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技術 硬質皮膜及びそれを被覆した摺動部材並びにその製造方法

出願人 TPR株式会社
発明者 伊藤直樹田中昭二
出願日 1999年9月24日 (21年1ヶ月経過) 出願番号 1999-270153
公開日 2001年4月3日 (19年6ヶ月経過) 公開番号 2001-090835
状態 特許登録済
技術分野 機関のピストンリング、ケーシング、シール すべり軸受 ピストン、ピストンリング、シリンダ 物理蒸着
主要キーワード バイアス電圧供給源 耐剥離性試験 優先方位 塩浴窒化法 反応ガス分子 被コーティング物 ガス窒化法 エンジン実験
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2001年4月3日)のものです。
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図面 (8)

課題

硬質皮膜摺動特性、特に耐剥離性を向上させる。

解決手段

ピストンリング1に窒化層2を形成し、外周面の窒化層2上に、硬質皮膜3をアークイオンプレーティングによって被覆する。硬質皮膜3は、結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、CrN及びTiNの結晶中に[O]を固溶した皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、残Nからなり、各結晶粒径は1μm未満である。硬質皮膜3のビッカース硬さは1300〜2300の範囲にある。CrN及びTiNの結晶は、被覆面に平行に(200)面又は(111)面の優先方位を持ち、母材側から皮膜表面に向かって柱状に成長している柱状組織を呈している。なお、[O]に代えて、[C]を固溶してもよく、[O]と[C]を固溶してもよい。また、窒化層2と硬質皮膜3の間にCrNからなる下地皮膜4を形成してもよい。

概要

背景

近年、エンジン高出力化排気ガス規制の対応に伴って、ピストンリング使用環境は益々過酷になっている。その対策として、PVD法を利用したTiN皮膜、CrN皮膜、あるいはCrNの結晶構造中に[O]を固溶した硬質皮膜(特開平6−265023号)や、CrNの結晶構造中に[C]を固溶した硬質皮膜(特開平6−300130号)が提案されている。更には、CrN及びMo2Nの結晶構造中に[O]又は[C]若しくは[O]と[C]を固溶した硬質皮膜(特開平11−1763号)が提案されている。更には、Cr−Ti−N−O系の硬質皮膜(特開平6−346077号)及びTi−Cr−N−O系の硬質皮膜(特開平6−346076号)が提案されている。

特開平6−346076号は、Ti、M群(Cr,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Ti+M)=1〜45%、O/(N+O)=5〜80%であるPVD皮膜を被覆した摺動部材を開示し、特開平6−346077号は、Cr,M群(Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Cr+M)=1〜55%、O/(N+O)=5〜80%であるPVD皮膜を被覆した摺動部材を開示している。

これらの発明のPVD皮膜は、少なくとも4種類の元素を含むから、組成範囲確定するには、独立である3つの組成式が与えられる必要がある。しかし、上記2つの公報には、2つの組成式が与えられているだけである。従って、Ti,M、あるいはCrの絶対値の範囲は与えられていない。更に、Ti、M群(Cr,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Ti+M)=1〜45%、O/(N+O)=5〜80%である皮膜、並びにCr,M群(Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Cr+M)=1〜55%、O/(N+O)=5〜80%である皮膜は、その組織が種々の形態を取り得るが、このことについて上記2つの公報には一切記載がない。

概要

硬質皮膜の摺動特性、特に耐剥離性を向上させる。

ピストンリング1に窒化層2を形成し、外周面の窒化層2上に、硬質皮膜3をアークイオンプレーティングによって被覆する。硬質皮膜3は、結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、CrN及びTiNの結晶中に[O]を固溶した皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、残Nからなり、各結晶粒径は1μm未満である。硬質皮膜3のビッカース硬さは1300〜2300の範囲にある。CrN及びTiNの結晶は、被覆面に平行に(200)面又は(111)面の優先方位を持ち、母材側から皮膜表面に向かって柱状に成長している柱状組織を呈している。なお、[O]に代えて、[C]を固溶してもよく、[O]と[C]を固溶してもよい。また、窒化層2と硬質皮膜3の間にCrNからなる下地皮膜4を形成してもよい。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
5件
牽制数
6件

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請求項1

結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、このCrN及びTiNの結晶中に[O]が固溶されている硬質皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、残Nからなっており、各結晶粒径が1μm未満であることを特徴とする硬質皮膜。

請求項2

結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、このCrN及びTiNの結晶中に[C]が固溶されている硬質皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、C0.5〜10重量%、残Nからなっており、各結晶粒径が1μm未満であることを特徴とする硬質皮膜。

請求項3

結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、このCrN及びTiNの結晶中に[O]と[C]が固溶されている硬質皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、C0.5〜10重量%、OとCの合計が20重量%以下、残Nからなっており、各結晶粒径が1μm未満であることを特徴とする硬質皮膜。

請求項4

前記硬質皮膜のビッカース硬さが1300〜2300の範囲にあることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の硬質皮膜。

請求項5

請求項1〜4のいずれかに記載の硬質皮膜が少なくとも摺動面に被覆されていることを特徴とする摺動部材

請求項6

前記摺動部材がピストンリングであることを特徴とする請求項5記載の摺動部材。

請求項7

前記硬質皮膜の下に、実質的に[O]及び[C]を固溶していないCrNからなる下地皮膜が形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の摺動部材。

請求項8

前記CrN及びTiNの結晶が、被覆面に平行に(200)面又は(111)面の優先方位を持つことを特徴とする請求項5、6、又は7記載の摺動部材。

請求項9

前記CrN及びTiNの結晶が、母材側から皮膜表面に向かって柱状に成長している柱状組織を呈していることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の摺動部材。

請求項10

前記硬質皮膜の厚さが1〜100μmの範囲にあることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の摺動部材。

請求項11

請求項1〜4のいずれかに記載の硬質皮膜をイオンプレーティングにより少なくとも摺動面に被覆することを特徴とする摺動部材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、摺動特性、特に耐剥離性を改良した硬質皮膜に関し、例えば内燃機関用ピストンリング等の摺動部材摺動面に施して有効である。

背景技術

0002

近年、エンジン高出力化排気ガス規制の対応に伴って、ピストンリング使用環境は益々過酷になっている。その対策として、PVD法を利用したTiN皮膜、CrN皮膜、あるいはCrNの結晶構造中に[O]を固溶した硬質皮膜(特開平6−265023号)や、CrNの結晶構造中に[C]を固溶した硬質皮膜(特開平6−300130号)が提案されている。更には、CrN及びMo2Nの結晶構造中に[O]又は[C]若しくは[O]と[C]を固溶した硬質皮膜(特開平11−1763号)が提案されている。更には、Cr−Ti−N−O系の硬質皮膜(特開平6−346077号)及びTi−Cr−N−O系の硬質皮膜(特開平6−346076号)が提案されている。

0003

特開平6−346076号は、Ti、M群(Cr,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Ti+M)=1〜45%、O/(N+O)=5〜80%であるPVD皮膜を被覆した摺動部材を開示し、特開平6−346077号は、Cr,M群(Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Cr+M)=1〜55%、O/(N+O)=5〜80%であるPVD皮膜を被覆した摺動部材を開示している。

0004

これらの発明のPVD皮膜は、少なくとも4種類の元素を含むから、組成範囲確定するには、独立である3つの組成式が与えられる必要がある。しかし、上記2つの公報には、2つの組成式が与えられているだけである。従って、Ti,M、あるいはCrの絶対値の範囲は与えられていない。更に、Ti、M群(Cr,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Ti+M)=1〜45%、O/(N+O)=5〜80%である皮膜、並びにCr,M群(Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及び/又はAl),N及びOからなり、原子比率でM/(Cr+M)=1〜55%、O/(N+O)=5〜80%である皮膜は、その組織が種々の形態を取り得るが、このことについて上記2つの公報には一切記載がない。

発明が解決しようとする課題

0005

上記のように種々の技術が提案されているが、過酷なエンジン条件下にあっては、使用中に表面に摺動による過度繰り返し応力を受けると、クラックが発生し、その後クラックが進行してPVD皮膜内で、剥離が発生するという問題がある。

0006

本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬質皮膜の摺動特性、特に耐剥離性を向上させることにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明の硬質皮膜は、結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、このCrN及びTiNの結晶中に[O]が固溶されている硬質皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、残Nからなっており、各結晶粒径が1μm未満であることを特徴とする。

0008

Crの含有量が40重量%未満あるいは75重量%を越えると、耐剥離性が低下する。また、Tiの含有量が10重量%未満あるいは40重量%を越えると、耐剥離性が低下する。また、[O]の含有量が0.5重量%未満あるいは15重量%を越えると、耐剥離性が低下する。

0009

結晶粒径が1μm以上であると、摺動部の耐剥離性及び皮膜の密着性が低下する。結晶粒径は0.1μm以下が望ましい。

0010

上記硬質皮膜において、[O]に代えて、[C]を0.5〜10重量%の割合で固溶するようにしてもよい。[C]の含有量が0.5重量%未満あるいは10重量%を越えると、耐剥離性が低下する。

0011

更には、[O]と[C]の両方を固溶するようにしてもよい。その場合、[O]は0.5〜15重量%、[C]は0.5〜10重量%、[O]と[C]の合計が20重量%以下の割合で固溶させる。[O]と[C]の合計が20重量%を越えると、耐剥離性が低下する。

0012

硬質皮膜はビッカース硬さが1300〜2300の範囲にあるのがよい。ビッカース硬さが1300未満では耐摩耗性が低下し、2300を越えると密着性が低下する。

0013

本発明の摺動部材は、上記硬質皮膜が少なくとも摺動面に被覆されているものであり、例えば上記硬質皮膜が被覆されたピストンリングは過酷な条件下においても充分な摺動特性特に耐剥離性を有する。硬質皮膜の被覆はイオンプレーティングにより行うことができる。

0014

上記摺動部材においては、硬質皮膜の下に、実質的に[O]及び[C]を固溶していないCrNからなる下地皮膜が形成されるのが密着性の点で望ましい。

0015

また、前記CrN及びTiNの結晶が、被覆面に平行に(200)面又は(111)面の優先方位を持つのが耐剥離性の点で望ましい。

0016

また、前記CrN及びTiNの結晶が、母材側から皮膜表面に向かって柱状に成長している柱状組織を呈しているのが密着性の点で望ましい。

0017

硬質皮膜の厚さは、1〜100μmの範囲にあるのが望ましい。

発明を実施するための最良の形態

0018

図1(a)は本発明の一実施形態であるピストンリングの一部分を示す縦断面図である。

0019

本実施形態のピストンリング1は鋼、鋳鉄チタンあるいはチタン合金等で形成されている矩形断面リングである。ピストンリング1の全周面にはビッカース硬さ700以上の窒化層2が形成されており、外周面の窒化層2上に、硬質皮膜3がアークイオンプレーティングによって被覆されている。

0020

硬質皮膜3は、結晶構造がCrN及びTiNの混相からなり、このCrN及びTiNの結晶中に[O]が固溶されている硬質皮膜であって、Cr40〜75重量%、Ti10〜40重量%、O0.5〜15重量%、残Nからなっており、各結晶粒径は1μm未満である。硬質皮膜3のビッカース硬さは1300〜2300の範囲にあり、膜厚は1〜100μmである。また、CrN及びTiNの結晶は、被覆面に平行に(200)面又は(111)面の優先方位を持ち、母材側から皮膜表面に向かって柱状に成長している柱状組織を呈している。

0021

図1(b)は本発明の別の実施形態であるピストンリングの一部分を示す縦断面図である。

0022

本実施形態のピストンリング1は、上記実施形態のピストンリング1における窒化層2と硬質皮膜3との間に、実質的に[O]及び[C]を固溶していないCrNからなる下地皮膜4を形成したもので、他の構成は上記実施形態のピストンリングと同じである。

0023

なお、上記2つの実施形態における硬質皮膜3は、[O]に代えて、[C]を0.5〜10重量%の割合で固溶するようにしてもよい。更には、[O]と[C]の両方を固溶するようにしてもよい。その場合、[O]は0.5〜15重量%、[C]は0.5〜10重量%、[O]と[C]の合計が20重量%以下の割合で固溶させる。

0024

以下、上記ピストンリング1の製造方法を説明する。

0025

窒化層2はガス窒化法塩浴窒化法等によって形成する。

0026

硬質皮膜3はアークイオンプレーティング法によって被覆する。図2に基づいて、アークイオンプレーティング装置の基本的構成を説明する。真空チャンバ10内に、蒸発させる材料からなる陰極11と、被コーティング物12が設置されている。陰極11は、真空チャンバ10の外側に設置されているアーク供給源13に接続されており、アーク供給源13には図示外の陽極が接続されている。被コーティング物12にはバイアス電圧供給源14によって負のバイアス電圧印加されるように構成されている。真空チャンバ10にはプロセスガス供給源に接続されているガス入り口15と、ポンプに接続されている排気口16とが設けられている。

0027

上記アークイオンプレーティング装置を用いて、真空チャンバ10内にCr金属からなる陰極及びTi金属からなる陰極、あるいはCr−Ti合金からなる陰極を設置し、プロセスガスとして、窒素源のN2ガス酸素源のO2ガスを使用することにより、CrN及びTiNの結晶中に[O]が固溶された硬質皮膜を被コーティング物12に被覆することができる。図2において、17は陰極11の材料が蒸発してイオン化した金属イオン、18は反応ガス分子である。なお、各陰極におけるアーク電流の大きさは、独立して調節できるように構成されている。

0028

上記において、CrとTiの成分量の調節は、Cr金属からなる陰極及びTi金属からなる陰極、又はCr−Ti合金からなる陰極におけるアーク電流を調節し、あるいはCr−Ti合金からなる陰極のCrとTiの比率を変えることによって行うことができる。

0029

なお、上記プロセスガスのO2ガスを、炭素源としてのCH4ガス、C2H4ガス、あるいはC2H2ガスに変えることにより、[O]に代えて[C]を固溶した硬質皮膜を被覆することができる。また、プロセスガスとして、O2ガスと、炭素源としてのCH4ガス、C2H4ガス、あるいはC2H2ガスを併用することにより、[O]と[C]を固溶した硬質皮膜を被覆することができる。

0030

[O]濃度のコントロールは、イオンプレーティングの際の酸素源の分圧をコントロールすることによって行うことができる。酸素源の分圧を高くすると、[O]濃度は上昇する。同様に、[C]濃度のコントロールは、イオンプレーティングの際の炭素源の分圧をコントロールすることによって行うことができる。炭素源の分圧を高くすると、[C]濃度は上昇する。

0031

皮膜硬度のコントロールは、バイアス電圧をコントロールすることによって行うことができる。バイアス電圧を高くすると、硬度は上昇する。

0032

以下、ピストンリングに被覆する硬質皮膜の被覆方法を説明する。

0033

ピストンリングをアセトン超音波洗浄し、アークイオンプレーティング装置の炉内にセットし、真空引きを行う。炉内圧力を1×10−3Pa以下に減圧した後、ピストンリングを473〜773Kに加熱する。加熱により、炉内圧力は一時的に上昇する。減圧によって再び圧力が5×10−3Pa以下になった後、−800〜−1000Vのバイアス電圧を印加し、陰極と陽極の間でアーク放電させ、窒素ガスを導入して、メタルイオンボンバード処理を行う。その後、バイアス電圧を−20〜−100Vとし、圧力が5×10−1〜2.0Paで、実質的に[O]を固溶しないCrNからなる下地皮膜をピストンリングの外周面に被覆する。次いで、炉内雰囲気をN2ガスとO2ガスの分圧比が1:(0.01〜0.25)、全圧が5×10−1〜2.0Paとなるように調節し、バイアス電圧を−20〜−100Vとして、イオンプレーティングを続行する。これにより、CrN及びTiNの結晶中に[O]を固溶した硬質皮膜が下地皮膜上に被覆される。

0034

なお、上記CrNからなる下地皮膜を被覆しない場合は、上記工程において、下地皮膜を被覆する工程を省略すればよい。

0035

イオンプレーティング炉内の酸素分圧が高いと、CrN及びTiNの結晶中に固溶する酸素量が増加し、低いと減少する。バイアス電圧、全圧、又は酸素量を加減することにより、皮膜硬度をコントロールできる。バイアス電圧を高く、又は全圧を低く、又は酸素量を増加させると、皮膜硬度は高くなる。皮膜組織はバイアス電圧を低くすると、柱状組織となる。また、炉内圧力を高くすると、柱状組織となる。

0036

析出する結晶組織は、アーク電流及び窒素分圧のコントロールにより制御する。アーク電流に対して窒素分圧が相対的に低いと、Cr2N、Cr、あるいはTiが析出する。

0037

次に、硬質皮膜の耐剥離性試験を説明する。

0038

耐剥離性試験は、ファンデアホルスト摩擦試験機を使用して行った。試験概要図3に基づいて説明する。

0039

ピストンリング1が、水平軸を中心に回転するロータ20の外周面21上に配置され、ピストンリング1に荷重Pが作用されてピストンリング1の外周面がロータ20上に押接される。この状態で、ピストンリング1とロータ20の接触部分に潤滑油を供給しながらロータ20を一定速度で回転させる。そして、ピストンリング1への荷重Pを変えて試験を行い、ピストンリング1の硬質皮膜3に剥離が発生したときの荷重Pを測定した。

0040

試験条件は下記の通りであった。
試験片(ピストンリング)
材質:17Crマルテンサイト鋼
下地処理窒化処理
硬質皮膜厚さ:50μm
表面粗さ :0.6μmRZ
硬質皮膜特性:表1参照。
図4は、実施例1の硬質皮膜のX線回折図形を示す。TiN及びCrNの(111)回折ピーク及び(200)回折ピークは格子定数が近く、結晶粒微細であるため、重なっているが、詳細に見ると、これらの回折線が存在し、実施例1の硬質皮膜は、TiN及びCrNの結晶が混じったものであることがわかる。そして、TiN及びCrNの(111)回折線の相対強度は、優先方位を持たない硬質皮膜のそれより大きく、(111)の優先方位を有することを示している。図5は、比較例1の硬質皮膜のX線回折図形を示す。この図形から、比較例1の硬質皮膜は、TiN、CrN、Cr2Nの結晶が混じったものであることがわかる。
ロータ
材質:鋳鉄(FC250相当)
表面:鏡面仕上げ
潤滑油
日石ハイディーゼルS3 10Wエンジンオイル
荷重
30N〜250Nの範囲
初期荷重30Nで1分間行い、剥離の発生がない場合、更に10Nずつステップアップし、試験を行う。剥離が発生するまで、又は試験荷重が250Nまで続行する。
時間
各荷重で1分
速度
3m/s
温度
室温

0041

0042

図6に試験結果を示す。比較例1〜5の硬質皮膜は試験荷重170N以下で剥離が発生した。これに対し、実施例1〜5の硬質皮膜は試験荷重250Nでも剥離が発生せず、耐剥離性が優れている。

0043

次に、実施例の硬質皮膜において、酸素量又は炭素量を変化させたときのファンデアホルスト摩擦試験結果を図7に示す。

0044

図7(a)は、酸素量を変化させたときのファンデアホルスト摩擦試験結果を示し、酸素量が0.5〜15重量%の範囲では、試験荷重250Nでも、剥離が発生しなかった。

0045

図7(b)は、炭素量を変化させたときのファンデアホルスト摩擦試験結果を示し、炭素量が0.5〜10重量%の範囲では、試験荷重250Nでも、剥離が発生しなかった。

0046

次に、前述した耐剥離性試験で使用した比較例の中で、最も剥離発生荷重が高かった比較例2の硬質皮膜と、実施例1,2,3の硬質皮膜とを、トップリングの外周面に被覆して、エンジン実験を行った。

0047

使用したエンジンと試験条件は、次の通りである。
エンジン:ボア径94mm、4気筒、4ストロークディーゼルエンジン試験条件:全負荷、300時間

0048

運転後のトップリング外周面を観察した結果を表2に示す。比較例2の硬質皮膜は剥離が発生したが、実施例1〜3の硬質皮膜は剥離が発生しなかった。

0049

0050

上記実施形態では、ピストンリングに硬質皮膜を被覆した例を示したが、硬質皮膜はピストンリングに被覆するに限らず、他の摺動部材例えば内燃機関動弁系部品であるタペットカム等の少なくとも摺動面に被覆すれば有効である。

発明の効果

0051

以上説明したように本発明の硬質皮膜は摺動特性、特に耐剥離性に優れる。従って、この硬質皮膜をピストンリング等の摺動部材の摺動面に施せば、過酷な条件下においても、充分な耐久性具備する。

図面の簡単な説明

0052

図1本発明の実施形態を示し、(a)及び(b)はそれぞれピストンリングの一部分を示す縦断面図である。
図2アークイオンプレーティング装置の構成を示す図である。
図3ファンデアホルスト摩擦試験機の概要を示し、(a)は一部断面正面図、(b)は側面図である。
図4実施例1の硬質皮膜のX線回折図形を示す図である。
図5比較例1の硬質皮膜のX線回折図形を示す図である。
図6耐剥離性試験結果を示すグラフである。
図7(a)は酸素量を変化させたときの耐剥離性試験結果を示すグラフ、(b)は炭素量を変化させたときの耐剥離性試験結果を示すグラフである。

--

0053

1ピストンリング
2窒化層
3硬質皮膜
4下地皮膜
10真空チャンバ
11陰極
12被コーティング物
13アーク供給源
14バイアス電圧供給源
15ガス入り口
16排気口
17金属イオン
18反応ガス分子
20ロータ
21ロータ外周

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