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技術 M細胞取り込み制御によるヨーネ病感染の予防方法およびそのワクチン

出願人 百溪英一
発明者 百溪英一
出願日 2000年5月31日 (21年5ヶ月経過) 出願番号 2000-163840
公開日 2001年12月11日 (19年11ヶ月経過) 公開番号 2001-342147
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 化合物または医薬の治療活性 非環式または炭素環式化合物含有医薬
主要キーワード 連続取り込み 汚染環境 法定伝染病 電子顕微鏡的 販売中止 細菌分離 マイコバクチン 侵入経路
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

本発明は、新生動物、特に子ヨーネ病感染を予防するための方法を提供することを目的とする。

解決手段

ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生動物に経口投与してヨーネ菌の特異的侵入経路である腸粘膜M細胞の取り込み制御を誘導し、その後の生きたヨーネ菌の侵入阻害することからなるヨーネ病感染に対する予防方法

効果

分娩後直ちに子牛を母牛から隔離し、無菌的な初乳と混合された本死菌ワクチンを与えることにより、母乳由来のヨーネ菌ばかりでなく、環境由来のヨーネ菌などが経口接種されたとしても、ヨーネ菌のM細胞からの侵入を阻害することにより、ヨーネ菌の組織内への侵入(感染の成立)を阻止することができる。

概要

背景

ヨーネ病は、抗酸菌一種であるヨーネ菌に起因する慢性肉芽腫性下痢性伝染病である。我が国の群におけるヨーネ病汚染については、1980年以降、その発生頭数及び発生地共に拡大傾向にある。すなわち、1990年代より100〜200頭/年の発生があり、1999年には800頭を越えている。

ヨーネ病は出生後、早期に子牛が経口的にヨーネ菌に感染することで成立するが、ヨーネ病の感染から発症までのプロセスは、未だ不明の部分が多く、個体レベルでの感染経過の差異が他の疾病に類を見ないほど大きい。超慢性感染症ともいえる本病の場合、子牛の時に経口感染し、その後、一般には、平均3年〜6年以上発病しない。中には10数年以上発病しない場合もあり、極端には一生発症しない場合もある。つまり、ヨーネ菌感染牛には、不顕性感染牛と発症牛があり、不顕性感染牛には、抗体を有し、一定の病変を形成している無症状牛と、ヨーネ菌に対する抗体反応や細胞性免疫が検出しがたいキャリアー牛が存在する。

この臨床症状や抗体の検出されない不顕性感染牛(キャリアー牛)は、免疫学的診断ELISA法)では診断できない感染牛である。このキャリアー牛は、特異的抗体レベルが診断限界以下でありながら、病変を持ち、不規則な排歯があるため、防疫上極めて問題になる。特に、ELISA法が免疫学的診断のスタンダードとして世界中で用いられている現在、このELISA法による摘発が進んでくるため、感染レベルが低い牛が残るようになる結果、ELISA法では摘発できないキャリアー牛が相対的に増えているともいえる。

このキャリアー牛の不規則な排菌は、感染の拡大に特に重要であり、糞便からのヨーネ菌を分離することが、この時期に可能である唯一確実な診断法である。しかし、この菌分離を使った診断も、その診断に必要な量の菌の培養に数か月を費やさなけれはならないという問題がある。

一般に、ヨーネ菌は、非定型抗酸菌III 群に属し、通常、マイコバクチンを添加した培地上のみで増殖する、特殊栄養要求性の細菌である。目に見えコロニー形成には7〜11週も要する超遅発育性の細菌であるため、それが、菌分離による診断法の推進を遅らせている。近年、ヨーネ菌のDNAの持つ特異的挿入配列IS900 の検出を行うには、ポリメラーゼチェーンリアクション(Polymerase chain reaction :PCR) により早期鑑別することが可能になってきたが、糞便からのヨーネ菌検出にはPCR阻害物質の存在などにより菌分離より感度が得られない場合がある。

ヨーネ病の診断には、細菌分離、抗体検出の他に、ヨーネ菌に対する宿主細胞性免疫応答を検出する方法がある。結核感染におけるツベルクリン反応と同様の皮内反応が「ヨーニン反応」として用いられているが、感染の比較的初期にのみ細胞性免疫応答が起き、その後低下して検出できなくなるという、ヨーネ菌感染における特異的な細胞性免疫応答の経過から、その応用は感染後比較的初期に限られる。また、ヨーネ菌抗原を認識したTリンパ球が再度の抗原暴露の際に反応・活性化する際にインターフェロンガンマーを産生するという現象を利用した、細胞性免疫検出キット海外販売されていたが、現在は販売中止となっている。

これまで、菌分離による診断法、特異抗体の検出や細胞性免疫の検出、病理組織学的診断などによる診断がなされてきたが、これらの検査で捕まらない不顕性感染個体に対してはこれまで十分な防疫および清浄化が困難であった。このようにヨーネ病の発生機序は、複雑で不明な点が多く、菌分離や免疫学的断法によっても診断できない感染動物が存在するため、経済被害は極めて大きく且つ深刻である。しかし、本病の蔓延を妨止するための病理・細菌・免疫学なとの研究が、現在着実に進んでいることも確かであるが、現状では糞便中のヨーネ菌の有無を定期的に調べるか、感染牛の抗体が自然に上昇するのを捕らえて免疫学的診断を行うというのが現状のヨーネ病に対する診断の実状であるといえる。

ヨーネ病の感染から発症に至るまてのプロセスに関し、これまでに明らかにされている事項について以下に述べる。ヨーネ病は、ヨーネ菌が腸管腔内に存在するというだけでは菌増殖や宿主の病的被害は起こらない。ヨーネ歯はサルモネラ菌シゲラ菌、ある種の大腸菌およぴトレポネーマのような運動性細胞侵襲性を持たず、腸粘膜バリヤーをいかして突破するのかは長い間不明であった。新生子牛小腸吸収上皮細胞が初乳抗体などの巨大分子ピノサイトーシス飲作用)により活発に取り込むことから、初乳ミルクとともに飲み込まれたヨーネ菌も同様に取り込まれるであろうと推測がなされていたが、その後それは事実でないことが明らかにされた(Chiodini RJ, Van Kruiningen HJ, Merkal RS、Ruminant paratuberculosis (Johne's disease): the current status andfuture prospects. Cornell Vet. 74(3):218-62 (1984)。

本発明者らは、子牛の回腸ループを用いた実験で、腸腔のヨーネ菌が腸腔のパイエル板ドーム部を被う特珠なM細胞貪食により受動的上皮内に取り込まれ、さらに、上皮内・上皮下マクロファージ(Mφ)によりさらにリンパ装置の目的部に運ばれることを光学顕微鏡的および電子顕微鏡的に明らかにした〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師雑誌42:229-237 (1992) 〕。この実験感染では、M細胞以外の絨毛吸収上皮細胞や未分化クリプト上皮細胞胚細胞などによるヨーネ菌取り込みは認められなかった。さらに、ヨーネ菌に対する抗体がヨーネ菌のパイエル板内侵入を促進する可能性を示唆することを、本発明者はすでに明らかにしている。子牛にヨーネ菌が感染する場合、母牛の糞便中に排出された菌が乳房などの体表や環境に付着し、子牛が経口感染するが、不顕性感染牛の乳房上リンパ節の27%、ミルク中に11.6% のヨーネ菌が検出されることから、感染のある地域では糞便以外にミルクや初乳中にもヨーネ菌が存在し、糞便やミルクも重要な感染源となることが明らかにされた〔Sweeney R, Whitlock R, and RosenbergerAE, Journal of Clinical Microbiology 30:166-171 (1992) 〕。

子牛の小腸の粘膜リンパ装置は、全小腸組織の86%を占め、その1/3が上部小腸に、残り2/3が回腸に分布しており、また、回腸パイエル板のドーム上皮は、M細胞のみの均一な構成細胞からなるが、小腸上部に分布するリンパ装置のドームはM細胞と通常の吸収上皮細胞の混在した状態で被われていることが知られている〔Liebler E, Inaugural-Dessertation zur Erlargung des Grades eines Doctor Medicinae dir Tierarzliche Hochshule Hannover(1985) 〕。したがって、本発明者らの上記光学顕微鏡的・電子顕微鏡的観察結果は、ヨーネ菌の侵入門戸(M細胞)は回腸により多く準備されていることを示しており、ヨーネ病の初期感染病変が回腸下部に形成されやすい理由を説明するものであるといえる。

M細胞は、腸管腔内に存在する腸内細菌を無制限、無差別に取り込むのではなく、そこには選択的取り込み機構があるとされており、Vibrio cholerae では生菌のみがウサギの腸のM細胞に取り込まれているというが、ヨーネ菌の場合は生菌、死菌ともに取り込まれており、その選択機構は単純なものではない〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師会雑誌42:229-237 (1992) 〕。腸は、栄養物としては多種類の食事性抗原の取り込みを余儀なくされる組織であるが、無駄なあるいは過剰な免疫反応食物アレルギー等)を起こさないように危険性のない食餌性抗原と病原性微生物抗原を区別する機構を持っており、これにはTリンパ球が関与している。

M細胞は、ペルオキシダーゼなどの巨大分子や種類によるが、細菌をも取り込むことが証明されている。またクラミジアspや数種類ウイルスがM細胞に感染することが知られており、次第に腸管腔内の抗原のサンプリングおよびその輸送という生体防御機能と同時に特定の感染ルートとしての意義も明らかにされてきている。しかし、これまで、M細胞の機能や役割について現在までに明らかにされている部分は僅かであった〔Owen RL 、Uptake and transport of intestinal macromolecules and microorganisms by M cells in Peyer's patches--a personal and historical perspective.Semin Immunol 11:157-63 (1999)〕。この機能の解明が進むとM細胞によるヨーネ菌の取り込み阻止というような形の感染予防が可能になることを、本発明者らはすでに明らかにしている〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師会雑誌42:229-237 (1992) 〕。

ところで、感染後、平均3年〜6年以上発病しないこの潜伏期間中においては、ヨーネ菌は腸粘膜腸管膜リンパ節のマクロファージ(Mφ)に静止状態で存在しており、不顕性感染状態にあると考えられる実験感染子牛組織の病変は、非常に少数のMφ系細胞からなり、極めて少数の菌しか見られず、組織切片上に菌が証明できない場合が多い。この潜伏期に病変から発症期への引き金となるのは、下痢症状や大量の排歯(糞便1g中に10〜100万個)に先駆けて、静止状態の病変内での菌の増殖亢進と、それにそれに伴う細胞外への菌や菌抗原の放出が起こると考えられる。

その結果、Mφが病変に集合定着し、肉芽腫の形成・拡大が起こり、同時に液性免疫応答も高まる。Mφ内で潜伏しているヨーネ菌の増殖を亢進させる機構については、ヨーネ菌がマイコバクチン依存性で、増殖・代謝に必須の鉄獲得能が極めて弱く特殊である点から、細胞内でも当然、鉄の有無・鉄イオン濃度に左右されるわけで、組織細胞内の鉄や鉄結合性蛋白と菌増殖の関係は重要視される〔Momotani E, Immunohistochemical distribution ofyferritin, lactoferrin, and transferrin ingranulomas of bovine paratuberculosis. Infect Immun. 52:623-627 (1986).;百溪英一、ヨーネ病の病理発生機構の研究、農林水産家畜衛生試験場研究報告、96:275-280 (1991) 〕。

この潜伏しているヨーネ菌の増殖を亢進させる機構については、次のように推測される。急性感染や実験的にLPS結核菌細胞壁接種すると、敗血症防止のための非特異的生体防御反応である低鉄血症が起こり、その後トランスフェリン(Tf)に結合している血清鉄は、ラクトフェリン(Lf)の介在でMφ内へ移動し、Mφ内の鉄濃度は高まり、ヨーネ菌増殖が促進される。宿主が細菌増殖に必須の鉄を菌に利用されないように、血中からMφ内に隠したところ、その隠し場所にヨーネ菌が待っていたという皮肉な現象である。

これは、(i).抗酸菌の産生する2種類の鉄キレート脂溶性のマイコバクチンと水溶性エキソケリン)は、宿主の鉄結合性蛋白{フェリチン(Ft)、TfおよびLf}から鉄を奪い、菌に供給することがinvitro で証明されていること、(ii).免疫組織学的にヨーネ病肉芽腫にはこれら鉄結合性蛋白が局在していること、(iii).マイパクチンの存在しないpHの低い状態では、TfとLfから遊離した鉄を利用してヨーネ菌が増殖することがラジオメトリック法で証明されていること、(iv). 肉芽腫を構成する類上皮細胞は、活性化・分化したMφであり、活性化Mの結合鉄取り込みはMφに比べて有意に高いことが知られていること、を根拠としている( 百溪英一、ヨーネ病の病理発生機構の研究、農林水産省家畜衛生試験場研究報告、96:275-280 (1991) 。

このように、ヨーネ病の感染から発症に至るまでの病理発生機序についてはかなり明らかにされてきているものの、腸管膜リンパ節Mφにヨーネ菌が静止状態で存在する間に、ヨーネ菌を排除するための治療法は、現在、実用化レベルまでに至ってないし、我が国ではヨーネ病は家畜法定伝染病に指定されているため抗生物質などによる治療は行わない。実験的報告はあるものの、治療停止後に再発し、また肉やミルク中への抗生物質移行の問題があり実用的ではない(St-Jean G, Jernigan AD 、Treatment of Mycobacterium paratuberculosis infection in ruminants. Vet Clin North AmFood Anim Pract.,7:793-804,(1991))。また、これまでに本感染を予防する決定的な技術も開発されておらず、単に排菌する母牛やその汚染環境から新生動物を隔離したり、汚染環境の殺菌消毒など一般的な感染病の予防方法を施すという程度に過ぎなかった。

従来、ヨーネ病に対する具体的な対策としては、ヨーネ菌死菌をオイルアシパンドとともに皮下などに打つワクチン接種がなされており効果があるという報告等がある(van Schaik G, Kalis CH, Benedictus G, Dijkhuizen AA, HuirneRB、Cost-benefit analysis of vaccination against paratuberculosis in dairy cattle. Vet Rec 139:624-7(1996)、Molina JM, Anguiano A, Ferrer O 、Study on immune response of goats vaccinated with a live strain of Mycobacterium paratuberculosis. Comp Immunol Microbiol Infect Dis 19:9-15(1996))。しかし、これらの方法は感染後の細胞性免疫を高めるものの、感染防御効果はなく、発症率を低下させるのみである。そのため、糞便から排菌を続ける不顕性感染牛を生じ、根本的な問題解決が図れないばかりか、汚染を拡大してしまうという問題がある。

ヨーネ病に対する経口ワクチンはヨーネ病の研究の歴史上一度だけ試されており、病原性のないとされるヨーネ菌株の生菌を成経口投与し、その後ヨーネ菌感染を行っている。この経口ワクチンでは感染防御効果が得られなかったという報告されている(GilmourNL, Absense of immunogenicity of an oral vaccine against Mycobacterium paratuberculosis in sheep, J Comp Pathol 83:437-445 (1973) 。この実験では非病原性でマイコバクチン非依存性のヨーネ菌株とされた316F株が用いられたが、その後の報告では316F株はヨーネ菌とは異なった菌株であることが報告されている〔ThorelMF, Krichevsky M, Levy-Frebault VV, Numericaltaxonomy of mycobactin-dependent mycobacteria, emended description of Mycobacterium avium, and description of Mycobacterium avium subsp. aviumsubsp. nov., Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis subsp. nov., and Mycobacterium avium subsp. silvaticum subsp. nov. Int J Syst Bacteriol40:254-60(1990); Ohene-Gyan KA, Haagsma J, Davies MJ, Hounsell EF、Novel glycolipidsof Mycobacterium avium and related M. paratuberculosis strains of relevance toAIDS an Crohn's disease. Comp Immunol MicrobiolInfect Dis 18:161-70 (1995) 〕。

M細胞に関わる免疫についての特許については、例えば宿主のパイエル板細胞等のIgAの産生部位を刺激し、IgA産生活性を促進させてその産生量を増加させ、感染予防やアレルギー反応を阻止するするために、ビフィドバクテリウム属菌プロトプラストまたは細胞質膜を経口投与する技術(特開平4−342533号公報)、経口投与後効率的に消化管内パイエル板に薬剤を送運させるために、リポソームエマルジョン、または水溶性ミセル等の経口投与用脂質まく構造体の膜成分にホスファチジルセリンマンノース誘導体マンナン誘導体などの特定の物質を含有させる技術(特開平5−17344号公報)、同じくパイエル板への生理活性物質を効率的に移行させるために、ホスファチジルコリンコレストロールおよびホスファチジルイノシトール脂質成分として含有するリポソームと該リポソームに封入される生理活性物質とを含有してなる製剤を経口投与する技術(特許第2814307号)等があるが、ヨーネ病の感染防御に特異抗体が全く無効であるという特徴からも、これらがヨーネ病の防止、治療について特に示唆するものではない。

また、因果関係は明確にされてはいないが、近年、人のクローン病厚生省指定難病)の原因としてヨーネ菌の関与の可能性がクローズアップされてきており、家畜衛生、公衆衛生立場からもヨーネ病に対する抜本的な対策が急務とされており、早期のヨーネ病予防方法や清浄化のための手段が求められている(CollinsMT、Mycobacterium paratuberculosis: a potential food-borne pathogen?J Dairy Sci 80:3445-8 (1997);Engstrand L 、Mycobacterium paratuberculosis and Crohn's disease. Scand J Infect Dis Suppl 98:27-9、1995))。

概要

本発明は、新生動物、特に子牛のヨーネ病感染を予防するための方法を提供することを目的とする。

ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生動物に経口投与してヨーネ菌の特異的侵入経路である腸粘膜のM細胞の取り込み制御を誘導し、その後の生きたヨーネ菌の侵入を阻害することからなるヨーネ病感染に対する予防方法。

分娩後直ちに子牛を母牛から隔離し、無菌的な初乳と混合された本死菌ワクチンを与えることにより、母乳由来のヨーネ菌ばかりでなく、環境由来のヨーネ菌などが経口接種されたとしても、ヨーネ菌のM細胞からの侵入を阻害することにより、ヨーネ菌の組織内への侵入(感染の成立)を阻止することができる。

目的

本発明は、以上述べたヨーネ病に関する背景をもとになされたものである。すなわち、本発明は、新生動物、特に子牛のヨーネ病感染を予防するための方法およびヨーネ病感染予防ワクチンを提供することを目的とする。これにより、ヨーネ病非感染子牛を生育、生産し、ヨーネ菌感染のない清浄牛群の確立を図るとともに、世界的に経済的損耗が問題になっているヨーネ病の対策に積極的な打開策を提供しようとするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

M細胞の取り込み制御を誘導することによりの感染を予防する方法。

請求項2

ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生動物経口投与してヨーネ菌の特異的侵入経路である腸粘膜のM細胞の取り込み制御を誘導し、その後の生きたヨーネ菌の侵入阻害することからなるヨーネ病感染に対する予防方法

請求項3

ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生子牛に経口投与することからなる牛のヨーネ病感染に対する予防方法。

請求項4

清浄初乳とともにヨーネ菌死菌を経口投与することを特徴とする請求項2または3記載のヨーネ病感染に対する予防方法。

請求項5

ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)の加熱死菌を含有することからなる新生子牛用ヨーネ病感染予防ワクチン

請求項6

正常初乳にヨーネ菌死菌を含有させてなるヨーネ病感染予防ワクチン。

技術分野

0001

本発明は、新生動物、特に子ヨーネ病感染を予防するための方法およびヨーネ病感染予防ワクチンに関する。

背景技術

0002

ヨーネ病は、抗酸菌一種であるヨーネ菌に起因する慢性肉芽腫性下痢性伝染病である。我が国の牛群におけるヨーネ病汚染については、1980年以降、その発生頭数及び発生地共に拡大傾向にある。すなわち、1990年代より100〜200頭/年の発生があり、1999年には800頭を越えている。

0003

ヨーネ病は出生後、早期に子牛が経口的にヨーネ菌に感染することで成立するが、ヨーネ病の感染から発症までのプロセスは、未だ不明の部分が多く、個体レベルでの感染経過の差異が他の疾病に類を見ないほど大きい。超慢性感染症ともいえる本病の場合、子牛の時に経口感染し、その後、一般には、平均3年〜6年以上発病しない。中には10数年以上発病しない場合もあり、極端には一生発症しない場合もある。つまり、ヨーネ菌感染牛には、不顕性感染牛と発症牛があり、不顕性感染牛には、抗体を有し、一定の病変を形成している無症状牛と、ヨーネ菌に対する抗体反応や細胞性免疫が検出しがたいキャリアー牛が存在する。

0004

この臨床症状や抗体の検出されない不顕性感染牛(キャリアー牛)は、免疫学的診断ELISA法)では診断できない感染牛である。このキャリアー牛は、特異的抗体レベルが診断限界以下でありながら、病変を持ち、不規則な排歯があるため、防疫上極めて問題になる。特に、ELISA法が免疫学的診断のスタンダードとして世界中で用いられている現在、このELISA法による摘発が進んでくるため、感染レベルが低い牛が残るようになる結果、ELISA法では摘発できないキャリアー牛が相対的に増えているともいえる。

0005

このキャリアー牛の不規則な排菌は、感染の拡大に特に重要であり、糞便からのヨーネ菌を分離することが、この時期に可能である唯一確実な診断法である。しかし、この菌分離を使った診断も、その診断に必要な量の菌の培養に数か月を費やさなけれはならないという問題がある。

0006

一般に、ヨーネ菌は、非定型抗酸菌III 群に属し、通常、マイコバクチンを添加した培地上のみで増殖する、特殊栄養要求性の細菌である。目に見えコロニー形成には7〜11週も要する超遅発育性の細菌であるため、それが、菌分離による診断法の推進を遅らせている。近年、ヨーネ菌のDNAの持つ特異的挿入配列IS900 の検出を行うには、ポリメラーゼチェーンリアクション(Polymerase chain reaction :PCR) により早期鑑別することが可能になってきたが、糞便からのヨーネ菌検出にはPCR阻害物質の存在などにより菌分離より感度が得られない場合がある。

0007

ヨーネ病の診断には、細菌分離、抗体検出の他に、ヨーネ菌に対する宿主細胞性免疫応答を検出する方法がある。結核感染におけるツベルクリン反応と同様の皮内反応が「ヨーニン反応」として用いられているが、感染の比較的初期にのみ細胞性免疫応答が起き、その後低下して検出できなくなるという、ヨーネ菌感染における特異的な細胞性免疫応答の経過から、その応用は感染後比較的初期に限られる。また、ヨーネ菌抗原を認識したTリンパ球が再度の抗原暴露の際に反応・活性化する際にインターフェロンガンマーを産生するという現象を利用した、細胞性免疫検出キット海外販売されていたが、現在は販売中止となっている。

0008

これまで、菌分離による診断法、特異抗体の検出や細胞性免疫の検出、病理組織学的診断などによる診断がなされてきたが、これらの検査で捕まらない不顕性感染個体に対してはこれまで十分な防疫および清浄化が困難であった。このようにヨーネ病の発生機序は、複雑で不明な点が多く、菌分離や免疫学的断法によっても診断できない感染動物が存在するため、経済被害は極めて大きく且つ深刻である。しかし、本病の蔓延を妨止するための病理・細菌・免疫学なとの研究が、現在着実に進んでいることも確かであるが、現状では糞便中のヨーネ菌の有無を定期的に調べるか、感染牛の抗体が自然に上昇するのを捕らえて免疫学的診断を行うというのが現状のヨーネ病に対する診断の実状であるといえる。

0009

ヨーネ病の感染から発症に至るまてのプロセスに関し、これまでに明らかにされている事項について以下に述べる。ヨーネ病は、ヨーネ菌が腸管腔内に存在するというだけでは菌増殖や宿主の病的被害は起こらない。ヨーネ歯はサルモネラ菌シゲラ菌、ある種の大腸菌およぴトレポネーマのような運動性細胞侵襲性を持たず、腸粘膜バリヤーをいかして突破するのかは長い間不明であった。新生子牛小腸吸収上皮細胞が初乳抗体などの巨大分子ピノサイトーシス飲作用)により活発に取り込むことから、初乳ミルクとともに飲み込まれたヨーネ菌も同様に取り込まれるであろうと推測がなされていたが、その後それは事実でないことが明らかにされた(Chiodini RJ, Van Kruiningen HJ, Merkal RS、Ruminant paratuberculosis (Johne's disease): the current status andfuture prospects. Cornell Vet. 74(3):218-62 (1984)。

0010

本発明者らは、子牛の回腸ループを用いた実験で、腸腔のヨーネ菌が腸腔のパイエル板ドーム部を被う特珠なM細胞貪食により受動的上皮内に取り込まれ、さらに、上皮内・上皮下マクロファージ(Mφ)によりさらにリンパ装置の目的部に運ばれることを光学顕微鏡的および電子顕微鏡的に明らかにした〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師雑誌42:229-237 (1992) 〕。この実験感染では、M細胞以外の絨毛吸収上皮細胞や未分化クリプト上皮細胞胚細胞などによるヨーネ菌取り込みは認められなかった。さらに、ヨーネ菌に対する抗体がヨーネ菌のパイエル板内侵入を促進する可能性を示唆することを、本発明者はすでに明らかにしている。子牛にヨーネ菌が感染する場合、母牛の糞便中に排出された菌が乳房などの体表や環境に付着し、子牛が経口感染するが、不顕性感染牛の乳房上リンパ節の27%、ミルク中に11.6% のヨーネ菌が検出されることから、感染のある地域では糞便以外にミルクや初乳中にもヨーネ菌が存在し、糞便やミルクも重要な感染源となることが明らかにされた〔Sweeney R, Whitlock R, and RosenbergerAE, Journal of Clinical Microbiology 30:166-171 (1992) 〕。

0011

子牛の小腸の粘膜リンパ装置は、全小腸組織の86%を占め、その1/3が上部小腸に、残り2/3が回腸に分布しており、また、回腸パイエル板のドーム上皮は、M細胞のみの均一な構成細胞からなるが、小腸上部に分布するリンパ装置のドームはM細胞と通常の吸収上皮細胞の混在した状態で被われていることが知られている〔Liebler E, Inaugural-Dessertation zur Erlargung des Grades eines Doctor Medicinae dir Tierarzliche Hochshule Hannover(1985) 〕。したがって、本発明者らの上記光学顕微鏡的・電子顕微鏡的観察結果は、ヨーネ菌の侵入門戸(M細胞)は回腸により多く準備されていることを示しており、ヨーネ病の初期感染病変が回腸下部に形成されやすい理由を説明するものであるといえる。

0012

M細胞は、腸管腔内に存在する腸内細菌を無制限、無差別に取り込むのではなく、そこには選択的取り込み機構があるとされており、Vibrio cholerae では生菌のみがウサギの腸のM細胞に取り込まれているというが、ヨーネ菌の場合は生菌、死菌ともに取り込まれており、その選択機構は単純なものではない〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師会雑誌42:229-237 (1992) 〕。腸は、栄養物としては多種類の食事性抗原の取り込みを余儀なくされる組織であるが、無駄なあるいは過剰な免疫反応食物アレルギー等)を起こさないように危険性のない食餌性抗原と病原性微生物抗原を区別する機構を持っており、これにはTリンパ球が関与している。

0013

M細胞は、ペルオキシダーゼなどの巨大分子や種類によるが、細菌をも取り込むことが証明されている。またクラミジアspや数種類ウイルスがM細胞に感染することが知られており、次第に腸管腔内の抗原のサンプリングおよびその輸送という生体防御機能と同時に特定の感染ルートとしての意義も明らかにされてきている。しかし、これまで、M細胞の機能や役割について現在までに明らかにされている部分は僅かであった〔Owen RL 、Uptake and transport of intestinal macromolecules and microorganisms by M cells in Peyer's patches--a personal and historical perspective.Semin Immunol 11:157-63 (1999)〕。この機能の解明が進むとM細胞によるヨーネ菌の取り込み阻止というような形の感染予防が可能になることを、本発明者らはすでに明らかにしている〔百溪英一、ヨーネ病の病理発生と防疫について、日本獣医師会雑誌42:229-237 (1992) 〕。

0014

ところで、感染後、平均3年〜6年以上発病しないこの潜伏期間中においては、ヨーネ菌は腸粘膜腸管膜リンパ節のマクロファージ(Mφ)に静止状態で存在しており、不顕性感染状態にあると考えられる実験感染子牛組織の病変は、非常に少数のMφ系細胞からなり、極めて少数の菌しか見られず、組織切片上に菌が証明できない場合が多い。この潜伏期に病変から発症期への引き金となるのは、下痢症状や大量の排歯(糞便1g中に10〜100万個)に先駆けて、静止状態の病変内での菌の増殖亢進と、それにそれに伴う細胞外への菌や菌抗原の放出が起こると考えられる。

0015

その結果、Mφが病変に集合定着し、肉芽腫の形成・拡大が起こり、同時に液性免疫応答も高まる。Mφ内で潜伏しているヨーネ菌の増殖を亢進させる機構については、ヨーネ菌がマイコバクチン依存性で、増殖・代謝に必須の鉄獲得能が極めて弱く特殊である点から、細胞内でも当然、鉄の有無・鉄イオン濃度に左右されるわけで、組織細胞内の鉄や鉄結合性蛋白と菌増殖の関係は重要視される〔Momotani E, Immunohistochemical distribution ofyferritin, lactoferrin, and transferrin ingranulomas of bovine paratuberculosis. Infect Immun. 52:623-627 (1986).;百溪英一、ヨーネ病の病理発生機構の研究、農林水産家畜衛生試験場研究報告、96:275-280 (1991) 〕。

0016

この潜伏しているヨーネ菌の増殖を亢進させる機構については、次のように推測される。急性感染や実験的にLPS結核菌細胞壁接種すると、敗血症防止のための非特異的生体防御反応である低鉄血症が起こり、その後トランスフェリン(Tf)に結合している血清鉄は、ラクトフェリン(Lf)の介在でMφ内へ移動し、Mφ内の鉄濃度は高まり、ヨーネ菌増殖が促進される。宿主が細菌増殖に必須の鉄を菌に利用されないように、血中からMφ内に隠したところ、その隠し場所にヨーネ菌が待っていたという皮肉な現象である。

0017

これは、(i).抗酸菌の産生する2種類の鉄キレート脂溶性のマイコバクチンと水溶性エキソケリン)は、宿主の鉄結合性蛋白{フェリチン(Ft)、TfおよびLf}から鉄を奪い、菌に供給することがinvitro で証明されていること、(ii).免疫組織学的にヨーネ病肉芽腫にはこれら鉄結合性蛋白が局在していること、(iii).マイパクチンの存在しないpHの低い状態では、TfとLfから遊離した鉄を利用してヨーネ菌が増殖することがラジオメトリック法で証明されていること、(iv). 肉芽腫を構成する類上皮細胞は、活性化・分化したMφであり、活性化Mの結合鉄取り込みはMφに比べて有意に高いことが知られていること、を根拠としている( 百溪英一、ヨーネ病の病理発生機構の研究、農林水産省家畜衛生試験場研究報告、96:275-280 (1991) 。

0018

このように、ヨーネ病の感染から発症に至るまでの病理発生機序についてはかなり明らかにされてきているものの、腸管膜リンパ節Mφにヨーネ菌が静止状態で存在する間に、ヨーネ菌を排除するための治療法は、現在、実用化レベルまでに至ってないし、我が国ではヨーネ病は家畜法定伝染病に指定されているため抗生物質などによる治療は行わない。実験的報告はあるものの、治療停止後に再発し、また肉やミルク中への抗生物質移行の問題があり実用的ではない(St-Jean G, Jernigan AD 、Treatment of Mycobacterium paratuberculosis infection in ruminants. Vet Clin North AmFood Anim Pract.,7:793-804,(1991))。また、これまでに本感染を予防する決定的な技術も開発されておらず、単に排菌する母牛やその汚染環境から新生動物を隔離したり、汚染環境の殺菌消毒など一般的な感染病の予防方法を施すという程度に過ぎなかった。

0019

従来、ヨーネ病に対する具体的な対策としては、ヨーネ菌死菌をオイルアシパンドとともに皮下などに打つワクチン接種がなされており効果があるという報告等がある(van Schaik G, Kalis CH, Benedictus G, Dijkhuizen AA, HuirneRB、Cost-benefit analysis of vaccination against paratuberculosis in dairy cattle. Vet Rec 139:624-7(1996)、Molina JM, Anguiano A, Ferrer O 、Study on immune response of goats vaccinated with a live strain of Mycobacterium paratuberculosis. Comp Immunol Microbiol Infect Dis 19:9-15(1996))。しかし、これらの方法は感染後の細胞性免疫を高めるものの、感染防御効果はなく、発症率を低下させるのみである。そのため、糞便から排菌を続ける不顕性感染牛を生じ、根本的な問題解決が図れないばかりか、汚染を拡大してしまうという問題がある。

0020

ヨーネ病に対する経口ワクチンはヨーネ病の研究の歴史上一度だけ試されており、病原性のないとされるヨーネ菌株の生菌を成経口投与し、その後ヨーネ菌感染を行っている。この経口ワクチンでは感染防御効果が得られなかったという報告されている(GilmourNL, Absense of immunogenicity of an oral vaccine against Mycobacterium paratuberculosis in sheep, J Comp Pathol 83:437-445 (1973) 。この実験では非病原性でマイコバクチン非依存性のヨーネ菌株とされた316F株が用いられたが、その後の報告では316F株はヨーネ菌とは異なった菌株であることが報告されている〔ThorelMF, Krichevsky M, Levy-Frebault VV, Numericaltaxonomy of mycobactin-dependent mycobacteria, emended description of Mycobacterium avium, and description of Mycobacterium avium subsp. aviumsubsp. nov., Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis subsp. nov., and Mycobacterium avium subsp. silvaticum subsp. nov. Int J Syst Bacteriol40:254-60(1990); Ohene-Gyan KA, Haagsma J, Davies MJ, Hounsell EF、Novel glycolipidsof Mycobacterium avium and related M. paratuberculosis strains of relevance toAIDS an Crohn's disease. Comp Immunol MicrobiolInfect Dis 18:161-70 (1995) 〕。

0021

M細胞に関わる免疫についての特許については、例えば宿主のパイエル板細胞等のIgAの産生部位を刺激し、IgA産生活性を促進させてその産生量を増加させ、感染予防やアレルギー反応を阻止するするために、ビフィドバクテリウム属菌プロトプラストまたは細胞質膜を経口投与する技術(特開平4−342533号公報)、経口投与後効率的に消化管内パイエル板に薬剤を送運させるために、リポソームエマルジョン、または水溶性ミセル等の経口投与用脂質まく構造体の膜成分にホスファチジルセリンマンノース誘導体マンナン誘導体などの特定の物質を含有させる技術(特開平5−17344号公報)、同じくパイエル板への生理活性物質を効率的に移行させるために、ホスファチジルコリンコレストロールおよびホスファチジルイノシトール脂質成分として含有するリポソームと該リポソームに封入される生理活性物質とを含有してなる製剤を経口投与する技術(特許第2814307号)等があるが、ヨーネ病の感染防御に特異抗体が全く無効であるという特徴からも、これらがヨーネ病の防止、治療について特に示唆するものではない。

0022

また、因果関係は明確にされてはいないが、近年、人のクローン病厚生省指定難病)の原因としてヨーネ菌の関与の可能性がクローズアップされてきており、家畜衛生、公衆衛生立場からもヨーネ病に対する抜本的な対策が急務とされており、早期のヨーネ病予防方法や清浄化のための手段が求められている(CollinsMT、Mycobacterium paratuberculosis: a potential food-borne pathogen?J Dairy Sci 80:3445-8 (1997);Engstrand L 、Mycobacterium paratuberculosis and Crohn's disease. Scand J Infect Dis Suppl 98:27-9、1995))。

発明が解決しようとする課題

0023

本発明は、以上述べたヨーネ病に関する背景をもとになされたものである。すなわち、本発明は、新生動物、特に子牛のヨーネ病感染を予防するための方法およびヨーネ病感染予防ワクチンを提供することを目的とする。これにより、ヨーネ病非感染子牛を生育、生産し、ヨーネ菌感染のない清浄牛群の確立を図るとともに、世界的に経済的損耗が問題になっているヨーネ病の対策に積極的な打開策を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

0024

本発明者らは、新生子牛の腸組織のパイエル板M細胞が、ヨーネ菌の唯一の侵入門戸であり、本細胞は腸管内の抗原情報を過剰に取り込まない機構を有していることを先に明らかにしているが、その後鋭意研究を重ねた結果、その取り込み制御機構を人為的に誘導できるという知見、すなわち、新生動物、特に新生子牛のパイエル板ドーム上皮のM細胞が、ヨーネ菌の取り込みを持続的に行わない性質(貪食の抑制制御)を、人為的な死菌の経口投与により誘導して、ヨーネ菌生菌の特異的侵入門戸であるM細胞からの受動的侵入(取り込みによる侵入)を抑制することにより、子牛のヨーネ病感染を予防することができることを見出し、本発明を完成したものである。本発明の経口ワクチンは、生後直ちに初乳ともにヨーネ菌死菌を投与するという点から全く新しい方法であり、前記Gilmoure(1973)の報告とは全く異なった考え方仕組みに立脚した内容のワクチンである。

0025

すなわち、本発明は、(1)、M細胞の取り込み制御を誘導することにより牛の感染を予防する方法に存する。そして、(2)、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生動物に経口投与してヨーネ菌の特異的侵入経路である腸粘膜のM細胞の取り込み制御を誘導し、その後の生きたヨーネ菌の侵入を阻害することからなるヨーネ病感染に対する予防方法に存する。そしてまた、(3)、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)を加熱により死菌とし、死菌とした該ヨーネ菌を新生子牛に経口投与することからなる牛のヨーネ病感染に対する予防方法に存する。そしてまた、(4)、清浄な初乳とともにヨーネ菌死菌を経口投与するヨーネ病感染に対する予防方法に存する。そしてまた、(5)、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)の加熱死菌を含有することからなる新生子牛用ヨーネ病感染予防ワクチンに存する。そしてまた、(6)、正常初乳にヨーネ菌死菌を含有させてなるヨーネ病感染予防ワクチンに存する。

0026

本発明は、新生子牛の腸組織のパイエル板M細胞は、ヨーネ菌唯一の侵入門戸であり、このM細胞は腸管内の抗原情報を過剰に取り込まない機構を有し、その取り込み機構を人為的に誘導する、つまり、新生子牛に加熱死菌を経口投与すると、M細胞はその後の生きたヨーネ菌の侵入を阻害する、という事実を適用してヨーネ病の予防を行うものである(図1参照)。具体的には、一定量のヨーネ菌加熱死菌を、牛の無菌フリーズドライ初乳に混入して製剤として、適宜温湯にて希釈し、分娩後、母牛から隔離した新生子牛に数日間経口投与し、適宜投与機関および投与後のM細胞によるヨーネ菌に対する取り込みを特異的に制御するものである。その際に、無菌的初乳とともに当該ワクチンを与えることにより、子牛の免疫抵抗性強化と母牛のミルクを介したヨーネ菌の感染を阻止することができる。

0027

本発明のワクチンの製造およびその適用は、次ぎの(1)〜(5)の過程を経て行われる。
(1)ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis )の培養
M. avium subspecies paratuberculosis (ATCC10698株) をマイコバクチンPを2mg/L(Allied Laboratories, INC, Fayette, Mo, USA) 添加したMiddlebrook7H9液体培地(DIFCO、USA)で10日間培養した。培養には細胞培養用フラスコ(800ml 容量、スミロンMS-20800)を用い、培地の深さは1-2cm で37℃静置で行う。105 cfu/mlのヨーネ菌から10日間培養で108 CFU/ml菌を得る。培養菌液は50mlTPX 製遠心管(スミロンMS-57150) に分注し、2000Gにて遠心し、菌のペレットを得る。これに0.01%の0.01Mの無菌PBSを加え、再度懸濁し遠心洗浄を行う。
(2)経口投与死菌製造
72℃20分間加熱し、冷却後、凍結するかまたは凍結乾燥してを保存する。
(3)無菌処理初乳と混合
無菌的初乳ないし45℃に加熱した温湯に乾燥初乳(日本農産工業製マザーミルク等)を300g/900mlとなるように混入し、ヨーネ菌死菌を5×1010個/900ml初乳となるように加えて調整する。
(4)分娩後新生子牛に経口投与
子牛は分娩後直ちに母牛から隔離して、清浄な環境下におき、分娩後30分以内にストマックチューブにてヨーネ菌死菌入り初乳を900ml/30〜40kg/ 頭、投与する。12時間以内に同量を投与する。翌日は初乳濃度を(3)の1/2 に低下させたものを一日に2回、同量だけ投与する。
(5)(4)の処理後は無菌乾燥初乳ないし人工乳で隔離保育する。

0028

子牛M細胞のヨーネ菌取り込みと、連続取り込み抑制の確認;
実験方法
:生後1〜3日齢ホルスタイン種子牛9頭(初乳未摂取子牛)を全身麻酔下で横臥させ、外科開腹手術により回腸末端部に2重結紮による回腸ループを複数作成し、ヨーネ菌生菌ないしは死菌浮遊液注入し、接種後、15、30、60分後に全身麻酔下で腸組織を取り出しホルマリン固定パラフィン包埋を実施し、4 μm の組織標本を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色およびチールネルゼン染色を行い光学顕微鏡による観察を行った。さらに同様の実験を8頭の初乳未摂取子牛を用いて行い、ヨーネ菌生菌ないしは死菌浮遊液注入後6時間ないし20時間目に再度、全身麻酔下で腸組織を取り出しホルマリン固定パラフィン包埋を実施し、4μm の組織標本を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色およびチールネルゼン染色を行い光学顕微鏡による観察を行った。

0029

〔実験結果〕接種後15、30、60分の回腸パイエル板内にヨーネ菌の侵入は認められなかった。しかし、接種後6〜20時間の回腸組織には腸管腔内に様々な数のヨーネ菌が観察された。回腸組織内ではヨーネ菌はパイエル板内に限られた数の生菌や死菌が観察されたが、その前後の時間にはほとんど観察されなかった。腸管腔内には多数のヨーネ菌が存在するにもかかわらず、パイエル板に取り込まれた菌数は一般に非常に少数であり、全く菌が認められない例もあった。これらの実験から、ヨーネ菌の生菌や死菌の粘膜内取り込みは、M細胞の取り込みにより成立するものであるが、ヨーネ菌の持続的取り込みは起こらないことが示された。少なくともヨーネ菌については生菌や死菌に対するM細胞の取り込みに関する制御機構が存在することが明らかにされた。この実験から、十分な量の死菌を分娩直後に経口投与すると、一定のM細胞によるヨーネ菌死菌取り込み後に生菌の取り込みが阻害される可能性が示された(図2参照)。

0030

〔実験方法〕マウスは経口的にヨーネ菌感染を起こすことから、上記子牛の実験で得られたデータを元に、マウスにヨーネ菌の生菌を一度〜連続投与して、異なった経過時間でパイエル板内のヨーネ菌の病理学的証明を行った。C57BL/6 マウス、雌、14週齢24頭にヨーネ菌(ATCC10698 株) 生菌を2×107cf/0.5mlをPBSに浮遊させゾンデにより1回のみ経口接種した。一方16匹の同種マウスに同様に死菌を経口接種した。マウスは接種後、0、4 、5 、6 、7 、21、22、23時間目に死菌接種マウスは各3頭、死菌接種では各2頭をエーテルによる過麻酔下で安楽死後、パイエル板の存在する部位の腸管を全て採取し20%ホルマリン固定した。パラフィン包埋組織標本を抗酸菌染色してヨーネ菌の局在を観察した。

0031

〔実験結果〕パイエル板内の生菌は4時間目および22時間目各一例に、死菌は7、21、22時間目に少数認められた。腸管腔内には種々の数の抗酸菌が認められた。この実験から、マウスに経口投与した場合、ヨーネ菌生菌、死菌ともにマウスのパイエル板内に取り込まれるが、菌数は限られていることが明らかにされた(図3参照)。

0032

〔実験方法〕マウスに経口投与されたヨーネ菌が常に腸管内に存在する場合にパイエル板への取り込みが持続的に起こるのかどうかをヨーネ菌死菌を用いて行った。実験方法:実験2と同様のマウスにヨーネ菌死菌浮遊液を1時間間隔で3回にわたり胃ゾンデで接種した。その後、0、2 、3 、4 、5 、6 、7時間目にパイエル板の存在する腸管部位を採取し、病理組織学的にヨーネ菌の局在を観察した。

0033

〔実験結果〕5時間目の1症例にヨーネ菌が観察されたのみで、他の症例には組織内のヨーネ菌は認められなかった。腸管腔内には種々の数の抗酸菌が証明された。この実験から、腸管腔内に常にヨーネ菌が存在する状態においても、同じ腸管部位に存在するパイエル板の中に、ヨーネ菌が常に観察されないことが確認された。この所見は、パイエル板に隣接して多くのヨーネ菌が存在していても、パイエル板のM細胞はこれを継続的に取り込んでいないことを意味している(図4参照)。

0034

牛同様のヨーネ病に感染発症するヤギの回腸ループ系を用いて、M-cellワクチンの効果を確認した。
〔実験方法〕シバヤギ3頭を用い、2頭を出生直後から隔離し、2 日目まで、ヨーネ菌死菌を混入した牛初乳ドライミルク(M細胞ワクチン)を投与した。その後は母山羊のもとにもどし、母乳と通常の人工乳を与えながら保育し、生後20日目に全身麻酔下で、前述同様に回腸末端部にループを形成し、ヨーネ菌 (ATCC10698株)生菌を109 cfu/mlをループ内に接種した。接種後6時間および20時間目に再度全身麻酔下で外科的にループを摘出し、病理組織学的にヨーネ菌の局在について観察を行った。本ワクチン非投与対照には同日齢の通常飼育された子山羊を用いて20時間目の観察を行った。

0035

〔実験結果〕ワクチン非投与のシバヤギの回腸ループのパイエル板ドーム組織内のマクロファージ内にわずかの抗酸菌が観察された。しかし、ワクチン投与をされたシバヤギのパイエル板上皮およびドーム組織内にはヨーネ菌は観察されなかった。いずれの症例においても、回腸ループの腸管腔内には著しく多数のヨーネ菌が観察された。この実験から、生後直ちにヨーネ菌死菌を初乳とともに接種されたシバヤギでは、ヨーネ菌の侵入経路であるM細胞に富んだ回腸ループ内へのヨーネ菌接種においても、M細胞によるヨーネ菌の取り込みが抑制されていることが示された。この結果は牛などの他の反芻動物のヨーネ病感染予防にも本ワクチンが適用できることを明らかである(図5参照)。

発明の効果

0036

分娩後直ちに子牛を母牛から隔離し、無菌的な初乳と混合された本死菌ワクチンを与えることにより、母乳由来のヨーネ菌ばかりでなく、環境由来のヨーネ菌などが経口接種されたとしても、ヨーネ菌のM細胞からの侵入を阻害することにより、ヨーネ菌の組織内への侵入(感染の成立)を阻止することができる。その結果、本発明のワクチンを用いた予防方法により、すでにヨーネ病に汚染した地域であっても、ヨーネ病非感染子牛を生育、生産し、ヨーネ菌感染のない清浄牛群の確立を図ることが可能である。

図面の簡単な説明

0037

図1図1は、ヨーネ菌の侵入門戸である、小腸パイエル板およびドーム部の図、ならびにヨーネ菌死菌によるM細胞の取り込み抑制機構を示す図である。
図2図2は、実験1の結果を示す図である。
図3図3は、実験2の結果を示す図である。
図4図4は、実験3の結果を示す図である。
図5図5は、実験4の結果を示す図である。

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