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課題

解決手段

導電性熱可塑性樹脂組成物成形してなるトレイであって、表面抵抗値が103〜1012Ωであり、純水500ml中に、表面積100〜1000cm2のトレイを浸漬し、40KHzの超音波を60秒間印加したときに、表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数が5000pcs/cm2以下である磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。

概要

背景

磁気ヘッド用のトレイには、帯電防止性能が要求されるため、従来、これらの磁気ヘッド用トレイは、ABS樹脂等に、帯電防止剤カーボンブラック等の導電性付与成分を配合分散させた導電性熱可塑性樹脂組成物成形することにより製造されている。

しかし、帯電防止剤を配合する場合、導電機構イオン伝導であることに起因して環境湿度の影響を受ける;洗浄や長時間の使用により帯電防止剤が流出し帯電防止性が低下する;大量に添加すると耐熱性を損なうなどの欠点があり、また、カーボンブラックを配合した場合、湿度、洗浄等の影響は受けないものの、導電性発現させるためには多量の添加量を要し、その結果、成形品表面がひっかきや摩耗に対して弱くなるため、摩耗粉カーボン粒子(すなわちパーティクル)の脱落が生じ易いという欠点がある。

これらの問題を解決するために、従来、ハードディスク用磁気ヘッドのトレイにおいては、例えばポリカーボネートカーボン繊維を添加した材料が使用されている。カーボン繊維であれば、カーボンブラックに比べて、パーティクルの脱落を少なくすることができる。

なお、磁気ヘッドは、一般に、アーム部品と、該アーム部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、該ヘッドチップに結線されたリード線とを有する。MRヘッドは、このヘッドチップとしてMR素子磁気抵抗素子)を用いたものである。

しかしながら、近年、ヘッド高密度化のために、従来の薄膜ヘッドに代わりMR磁気抵抗効果)ヘッドが主流になりつつあるなかで、カーボン繊維を用いた材料でも十分な要求特性を満たさなくなってきている。

即ち、導電性充填材としてカーボン繊維を用いた材料よりなるトレイは、カーボンブラックを充填したものに比べてパーティクルの脱落が少ないが、MRヘッド用トレイにおいては脱落パーティクルの更なる低減が要求されてきている。

これは、MRヘッドそのものが導電性パーティクルに対してデリケートであるだけでなく、実使用において、ヘッドと磁気ディスククリアランスが極めて小さくなってきており、パーティクルによるディスククラッシュが生じやすくなってきていることにも由来している。

即ち、ハードディスク用磁気ヘッドのトレイからは、ヘッドを純水により超音波洗浄する工程等において、トレイ表面から繊維自体が脱落したり、繊維間の樹脂成分が剥がれ落ちたりすることでパーティクルが発生する。このようなパーティクルの脱落はヘッドを汚染、損傷させるだけでなく、ハードディスクドライブの使用時にヘッドとハードディスク間の異物としてヘッドクラッシュを引き起こす危険性があった。

ところで、従来の薄膜ヘッドは、信号磁界コイルに接近する際に発生する電流によって信号を検知するのに対し、MRヘッドは、MR素子に微弱センス電流を流し、信号磁界を電流の抵抗値によって検出するものである。従って、MRヘッドでは、微弱なノイズ電流が流れた場合でもMR素子を損傷させてしまう危険性が大きい。このため、磁気ヘッドのトレイとの電位差に起因する静電気放電や、ヘッドとトレイとの接触により生じる接触電流に対して、従来の集積型磁気ヘッドやICに比べて遙かにデリケートである。

即ち、MRヘッドの組み付け工程においては、ヘッドチップにリード線が結線され、このヘッドチップを介してアーム部品がジンバルに組み付けられる。このリード線(金属線)にはポリイミド被覆されているが、ポリイミドと金属線との接触電位差に起因して接触部は常に電荷分離した、電気的に不安定な状態にある。この結果、リード線先端が磁気ヘッドのトレイ等に接触した際、接触部における電荷やりとりがより生じ易くなり、損傷の危険性が高くなる。

従来の磁気ヘッド用トレイの表面抵抗値は101〜102Ω/□程度であり、静電気放電によるヘッドの損傷の危険性はないものの、トレイの表面抵抗が低すぎることによる、ヘッドとトレイ間、または周辺部品とトレイ間の過度な接触電流による損傷が深刻な問題となっている。

しかも、導電性充填材としてカーボン繊維を添加したものでは、トレイの表面抵抗値は特に低くなりやすい。表面抵抗値を増大させるために、カーボン繊維の添加量を減らすと、トレイ内部のカーボン繊維同士の接触状態が不安定になり、均一な抵抗値が得られなくなる。

また、カーボン繊維を用いたものでは、カーボン繊維中に含まれる不純物であるクロルイオンが、純水洗浄時に純水中に流出し、これにより磁気ヘッドに腐食が発生したり、このクロルイオンがヘッドとディスク間の異物となる問題も発生している。

このように、従来においては、静電気放電や過度の接触電流の導通等による損傷といった電気的問題と、パーティクルの脱落や、イオンコンタミネーションによる汚染、損傷といった物理化学的問題があり、これらを同時に解決できるようなトレイは提供されていないのが現状である。

概要

静電気放電や過度の接触電流の導通等による電気的損傷、パーティクルの脱落や、イオンコンタミネーションによる汚染等の物理的化学的な損傷の少ない磁気ヘッド搬送用トレイ等の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイを提供する。

導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるトレイであって、表面抵抗値が103〜1012Ωであり、純水500ml中に、表面積100〜1000cm2のトレイを浸漬し、40KHzの超音波を60秒間印加したときに、表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数が5000pcs/cm2以下である磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。

目的

本発明は上記従来の実情に鑑みてなれさたものであって、静電気放電や過度の接触電流の導通等による損傷の問題がなく、また、パーティクルの脱落やイオンコンタミネーションによる汚染、損傷の問題もない、磁気ヘッド用トレイ等の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイを提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
5件

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請求項1

アーム部品と、該アーム部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、該ヘッドチップに結線されたリード線とを有する磁気ディスク用磁気ヘッドを搬送するためのトレイにおいて、該トレイは、導電性熱可塑性樹脂組成物成形してなるものであり、該トレイの表面抵抗値が103〜1012Ωであり、かつ、純水500ml中に、表面積100〜1000cm2の該トレイを浸漬し、40KHzの超音波を60秒間印加したときに、該トレイの表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数が該トレイの単位表面積当り5000pcs/cm2以下であることを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ

請求項2

請求項1において、該導電性熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂に、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤導電性フィラー及び炭素フィブリルよりなる群から選ばれた1種又は2種以上の導電性充填材を配合してなる樹脂組成物であることを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。

請求項3

請求項1又は2において、該導電性熱可塑性樹脂組成物の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートポリブチレンテレフタレートポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンよりなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。

請求項4

請求項1ないし3のいずれか1項において、純水50ml中に表面積100cm2の該トレイを浸漬して60℃で60分間攪拌したときに、該トレイから溶出するクロルイオン量が該トレイの単位表面積当り0.01μg/cm2以下であることを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。

技術分野

0001

本発明は、ハードディスクドライブ用の磁気ヘッドを搭載し、加工、洗浄移送保管等を行うトレイ係り、特に、磁気抵抗効果型ヘッドMRヘッド)を搬送するのに好適な磁気ディスク用磁気ヘッド搬送用トレイに関する。

背景技術

0002

磁気ヘッド用のトレイには、帯電防止性能が要求されるため、従来、これらの磁気ヘッド用トレイは、ABS樹脂等に、帯電防止剤カーボンブラック等の導電性付与成分を配合分散させた導電性熱可塑性樹脂組成物成形することにより製造されている。

0003

しかし、帯電防止剤を配合する場合、導電機構イオン伝導であることに起因して環境湿度の影響を受ける;洗浄や長時間の使用により帯電防止剤が流出し帯電防止性が低下する;大量に添加すると耐熱性を損なうなどの欠点があり、また、カーボンブラックを配合した場合、湿度、洗浄等の影響は受けないものの、導電性発現させるためには多量の添加量を要し、その結果、成形品表面がひっかきや摩耗に対して弱くなるため、摩耗粉カーボン粒子(すなわちパーティクル)の脱落が生じ易いという欠点がある。

0004

これらの問題を解決するために、従来、ハードディスク用磁気ヘッドのトレイにおいては、例えばポリカーボネートカーボン繊維を添加した材料が使用されている。カーボン繊維であれば、カーボンブラックに比べて、パーティクルの脱落を少なくすることができる。

0005

なお、磁気ヘッドは、一般に、アーム部品と、該アーム部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、該ヘッドチップに結線されたリード線とを有する。MRヘッドは、このヘッドチップとしてMR素子磁気抵抗素子)を用いたものである。

0006

しかしながら、近年、ヘッド高密度化のために、従来の薄膜ヘッドに代わりMR磁気抵抗効果)ヘッドが主流になりつつあるなかで、カーボン繊維を用いた材料でも十分な要求特性を満たさなくなってきている。

0007

即ち、導電性充填材としてカーボン繊維を用いた材料よりなるトレイは、カーボンブラックを充填したものに比べてパーティクルの脱落が少ないが、MRヘッド用トレイにおいては脱落パーティクルの更なる低減が要求されてきている。

0008

これは、MRヘッドそのものが導電性パーティクルに対してデリケートであるだけでなく、実使用において、ヘッドと磁気ディスククリアランスが極めて小さくなってきており、パーティクルによるディスククラッシュが生じやすくなってきていることにも由来している。

0009

即ち、ハードディスク用磁気ヘッドのトレイからは、ヘッドを純水により超音波洗浄する工程等において、トレイ表面から繊維自体が脱落したり、繊維間の樹脂成分が剥がれ落ちたりすることでパーティクルが発生する。このようなパーティクルの脱落はヘッドを汚染、損傷させるだけでなく、ハードディスクドライブの使用時にヘッドとハードディスク間の異物としてヘッドクラッシュを引き起こす危険性があった。

0010

ところで、従来の薄膜ヘッドは、信号磁界コイルに接近する際に発生する電流によって信号を検知するのに対し、MRヘッドは、MR素子に微弱センス電流を流し、信号磁界を電流の抵抗値によって検出するものである。従って、MRヘッドでは、微弱なノイズ電流が流れた場合でもMR素子を損傷させてしまう危険性が大きい。このため、磁気ヘッドのトレイとの電位差に起因する静電気放電や、ヘッドとトレイとの接触により生じる接触電流に対して、従来の集積型磁気ヘッドやICに比べて遙かにデリケートである。

0011

即ち、MRヘッドの組み付け工程においては、ヘッドチップにリード線が結線され、このヘッドチップを介してアーム部品がジンバルに組み付けられる。このリード線(金属線)にはポリイミド被覆されているが、ポリイミドと金属線との接触電位差に起因して接触部は常に電荷分離した、電気的に不安定な状態にある。この結果、リード線先端が磁気ヘッドのトレイ等に接触した際、接触部における電荷やりとりがより生じ易くなり、損傷の危険性が高くなる。

0012

従来の磁気ヘッド用トレイの表面抵抗値は101〜102Ω/□程度であり、静電気放電によるヘッドの損傷の危険性はないものの、トレイの表面抵抗が低すぎることによる、ヘッドとトレイ間、または周辺部品とトレイ間の過度な接触電流による損傷が深刻な問題となっている。

0013

しかも、導電性充填材としてカーボン繊維を添加したものでは、トレイの表面抵抗値は特に低くなりやすい。表面抵抗値を増大させるために、カーボン繊維の添加量を減らすと、トレイ内部のカーボン繊維同士の接触状態が不安定になり、均一な抵抗値が得られなくなる。

0014

また、カーボン繊維を用いたものでは、カーボン繊維中に含まれる不純物であるクロルイオンが、純水洗浄時に純水中に流出し、これにより磁気ヘッドに腐食が発生したり、このクロルイオンがヘッドとディスク間の異物となる問題も発生している。

0015

このように、従来においては、静電気放電や過度の接触電流の導通等による損傷といった電気的問題と、パーティクルの脱落や、イオンコンタミネーションによる汚染、損傷といった物理化学的問題があり、これらを同時に解決できるようなトレイは提供されていないのが現状である。

発明が解決しようとする課題

0016

本発明は上記従来の実情に鑑みてなれさたものであって、静電気放電や過度の接触電流の導通等による損傷の問題がなく、また、パーティクルの脱落やイオンコンタミネーションによる汚染、損傷の問題もない、磁気ヘッド用トレイ等の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0017

本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイは、アーム部品と、該アーム部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、該ヘッドチップに結線されたリード線とを有する磁気ディスク用磁気ヘッドを搬送するためのトレイにおいて、該トレイは、導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、該トレイの表面抵抗値が103〜1012Ωであり、かつ、純水500ml中に、表面積100〜1000cm2の該トレイを浸漬し、40KHzの超音波を60秒間印加したときに、該トレイの表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数が該トレイの単位表面積当り5000pcs/cm2以下であることを特徴とするものである。

0018

表面抵抗値が103〜1012Ωであれば、十分な帯電防止性を得ることができる上に、トレイとの接触における過大な接触電流を防止することができるため、磁気ヘッドの電気的損傷を防止できる。

0019

また、純水500ml中に、表面積100〜1000cm2のトレイを浸漬し、40KHzの超音波を60秒間印加したときに、該トレイの表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数(以下、この値を「パーティクル発生量」と称す。)が5000pcs/cm2以下であるような、表面の均一性、安定性に優れたトレイであれば、ひっかきや摩耗、洗浄により脱落するパーティクルによる磁気ヘッドの物理的ないし化学的な汚染や損傷を防止することができる。

0020

本発明において、導電性熱可塑性樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂ポリエーテル系高分子型帯電防止剤導電性フィラー及び炭素フィブリルよりなる群から選ばれた1種又は2種以上の導電性充填材を配合してなるものが好ましく、熱可塑性樹脂としてはポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンよりなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。

0021

また、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイは、純水50ml中に表面積100cm2のトレイを浸漬して60℃で60分間攪拌したときに、トレイから溶出するクロルイオン量(以下、この値を「クロルイオン溶出量」と称す。)が0.01μg/cm2以下であることが、クロルイオンによる腐食等の問題を防止する上で好ましい。

0022

本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイは、特に、磁気ディスクドライブ用MRヘッドの搬送用のトレイとして好適である。

発明を実施するための最良の形態

0023

以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。

0024

本発明のトレイは、その表面抵抗値が2探針プローブを用いた測定において、103〜1012Ω、好ましくは104〜1011Ω、より好ましくは105〜1010Ωのものである。表面抵抗値がこの範囲であると、帯電防止性に優れるだけでなく、トレイとの接触における過大な接触電流が防止できるため、磁気ヘッドの損傷が少ない。

0025

なお、一般に表面抵抗値とは、測定サンプルの厚みや幅方向への電流の回り込みを考慮して、抵抗値を形状要因換算することにより(Ω/□)の単位で得られるが、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイのように複雑な形状の場合、この換算が極めて困難である。一方、実用においては、形状を含んだ上での見かけの抵抗値が重要であり、必ずしも形状で換算された単位(Ω/□)を用いる必要はない。従って、本発明においては、上記表面抵抗値(Ω)で評価する。

0026

本発明のトレイはまた、前述のパーティクル発生量が5000pcs/cm2以下である。このパーティクル発生量が5000pcs/cm2を超えると、ひっかきや摩擦、洗浄時に脱落したパーティクルによる汚染や損傷の問題がある。本発明では、特に、パーティクル発生量は1000pcs/cm2以下であることが好ましい。

0027

本発明のトレイはまた、前述のクロルイオン溶出量が0.01μg/cm2以下であることが好ましい。このクロルイオン溶出量が0.01μg/cm2を超えると、洗浄時に溶出したクロルイオンによる腐食や使用時の異物発生の問題がある。クロルイオン溶出量は特に0.005μg/cm2以下であることが好ましい。

0028

ところで、導電性充填材として炭素繊維を用いたトレイにあっては、炭素繊維の表面処理剤である有機性成分が磁気ヘッドに付着してヘッドを汚染、損傷させたり、ヘッドとディスク間の異物となる問題が懸念される。この問題を防止するために、本発明では、後述の不揮発性有機物溶出量の測定方法で測定したときのトレイからの不揮発性有機物の溶出量がトレイの単位表面積当り0.5μg/cm2以下であることが好ましい。

0029

以下に本発明のトレイの成形材料となる導電性熱可塑性樹脂組成物について説明する。

0030

この導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる導電性充填材としては、高分子型帯電防止剤、導電性フィラー、炭素フィブリルが挙げられる。

0031

高分子型の帯電防止剤としては、ポリエーテル、4級アンモニウム塩スルホン酸塩等の導電性単位をブロックもしくはランダムに組み込んだ高分子や、特開平1−259051号公報に記載されているような、ホウ素原子分子中に有する高分子電荷移動型結合体などが使用できる。

0032

これらの中でも、ポリエーテル系高分子帯電防止剤が樹脂との溶融混練による複合化における耐熱性の点で望ましく、具体的には、ポリエチレンオキシドポリエーテルエステルアミドポリエーテルアミドイミドエチレンオキシドエピハロヒドリン共重合体メトキシポリエチレングリコール−(メタアクリレート共重合体、好ましくはポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、より好ましくはポリエーテルエステルアミドを用いることができる。

0033

高分子型帯電防止剤の添加量としては、熱可塑性樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部、特に5〜60重量部、とりわけ5〜40重量部とするのが好ましい。添加量が上記範囲より少ないと表面抵抗値が1012より大きくなりやすく、帯電防止性能に劣るものとなる。また、添加量が上記範囲よりも多いと曲げ弾性率、引っ張り強度等の機械的性質や耐熱性に劣るものとなる。

0034

導電性フィラーとしては、導電性繊維や、酸化チタン酸化亜鉛酸化スズ酸化インジウム等の金属酸化物系のものが挙げられる。なお金属酸化物系フィラーのなかでも格子欠陥の存在により余剰電子が生成して導電性を示すものの場合には、ドーパントを添加して導電性を増加させたものを用いてもよい。例えば、酸化亜鉛にはアルミニウム、酸化スズにはアンチモン、酸化インジウムにはスズ等がそれぞれドーパントとして用いられる。

0035

導電性フィラーとしては、特に、繊維径5μm以下、望ましくは2μm以下で、繊維長さ/径比アスペクト比)5以上、望ましくは10以上の導電性繊維が好ましく、具体的には、ステンレス繊維銅繊維ニッケル繊維などの金属繊維カーボンウィスカ、酸化チタンウィスカ炭化珪素ウィスカなどの導電性ウィスカや、チタン酸カリウムウィスカホウ酸アルミニウムウィスカ等の絶縁性ウィスカの表面に導電性カーボン皮膜導電性酸化スズ皮膜を形成した複合系導電性ウィスカが挙げられる。これらのうち、特に、ホウ酸アルミニウムウィスカに、導電性皮膜を形成したものが望ましい。なお、ここで導電性繊維の繊維径、長さは、顕微鏡観察により5点測定した平均値である。

0036

上記導電性充填材の中でも、以下の理由から、DBP吸油量が100cc/100g以上のもの、好ましくは250cc/100g以上のもの、より好ましくは400cc/100g以上のものが望ましい。

0037

即ち、DBP吸油量が大きいほど充填材の表面積が大きいことを表しており、従って、一般にDBP吸油量の数値が大きいものほど微細な形状なものとなる。一方、導電性充填材の配合による樹脂の導電性の発現は、導電性充填材同士の連続的な接触による導電経路の形成により、導電性充填材間の距離が10〜30Å程度離れた不完全な接触状態においては、充填材間に電子ホッピングによる電気伝導が生じる。このホッピングによる導電性は導電性充填材の内部での導電性に比較して低い。ところで、トレイには、後述の如く、表面抵抗値(或いは導電性)が中位に安定していることが望まれる。従って、樹脂内部に導電性充填材の不完全な接触状態を多数形成することにより、樹脂組成物の導電性を中位(例えば106Ω)に安定して得ることが望ましい。DBP吸油量が大きく微細な形状の充填材ほど、このような不完全な接触状態が形成される確率が高いため、本発明では、上述のようなDBP吸油量の大きい導電性充填材を用いるのが好ましい。

0038

ところで、前述の導電性充填材としての金属フィラーや、炭素繊維などは、ポリカーボネート樹脂との親和性を補うために、通常はシランカップリング剤などの有機性の表面処理剤によって処理される。しかし、この表面処理剤は低分子量化合物が多く、そのため、得られたトレイから発生するアウトガスの増加に寄与する場合がある。これに対して、DBP吸油量が100cc/100g以上のカーボンブラック等の炭素系導電性充填材の表面は、一般に極めて活性に富み、表面処理なしでポリカーボネート樹脂とよく親和して良好な分散性を示す。従って、表面処理剤に由来するアウトガスが発生することがない点においても、DBP吸油量の大きい導電性充填材が好適である。

0039

なお、アウトガスが少ないと好適である理由については後に詳述する。

0040

このようなDBP吸油量を満足する導電性充填材としては、具体的にはファーネスブラックアセチレンブラックケッチェンブラック等のカーボンブラックなどの炭素系導電性物質が挙げられる。

0041

これらの導電性フィラーの添加量は、熱可塑性樹脂成分100重量部に対して、5〜100重量部、特に15〜60重量部とするのが好ましい。添加量が上記範囲より少ないと表面抵抗値が1012より大きくなりやすく、帯電防止性能に劣るものとなる。また、添加量が上記範囲よりも多いと成形性が損なわれたり、パーティクル発生量の増加を引き起こす。

0042

炭素フィブリルとしては、繊維径が100nm以下の炭素フィブリルが好ましく、例えば特表平8−508534号公報に記載されているものを使用することができる。

0043

即ち、炭素フィブリルは、当該フィブリル円柱状軸に実質的に同心的に沿って沈着されているグラファイト外層を有し、その繊維中心軸は直線状でなく、うねうねと曲がりくねった管状の形態を有するため、ポリカーボネートトレイからの脱落が少ない。

0044

なお、炭素フィブリルの繊維径は製法に依存し、分布のあるものであるが、ここで言う繊維径とは顕微鏡観察して5点測定した平均値を指す。炭素フィブリルの繊維径が100nmより大きいと、樹脂中でのフィブリル同士の接触が不十分となり、安定した抵抗値が得られにくい。従って、炭素フィブリルとしては繊維径100nm以下のものが好ましい。

0045

特に、炭素フィブリルの繊維径が20nm以下であると、万が一炭素フィブリルがトレイの表面から脱落し、ヘッド等に付着した場合であっても、作動時のヘッドとハードディスクとのクリアランスは繊維径より比較的大きい(50μm程度)ため、ディスククラッシュの危険性が低下するので好ましい。

0046

一方、炭素フィブリルの繊維径は、0.1nm以上、特に0.5nm以上であることが好ましい。繊維径がこれより小さいと、製造が著しく困難である。

0047

また、炭素フィブリルは、長さと径の比(長さ/径比、即ちアスペクト比)が5以上のものが好ましく、特に100以上、とりわけ1000以上の長さ/径比を有するものが好ましい。なお、この炭素フィブリルの長さ/径比は、透過型電子顕微鏡での観察において、5点の実測値の平均値によって得られる。

0048

また、微細な管状の形態を有する炭素フィブリルの壁厚み(管状体の壁厚)は、通常3.5〜75nm程度である。これは、通常、炭素フィブリルの外径の約0.1〜0.4倍に相当する。

0049

炭素フィブリルはその少なくとも一部分が凝集体の形態である場合、原料となる樹脂組成物中に、面積ベースで測定して約50μmより大きい径を有するフィブリル凝集体、望ましくは10μmよりも大きい径を有するフィブリル凝集体を含有していないことが望ましい。

0050

このような炭素フィブリルは、市販品を使用することができ、例えば、ハイペリオンカタリシスインターナシナル社の「BN」が使用可能である。

0051

炭素フィブリルの添加量は、熱可塑性樹脂成分100重量部に対して0.25〜9重量部、特に0.5〜6重量部とするのが好ましい。この添加量がこれよりも少ないと導電性が発現しにくく、一方これより多く添加しても増量に見合う効果の向上は認められず、むしろトレイからのパーティクルの発生が見られると共に成形性も低下することとなる。

0052

上述の各種導電性充填材は、1種類を単独で使用しても、2種以上のものを組み合わせて使用しても良い。

0053

上述の高分子型帯電防止剤、導電性フィラー、炭素フィブリルの中でも、炭素フィブリルがパーティクルの発生やイオンコンタミの少ない点で望ましい。

0054

本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンポリメチルペンテン等の脂肪族ポリオレフィンや脂環族ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、各種ポリアミドナイロン6、66、ナイロン610、ナイロンMXD6等)、ポリエーテルイミドポリサルフォンポリエーテルサルフォンポリエーテルエーテルケトンアクリル系樹脂スチレン系樹脂変性ポリフェニレンエーテル液晶性ポリエステル等の非オレフィン系樹脂等が挙げられる。

0055

上記の熱可塑性樹脂のなかでも、乾燥工程における耐熱性の点で、熱変形温度ASTMD684 4.6Kg荷重)が110℃以上であるものが望ましく、特に、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテルが耐熱性、コストの面で好ましい。更に、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが、そり等の寸法精度の点で好適であり、とりわけポリカーボネートが好ましい。

0056

このようなポリカーボネート樹脂としては、市販品を使用することができ、例えば、三菱エンジニアリングプラスチック社製の「ノバレックス」、「ユーピロン」、帝人化成社製の「タフロン」、GEプラスチック社製の「レキサン」などが使用できる。これらのポリカーボネート樹脂の中でも、280℃、2.16Kgにて測定したメルトフローレートMFR)が3g/10分以上、特に6g/10分以上のものが、磁気ヘッド用トレイの表面粗さをコントロールしやすい点で望ましい。

0057

これらの樹脂は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。

0059

本発明のトレイの製造方法は、選定したマトリックス樹脂に適した方法であれば、特に制限はなく、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造できる。例えば、熱可塑性樹脂に導電性充填材を予め混合した後、バンバリーミキサーロールブラベンダー単軸混練押し出し機二軸混練押し出し機ニーダーなどで溶融混練することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することができ、その後、各種の溶融成形法により、この樹脂組成物を所定形状に成形してトレイを得ることができる。この成形法としては、具体的には、プレス成形押し出し成形真空成形ブロー成形射出成形などを挙げることができる。これらの成形法の中でも、特に射出成形法真空成形法が望ましい。

0060

射出成形法としては、一般的な射出成形法の他に、インサート射出成形法による金属部品その他の部品との一体成形や、二色射出成形法コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法インジェクションプレス成形法等の各種成形法を用いることができる。射出成形においては、樹脂温度金型温度成形圧力によって得られるトレイの表面抵抗値が変化するので、目的に応じて適切な条件を設定する必要がある。

0061

本発明のトレイは、ヘッドスペースガスクロマトグラムにより、例えば、下記測定方法で測定した塩素化炭化水素発生量が0.1μg/g以下のポリカーボネート製のものが好適である。
発生ガス量測定方法>トレイより切り出した分析サンプル(22mm(長さ)×10mm(幅)×3mm(厚さ))2ピース総表面積12.6cm2)を、容量22mLのバイヤル中で、内標としてn−オクタンを10μL添加して、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条件でガスを抽出した後、ガスクロマトグラムGC)にて測定し、イオンクロマトグラムにおけるn−オクタンとの面積比より発生量を算出する。ただし、分析サンプルの形状は上記長さ、幅、厚さに何ら制限されず、また、分析サンプルの総表面積が異なる場合には、12.6cm2に換算すれば良い。

0062

この塩素化炭化水素発生量が0.1μg/g以下であればヘッドへの悪影響は極めて少ない。塩素化炭化水素発生量は、望ましくは0.02μg/g以下である。

0063

また、ヘッドへの悪影響を考慮した場合、総アウトガス量は1μg/g以下、特に0.5μg/g以下、塩化メチレン発生量は0.1μg/g以下、炭化水素発生量は0.5μg/g以下、特に0.2μg/g以下であることが望ましい。なお、この炭化水素とは、後述のポリカーボネート樹脂の製造において使用されるn−へプタンや、n−ヘキサンシクロヘキサンベンゼントルエン等である。

0064

本発明において、導電性充填材を含有するポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより、このようなガス発生量のトレイを得る方法について、以下に説明する。

0065

このポリカーボネート樹脂としては、例えば界面重合法ピリジン法、クロロホーメート法などの溶液法により、二価フェノール化合物ホスゲンと反応させることによって製造される一般的なものを使用できる。この場合、トレイからの揮発成分となる、重合溶媒として用いた塩化メチレンなどの塩素化炭化水素等を、得られるトレイに残留させない方法としては、例えば以下の(A),(C),(D)の方法が挙げられる。また、下記(B)の如く、溶媒を用いない方法で製造されたポリカーボネート樹脂を用いる方法も有効である。
(A) 塩素化炭化水素溶液として得られたポリカーボネート樹脂を精製するに当り、ポリカーボネート樹脂の水懸濁液を得、これを濾過遠心分離等により湿潤粉末を得る。例えば、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液に、n−へプタンなどのポリカーボネート樹脂の貧溶媒(ポリカーボネートが溶解しないか、溶解しても僅かな溶媒)を沈殿が生じない程度添加してなる樹脂液を、温水中に滴下し、適宜湿式粉砕を行いながら貧溶媒を留去する(以下、この方法を「温水滴下精製」と記す。)。このとき、80〜100℃に加熱しながら貧溶媒を留去する際、腐食性揮発性ガスの原因となる塩化メチレン等の塩素化炭化水素が効率よく除去される。
(B) 重合溶媒を使用しない重合方法により得られたポリカーボネート樹脂(例えば、特開平4−103626号公報等に開示されたポリカーボネート樹脂)を使用する。
(C)溶融混練又は溶融成形に当り、真空脱気する。例えば、通常の精製方法、或いは上記(A)法又は(B)法により得られたポリカーボネート樹脂をベント付き押し出し機に供給して、ベントより真空脱気することにより、溶媒を除去する。この際、特開平9−29738号公報に記載されるように、原料粉末或いは溶融状態の樹脂に水を添加すると、残存溶媒の除去の点で好適である。
(D) 通常の精製方法或いは、上記(A)〜(C)の方法より得られたポリカーボネート樹脂を使用した樹脂組成物を用いて成形したトレイを、アニールすることによって揮発成分を除去する。この場合、アニール処理は、80℃以上の温度で30分以上行うのが好ましい。このアニール処理温度が140℃を超えるとトレイの寸法変化や変形を引き起こす可能性があり、また、アニール処理時間が20時間を超えても揮発成分の除去効果の向上は望めないことから、アニール処理は80〜140℃で30分〜20時間とするのが好ましい。

0066

なお、上記(A)〜(D)の方法のうち、(A)法では、塩素化炭化水素は低減できるものの、n−ヘプタンなどの貧溶媒成分が残留する可能性が高い。n−ヘプタンはヘッドを腐食することはないものの、最近のより高密度化されたMR素子においては、ヘッド素子表面への微少デポジットの危険性が問題とされることから、前述の如く、n−ヘプタン等の炭化水素発生量についても、極力抑えることが望まれる。

0067

このようなn−ヘプタンや、オリゴマー、その他の低分子量揮発成分も効率的に除去する点からは、特に、(C)法の真空脱気による溶媒除去法が望ましい。この(C)法の押し出し機での真空脱気は、導電性充填材を溶融混練により複合化する際に行っても良いし、この混練前又は混練後に行っても良い。

0068

また、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイは、表面粗さが、カットオフ波長2.5mmの測定において、下記又はを満足するものが好適である。

0069

点平均粗さ(Rz)が5μm以下
カッティングレベル10%負荷長さ率(tp)が1%以上で、中心線より±0.1μm以上のピークカウント(Pc)が測定長1cm当たり100以下
ここで、十点平均粗さ(Rz)とは、粗さ曲線平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和より算出して求める。従って、Rzの数値は、小さいほど平滑な表面であることを示す。

0070

なお、極めて平滑な表面の場合、山及び谷が測定範囲内に5個以上存在しないと算出が不可能である。そのような場合には、本発明では最大山と最大谷の和、すなわちRmaxで置き換えることが出来る。

0071

一方、カッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)とは、粗さ曲線から基準長さだけ抜き取り、最も高い山頂から10%低いレベルで、平均線と平行に切断したときに得られる切断長さの和(負荷長さ)の基準長さに対する比を百分率で表したものをいう(JIS B0601)。

0072

また、±0.1μm以上のピークカウント(Pc)とは粗さ曲線の平均線から±0.1μmの高さ及び深さに平均線と平行に線を引き、その線を縦方向に横切る凹凸が、基準長さ内にいくつあるかをカウントしたものである。

0073

十点平均粗さ(Rz)が5μm以下の平滑度の高い表面粗さであれば、ポリイミド被覆材などの磁気ヘッドへの傷付き性は少ない。

0074

また、十点平均粗さ(Rz)が5μmを超えても、カッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)が1%以上で、かつ前記ピークカウント(Pc)が1cmあたり100以下、望ましくは80以下であると、磁気ヘッドへの傷付きが少なく良好となる。

0075

逆に、十点平均粗さ(Rz)が5μmを超え、カッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)が1%より小さいと、突起の先端が鋭利になり、磁気ヘッドへの損傷が大きくなる。また、十点平均粗さ(Rz)が5μmを超え、カッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)が1%以上でピークカウント(Pc)値が100を超える表面粗さであると、磁気ヘッドへの損傷が大きくなる。

0076

ところで、非結晶性で比較的溶融粘度の高いポリカーボネート樹脂に導電性充填材を配合した樹脂組成物の射出成形品よりなるトレイの表面は、金型表面を転写し難く、流動性、充填材の形状、収縮及び成形条件等に起因する表面付近での流れムラや充填材の露出によって表面粗さが形成される。

0077

かかる状態での表面粗さは、Pc値で表される凹凸の数が上記の範囲以下であれば山と谷の傾斜がなだらかになり、山の頂点が緩やかになる。このことによって磁気ヘッドとの摩擦において”引っ掻き”の効果が減少する。逆にPc値が100を超えると個々の山が鋭利な突起となり、磁気ヘッドへの損傷を引き起こす。ピークカウント(Pc)は10以上80以下において特に磁気ヘッドの損傷性が少なくなる。

0078

上記の表面粗さは、金型表面の転写性を改良したポリカーボネート樹脂組成物を用いて、金型表面を放電加工エッチングサンドブラストなどによる処理によって意識的に粗らして、それを転写した場合においても同様である。

0079

特に、磁気ヘッドをトレイに搭載した状態にて水中洗浄及びその後の乾燥工程を行う場合、磁気ヘッドと接触する部位のトレイ表面の十点平均粗さ(Rz)が小さいと、その間に浸透した洗浄水乾燥性が低下し、乾燥効率を低下させるという問題が生じることがある。更に、磁気ヘッド用トレイの場合、磁気ヘッドの目視検査において、トレイの表面の平滑性が良すぎると、光の反射率が大きくなり、検査に支障をきたす。

0080

かかる観点から、磁気ヘッド用トレイの磁気ヘッドの搭載される部位の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)が5μm以上50μm以下でカッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)が1%以上、かつピークカウント(Pc)が100以下、好ましくは10以上80以下であることが好ましい。

0081

以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。

0082

なお、以下の実施例及び比較例において、成形には75ton射出成形機を用い、図1(斜視図)及び図2(a)(平面図)、(b)(図2(a)のB−B線に沿う断面図)に示す形状及び寸法のトレイを成形した。図中、1はトレイ本体、2は位置決めリブ、3は位置決めボス、4は磁気ヘッドをそれぞれ示す。

0083

実施例及び比較例における各種の物性ないし特性の評価方法は次の通りである。
<表面抵抗値>図2(a)の斜線を付した範囲の任意の5ヶ所で、2探針プローブで、プローブ先端:2mmφ、プローブ中心間距離:20mmにて下記プローブ間印可電圧にて測定し、平均値を算出した。
表面抵抗値が103Ω以上109Ω未満の場合: 10V
表面抵抗値が109Ω以上の場合 :100V
ただし、表面抵抗値108Ω以上の測定には、プローブ先端を5mmφとして、さらに厚み2mmt、直径5mmφ、10Ωcm以下の導電性シリコンゴムアセンブリして、サンプル表面との密着が安定するようにして測定した。

0084

また、測定機としては次のものを用いた。
表面抵抗値102Ω以上、104Ω未満の場合:アドバンテスト社製「高抵抗計R8340」
表面抵抗値104Ω以上の場合 :ダイヤインスツルメント社製「ハイレスタAP
<パーティクル発生量>純水500mlに図1,2の形状に形成したトレイ(総表面積420.8cm2)1枚を浸漬し、超音波(40KHz、0.5W/cm2)を60秒間印加した。その後、抽出した純水を液中パーティクルカウンターにて吸引し、粉塵粒子径1μm以上の数量を測定した。なお、測定に際しては、前処理として、トレイを純水により8分間超音波洗浄した後に、100℃のオーブン中にて30分乾燥を行った。作業は全てクリーンルーム内で行った。また、サンプル浸漬の際には全てガラス製容器を用いた。
<クロルイオン溶出量>純水480mlに図1,2の形状に成形したトレイ(総表面積420.cm2)2枚をポリプロピレン容器中で浸漬し、60℃のウォーターバス中で60分攪拌した。その後、イオンを抽出した純水中のクロルイオンをイオンクロマトグラフ法にて分析した。
<不揮発性有機物溶出量>旭ガラス社製フロン系洗浄剤アサヒクリンAK−225」500mlに、図1,2の形状のトレイサンプル(総表面積420.8cm2)を浸漬し、超音波(40KHz、0.5W/cm2)を60秒間印加した。抽出液アルミパン上で100℃にて揮発させて、残留分の重量を測定した。
<磁気ヘッドの腐食試験>このトレイにMRヘッドを12個搭載して、ガラス製の容器(容量201.5mL)中で、80℃、90%、95時間放置した。その後、MRヘッドをトレイから取り出し、100倍の顕微鏡にてMR素子部の腐食の有無を観察し、下記基準で評価を行い、結果を表1に示した。
○…磁気ヘッド(素子)に、腐食は見られなかった。
×…全ての磁気ヘッド(素子)のパーマロイにより構成されている部位に腐食が発生した。
<ガス発生量の測定>別に、トレイより分析サンプルとして22mm(長さ)×10mm(幅)×3mm(厚さ)のサンプルを2ピース(総表面積12.6cm2)切り出して、内標としてn−オクタンを10μL添加した容量22mLのバイヤル中で、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条件でガスを抽出した。

0085

バイヤル中に発生したガスをガスクロマトグラム(GC/MS)にて測定した。このときの測定条件は以下に示す通りである。

0086

装 置 :島津製作所社製「GC/MS QP5050」
カ ラ ム :CHROMPAK PORAPLOT Q 0.32
mm×25m
カラム温度:35〜240℃(10℃/min)
注入口温度:230℃
インターフェース温度:280℃
トレイガス:ヘリウム
注入口圧力 :100K Pas
全 流 量 :60mL/min
注 入 量 :2mL
発生ガス定性分析の結果、主成分はn−ヘプタン、アセトン、1−プロペン2−プロパノール、及びその他の微量成分であった。

0087

総アウトガス量、塩化メチレン発生量、n−ヘプタン発生量をそれぞれ以下の式により算出し、結果を表1に示した。
総アウトガス量(μg/g)
=(サンプル総ピーク面積ブランク総ピーク面積)
/(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1
/(サンプル重量(g))
塩化メチレン発生量(μg/g)
=(塩化メチレンピーク面積)
/(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1
/(サンプル重量(g))
ヘプタン発生量(μg/g)
=(ヘプタンピーク面積)
/(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1
/(サンプル重量(g))
<表面粗さ>東京精密社製 表面粗さ計「サーフコム」を使用して、測定条件:カットオフ波長2.5mm、測定長5mm、測定スピード0.3mm/Sにて測定した。測定は、磁気ヘッドが接触する図2(a)の斜線を付した範囲の任意の5ヶ所について行い、各パラメータの平均値を算出した。また、Pc値は2倍して1cm当たりの数値に換算した。
<損傷性試験>磁気ヘッドへの損傷性評価として、図3に示す方法にて、磁気ヘッドが接触する図2(a)の斜線を付した範囲から採取したトレイ材(サンプル)11に対して、磁気ヘッドのリード線として使用される、基材にポリイミドを使用したフレキシブルプリント配線基板FPC)(幅10mm)12を、ゴムシート13を取り付けた荷重(100g,直径40mm)14で押し付けスパン80mmで10往復摺動させて、試験後の配線基板12の表面を光学顕微鏡にて50〜100倍で観察し、以下の基準で判定した。なお、損傷試験用サンプル11は事前に全て純水洗浄を行い、表面に付着したゴミを取り除いた。また、事前洗浄及び損傷性試験は全てクリーンルーム内で行った。
◎: 傷が全く観察されない。
○: 傷が6本未満で、傷深さが銅配線へ達していない。
×: 傷が6本以上で、傷深さが銅配線へ達している。

0088

実施例1〜4、比較例1,2
表1に示す配合及び混練条件で、2軸混練押し出し機(池見鉄工社製PCM45,スクリュ長L/スクリュ径D=32)で溶融混練して、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、用いた材料の詳細は次の通りである。下記材料のうち、炭素フィブリルの配合混練は、予め15重量%の添加量で分散させた炭素フィブリルマスターバッチを使用して、所定の含有量となるように添加して行った。

0089

ポリカーボネート1 : 三菱エンジニアリングプラスチック(株)「
ノバレックス7022A」
ポリカーボネート2 : 三菱エンジニアリングプラスチック(株)「
ユーピロンS2000」
ポリエーテルエステルアミド: 東レ社製「PAS−40T」
導電性ウィスカ: 三菱金属(株)製酸化スズコートホウ酸アル
ミニウムウィスカ「パストラン5110」(繊維径0.8μm、アスペクト比3
5)
アセチレンブラック:電気化学(株)製「デンカブラック」(DB
吸油量 190cc/g)
炭素フィブリル:ハイペリオンカタリシスインターナショナル
社製「BNタイプ」(繊維径 10nm、アスペクト比 100以上)
炭 素 繊 維 : 東邦レーヨン社製PAN系炭素繊維「ベスフ
イトC6−SRS」(繊維径7μm、エポキシ樹脂表面処理品

0090

このペレットを用いて図1,2に示す形状及び寸法のトレイを成形し、物性及び特性の評価を行い、結果を表2に示した。

0091

なお、シリンダ温度は300℃、金型温度は90℃であり、図2(a)の斜線部に対応する金型面の表面粗さはRmax15μmであった。

0092

0093

0094

表2より、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイは、ヘッドの汚染及びそれによる損傷の問題が殆どなく、また、表面抵抗値が中位に安定しており、ヘッドへの電気的な損傷も少ないことがわかる。

0095

また、表2より本発明のトレイは、塩化メチレン等の発生量が極めて少なく、ヘッドチップの腐食の危険性が少ないことがわかる。また、表2より本発明のトレイは、摩擦によるヘッドの損傷の問題が殆どないことがわかる。

発明の効果

0096

以上詳述した通り、本発明によれば、静電気放電や過度の接触電流の導通等による電気的損傷やパーティクルの脱落や、イオンコンタミネーションによる物理的化学的な汚染や損傷の問題のない磁気ディスクドライブ用のMRヘッド等の磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイが提供される。

図面の簡単な説明

0097

図1実施例及び比較例において製造した磁気ヘッド搬送用のトレイを示す斜視図である。
図2図2(a)は図1に示すトレイの平面図、図2(b)は図2(a)のB−B線に沿う断面図である。
図3実施例及び比較例における損傷性試験方法を示す断面図である。

--

0098

1トレイ本体
2位置決めリブ
3位置決めボス
4磁気ヘッド
11 トレイ材
12配線基板
13ゴムシート
14 荷重

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