図面 (/)

技術 大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 竹下智山内学
出願日 1999年12月13日 (20年2ヶ月経過) 出願番号 1999-353657
公開日 2001年6月26日 (18年8ヶ月経過) 公開番号 2001-172736
状態 特許登録済
技術分野 ナノ構造物 複合金属又は合金の製造
主要キーワード 規定下限値 超高層建築 溶接継手部分 建築構造物用 規定要件 衝撃吸収能 熱加工制御 冷却停止
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2001年6月26日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (10)

課題

入熱250kJ/cm以上の溶接後のHAZにおける0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上で、且つ母材引張強度が590N/mm2以上の大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板を提供する。

解決手段

C:0.12〜0.17%、Si:0.1〜0.5%、Mn:2%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.075%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼であって、低Ceq化するとともに、粒径25〜500nmのTi炭窒化物(Nbとの複合化合物を含む)を、体積分率で0.01〜1.0%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、且つ鋼中に粒径75nm以下のNb炭窒化物を、体積分率で0.01〜0.8%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、更にフェライト組織が体積分率で2%以上を占めるようにする。

概要

背景

近年、構造物高層化、大スパン化の要求が強まり、建築構造用鋼材として従来使用されてきた引張強度490N/mm2級の鋼板から、より高強度の590N/mm2級高張力鋼板を使用する動きが高まっている。この情勢を受けて、引張強度590N/mm2級高張力鋼板の建築構造用規格(SA440)が1994年に制定された。この規格では耐震設計思想に基づき、上記高強度の要件に加えて、降伏比の低減(80%以下)という優れた塑性変形能を有すること、及び大入熱溶接後のHAZの靱性向上が要求されているが、特に、阪神大震災以来、HAZの更なる高靱化が要求されている。

建築構造用の引張強度590N/mm2級高張力鋼板を、熱処理法を改良して低降伏比化する技術は、既に提案されている。その一つとしてQ−Q'−T熱処理方法がある。この熱処理法は、焼入(Q)、焼戻し(T)の二つの熱処理の間に、二相域温度(Ac1点以上Ac3点未満)からの焼入れ(Q’)を施す方法である。従来の熱処理方法は、引張強度590N/mm2以上の強度確保の為に焼入(Q)・焼戻し(T)によって生成するマルテンサイトベイナイトを利用しており、一般に降伏比が90%以上と高いが、上記Q−Q'−T熱処理法によれば、マルテンサイトやベイナイトの硬質相に加えて、軟質延性に優れたフェライトがQ’による二相域温度保持プロセス中に生成する為、低い降伏比が得られるのである。

しかしながら、この方法は、降伏比低減のために軟質のフェライトを利用しているので、引張強度590N/mm2級の強度を確保する為には合金元素を多量に添加して、鋼の焼入れ性を向上させる必要がある。しかし、合金元素の添加量が増えると、即ちCeqが従来の引張強度590N/mm2級高張力鋼板よりも高くなると、SAWサブマージアーク溶接),SESNET(エレクトロスラグ溶接)等の大入熱溶接を適用した場合に、HAZ組織脆弱な上部ベイナイト組織となり、靱性が大幅に劣化するという問題があった。

この問題に対処する為、合金元素の添加量を抑えて低Ceq化するとともに、TiやN等の含有量を調節し、かつ熱間圧延後の加速冷却法(TMCP熱加工制御技術)を活用することにより、引張強度590N/mm2以上の高強度、低降伏比及び優れたHAZ靱性を確保する技術が特開平10−121191号公報に提案されている。しかし、上記発明はCeq値の上限が低く、Ceq値許容範囲の上限拡大が求められる。また、上記発明では、引張強度590N/mm2以上の高強度、低降伏比及び優れたHAZ靱性を同時に満たす為の金属組織の制御について全く開示されていない。

概要

入熱250kJ/cm以上の溶接後のHAZにおける0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上で、且つ母材の引張強度が590N/mm2以上の大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板を提供する。

C:0.12〜0.17%、Si:0.1〜0.5%、Mn:2%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.075%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼であって、低Ceq化するとともに、粒径25〜500nmのTi炭窒化物(Nbとの複合化合物を含む)を、体積分率で0.01〜1.0%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、且つ鋼中に粒径75nm以下のNb炭窒化物を、体積分率で0.01〜0.8%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、更にフェライト組織が体積分率で2%以上を占めるようにする。

目的

本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、入熱250kJ/cm以上で溶接した後のHAZ全域の0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上であり、且つ母材の引張強度が590N/mm2以上である大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板、即ち、超高層建築構造物用高強度鋼板であって、地震時に激しい衝撃を受けた場合でも、該建築物を構成する鋼板の衝撃吸収能が高く、且つ溶接部分も衝撃に耐えられる低降伏比高張力鋼板を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

質量%で(以下、同じ)、C:0.12〜0.17%、Si:0.1〜0.5%、Mn:2%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.075%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼であって、下記式で示されるCeqが、0.38≦Ceq≦0.43を満たす他、鋼中に含まれる粒径25〜500nmのTi炭窒化物(Nbとの複合化合物を含む)が、体積分率で0.01%〜1.0%及び/又は個数で25〜400個/μm2であり、且つ鋼中に含まれる粒径75nm以下のNb炭窒化物が、体積分率で0.01%〜0.8%及び/又は個数で25〜400個/μm2であり、更にフェライト組織が、体積分率で2%以上を占めることを特徴とする大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板。Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14…

請求項2

更に他の元素として、Al:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Ni:2%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:0.07%以下、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものである請求項1に記載の大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板。

技術分野

0001

本発明は、主として超高層建築構造物に使用される鋼板に関するものであり、特に、大入熱溶接を適用しても溶接熱影響部(以下、HAZと言う)の靱性が高く、且つ母材引張強度も590N/mm2以上と優れた低降伏比高張力を示す鋼板に関するものである。

背景技術

0002

近年、構造物の高層化、大スパン化の要求が強まり、建築構造用鋼材として従来使用されてきた引張強度490N/mm2級の鋼板から、より高強度の590N/mm2級高張力鋼板を使用する動きが高まっている。この情勢を受けて、引張強度590N/mm2級高張力鋼板の建築構造用規格(SA440)が1994年に制定された。この規格では耐震設計思想に基づき、上記高強度の要件に加えて、降伏比の低減(80%以下)という優れた塑性変形能を有すること、及び大入熱溶接後のHAZの靱性向上が要求されているが、特に、阪神大震災以来、HAZの更なる高靱化が要求されている。

0003

建築構造用の引張強度590N/mm2級高張力鋼板を、熱処理法を改良して低降伏比化する技術は、既に提案されている。その一つとしてQ−Q'−T熱処理方法がある。この熱処理法は、焼入(Q)、焼戻し(T)の二つの熱処理の間に、二相域温度(Ac1点以上Ac3点未満)からの焼入れ(Q’)を施す方法である。従来の熱処理方法は、引張強度590N/mm2以上の強度確保の為に焼入(Q)・焼戻し(T)によって生成するマルテンサイトベイナイトを利用しており、一般に降伏比が90%以上と高いが、上記Q−Q'−T熱処理法によれば、マルテンサイトやベイナイトの硬質相に加えて、軟質延性に優れたフェライトがQ’による二相域温度保持プロセス中に生成する為、低い降伏比が得られるのである。

0004

しかしながら、この方法は、降伏比低減のために軟質のフェライトを利用しているので、引張強度590N/mm2級の強度を確保する為には合金元素を多量に添加して、鋼の焼入れ性を向上させる必要がある。しかし、合金元素の添加量が増えると、即ちCeqが従来の引張強度590N/mm2級高張力鋼板よりも高くなると、SAWサブマージアーク溶接),SESNET(エレクトロスラグ溶接)等の大入熱溶接を適用した場合に、HAZ組織脆弱な上部ベイナイト組織となり、靱性が大幅に劣化するという問題があった。

0005

この問題に対処する為、合金元素の添加量を抑えて低Ceq化するとともに、TiやN等の含有量を調節し、かつ熱間圧延後の加速冷却法(TMCP熱加工制御技術)を活用することにより、引張強度590N/mm2以上の高強度、低降伏比及び優れたHAZ靱性を確保する技術が特開平10−121191号公報に提案されている。しかし、上記発明はCeq値の上限が低く、Ceq値許容範囲の上限拡大が求められる。また、上記発明では、引張強度590N/mm2以上の高強度、低降伏比及び優れたHAZ靱性を同時に満たす為の金属組織の制御について全く開示されていない。

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、入熱250kJ/cm以上で溶接した後のHAZ全域の0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上であり、且つ母材の引張強度が590N/mm2以上である大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板、即ち、超高層建築構造物用高強度鋼板であって、地震時に激しい衝撃を受けた場合でも、該建築物を構成する鋼板の衝撃吸収能が高く、且つ溶接部分も衝撃に耐えられる低降伏比高張力鋼板を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

上記課題を解決することのできた本発明の鋼材とは、質量%で、C:0.12〜0.17%、Si:0.1〜0.5%、Mn:2%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.075%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼であって、下記式で示されるCeqが、0.38≦Ceq≦0.43を満たす他、鋼中に含まれる粒径25〜500nmのTi炭窒化物(Nbとの複合化合物を含む)が、体積分率で0.01%〜1.0%及び/又は個数で25〜400個/μm2であり、且つ鋼中に含まれる粒径75nm以下のNb炭窒化物が、体積分率で0.01%〜0.8%及び/又は個数で25〜400個/μm2であり、更にフェライト組織が体積分率で2%以上を占めることを要旨とする。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14…

0008

更に他の元素として、Al:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Ni:2%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:0.07%以下、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。

発明を実施するための最良の形態

0009

本発明者らは、前述した様な状況の下で、母材の引張特性、靱性及びHAZの靱性の全ての要求特性を満たす溶接構造用鋼板の開発を期して鋭意研究を進めた結果、
HAZの靱性向上の為には、HAZ組織を微細なフェライト組織とすることが重要であり、その為にはCeqを制御し、かつ微細なTi炭窒化物を活用すること、及び
Ceqが0.38≦Ceq≦0.43の範囲内で、且つ低降伏比を維持したまま母材及び溶接継手部の強度を確保するには、Ceqに影響を与える合金元素による固溶強化ではなく、Ceqに影響を与えない元素であるNbをNb炭窒化物として活用すること、及び
母材の降伏比を80%以下に低減させるには、鋼中のフェライト組織分率を制御すること、が有効であることを見出し、これらの知見を利用することにより、大入熱継手靱性に優れた引張強度590N/mm2以上の低降伏比高張力鋼板を得ることができることを突き止め、金属組織、Ti炭窒化物又はNb炭窒化物による定量的作用効果について更に追求を重ねた結果、上記本発明に想到したものである。

0010

以下、本発明において鋼材の金属組織や化学成分等を定めた理由を述べる。

0011

(1)まず、大入熱溶接特性について説明する。一般に、組織と靱性との間には、図1に示す様な関係がある。図1曲線を左端から右方向に見ていくと、マルテンサイト主体の組織は非常に脆い組織であるが、下部ベイナイト主体の組織になると靱性が大幅に改善される。しかし、上部ベイナイト主体の組織になると靱性が大幅に劣化し、フェライト+パーライト組織になると靱性は再び改善される。

0012

従来の引張強度590N/mm2以上の低降伏比高張力鋼板は、上述の通り、大入熱溶接後のHAZ組織が上部ベイナイト主体の組織となる為、図1にも示される様に継手靱性が良くない。HAZ靱性を改善するには、図1より組織を下部ベイナイト主体又はフェライト主体組織とすればよいことが分かる。前者の下部ベイナイト化は、鋼材のCeqを上げることにより実現可能であるが、母材の降伏比が高くなりすぎること、合金元素添加量の増加により溶接性が低下すること、及び経済性の問題もあり実用的ではない。そこで、HAZ靱性を改善する為には、大入熱溶接後のHAZ組織をフェライト主体とすることが必須となる。

0013

因みに、前述の特開平10−121191号公報では、HAZ組織をフェライト主体とすることは、母材の強度低下を来たす為に好ましくない方法とされているが、本発明では、後述のNb炭窒化物析出制御により母材強度及び継手強度も同時に確保できることを見出したのである。

0014

HAZ組織をフェライト主体とすることが、HAZ靱性を向上させる為に重要であることは、図2に示す通りである。図2は、実験条件として、表1に示す鋼種を使用し、フェライト粒径はTi、Nbの添加量を制御して変化させた。また、溶接には板厚60mmの鋼板を用い、入熱700kJ/cmのSESNET溶接を適用したものである。シャルピー試験採取位置図3に示す通りである(以下のシャルピー衝撃試験に用いる溶接継手部の試験片についても同じ)。図2より、HAZ組織はフェライト分率が50%以上であることが好ましく、更にフェライト粒径が25μm以下に微細化されていることが望ましい。

0015

0016

この様にHAZの靱性は、組織がフェライト主体であり、且つフェライト組織が微細であるほど向上する。本発明者らは、微細化したフェライト組織を多数発生させる為に、変態時にフェライト生成核となるTi炭窒化物を活用した。以下に、HAZ靱性の向上に有効に寄与するTi炭窒化物の粒径、体積分率及び個数について調べた結果について述べる。

0017

まずTi炭窒化物の粒径を変化させて、Ti炭窒化物粒径とHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を調べた。その結果を図4に示す。実験には、表2に示す化学成分組成供試鋼を用い、板厚60mmに熱間圧延後、DQ−T熱処理(オンライン圧延終了後、直ちに水冷し、300℃以下で冷却停止、その後Ac1点未満の温度域からの焼戻しを行う熱処理)を施した。Ti炭窒化物の粒径は、溶製時の冷却速度分塊圧延時の加熱温度等を変化させて調整した。また溶接は、スキンプレート及びダイヤフラム共に板厚60mm材を使用し、入熱700kJ/cmでのSESNET溶接を行った。図4に示す通り、優れたHAZ靱性、即ち0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上を満足させる為には、Ti炭窒化物の粒径を25〜500nmとする必要があることを見出した。

0018

0019

次に、表3に示す様にTi含有量を変化させた供試鋼を用い、粒径25〜500nmのTi炭窒化物の体積分率と、HAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を調べた。その結果を図5に示す。また、表4に示す供試鋼を用いて、粒径25〜500nmのTi炭窒化物の単位面積当たりの個数と、HAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を調べた。その結果を図6に示す。図5または図6より、優れたHAZ靱性、即ち0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上を満足させる為には、粒径25〜500nmのTi炭窒化物を体積分率で0.01〜1.0%、単位面積当たりの個数で25〜400個/μm2含有させる必要があることを見出した。

0020

即ち、Ti炭窒化物が、HAZ靱性を向上させるフェライト組織の生成核になるには最適なサイズがあること、またサイズが最適であってもその鋼中含有量がHAZ靱性の優劣を左右する為、最適量を含有させる必要があることを見出した。

0021

0022

0023

本発明では、強度確保の為にNbを添加することがあり、この場合にはNbとTiとの複合炭窒化物が一部生成する。即ち、Ti炭窒化物がNb炭窒化物と合体する形態をとることがあり得るが、Ti炭窒化物がフェライト生成核として有効に作用する理由は母材との方位関係にある為、TiとNbとの複合化合物であっても、該複合炭窒化物中のTi炭窒化物側では、Ti炭窒化物単独の場合と同様にフェライト生成核として作用する。

0024

(2)次に、Ceq:0.38〜0.43%の化学成分範囲内で、80%以下の低い降伏比と、引張強度590N/mm2以上の高強度とを同時に確保する方法について説明する。

0025

高強度と低降伏比を両立する方法として、低降伏比を、軟質相であるフェライトをマルテンサイト、ベイナイト中に混在させることによって確保しようとする場合、引張強度590N/mm2以上の高強度の確保には、更なる合金元素添加による固溶強化が必要となる。しかし、Ceq0.43%以下の化学成分範囲では、合金元素添加による固溶強化を期待できず、引張強度590N/mm2以上の高強度が確保できない。

0026

そこで本発明者らは、更なる強度上昇の手段として、Ceqに影響を与えない元素であるNbをNb炭窒化物として析出強化に活用した。以下に、強度の向上に有効に寄与するNb炭窒化物の粒径、体積分率及び個数について調べた結果を示す。

0027

以下の実験は、板厚60mmに熱間圧延し、DQ−T熱処理を施したものを用いた。尚、引張試験丸棒引張試験を行った。SA440には引張試験のJIS規定がない為、全厚引張試験で行ってもよいが、鋼材の正確な強度を測定する為に、試験片採取位置がt/4部である丸棒引張試験を採用することとした。

0028

まず、Nb炭窒化物粒径と引張強度との関係を、前記表2に示す化学成分組成の供試鋼を用いて調査した。その結果を図7に示す。図7より、590N/mm2以上の引張強度を満足させる為には、粒径を75nm以下とする必要があることを見出した。

0029

次に、表5に示す様にNb含有量を変化させた供試鋼を用いて、粒径75nm以下のNb炭窒化物の体積分率と、引張強度又はHAZ靱性との関係を調べた。その結果を図8に示す。また、前記表4に示す供試鋼を用いて、粒径75nm以下のNb炭窒化物の単位面積当たりの個数と、引張強度又は母材靱性との関係を調べた。その結果を図9に示す。母材靱性は、t/4位置から採取した試験片を用い、0℃でシャルピー衝撃試験を行って評価した。

0030

0031

図8より、590N/mm2以上の引張強度を確保する為には、粒径75nm以下のNb炭窒化物を、体積分率で0.01%以上、好ましくは0.02%以上含有させる必要があり、またHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上を同時に満足させる為には、粒径75nm以下のNb炭窒化物を、体積分率で0.8%以下に抑えるべきであることを見出した。

0032

また図9より、590N/mm2以上の引張強度を確保する為には、粒径75nm以下のNb炭窒化物を25個/μm2以上含有させる必要があり、また母材の0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上を同時に満足させる為には、粒径75nm以下のNb炭窒化物の含有量を400個/μm2以下に抑える必要があることを見出した。

0033

尚、析出強化には、上記Nb炭窒化物以外にV炭化物、Mo炭化物等を用いても良い。

0034

(3)更に、フェライト分率と母材靱性との関係を、表6に示す供試鋼を用いて調べた。その結果を表6に併記する。尚、フェライト分率は熱処理条件を変えて調整した。また母材靱性は、t/4位置から採取した試験片を用い、0℃でシャルピー衝撃試験を行って評価した。表6より、本発明の様に低Ceq成分系の母材の降伏比を80%以下に低減する為には、母材のフェライト分率を2%以上とすればよいことが分かる。

0035

0036

本発明では、所望の組織を得る為に熱処理法としてDQ−T法を用いたが、フェライト生成核として有効なTi炭窒化物、析出強化に有効な微細で適正な分率及び/又は個数のNb炭窒化物が生成可能であるならば、上記熱処理法については問わない。

0037

(4)鋼材の化学成分を定めた理由は次の通りである。

0038

C:0.12〜0.17%
Cは、低Ceqの成分系で強度を確保する為に最も必要な元素である為、0.12%以上含有させる。しかしC量が多くなり過ぎると、耐溶接割れ性が得られ難くなるので、0.17%以下に抑える。

0039

Si:0.1〜0.5%
Siは脱酸に必要な元素である為、0.1%以上含有させる。しかし、過多に添加すると溶接性、靱性を劣化させるので、0.5%以下、好ましくは0.4%以下に抑える。

0040

Mn:2%以下
Mnは鋼の焼入性を向上させ、強度を確保する為に必要な元素であるが、2%を超えて過剰に添加すると靱性、溶接性を劣化させるので、2%以下、好ましくは1.6%以下に抑える。

0041

P:0.015%以下
Pは、不純物として鋼中に含有され、且つ偏析しやすい元素であるため、含有量が多いと靱性や溶接性を損ない、溶接時の高温割れ発生の原因ともなる。従って、P含有量は0.015%以下、好ましくは0.01%以下に抑える。

0042

S:0.015%以下
Sは、鋼材中のMn等と結合して、MnSの如く圧延によって伸展し、曲げ加工性及び靱性に悪影響を及ぼす介在物生成源となる有害元素であるので、低含有量であることが望ましい。従って、S含有量は0.015%以下、好ましくは0.008%以下とする。

0043

Ti:0.005〜0.035%
Tiは、フェライト生成核となるTi炭窒化物を形成し、大入熱溶接時のHAZ組織を微細なフェライト・パーライト組織にして優れたHAZ靱性を発揮させ得る。こうした効果を有効に発揮させる為には、0.005%以上、好ましくは0.008%以上の添加が必要である。しかしながら、Cと結合してTiCが生成されると靱性が大幅に劣化し、圧延時のTiC析出物無害化等の工夫が必要となる為、0.035%以下、好ましくは0.025%以下に抑える。

0044

Nb:0.005〜0.075%
Nbは炭窒化物となって析出し、強度の向上及び組織の微細化に有効である。特に本発明の様に、低Ceq成分系の鋼の母材強度及び継手強度の確保には必須である。こうした効果を有効に発揮させる為には0.005%以上、好ましくは0.008%以上の添加が必要である。しかしながら、過剰の添加は靱性及び溶接性を劣化させる為、0.075%以下、好ましくは0.05%以下に抑える。

0045

N:0.002〜0.01%
NはTiと炭窒化物を生成し、溶接時のフェライト核生成サイトとして作用する。こうした効果を有効に発揮させるには0.002%以上、好ましくは0.003%以上含有させる。しかしながら、過剰に添加すると固溶N量を増大させることとなりHAZの靱性を著しく劣化させる為、0.01%以下、好ましくは0.007%以下に抑える。

0046

本発明における必須の元素は以上の通りであるが、本発明の鋼は、上記化学成分の他に残部鉄、更に微量成分或いは不可避不純物を含み得る。また、必要によっては次の様な改善効果を得るため、Al,Cu,Ni,Cr,Mo,V,B,Ca及びREMよりなる群から選ばれる少なくとも1種を適量含有させることも有効である。

0047

Al:0.1%以下
Alは、脱酸に必要な元素である為、0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に添加するとAl2O3介在物形成による母材靱性の劣化をもたらす為、上限を0.1%とする。

0048

Cu:0.5%以下
Cuは、焼入性の向上及び固溶強化、析出強化による強度上昇に有効な元素である為、0.01%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に添加すると熱間加工性、靱性及び溶接性を劣化させる為、0.5%以下に抑える。

0049

Ni:2%以下
Niは、焼入性の確保と積層欠陥エネルギーの上昇による靱性向上に有効な元素である為、0.05%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に添加するとスケール疵が発生しやすくなり、且つコストアップとなる為、2%以下に抑える。

0050

Cr:1%以下
Crは、焼入れ性向上に有効な元素である為、0.05%以上含有させることが好ましい。しかし過剰に添加すると溶接性に悪影響を及ぼす為、1%以下に抑える。

0051

Mo:1%以下
Moは、強度上昇と焼戻し軟化防止に有効な元素である為、0.05%以上含有させることが好ましい。しかし過剰に添加すると溶接性を劣化させ、且つコストアップにもなる為、含有量を1%以下に抑える。

0052

V:0.07%以下
Vは、強度上昇と焼戻し軟化防止に有効な元素でもある為、0.005%以上含有させることが好ましい。しかし過剰に添加すると靱性と溶接性に悪影響を及ぼす為、含有量は0.07%以下に抑える。

0053

B:0.003%以下
Bは、微量の添加で焼入性を高め、強度の上昇に有効な元素である為、0.0003%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に添加するとBN以外のB化合物の多量生成、固溶Bの増加により鋼の靱性を劣化させる為、含有量を0.003%以下に抑える。

0054

Ca:0.01%以下
Caは非金属介在物球状化作用を有し、曲げ加工性及び靱性の向上に有効な元素である為、0.0005%以上添加させることが望ましい。しかし過剰に添加すると、余ったCaが介在物となって靱性を劣化させる為、含有量を0.01%以下に抑える。

0055

REM:0.01%以下
REMは、介在物の形態制御作用があり、曲げ加工性、靱性及び板厚方向の延性改善に有効な元素である為、0.001%以上含有させることが好ましい。しかし過剰に添加すると靱性を劣化させる為、含有量を0.01%以下に抑える。

0056

以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。

0057

実施例
表7に示す化学成分を有する鋼を、板厚25〜80mmの鋼板に圧延した後、DQ−T処理を施した。これら各鋼板のミクロ組織調査結果、引張特性及びSESNET溶接による大入熱溶接継手特性を表8に示す。

0058

0059

0060

表7及び表8における実施例No.1〜9は、請求項1の規定要件を満たし、いずれも590N/mm2以上の引張強度と80%以下の降伏比、及びHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上と優れたHAZ靱性を有していることが分かる。

0061

これに対して、実施例No.10〜18は、請求項1で定める要件のいずれかを欠き、下記の如く母材の引張強度、降伏比又は大入熱継手靱性のいずれかが不良で本発明の目的を達成することができない。

0062

実施例10は、Nb含有量が規定上限を超えて過剰であり、且つ粒径75nm以下のNb炭窒化物の個数も規定上限を超えている為、HAZ靱性の劣るものとなった。

0063

実施例11は、C含有量が規定上限を超え、且つCeqも規定範囲を上回り、HAZ靱性の劣るものとなった。

0064

実施例12,13は、Ti含有量が規定量に及ばず不足しており、粒径が25〜500nmのTi炭窒化物の体積分率及び単位当たりの個数も共に規定範囲量に満たない為、HAZ靱性の劣るものとなった。

0065

実施例14は、Ti含有量が規定範囲を超えて過剰であり、且つ粒径が25〜500nmのTi炭窒化物の個数も過剰である為、HAZ靱性の劣るものとなった。

0066

実施例15は、母材のフェライト分率が規定下限値2%に満たない為、降伏比が80%を超えるものとなった。

0067

実施例16は、Ti含有量とN含有量が規定範囲を超えて過剰である為、TiNが粗大化してHAZ靱性の劣るものとなった。

0068

実施例17,18は、Nb含有量が規定量に及ばず不足している為、粒径75nm以下のNb炭窒化物の体積分率も個数も規定範囲量に及ばず、母材の引張強度が劣るものとなった。

発明の効果

0069

本発明は以上の様に構成されており、上記の通り化学成分を特定した鋼において、Ceqを0.38≦Ceq≦0.43を満たす他、鋼中に含まれる粒径25〜500nmのTi炭窒化物(Nbとの複合化合物を含む)を、体積分率で0.01%〜1.0%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、且つ鋼中に含まれる粒径75nm以下のNb炭窒化物を、体積分率で0.01%〜0.8%及び/又は個数で25〜400個/μm2含有させ、更にフェライト組織が、体積分率で2%以上を占める様にすることで、入熱250kJ/cm以上の溶接後のHAZにおける0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上で、且つ母材の引張強度が590N/mm2以上の大入熱溶接靱性に優れた低降伏比高張力鋼板を提供し得ることとなった。

図面の簡単な説明

0070

図1金属組織と靱性との関係を示すグラフである。
図2フェライト分率及びフェライト粒径とHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
図3シャルピー衝撃試験に用いる溶接継手部分の試験片採取位置を示したものである。
図4Ti炭窒化物径とHAZの0℃での吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
図5粒径25〜500nmのTi炭窒化物の体積分率とHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
図6粒径25〜500nmのTi炭窒化物の単位面積当たりの個数とHAZの0℃でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
図7Nb炭窒化物粒径と引張強度との関係を示すグラフである。
図8粒径75nm以下のNb炭窒化物の体積分率と、引張強度又は母材靱性との関係を示すグラフである。
図9粒径75nm以下のNb炭窒化物の単位面積当たりの個数と、引張強度又は母材靱性との関係を示すグラフである。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 第一工業製薬株式会社の「 コート剤組成物およびその製造方法」が 公開されました。( 2019/09/19)

    【課題】塗工性に優れ、乾燥速度が速く、加熱による着色が少なく、耐摩耗性に優れた、コート剤組成物およびその製造方法を提供する事。【解決手段】下記条件(A)ないし(E)を満たすセルロースナノファイバー、水... 詳細

  • 第一工業製薬株式会社の「 塗料組成物およびその製造方法」が 公開されました。( 2019/09/19)

    【課題】保存安定性に優れ、配合する顔料等の成分の制限が少なく、塗工性に優れた塗料組成物およびその製造方法を提供する事。【解決手段】下記条件(A)ないし(E)を満たすセルロースナノファイバー、水混和性有... 詳細

  • パナソニック株式会社の「 化学物質濃縮器および化学物質検出装置」が 公開されました。( 2019/09/12)

    【課題・解決手段】化学物質濃縮器は、気体試料に含まれる化学物質を濃縮する。この化学物質濃縮器は、気体試料が流れる中空部分を構成する流路と、流路の内壁上に設けられた第1と第2の電極と、第1と第2の電極に... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ