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技術 クレブシエラ(Klebsiella)属細菌の選択培地

出願人 農林水産省草地試験場長
発明者 大友量斎藤雅典
出願日 1999年10月22日 (21年11ヶ月経過) 出願番号 1999-301224
公開日 2001年5月8日 (20年5ヶ月経過) 公開番号 2001-120256
状態 特許登録済
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理
主要キーワード 希釈管 同定システム 生育抑制効果 試験場 特定細菌 同定結果 硫酸マグネシウム水溶液 滅菌シャーレ
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2001年5月8日)のものです。
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課題

畜産廃棄物のように様々な細菌が生息している環境から、乳房炎原因菌を選択的に検出・定量し、乳房炎発生の予測・予防に役立てる。

解決手段

クレブシエラ(Klebsiella)属細菌畜産環境より選択的に検出・定量する行程により培地を作成する。このために、Klebsiella属細菌の検出・定量のためにミオイノシトールを単一炭素源硝酸ナトリウムを単一窒素源とし、さらにデオキシコール酸ナトリウムブリリアントグリーン選択剤として添加した新規合成培地である「BIND培地」とその作成方法を提供する。また、畜産廃棄物(ふん尿、戻し堆肥など)中のKlebsiella属細菌を「BIND培地」を用いて簡便かつ効果的に検出・定量する方法を提供する。そして、Klebsiella属細菌が原因となる深刻な乳房炎の発生を予知し、予防する。

概要

背景

乳房炎酪農経営上重要な乳牛の疾患であり、様々な原因菌大腸菌黄色ブドウ球菌を含む)によって引き起こされる。Klebsiella pneumoniaeはそうした乳房炎原因菌の一種であり、本菌によって引き起こされる乳房炎は深刻で廃となる場合が多い。従って、畜産環境からKlebsiella pneumoniaeを検出・定量する技術はきわめて重要である。

従来Klebsiella属細菌選択培地としてMCIC agar(Bagley,S.T.andR.J.Seidler.Primary Klebsiella Identification with MacConkey Inositol Carbenicillin Agar.Appl.Environ.Microb.36:536-8,1978)やSCAI agar(Kregten,E.V.,N.A.C.Westerdaal,and J.M.N.Willers.New,simple medium for selective recovery of Klebsiella pneumoniae and Klebsiella oxytocca from human feces.J.Clin.Microbiol.20:936-941 1984)が報告されているが、いずれも畜産廃棄物のように種々雑多な細菌を含む材料に対しては十分な選択性を持っていない。

プロジェクト先行研究である「自動切り返しと戻し利用を特徴とする牛ふん尿の堆肥化処理」(伊吹俊彦・畠中哲哉・斎雅典・関澤啻朗,草地試験場研究報告第58号 38-56 1999)において、本発明者らはKlebsiella pneumoniaeの検出に、DHL培地に生育した赤色コロニーを分離し簡易同定キットを用いて同定する、という方法を適用した。この方法は、結果が得られるまでに時間がかかるのみならず、非効率的である。すなわち、DHL培地が腸内細菌群一般の選択培地であることから、分離し同定に供した22株の内、Klebsiella pneumoniaeはわずかl株であった。

本発明者らは上記以外にも種々の既存の培地を用いてKlebsiella属細菌を検出・定量することを試みたが、いずれも実用に耐えうるものではなかった。そこで、Klebsiella属細菌の菌学的諸性質に基づき、ミオイノシトールを単一炭素源硝酸ナトリウムを単一窒素源とし、さらにデオキシコール酸ナトリウムブリリアントグリーン選択剤として添加した新規合成培地「BIND培地」(表l)を新たに開発し、Klebsiella属細菌の検出・定量に用いることを提案した。

概要

畜産廃棄物のように様々な細菌が生息している環境から、乳房炎の原因菌を選択的に検出・定量し、乳房炎発生の予測・予防に役立てる。

クレブシエラ(Klebsiella)属細菌を畜産環境より選択的に検出・定量する行程により培地を作成する。このために、Klebsiella属細菌の検出・定量のためにミオイノシトールを単一炭素源、硝酸ナトリウムを単一窒素源とし、さらにデオキシコール酸ナトリウムとブリリアントグリーンを選択剤として添加した新規合成培地である「BIND培地」とその作成方法を提供する。また、畜産廃棄物(牛ふん尿、戻し堆肥など)中のKlebsiella属細菌を「BIND培地」を用いて簡便かつ効果的に検出・定量する方法を提供する。そして、Klebsiella属細菌が原因となる深刻な乳房炎の発生を予知し、予防する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

クレブシエラ(Klebsiella)属細菌畜産環境より選択的に検出・定量するための培地

技術分野

0001

本発明は、畜産廃棄物のように様々な細菌が生息している環境から、乳房炎原因菌一種であるクレブシエラ(Klebsiella)属細菌(Klebsiella pneumoniae)を選択的に検出・定量し、乳房炎発生の予測・予防に役立てる衛生管理技術に関する。

背景技術

0002

乳房炎は酪農経営上重要な乳牛の疾患であり、様々な原因菌(大腸菌黄色ブドウ球菌を含む)によって引き起こされる。Klebsiella pneumoniaeはそうした乳房炎原因菌の一種であり、本菌によって引き起こされる乳房炎は深刻で廃となる場合が多い。従って、畜産環境からKlebsiella pneumoniaeを検出・定量する技術はきわめて重要である。

0003

従来Klebsiella属細菌の選択培地としてMCIC agar(Bagley,S.T.andR.J.Seidler.Primary Klebsiella Identification with MacConkey Inositol Carbenicillin Agar.Appl.Environ.Microb.36:536-8,1978)やSCAI agar(Kregten,E.V.,N.A.C.Westerdaal,and J.M.N.Willers.New,simple medium for selective recovery of Klebsiella pneumoniae and Klebsiella oxytocca from human feces.J.Clin.Microbiol.20:936-941 1984)が報告されているが、いずれも畜産廃棄物のように種々雑多な細菌を含む材料に対しては十分な選択性を持っていない。

0004

プロジェクト先行研究である「自動切り返しと戻し利用を特徴とする牛ふん尿の堆肥化処理」(伊吹俊彦・畠中哲哉・斎雅典・関澤啻朗,草地試験場研究報告第58号 38-56 1999)において、本発明者らはKlebsiella pneumoniaeの検出に、DHL培地に生育した赤色コロニーを分離し簡易同定キットを用いて同定する、という方法を適用した。この方法は、結果が得られるまでに時間がかかるのみならず、非効率的である。すなわち、DHL培地が腸内細菌群一般の選択培地であることから、分離し同定に供した22株の内、Klebsiella pneumoniaeはわずかl株であった。

0005

本発明者らは上記以外にも種々の既存の培地を用いてKlebsiella属細菌を検出・定量することを試みたが、いずれも実用に耐えうるものではなかった。そこで、Klebsiella属細菌の菌学的諸性質に基づき、ミオイノシトールを単一炭素源硝酸ナトリウムを単一窒素源とし、さらにデオキシコール酸ナトリウムブリリアントグリーン選択剤として添加した新規合成培地「BIND培地」(表l)を新たに開発し、Klebsiella属細菌の検出・定量に用いることを提案した。

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は本発明者らが新たに開発した「BIND培地」により、従来の方法では困難であった,畜産廃棄物などからのKlebsiella属細菌の検出・定量を簡便・迅速に行うことを可能にする。この発明により、畜産環境中のKlebsiella属細菌の追跡が容易となり、本菌に由来する乳房炎の予測・予防を効果的に行うことができる。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、Klebsiella属細菌の検出・定量のためにミオイノシトールを単一炭素源、硝酸ナトリウムを単一窒素源とし、さらにデオキシコール酸ナトリウムとブリリアントグリーンを選択剤として添加した新規合成培地「BIND培地」とその作成方法を提供する。本発明はまた、畜産廃棄物(牛ふん尿、戻し堆肥など)中のKlebsiella属細菌を「BIND培地」を用いて簡便かつ効果的に検出・定量する方法を提供する。

発明を実施するための最良の形態

0008

一般に環境中から特定細菌を分離・同定する最初の行程は、目的とする細菌を効果的に増殖させ、それ以外の細菌の増殖を抑制・阻害する「選択培地」を用いて行われる。選択培地の選択性が低すぎる場合、目的とする以外の細菌が増殖し、目的とする細菌の増殖の判定が困難になったり、その後の同定作業が著しく非効率的になったりする。一方、培地の選択性が高すぎる場合、目的とする細菌群の一部しか検出されないことになり、細菌数過小評価されるため疾病発生の予知・予防には使用できない。

0009

培地の選択性は、ある特定の細菌のみが資化できる栄養源の利用、抗生物質色素など特定細菌の増殖を抑制する薬剤の添加などによって決定される。従来Klebsiella属細菌の分離には、本菌が特異的に利用できるクエン酸やミオイノシトールを単一炭素源として利用する方法、本菌を含む腸内細菌群が一般に耐性を示すデオキシコール酸の添加、本菌が耐性を示すアンピシリン系抗生物質の利用などが検討されている。しかし、他種の細菌の混入が比較的限定される食品などの試料に対しては一定の効果を示すものの、牛ふん尿スラリー牛舎敷料など種々雑多な細菌を含む試料に対しては効果的ではなかった。

0010

本発明においては、Klebsiella属細菌が特異的に利用できる栄養源として、単一炭素源としてのミオイノシトールに加え、新たに硝酸ナトリウムを単一窒素源として用いることを検討した。また、本菌が耐性を示すとされるアンピシリン系抗生物質については、すべてのKlebsiella属細菌が耐性を有するわけではないことから、これを用いなかった。代替として色素化合物の添加による他種細菌の生育抑制効果を検討し、ブリリアントグリーンが本菌の選択に効果的であることを見いだした。また、本発明による培地の応用範囲は、畜産関係に限らず他の分野にも適用できる。

0011

以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は実施例に限定されない。本実施例では、草地試験場総合牛舎及び近隣農家より採取したサンプルに含まれるKlebsiella属細菌の検出・定量を以下のように試みた。

0012

(方法)
1)材料:草地試験場総合牛舎及び近隣農家より採取した牛ふん・堆肥・敷料として利用した戻し堆肥・おがくず等。
2)BIND培地の調製:寒天末3gを300ml三角フラスコ量し、蒸留水l90mlを添加してオートクレーブ滅菌した。ここにl0mlの20 xBIND濃厚溶液(約0.8リットルの蒸留水にミオイノシトール80g、硝酸ナトリウム20g、リン酸水素ナトリウム12水和物17.1g、リ ン酸カリウム60g、塩化ナトリウム10gをよく攪拌して溶解し、蒸留水 を加えて全量を1リットルとした後に濾過滅菌したもの)、0.2mlの1 M硫酸マグネシウム水溶液、2mlの10%デオキシコール酸ナトリウム水溶液及び2mlのlmg/mlブリリアントグリーン水溶液を添加する。よ く攪拌・混合してから滅菌シャーレに約15mlずつ分注し、室温に静置し て固化したものを用いた(表1)。

0013

3)既存のクレブシエラ用培地の調製:上述の報文に従って調製した(表2)。
4)Klebsiella属細菌の検出・定量:l)で述べた材料5gを乾熱滅菌したブレンダーカップに秤量し、オートクレーブ滅菌したリン酸緩衝生理食塩水PBS)を50ml加えて、約150rpmで1分間処理した。ここから5mlを乾熱滅菌した希釈管はかりとり、PBSで順次希釈したものl00μ lを2)及び3)で述べた寒天培地に塗布した。これを30℃で一晩ないし 二晩静置培養し、生育の見られたコロニーを計数し、あるいは単コロニー分 離して以後の試験に用いた。

0014

0015

ID=000005HE=095 WI=151 LX=0295 LY=0300
ここで、表1は本発明によって新たに開発された「BIND培地」の組成を示す。表2はKlebsiella属細菌分離用としてこれまでに報告された選択培地の組成を示す。表3は図4に示した各分離菌株のApi20Eによる同定結果を示す。

0016

5)単コロニー分離した細菌の同定:分離した各菌株を2)及び3)で述べた寒天培地に移植し30℃で三晩静置培養して形成されたコロニーの外観を観 察した。またそれぞれの菌株から全DNAを抽出し、PCR法によってl6 SrRNA領域を増幅してその塩基配列解析した。得られた配列情報は塩 基配列解析ソフトウェア(GENETIX Mac ver.9.0及びClustal X) を用いて既知のKlebsiella属細菌及び近縁細菌の当該塩基配列と比較し、分 子系統樹を作成した。さらに、簡易細菌同定システム(Api20E)を用いた分離株の同定も行った。

0017

(結果の概要
1)上述の各培地によって牛ふんや敷料に含まれるKlebsiella属細菌の検出を試みたところBIND培地によってのみ、一定の外観(白色〜淡青色で大きく盛り上がつた形状)を有するコロニーの生育が認められた。ほかの培地で は様々な外観のコロニーが出現し、Klebsiella属細菌のコロニーを判別する ことは困難であった(図1図3参照)。
2)分離菌株のそれぞれの培地上での生育を比較したところ、BIND培地に生育する菌株はほかの培地上でもKlebsiella属細菌と考えられる外観のコロニーを形成した。

0018

一方、他の培地ではKlebsiella属細菌と考えられる以外の細菌も生育した(図4参照)。
3)l6SrRNA領域の塩基配列の解析からBIND培地に生育する細菌はすべてKlebsiella属細菌かそれに非常に近縁であることが示された。一方、ほかの培地に生育する細菌の中にはKlebsiella属細菌とは別の系統分類される細菌も含まれていた(図5参照)。
4)Api20Eによる同定の結果からも、BIND培地に生育した細菌はすべてKlebsiella属細菌であることが示唆された(表3)。

0019

以上の結果により、本発明によって提供される「BIND培地」は、既知の培地と比較してKlebsiella属細菌の選択性に非常に優れており、畜産廃棄物のような種々雑多な細菌が含まれるような試料に対しても十分適用されうることが明らかとなった。

発明の効果

0020

本発明により畜産環境中のKlebsiella属細菌の検出・定量をきわめて簡便かつ効果的に行うことができる。これにより、Klebsiella属細菌が原因となる深刻な乳房炎の発生を予知し、予防することが可能となる。

図面の簡単な説明

0021

図1今回試験に用いた4種の培地の外観を示す。
図2図1の各培地に畜産環境(草地試験場総合牛舎)から採取したサンプルの抽出液を塗布・培養した様子を示す。
図3図1の各培地に畜産環境(近隣農家)から採取したサンプルの抽出液を塗布・培養した様子を示す。
図4本実施例で分離された菌株の各培地上での生育の様子を示す。
図5図4に示した各分離菌株のl6SrRNA塩基配列に基づいて作成した系統樹の例を示す。

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