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技術 位相差板およびその作製方法

出願人 富士ゼロックス株式会社
発明者 新津岳洋
出願日 2000年4月21日 (19年6ヶ月経過) 出願番号 2000-120679
公開日 2001年10月31日 (18年0ヶ月経過) 公開番号 2001-305343
状態 未査定
技術分野 回折格子、偏光要素、ホログラム光学素子 液晶4(光学部材との組合せ) 偏光要素 液晶4(光学部材との組合せ)
主要キーワード スピンコート回転数 マックスウェル 電場無印加 偏波面方向 黄赤色 塗布設備 光誘起複屈折 積分量
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図面 (13)

課題

従来の位相差板とは全く異なる原理に基づいて1/4波長板として機能するとともに、容易に作製することができる位相差板を提供する。

解決手段

光記録媒体14として、光誘起複屈折性を示す光記録層を備えるものを用い、楕円偏光物体光43として光記録媒体14に照射すると同時に、直線偏光参照光44として光記録媒体14に照射して、光記録媒体14の光記録層中で物体光43の楕円偏光と参照光44の直線偏光とを干渉させて、光記録層に異方性格子を記録する。このように異方性格子を記録した光記録媒体14は1/4波長板として機能し、記録時の参照光44と同じ直線偏光を照射すれば、物体光43と同じ楕円偏光を、回折光として読み出すことができるとともに、記録時の物体光43と同じ楕円偏光を照射すれば、記録時の参照光44の光路上に参照光44と同じ直線偏光を、回折光として読み出すことができる。したがって、その光記録媒体14を、STN液晶セルを透過した楕円偏光を直線偏光に変換する位相差板として用いることができる。

概要

背景

位相差板は、互いに垂直な方向に振動する直線偏光が板(膜)を通過するとき、これらの間に所定の光路差、したがって所定の位相差を与える複屈折板である。複屈折板の厚さをd、互いに垂直な電気的主軸方向に振動する直線偏光の屈折率をn1,n2とすると、光路差は、|n1−n2|dで与えられる。用いる光の真空中での波長をλとすると、この光路差がλ/4,λ/2,λのものを、それぞれ1/4波長板、1/2波長板、1波長板といい、これらは、それぞれπ/2,π,2πの位相差板に相当する。

例えば、1/4波長板は、互いに垂直な方向に振動する直線偏光の間にλ/4の光路差、すなわちπ/2の位相差を生じるように、厚さdが定められた複屈折板である。1/4波長板は、様々な用途があるが、最近では、液晶ディスプレイ偏光制御素子として用いられている。

液晶ディスプレイは、軽量かつ低電圧駆動が可能である、などの特徴があり、なかでも、STN(Super Twisted Nematic)液晶ディスプレイは、マルチプレックス駆動ドットマトリクス方式によって大画面表示が可能で、従来のTN(Twisted Nematic)液晶ディスプレイに比べて、コントラストが高く、かつ視野角が広いなどの利点があるため、パーソナルコンピュータワードプロセッサなどの、大画面表示を必要とするディスプレイとして広く用いられている。

しかし、STN液晶は、原理上、白黒モードで表示することができず、電場無印加時には緑色ないし黄赤色となり、電場印加時には青色となる。この着色モードによる表示は、使用者から好まれないばかりでなく、カラー化に対応しにくい欠点がある。

そこで、位相差板を用いて、STN液晶セルを透過した楕円偏光楕円率を減少させ(楕円偏光を直線偏光に近づけ)、主軸方向を一定方向に回転させて、着色モードを白黒モードに変換することが考えられている。

位相差板としては、白雲母劈開した薄板が知られているが、これは大面積のものを作製するのが困難であり、大型の液晶ディスプレイに組み込むことができない。そこで、特開平3−87720号や特開平8−292432号では、液晶性高分子を用いたフィルム状の位相差板が提案されている。また、出願人の出願に係る特開平11−231133号では、光誘起複屈折性を示す光記録層を備える光記録媒体を位相差板の材料として用い、その光記録層に直線偏光の記録光照射することによって、光記録層に複屈折誘起させ、記録光の偏波面方向の1/4波長板を形成することが提案されている。

これら従来の位相差板、および、これを用いた従来の位相補正方法は、いずれも、以下の原理に基づくものである。

光は、電磁波の一種であるので、マックスウェル方程式で表すことができ、z軸(光の進行方向)を固定すれば、光の電場ベクトルEは、図11の式(1)で表すことができる。

φxおよびφyは、それぞれx軸およびy軸に対する初期位相で、電場ベクトルEの先端は、その位相差(φx−φy)によって、様々な軌道を描く。これを模式的に表したものが図12であり、位相差(φx−φy)が変化したときの光の偏光状態を示している。

図12(c)(g)に示すように、位相差(φx−φy)がπ/2または3π/2のときには、楕円偏光となる。これが1/4波長板である。

1/4波長板では、進相軸と遅相軸の間の光路差Δn×dが、
Δn×d=(m+1/4)λ …(2)
となるようにされる。dは1/4波長板(複屈折板)の厚さ、Δnは複屈折による屈折率変化、mは0を含む整数である。

したがって、波長λの光が1/4波長板を通過すると、上記の位相差(φx−φy)においてπ/2の変化を生じる。このような位相差変化を生じると、以下のように偏光状態が変化する。

[1]入射光が図12(a)のような直線偏光であれば、透過光は図12(c)のような楕円偏光になる。

[2]入射光が図12(c)のような楕円偏光であれば、透過光は図12(e)のような直線偏光になる。

すなわち、従来の1/4波長板は、膜厚板厚)dと屈折率変化Δnとの積で表される光路差Δn×dが、式(2)を満たすように構成し、液晶ディスプレイの偏光制御素子として用いる場合には、上記[2]によって、STN液晶セルを透過した楕円偏光を直線偏光に変換する。

概要

従来の位相差板とは全く異なる原理に基づいて1/4波長板として機能するとともに、容易に作製することができる位相差板を提供する。

光記録媒体14として、光誘起複屈折性を示す光記録層を備えるものを用い、楕円偏光を物体光43として光記録媒体14に照射すると同時に、直線偏光を参照光44として光記録媒体14に照射して、光記録媒体14の光記録層中で物体光43の楕円偏光と参照光44の直線偏光とを干渉させて、光記録層に異方性格子を記録する。このように異方性格子を記録した光記録媒体14は1/4波長板として機能し、記録時の参照光44と同じ直線偏光を照射すれば、物体光43と同じ楕円偏光を、回折光として読み出すことができるとともに、記録時の物体光43と同じ楕円偏光を照射すれば、記録時の参照光44の光路上に参照光44と同じ直線偏光を、回折光として読み出すことができる。したがって、その光記録媒体14を、STN液晶セルを透過した楕円偏光を直線偏光に変換する位相差板として用いることができる。

目的

そこで、この発明は、従来の位相差板とは全く異なる原理に基づいて1/4波長板として機能して、入射直線偏光を透過楕円偏光に、または入射楕円偏光を透過直線偏光に変換することができるとともに、容易に作製することができる位相差板を提供するものである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

光誘起複屈折性を示す光記録層を備え、この光記録層に、直線偏光楕円偏光との干渉によって異方性格子が記録された位相差板

請求項2

請求項1の位相差板において、前記光記録層が、側鎖に光異性化する基を有する高分子または高分子液晶からなる位相差板。

請求項3

請求項2の位相差板において、前記高分子または高分子液晶が、ポリエステル群から選ばれた少なくとも一種モノマー重合体である位相差板。

請求項4

請求項1の位相差板において、前記光記録層が、光異性化する分子を分散させた高分子からなる位相差板。

請求項5

請求項2〜4のいずれかの位相差板において、前記光異性化する基または分子が、アゾベンゼン骨格を含むものである位相差板。

請求項6

直線偏光と楕円偏光とを、光誘起複屈折性を示す光記録層を備える光記録媒体の前記光記録層に照射し、前記光記録層中で干渉させて、前記光記録層に異方性格子を記録する位相差板作製方法

請求項7

コヒーレント光を発する光源と、この光源からの光から直線偏光を得て、光誘起複屈折性を示す光記録層を備える光記録媒体の前記光記録層に照射する第1の光学系と、前記光源からの光から楕円偏光を得て、前記光記録層中で前記直線偏光と干渉させるように前記光記録層に照射する第2の光学系と、を備える位相差板作製装置

請求項8

偏光板と、この偏光板を透過した直線偏光が入射する液晶セルと、この液晶セルを透過した楕円偏光を直線偏光に変換する請求項1に記載の位相差板と、を備える液晶ディスプレイ

技術分野

0001

この発明は、液晶ディスプレイなどに用いる位相差板およびその作製方法に関する。

背景技術

0002

位相差板は、互いに垂直な方向に振動する直線偏光が板(膜)を通過するとき、これらの間に所定の光路差、したがって所定の位相差を与える複屈折板である。複屈折板の厚さをd、互いに垂直な電気的主軸方向に振動する直線偏光の屈折率をn1,n2とすると、光路差は、|n1−n2|dで与えられる。用いる光の真空中での波長をλとすると、この光路差がλ/4,λ/2,λのものを、それぞれ1/4波長板、1/2波長板、1波長板といい、これらは、それぞれπ/2,π,2πの位相差板に相当する。

0003

例えば、1/4波長板は、互いに垂直な方向に振動する直線偏光の間にλ/4の光路差、すなわちπ/2の位相差を生じるように、厚さdが定められた複屈折板である。1/4波長板は、様々な用途があるが、最近では、液晶ディスプレイの偏光制御素子として用いられている。

0004

液晶ディスプレイは、軽量かつ低電圧駆動が可能である、などの特徴があり、なかでも、STN(Super Twisted Nematic)液晶ディスプレイは、マルチプレックス駆動ドットマトリクス方式によって大画面表示が可能で、従来のTN(Twisted Nematic)液晶ディスプレイに比べて、コントラストが高く、かつ視野角が広いなどの利点があるため、パーソナルコンピュータワードプロセッサなどの、大画面表示を必要とするディスプレイとして広く用いられている。

0005

しかし、STN液晶は、原理上、白黒モードで表示することができず、電場無印加時には緑色ないし黄赤色となり、電場印加時には青色となる。この着色モードによる表示は、使用者から好まれないばかりでなく、カラー化に対応しにくい欠点がある。

0006

そこで、位相差板を用いて、STN液晶セルを透過した楕円偏光楕円率を減少させ(楕円偏光を直線偏光に近づけ)、主軸方向を一定方向に回転させて、着色モードを白黒モードに変換することが考えられている。

0007

位相差板としては、白雲母劈開した薄板が知られているが、これは大面積のものを作製するのが困難であり、大型の液晶ディスプレイに組み込むことができない。そこで、特開平3−87720号や特開平8−292432号では、液晶性高分子を用いたフィルム状の位相差板が提案されている。また、出願人の出願に係る特開平11−231133号では、光誘起複屈折性を示す光記録層を備える光記録媒体を位相差板の材料として用い、その光記録層に直線偏光の記録光照射することによって、光記録層に複屈折誘起させ、記録光の偏波面方向の1/4波長板を形成することが提案されている。

0008

これら従来の位相差板、および、これを用いた従来の位相補正方法は、いずれも、以下の原理に基づくものである。

0009

光は、電磁波の一種であるので、マックスウェル方程式で表すことができ、z軸(光の進行方向)を固定すれば、光の電場ベクトルEは、図11の式(1)で表すことができる。

0010

φxおよびφyは、それぞれx軸およびy軸に対する初期位相で、電場ベクトルEの先端は、その位相差(φx−φy)によって、様々な軌道を描く。これを模式的に表したものが図12であり、位相差(φx−φy)が変化したときの光の偏光状態を示している。

0011

図12(c)(g)に示すように、位相差(φx−φy)がπ/2または3π/2のときには、楕円偏光となる。これが1/4波長板である。

0012

1/4波長板では、進相軸と遅相軸の間の光路差Δn×dが、
Δn×d=(m+1/4)λ …(2)
となるようにされる。dは1/4波長板(複屈折板)の厚さ、Δnは複屈折による屈折率変化、mは0を含む整数である。

0013

したがって、波長λの光が1/4波長板を通過すると、上記の位相差(φx−φy)においてπ/2の変化を生じる。このような位相差変化を生じると、以下のように偏光状態が変化する。

0014

[1]入射光図12(a)のような直線偏光であれば、透過光図12(c)のような楕円偏光になる。

0015

[2]入射光が図12(c)のような楕円偏光であれば、透過光は図12(e)のような直線偏光になる。

0016

すなわち、従来の1/4波長板は、膜厚板厚)dと屈折率変化Δnとの積で表される光路差Δn×dが、式(2)を満たすように構成し、液晶ディスプレイの偏光制御素子として用いる場合には、上記[2]によって、STN液晶セルを透過した楕円偏光を直線偏光に変換する。

発明が解決しようとする課題

0017

しかしながら、光路差Δn×dが式(2)を満たすように構成するのは、かなり困難である。特に、液晶ディスプレイ用などの大面積の位相差板では、膜厚dをむらやばらつきが生じないように所定値に制御するのが難しいので、光路差Δn×dを式(2)を満たすように制御するのは難しい。

0018

そこで、この発明は、従来の位相差板とは全く異なる原理に基づいて1/4波長板として機能して、入射直線偏光を透過楕円偏光に、または入射楕円偏光を透過直線偏光に変換することができるとともに、容易に作製することができる位相差板を提供するものである。

課題を解決するための手段

0019

この発明の位相差板は、光誘起複屈折性を示す光記録層を備え、この光記録層に、直線偏光と楕円偏光との干渉によって異方性格子が記録されたものとする。

0020

この発明の位相差板作製方法では、直線偏光と楕円偏光とを、光誘起複屈折性を示す光記録層を備える光記録媒体の前記光記録層に照射し、前記光記録層中で干渉させて、前記光記録層に異方性格子を記録する。

0021

特開平10−340479号に示されているように、光誘起複屈折性を示す材料は、これに入射する光の偏光状態に感応し、直線偏光を照射すると、光異性化が誘起されて、直線偏光の方向に応じて屈折率の異方性を生じ、偏光方向を記録し、保存することができる。このとき、同時に参照光を照射すれば、物体光の偏光方向をホログラムとして記録することができる。

0022

さらに、物体光と参照光の偏光方向を直交させて、ホログラムを記録することができ、かつ、その記録されたホログラムに参照光を照射することによって、物体光を、その偏光方向が保存された、参照光の偏光方向と直交する偏光方向の回折光として読み出すことができる。さらに、その記録されたホログラムに読み出し光として物体光を照射すると、参照光を、その偏光方向が保存された、読み出し光としての物体光の偏光方向と直交する偏光方向の回折光として読み出すことができる。

0023

すなわち、図7(A)に示すように、光誘起複屈折性を示す材料からなる光記録媒体14に、物体光41として、ある偏光角の直線偏光(これを0°直線偏光とする)を照射すると同時に、参照光42として、物体光41の直線偏光と直交する直線偏光(これを90°直線偏光とする)を照射すると、光記録媒体14中に、物体光41の偏光方向をホログラムとして記録することができ、このようにホログラムが記録された光記録媒体14に、記録時の参照光42と同じ参照光(90°直線偏光)を照射すれば、物体光41を、その偏光方向(0°)が保存された回折光として読み出すことができる。

0024

また、図8(A)に示すように、このようにホログラムが記録された光記録媒体14に、記録時の物体光41と同じ直線偏光(0°直線偏光)45を照射すると、記録時の参照光42の光路上に、参照光42を、その偏光方向(90°)が保存された回折光46として読み出すことができる。このとき同時に、入射直線偏光45が光記録媒体14を直進して、透過直線偏光45aとして得られる。

0025

この発明は、このようなホログラム記録再生方法を応用したもので、この発明では、図7(B)に示すように、光誘起複屈折性を示す材料からなる光記録媒体14に、物体光43として、楕円偏光を照射すると同時に、参照光44として、ある偏光角の直線偏光(同図の例では90°直線偏光とする)を照射して、光記録媒体14中で、物体光43の楕円偏光と参照光44の直線偏光とを干渉させる。

0026

これによって、光記録媒体14には、それぞれ直線偏光の物体光および参照光を照射した場合と同様に、光異性化が誘起され、屈折率の異方性を生じて、物体光43の偏光状態、すなわち、この場合には物体光43の楕円偏光の主軸方向および楕円率が、異方性格子(ホログラム)として記録される。

0027

このように異方性格子が記録された光記録媒体14に、記録時の参照光44と同じ直線偏光を照射すれば、物体光43と同じ楕円偏光を、回折光として読み出すことができる。

0028

また、図8(B)に示すように、このように異方性格子が記録された光記録媒体14に、記録時の物体光43と同じ楕円偏光47を照射すると、記録時の参照光44の光路上に、参照光44と同じ直線偏光を、回折光48として読み出すことができる。このとき同時に、入射楕円偏光47が光記録媒体14を直進して、透過楕円偏光47aとして得られる。

0029

このように、楕円偏光と直線偏光との干渉によって異方性格子が記録された光記録媒体は、上記[1]のように入射直線偏光を透過楕円偏光に変換し、または上記[2]のように入射楕円偏光を透過直線偏光に変換する機能を有し、位相差板(1/4波長板)として機能する。

0030

しかも、この位相差板は、従来の位相差板とは異なり、式(2)とは無関係に、図7(B)に示して上述した方法によって作製するので、きわめて容易に作製することができるとともに、所期位相補正特性のものを確実に得ることができる。

発明を実施するための最良の形態

0031

〔位相差板の材料…図1図4〕この発明の位相差板の材料は、図1(A)に示すように、ガラス基板プラスチックフィルム基板などの透明基板11の一面に光記録層12を形成したものとし、または図1(B)に示すように、光記録層12のみからなるものとする。

0032

光記録層12は、光誘起複屈折性を示し、かつその複屈折性記録保持される材料によって形成する。光誘起複屈折性とは、もともと等方的な媒体に光を照射することによって屈折率の異方性(複屈折性)を生じることである。

0033

このような材料としては、側鎖に光異性化する基を有する高分子または高分子液晶、または光異性化する分子を分散させた高分子が、好適である。これらの材料は、マクロに見ると等方的であるが、光を照射すると光異性化が誘起され、それによって屈折率の異方性を生じる。

0034

光異性化する基または分子としては、異性化によって大きな複屈折性を示すものが望ましく、例えば、アゾベンゼン骨格を含むものが好適である。光異性化する基または分子を保持する高分子または高分子液晶としては、光異性化する基または分子の誘起された異方性が、高分子または高分子液晶に伝達され、結果として高分子または高分子液晶の全体に大きな複屈折性を生じ、かつその複屈折性が記録保持されるものが望ましく、例えば、ポリエステル群から選ばれた少なくとも一種のモノマー重合体、具体的にはポリメチルメタクリレートポリビニルアルコールが好適である。

0035

光記録層12の最も好ましい材料の一つは、図2に示す化学式で表される、側鎖にシアノアベンゼンを有するポリエステルである。

0036

アゾベンゼンは、光の照射によってトランス−シスの光異性化を示す。トランス型になると、分子構造図3(A)に示す化学式のようになり、シス型になると、分子構造は図3(B)に示す化学式のようになる。また、アゾベンゼンは、単体では異方性を示すが、高分子または高分子液晶の側鎖に存在する場合には、図4(A)に示すように、ランダムに配列され、全体として等方性を示す。

0037

さらに、上記の光異性化のため、アゾベンゼンは、光励起される前はトランス型が多く存在し、光励起されることによってトランス型がシス型に変化して、光励起された後はシス型が多く存在するようになる。

0038

特に、図4(B)に示すように、アゾベンゼンを側鎖に有する高分子または高分子液晶からなる光記録層に、ある偏光方向1aの直線偏光のポンプ光1を照射すると、その偏光方向1aと同一の方向を向くアゾベンゼン3のみが、ポンプ光1を吸収してシス型に変化する。このとき、アゾベンゼンの異性化によって生じるアゾベンゼン自身の複屈折と、アゾベンゼンの異性化によって誘起される高分子または高分子液晶の複屈折とが組み合わさって、光記録層中にポンプ光1の偏光方向1aを軸とした複屈折を生じる。この複屈折性を利用して、その光記録層を1/4波長板として機能させることができる。

0039

図1(A)に示したように透明基板11上に光記録層12を形成する場合、透明基板11としては、アルカリガラスホウ珪酸ガラスプリントガラスなどのガラス基板や、プラスチックフィルム基板、または、ポリイミド膜ポリビニルアルコール膜などの有機薄膜などを有するガラス基板や、プラスチックフィルム基板などを用いることができる。

0041

上述した高分子または高分子液晶からなる光記録層12を形成する方法としては、溶液塗布溶融塗布などの方法を用いることができるが、膜厚などの品質の点から、高分子または高分子液晶を適当な溶媒に溶解し、塗布設備を用いて塗布し、乾燥させる方法が適当である。

0043

また、塗布方法としては、スピンコート法スクリーン印刷法、浸漬引き上げ法、ロールコート法ドクターブレード法スプレー法ワイヤーバー法などを用いることができる。いずれの場合にも、溶液の濃度や他の条件を適宜設定して、形成される光記録層12を十分な回折効率を生じる厚みにする。

0044

実験による検証…図5および図6〕発明者は、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルが、複屈折を誘起し、位相差板の材料として用いることができることを、図5に示す光学系による実験によって検証した。

0045

光記録材料13として、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルをクロロホルムに溶解し、その溶液をガラス基板の一面に塗布し、乾燥させて、厚さ2μmの光記録層を得た。

0046

この光記録材料13に複屈折を誘起させるポンプ光の光源21としては、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルに感度のある515nmのレーザ光を発するアルゴンイオンレーザを用いた。

0047

光源21から出射したレーザ光の偏光は、紙面に垂直(これをs偏光とする)であり、そのレーザ光を1/2波長板22に透過させて、その偏光角をs偏光に対して45°回転させ、その回転させた後のレーザ光を、ポンプ光23として光記録材料13に照射した。

0048

このポンプ光23の照射によって光記録材料13に誘起される複屈折を測定するプローブ光の光源31としては、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルに感度のない633nmのレーザ光を発するヘリウムネオンレーザを用いた。

0049

光源31から出射したレーザ光を偏光子32に透過させて、その偏光をs偏光(紙面に垂直)とし、この偏光子32を透過したs偏光のレーザ光を、プローブ光33として光記録材料13に照射し、光記録材料13を透過したプローブ光34を、偏光ビームスプリッタ35によってs偏光成分とp偏光成分(s偏光成分に対して90°回転した偏光成分)に分離し、それぞれの偏光成分の強度を、光パワーメータ36および37によって測定し、その測定結果から、複屈折による屈折率変化Δnを求めた。

0050

プローブ光33は、光記録材料13の誘起された複屈折によって偏光が回転するので、光記録材料13を透過したプローブ光34のs偏光成分とp偏光成分の強度を測定することによって、光記録材料13の誘起された複屈折による屈折率変化Δnを求めることができる。

0051

実験では、初期化した光記録材料13に、1W/cm2の強度のポンプ光23を照射して、複屈折を誘起させると同時に、プローブ光33を照射して、15秒間隔で、光パワーメータ36および37の出力から、光記録材料13を透過したプローブ光34の偏光方向を測定し、その結果から、複屈折による屈折率変化Δnを算出した。

0052

図6に、算出した屈折率変化Δnを示す。ここでは、光誘二色性は無視できるものと仮定した。横軸はポンプ光23の照射時間であり、縦軸が算出した屈折率変化Δnである。

0053

これから、光記録材料13のポンプ光23の照射によって誘起される複屈折による屈折率変化Δnは、ポンプ光23の照射時間とともに増加し、照射時間がある時間以上になると、飽和することがわかる。その飽和屈折率変化Δnsは、約0.033である。

0054

以上の結果は、ポンプ光23の強度が一定で、ポンプ光23の照射時間がある時間以上になると、屈折率変化Δnが飽和する場合であるが、ポンプ光23の強度を変化させる場合にも、照射積分量照射量の照射時間積分値)が、ある値以上になると、屈折率変化Δnが飽和し、同じ飽和屈折率変化Δns、すなわち実験に用いた光記録材料13では約0.033となる。

0055

以上のように、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルは、複屈折を誘起し、位相差板の材料として用いることができる。複屈折が誘起された光記録材料13を室温に保存しておくと、数か月以上、記録が保持されることも確認できた。

0056

〔位相差板の作製方法…図9〕この発明の位相差板は、図7(B)に示して上述した方法によって作製する。図9は、その具体例を示す。

0057

位相差板の材料の光記録媒体14としては、例えば、図1(A)に示したように透明基板11の一面に光記録層12を形成したものを用いる。

0058

実際に作製したものでは、透明基板11として、バリウムホウ珪酸ガラス(コーニング社製7059)を用い、光記録層12として、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルを用いた。

0059

具体的に、側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルをクロロホルムに溶解し、その溶液をスピンコート法によってガラス基板上に塗布し、70℃のオーブン中で10分間乾燥させ、クロロホルムを完全に飛ばして、光記録層12となる高分子膜を得た。このときの溶液濃度およびスピンコート回転数は、光記録層12の厚みが設計値となるように設定した。ただし、一回の着膜プロセスによって所望の膜厚が得られない場合には、着膜プロセスを複数回繰り返して多層化することによって、所望の膜厚を得ることも可能である。

0060

このようにして得られた高分子膜は、そのままではポリマー偏析のために白濁しているので、これを相転移温度より高い温度(約100℃)のオーブン中で10分間加熱して、高分子を全てランダムな状態にし、その後、相転移温度よりはるかに低い温度(0℃以下)のエタノール中に浸漬し、高分子を急冷凝固させて、偏析のないガラス状態の透明な高分子膜、すなわち光記録層12を得た。

0061

記録用の光源51としては、光記録媒体14の光記録層に感度のある光を発するものを用いる。上述したように光記録層が側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルからなる場合には、例えば上述したアルゴンイオンレーザを用いる。

0062

この光源51からの光を、偏光子52に透過させて、所定の偏光角の直線偏光を得、その直線偏光を、偏光ビームスプリッタ53によって、偏光ビームスプリッタ53を透過する直線偏光と、偏光ビームスプリッタ53で反射する直線偏光とに分離する。

0063

そして、偏光ビームスプリッタ53を透過した直線偏光を、さらに1/4波長板54に透過させて、上記[1]のように楕円偏光に変換し、その楕円偏光を、物体光43として、光記録媒体14に照射すると同時に、偏光ビームスプリッタ53で反射した直線偏光を、さらにミラー55および56で反射させて、参照光44として、光記録媒体14に照射する。

0064

これによって、光記録媒体14の光記録層中で、物体光43の楕円偏光と参照光44の直線偏光とが干渉して、図7(B)において上述したように、光記録媒体14の光記録層に異方性格子が記録され、位相差板が作製される。

0065

〔液晶ディスプレイの実施形態…図10図7(B)において上述したように、このように異方性格子が記録された光記録媒体14、すなわち位相差板に、記録時の参照光44と同じ直線偏光を照射すれば、物体光43と同じ楕円偏光を、回折光として読み出すことができる。すなわち、上記[1]のように、入射直線偏光を透過楕円偏光に変換することができる。

0066

また、図8(B)において上述したように、このように異方性格子が記録された光記録媒体14、すなわち位相差板に、記録時の物体光43と同じ楕円偏光47を照射すれば、記録時の参照光44の光路上に、参照光44と同じ直線偏光を、回折光48として読み出すことができる。すなわち、上記[2]のように、入射楕円偏光を透過直線偏光に変換することができる。

0067

図10は、このように、この発明の位相差板によって位相補正を行う、この発明の液晶ディスプレイの一例を示す。

0068

図では省略したバックライト光源からの光61を、偏光板62に透過させて、所定の偏光角の直線偏光とし、その直線偏光を、STN液晶セル63に入射させる。上述したように、STN液晶セル63を透過した光64は、楕円偏光となる。

0069

このSTN液晶セル63の透過光64の楕円偏光を、この発明の位相差板10に入射させる。この場合、位相差板10においては、図9に示した作製時、物体光43の楕円偏光の主軸方向および楕円率を、STN液晶セル63の透過光64の楕円偏光の主軸方向および楕円率に合わせておく。

0070

これによって、位相差板10からは、図9に示した記録時の参照光44の光路上に、参照光44と同じ偏光角の直線偏光が、回折光65として得られる。すなわち、位相差板10によって、STN液晶セル63の透過光64の楕円偏光が、参照光44と同じ偏光角の直線偏光65に変換され、白黒表示の画像が得られる。

0071

この直線偏光の回折光65を、赤、緑、青の波長成分を透過させるフィルタ周期的に形成されたカラーフィルタ66に透過させ、さらに偏光板62と直交する偏光板67に透過させて、偏光板67の透過光68としてカラー画像を得る。

発明の効果

0072

上述したように、この発明によれば、膜厚のむらやばらつきに影響されずに、1/4波長板として、直線偏光を楕円偏光に変換し、または楕円偏光を直線偏光に変換する機能を、確実かつ安定的に得ることができ、高精度の位相補正を行うことができるとともに、そのような位相差板を容易に作製することができる。

図面の簡単な説明

0073

図1この発明の位相差板の一例の断面構造を示す図である。
図2側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステルの化学式を示す図である。
図3アゾベンゼンのトランス構造およびシス構造の化学式を示す図である。
図4アゾベンゼンの光誘起複屈折性の説明に供する図である。
図5実験に用いた光学系を示す図である。
図6屈折率変化のポンプ光照射時間に対する特性を示す図である。
図7ホログラム記録方法の説明に供する図である。
図8ホログラム再生方法の説明に供する図である。
図9この発明の位相差板作製方法の一例を示す図である。
図10この発明の液晶ディスプレイの一例を示す図である。
図11光の電場ベクトルを表す式を示す図である。
図12光の偏光状態の説明に供する図である。

--

0074

10…位相差板、
11…透明基板、
12…光記録層、
14…光記録媒体、
51…光源、
53…偏光ビームスプリッタ、
62…偏光板、
63…STN液晶セル、
66…カラーフィルタ、
67…偏光板。

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