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技術 タンパク質変性抑制剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法ならびに練り製品の製造方法

出願人 青葉化成株式会社株式会社林原生物化学研究所
発明者 古和田照夫佐藤光毅下村武生山下正美
出願日 2000年1月7日 (20年11ヶ月経過) 出願番号 2000-002033
公開日 2001年7月17日 (19年5ヶ月経過) 公開番号 2001-190248
状態 特許登録済
技術分野 食品の凍結・冷却及び乾燥 魚肉練製品 食品の調整及び処理一般 肉類、卵、魚製品
主要キーワード 破断変形 事業報告 社会的環境 加熱後重量 ダレ現象 凍結期間 一般パネル 保存結果
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2001年7月17日)のものです。
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図面 (2)

課題

冷凍変性抑制効果の高いタンパク質変性抑制剤ドリップ抑制剤冷凍によるスポンジ化抑制剤魚肉摺身座り生成能強化剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品および擂潰鳥獣肉、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法練り製品の製造方法、座り生成能強化方法ならびに魚肉摺身の歩留り向上方法を提供する。

解決手段

糖質と、擂潰食肉のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とするタンパク質変性抑制剤、そのタンパク質変性抑制剤を用いて調製される擂潰食肉およびその製造方法ならびに練り製品の製造方法を提供することによって解決する。

概要

背景

最近の食品業界では、食品添加物使用制限或いは使用削除の動きが強まってきた感がある。このような消費者マインドないし社会的環境から、食品加工業者市場ニーズ合致した商品造り志向し、食品添加物をできるだけ使用しない方向を打ち出してきている。特に、魚肉畜肉製品では、ピロリン酸ナトリウムポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩冷凍耐性の向上、保水力の改善などの目的で繁用されている。しかしながら、これらリン酸塩の過剰摂取は、カルシウム亜鉛などの必須ミネラルの吸収を阻害し、骨粗鬆症成長阻害、味症などの疾患を誘発し易いことが懸念され、リン酸塩の使用を取り止める傾向が一段と強くなっており、とりわけ、魚肉練り製品からのリン酸塩の追放運動が急速に展開してきている。

しかし、リン酸塩を使用しないで魚肉製品を製造するには、その加工適正を維持するために大変難しい課題を克服しなければならない。リン酸塩を使用しない冷凍摺身(無リン摺身)は、現状では砂糖のみの処方(上冷凍摺身では生肉摺身に対し砂糖5重量%、洋上摺身では生肉摺身に対し砂糖8重量%の添加)で生産されるが、その場合、冷凍に伴うタンパク質変性抑制力が弱く、長期間にわたり良好な品質を維持することができない。このため、部分的とは言え、依然として生摺身を使用しなければならない現状である。換言すれば、生摺身は冷凍摺身に比べて品質の劣化が速く、そのため、水延ばしがきかず、経済的なメリットがなく、品質保証期間冷蔵で3乃至4日間しかないにもかかわらず、生摺身の使用を余儀なくされている。

従来の一般的な冷凍摺身では、砂糖5重量%とリン酸塩0.2重量%との使用によりタンパク質の変性抑制が試みられている。魚肉タンパク質は、凍結されると容易に変性を起こし、塩に対して可溶化する能力を失ってしまう。この変性の機構は未だ解明されていないが、その要因はカルシウム、マグネシウムの影響によりタンパク質が変性するためと考えられており、その観点からタンパク質の変性抑制にリン酸塩が使用されてきた。

また、砂糖は、魚肉の筋原繊維中の水の凍結による結晶微細化し、タンパク質の脱水を防ぐと考えられている。魚肉のミオシンは、冷凍中に分子分子間架橋を作って会合し多数の分子の会合が進むと塊となって凝集する。冷凍変性は、水の状態変化引き金になると考えられている。一般に生体組織の中では、タンパク質その他の成分は十分に水和した状態で存在しており、分子の表面は水和水で覆われた状態となっている。その結果として、タンパク質の高次構造が安定化している。水素結合疎水結合となる分子内結合は、水和状態と不可分の関係にあると考えられている。食品が凍結されたときには、水の氷結と移動が起こるので、タンパク質分子を囲む水は除去され、水和水の一部または大部分がはぎ取られる。その結果、タンパク質分子は、ある程度まで著しく脱水されることになり、分子間の架橋結合力が弱められ切断されて、高次構造の混乱を引き起こすと考えられている。従って、砂糖の効果は、物理的に氷点降下を起こすことにより、氷の結晶を微細化し、タンパク質の損傷を防ぐことによるものと考えられる。

しかしながら、無リン摺身の品質の安定化、すなわち、冷蔵、冷凍貯蔵中のタンパク質の変質、変性の抑制は、砂糖のみでは極めて困難で、冷蔵、冷凍貯蔵中に容易にタンパク質は変性し、ゲル化、スポンジ化して著しく保水力を失ってしまう。

このような知見下、従来のタンパク質変性抑制剤および冷凍摺身の製造方法として、特公昭47−23385号公報に示すものがある。すなわち、冷凍前の摺身のpHを7.5〜9に調整したのち凍結することにより、冷凍変性を抑制する技術である。また、特開平7−135927号公報および特開平8−9931号公報に示すものがある。すなわち、魚肉摺身トレハロースを添加することにより、冷凍変性を抑制する技術である。また、平成9年度水産加工新原料開発事業報告書(平成10年7月 水産漁政部水産加工課発表)には、トカゲエソおよびタチウオ挽肉にした後、電解水(pH10〜11)によるアルカリ晒しを行い、脱水後、蔗糖、トレハロースを添加して凍結することにより、ゲル形成能が改善された冷凍摺身を調製する技術が開示されている。

概要

冷凍変性抑制効果の高いタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤、魚肉摺身の座り生成能強化剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品および擂潰鳥獣肉、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法練り製品の製造方法、座り生成能強化方法ならびに魚肉摺身の歩留り向上方法を提供する。

糖質と、擂潰食肉のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とするタンパク質変性抑制剤、そのタンパク質変性抑制剤を用いて調製される擂潰食肉およびその製造方法ならびに練り製品の製造方法を提供することによって解決する。

目的

本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、冷凍変性抑制効果の高いタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤、魚肉摺身の座り生成能強化剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品および擂潰鳥獣肉、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法、練り製品、特に蒲鉾魚肉ソーセージおよび擂潰鳥獣肉加工食品の製造方法、座り生成能強化方法ならびに歩留り向上方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
4件

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請求項1

ソルビットトレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、擂潰食肉のpHをアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とするタンパク質変性抑制剤

請求項2

前記pH調整剤は炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムを含むことを特徴とするタンパク質変性抑制剤。

請求項3

さらに乳化剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載のタンパク質変性抑制剤。

請求項4

さらに配糖体甘味料を含むことを特徴とする請求項1,2または3記載のタンパク質変性抑制剤。

請求項5

ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、擂潰食肉のpHをアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とするドリップ抑制剤

請求項6

ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、擂潰食肉のpHをアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とする冷凍によるスポンジ化抑制剤

請求項7

ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、擂潰食肉のpHをアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とする魚肉摺身座り生成能強化剤

請求項8

請求項1,2,3または4に記載のタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが7を越え10未満の範囲のアルカリ側にあることを特徴とする冷凍変性が抑制された擂潰食肉。

請求項9

請求項1,2,3または4に記載のタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが7を越え10未満の範囲のアルカリ側にあることを特徴とする冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品。

請求項10

請求項1,2,3または4に記載のタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが6を越え10未満の範囲にあることを特徴とする冷凍変性が抑制された擂潰鳥獣肉

請求項11

擂潰食肉に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含み、pHが7.5を越え9.5未満であることを特徴とする冷凍変性が抑制された擂潰食肉。

請求項12

擂潰食肉に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整することを特徴とする冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法。

請求項13

擂潰食肉に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉のpHを7.5を越え9.5未満の範囲に調整することを特徴とする冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法。

請求項14

擂潰食肉が魚肉摺身であって、その魚肉摺身に澱粉質調味料保存剤、乳化剤および配糖体甘味料から選ばれる1または複数の添加剤を含有せしめることを特徴とする請求項13に記載の冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法。

請求項15

擂潰食肉に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整した後、その擂潰食肉を冷凍貯蔵することを特徴とする擂潰食肉の冷凍貯蔵方法

請求項16

魚肉摺身に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整した魚肉摺身を原材料に用いたことを特徴とする練り製品の製造方法。

請求項17

魚肉摺身に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整した魚肉摺身を原材料に用いたことを特徴とする蒲鉾の製造方法。

請求項18

魚肉摺身に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整した魚肉摺身を原材料に用いたことを特徴とする魚肉ソーセージの製造方法。

請求項19

擂潰鳥獣肉に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを6を越え10未満の範囲に調整した擂潰鳥獣肉を原材料に用いたことを特徴とする擂潰鳥獣肉加工食品の製造方法。

請求項20

魚肉摺身に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、魚肉摺身のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整することを特徴とする座り生成能強化方法

請求項21

魚肉摺身に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、魚肉摺身のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整することを特徴とする歩留り向上方法

技術分野

0001

本発明は、擂潰食肉、特に魚肉冷凍摺身に適したタンパク質変性抑制剤ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤魚肉摺身座り生成能強化剤冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品および擂潰鳥獣肉、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法練り製品、特に蒲鉾魚肉ソーセージおよび擂潰鳥獣肉加工食品の製造方法、座り生成能強化方法ならびに歩留り向上方法に関する。

背景技術

0002

最近の食品業界では、食品添加物使用制限或いは使用削除の動きが強まってきた感がある。このような消費者マインドないし社会的環境から、食品加工業者市場ニーズ合致した商品造り志向し、食品添加物をできるだけ使用しない方向を打ち出してきている。特に、魚肉、畜肉製品では、ピロリン酸ナトリウムポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩が冷凍耐性の向上、保水力の改善などの目的で繁用されている。しかしながら、これらリン酸塩の過剰摂取は、カルシウム亜鉛などの必須ミネラルの吸収を阻害し、骨粗鬆症成長阻害、味症などの疾患を誘発し易いことが懸念され、リン酸塩の使用を取り止める傾向が一段と強くなっており、とりわけ、魚肉練り製品からのリン酸塩の追放運動が急速に展開してきている。

0003

しかし、リン酸塩を使用しないで魚肉製品を製造するには、その加工適正を維持するために大変難しい課題を克服しなければならない。リン酸塩を使用しない冷凍摺身(無リン摺身)は、現状では砂糖のみの処方(上冷凍摺身では生肉摺身に対し砂糖5重量%、洋上摺身では生肉摺身に対し砂糖8重量%の添加)で生産されるが、その場合、冷凍に伴うタンパク質変性抑制力が弱く、長期間にわたり良好な品質を維持することができない。このため、部分的とは言え、依然として生摺身を使用しなければならない現状である。換言すれば、生摺身は冷凍摺身に比べて品質の劣化が速く、そのため、水延ばしがきかず、経済的なメリットがなく、品質保証期間冷蔵で3乃至4日間しかないにもかかわらず、生摺身の使用を余儀なくされている。

0004

従来の一般的な冷凍摺身では、砂糖5重量%とリン酸塩0.2重量%との使用によりタンパク質の変性抑制が試みられている。魚肉タンパク質は、凍結されると容易に変性を起こし、塩に対して可溶化する能力を失ってしまう。この変性の機構は未だ解明されていないが、その要因はカルシウム、マグネシウムの影響によりタンパク質が変性するためと考えられており、その観点からタンパク質の変性抑制にリン酸塩が使用されてきた。

0005

また、砂糖は、魚肉の筋原繊維中の水の凍結による結晶微細化し、タンパク質の脱水を防ぐと考えられている。魚肉のミオシンは、冷凍中に分子分子間架橋を作って会合し多数の分子の会合が進むと塊となって凝集する。冷凍変性は、水の状態変化引き金になると考えられている。一般に生体組織の中では、タンパク質その他の成分は十分に水和した状態で存在しており、分子の表面は水和水で覆われた状態となっている。その結果として、タンパク質の高次構造が安定化している。水素結合疎水結合となる分子内結合は、水和状態と不可分の関係にあると考えられている。食品が凍結されたときには、水の氷結と移動が起こるので、タンパク質分子を囲む水は除去され、水和水の一部または大部分がはぎ取られる。その結果、タンパク質分子は、ある程度まで著しく脱水されることになり、分子間の架橋結合力が弱められ切断されて、高次構造の混乱を引き起こすと考えられている。従って、砂糖の効果は、物理的に氷点降下を起こすことにより、氷の結晶を微細化し、タンパク質の損傷を防ぐことによるものと考えられる。

0006

しかしながら、無リン摺身の品質の安定化、すなわち、冷蔵、冷凍貯蔵中のタンパク質の変質、変性の抑制は、砂糖のみでは極めて困難で、冷蔵、冷凍貯蔵中に容易にタンパク質は変性し、ゲル化、スポンジ化して著しく保水力を失ってしまう。

0007

このような知見下、従来のタンパク質変性抑制剤および冷凍摺身の製造方法として、特公昭47−23385号公報に示すものがある。すなわち、冷凍前の摺身のpHを7.5〜9に調整したのち凍結することにより、冷凍変性を抑制する技術である。また、特開平7−135927号公報および特開平8−9931号公報に示すものがある。すなわち、魚肉摺身にトレハロースを添加することにより、冷凍変性を抑制する技術である。また、平成9年度水産加工新原料開発事業報告書(平成10年7月 水産漁政部水産加工課発表)には、トカゲエソおよびタチウオ挽肉にした後、電解水(pH10〜11)によるアルカリ晒しを行い、脱水後、蔗糖、トレハロースを添加して凍結することにより、ゲル形成能が改善された冷凍摺身を調製する技術が開示されている。

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、水晒しを行う際にアルカリ性の電解水を用いた従来の技術やトレハロースを用いた従来の技術では、ドリップにより歩留りが低下する、冷凍によりスポンジ化が起こる、魚肉摺身の座り生成能が弱いなど、冷凍変性抑制効果が十分ではなく、より効果の高い技術の開発が要望されている。また、平成9年度水産加工新原料開発事業報告書に記載の従来技術では、アルカリ晒しにより歩留りが低下するうえに、アルカリ晒しに用いた電解水の排水処理の問題を生じる。なお、一般に、アルカリが残存した摺身を用いて作った蒲鉾は歯ざわりのもろい製品になるとされているため、アルカリ晒しの後にはアルカリ成分を除去する工程を必要とするなど、アルカリ晒しは処理後の摺身のpHがアルカリ性にならないように配慮して行われる。

0009

本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、冷凍変性抑制効果の高いタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤、魚肉摺身の座り生成能強化剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品および擂潰鳥獣肉、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法、練り製品、特に蒲鉾、魚肉ソーセージおよび擂潰鳥獣肉加工食品の製造方法、座り生成能強化方法ならびに歩留り向上方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

上記目的を達成するために、本発明に係るタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤および魚肉摺身の座り生成能強化剤は、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、擂潰食肉のpHをアルカリ側に調整可能なpH調整剤とを含むことを特徴とする。pH調整剤は、もとのpHよりアルカリ側に調整可能なものであれば、調整後のpHが酸性であってもよいが、望ましくは、調整後のpHを7を越え10未満、望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ性にするものであることが好ましい。特に、本発明に係るタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤および魚肉摺身の座り生成能強化剤において、前記pH調整剤は炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムを含むことが好ましい。この場合、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムは、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせの重量に対し、0.05重量%乃至10倍の範囲で含まれることが好ましく、1乃至5重量%の範囲で含まれることが特に好ましい。

0011

本発明に係るタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤および魚肉摺身の座り生成能強化剤は、さらに乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤には、ショ糖脂肪酸エステルが好ましい。乳化剤は、pH調整剤に対し10重量%乃至10倍の範囲で含まれることが好ましく、等量乃至2倍の範囲で含まれることが特に好ましい。乳化剤は、氷の結晶の生成を抑制することにより、冷凍変性を抑制する効果をもたらす。また、本発明に係るタンパク質変性抑制剤、ドリップ抑制剤、冷凍によるスポンジ化抑制剤および魚肉摺身の座り生成能強化剤は、さらに配当甘味料を含むことが好ましい。配糖体甘味料には、例えば、グリチルリチン酸ナトリウム塩甘草エキスステビア甘味料などを使用することができる。配糖体甘味料は、pH調整剤が呈する塩味塩カドをとることを主な使用目的として利用され、他に甘味付けや乳化安定作用の目的にも利用される。なお、本発明に係るドリップ抑制剤は、歩留り向上剤として取り扱われてもよい。

0012

本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰食肉は、本発明に係るタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが7を越え10未満の範囲のアルカリ側にあることを特徴とする。特に、本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰食肉は、擂潰食肉に対し1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含み、pHが7.5を越え9.5未満の範囲であることが好ましい。本発明に係る冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品は、本発明に係るタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが7を越え10未満、望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ側にあることを特徴とする。リン酸塩無添加食品の対象となる食品は、リン酸塩を使用しない魚肉摺身、擂潰鳥獣肉(擂潰畜肉を含む)などの擂潰食肉のほか、チーズ使用食品などであってもよい。しかしながら、本発明に係るタンパク質変性抑制剤は、リン酸塩とともに使用しても構わない。また、本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰鳥獣肉は、本発明に係るタンパク質変性抑制剤を含有し、pHが6を越え10未満、望ましくは7を越え10未満、さらに望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ側にあることを特徴とする。

0013

本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法は、擂潰食肉に対しソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉のpHを7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整することを特徴とする。特に、本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法は、擂潰食肉に対し1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉をpHが7.5を越え9.5未満の範囲に調整することが好ましい。例えば、擂潰食肉は魚肉摺身から成る。魚肉摺身またはその他の擂潰食肉には、さらに他の添加剤として、例えば、コーンスターチ、甘薯澱粉馬鈴薯澱粉小麦澱粉大麦澱粉などの澱粉質グルタミン酸ナトリウム食塩などの調味料ソルビン酸などの保存料、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、グリチルリチン酸ナトリウム塩、甘草エキス、ステビア甘味料などの配糖体甘味料、さらには、必要に応じて、着色料着香料など1または複数の添加剤を含有せしめてもよい。乳化剤は、擂潰食肉に対し0.01乃至1重量%の範囲で含有せしめることが好ましく、特に0.1乃至0.2重量%の範囲で含有せしめることが好ましい。

0014

本発明に係る擂潰食肉の冷凍貯蔵方法は、擂潰食肉に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、擂潰食肉のpHを7を越え10未満、望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ側に調整した後、その擂潰食肉を冷凍貯蔵することを特徴とする。

0015

本発明に係る練り製品、特に蒲鉾および魚肉ソーセージの製造方法は、魚肉摺身に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを7を越え10未満、望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ側に調整した魚肉摺身を原材料に用いたことを特徴とする。

0016

本発明に係る擂潰鳥獣肉加工食品の製造方法は、擂潰鳥獣肉に対して、1乃至20重量%のトレハロースと、0.01乃至10重量%の炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムとを含有せしめることによって、pHを6を越え10未満、望ましくは7を越え10未満、さらに望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲の範囲に調整した擂潰鳥獣肉を原材料に用いたことを特徴とする。

0017

本発明に係る座り生成能強化方法および歩留り向上方法は、魚肉摺身に対して、1乃至20重量%の魚肉摺身に対して、ソルビット、トレハロースまたはそれらと他の糖質との組み合わせと、pH調整剤とをそれぞれ含有せしめ、魚肉摺身のpHを7を越え10未満、望ましくは7.5を越え9.5未満の範囲のアルカリ側に調整することを特徴とする。

0018

本発明において、他の糖質は、例えば、グルコースマルトースラクトースフラクトースなどの還元糖であっても、砂糖(スクロース)、ラフィノースなどの非還元糖であっても、さらには、マンニットラクチトールマルチトールなどの糖アルコールであってもよい。しかしながら、本発明で使用する糖質としては、トレハロースが特に好ましく、ソルビットまたはソルビットとトレハロースとの組み合わせも好ましいが、製造コストの面からは、トレハロースと、ソルビットおよび/または砂糖との組み合わせが好ましい。

0019

周知のとおり、トレハロースには、互いに結合様式相違するα,α体、α,β体およびβ,β体と呼ばれる3種類の異性体が存在する。これらは、同様のタンパク質変性抑制作用を発揮するので、いずれもこの発明において有利に用いることができる。したがって、この発明のタンパク質変性抑制剤においては、これらの異性体の1または複数が全体として有効量含まれてさえいれば、その調製方法性状および純度は問わない。トレハロースは種々の方法で調製することができる。

0020

この発明はトレハロースの調製に関するものではないので詳細な説明は割愛するけれども、経済性を問題にするのであれば、特開平7−143876号公報、特開平7−213283号公報、特開平7−322883号公報、特開平7−298880号公報、特開平8−66187号公報、特開平8−66188号公報、特開平8−336388号公報および特開平8−84586号公報のいずれかに開示された非還元性糖質生成酵素およびトレハロース遊離酵素を澱粉部分加水分解物に作用させる方法が好適である。この方法によるときには、廉価な材料である澱粉から、トレハロースのα,α体が高収量で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、食品級トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、純度98%以上、株式会社林原商事販売)および食品級トレハロースシロップ(商品名『トレハスター』、純度28%以上、株式会社林原商事販売)がある。

0021

なお、トレハロースのα,α体は、例えば、特開平7−170977号公報、特開平8−263号公報および特開平8−149980号公報のいずれかに記載されたマルトース・トレハロース変換酵素を作用させるか、あるいは、公知のマルトース・ホスホリラーゼおよびトレハロース・ホスホリラーゼを組合わせて作用させることによっても得ることができる。トレハロースのα,β体を調製するには、例えば、特開平4−144694号公報および特開平4−179490号公報に記載された方法にしたがって澱粉部分加水分解物と乳糖との混合物シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼとβ−ガラクシダーゼをこの順序で作用させればよい。また、β,β体は公知の化学合成により得ることができる。

0022

なお、この発明においては、トレハロースは必ずしも単離されておらずともよく、調製方法に特有な他の糖質との未分離組成物としての形態、あるいは、この発明の目的を逸脱しない範囲で、他の適宜物質との混合物としての形態であってもよい。pH調整剤は、無機塩であっても、有機酸塩であってもよいが、炭酸塩などの無機塩、特に、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムが好ましい。

0023

擂潰食肉は、鳥獣肉であっても、魚肉であってもよく、生で保存されるものであっても、冷凍保存されるものであってもよいが、本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰食肉の製造方法は、冷凍魚肉摺身の製造に効果的である。本発明に係るタンパク質変性抑制剤は、擂潰食肉のほか、チーズ、卵製品その他のタンパク質含有食品で使用してもよく、特に、リン酸塩無添加食品でリン酸塩の代わりとして使用することが好ましい。

0024

本発明に係る練り製品の製造方法で、魚肉摺身は、スケソウダラ、その他、例えば、キグチ、シログチ、クログチ、ハモ、エソ、シタビラメ、メゴチ、カナシラ、タチウオ、アジニベ、ムツ、タラ、メバルカマスヨシキリザメ、シュモクザメ、オナガザメ、アオザメ、ホシザメクロカワカジキエイ、オキギス、カレイイワシワラヅカ、ホッケなどの練り製品の原材料として使用されるいかなる魚肉であってもよい。練り製品は、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージその他いかなる練り製品であってもよく、これらは蒸煮焙焼、湯煮、油ちょう、その他公知の加熱方法および成形方法で製造することができる。

0025

本発明において、糖質にトレハロースを用い、pH調整剤に炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムを用い、擂潰食肉にスケソウダラの摺身を用いる場合、トレハロースの添加量は、摺身に対し1乃至20重量%が好ましく、特に5重量%程度が最適であり、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムの添加量は、摺身に対し0.1乃至0.2重量%が好ましく、特に炭酸ナトリウム0.1重量%程度が最適である。この場合、スケソウダラの肉は、pHが7を越え10未満の範囲のアルカリ側、通常、pH7.5を越え9.5未満の範囲となり、生の状態でも、冷凍状態でも極めて高い保水力およびゲル化力を有し、品質の安定した生摺身または冷凍摺身を製造することができる。また、本発明においては、トレハロースが奏する魚肉の脂質の劣化防止作用をも期待することができる。

0026

本発明において、擂潰食肉をpH7を越え10未満の範囲のアルカリ側に調整するのが好適なのは、その理由は定かではないものの以下の理由が想定される。擂潰食肉、特に、魚肉タンパク質は、pH6.0付近を境に急激に塩に対する溶出性落ちる。また、アルカリ性側または酸性側では、粘度が急激に低下する。すなわち、タンパク質は、pH6.0以下の酸性側あるいはpH10以上のアルカリ側では、粘度が低下して筋肉中のタンパク質の安定性が著しく低下する。また、食肉繊維、特に、魚肉繊維は、pH7付近、通常pH7.5以上で著しく膨潤する。このような膨潤効果に関し、本発明者らは、従来使用されてきたリン酸塩に斯かる膨潤効果があることを確認するとともに、意外にも、炭酸塩、とりわけ、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムに高い膨潤効果があることを見出した。

0027

本発明は、広範囲のpH域における擂潰食肉の膨潤現象と、その膨潤現象に基づくタンパク質変性抑制効果に着目してなされたものである。本発明のタンパク質変性抑制機構は、筋原繊維中のアクトミオシンが高いpH領域で保水性を高め、その水の自由水を糖質の水和力で強固にキャッチすることにより、タンパク質の変質、変性を抑制するものと考えられる。特に、本発明に係るタンパク質変性抑制剤は、擂潰食肉の冷凍変性に対する抑制効果が高く、ドリップ抑制作用および冷凍によるスポンジ化抑制作用が顕著である。また、本発明に係るタンパク質変性抑制剤は、特に長期間の冷凍貯蔵に対する冷凍変性の抑制に効果的である。本発明に係る魚肉摺身の座り生成能強化剤は、魚肉摺身の座り生成能を高め、練り製品の弾力を保ち、品質を高める。

発明の効果

0028

本発明に係るタンパク質変性抑制剤、冷凍変性が抑制された擂潰食肉およびその製造方法、擂潰食肉の冷凍貯蔵方法ならびに練り製品、特に蒲鉾および魚肉ソーセージの製造方法によれば、冷凍魚肉摺身を初めとする冷凍擂潰食肉一般に対する変性抑制効果が高く、リン酸塩を使用しなくても冷凍に伴うタンパク質変性を極めて効果的に抑制することができる。本発明に係る冷凍変性が抑制されたリン酸塩無添加食品は、冷凍に伴うタンパク質変性を極めて効果的に抑制することができるうえ、リン酸塩を使用しないため、リン酸塩の使用を嫌う消費者マインドに応えることができる。特に、本発明に係るドリップ抑制剤および歩留り向上方法によれば、擂潰食肉のドリップを効果的に抑制し、歩留りを向上させることができる。また、本発明に係る冷凍によるスポンジ化抑制剤によれば、冷凍による擂潰食肉のスポンジ化を効果的に抑制することができる。また、本発明に係る魚肉摺身の座り生成能強化剤および座り生成能強化方法によれば、魚肉摺身の座り生成能を高め、練り製品の品質を高めることができる。また、本発明に係る冷凍変性が抑制された擂潰鳥獣肉およびその加工食品の製造方法によれば、冷凍擂潰鳥獣肉に対する変性抑制効果が高く、リン酸塩を使用しなくても冷凍に伴うタンパク質変性を極めて効果的に抑制することができる。

0029

各種塩類の濃度と魚肉摺身のpHおよび膨潤度との関係をみるため、以下の試験を行った。まず、水晒しをしたスケソウダラ生肉に対し5重量%の糖質および所定濃度の塩類を加えた。この調製した摺身100gに脱塩水900gを加えてホモジナイズし、サンプルを調製した。サンプルは、調製後、直ちにpHを測定し、冷蔵庫にて12時間放置した後、摺身の膨潤度を目視で観察した。その結果を表1に示す。なお、表1で、「−」は全く膨潤しないもの、「+」は僅かに膨潤するもの、「++」は膨潤するもの、「+++」は極めて良く膨潤するものを示す。

0030

0031

表1から、有機酸塩では、0.2重量%の濃度でもpHは7.5に達せず、膨潤度が高かったものはリン酸塩のみであったが、炭酸ナトリウムでは、0.05重量%の濃度でもpHは7.5を越えており、膨潤度も高かった。

0032

糖質にトレハロースを用い、塩類に炭酸ナトリウムを用いた場合の、魚肉摺身のpHおよび膨潤度をみるため、試験例1で糖質および塩類に表2の上段に示すものを用いて、試験例1と同様の試験を行った。その結果を表2に示す。表2で、膨潤度は表1と同一の基準で示している。なお、試験例および後記実施例を通じて、トレハロースには、食品級トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、純度98%以上、株式会社林原商事販売)を用いた。

0033

0034

表2から、トレハロース単独の使用では、pHは7.5に達せず、膨潤度も低かったが、炭酸ナトリウムと併用することにより、pHは7.5を越えており、膨潤度も高くなった。

0035

各種塩類のモル濃度と魚肉摺身のpHとの関係をみるため、以下の試験を行った。まず、(水晒しをしたスケソウダラ生肉の摺身の重量):(脱塩水の重量)=1:8に調製し、この摺身と脱塩水とをホモジナイズした。その摺身を90g量し、表3の左欄に示す各種塩類の0.1M/Lを用いて100mlのメスフラスコで所定の濃度に調製し、pHメーターでpHを測定した。その結果を表3に示す。

0036

0037

表3から、0.01M乃至0.03Mの使用量でpH7.5を越え9.5未満の範囲のレベルに到達できるのは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび水酸化ナトリウムのみで、他の有機酸塩類ではそのレベルに到達できなかった。ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸塩では、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの3倍量を加えてもpH9.0に到達することができない。縮合リン酸塩の高濃度の使用は、栄養学的に問題があるばかりでなく、鳥獣肉または魚肉練り製品では、肉質ダレ現象を起こすため、0.2重量%以上の使用は望ましくない。

0038

トレハロースの魚肉タンパク質に対する冷凍変性抑制効果(冷凍変性防止効果)をみるため、以下の試験を行った。試験は、スケソウダラの生肉に対しトレハロース5重量%または比較例としてソルビット5重量%を添加したものを用いて、凍結前後で経日的に蒲鉾を造り、折曲げテストにより判定した。その結果を表4に示す。折曲げテストでは、ケーシング蒲鉾を0.5mmの厚さに切り、以下の基準で判定した。すなわち、表4で、「AA」は4つ折りにして亀裂ができないもの、「A」は4つ折りにして亀裂ができるもの、「B」は2つ折りにして亀裂ができないもの、「C」は2つ折りにして亀裂ができるものを示す。

0039

0040

表4から、トレハロースは、ソルビットに比べて凍結3ヵ月後の効果が良好であったほかは、ソルビットとほぼ同様の効果を示すことがわかる。

0041

ソルビットまたはトレハロースと各種塩類とを併用した場合の魚肉タンパク質に対する冷凍変性抑制効果をみるため、以下の試験を行った。まず、水晒しをしたスケソウダラの生肉に対し表5の左欄に示す糖質および塩類を所定の量加えて、摺身を造り、−20℃で凍結して冷凍摺身を造った。その冷凍摺身を使用して蒲鉾を造り、試験例4と同一の折曲げテストにより判定した。その結果を表5に示す。

0042

0043

表5から、ソルビットまたはトレハロースとリン酸ナトリウムとの組み合わせで変性抑制効果が最も高かったが、トレハロースと炭酸ナトリウムとの組み合わせや、ソルビットと炭酸ナトリウムとの組み合わせでも、かなり高い変性抑制効果が得られることがわかる。

0044

トレハロースと組み合わせる炭酸ナトリウムのタンパク質変性抑制に最適な濃度をみるため、表6の左欄に示すように、トレハロース5重量%と0.1乃至0.3重量%で異なる濃度の炭酸ナトリウムとをスケソウダラの生肉に対し加えて、摺身を調製した。また、比較のため、ソルビット5重量%とリン酸塩0.2重量%とをスケソウダラの生肉に加えて、摺身を調製した。それらの摺身を用いて、凍結前、凍結貯蔵7日後、30日後、60日後にそれぞれケーシング蒲鉾を製造し、官能評価を行った。なお、ケーシング蒲鉾は、食塩3重量%、無澱粉、加水20重量%の条件で製造した。官能評価は、弾力について、極めて弾力があるものを「5.0」、弾力があるものを「4.0」、普通を「3.0」、弾力が弱いものを「2.0」、弾力がないものを「1.0」で評価し、硬さについて、極めて硬いものを「5.0」、硬いものを「4.0」、普通を「3.0」、ややもろいものを「2.0」、極めてもろいものを「1.0」で評価した。その結果を表6に示す。

0045

0046

表6から、5重量%のトレハロースに0.1重量%の炭酸ナトリウムを組み合わせたとき、ソルビットとリン酸塩との組み合わせとほぼ同様の高い変性抑制効果が得られることがわかる。

0047

スケソウダラの生肉に対し砂糖5重量%を加えて摺身を調製し、食塩3重量%、無澱粉、加水量0、15、30の各重量%の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区1)。また、スケソウダラの生肉に対しトレハロース5重量%と炭酸ナトリウム0.1重量%とを加えて摺身を調製し、食塩3重量%、無澱粉、加水量0、15、30の各重量%の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区2)。蒲鉾の製造は、摺身の凍結前、凍結直後、凍結貯蔵30日後、凍結貯蔵60日後にそれぞれ行った。製造した蒲鉾について、pHを測定し、また、フードレオメータープランジャーΦ:5mm)で弾力を測定した。また、各蒲鉾について、試験例6と同一の5点評価法官能的に弾力、硬さを判定するとともに、試験例4と同一の折曲げテストで判定した。その結果を表7乃至表10に示す。

0048

0049

0050

0051

0052

表7乃至表10の結果から、試験区2では試験区1に比べて弾力、硬さ、折曲げテストの評価が高く、特に、冷凍貯蔵後30日目および60日目でその差が顕著であることがわかる。

0053

スケソウダラの生肉に対し砂糖5重量%を加えて摺身を調製し、さらに表11の左欄に示す重量%の加水を行い、食塩3重量%、無澱粉の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区1)。また、スケソウダラの生肉に対しトレハロース5重量%と炭酸ナトリウム0.1重量%と加えて摺身を調製し、さらに表11の左欄に示す重量%の加水を行い、食塩3重量%、無澱粉の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区2)。蒲鉾の製造は、摺身の凍結前、凍結直後、凍結貯蔵30日後、凍結貯蔵60日後にそれぞれ行った。製造した蒲鉾について、フードレオメーター(プランジャーΦ:5mm)で弾力を測定した。測定した弾力を基に、〔水延ばし効果(%)〕=〔試験区2の弾力値(g/cm2 )〕×100/〔試験区1の弾力値(g/cm2 )〕の式で水延ばし効果を算出した。その結果を表11に示す。

0054

0055

表11の結果から、試験区2では試験区1に比べて水延ばし効果が高く、特に、冷凍貯蔵後30日目および加水量30重量%でその差が顕著であることがわかる。

0056

スケソウダラの生肉に対しソルビット8重量%を加え、摺身を調製した。本摺身に対して、食塩3重量%、無澱粉、加水量、0,15,30の各重量%の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区1)。また、スケソウダラの生肉に対しトレハロース5重量%と炭酸ナトリウム0.1重量%、乳化剤0.2重量%とを加えて摺身を調製した。本摺身に対して、食塩3重量%、無澱粉、加水量、0.15,30の各重量%の条件でケーシング蒲鉾を製造した(試験区2)。蒲鉾の製造は、摺身の貯蔵後60日、90日目にそれぞれ行った。製造した蒲鉾について、実施例1と同様の方法で弾力、官能評価、折曲げテストを行った。また、白度L値)を測定した。それらの結果を表12乃至表13に示す。表12乃至表13に示すように、トレハロース5重量%と炭酸ナトリウム0.1重量%、乳化剤0.2重量%とを加えた試験区2では、水延ばし効果が高く、高含水量の冷凍摺身を作ることができた。

0057

0058

0059

糖質の違いによるタンパク質の冷凍変性抑制効果の差を調べるため、以下の試験を行った。

0060

〔冷凍摺身の調製方法〕水晒しをしたスケソウダラ生肉に、表14に示す処方(各%は重量%)で摺身を調製し、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0061

0062

解凍ドリップの測定方法〕凍結貯蔵後210日目および360日目に解凍ドリップを測定した。解凍ドリップの測定は、冷凍摺身片(30mm×30mm×3乃至4mm:重量:3.7乃至4.9g)を濾紙(「東洋濾紙」2番、Φ=125mm)上に置き、10℃に保った冷蔵庫中で5時間放置した際のドリップの重量を測定することにより行った。その重量から以下の計算式で解凍減量率を求めた。

0063

解凍減量率=〔(解凍前の重量−解凍後の重量)/(解凍前の重量)〕×100

0064

〔蒲鉾の調製方法〕また、調製した冷凍摺身を用い、食塩3重量%を加えて擂潰し、加水量20重量%の水を加え、ケーシング充填した後、90℃で30分間ボイルを行い、蒲鉾を作った。

0065

〔蒲鉾評価方法〕できあがった蒲鉾についてフードレオメーターによるゲル強度の測定(プランジャー:Φ=5mm)、官能評価、ハンター白度の測定を行い、各摺身の蒲鉾適正能を調べた。さらに、その蒲鉾について、破断荷重破断応力破断変形および破断歪率を以下の計算式で求めた。また、色彩色差計((株)ミノルタ製「CR−300」)により白度(L値)を測定した。それらの結果を表15および表16に示す。

0066

破断荷重(gf)=破断点の荷重

0067

破断応力(N/m2 )=〔(破断荷重gf)×10-3×(重力加速度)〕/〔(接触面積mm2 )×10-8〕

0068

破断変形(mm)=破断の変形

0069

破断歪率(%)=〔(破断変形mm)/(サンプルmm)〕×100

0070

0071

0072

表15および表16に示すように、官能評価において冷凍変性に対する糖質の炭酸ナトリウム、乳化剤との組み合わせ効果では、トレハロース>ソルビット>砂糖の順であり、pH7.5以上で顕著であった。冷凍変性に対する糖質の濃度による抑制効果の増大は、官能評価で見ると、各種糖質で認められた。その効果は、5重量%または10重量%使用区では、トレハロース>ソルビット>砂糖の順であった。各種糖質を併用した場合の抑制効果は、砂糖+ソルビットの併用区よりソルビット+トレハロースの併用区の方が良好であった。なお、観察によれば、トレハロースを使用した試験区では、氷結晶を微細にし、凍結中の氷の成長を防ぐ効果が見られた。

0073

タンパク質変性抑制剤のスケソウダラの陸上摺身に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0074

〔冷凍摺身の調製方法〕水晒しをしたスケソウダラ生肉に、(1)試験区1(砂糖8重量%)、(2)試験区2(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)のタンパク質変性抑制剤を加えて摺身を調製後、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0075

〔摺身の評価方法〕凍結貯蔵後60日目および180日目に水分量を測定した。水分重量%は、110℃で22時間乾燥後の重量と比較して求めた。また、塩すり前と塩すり後の摺身のpHを求めた。pHは、塩すり前後の摺身の10重量%水溶液で測定した。

0076

〔蒲鉾の調製方法〕また、凍結貯蔵後60日目および180日目の調製した冷凍摺身を用い、食塩3重量%を加え、カッターで擂潰し、加水量0、15重量%、20重量%の水を加え、ケーシングに充填した後、90℃で30分間ボイルを行い、蒲鉾を作った。

0077

〔蒲鉾評価方法〕できあがった蒲鉾についてフードレオメーターによるゲル強度の測定(プランジャー:Φ=5mm)、官能評価、ハンター白度の測定を行い、各摺身の蒲鉾適正能を調べた。さらに、その蒲鉾について、実施例4と同様の方法で破断荷重および破断変形を求めた。さらに、その蒲鉾について、折り曲げテストを行った。折り曲げテストは、試験例4と同様の方法で行った。それらの結果を表17および表18に示す。

0078

0079

0080

表17および表18に示すように、試験区2は、特に凍結貯蔵後180日目で、試験区1に比べて蒲鉾形成能破断強度、官能評価、折り曲げテストの各結果で著しく優れた結果を示した。また、試験区1では水延ばし効果が全く認められなかったのに対し、試験区2では加水量が増しても蒲鉾形成能を有していた。

0081

タンパク質変性抑制剤のスケソウダラの陸上摺身に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0082

〔冷凍摺身の調製方法〕水晒しをしたスケソウダラ生肉に、(1)試験区1(砂糖8重量%)、(2)試験区2(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)のタンパク質変性抑制剤を加えて摺身を調製後、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0083

〔摺身の評価方法〕凍結前、凍結直後、凍結貯蔵後30日目、60日目、90日目、210日目および360日目の摺身について、実施例5の場合と同様に水分、pHを求めた。

0084

〔蒲鉾の調製および評価方法〕凍結前および各凍結期間の摺身を用いて、実施例5の場合と同様に蒲鉾を作り、評価を行った。それらの結果を表19乃至表25に示す。

0085

0086

0087

0088

0089

0090

0091

0092

表21乃至表25に示すように、試験区2では、高含水率の冷凍摺身を作ることができるとともに、水延ばし効果の高い冷凍摺身を作ることができた。また、試験区1では、凍結貯蔵後90日目で蒲鉾形成能を失うのに対し、試験区2は360日目でも蒲鉾形成能を有しており、冷凍期間による差が顕著であった。

0093

タンパク質変性抑制剤の雑摺身に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0094

〔冷凍摺身の調製方法〕冷凍ドンコ70重量%、生ホッケ12重量%、冷凍さば6重量%、生ドンコとナヨとボラとの混合12重量%から成る摺身に、(1)試験区1(実施例5と同一の砂糖6重量%)、(2)試験区2(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)のタンパク質変性抑制剤を加えて摺身を調製後、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0095

〔摺身の評価方法〕凍結直後、凍結貯蔵後14日目、2カ月目および4ヵ月目の摺身について、実施例5の場合と同様に水分、pHを求めた。

0096

〔蒲鉾の調製および評価方法〕各凍結期間の摺身を用いて、実施例5の場合と同様に蒲鉾を作り、評価を行った。それらの結果を表26乃至表29に示す。

0097

0098

0099

0100

0101

表26乃至表29に示すように、試験区2では、冷凍貯蔵後2ヵ月目の結果で、試験区1よりタンパク質の冷凍変性抑制効果が高く、高度の蒲鉾形成能を有していた。

0102

タンパク質変性抑制剤の白グチ摺身に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0103

〔冷凍摺身の調製方法〕白グチの生肉に、トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%をそれぞれ加えて摺身を調製後、−25℃で凍結貯蔵した。

0104

〔摺身の評価方法〕凍結前、凍結貯蔵後90日目の摺身について、実施例5の場合と同様に水分、pHを求めた。

0105

〔蒲鉾の調製および評価方法〕各摺身を用いて、実施例5の場合と同様に蒲鉾を作り、評価を行った。それらの結果を表30に示す。

0106

0107

表30に示すように、本実施例により蒲鉾として適正なものを作ることができた。

0108

タンパク質変性抑制剤のホッケ摺身に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0109

〔冷凍摺身の調製方法〕水晒しをしたホッケの生肉に、(1)試験区1(砂糖8重量%)、(2)試験区2(ソルビット5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)(3)試験区3(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)のタンパク質変性抑制剤を加えて摺身を調製後、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0110

〔摺身の評価方法〕凍結前および凍結貯蔵後30日目の摺身について、実施例5の場合と同様に水分、pHを求めた。

0111

〔蒲鉾の調製および評価方法〕凍結前および凍結貯蔵後30日目の摺身を用いて、実施例5の場合と同様に蒲鉾を作り、評価を行った。それらの結果を表31および表32に示す。

0112

0113

0114

表31および表32に示すように、トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%のタンパク質変性抑制剤を加えたもの(試験区3)では、高含水量の摺身を作ることができた。また、凍結貯蔵後30日目では、試験区3のタンパク質変性抑制剤を加えたものでは、砂糖8重量%を加えたもの(試験区1)に比べてタンパク質の変性率が低く、蒲鉾形成能が高かった。なお、ホッケを用いた本実施例では、スケソウダラを用いた実施例5などの場合に比べてpHシフトが小さかった。

0115

タンパク質変性抑制剤のトリミンチ肉およびミンチ肉に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0116

〔ミンチ肉の調製方法〕市販のトリミンチ肉(菜彩鶏)およびブタミンチ肉(国産)を、(1)試験区1(無添加)、(2)試験区2(砂糖5重量%を添加)、(3)試験区3(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%を添加)に調製し、混合器(「クックマスター」)で25秒混合後、プラスチックシャーレ蓋(Φ:90mm、深さ10mm)で成形してラップ包みフリーザーにより−20℃で凍結貯蔵した。

0117

〔ミンチ肉の評価方法〕(1)凍結貯蔵後1日目および26日目の冷凍ミンチ肉について水分量を測定した。水分重量%は、110℃で20時間乾燥後の重量と比較して求めた。(2)また、10倍希釈液によりミンチ肉のpHを求めた。(3)ドリップについて、東洋濾紙(2番、Φ:125mm)2枚重ねに冷凍パテを載せ、解凍前と10℃冷蔵庫で2時間解凍後の重量を測定して求めた。その重量から、解凍減量率(%)=〔(解凍前重量−解凍後重量)/解凍前重量〕×100の計算式で解凍減量率(%)を求めた。(4)加熱縮みについて調べるため、ホットプレートを用い、200℃で表:1分、裏:1分、表:1分、裏:1分の加熱を行い、加熱後の重量を測定した。その重量から、加熱減量率(%)=〔(加熱前重量−加熱後重量)/加熱前重量〕×100の計算式で加熱減量率(%)を求めた。(5)官能評価は、ジューシーさ、固さについて評価した。それらの結果を表33および表34に示す。

0118

0119

0120

表33および表34に示すように、ミンチ肉のpHは、試験区3(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%を添加)では、試験区1に比べてトリミンチ肉で0.5、豚ミンチ肉で約1.0の上昇を示し、対象肉により上昇に違いが見られた。試験区3では、解凍後のドリップがトリミンチ肉、豚ミンチ肉ともに防止され、特に豚ミンチ肉で顕著に防止された。試験区3では、豚ミンチ肉の加熱による縮みが試験区1および試験区2に比べて小さかった。

0121

タンパク質変性抑制剤の豚もも肉に対する冷凍変性抑制効果を以下の方法で調べた。

0122

〔ミンチ肉の調製方法〕国産豚もも塊肉を3mm目チョッパーミンチにし、(1)試験区1(炭酸ナトリウム0.093重量%)、(2)試験区2(炭酸ナトリウム0.185重量%)、(3)試験区3(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)、(4)試験区4(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.193重量%+乳化剤0.2重量%)、(5)試験区5(ソルビット5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)、(6)試験区6(無添加)、をそれぞれ添加して、均一混合した。次に、混合器(「クックマスター」)で30秒(10秒×3回)混合後、その50gをプラスチックシャーレ蓋(Φ:90mm、深さ10mm)で成形してラップで包み、フリーザーにより−20℃で凍結貯蔵した。

0123

〔ミンチ肉の評価方法〕凍結前と凍結保管3日目の冷凍ミンチ肉について実施例10の場合と同様の評価を行った。但し、ドリップについては、東洋濾紙(2番、Φ:125mm)2枚重ねに冷凍パテを載せ、解凍前と10℃冷蔵庫で3時間解凍後の重量を測定して求めた。評価の結果を表35乃至表38に示す。なお、水分量については、75重量%であった。

0124

0125

0126

0127

0128

表35乃至表38に示すように、トレハロースおよび炭酸ナトリウムを含む試験区3および試験区4では、凍結前、凍結保管3日目の両方で、トレハロースを含まない試験区1および試験区2とそれぞれ比較したとき、加熱の縮み、ドリップがともに減少した。また、試験区3と試験区4との比較から、トレハロースおよび炭酸ナトリウムを使用した場合にpHを高くすると、加熱の縮みやドリップを減少させる効果が高くなることがわかった。さらに、試験区3とトレハロースの代わりにソルビットを用いた試験区5との比較から、トレハロースを用いた場合には、ソルビットを用いた場合に比べて、凍結前、凍結保管3日目の両方で加熱による重量変化が若干小さくなることがわかった。

0129

タンパク質変性抑制剤を含む冷凍摺身を用いて揚げ蒲鉾、蒲鉾および魚肉ソーセージを製造した。

0130

〔冷凍摺身の調製方法〕水晒しをしたスケソウダラ生肉に、(1)試験区1(砂糖8重量%)、(2)試験区2(トレハロース5重量%+炭酸ナトリウム0.1重量%+乳化剤0.2重量%)のタンパク質変性抑制剤を加えて摺身を調製後、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で120日貯蔵した。

0131

〔揚げ蒲鉾の製造〕前述の凍結貯蔵後120日目の冷凍摺身を使用して、表39の配合でカッターにより擂潰し、丸天を作ってフライヤーにより170℃の温度で揚げて揚げ蒲鉾を作った。

0132

0133

〔揚げ蒲鉾の評価方法〕専門パネルにより5点法で弾力、硬さの評価の官能検査を行った。また、10名の一般パネルにより一対比較法による評価を行った。その結果を表40に示す。

0134

0135

表40に示すように、試験区2では、弾力、硬さともに良好な官能評価を得た。一対比較法の結果によれば、試験区2は、試験区1に比べて嗜好的に好まれるという結果であった。

0136

〔ケーシング蒲鉾の製造〕前述の凍結貯蔵後120日目の冷凍摺身を使用して、表39の配合でカッターにより擂潰し、座りのないものでは直ちに、座りのあるものでは37℃で60分間放置した後、ケーシングに充填して90℃で30分間ボイルを行い、ケーシング蒲鉾を作った。

0137

〔ケーシング蒲鉾の評価方法〕専門パネルにより5点法で弾力、硬さの評価の官能検査を行った。また、10名の一般パネルにより一対比較法による評価を行った。また、フードレオメーターによるゲル強度の測定(プランジャー:5mm)、ハンター白度の測定を行い、各摺身の蒲鉾適正能を調べた。その結果を表42に示す。

0138

0139

表41に示すように、試験区2は、試験区1に比べて弾力、硬さともに良好な官能評価を得た。この結果は、TG製剤(トランスグルタミナーゼ)を使用した場合に顕著であった。このことは、試験区2では、アクトミオシン区のタンパク質の冷凍変性率が小さく、試験区1に比べて座りやすいことを示している。

0140

〔板蒲鉾の製造〕前述の凍結貯蔵後120日目の冷凍摺身を使用して、表42の配合でカッターにより擂潰し、板付けを行い90℃、30分蒸煮して板蒲鉾を作った。

0141

0142

〔板蒲鉾の評価方法〕専門パネルにより5点法で弾力、硬さの評価の官能検査を行った。また、10名の一般パネルにより一対比較法による評価を行った。その結果を表43に示す。

0143

0144

表43に示すように、板蒲鉾でも、試験区で前述の揚げ蒲鉾やケーシング蒲鉾と同様の良好な結果が得られた。

0145

〔魚肉ソーセージの製造〕前述の凍結貯蔵後120日目の冷凍摺身を使用して、表44の配合でカッターにより擂潰し、ケーシングに充填して95℃で30分間ボイルを行い、魚肉ソーセージを作った。

0146

0147

〔魚肉ソーセージの評価方法〕専門パネルにより5点法で弾力、硬さの評価の官能検査を行った。また、10名の一般パネルにより一対比較法による評価を行った。なお、保存試験に関しては、37℃に保存して肉眼により保存性を判定した。その結果を表45に示す。

0148

0149

表45に示すように、魚肉ソーセージでも、試験区2は試験区1に比べて弾力、硬さともに優れており、保存結果も良好であった。

0150

水晒しをしたスケソウダラ生肉に、表46に示す処方(各%は重量%)で試験区1乃至4の各摺身を調製し、コンタクトフリーザーにて一晩凍結し、−20℃で貯蔵した。

0151

0152

各摺身について組織観察をするため、以下の(1)乃至(7)の手順で標本を作成した。
(1)−20℃の各凍結材料を、解凍、固定、脱水を兼ねて氷冷した純アルコール投入した。
(2)解凍とほぼ同時に厚さ3mmの組織にし、純アルコールで再固定、脱水をした。
(3)キシレン透徹パラフィン包埋し、ミクロトームで厚さ4μmに薄切りした。
(4)スライドグラス上に伸展し乾燥した。
(5)キシレンで脱パラフィンし、下降系アルコールで水に戻した。
(6)ヘマトキシリンエオジン染色、アルコール脱水、キシレン透徹、樹脂封入を行った。
(7)位相差顕微鏡にて観察し、写真撮影を行った。その写真模写した図を図1に示す。

0153

図1に示すように、各サンプルとも構造は良好に保持されていた。一見するとスケソウダラの摺身は、スクロース、ソルビット、トレハロースに構造の違いがあったが、雑魚ではトレハロースサンプルの氷晶が細かい他、スクロースサンプルとに大きな違いは認められなかった。スケソウダラの標本において、スクロースサンプル(試験区4)は縦横四角形に近い氷晶が入り蛋白繊維魚網状構造を示しているが、スクロース濃度が5重量%(試験区1)より8重量%(試験区4)の方で繊維が細かい。すなわち、氷晶が多い傾向にあった。ソルビットサンプル(試験区2)は、氷晶が細かく、方向に一定の傾向を持たない泡沫状見える。さらに、蛋白繊維は他のサンプルより一番細い傾向にあった。トレハロースサンプル(試験区3)は、蛋白繊維が一番太く、その間に幾分方向性があるような細かい氷晶が認められるが、これらに規則性はない。これらのサンプルを比べると、面積あたりの蛋白繊維の量はトレハロースサンプル(試験区3)が一番多い。

図面の簡単な説明

0154

図1本発明の実施例12で製造したスケソウダラ冷凍摺身の組織の写真の模写図である。

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