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技術 拡管に適した炭素鋼管接合体の製造方法および拡管方法

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 冷水孝夫堀尾浩次鬼頭一成稲垣繁幸山田龍三
出願日 1999年8月23日 (20年10ヶ月経過) 出願番号 1999-272888
公開日 2001年3月6日 (19年3ヶ月経過) 公開番号 2001-058279
状態 未査定
技術分野 他に分類されない板、線、管の製造と清浄 かしめ結合と拡管装置及び管端の縮径・拡径 圧接、拡散接合 圧接、拡散接合
主要キーワード 加圧用液体 寸法許容 締結法 接合部外 接合面どうし セメンティング 拡管工具 最大段差
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

拡管にともなう接合部の割れ欠陥の発生を防止でき、拡管後の機械的性質の優れた炭素鋼管接合体の製造方法および炭素鋼管接合体の拡管方法を提供すること。

解決手段

炭素鋼管30、30どうしを、インサート材として融点1200℃未満で厚さ80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用い、該炭素鋼管接合面の面粗さRmax.20μm以下、接合温度1250℃以上1330℃以下、接合温度における保持時間30秒以上、加圧力2MPa以上4MPa以下なる条件で、非酸化性雰囲気中で接合し、接合部の最大段差が該炭素鋼管の厚さの25%以下で、かつ、25%以下の拡管率で拡管する。

概要

背景

従来から、油井ガス井で用いられるケーシングチューブプロダクションチューブ等の油井管は、一定長さ(10m〜15m程度)の炭素鋼管を多数接合して使用されている。

例えば、油井、ガス井を掘削するに際しては、地中に掘削された坑道の保護や原油ガス漏洩防止等のため、坑道の中にケーシングチューブと呼ばれる鋼管埋設される。油田ガス田は、通常、地下あるいは海底下数千mの位置にあるので、ケーシングチューブも数千mの長さを有するものが必要とされる。また、油井、ガス井から汲み上げられた原油、ガス等は、分離装置を介して、貯槽あるいは精油設備輸送されるが、その場合、全長数kmに及ぶフローラインパイプライン等が用いられる。

このような用途に用いられる炭素鋼管の接合方法としては、ねじ締結法メカニカルカップリング法)、溶接法オービタル・ウェルディング法)、摩擦圧接法拡散接合法などが知られている。

ねじ締結法は、炭素鋼管の端部に形成されたねじを螺合させることにより、炭素鋼管どうしを接続する方法である。ねじ締結法は、一継手当たりの接続時間が5分〜10分程度と短く、作業能率が高いという利点があるが、締結部から油やガスが漏洩し易いという欠点がある。そのため、炭素鋼管に形成されるねじには高精度が要求され、しかも、ねじの螺合作業には高度の熟練が要求される。また、高精度に加工されたねじ部の損傷をさけるため、その輸送、取り扱いには細心の注意が要求される。さらに、引張応力が作用する場合には締結部の気密性は確保できるものの、圧縮応力が作用する場合には、ねじ締結部は半径方向に拡大し、油やガスの漏洩を助長するという欠点がある。

一方、溶接法は、炭素鋼管の端面に開先を設けて突き合わせ、開先内溶接金属充填することにより、炭素鋼管どうしを接続する方法である。溶接法は、溶接部融合不良や気孔等の欠陥がない限り、溶接部から油やガスが漏洩することはなく、また、健全な溶接部は引張応力のみならず圧縮応力に対しても母材と同等の特性が得られるという利点がある。しかしながら、溶接法は、その能率限界があり、特に、大径厚肉管の場合には、多層溶接を行う必要があるので、一継手当たりの作業時間が1時間〜2時間を要してしまう。さらに、現地での溶接施工においては、天候、風等、環境の影響を受けるばかりでなく、熟練した溶接技能を要するという欠点がある。

摩擦圧接法は、圧力を加えつつ、突き合わせた炭素鋼管どうしを相対的に回転、あるいは、摺動させ、発生した摩擦熱により軟化した炭素鋼管端部を圧接する方法である。他の接合法に比べて、熟練を必要としない、短時間で接合できる、作業環境の影響をほとんど受けない等の利点はあるものの、炭素鋼管圧接部内外表面バリ発生が避けられず、その除去、特に、内面に発生したバリ、に多大の時間を要するという欠点がある。その欠点を解決する方法として、一対の炭素鋼管端面どうしの間に楔状断面を有するリングを介挿し、一対の炭素鋼管は固定したままで、そのリングを回転させながら炭素鋼管の中心方向に押し込むことにより圧接を行うラジアル摩擦圧接法が開発されているが、圧接継手の特性は、必ずしも十分ではなく、油井管等の接合に適用された例は報告されていない。

拡散接合法は、適正な条件で接合されれば、接合部から油やガスが漏洩することはなく、圧縮応力に対する抵抗は、上述の溶接法と同様手あるが、一継手当たりの接合時間は、溶接法の1/3〜1/2程度と短く、高品質の継手を高能率に製造することができるという利点がある。そのため、拡散接合法は、油井管やラインパイプ等の接合方法として特に優れている。

一方、石油、ガス生産コストの大幅な低減を目的として、従来よりも小径の坑道を掘削し、そこに挿入した長さ数百mのケーシングチューブを現地で拡管する方法が開発されている。(World Oil:P.31,April,1999)

これは、長さ数百mに及ぶケーシングチューブ内に挿入したチューブ外径よりも大きい外径を有する工具水圧等を用いてチューブ内を移動させ、チューブ内径を連続的に拡大する方法であり、坑道の小径化による掘削コストの低減、坑道とケーシングチューブの間隔を狭隘化することによるセメンティングコストの低減、使用するケーシングチューブの削減等により、大幅な石油、ガスの生産コスト低減が期待されている。

しかし、前述したように、長さ数百mに及ぶケーシングチューブを一本の炭素鋼管で製造することは不可能であり、一定長さの炭素鋼管を多数接続した炭素鋼管接合体の拡管を行うことになる。その炭素鋼管接合体の接続方法としては、前述したねじ締結法(メカニカルカップリング法)、溶接法(オービタルウェルディング法)、摩擦圧接法、および、拡散接合法が用いられる。これら炭素鋼管接合体の接続部も炭素鋼管母材と同様に拡管されるので、接続部には炭素鋼管母材と同等の拡管性能が要求される。

ねじ締結法を用いて接続された炭素鋼管接合体を拡管する場合、接続部が変形することにより緊締したねじに緩みが生じ、石油、ガス等が漏洩し易いという欠点があるので、高精度な特殊形状のねじを適用しているが、必ずしも十分な特性が得られていない。また、そのような特殊なねじの加工には多大のコストを要する、ねじ部の損傷を避けるため、その輸送あるいは取り扱いには細心の注意を要するという欠点があるため、その適用範囲制約されている。

溶接法により接合された炭素鋼管接合体は、溶接部に融合不良や気孔等の欠陥がなければ、溶接部の機械的性質は母材同等となる。しかし、一般的には、溶接部の機械的性質を確保するため、炭素鋼管溶接部の外側表面には余盛と呼ばれる凸部が、炭素鋼管溶接部の内側表面には裏波ビードと呼ばれる凸部が形成されているので、溶接法により接合された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、少なくとも、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管溶接部内側の裏波ビードを除去する必要がある。しかし、油井、ガス井の掘削現場で炭素鋼管溶接部内側の裏波ビードを除去することは多大のコストを要するばかりでなく、非常に困難である。さらに、拡管工程における溶接部の割れ等の欠陥発生防止の観点からは、応力集中源となる炭素鋼管溶接部外側表面の溶接ビード端部を滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管溶接部外側表面の余盛を削除する必要があるが、それら加工にも多大のコストを要するという欠点がある。

摩擦圧接法を用いて圧接された炭素鋼管接合体は、圧接部内外表面にバリが発生するので、摩擦圧接法により圧接された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、少なくとも、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管圧接部内側のバリを除去する必要がある。しかし、油井、ガス井の掘削現場で炭素鋼管圧接部内側のバリを除去することは多大のコストを要するばかりでなく、非常に困難である。さらに、拡管工程における圧接部の割れ等の欠陥発生防止の観点からは、応力集中源となる炭素鋼管圧接部外側表面のバリを滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管圧接部外側表面のバリを削除する必要があるが、それら加工にも多大のコストを要するという欠点がある。

一方、拡散接合法を用いて接合された炭素鋼管接合体は、溶接法を用いた場合のような炭素鋼管溶接部外表面の余盛および内表面の裏波ビード、あるいは、摩擦圧接法を用いた場合のような炭素鋼管圧接部内外側表面のバリが発生することはない。したがって、拡散接合法により接合された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、溶接法あるいは摩擦圧接法を用いた場合のように、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管接合部内側の凸部を除去する必要はない。さらに、拡管工程における接合部における割れ等の欠陥発生防止を目的として、応力集中源となる炭素鋼管接合部外側表面の凸部を滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管接合部外側表面の凸部を削除する必要もないので、極めて能率的に拡管作業を実施できるという利点がある。

一般的に、拡散接合法を用いて炭素鋼管接合体を製造する場合、予め接合のままの状態の炭素鋼管接合継手の引張強さ、疲労強度等の特性に及ぼす接合温度、接合温度における保持時間、接合面への加圧力接合条件の影響を調べ、要求特性を満たす接合条件範囲を求め、その条件範囲内で炭素鋼管接合体の製造を行う。

しかし、炭素鋼管接合体の内径よりも大きな外径を有する工具を接合体内部に挿入して炭素鋼管接合体を拡管する場合、接合のままの状態の炭素鋼管接合継手の特性に及ぼす接合条件の影響調査結果から得られた接合条件範囲内で接合された炭素鋼管接合体では、拡管中に接合部に割れ等の欠陥が発生する危険性のみならず、拡管後の炭素鋼管接合体の特性が不十分となる危険性がある。

特に、拡管中に、深さ数百mの坑道中に挿入された長さ数百mの炭素鋼管接合体の接合部に割れが発生すると、発生した割れから加圧用液体が漏洩することにより、拡管工具を推進させる圧力が低下して、割れが発生した部位より先に拡管用工具が進行しなくなり、拡管作業の継続が不可能となる。この場合、その復旧は非常に困難で、最悪の場合には、油井、ガス井を放棄することとなり、その損失は膨大となる。

さらに、拡管中に、深さ数百mの坑道中に挿入された長さ数百mの炭素鋼管接合体の接合部に割れが発生し、割れが発生した部位より先の炭素鋼管接合体が脱落してしまうと、拡管作業の継続が不可能となるばかりでなく、その衝撃により坑道が崩落したり、坑道と拡管された炭素鋼管接合体の隙間から加圧用液体が噴出して極めて危険である。この場合、その復旧は非常に困難で、最悪の場合には、油井、ガス井を放棄することとなり、その損失は膨大となる

概要

拡管にともなう接合部の割れ等欠陥の発生を防止でき、拡管後の機械的性質の優れた炭素鋼管接合体の製造方法および炭素鋼管接合体の拡管方法を提供すること。

炭素鋼管30、30どうしを、インサート材として融点1200℃未満で厚さ80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用い、該炭素鋼管接合面の面粗さRmax.20μm以下、接合温度1250℃以上1330℃以下、接合温度における保持時間30秒以上、加圧力2MPa以上4MPa以下なる条件で、非酸化性雰囲気中で接合し、接合部の最大段差が該炭素鋼管の厚さの25%以下で、かつ、25%以下の拡管率で拡管する。

目的

本発明の目的は、適正な接合条件範囲で炭素鋼管を接合することにより、炭素鋼管接合体の内径よりも大きな外径を有する工具を接合体内部に挿入して炭素鋼管接合体を拡管する加工方法に適した炭素鋼管接合体の製造方法を提供することにある。さらにもう一つの目的は、拡管中に接合部に割れ等の欠陥が発生する危険性の少ない炭素鋼管接合体の拡管方法を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

炭素鋼管を突き合わせ、該炭素鋼管母材融点(Tb)よりも低い融点(Ti)を有するインサート材を該炭素鋼管接合面間に挿入し、少なくとも接合部近傍をTi<T<Tbなる温度(T)に加熱し、両炭素鋼管を加圧保持して拡散接合する炭素鋼管接合体の製造方法において、インサート材として融点1200℃未満で厚さ80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用い、該炭素鋼管接合面の面粗さRmax.20μm以下、接合温度1250℃以上1330℃以下、接合温度における保持時間30秒以上、加圧力2MPa以上4MPa以下なる条件で、非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とする拡管に適した炭素鋼管接合体の製造方法。

請求項2

接合部の加熱方法周波数100kHz以下の高周波電流を用いた高周波誘導加熱法、または、高周波通電加熱法を用いた請求項1の炭素鋼管接合体の製造方法。

請求項3

接合部の最大段差を炭素鋼管の厚さの25%以下とする請求項1または2の炭素鋼管接合体の製造方法。

請求項4

炭素鋼管を複数接合して構成される接合体の内部に挿入した工具を用いて該炭素鋼管接合体を拡管する方法において、接合部の最大段差が炭素鋼管の厚さの25%以下の炭素鋼管接合体を用い、該炭素鋼管接合体内径拡大率((拡大後の炭素鋼管内径−拡大前の炭素鋼管内径)/拡大前の炭素鋼管内径×100%)を25%以下にすることを特徴とする炭素鋼管接合体の拡管方法

技術分野

0001

本発明は、炭素鋼管接合に関し、更に詳しくは、油井ガス井で用いられるケーシングチューブプロダクションチューブコイルドチューブ等の油井管、あるいは、化学工業、石油化学工業等で用いられるプラント配管ラインパイプの接合、および、それら炭素鋼管接合体内径を拡大する方法に関するものである。

背景技術

0002

従来から、油井、ガス井で用いられるケーシングチューブ、プロダクションチューブ等の油井管は、一定長さ(10m〜15m程度)の炭素鋼管を多数接合して使用されている。

0003

例えば、油井、ガス井を掘削するに際しては、地中に掘削された坑道の保護や原油ガス漏洩防止等のため、坑道の中にケーシングチューブと呼ばれる鋼管埋設される。油田ガス田は、通常、地下あるいは海底下数千mの位置にあるので、ケーシングチューブも数千mの長さを有するものが必要とされる。また、油井、ガス井から汲み上げられた原油、ガス等は、分離装置を介して、貯槽あるいは精油設備輸送されるが、その場合、全長数kmに及ぶフローラインパイプライン等が用いられる。

0004

このような用途に用いられる炭素鋼管の接合方法としては、ねじ締結法メカニカルカップリング法)、溶接法オービタル・ウェルディング法)、摩擦圧接法拡散接合法などが知られている。

0005

ねじ締結法は、炭素鋼管の端部に形成されたねじを螺合させることにより、炭素鋼管どうしを接続する方法である。ねじ締結法は、一継手当たりの接続時間が5分〜10分程度と短く、作業能率が高いという利点があるが、締結部から油やガスが漏洩し易いという欠点がある。そのため、炭素鋼管に形成されるねじには高精度が要求され、しかも、ねじの螺合作業には高度の熟練が要求される。また、高精度に加工されたねじ部の損傷をさけるため、その輸送、取り扱いには細心の注意が要求される。さらに、引張応力が作用する場合には締結部の気密性は確保できるものの、圧縮応力が作用する場合には、ねじ締結部は半径方向に拡大し、油やガスの漏洩を助長するという欠点がある。

0006

一方、溶接法は、炭素鋼管の端面に開先を設けて突き合わせ、開先内溶接金属充填することにより、炭素鋼管どうしを接続する方法である。溶接法は、溶接部融合不良や気孔等の欠陥がない限り、溶接部から油やガスが漏洩することはなく、また、健全な溶接部は引張応力のみならず圧縮応力に対しても母材と同等の特性が得られるという利点がある。しかしながら、溶接法は、その能率限界があり、特に、大径厚肉管の場合には、多層溶接を行う必要があるので、一継手当たりの作業時間が1時間〜2時間を要してしまう。さらに、現地での溶接施工においては、天候、風等、環境の影響を受けるばかりでなく、熟練した溶接技能を要するという欠点がある。

0007

摩擦圧接法は、圧力を加えつつ、突き合わせた炭素鋼管どうしを相対的に回転、あるいは、摺動させ、発生した摩擦熱により軟化した炭素鋼管端部を圧接する方法である。他の接合法に比べて、熟練を必要としない、短時間で接合できる、作業環境の影響をほとんど受けない等の利点はあるものの、炭素鋼管圧接部内外表面バリ発生が避けられず、その除去、特に、内面に発生したバリ、に多大の時間を要するという欠点がある。その欠点を解決する方法として、一対の炭素鋼管端面どうしの間に楔状断面を有するリングを介挿し、一対の炭素鋼管は固定したままで、そのリングを回転させながら炭素鋼管の中心方向に押し込むことにより圧接を行うラジアル摩擦圧接法が開発されているが、圧接継手の特性は、必ずしも十分ではなく、油井管等の接合に適用された例は報告されていない。

0008

拡散接合法は、適正な条件で接合されれば、接合部から油やガスが漏洩することはなく、圧縮応力に対する抵抗は、上述の溶接法と同様手あるが、一継手当たりの接合時間は、溶接法の1/3〜1/2程度と短く、高品質の継手を高能率に製造することができるという利点がある。そのため、拡散接合法は、油井管やラインパイプ等の接合方法として特に優れている。

0009

一方、石油、ガス生産コストの大幅な低減を目的として、従来よりも小径の坑道を掘削し、そこに挿入した長さ数百mのケーシングチューブを現地で拡管する方法が開発されている。(World Oil:P.31,April,1999)

0010

これは、長さ数百mに及ぶケーシングチューブ内に挿入したチューブ外径よりも大きい外径を有する工具水圧等を用いてチューブ内を移動させ、チューブ内径を連続的に拡大する方法であり、坑道の小径化による掘削コストの低減、坑道とケーシングチューブの間隔を狭隘化することによるセメンティングコストの低減、使用するケーシングチューブの削減等により、大幅な石油、ガスの生産コスト低減が期待されている。

0011

しかし、前述したように、長さ数百mに及ぶケーシングチューブを一本の炭素鋼管で製造することは不可能であり、一定長さの炭素鋼管を多数接続した炭素鋼管接合体の拡管を行うことになる。その炭素鋼管接合体の接続方法としては、前述したねじ締結法(メカニカルカップリング法)、溶接法(オービタルウェルディング法)、摩擦圧接法、および、拡散接合法が用いられる。これら炭素鋼管接合体の接続部も炭素鋼管母材と同様に拡管されるので、接続部には炭素鋼管母材と同等の拡管性能が要求される。

0012

ねじ締結法を用いて接続された炭素鋼管接合体を拡管する場合、接続部が変形することにより緊締したねじに緩みが生じ、石油、ガス等が漏洩し易いという欠点があるので、高精度な特殊形状のねじを適用しているが、必ずしも十分な特性が得られていない。また、そのような特殊なねじの加工には多大のコストを要する、ねじ部の損傷を避けるため、その輸送あるいは取り扱いには細心の注意を要するという欠点があるため、その適用範囲制約されている。

0013

溶接法により接合された炭素鋼管接合体は、溶接部に融合不良や気孔等の欠陥がなければ、溶接部の機械的性質は母材同等となる。しかし、一般的には、溶接部の機械的性質を確保するため、炭素鋼管溶接部の外側表面には余盛と呼ばれる凸部が、炭素鋼管溶接部の内側表面には裏波ビードと呼ばれる凸部が形成されているので、溶接法により接合された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、少なくとも、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管溶接部内側の裏波ビードを除去する必要がある。しかし、油井、ガス井の掘削現場で炭素鋼管溶接部内側の裏波ビードを除去することは多大のコストを要するばかりでなく、非常に困難である。さらに、拡管工程における溶接部の割れ等の欠陥発生防止の観点からは、応力集中源となる炭素鋼管溶接部外側表面の溶接ビード端部を滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管溶接部外側表面の余盛を削除する必要があるが、それら加工にも多大のコストを要するという欠点がある。

0014

摩擦圧接法を用いて圧接された炭素鋼管接合体は、圧接部内外表面にバリが発生するので、摩擦圧接法により圧接された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、少なくとも、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管圧接部内側のバリを除去する必要がある。しかし、油井、ガス井の掘削現場で炭素鋼管圧接部内側のバリを除去することは多大のコストを要するばかりでなく、非常に困難である。さらに、拡管工程における圧接部の割れ等の欠陥発生防止の観点からは、応力集中源となる炭素鋼管圧接部外側表面のバリを滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管圧接部外側表面のバリを削除する必要があるが、それら加工にも多大のコストを要するという欠点がある。

0015

一方、拡散接合法を用いて接合された炭素鋼管接合体は、溶接法を用いた場合のような炭素鋼管溶接部外表面の余盛および内表面の裏波ビード、あるいは、摩擦圧接法を用いた場合のような炭素鋼管圧接部内外側表面のバリが発生することはない。したがって、拡散接合法により接合された炭素鋼管接合体を拡管工具を用いて拡管する場合、溶接法あるいは摩擦圧接法を用いた場合のように、拡管工具通過の妨げとなる炭素鋼管接合部内側の凸部を除去する必要はない。さらに、拡管工程における接合部における割れ等の欠陥発生防止を目的として、応力集中源となる炭素鋼管接合部外側表面の凸部を滑らかに加工する、あるいは、炭素鋼管接合部外側表面の凸部を削除する必要もないので、極めて能率的に拡管作業を実施できるという利点がある。

0016

一般的に、拡散接合法を用いて炭素鋼管接合体を製造する場合、予め接合のままの状態の炭素鋼管接合継手の引張強さ、疲労強度等の特性に及ぼす接合温度、接合温度における保持時間、接合面への加圧力接合条件の影響を調べ、要求特性を満たす接合条件範囲を求め、その条件範囲内で炭素鋼管接合体の製造を行う。

0017

しかし、炭素鋼管接合体の内径よりも大きな外径を有する工具を接合体内部に挿入して炭素鋼管接合体を拡管する場合、接合のままの状態の炭素鋼管接合継手の特性に及ぼす接合条件の影響調査結果から得られた接合条件範囲内で接合された炭素鋼管接合体では、拡管中に接合部に割れ等の欠陥が発生する危険性のみならず、拡管後の炭素鋼管接合体の特性が不十分となる危険性がある。

0018

特に、拡管中に、深さ数百mの坑道中に挿入された長さ数百mの炭素鋼管接合体の接合部に割れが発生すると、発生した割れから加圧用液体が漏洩することにより、拡管工具を推進させる圧力が低下して、割れが発生した部位より先に拡管用工具が進行しなくなり、拡管作業の継続が不可能となる。この場合、その復旧は非常に困難で、最悪の場合には、油井、ガス井を放棄することとなり、その損失は膨大となる。

0019

さらに、拡管中に、深さ数百mの坑道中に挿入された長さ数百mの炭素鋼管接合体の接合部に割れが発生し、割れが発生した部位より先の炭素鋼管接合体が脱落してしまうと、拡管作業の継続が不可能となるばかりでなく、その衝撃により坑道が崩落したり、坑道と拡管された炭素鋼管接合体の隙間から加圧用液体が噴出して極めて危険である。この場合、その復旧は非常に困難で、最悪の場合には、油井、ガス井を放棄することとなり、その損失は膨大となる

発明が解決しようとする課題

0020

本発明の目的は、適正な接合条件範囲で炭素鋼管を接合することにより、炭素鋼管接合体の内径よりも大きな外径を有する工具を接合体内部に挿入して炭素鋼管接合体を拡管する加工方法に適した炭素鋼管接合体の製造方法を提供することにある。さらにもう一つの目的は、拡管中に接合部に割れ等の欠陥が発生する危険性の少ない炭素鋼管接合体の拡管方法を提供することである。

0021

上記課題を解決する本発明の炭素鋼管接合体の製造方法は、図1に示すように、炭素鋼管(30,30)を突き合わせ、該炭素鋼管母材の融点(Tb)よりも低い融点(Ti)を有するインサート材(31)を該炭素鋼管接合面間に挿入し、少なくとも接合部近傍をTi<T<Tbなる温度(T)に加熱し、両炭素鋼管(30,30)を加圧保持して拡散接合する炭素鋼管接合体の製造方法において、インサート材(31)として融点1200℃未満で厚さ80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用い、該炭素鋼管接合面の面粗さRmax.20μm以下、接合温度1250℃以上1330℃以下、接合温度における保持時間30秒以上、加圧力2MPa以上4MPa以下なる条件で、非酸化性雰囲気中で接合することを特徴とする。

0022

さらに、本発明の炭素鋼管接合体の拡管方法は、図2に示すように、炭素鋼管を複数接合して構成される接合体(32)の内部に挿入した工具(33)を用いて該炭素鋼管接合体(32)を拡管する方法において、接合部の最大段差が炭素鋼管の厚さの25%以下の炭素鋼管接合体(32)を用い、該炭素鋼管接合体内径の拡大率((拡大後の炭素鋼管内径(d1)−拡大前の炭素鋼管内径(d0))/拡大前の炭素鋼管内径(d0)×100%)を25%以下にすることを特徴とする。

発明を実施するための最良の形態

0023

以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係わる炭素鋼管接合体の製造方法を示す工程である。図1において、本発明に係わる炭素鋼管接合体の製造方法は、炭素鋼管の接合工程を備えている。

0024

炭素鋼管の接合工程について説明する。接合工程は、図1(a)に示すよう、端面が所定の表面粗さに加工された炭素鋼管30,30を突き合わせ、それら端面の間に炭素鋼管30よりも低い融点を有するインサート材31を介挿し、炭素鋼管30、30どうしを液相拡散接合させる工程である。

0025

図1(b)に、炭素鋼管30、30の接合面の間にインサート材31を介挿して炭素鋼管30、30を液相拡散接合する一例を示す。端面を所定の表面粗さに加工された炭素鋼管30,30を把持装置40,40を用いて把持し、炭素鋼管30,30の端面の間にインサート材31を介挿してから、炭素鋼管30,30の端面に所定の加圧力を負荷する。

0026

次に、炭素鋼管30,30の突き合わせ部を非酸化性雰囲気42として、高周波誘導加熱コイル41を用いて、インサート材31の融点よりも高く、かつ、炭素鋼管30の融点よりも低い温度に加熱し、その温度で所定の時間保持することにり、インサート材に含有されている元素を炭素鋼管30,30中に拡散させて強固に接合された炭素鋼管接合体32を能率的に得る。

0027

上記方法で製造された炭素鋼管接合体32は、後述するように、炭素鋼管接合体32の内径よりも大きい外径を有する工具を用いて、その内径を拡大(拡管)するという加工に供される。したがって、炭素鋼管接合体32の接合部には拡管に耐える特性が要求されるので、炭素鋼管30,30の接合は適正な条件範囲で行う必要がある。具体的には、以下の条件で行うよい。

0028

まず、使用するインサート材31は、融点が1200℃より低いNi系合金またはFe系合金が好適である。インサート材31の融点が1200℃以上になると、高い接合温度が必要となるので、接合中に炭素鋼管30母材を溶融させたり、あるいは、接合部が過大に変形する原因となり、拡管工程における接合部の割れ発生を招来する。また、インサート材31の未溶融に起因する未接合部が発生し易くなるので好ましくない。

0029

また、使用するインサート材31の厚さは80μm以下が好ましい。インサート材31の厚さが80μmを超えると、接合界面における元素の拡散が十分に行われず、接合強度が低下し、拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。

0030

なお、インサート材31の形態は、特に限定されるものではなく、厚さは80μm以下の箔状のインサート材31を接合界面に介挿してもよく、あるいは、厚さが80μm以下となるように、粉末状もしくは鱗片状のインサート材31を接合界面に散布したり、ペースト状にして接合界面に塗布してもよい。

0031

接合面の表面粗さRmaxは、20μm以下が好ましい。接合面の表面粗さRmaxが20μmを超えると、接合面において炭素鋼管30どうしが十分密着せず、十分な接合部の強度および延性が得られず、拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。十分な接合部の機械的性質を得るという点では、表面粗さRmaxは小さい程好ましい。

0032

接合温度は、1250℃以上1330℃以下の範囲が゛好適である。接合温度が1250℃未満になると、インサート材31が部分的に溶融しなかったり、あるいは、元素の拡散が十分に行われず、接合部の強度および延性が低下して拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。また、接合温度が1330℃を超えると、接合部が過大に変形したり、場合によっては接合部が溶融して、拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。

0033

接合温度における保持時間は、30秒以上が好適である。保持時間が30秒未満では、接合界面における元素の拡散が不十分となり、接合部の強度および延性が低下して拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。また、保持時間の上限はないものの、不必要に長時間にわたり保持することは経済的ではないので、保持時間は300秒程度以下とするのが好ましい。

0034

さらに、接合面の付与する加圧力は、2MPa以上4MPa以下が好適である。加圧力が2MPa未満であると、接合面の密着が不十分となり、接後部の強度および延性が低下して拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。また、加圧力が4MPaを超えると、接合部が過大に変形し、接後部の強度および延性が低下して拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。

0035

接合雰囲気は、非酸化性雰囲気が好ましい。酸化性雰囲気下で接合を行うと、接合面界面近傍、および、インサート材が酸化し、接後部の強度および延性が低下して拡管工程における接合部の割れ発生を招来するので好ましくない。

0036

また、接合を行う際の加熱方法としては、高周波誘導加熱高周波直接通電加熱抵抗加熱等の各種方法を用いることができる。とりわけ高周波誘導加熱および高周波直接通電加熱は、比較的大きな被接合炭素鋼管であっても容易に加熱でき、加熱効率が高く、極めて短時間に接合温度まで加熱できるので、加熱方法として特に好適である。

0037

ただし、高周波誘導加熱または高周波直接通電加熱に用いる高周波電流としては、周波数が100kHz以下のものを用いるのが好ましい。周波数が100kHzを超えると、表皮効果により表面のみが加熱され、接合面全面が均一に加熱されなくなるので好ましくない。

0038

次に、このようにして得られた拡管用炭素鋼管接合体の拡管工程について説明する。拡管工程は、上述した接合工程において製造された炭素鋼管接合体32の拡管を行い、炭素鋼管接合体32の内径を一様の大きさにする工程である。

0039

具体的には、図2(a)に示すように、非接合部の内径d0である炭素鋼管接合体32の一端からマンドレル33を挿入し後方から水圧をかけることにより、図2(b)に示すように、炭素鋼管接合体32の他端に向かってマンドレル33を移動させ、炭素鋼管接合体32の内径をd1まで拡大させればよい。本発明においては、拡管前の非接合部の内径の最小値に対する拡管後の内径の増分を拡管率と呼び、次式で定義する。

0040

拡管率(%)=(d1−d0)×100/d0
ただし、d1;拡管後の非接合部の内径
d0;拡管前の非接合部の内径

0041

炭素鋼管そのものの拡管率は、拡管される炭素鋼管の寸法・形状、炭素鋼管の機械的性質、炭素鋼管内側の表面状態、および、拡管に用いるマンドレルの寸法・形状、表面状態、潤滑方法、拡管速度等により異なるものの、最大25%〜30%程度である。

0042

一般的に、工業製品として製造されている炭素鋼管には、その外径および厚さに対してそれぞれの許容差が定められている。例えば、日本工業規格圧力配管炭素鋼鋼管(JIS G3454)の熱間仕上継目無鋼管呼び径5B(スケジュール40)の炭素鋼管では、外径(139.8mm)に対して±1%(1.40mm)、厚さ(6.6mm)に対して+15%(0.99mm),−12.5%(0.83mm)の許容差が規定されている。

0043

したがって、このような寸法許容範囲内にある炭素鋼管30どうしを接合した炭素鋼管接合体32の接合部には、接合工程における接合面どうしの位置合わせの精度とあいまって、段差と呼ばれる形状的不連続部が不回避的に発生する。

0044

炭素鋼管接合体32の拡管工程において、接合部を拡管工具が通過する場合、このような形状的不連続部が応力集中源となり、炭素鋼管接合体32の接合部に割れが発生することがある。接合部に発生した割れは、拡管した炭素鋼管接合体32の機械的性質を劣化させるばかりでなく、使用環境によっては、接合部に発生した割れを起点として疲労亀裂伸展したり、腐食が進行して、拡管した炭素鋼管接合体32接合部の板厚を貫通することにより、原油、ガス等が漏洩することがある。

0045

さらに、油圧、水圧等の液圧を用いてマンドレル33を移動させて炭素鋼管接合体32を拡管する場合、炭素鋼管接合体32の接合部に発生した割れを起点として、液圧により接合部が破裂することがあり、マンドレル33がその位置で停止してしまい、それ以降の拡管を行うことが不可能となることがある。また、深さ数百mの坑道中に挿入された長さ数百mの炭素鋼管接合体32の接合部に割れが発生し、割れが発生した部位より先の炭素鋼管接合体が脱落してしまうと、拡管作業の継続が不可能となるばかりでなく、その衝撃により坑道が崩落したり、坑道と拡管された炭素鋼管接合体32の隙間から加圧用液体が噴出して極めて危険である。この場合、その復旧は非常に困難で、最悪の場合には、油井、ガス井を放棄することとなり、その損失は膨大となる。

0046

これらの壊滅的な損傷の原因となる炭素鋼管接合体32の接合部の割れ発生を抑制するためには、炭素鋼管接合体32の接合部における内外周両面の段差の最大値を、接合される炭素鋼管30の規格値厚さの25%以下にすることが好適である。以下、炭素鋼管30の規格厚さに対する炭素鋼管接合体32の接合部における内外周両面の段差の最大値の比率(%)を、最大段差と云う。この最大段差が接合される炭素鋼管30の規格値厚さの25%を超えると、炭素鋼管接合体32の接合部に割れが発生し易くなるので好ましくない。

0047

また、炭素鋼管30の拡管率は最大25%〜30%程度であるが、炭素鋼管接合体32の接合部に発生する段差を皆無とすることは不可能なので、炭素鋼管接合体32の拡管率は25%以下とすることが好ましい。炭素鋼管接合体32の拡管率が25%を超えると、炭素鋼管接合体32の接合部に割れが発生し易くなるので好ましくない。

0048

以下に本発明の作用について説明する。炭素鋼管接合体の内径よりも大きな外径を有する工具を炭素鋼管接合体内部に挿入して炭素鋼管接合体を拡管する加工方法において、炭素鋼管どうしを適正な条件範囲で接合し、接合部の最大段差が25%以下である炭素鋼管接合体を、25%以下の拡管率で拡管することにより、拡管工程において、炭素鋼管接合体の接合部に割れ等の欠陥が発生することなく、良好な特性の拡管された炭素鋼管接合体を得ることができる。

0049

ここで、拡管に適した炭素鋼管の適正な接合条件としては、インサート材として融点<1200℃で、厚さ≦80μmのNi基合金またはFe基合金を用い、炭素鋼管接合面の面粗さ≦Rmax.20μm、1250℃≦接合温度≦1330℃、30s≦接合温度における保持時間、2MPa≦加圧力≦4MPaなる条件で、非酸化性雰囲気中で接合することである。

0050

このような条件範囲で炭素鋼管どうしを接合することにより製造された炭素鋼管接合体は、接合部における最大段差が25%以下で、拡管率25%以下の拡管において、拡管中に炭素鋼管接合体の接合部に割れ等の欠陥が発生することはなく、特性の優れた拡管された炭素鋼管接合体を得ることができる。

0051

〔実施例1〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径139.8mm、厚さ6.6mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi系合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0052

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1300℃、保持時間60秒、加圧力3MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0053

〔実施例2〜3、比較例1〜2〕インサート材として、銅ろう箔BCu−1(JIS Z3262:融点1080℃、比較例1)、Ni基合金箔(Ni−1.5%B、融点1250℃、比較例2)、Fe合金箔(Fe−3%Si−3%B、融点1190℃、実施例2)、ニッケルろう箔BNi−5(JIS Z3265:融点1140℃、実施例3)とした以外は、実施例1と同様の条件で、炭素鋼管接合体の製造および拡管を行った。

0054

〔実施例4〕インサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ80μmのNi基合金箔を介挿し、他の条件は実施例1と同様として炭素鋼管接合体の製造および拡管を行った。

0055

〔実施例5〜6〕実施例5では、インサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃のNi基合金粉末を、厚さ50μmとなるように介挿し、実施例6では、実施例5と同一組成の鱗片状ニッケルろうを、厚さ50μmとなるように介挿した以外は、実施例1と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を行った。

0056

〔比較例3〕比較例3では、インサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ100μmのNi基合金箔を介挿した以外は、実施例1と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0057

実施例1〜6、および比較例1〜3で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した段差の最大値(以下「最大段差」という)を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表1および表2に示す。

0058

0059

0060

インサート材として融点1080℃、厚さ50μmの銅ろう箔を用いた比較例1では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、394MPaであり、接合界面で破断した。これは、銅ろう箔をインサート材として用いた場合、その融点が1200℃以下であるにもかかわらず、接合界面の機械的性質が十分ではなく、接合界面が拡管による変形に耐えることができず、接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0061

インサート材として融点1230℃、厚さ50μmのNi基合金箔を用いた比較例2では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、457MPaであり、接合界面で破断した。これは、Ni基合金箔をインサート材として用いたものの、その融点が1230℃と高く、接合界面において、溶融したインサート材中の元素の拡散が不十分で、良好な接合部の機械的性質が得られず、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0062

インサート材として融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を用いた実施例1では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、562MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いたNi基合金箔が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0063

インサート材として融点1190℃、厚さ50μmのFe基合金箔を用いた実施例2では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、561MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いたFe基合金箔が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0064

インサート材として融点1140℃、厚さ50μmのNi基合金箔を用いた実施例3では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、563MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いたNi基合金箔が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0065

インサート材として融点1050℃、厚さ80μmのNi基合金箔を用いた実施例4では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、561MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いた厚さ80μmのNi基合金箔が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0066

インサート材として融点1050℃、厚さ100μmのNi基合金箔を用いた比較例3では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、409MPaであり、接合界面で破断した。これは、インサート材として用いた厚さ100μmのNi基合金箔は溶融したものの、含有される元素の拡散は不十分で、良好な接合部の機械的性質が得られず、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管が低下したと考えられる。

0067

粉末状の融点1050℃のNi基合金を、厚さ50μmのインサート材として介挿した実施例5では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、562MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いた厚さ50μmのNi基合金粉末が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0068

鱗片状の融点1050℃のNi基合金を、厚さ50μmのインサート材として介挿した実施例6では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、559MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、インサート材として用いた厚さ50μmの鱗片状Ni基合金が完全に溶融し、含有される元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0069

以上の結果から、インサート材として、融点が1200℃より低く、厚さが80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用いて接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0070

〔実施例7〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径139.8mm、厚さ6.6mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.20μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi系合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0071

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1300℃、保持時間60秒、加圧力3MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0072

〔比較例4〕端面を表面粗さRmax.25μmとなるように加工した炭素鋼管を用いた以外は、実施例7と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を行った。

0073

〔比較例5〕端面を表面粗さRmax.50μmとなるように加工した炭素鋼管を用いた以外は、実施例7と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を行った。

0074

実施例7、および比較例4〜5で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表3に示す。

0075

0076

接合面の表面粗さRmax.20μmの炭素鋼管を用いた実施例7では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、560MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、接合面の表面粗さRmax.20μmの炭素鋼管を用いた場合、溶融したインサート材が接合面全体に行き渡り、かつ、接合界面において溶融したインサート材に含有される元素が十分拡散したことにより、接合界面の機械的性質が母材と同程度となり、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等になったと考えられる。

0077

接合面の表面粗さRmax.25μmの炭素鋼管を用いた比較例4では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、538MPaであり、接合界面で破断した。これは、溶融したインサート材が接合面全体に行き渡らなかったことにより、接合界面の機械的性質が不十分となり、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管が低下したと考えられる。

0078

接合面の表面粗さRmax.50μmの炭素鋼管を用いた比較例5では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、比較例4よりも低い372MPaであり、接合界面で破断した。これは、溶融したインサート材が接合面の凹部の隅々までは行き渡らなかったことにより、接合界面の機械的性質が不十分となり、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管が低下したと考えられる。

0079

以上の結果から、接合面の表面粗さRmax.20μm以下の炭素鋼管を用いて接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0080

〔実施例8〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.20μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0081

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1250℃、保持時間30秒、加圧力3MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0082

〔比較例6〕比較例6は、接合温度1200℃、保持時間300秒とした以外は実施例8と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0083

〔実施例9〜10、比較例7〕実施例9、実施例10、および、比較例7は、それぞれ、接合温度1300℃、接合温度1330℃、および、接合温度1350℃とした以外は、実施例8と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0084

実施例8〜10、および比較例6〜7で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表4に示す。

0085

0086

接合温度1200℃、保持時間300秒とした比較例6て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の外側表面には開口した割れは観察されなかったものの、内側表面には開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、539MPaであり、接合界面で破断した。これは、保持時間を300秒と長くしたにもかかわらず、接合温度1200℃て゛は、インサート材は溶融したものの、炭素鋼管接合部の内外表面間に生じた温度差により、接合部内側表面部では、溶融したインサート材中の元素の拡散が不十分となり、機械的性質が低下し、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0087

それぞれ、接合温を1250℃、1300℃、および、1330℃として接合した実施例8、9、および、10では、保持時間が30秒と短いにもかかわらず、いずれも拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面には開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、それぞれ560MPa、563MPa、および、561MPaであり、いずれも接合界面以外の母材で破断した。これは、保持時間が30秒と短いにもかかわらず、接合温度1250℃、1300℃、および、1330℃とした場合、溶融したインサート材中の元素が十分拡散して、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0088

接合温度1350℃、保持時間30秒とした比較例7て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内側表面には開口した割れは観察されなかったものの、外側表面には開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、522MPaであり、接合界面で破断した。これは、接合温度1350℃て゛は、溶融したインサート材中の元素は十分拡散したものの、接合部が過熱され、外表面部に部分的な溶損が発生して応力集中源となり、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0089

以上の結果から、接合温度を1250℃以上1330℃以下として接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0090

〔比較例8〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0091

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1330℃、保持時間10秒、加圧力4MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0092

〔実施例11〕実施例11は、接合温度1250℃、保持時間30秒、加圧力3MPaとした以外は、比較例8と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0093

比較例8および実施例11で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表5に示す。

0094

0095

接合温度1330℃、保持時間15秒、加圧力4MPaとした比較例8て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、427MPaであり、接合界面で破断した。これは、接合温度および加圧力を、それぞれ1330℃および4MPaと高くしたにもかかわらず、保持時間が15秒と短いので、溶融したインサート材中の元素の拡散が不十分で、良好な接合部の機械的性質が得られず、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0096

接合温度1250℃、保持時間30秒、加圧力2MPaとした実施例11て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、558MPaであり、接合界面以外の母材で破断した。これは、接合温度および加圧力を、それぞれ1250℃および2MPaと低くしたにもかかわらず、保持時間30秒であったので、溶融したインサート材中の元素が十分拡散され、良好な接合部の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0097

以上の結果から、接合温度における保持時間を30秒以上として接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0098

〔比較例9〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0099

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1330℃、保持時間300秒、加圧力1MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0100

〔実施例12〜13、比較例10〕実施例12は、接合温度1250℃、保持時間30秒、および加圧力2MPa、実施例13は、接合温度1300℃、保持時間60秒、および加圧力4MPa、および、比較例10は、接合温度1330℃、保持時間30秒、および加圧力5MPaとした以外は、比較例9と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0101

比較例9、実施例12、実施例13、および比較例10で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表6に示す。

0102

0103

接合温度1330℃、保持時間300秒、加圧力1MPaとして接合した比較例9では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、384MPaであり、接合界面で破断した。これは、接合温度1330℃と高く、保持時間を300秒と長くしたにもかかわらず、加圧力が1MPaと低い場合には、溶融したインサート材が接合面の凹凸を十分には充填できなかったことにより、接合界面の機械的性質が不十分となり、接合界面が拡管による変形に耐えることができず、接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0104

接合温度1250℃、保持時間30秒、加圧力2MPaとして接合した実施例12、および、接合温度1300℃、保持時間60秒、加圧力4MPaとして接合した実施例13では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、それぞれ、561MPaおよび563MPaであり、いずれも接合界面以外の母材で破断した。これは、加圧力を2MPa〜4MPaとしたことにより、溶融したインサート材が接合面の凹凸を十分に充填して拡散したことにより、良好な接合界面の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等になったと考えられる。

0105

接合温度1330℃、保持時間30秒、加圧力5MPaとして接合した比較例10では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、439MPaであり、接合界面で破断した。これは、加圧力が5MPaと過大であったことにより、接合部が過大に変形して応力集中源となったことにより、拡管中に接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0106

以上の結果から、加圧力を2MPa〜4MPaとして接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0107

〔比較例11〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0108

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1300℃、保持時間60秒、加圧力3MPaとし、大気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0109

〔実施例14〜15〕実施例14および実施例15は、それぞれ接合雰囲気をHeおよび真空中(<10−3mmHg)とした以外は、比較例11と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0110

比較例11、実施例14、および実施例15で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表7に示す。

0111

0112

大気中で接合した比較例11では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、311MPaであり、接合界面で破断した。これは、大気中で接合したため、接合界面に酸化物が形成され、接合界面の機械的性質が不十分となり、接合界面が拡管による変形に耐えることができず、接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0113

接合雰囲気をHeとして接合した実施例14、および、接合雰囲気を真空中とした実施例15では、拡管後の浸透探傷試験において、いずれも接合部の内外表面に開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、それぞれ、560MPaおよび564MPaであり、いずれも接合界面以外の母材で破断した。これは、接合雰囲気を非酸化性としたことにより、溶融したインサート材の元素の拡散に悪影響を及ぼす酸化物が接合界面に形成されなかったことにより、良好な接合界面の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等になったと考えられる。

0114

以上の結果から、接合雰囲気を非酸化性として接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0115

〔比較例12〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを最大段差5%で液相拡散接合した。

0116

なお、接合部の加熱方法には、周波数200kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1300℃、保持時間60秒、加圧力3MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が20%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0117

〔実施例16〜17〕実施例16および実施例17は、それぞれ周波数100kHzの高周波誘導加熱法および25kHzの高周波通電加熱法とした以外は、比較例12と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0118

比較例12、実施例16、および実施例17で得られた炭素鋼管接合体について、接合後に接合部の内外周両面に発生した最大段差を測定した。また、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表8に示す。

0119

0120

周波数200kHzの高周波誘導加熱法を用いて接合した比較例12では、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面に開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、337MPaであり、接合界面で破断した。これは、200kHzと高い周波数の高周波誘導加熱法を用いて接合したため、表皮効果により接合部の内外表面に温度差が生じたことにより、接合界面の機械的性質が不十分となり、接合界面が拡管による変形に耐えることができず、接合界面に割れが発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0121

周波数100kHzの高周波誘導加熱法を用いて接合した実施例15、および、周波数25kHzの高周波通電加熱法を用いて接合した実施例16では、拡管後の浸透探傷試験において、いずれも接合部の内外表面に開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、それぞれ、559MPaおよび561MPaであり、いずれも接合界面以外の母材で破断した。これは、周波数100kHz以下の高周波誘導加熱法あるいは高周波通電加熱法を用いて接合したことにより、表皮効果の悪影響が抑制され、良好な接合界面の機械的性質が得られ、拡管中に接合界面に割れ等の欠陥が発生しなかったことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等になったと考えられる。

0122

以上の結果から、周波数100kHz以下の高周波誘導加熱法あるいは高周波通電加熱法を用いて接合した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

0123

〔比較例13〕以下の手順により、炭素鋼管接合体を製造した。炭素鋼管として、日本工業規格の高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G3455,STS410)の外径165.2mm、厚さ7.1mmの鋼管を用い、端面を表面粗さRmax.12μmとなるように加工し、炭素鋼管の接合界面にインサート材としてニッケルろうBNi−3(JIS Z3265)相当の組成を有する融点1050℃、厚さ50μmのNi基合金箔を介挿し、炭素鋼管どうしを30%の最大段差が生じるように液相拡散接合した。

0124

なお、接合部の加熱方法には、周波数3kHzの高周波電流を用いた高周波誘導加熱法を用いた。また、接合条件は、接合温度1300℃、保持時間30秒、加圧力3MPaとし、Ar雰囲気中で接合を行った。さらに、得られた炭素鋼管接合体を、拡管率が25%となるようにマンドレルを用いて拡管した。

0125

〔実施例18〜19〕実施例18および実施例19は、それぞれ、最大段差を25%および10%とした以外は比較13と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0126

〔比較例14〕比較例14は、最大段差を5%、拡管率を30%した以外は、比較例13と同様の条件で炭素鋼管接合体の製造および拡管を実施した。

0127

実施例18〜19、および比較例13〜14で得られた炭素鋼管接合体について、拡管後の接合部表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を調べた。さらに、拡管した炭素鋼管接合体をアムスラー式万能試験機(200Tonf)を用いて引張試験を実施した。結果を表9に示す。

0128

0129

最大段差30%として拡管率25%で拡管した比較例13て゛は、拡管中に炭素鋼管接合体が接合界面から分離してしまったので、拡管した炭素鋼管接合体の引張試験は実施できなかった。

0130

それぞれ、最大段差25%および10%として拡管率25%で拡管した実施例例18および実施例19て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、いずれも接合部の内外表面には開口した割れは観察されなかった。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、それぞれ559MPaおよび561MPaであり、いずれも接合界面以外の母材で破断した。これは、接合界面の段差による応力集中はあるものの、拡管率25%以下では、拡管中に割れを発生させるには至らず、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が炭素鋼管母材と同等となったと考えられる。

0131

最大段差5%として拡管率30%で拡管した比較例14て゛は、拡管後の浸透探傷試験において、接合部の内外表面には開口した割れが観察された。また、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度は、521MPaであり、接合界面で破断した。これは、接合面の最大段差は5%と小さかったにもかかわらず、拡管率が30%と大きいため、拡管中に応力集中による割れが接合界面に発生したことに起因して、拡管した炭素鋼管接合体の引張強度が低下したと考えられる。

0132

以上の結果から、最大段差を25%以下として接合した炭素鋼管接合体を、拡管率25%以下で拡管した炭素鋼管接合体は、拡管工程において割れ等の欠陥が発生することなく拡管できることがわかった。また、拡管した炭素鋼管接合体は、炭素鋼管母材と同等の機械的性質を有していることがわかった。

発明の効果

0133

本発明は、インサート材として融点1200℃未満で厚さ80μm以下のNi基合金またはFe基合金を用い、該炭素鋼管接合面の面粗さRmax.20μm以下、接合温度1250℃以上1330℃以下、接合温度における保持時間30秒以上、加圧力2MPa以上4MPa以下なる条件で、非酸化性雰囲気中で炭素鋼管を突き合わせて接合することにより、最大段差が該炭素鋼管の厚さの25%以下、拡管率25%以下の範囲内で、拡管中に割れ等の欠陥が発生しない、機械的性質が良好で該炭素鋼管母材と同等である炭素鋼管接合体が得られるという効果がある。

0134

以上のように、本発明に係わる炭素鋼管接合体の製造方法および拡管方法によれば、接合部に割れ等の欠陥が発生することなく炭素鋼管接合体の拡管が可能となり、拡管後の機械的特性に優れた炭素鋼管接合体が得られるものであり、これを例えば、油井、ガス井で用いられるケーシングチューブ、プロダクションチューブ、コイルドチューブ等に応用すれば、石油、ガス掘削作業の大幅なコストダウンや、信頼性の向上に寄与するものであり、産業上その効果は極めて大きい発明である。

図面の簡単な説明

0135

図1本発明の一実施の形態に係わる炭素鋼管接合体の製造方法を示す工程図である。
図2本発明の一実施の形態に係わる炭素鋼管接合体の拡管方法を示す工程図である。

--

0136

30炭素鋼管
31インサート材
32 炭素鋼管接合体
33拡管工具
40把持装置
41高周波誘導加熱コイル
42非酸化性雰囲気
d0拡管前の非接合部の内径
d1 拡管後の非接合部の内径

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