に悪影響を及ぼすため、長径部の上限としては10μm以下が好ましいといえる。また、短径部は特に制限されるものではないが、1μm未満である。これら長繊維状物の割合、長径部及び短径部の寸法は、上記した反応条件を適宜選択することにより制御可能である。

0028

尚、上記において合成された金属石けん系増ちょう剤の長径部及び短径部を測定するには、上記分散液をヘキサンなどの溶剤希釈し、コロジオン膜を貼った銅製メッシュに付着させて透過型電子顕微鏡を用いて6000倍〜20000倍程度の倍率で観察すればよい。

0029

そして、上記分散液を室温程度にまで冷却してゲル化させ、得られたゲル体を極性基含有潤滑油と混練することにより、本発明のグリース組成物が得られる。図1(A)は後述される実施例1で得られた本発明に従うグリース組成物、また図1(B)は同じく比較例2で得られた従来のグリース組成物(B)を示す電子顕微鏡写真(6000倍)であるが、図1(A)に示すグリース組成物では増ちょう剤の繊維長が格段に長くなっているのがわかる。

0030

本発明のグリース組成物には、必要に応じて、従来より公知の下記添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、上記した製造過程において、極性基含有潤滑油に添加しておき、ゲル体と混練することによりグリース組成物中に配合できる。

0031

酸化防止剤〕酸化防止剤としてゴムプラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宜選択して使用する。例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニルp−フェニレンジアミンジピリジルアミンフェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p′−ジオクチルジフェニルアミン、N,N′−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することができる。

0032

防錆剤金属不活性化剤〕防錆剤として、例えば有機スルホン酸アンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウムアルカリ金属アルカリ土類金属有機スルホン酸塩有機カルボン酸塩フェネートホスホネートアルキルもしくはアルケニルこはくエステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステルオレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾールベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、2,5−ビスドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、あるいは、トリノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル化合物等を使用することができる。また、亜硝酸塩等も使用することができる。

0033

金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。

0035

上記の如く構成される本発明のグリース組成物のトルク低減効果は、以下の作用によるものと推定される。

0036

即ち、増ちょう剤として長径部が3μm以上の長繊維状物を含むため、この長繊維状物が軸受回転時のせん断で配向性を示し、軸受トルクを低減させる。この効果は、無極性潤滑油との組み合わせで更に大きなものとなる。また、基油に極性基含有潤滑油が配合されているため、この極性基含有潤滑油が従来の極性基を有する基油(例えばエステル油)と同様に作用して、軸受回転部の接触面に優先的に吸着して吸着膜を形成し、摩擦特性を改善して軸受トルクを低減する。更に、この極性基含有潤滑油の極性基が金属石けんのミセル構造相互作用を示し、特に長繊維状物同士の結合力を弱め、軸受回転時におけるグリースのせん断抵抗を低減して軸受トルクを更に低減する。

0037

以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。
(実施例1)12−ヒドロキシステアリン酸78gと水酸化リチウム6.2gとを、552gのポリαオレフィン中で反応させてリチウム石けん80gを生成し、室温まで冷却してゲル体を作製した後、このゲル体と368gのポリオールエステルとを混練してグリース組成物を調製した。このグリース組成物をヘキサンで希釈し、コロジオン膜を貼った銅製メッシュに付着させて透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図1(A)に示すように、3μm以上の長径部を有する長繊維状物が確認された。

0038

(実施例2)ステアリン酸168gと水酸化リチウム14.2gとを、705gのポリαオレフィン中で反応させてリチウム石けん170gを生成し、室温まで冷却してゲル体を作製した後、このゲル体と125gのポリオールエステルとを混練してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、3μm以上の長径部を有する長繊維状物が確認された。

0039

(実施例3)ステアリン酸116gと水酸化リチウム9.8gとを、528gのポリαオレフィン中で反応させてリチウム石けん120gを生成し、室温まで冷却してゲル体を作製した後、このゲル体と、26gのポリオールエステルと106gのジフェニルエーテルとの混合油とを混練してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、3μm以上の長径部を有する長繊維状物が確認された。

0040

(比較例1)ステアリン酸116gと水酸化リチウム9.8gとを、880gのポリαオレフィン中で反応させてリチウム石けん120gを生成し、室温まで冷却してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、3μm以上の長径部を有する繊維長繊維状物が確認された。

0041

(比較例2)12−ヒドロキシステアリン酸97gと水酸化リチウム7.9gとを、900gのポリオールエステル中で反応させてリチウム石けん100gを生成し、室温まで冷却してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図1(B)に示すように、全て短繊維状物であった。

0042

(比較例3)ステアリン酸136gと水酸化リチウム11.5gとを、860gのポリαオレフィン中で反応させてリチウム石けん140gを生成し、室温まで冷却してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、3μm以上の長径部を有する繊維長繊維状物が確認された。

0043

(比較例4)ステアリン酸130gと水酸化リチウム10.8gとを、870gのポリオールエステル中で反応させてリチウム石けん130gを生成し、室温まで冷却してグリース組成物を調製した。このグリース組成物を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、全て短繊維状物であった。

0044

上記実施例及び比較例の各成分の配合、得られたグリース組成物の物性(基油動粘度、混和ちょう度、増ちょう剤の繊維構造)を表1にまとめて示す。

0045

0046

実験1;高速回転トルク試験)グリース組成物による軸受トルクの低減作用を検証するために、図2に示す測定装置10を用いて高速回転トルク試験を行った。この測定装置10において、試験軸受11はエアスピンドル12に連結する軸13に装着され、またこの試験軸受11にはアルミニウム製の外輪カバ−14が装着され、更に外輪カバ−14を介してアキシャル荷重ロードセル15による荷重かけられる。アキシャル荷重用ロードセル15は、アキシャル荷重負荷用マイクロメータヘッド16により荷重の調整がなされ、ばね17が巻装されたセル本体18を押圧する。また、セル本体18の外輪カバー側端部には空気軸受19が付設されており、吸気口20から供給される空気により外輪カバ−14、即ち試験軸受11の回転を支持する構成となっている。また、外輪カバー14は糸21を通じてロードセル22に接続しており、試験軸受11の回転に伴うトルクが測定される。

0047

試験は、試験軸受11として、プラスチック保持器を備えた、内径φ5、外径φ13、幅4の非接触ゴムシール付転がり軸受を用い、これに実施例2、実施例3、比較例3及び比較例4の各グリース組成物を10mg封入し、アキシャル荷重14.7Nの下で15000rpmで外輪を回転させてトルクを測定した。測定は回転開始後3分にわたり行い、その結果を図3に示す。図示されるように、実施例2及び実施例3のグリース組成物を封入することにより、軸受トルクが大幅に低減することが確認された。

0048

(実験2;低速回転トルク試験)また、図4に示す測定装置30を用いて低速回転トルク試験を行った。この測定装置30において、試験軸受31は2個一組で、エア−スピンドル32に連結する軸33に予圧ウェーブワッシャ34を用いて装着される。また、試験軸受31はエアースピンドル32とともに水平に置かれ、糸35を介して荷重変換器36が吊るされており、荷重変換器36の出力がX−Yレコーダ37により記録される。

0049

試験は、試験軸受31として、鉄保持器を備えた、内径φ15、外径φ35、幅11の非接触ゴムシール付転がり軸受を用い、これに実施例1、比較例1及び比較例2の各グリース組成物を0.7g封入し、アキシャル荷重39.2Nの下で1400rpmで内輪を回転させてトルクを測定した。測定は回転開始後10分にわたり行い、その結果を図5に示す。図示されるように、実施例1のグリース組成物を封入することにより、軸受トルクが大幅に低減することが確認された。

0050

(実験3;極性基含有潤滑油の配合比率の検証)実施例2に従ってポリオールエステルの配合比率を変えてグリース組成物を調製し、実験1に従って高速回転トルク試験を行った。トルクの測定は回転開始後3分経過したときに行った。結果を図6に示すが、ポリオールエステルを5質量%以上、特に10重量%以上配合することにより、極めて良好なトルク特性が得られることがわかる。

0051

(実験4;基油の動粘度の検証)実施例1及び比較例1に従って、基油の動粘度を変えてグリース組成物を調製し、実験2に従って低速回転トルク試験を行った。トルクの測定は回転開始後3分経過したときに行った。結果を図7に示すが、実施例1に従うグリース組成物では、設定した基油の動粘度の全範囲(50〜200mm2/s、40℃)において一様に軸受トルクが低く、極めて良好なトルク特性が得られることがわかる。

0052

(実験5;増ちょう剤の長繊維状物の配合割合の検証)実施例1に従って、リチウム石けんの長繊維状物の配合割合を変えてグリース組成物を調製し、実験2に従って低速回転トルク試験を行った。トルクの測定は回転開始後3分経過したときに行った。結果を図8に示すが、長繊維状物の配合割合として、30質量%以上であれば軸受トルクを低く抑えることができることがわかる。

発明の効果

0053

以上説明したように、本発明によれば、音響耐久性に優れるとともに、軸受トルクの低減を実現し得るグリース組成物が提供される。

図面の簡単な説明

0054

図1(A)実施例1で得られたグリース組成物及び(B)比較例2で得られたグリース組成物を示す電子顕微鏡写真である。
図2実施例において、高速回転トルク試験を行うために使用した測定装置を示す構成概略図である。
図3実施例において、高速回転トルク試験を行った結果を示すグラフである。
図4実施例において、低速回転トルク試験を行うために使用した測定装置を示す構成概略図である。
図5実施例において、低速回転トルク試験を行った結果を示すグラフである。
図6実施例において、極性基含有潤滑油の配合比率と軸受トルクとの関係を求めたグラフである。
図7実施例において、基油の動粘度と軸受トルクとの関係を求めたグラフである。
図8実施例において、増ちょう剤の長繊維状物の配合割合と軸受トルクとの関係を求めたグラフである

--

0055

10測定装置(高速回転トルク試験用)
11試験軸受
12エアスピンドル
13 軸
14外輪カバ−
15アキシャル荷重用ロードセル
16 アキシャル荷重負荷用マイクロメータヘッド
17 ばね
18セル本体
19空気軸受
20吸気口
21 糸
22 ロードセル
30 測定装置(低速回転トルク試験用)
31 試験軸受
32 エア−スピンドル
33 軸
34予圧用ウェーブワッシャ
35 糸
36荷重変換器
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