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課題

家畜乳房炎治療するための治療剤および治療方法を提供する。

解決手段

グリチルリチン又はその医薬上許容される塩を有効成分とする家畜の乳房炎治療剤とする。

概要

背景

一般に家畜といわれる哺乳動物、例えば、ウシ山羊及びウサギは、乳腺を有するため乳房炎に罹り得る。これらの家畜の中でも、頻繁に搾乳が行われる家畜、例えばウシ、特に、乳牛は最も乳房炎に罹りやすい。乳牛にとって、乳房炎は最も治りにくい疾病の1つとさえ云われている。特に、近年は、多数飼育搾乳機の普及による搾乳ストレスの増加とによって、乳房炎が多発する傾向にある。そのため、潜在性の罹病も含めれば、全泌乳牛の1/4もの高率の乳房が、絶えず乳房炎に罹病している。

乳房炎に罹病すと体細胞数が増加し、製品品質風味に悪影響を及ぼすことが報告されている。健康乳牛の原乳中体細胞数(以下、「SCC」という。)は、≦50万個/mLである。これに対して、乳房炎に罹患した乳牛の原乳中のSCCは、≧160万個/mLにまで増加すると報告されている。また、統計学調査によれば、SCCが5万個/mL以下の領域においてSCCが2倍に増加するごとに、1日当たりの原乳の生産量は初産牛で0.4kg、経産牛で0.6kg減少すると報告されている。さらに、SCCが2倍に増加するごとに、原乳中の脂肪が0.2g/kg減少することが報告されている(Am. J. Vet. Res.,29巻, 497, 1968年)。

当然のことながら、乳房炎に罹患した乳房から採取された乳汁は、出荷停止されることになる。そのため、本疾病によって生ずる経済的損失は極めて大きい。

乳房炎は難治性であるが、その第1の理由として、乳房炎が極めて多様な細菌の感染によって惹起されていることが考えられる。例えば、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカスガラチエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス ジスアガラクチエ(Streptococcus diagalactiae)、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウムピオゲネス(Corynebaterium pyogenes)などが代表的な起因菌として挙げられる。これらの菌による感染は、多頭飼育やミルク搾乳頻度の増加などのストレスが、乳牛に加わえられることによって起こり、感染数は、近年、益々増加している。

難治性である第2の理由は、乳房炎が一般的観念で通常の細菌疾患と同列に考えて、乳房炎の防御感受性の強い抗菌剤の使用のみに頼りすぎることにあると考えられる。また、感受性の強い抗菌剤のみに頼るあまり、乳房炎の発症病理機構や感染の慢性化機構の研究を軽視しがちになっている。乳房炎の感染が認めらると、フラン剤、サルファー剤等の抗菌薬剤や、ペニシリン系セフェム系ストレプトマイシン系、テトラサイクリン系マクロライド系などの抗生物質を選択し乳房内注入することが、一般的な防御手段とされる。

しかし、これらの抗菌性物質は原乳中に残留すると耐性菌の発生などにより、ヒトの健康を阻害するおそれがある。そのため、抗菌性物質を使用する期間は厳しく制限されている。また、世界的に、これらの抗菌剤の使用には種々の制約が加えられている。その結果として、不十分な防除効果しか得られていなくても、やむを得ず投薬中止しなければならない場合も少なくない。それゆえ、休薬後間もなく感染症再発を来すことに悩まされることもしばしばある。

さらに、乳房炎が難治性である第3の理由は、泌乳牛の乳腺は、その泌乳サイクルである泌乳期乾乳期とにおいて、異なった免疫組織から成るからである(Vet. Immunol. & Immunopathol., 65巻, 51-61, 1998年, J.Dairy Sci., 82巻,1459-1464, 1999年)。実際のところ、このことが乳房炎を難治性にしている最大の理由であるかもしれない。つまり、この両期において、乳腺組織内での細菌の感染様式は異なり、また、乳腺自体の感染防御機構も大きく異なるからである。

分泌活動が行われる10ヶ月もの長い泌乳期間における乳腺と、分泌乳汁中の免疫組織とは、乳汁分布を営む上皮細胞の調節を自ら行うCD8+T細胞とγδ+T細胞とから主体に構成されている。したがって、この泌乳期間中の乳腺の免疫機能は、Th1(ヘルパーT細胞一群)による細胞性免疫機構を中心に営まれている。

一方、乾乳期に入った乳腺と乳汁の細胞とは、血液や脊髄由来する白血球系の細胞とCD4+T細胞とB細胞とから主体に構成されている。したがって、免疫機能は、食菌反応と、抗体及び補体を中心とした液性免疫とを中心に営まれている。

つまり、両期は、相互に極めて対比的な免疫機能を有しており、また、対比的な感染防御を行うのである。したがって、その感染防御対策も、自ら、異なってしかるべきである。しかしながら、従来における乳房炎の防除対策において、このような面があまり考慮されていなかった。

一方、グリチルリチンについては、マウス等の実験動物における多彩免疫学的作用が報告されている。例えば、グリチルリチンはリンパ球刺激して、IFNインターフェロン)の産生を誘導し(Microbiol. Immunol., 26巻, 535-539, 1982年)、NK(ナチュラルキラー)細胞のキラー活性を増強する(ExcerptaMedica(国際会議シリーズ), 641巻, 460-464, 1983年)。さらに、グリチルリチンは、マウスにおいて胸腺関与無しに、腸管肝臓等の粘膜臓器に選択的に分布しているγδ+T細胞とCD8+T細胞とを含む胸腺外分化T細胞の活性化を、促すことが知られている(Biotherapy, 5巻, 167-176, 1992年)。そのほか、グリチルリチンは、ヘルパーT細胞(特にTh1ヘルパー細胞)の活性化に基づいて、細胞性免疫能の増強などを促し、レトロウイルスを含む種々のウイルス感染症の防御(Biotherapy, 9巻, 209-220, 1996年)や、皮膚でのアレルギー反応の抑制などにも関与することが知られている。そして、火傷などに基づく免疫不全マウスにおいて、グリチルリチンによる免疫活性の増強によって、ヘルペスウイルス(Immunol.Lett.,44巻,59-66,1995年)や各種細菌(Antimicrob.AgentChemother.,22巻,612-617,1996年)による粘膜感染死を防御する効果なども証明されている。

また、微生物感染への作用は、ヒトのウイルス疾患でも試験済みであり、内服並びに静脈内投与によってウイルス性肝炎抑制作用なども報告されている(Asian Med.J.,26巻,423-438,1983年、Microb.Immunol.,44巻,799-804,2000年)。さらに、グリチルリチンを抗炎症剤としてヒトの皮膚外用薬として用いられた例も知られている(特開平6−305932)。さらに、グリチルリチンを吸収促進剤とするヒトの経鼻吸収薬が用いられた例も知られている(Drug Delivery System,4巻,88-93,1989年)。

しかし、マウス等の実験動物での免疫学的作用やヒトでの抗炎症作用等を有するグリチルリチンを、家畜の乳房炎に適用するという概念は知られていなかった。ましてや、上述した複雑な免疫機能を有し、各種細菌感染に基づくウシの乳房炎にも適用するという概念は全く知られていなかった。

概要

家畜の乳房炎を治療するための治療剤および治療方法を提供する。

グリチルリチン又はその医薬上許容される塩を有効成分とする家畜の乳房炎治療剤とする。

目的

本発明は、家畜の乳房炎を治療するための治療剤および治療方法を提供することを課題とする。

より詳しくは、家畜の泌乳期における乳房炎の治療剤を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
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この技術が所属する分野

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請求項1

グリチルリチン又はその医薬上許される塩を有効成分とする家畜乳房炎治療剤

請求項2

グリチルリチン又はその医薬上許される塩を有効成分とする泌乳期における家畜の乳房炎治療剤。

請求項3

グリチルリチン又はその医薬上許される塩を家畜の乳房投与する家畜の乳房炎治療方法。

請求項4

グリチルリチン又はその医薬上許される塩を家畜の乳房に直接注入する家畜の乳房炎治療方法。

請求項5

グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期における家畜の乳房に直接投与する家畜の乳房炎治療方法。

請求項6

前記家畜は、ウシである請求項1又は2に記載の家畜の乳房炎治療剤。

請求項7

前記家畜は、ウシである請求項3、4又は5に記載の家畜の乳房炎治療方法。

技術分野

0001

本発明は、家畜乳房炎治療剤およびこの治療剤を用いた乳房炎治療方法に関する。より詳しくは、家畜の泌乳期における乳房炎の治療剤および治療方法に関する。

背景技術

0002

一般に家畜といわれる哺乳動物、例えば、ウシ山羊及びウサギは、乳腺を有するため乳房炎に罹り得る。これらの家畜の中でも、頻繁に搾乳が行われる家畜、例えばウシ、特に、乳牛は最も乳房炎に罹りやすい。乳牛にとって、乳房炎は最も治りにくい疾病の1つとさえ云われている。特に、近年は、多数飼育搾乳機の普及による搾乳ストレスの増加とによって、乳房炎が多発する傾向にある。そのため、潜在性の罹病も含めれば、全泌乳牛の1/4もの高率の乳房が、絶えず乳房炎に罹病している。

0003

乳房炎に罹病すと体細胞数が増加し、製品品質風味に悪影響を及ぼすことが報告されている。健康乳牛の原乳中体細胞数(以下、「SCC」という。)は、≦50万個/mLである。これに対して、乳房炎に罹患した乳牛の原乳中のSCCは、≧160万個/mLにまで増加すると報告されている。また、統計学調査によれば、SCCが5万個/mL以下の領域においてSCCが2倍に増加するごとに、1日当たりの原乳の生産量は初産牛で0.4kg、経産牛で0.6kg減少すると報告されている。さらに、SCCが2倍に増加するごとに、原乳中の脂肪が0.2g/kg減少することが報告されている(Am. J. Vet. Res.,29巻, 497, 1968年)。

0004

当然のことながら、乳房炎に罹患した乳房から採取された乳汁は、出荷停止されることになる。そのため、本疾病によって生ずる経済的損失は極めて大きい。

0005

乳房炎は難治性であるが、その第1の理由として、乳房炎が極めて多様な細菌の感染によって惹起されていることが考えられる。例えば、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカスガラチエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス ジスアガラクチエ(Streptococcus diagalactiae)、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウムピオゲネス(Corynebaterium pyogenes)などが代表的な起因菌として挙げられる。これらの菌による感染は、多頭飼育やミルク搾乳頻度の増加などのストレスが、乳牛に加わえられることによって起こり、感染数は、近年、益々増加している。

0006

難治性である第2の理由は、乳房炎が一般的観念で通常の細菌疾患と同列に考えて、乳房炎の防御感受性の強い抗菌剤の使用のみに頼りすぎることにあると考えられる。また、感受性の強い抗菌剤のみに頼るあまり、乳房炎の発症病理機構や感染の慢性化機構の研究を軽視しがちになっている。乳房炎の感染が認めらると、フラン剤、サルファー剤等の抗菌薬剤や、ペニシリン系セフェム系ストレプトマイシン系、テトラサイクリン系マクロライド系などの抗生物質を選択し乳房内注入することが、一般的な防御手段とされる。

0007

しかし、これらの抗菌性物質は原乳中に残留すると耐性菌の発生などにより、ヒトの健康を阻害するおそれがある。そのため、抗菌性物質を使用する期間は厳しく制限されている。また、世界的に、これらの抗菌剤の使用には種々の制約が加えられている。その結果として、不十分な防除効果しか得られていなくても、やむを得ず投薬中止しなければならない場合も少なくない。それゆえ、休薬後間もなく感染症再発を来すことに悩まされることもしばしばある。

0008

さらに、乳房炎が難治性である第3の理由は、泌乳牛の乳腺は、その泌乳サイクルである泌乳期と乾乳期とにおいて、異なった免疫組織から成るからである(Vet. Immunol. & Immunopathol., 65巻, 51-61, 1998年, J.Dairy Sci., 82巻,1459-1464, 1999年)。実際のところ、このことが乳房炎を難治性にしている最大の理由であるかもしれない。つまり、この両期において、乳腺組織内での細菌の感染様式は異なり、また、乳腺自体の感染防御機構も大きく異なるからである。

0009

分泌活動が行われる10ヶ月もの長い泌乳期間における乳腺と、分泌乳汁中の免疫組織とは、乳汁分布を営む上皮細胞の調節を自ら行うCD8+T細胞とγδ+T細胞とから主体に構成されている。したがって、この泌乳期間中の乳腺の免疫機能は、Th1(ヘルパーT細胞一群)による細胞性免疫機構を中心に営まれている。

0010

一方、乾乳期に入った乳腺と乳汁の細胞とは、血液や脊髄由来する白血球系の細胞とCD4+T細胞とB細胞とから主体に構成されている。したがって、免疫機能は、食菌反応と、抗体及び補体を中心とした液性免疫とを中心に営まれている。

0011

つまり、両期は、相互に極めて対比的な免疫機能を有しており、また、対比的な感染防御を行うのである。したがって、その感染防御対策も、自ら、異なってしかるべきである。しかしながら、従来における乳房炎の防除対策において、このような面があまり考慮されていなかった。

0012

一方、グリチルリチンについては、マウス等の実験動物における多彩免疫学的作用が報告されている。例えば、グリチルリチンはリンパ球刺激して、IFNインターフェロン)の産生を誘導し(Microbiol. Immunol., 26巻, 535-539, 1982年)、NK(ナチュラルキラー)細胞のキラー活性を増強する(ExcerptaMedica(国際会議シリーズ), 641巻, 460-464, 1983年)。さらに、グリチルリチンは、マウスにおいて胸腺関与無しに、腸管肝臓等の粘膜臓器に選択的に分布しているγδ+T細胞とCD8+T細胞とを含む胸腺外分化T細胞の活性化を、促すことが知られている(Biotherapy, 5巻, 167-176, 1992年)。そのほか、グリチルリチンは、ヘルパーT細胞(特にTh1ヘルパー細胞)の活性化に基づいて、細胞性免疫能の増強などを促し、レトロウイルスを含む種々のウイルス感染症の防御(Biotherapy, 9巻, 209-220, 1996年)や、皮膚でのアレルギー反応の抑制などにも関与することが知られている。そして、火傷などに基づく免疫不全マウスにおいて、グリチルリチンによる免疫活性の増強によって、ヘルペスウイルス(Immunol.Lett.,44巻,59-66,1995年)や各種細菌(Antimicrob.AgentChemother.,22巻,612-617,1996年)による粘膜感染死を防御する効果なども証明されている。

0013

また、微生物感染への作用は、ヒトのウイルス疾患でも試験済みであり、内服並びに静脈内投与によってウイルス性肝炎抑制作用なども報告されている(Asian Med.J.,26巻,423-438,1983年、Microb.Immunol.,44巻,799-804,2000年)。さらに、グリチルリチンを抗炎症剤としてヒトの皮膚外用薬として用いられた例も知られている(特開平6−305932)。さらに、グリチルリチンを吸収促進剤とするヒトの経鼻吸収薬が用いられた例も知られている(Drug Delivery System,4巻,88-93,1989年)。

0014

しかし、マウス等の実験動物での免疫学的作用やヒトでの抗炎症作用等を有するグリチルリチンを、家畜の乳房炎に適用するという概念は知られていなかった。ましてや、上述した複雑な免疫機能を有し、各種細菌感染に基づくウシの乳房炎にも適用するという概念は全く知られていなかった。

発明が解決しようとする課題

0015

本発明は、家畜の乳房炎を治療するための治療剤および治療方法を提供することを課題とする。

0016

より詳しくは、家畜の泌乳期における乳房炎の治療剤を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0017

本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、グリチルリチンが泌乳期の家畜の乳房における免疫機能を高めることを見出し、本発明を完成するに至った。

0018

即ち、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許容される塩を有効成分とする家畜の乳房炎治療剤を提供する。

0019

更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を有効成分とする泌乳期における家畜の乳房炎治療剤を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を家畜の乳房に投与する家畜の乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を家畜の乳房に直接注入する家畜の乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期における家畜の乳房に投与する家畜の乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期における家畜の乳房に直接投与する家畜の乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期における家畜の乳房に直接注入する家畜の乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を有効成分とするウシの乳房炎治療剤を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を有効成分とする泌乳期におけるウシの乳房炎治療剤を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩をウシの乳房に投与する乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩をウシの乳房に直接注入する乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期におけるウシの乳房に投与する乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期におけるウシの乳房に直接投与する乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、グリチルリチン又はその医薬上許される塩を泌乳期におけるウシの乳房に直接注入する乳房炎治療方法を提供する。更に、本発明は、カニューレによりウシの乳房に直接注入する乳房炎治療方法を提供する。

発明を実施するための最良の形態

0020

本発明における乳房炎の治療剤の有効成分は、次式で表されるグリチルリチン又はその医薬上許容される塩からなる。

0021

ID=000002HE=070 WI=082 LX=0640 LY=0350
本発明に用いられるグリチルリチン(グリチルリチン酸)は、甘草(Glycyrrhiza uralensis Fisher, Glycyrrhiza Glabra Linne)又はその他の同属植物(Glycyrrhiza inflata Batalin, Glycyrrhiza korshinskyi G. Grig., et al.)等の根およびストロンを、水、メタノールエタノールn-ブタノール等のグリチルリチン可溶の溶媒で抽出することにより得られる。また、市販されているグリチルリチンを使用しても良い。

0022

また、その薬理学上許容される塩としては、グリチルリチンと無機又は有機塩基とを、(1:1)、(1:2)又は(1:3)のモル比で作用させて得られるグリチルリチンアンモニウム塩、グリチルリチンアルカリ金属塩又はグリチルリチンコリン塩等が挙げられるが、ウシおよび乳汁を摂取するヒトに対する安全性が保証されれば、必ずしもこれらに限定されるものではない。本発明においては、単独のグリチルリチンを、その塩の1種を又は任意の2種以上の混合物を有効成分としても治療剤を形成してもよい。

0023

また、グリチルリチンを出発物質として用いられる通常の化学合成により得られるグリチルリチンの誘導体も、乳房炎の治療に有効である限り、有効成分として治療剤を形成することができる。

0024

これらの有効成分を含有する治療剤の剤型としては、グリチルリチン又はその塩を軟膏基剤に均一に分散して軟膏とするか、あるいは、水又はエタノールなどの適当な溶媒に溶かして液剤とする等がある。これらは従来公知の技術を用いて製造することができる。また、市販のグリチルリチンを含む治療剤を利用することもできる。

0026

液剤に用いる溶媒として、次に挙げる例には限定はされないが、上述の他に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。

0027

上記薬剤には、さらに、緩衝剤等張化剤安定化剤防腐剤などを任意に加えてもよい。

0028

本発明の薬剤は、食品添加物として用いられるグリチルリチンを有効成分とするため、グリチルリチンが原乳中に残留しても、ヒトの安全性に関して問題がない。したがって、とりわけ泌乳期のウシの乳房炎に対して有効である。

0029

グリチルリチン又はその塩の投与量は、例えば、1分房当たり400〜800mgが好ましく、症状により適宜変更可能である。また、乳汁中におけるグリチルリチンの濃度は、0.08〜0.4mg/mLとなる様に投与するのが好ましい。これらの値は、人体において用いられる投与量を、乳房内の乳汁量に換算して決定されたものである。

0030

投与サイクルとしては、上記量の薬剤を1日1回で投与することも可能であるが、1日2回またはそれ以上の回数に分けて投与しても良く、また、数日に分けて投与しても良い。

0031

投与方法としては、軟膏および液剤の場合、乳房に直接注入する。直接注入する方法としては、例えば、カニューレ、注射器による方法が挙げられるが、投与量を考慮するとカニューレによる方法が好ましい。

0032

以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0033

臨床型乳房炎を発症したホルスタイン泌乳牛7例において、下記の処方のグリチルリチン治療剤((株)ミノファーゲン製薬;強力カネオミノファーゲンシー)を用いて、実施例1〜5および実施例6,7に記載の要領でそれそれ治療試験を実施した。

0034

(実施例1〜5)投与量および投与方法は、グリチルリチン(GL)として400mg相当の治療剤を、発病認知した0日目に、カニューレを用いて乳房炎発症分房の乳房内に投与した。治療試験についての評価を、0,1,2もしくは3,7,14および21日目に実施した。治療試験の評価については後述する。これらの結果を表1〜5に各々示す。

0035

グリチルリチン治療剤の処方(強力ネオミノファーゲンシー)
グリチルリチンモノアンモニウム塩(グリチルリチンとして2.0g)
アミノ酢酸20.0g
・L−システイン塩酸塩1.0g
塩化ナトリウム5.0g
乾燥亜硫酸ナトリウム0.8g
上記処方に水を加え、1000mLとし、pH6.7および浸透圧比約2の透明な溶液の治療剤を調製した。

0036

(実施例6,7)実施例6においては乳房炎発症分房の乳房内にグリチルリチンとして400mg相当の上記治療剤を、実施例7においては800mg相当の上記治療剤を、試験開始0日目及び3日目に投与した。実施例1〜5と同様に、投与方法および治療の評価は、実施例1〜5と同様に行った。これら結果を表6および7に示す。

0037

(治療試験の評価)治療試験を、臨床所見および乳汁検査を行うことにより評価した。

0038

臨床所見の測定は、「乳房の膨張硬直」および「乳汁中の凝固物ブツ)」について行った。また、乳汁検査の測定は、「乳汁の凝集度」、「乳汁のpHによる判定」、「乳汁の体細胞数」および「乳汁顆粒球数」について行った。各項目の欄に判定方法を記す。

0039

なお、測定項目のうち「乳汁中凝固物(ブツ)」並びにカリフォルニアマスティティス・テスト(California Mastitis Test:以下、CMTとする。)変法による「乳汁の凝集度」および「乳汁中のpHによる判定」の評価基準は、「家畜共済における臨床病理検査要項(農林水産経済局編)平成9年改定版」に基づいて評価した。

0040

(乳房の膨脹硬結触診により、乳房の膨張および硬結を評価した。評価基準は以下の通りである。
++ :乳房全体に膨脹があり、硬結の程度が著しいもの。
+ :乳房が局所的に膨脹しており、硬結のあるもの。
± :乳房がやや硬いもの。
− :乳房の膨脹・硬結が認められないもの

0041

(乳汁中の凝固物(ブツ))黒い網又は布を付けたストリップカップに乳汁を前搾りし、ブツに関する評価を目視により行った。評価基準は以下の通りである。
++ :ブツが大きく、数の多いもの。凝固物の数(≧3個/mL)
+ :ブツは大きいが、数が少ないもの。凝固物の数(0.5〜3個/mL)
± :ブツが小さく、数の少ない物。凝固物の数(≦0.5個/mL)
− :ブツが全く確認されないもの。

0042

(乳汁の凝集度)市販のキット(日本全薬(株);PLテスター)を用いて、CMT変法の評価基準に基づいて、凝集度を判定した。具体的には、市販のCMT変法のバドル生乳を分房別に約2mlづつ採取し、CMT変法の試薬を等量加える。バドルを静かに1分間回した。その後、凝集度を判定した。評価基準は以下の通りである。
+++:直ちにゲル化し、パドルの回転を止めても底中央に山を生じる。
++ :直ちにゲル化するが、パドルの回転を止めると底一面に広がる。
+ :はっきり凝集するが、ゲル化の傾向は認められない。
± :わずかに凝集が認められるが、生乳は滑らかに流れる。
− :凝集が認められず、パドルを傾けると生乳は滑らかに流れる。

0043

(乳汁中のpHによる判定)上記凝集と同様に市販のキットを用いて、CMT変法の評価基準に基づきpH評価を行った。評価基準は以下の通りである。
+++:暗緑色。
++ :緑色を帯びたもの。
+ :わずかに緑色を帯びたもの。
− :黄金色または黄色。

0044

(乳汁中の体細胞数(SCC))SCCは、乳汁をエタノールと混和後、細胞を4℃で静置し、プロピジウムイオダイド(Propidium Iodide (PI))で核を染色した。陽性細胞数のカウントは、FACSCalibur (Becton-Dickinson)を用いて解析することにより測定した(日畜会報, 70巻, J169-176, 1999年)。

0045

(乳汁中顆粒球(PMN)数))乳汁中PMN数は、乳汁をリン酸生理緩衝液PBS)で洗浄後、細胞をCytospin (Shandon Scientific Ltd.)を用い、スライドグラス上に付着させた後、ギムザ染色を行い顕微鏡下でPMN数を測定した(日蓄会報, 70巻, J169-176,1999年)。

0046

ID=000004HE=055 WI=104 LX=0530 LY=1050
本例において、臨床症状は実施例1ほど顕著ではないが、実施例1と同様に乳房炎診断マーカーのCMT測定値ならびに体細胞数の上昇が顕著であったが、グリチルリチンの投与によりその値の減少が早期に確認された。投与3日後には出荷が可能となる程度まで回復した。

0047

ID=000005HE=055 WI=102 LX=0540 LY=1800
本例においては、CMT測定値ならびに臨床症状の改善が早期に認められた。すなわち、体細胞数は実施例1および2に比べて高い値を示していたが、投与5日後には出荷が可能となる程度まで回復した。

0048

ID=000006HE=055 WI=102 LX=0540 LY=0300
本例においては、体細胞数の改善が顕著であった。また、臨床症状、CMT測定値も早期に改善され、投与2日後には出荷が可能となる程度まで回復した。

0049

ID=000007HE=055 WI=102 LX=0540 LY=1000
本例においては、他の例と比較して投与日における体細胞数が最も高かった。しかしながら、グリチルリチン投与7日後には体細胞数が低下し、出荷できる程度まで回復した。

0050

ID=000008HE=055 WI=102 LX=0540 LY=1700
本例においては、乳房炎の臨床症状の改善が顕著であった。乳汁体細胞初回投与低下傾向を示したが、2回目投与後(試験開始7日目)に若干増加した。さらに、14日目には出荷できる程度まで回復した。

0051

ID=000009HE=055 WI=102 LX=0540 LY=0300
全例ともグリチルリチンの投与後2〜3日の間で、臨床症状、乳汁検査等のいずれの所見にも顕著な改善が認められ、1回の投与の実施例(1〜5)では投与後2〜5日、遅くとも7日後に出荷が可能となった。また、2回投与を行った実施例では、14日もしくは22日後に出荷ができる程度まで回復した。表8に、上記の乳房炎発症乳房にGLを投与した7例、すなわち、実施例1−7についての、乳汁の凝集度の判定結果のみをまとめた。

発明の効果

0052

本発明により、家畜の乳房炎を治療するための治療剤及び治療方法を提供することができる。また、特に家畜の泌乳期乳房炎の治療剤を提供することが出来る。さらに、食品添加剤としても用いられるグリチルリチン又はその塩を、ウシの乳房炎治療に用いることにより、ヒトの安全性に関わる問題を緩和することが可能となる。

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