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課題
解決手段
概要
背景
概要
礫やコンクリートを使用する堰堤を設けることなく、貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制すること。
護岸1から海洋または湖沼側に向けて、現地盤上に砂質土からなる浚渫土砂を埋立て埋立部3を形成する。埋立部3の先に砂混じり小礫からなる浚渫土砂で浅瀬4を形成する。浅瀬4に、沿岸線に沿って、杭列を設け、この杭列間に牡蠣や帆立てなどの廃棄貝殻を設けて、沖側から沿岸側に押し寄せる貧酸素水塊の侵入を防止する。
目的
本発明の目的は、礫やコンクリートを使用する堰堤を設けることなく、貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制することにある。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 2件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
海洋または湖沼で発生した貧酸素水塊の沿岸部への侵入を防止する方法であって、前記沿岸部の浅瀬に、通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する貧酸素水塊侵入防止柵を、沿岸線に沿って設けることを特徴とする貧酸素水塊侵入防止方法。
請求項2
請求項1記載の貧酸素水塊侵入防止方法において、前記浅瀬は、埋め立てにより形成されていることを特徴とする貧酸素水塊侵入防止方法。
請求項3
請求項2記載の貧酸素水塊侵入防止方法において、前記浅瀬を埋め立てにより形成するに際しては、護岸から海洋または湖沼に向けて、砂質土を埋め立ててなる埋立部の先端から連続して、砂混じり小礫の土砂で埋め立てて形成することを特徴とする貧酸素水塊侵入防止方法。
請求項4
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の貧酸素水塊侵入防止方法において、貧酸素水塊侵入防止柵は、沿岸線に沿って、通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する物質を設けてなることを特徴とする貧酸素水塊侵入防止方法。
請求項5
請求項4記載の貧酸素水塊侵入防止方法において、通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する物質が、牡蠣あるいは帆立てなどの貝殻、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体であることを特徴とする貧酸素水塊侵入防止方法。
請求項6
海洋または湖沼で発生した貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制する貧酸素水塊侵入防止柵であって、前記沿岸部の浅瀬に、沿岸線に沿って、牡蠣あるいは帆立てなどの貝殻、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体を設けてなることを特徴とする貧酸素水塊侵入防止柵。
技術分野
背景技術
0002
海洋、あるいは湖沼の沖合には、堆積した流木や藻類、動物の死骸などの有機物の腐敗などにより、溶存酸素量が少ない貧酸素水塊が発生する。貧酸素水塊が、海岸や湖岸などの浅瀬に侵入すると、水中の溶存酸素が少ないため、浅瀬の底生生物の生息が困難となる。
0003
従来、かかる貧酸素水塊の侵入を防止するためには、図5に示すように、護岸1から海洋(または湖沼)側に向けて一定距離離れた箇所に堰堤2を築き、貧酸素水塊の侵入を防いでいる。堰堤2は、礫を積み上げたり、あるいはコンクリートなどで築いている。
発明が解決しようとする課題
0004
しかし、従来の堰堤を築く構成では、外部から礫などの堰堤材料を現場まで搬入して現場構築する。大量の礫などの搬送コストや手間などを含めて施工規模が大きくなり、その分工事費が高くなるという問題点が指摘されている。比較的簡単な構成で、施工コストの低減に繋がる防止策が求められている。
0006
本発明の目的は、礫やコンクリートを使用する堰堤を設けることなく、貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制することにある。
課題を解決するための手段
0007
本発明は、海洋または湖沼で発生した貧酸素水塊の沿岸部への侵入を防止する方法であって、前記沿岸部の浅瀬に、通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する貧酸素水塊侵入防止柵を、沿岸線に沿って設けることを特徴とする。
0008
前記浅瀬は、埋め立てにより形成されていることを特徴とする。前記浅瀬を埋め立てにより形成するに際しては、前記護岸から海洋または湖沼に向けて、砂質土を埋め立ててなる埋立部の先端から連続して、砂混じり小礫の土砂で埋め立てて形成することを特徴とする。貧酸素水塊侵入防止柵は、沿岸線に沿って、通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する物質を設けてなることを特徴とする。通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する物質が、牡蠣あるいは帆立てなどの貝殻、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体であることを特徴とする。
0009
他の本発明は、海洋または湖沼で発生した貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制する貧酸素水塊侵入防止柵であって、前記沿岸部の浅瀬に、沿岸線に沿って、牡蠣あるいは帆立てなどの貝殻、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体を設けてなることを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
0010
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
0012
なお、本実施の形態では、以下、例として、本発明の貧酸素水塊侵入防止柵を人工干潟に適用した場合について説明するが、埋め立てなどを行わない自然の浅瀬に適用することができることは勿論である。
0013
本実施の形態では、図1、2に示すように、護岸1側から海側に向けて傾斜面に形成された現地盤2上に、砂質土を主体に構成した浚渫土で埋め立てた埋立部3が形成されている。埋立部3に連続して、砂混り小礫からなる浚渫土砂で形成された浅瀬4が形成され、この埋立部3と浅瀬4とで、人工干潟が形成されている。
0014
埋立部3は、図1、2に示すように、高潮帯と中潮帯とを合わせた範囲と、低潮帯の範囲と、低潮帯から先の浅瀬に相当する外浜部分とで、漸次勾配を大きく設定した傾斜面に形成されている。例えば、図1に示す場合には、高潮帯と中潮帯とを合わせた範囲(護岸から15m迄)では勾配を0.67%、低潮帯の範囲(護岸から15m先、20m迄)では勾配を3.0%、外浜部分(護岸から20m先、45m迄)では勾配を9.8%に設定した。かかる勾配は、上記値に限定するのではなく、実施現場の状況に合わせて、埋立部3、浅瀬5の浚渫土砂が波により攫われないような勾配を設定すればよい。
0015
埋立部3の左右は、図1に示すように、杭5を所定間隔に2列に並べ、この杭5間に矢板あるいは遮水シートを設けて、埋立に使用した浚渫土砂が人工干潟の左右に流出しないように構成されている。外浜部分には、貧酸素水塊侵入防止柵6が、沿岸線に沿って、例えば、図1に示す場合には、護岸1に平行に設けられ、貧酸素水塊の浅瀬4への侵入を防止するように設けられている。
0016
貧酸素水塊侵入防止柵6は、所定間隔に設けた木杭などの杭7を所定間隔離して杭列を2列設け、この杭列間に、多孔質材8を詰めて構成されている。多孔質材8には、牡蠣や帆立てなどの貝殻、粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体を使用すればよい。特に、生物の付着可能な表面を有する担体には、例えば、合併浄化槽などで使用される球形など種々の形状に成形されたプラスチック製やセラミックス製などの担体を使用すればよい。かかる多孔質材8は、必要に応じてネットに入れて使用すればよい。
0019
このように人工干潟の外浜部分に設けた貧酸素水塊侵入防止柵6の効果を確認するため、図1、2に示すように、溶存酸素濃度計9を貧酸素水塊侵入防止柵6の前後、すなわち、陸側と沖側とに設置し、貧酸素水塊侵入防止柵6の前後で(陸側、沖側で)、溶存酸素量がどのように変化するか検証した。この様子を図3に示した。
0020
図3は、横軸に貧酸素水塊侵入防止柵6の設置後の期間(設置後8日以降の日数)を、縦軸には水中の溶存酸素量(DO:mg/l)をそれぞれ示している。設置後8日以降は、沖側(破線表示)の溶存酸素量より、陸側の溶存酸素量が大きいことが分かる。すなわち、沖側で貧酸素水塊が発生しても、陸側、すなわち貧酸素水塊侵入防止柵6より内側には貧酸素水塊の侵入が抑制され、貧酸素状態の発生が極力抑えられていることが分かる。
0021
通常、貧酸素水塊とは溶存酸素量が約2mg/l以下の場合を言うが、例えば、8/13〜8/14にかけての状況をみると、沖側の溶存酸素量が約2mg/l程度の貧酸素状態にあっても、陸側の溶存酸素量は約4〜10mg/lの値を示し、貧酸素状態ではないことが分かる。因みに、図3に示した実験データは、浜名湖、松見ケ浦の利木沿岸で、本発明を実施した場合におけるものである。
0022
本発明の貧酸素水塊侵入防止柵6を設けることにより、図4の説明図に示すように、貧酸素水塊侵入防止柵6から陸側、すなわち埋立部3側では、貧酸素水塊の侵入が抑制されるため、好気的環境が創造、維持される。そのため、底生生物の生息場が保全され、その分、これらの沿岸生物による水の浄化能が、かかる貧酸素水塊侵入防止柵6を設けない場合に比べて、向上する。
0023
また、貧酸素水塊侵入防止柵6より沖側の浅瀬4では、砂混じり小礫からなる浚渫土砂で浅瀬4が形成されているため、浅瀬4の形成前の底部に堆積した有機物含有量の多い底泥あるいは還元性物質を覆砂することとなり、かかる還元性物質の水中への溶出や、底泥による酸素消費量を抑制することができる。かかる構成を、図2では、覆砂エリアとして示している。なお、底泥の有機物含有量が少ない場合や、還元性物質が存在しない場合には、かかる覆砂エリアを設ける必要がない。
0024
さらに、貧酸素水塊侵入防止柵6を設けることにより、沖合側で堆積した有機物の分解、その他の還元性物質による溶存酸素の消費により発生した貧酸素水塊が沿岸側に押し寄せても、貧酸素水塊侵入防止柵6で止められ、表層、すなわち水面側に拡散させられる。かかる拡散により、貧酸素水塊は酸化させられ、消失することとなる。
0025
本発明の貧酸素水塊侵入防止柵6を設けることにより、貧酸素水塊の沿岸部への侵入を抑制するとともに、貧酸素水塊の水面側への拡散を促してその消失を図ることができる。
0026
本発明は前記の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
0027
例えば、上記説明では、埋め立て部、浅瀬のそれぞれを砂質土、砂混じり小礫の浚渫土砂で埋め立てた場合について説明したが、これ以外の適当な浚渫土砂などの埋め立て材を使用して埋め立ててもよい。さらには、埋め立て部と浅瀬とを、同一の埋め立て材で埋め立てるようにしてもよい。
0028
上記説明では、本発明の貧酸素水塊侵入防止柵を人工干潟の浅瀬に適用した場合について説明したが、人工的な処置を加えない自然の浅瀬に適用してもよい。かかる場合にも、図4で説明したと同様の効果が得られる。
0029
また、上記説明では、貧酸素水塊侵入防止柵を、杭列間に牡蠣や帆立貝などの貝殻や、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体などの多孔質材を設けて構成する場合について説明したが、例えば、アンカーを設けたネットに、上記多孔質材を入れて浅瀬に積み上げるようにしても構わない。かかる構成にすれば、杭を設ける手間が省け施工期間や施工コストの削減が図れる。
0030
要は、牡蠣あるいは帆立てなどの貝殻、あるいは粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体からなる通水性を有し沿岸生物の生息環境を有する物質が、浅瀬部分に貧酸素水塊侵入防止柵の役目を果たすように設けられておればよい。杭や、アンカーを設けたネット以外の構成でかかる物質を浅瀬に設けるようにしてもよい。
発明の効果
0031
本発明によれば、堰堤を設けることなく、貧酸素水塊の沿岸側への侵入を抑制することができる。
0032
礫やコンクリートを投入する堰堤を設けずに、貝殻や粗朶、あるいは生物の付着可能な表面を有する担体で構成した貧酸素水塊侵入防止柵で、貧酸素水塊の侵入を防止することができるため、貧酸素水塊侵入防止柵内および好気的に維持された沿岸に生息する生物により水の浄化を図ることができる。
0033
本発明によれば、貧酸素水塊侵入防止柵を構成する材料として牡蠣や帆立貝などの貝殻を使用することができるため、廃棄物としての貝殻の再利用が図れる。
図面の簡単な説明
0035
図1本発明の貧酸素水塊侵入防止柵を設置した様子を示す平面図である。
図2図1のA−A線で切断した様子を示す断面図である。
図3貧酸素水塊侵入防止柵の設置後の陸側、沖側の溶存酸素量の変化を示すグラフである。
図4貧酸素水塊侵入防止柵の設置効果を示す説明図である。
図5従来構成の堰堤を使用した貧酸素水塊防止方法を示す断面図である。
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0036
1護岸
2現地盤
3埋立部
4浅瀬
5杭
6貧酸素水塊侵入防止柵
7 杭
8多孔質材
9 溶存酸素濃度計