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技術 被削性に優れた快削鋼およびその製法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 工藤高裕金丸守賀家口浩土田武広尾崎勝彦染川雅実
出願日 2000年1月28日 (20年11ヶ月経過) 出願番号 2000-020652
公開日 2001年8月7日 (19年4ヶ月経過) 公開番号 2001-214240
状態 特許登録済
技術分野 鉄合金の製造(粉末冶金を除く)
主要キーワード ベラーグ 用途制限 硫黄添加 添加酸化物 切屑分断性 トータル酸素量 残部成分 全介在物
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

環境汚染の問題を起こす恐れがなく、しかも切削条件用途制限などを受けることなく幅広く適用することができ、特に被削性仕上げ面精度を得ることのできる快削鋼を提供すること。

解決手段

質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜1.75%、P:0.004〜0.2%、S:0.15〜0.5%、O:0.005〜0.028%を含む鋼において、縦断面に現われる長径1μm以上の介在物断面積1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の全量中に占める酸化物個数の割合が4%以上で、且つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の酸化物、もしくは、Li,Na,B,Siから選ばれる2種以上の複合酸化物個数割合が5%以上である、被削性と仕上げ面精度に優れた快削鋼とその製法を開示する。

概要

背景

近年、工業製品大量生産に伴い鋼材被削性が大きな問題となっており、切削加工低コスト化および部品仕上げ面精度の向上などから被削性改善が強く求められている。

こうした状況の下で、被削性改善手段についても多くの研究が進められており、例えば鉛快削鋼硫黄快削鋼、Ca快削鋼、更にはこれらを組合わせた複合快削鋼等が提案され、実用化されている。

このうち鉛快削鋼は、工具寿命および仕上げ面精度等において優れたものであるが、近年環境問題に関する認識が高まってくるにつれて、有害重金属である鉛を含む鉛快削鋼は忌避される傾向が強い。

一方硫黄快削鋼は、鉛快削鋼にみられる環境汚染の問題は生じないが、鋼中に存在する硫化物圧延方向に伸張する傾向があり、圧延方向に対して垂直方向機械的特性に悪影響を及ぼしたり、鍛造時に硫化物を起点とする割れを起こすといった問題を起こすため硫黄添加量には自ずと限度があり、必ずしも満足のいく被削性を得ることができない。

また、硫黄快削鋼の被削性改善効果は鋼中に含まれる硫化物の形態によって左右され、該硫化物の形態は鋼中の酸素によって影響を受けるとされている。即ち、鋼中の酸素量が多いと硫化物が球状化し、工具寿命が向上すると考えられている。これは、鋼の凝固時に鋼中で硫化物が析出する際に、鋼中の酸化物がその核となって硫化物の析出に関与するためと考えられており、酸素量が多い程、被削性に有効な大径の硫化物が析出し易くなるとされている。つまり、酸素の存在によって大きな硫化物が生成し、これにより工具摩耗が抑えられるのである。こうした意味において、鋼中の酸素は鋼材の被削性に対し好影響を与えていると考えられる。

ところが反面で、鋼中の酸素量が多いと鋼中に多くの酸化物が生成するが、該酸化物は硬質でそれ自身が工具摩耗を促進する方向に作用する。即ち全体としてみれば、鋼中の酸素は鋼材の被削性に対し好影響と悪影響を及ぼしていると考えられる。

またCa快削鋼は、酸化物の形態(組成)制御により切削工具表面にベラーグと呼ばれる保護層を形成し、工具の拡散摩耗を抑制するタイプの快削鋼である。この保護層の形成は、工具表面近傍における温度と酸化物の融点に影響を受ける。現在一般に製造されているCa酸化物系快削鋼は、Si,A1,Caの複合酸化物において最も低融点となるアノルサイトゲーレナイトと呼ばれる酸化物を生成させるものであり、超硬工具による高速切削においては工具寿命を延長する効果が認められている。しかし、低切削速度領域での工具寿命改善効果は乏しい。また、結晶粒度を調整するためA1を添加したCa快削鋼では、酸化物としてA12O3を多く含む高融点のものが生成し易いため、切削条件によっては工具摩耗を促進する恐れもある。

概要

環境汚染の問題を起こす恐れがなく、しかも切削条件や用途制限などを受けることなく幅広く適用することができ、特に被削性と仕上げ面精度を得ることのできる快削鋼を提供すること。

質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜1.75%、P:0.004〜0.2%、S:0.15〜0.5%、O:0.005〜0.028%を含む鋼において、縦断面に現われる長径1μm以上の介在物断面積1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の全量中に占める酸化物の個数の割合が4%以上で、且つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の酸化物、もしくは、Li,Na,B,Siから選ばれる2種以上の複合酸化物の個数割合が5%以上である、被削性と仕上げ面精度に優れた快削鋼とその製法を開示する。

目的

本発明はかかる実状を鑑み、環境にも配慮し、低切削速度領域から高切削速度領域の広い加工領域において安定して優れた被削性を示し、工具寿命延長作用や面粗度改善効果に優れた快削鋼とその製法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

質量%でC :0.02〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.75%、P :0.004〜0.20%、S :0.15〜0.50%、O :0.005〜0.028%を含む鋼からなり、該鋼の縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が断面1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の全量中に占める酸化物個数割合が4%以上であり、且つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物の個数割合が5%以上であることを特徴とする被削性に優れた快削鋼

請求項2

質量%でC :0.02〜0.15%、Si :0.5%以下、Mn:0.5〜1.75%、P :0.004〜0.20%、S :0.15〜0.50%、O :0.005〜0.028%を含む鋼からなり、該鋼の縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が断面1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上であり、且つ、該酸化物のうちNa,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の酸化物の個数割合が5%以上であることを特徴とする被削性に優れた快削鋼。

請求項3

請求項1に記載の快削鋼を製造する方法であって、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる融点が1000℃以下の酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加することを特徴とする被削性に優れた快削鋼の製法

請求項4

請求項2に記載の快削鋼を製造する方法であって、Na,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の元素の酸化物からなる融点が1000℃以下の複合酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加することを特徴とする被削性に優れた快削鋼の製法。

請求項5

融点が1000℃以下である前記酸化物を、レードルタンディッシュおよび鋳型の少なくとも1個所で溶鋼に添加する請求項3または4に記載の製法。

技術分野

0001

本発明は、被削性に優れた快削鋼とその製法に関し、より詳細には、鋼中に特定の酸化物を積極的に特定量含有させることにより、安定して優れた被削性を示す様に改善された快削鋼とその製法に関するものである。

背景技術

0002

近年、工業製品大量生産に伴い鋼材の被削性が大きな問題となっており、切削加工低コスト化および部品仕上げ面精度の向上などから被削性改善が強く求められている。

0003

こうした状況の下で、被削性改善手段についても多くの研究が進められており、例えば鉛快削鋼、硫黄快削鋼、Ca快削鋼、更にはこれらを組合わせた複合快削鋼等が提案され、実用化されている。

0004

このうち鉛快削鋼は、工具寿命および仕上げ面精度等において優れたものであるが、近年環境問題に関する認識が高まってくるにつれて、有害重金属である鉛を含む鉛快削鋼は忌避される傾向が強い。

0005

一方硫黄快削鋼は、鉛快削鋼にみられる環境汚染の問題は生じないが、鋼中に存在する硫化物圧延方向に伸張する傾向があり、圧延方向に対して垂直方向機械的特性に悪影響を及ぼしたり、鍛造時に硫化物を起点とする割れを起こすといった問題を起こすため硫黄添加量には自ずと限度があり、必ずしも満足のいく被削性を得ることができない。

0006

また、硫黄快削鋼の被削性改善効果は鋼中に含まれる硫化物の形態によって左右され、該硫化物の形態は鋼中の酸素によって影響を受けるとされている。即ち、鋼中の酸素量が多いと硫化物が球状化し、工具寿命が向上すると考えられている。これは、鋼の凝固時に鋼中で硫化物が析出する際に、鋼中の酸化物がその核となって硫化物の析出に関与するためと考えられており、酸素量が多い程、被削性に有効な大径の硫化物が析出し易くなるとされている。つまり、酸素の存在によって大きな硫化物が生成し、これにより工具摩耗が抑えられるのである。こうした意味において、鋼中の酸素は鋼材の被削性に対し好影響を与えていると考えられる。

0007

ところが反面で、鋼中の酸素量が多いと鋼中に多くの酸化物が生成するが、該酸化物は硬質でそれ自身が工具摩耗を促進する方向に作用する。即ち全体としてみれば、鋼中の酸素は鋼材の被削性に対し好影響と悪影響を及ぼしていると考えられる。

0008

またCa快削鋼は、酸化物の形態(組成)制御により切削工具表面にベラーグと呼ばれる保護層を形成し、工具の拡散摩耗を抑制するタイプの快削鋼である。この保護層の形成は、工具表面近傍における温度と酸化物の融点に影響を受ける。現在一般に製造されているCa酸化物系快削鋼は、Si,A1,Caの複合酸化物において最も低融点となるアノルサイトゲーレナイトと呼ばれる酸化物を生成させるものであり、超硬工具による高速切削においては工具寿命を延長する効果が認められている。しかし、低切削速度領域での工具寿命改善効果は乏しい。また、結晶粒度を調整するためA1を添加したCa快削鋼では、酸化物としてA12O3を多く含む高融点のものが生成し易いため、切削条件によっては工具摩耗を促進する恐れもある。

発明が解決しようとする課題

0009

前述の如く従来の快削鋼は、切削条件の制限や環境汚染の問題を生じるなど、必ずしも満足し得るものとは言い難い。すなわち鉛快削鋼は、重金属である鉛を使用しているため環境保全の観点から充分留意しなければなず、硫黄快削鋼は、鋼中の酸素が鋼材の被削性に対して好影響と悪影響とを与える。Ca快削鋼は、超硬工具を用いた高切削速度領域での工具寿命の改善には有効であるが、低切削速度領域での被削性改善効果は乏しい。

0010

本発明はかかる実状を鑑み、環境にも配慮し、低切削速度領域から高切削速度領域の広い加工領域において安定して優れた被削性を示し、工具寿命延長作用や面粗度改善効果に優れた快削鋼とその製法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

上記課題を解決することのできた本発明に係る快削鋼とは、質量%でC :0.02〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.75%、P :0.004〜0.20%、S :0.15〜0.50%、O :0.005〜0.028%を含む鋼からなり、該鋼の縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が断面1mm2当たり100〜2000個であり、更に該介在物の全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上で、且つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物の個数割合が5%以上であるか、あるいは該介在物の全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上であり、且つ、該酸化物のうちNa,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の酸化物の個数割合が5%以上である被削性に優れた快削鋼である。

0012

また本発明に係る製法は、上記被削性に優れた快削鋼を製造する方法を提供するもので、該快削鋼を製造する際に、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる融点が1000℃以下の酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加し、あるいはNa,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の元素の酸化物からなる融点が1000℃以下の複合酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加するところに要旨を有している。尚、融点が1000℃以下である前記酸化物は、レードルタンディッシュおよび鋳型の少なくとも1個所で溶鋼に添加することにより、鋼中に均一に混入・分散させることができる。

発明を実施するための最良の形態

0013

本発明者らは前述した様な課題の下で、従来の鉛や硫黄、Ca酸化物などに代わる快削成分を模索し、切削性や仕上げ面精度の一層の改善を期して鋭意研究を進めてきた。その結果、Na,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる融点が1000℃以下の酸化物、もしくは、Na,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の元素の複合酸化物を、溶鋼中に適量含有させたものは、安定して優れた被削性を示すと共に、良好な仕上げ面精度を与えることを知り、上記本発明に想到したものである。

0014

鋼材の被削性を低下させているのは硬質な酸化系介在物であり、鋼中に介在するA1系やSi系の硬質な酸化物は工具摩耗を促進して被削性を阻害し、工具寿命を短縮すると共に仕上げ面粗度を悪化させている。

0015

そこで、本発明者らは低融点酸化物に着目して鋭意検討の結果、1000℃以下の融点を持った低融点酸化物を含有させれば、切削時における鋼中の該低融点酸化物が溶融軟化することによって、工具寿命および仕上げ面精度が高められることを知った。ちなみに、融点が1000℃以下の酸化物を鋼中に分散させれば、切削中の刃先温度上昇により鋼中の該酸化物が溶融もしくは軟化し、工具の摩耗が抑制されると共に、該酸化物が工具表面を保護して工具寿命の向上にも有効に作用することが判明した。

0016

前述した通り鋼中に含まれる金属酸化物は一般的に硬質であり、これまでは被削性を劣化させるものと考えられており、金属酸化物を被削性向上成分として積極的に利用するといったことはあまり考えられなかった。ところが、鋼中にNa,Li,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる低融点の酸化物、もしくは、Na,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくとも2種の元素の低融点の複合酸化物[以下、これらをまとめて(複合)酸化物ということがある]を溶鋼中に適量含有させたものは、安定して優れた被削性を示すと共に、良好な仕上げ面精度を与えることを見出したのである。

0017

従って本発明では、上記の如く鋼中に被削性改善成分として前記(複合)酸化物を適量含有させるところに特徴を有しているが、その前提として、鋼材の縦断面に現われる長径1〜15μmの介在物が、断面積1mm2当たり100〜2000個、より好ましくは150〜1000個分散していることが必要となる。ちなみに、鋼中に存在し得る介在物としては、酸化物、硫化物、窒化物などが挙げられるが、それら介在物の中でも長径が1μm未満の微細なものは、被削性や仕上げ面精度に殆ど影響を及ぼすことがない。一方、長径が15μmを超える介在物が鋼中に多数存在すると、鋼材としての機械的特性、特に靭性延性等に顕著な悪影響をを及ぼす可能性があるが、現実にはその様な大きなサイズの介在物は殆ど見られない。

0018

そして本発明で意図する優れた被削性と仕上げ面精度を確保するには、上記介在物のサイズと個数を満たす条件の下で、長径が1μm以上である全介在物中に占める酸化物の個数比率が4%以上であり、且つ、該酸化物中の前記(複合)酸化物の占める個数の割合が5%以上であることが必須の要件となる。

0019

即ち本発明では、基本的に鋼材中に分散している介在物のうち酸化物の個数を特定することに加えて、該酸化物中の前記(複合)酸化物の占める個数割合を特定することによって、卓越した被削性と仕上げ面精度を与える快削鋼を得ることに成功したものである。

0020

ちなみに、鋼断面に現われる全介在物の中には、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物およびそれらの複合物などが含まれ、また酸化物の中にはアルミナシリカ酸化マンガン酸化クロムおよびそれらの複合物などが含まれるが、本発明で意図するレベルの被削性と仕上げ面精度を確保するには、全介在物中に占める長径1μm以上の酸化物の個数割合が4%以上で、且つ該酸化物のうち、前記(複合)酸化物の占める個数割合が5%以上であることが必須となる。

0021

そして、全介在物中に占める酸化物の個数割合が4%未満で、しかも該酸化物中に占める前記(複合)酸化物の占める個数割合が5%未満では、これら特定の(複合)酸化物に期待される被削性および仕上げ面精度改善効果が有効に発揮されない。即ちこれら特定の(複合)酸化物は、融点が1000℃以下であり、好ましくは、後述する方法によって溶鋼中に添加されるそれら(複合)酸化物の成分組成を融点が800℃以下となる様に調整し、長径が1μm以上である該特定(複合)酸化物の個数が上記要件を満たす様にコントロールすれば、切削加工時の摩擦熱による該特定(複合)酸化物の軟化・溶融作用によって被削性が大幅に高められると共に、仕上げ面精度を著しく改善することができるのである。

0022

しかも、上記(複合)酸化物の多くは球状であるため、機械的特性を劣化させることはなく、酸化物の存在形態によってはむしろ機械的特性の向上に寄与する。

0023

尚、こうした酸化物による改善作用は、Na,LiおよびBの各酸化物については、それぞれ単独で有効に発揮される他、2種もしくは3種の複合酸化物としても有効に発揮されるが、Siの酸化物については、単独酸化物として所定量存在していても本発明の意図する様な被削性を得ることはできず、前記Na,Li,Bの少なくとも1種の酸化物との複合酸化物として存在させることが必須となる。これは、Siの単独酸化物はNa酸化物、Li酸化物、B酸化物に比べて融点が高いため、切削加工時の昇温による軟化・溶融作用が有効に発揮されないからと思われる。

0024

尚、被削性や仕上げ面精度の向上に寄与する前記Na,Li,Bの酸化物源となるNa,Li,Bは、通常の溶鋼中には殆ど含まれていない。従って本発明の上記目的を果たすには、溶鋼中にNa酸化物、Li酸化物、B酸化物あるいはそれらの複合酸化物を添加することが必要であり、具体的には、レードル、タンディッシュおよび鋳型の少なくとも1個所で、溶鋼中にそれらの酸化物、もしくはSiとの複合酸化物を添加し、これらを溶鋼中に含有させる方法が採用される。

0025

この時、添加される上記酸化物や複合酸化物は、添加前の状態で融点が1000℃以下、より好ましくは800℃以下となる様に成分調整しておくことが望ましい。溶鋼内に添加された上記酸化物や複合酸化物は、高温の溶鋼中で形態変化を起こすが、前述した位置で添加する方法を採用すれば、最終的に得られる鋼材内においても、溶融温度1200℃程度以下の(複合)酸化物として存在させることができる。

0026

尚上記酸化物または複合酸化物の添加量は、溶鋼に対して100ppm以上、より好ましくは300ppm以上とすべきであり、100ppm未満では、最終的に得られる鋼中に、十分なサイズ(長径1μm以上)と量(個数)の(複合)酸化物を存在させることができず、本発明で意図する優れた被削性と仕上げ面精度が得られ難くなる。上記酸化物や複合酸化物は過剰量添加しても、その大部分は溶鋼中に歩留まることなくスラグとなって湯面上に浮上分離されるので実害は生じないが、その効果は2000ppm程度で飽和するので、それ以上の添加は経済的に無駄であり、好ましくは1000ppm程度以下で十分である。尚これらの酸化物は、単体酸化物として添加するよりも複合酸化物として溶鋼に添加した方が、鋼中に歩留まり易いので有利である。添加する酸化物の融点は、状態図の値を基準にして予め決めておけばよい。

0027

本発明は、上記のように快削鋼中に含まれる(複合)酸化物のサイズと量を規定したところに特徴を有するもので、鋼材の種類は特に制限されないが、本発明の前記特徴が最も有効に発揮される快削鋼の標準的な化学成分を例示すると下記の通りである。

0028

C:0.02〜0.15%
Cは鋼の強度向上元素として重要な元素であるが、反面、延性を低下させる元素でもあり、その含有量が極めて低い低炭素鋼領域では、鋼の延性を適度に低下させて被削性を高める作用を発揮する。そのためにはC量を0.02%以上とすべきであるが、C量が多くなり過ぎると、鋼が高質化して工具寿命を低下させる原因になるので0.15%以下に抑えるのがよい。

0029

Si:0.5%以下(0%を含まない)
Siは通常、溶製時に使用する脱酸剤として混入してくるが、Siは酸素との反応性が非常に速く、0.5%を超えると、鋼中の必要酸素量を確保することが困難になるばかりでなく、Na,Li,B酸化物の酸素を奪って被削性改質作用発現し難くすることがあるので、0.5%以下、より好ましくは0.15%以下に抑えることが望ましい。

0030

Mn:0.5〜1.75%
Mnは、被削性の向上に有効なMnSを生成させる他、熱間加工性を高める上でも有効に作用する元素であり、これらの作用を有効に発揮させるには0.5%以上含有させることが望ましい。しかし、Mn含有量が多過ぎると鋼材の加工硬化が顕著になり、工具寿命を短縮させる原因になるので1.75%以下、より好ましくは1.5%以下に抑えることが望ましい。

0031

P:0.004〜0.2%
Pは鋼の延性を低下させ、切削加工時の切屑処理性を向上すると共に仕上げ面粗さを低減するのに有効な元素であり、それらの作用を有効に発揮させるには0.004%以上のPを含有させることが望ましい。しかし、0.2%を超えて過度に含有させると、熱間加工時表面欠陥を起こし易くなる。よって、Pの含有量は0.004%以上、より好ましくは0.01%以上で、0.2%以下、より好ましくは0.15%以下に抑えることが望ましい。

0032

S:0.15〜0.5%
Sは、切屑分断性を含めた被削性全般の向上に有効なMnSを形成する元素であるが、0.15%未満ではその効果が十分に発揮されず、一方0.5%を超えると熱間加工性や延性を著しく劣化させる。よって、S含有量は0.15%以上、より好ましくは0.2%以上で、0.5%以下、より好ましくは0.4%以下に抑えることが望ましい。

0033

O:0.005〜0.028%
Oは、前記(複合)酸化物の析出形態を左右する重要な元素であり、トータル酸素量が0.005%未満では、本発明で定める前記サイズと量の(複合)酸化物を存在させることができず、本発明で意図するレベルの被削性と仕上げ面精度を確保するには0.005%以上、より好ましくは0.01%以上のOを含むものが望ましい。しかしO量が多過ぎると、溶製時に酸化鉄の生成を促して溶製炉内張り耐火物を損傷し炉寿命の短縮を招くばかりでなく、溶損した耐火物が鋼中に混入すると切削工具寿命を低下させる大きな原因になる。従って、Oの含有量は0.028%以下、より好ましくは0.025%以下に抑えることが望ましい。

0034

本発明で使用される快削鋼の好ましい含有元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、該快削鋼中には微量の不可避不純物の含有が許容されることは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で更に他の元素を積極的に含有させた快削鋼を使用することも可能である。積極添加が許容される他の元素の例としては、工具寿命や面粗度改善効果を有するPb,Bi,Te等が挙げられ、それらは単独で或いは2種以上を複合添加できるが、それらは合計量で0.5%程度以下に抑えることが望ましい。

0035

次に、前記(複合)酸化物の分析法について説明する。供試材は、155mm×155mmの鋳片を1200℃で直径80mmの丸棒状に鍛造した後、850℃×1hr空冷焼ならし処理し、該鍛造材鍛造方向に平行な断面のD/4位置を研磨する。次いで、供試材の観察位置を特定するため荷重5kgで圧痕を打つ。介在物の個数測定は、光学顕微鏡を用いて圧痕近傍を倍率100倍で1視野当たり0.5mm×0.5mmの面積を4視野づつ観察し、長径が1μm以上の介在物について画像解析した。次いで、日本電子製「JXA−8800RL」のEPMAにより加速電圧15kV、倍率500倍で4視野を観察して介在物の組成を特定する。この観察では、Na、Li,B,Si,OおよびMn,S,Crのマッピングを行なって各元素の存在を確認した。ただしEPMAでは、LiやBなどの軽元素は検出し難いので、EPMA観察と同じ領域をCAMECA−imsf5fのSIMSにより一次イオン条件O2+−8keV−1nA、倍率500倍で4視野を観察する。SIMSでは一次イオンとしてO2+を用いており、Oの存在がはっきりしないが、EPMAでOの観察されているものは酸化物と判断する。EPMAおよびSIMS観察でNa,Li,B,Siから選択される1種以上と酸素(O)の存在が確認できたものを(複合)酸化物とした。この観察で、長径1μm以上の全介在物のうち、観察された全酸化物および(複合)酸化物の数を求めて夫々の個数割合を算出した。酸化物とMnSとからなる介在物は酸化物としてカウントした。

0036

次に評価法について説明すると、評価項目は工具寿命と仕上げ面粗度の2つとし、工具寿命は、155mm×155mm鋳片を直径22mm×3mの棒鋼熱間圧延し、超硬旋削試験により評価した。試験条件は、表1に示す如く、P10チップを用い、切削速度:200(m/min)、送り:0.25(mm/rev)、切込み:1.5(mm)とした。工具寿命の判断基準は、VB摩耗0.2mmとした。

0037

0038

部品の仕上げ面粗度は、上記焼きならし処理材を用いて超硬旋削試験により評価した。試験条件は、表2に示す如くP10チップを用い、切削速度:150(m/min)、送り:0.10(mm/rev)、切込み:1.0(mm)、切削時間:1(min)とした。仕上げ面粗度は切削終了間際の領域を評価した。

0039

0040

次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0041

実施例
本発明鋼は、500kg高周波溶解炉で溶解した低炭素鋼に、組成調整した(複合)酸化物を添加し、155mm角鋳造した。表3に本発明鋼(No.1〜12)および比較鋼(No.13〜18)の主成分、添加酸化物の組成、添加量、融点を示す。なおNo.13は現用の鉛快削鋼、No.14はべース鋼、No.15〜18は本発明で定めるいずれかの規定要件欠く比較例である。

0042

表4および図1〜4に供試材の評価結果を示す。図1に見られる様に、(複合)酸化物の個数割合が5%以上になると、工具寿命が大幅に向上し、No.13の鉛快削鋼と同レベルの被削性が得られている。また図2に見られる様に、(複合)酸化物の個数割合が5%が以上になると、仕上げ面粗度も鉛快削鋼レベル以上に向上している。

0043

更に、図3,4からも明らかな様に、工具寿命の向上効果を有効に発揮させるには、成分調整された(複合)酸化物を100ppm以上添加しなければならないことが分かる。

0044

これらの実験結果からも明らかな様に、本発明によれば、従来の鉛快削鋼に較べて全く遜色のない工具寿命と仕上げ面精度を示す快削鋼を得ることができることが分かる。

0045

0046

発明の効果

0047

本発明は以上の様に構成されており、縦断面の長径1μm以上の全介在物に占める酸化物の個数割合が4%以上であり、かつ、その酸化物のうちNa、Li,Bから選ばれる1種以上の酸化物、もしくは、Li,Na,B,Siから選ばれる2種以上の複合酸化物の個数割合が5%以上である本発明鋼の快削鋼は、公害原因を生じることなく優れた工具寿命と仕上げ面粗度を得ることができる。

図面の簡単な説明

0048

図1実験で用いた供試快削鋼中の(複合)酸化物の個数割合と工具寿命の関係を示すグラフである。
図2実験で用いた供試快削鋼中の(複合)酸化物の割合と仕上げ面粗度の関係を示すグラフである。
図3鋼への(複合)酸化物の添加量と工具寿命の関係を示すグラフである。
図4鋼への(複合)酸化物の添加量と仕上げ面粗度の関係を示すグラフである。

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