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図面 (3)

課題

タンパク質N末端部分のアミノ酸配列を効率的に決定する方法およびタンパク質、ペプチド等のN末端アミノ基を選択的に修飾する方法を提供する。

解決手段

(1)アミノ末端が修飾されたタンパク質を化学的または生化学的手段により切断する工程、(2)(1)の工程で得られるペプチドにpH5以下でカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下でイソシアネート化合物を作用させる工程、(3)(2)の工程の前後におけるペプチドの質量分析を行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されたタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法

概要

背景

タンパク質アミノ酸配列の決定は、タンパク質の構造を確認、同定する手段として重要である。特にタンパク質のアミノ末端部分のアミノ酸配列を決定することは、有用タンパク質をコードする遺伝子の取得などにおいて重要である。天然に存在するタンパク質にはそのアミノ末端(以下、N末端と記す。)が修飾されている場合と修飾されていない2種類のタンパク質が存在する。N末端が修飾されていないタンパク質(以下、N末端未修飾タンパク質と記す。)、即ちN末端アミノ基に置換基を有さないタンパク質のN末端アミノ酸配列決定には、例えば、エドマン分解法が利用されている。一方、N末端が修飾されたタンパク質(以下、N末端修飾タンパク質と記す。)、即ち末端アミノ基の水素原子アセチル基等により置換されたタンパク質のN末端アミノ酸配列決定にはエドマン分解法が利用できないので、その目的のために質量分析法等が使用されている。例えば、タンパク質を消化酵素等を用いて切断し、得られるペプチドをそれぞれタンデム質量分析することにより各ペプチドのアミノ酸配列が決定できる。

N末端修飾タンパク質のN末端のアミノ酸配列を決定するためには、タンパク質の切断により生成するペプチドの中から、元のタンパク質のN末端由来のペプチドを特定し、このペプチドのアミノ酸配列を決定する必要がある。N末端修飾タンパク質のN末端由来のペプチドの特定方法としては、タンパク質の切断により生成するペプチド(以下、切断ペプチドと記す。)をBrCN活性セファロースカラム処理し、吸着されずに溶出されるペプチドを採取する方法(Anal. Biochem., 222, 210-216 (1994))や、切断ペプチドをアセチル化処理し、該アセチル化処理前後の試料逆相クロマトグラフィーにおける溶出位置を比較することにより元のタンパク質のN末端由来のペプチドを特定する方法(特開平8-27180)等が知られている。これらはいずれも切断ペプチドN末端α−アミノ基の他にリジン残基に由来するε−アミノ基が存在する。このリジン残基に由来するε−アミノ基も前記試薬等と同様に反応するので、タンパク質のN末端由来のペプチドを特定するためには、タンパク質のリジン残基のε−アミノ基を例えばスクシニル化等により予め修飾した上で、該タンパク質を切断し、切断ペプチドのN末端α−アミノ基を修飾し、特定することが必要とされていた。

一方、タンパク質あるいは切断ペプチドのN末端α−アミノ基の選択的修飾方法としては、グルカゴンにおいて無水酢酸を用いるアセチル化方法(Eur. J. Biochem. 60, 335-347, (1975))や、切断ペプチドに無水ヨード酢酸カップリング試薬として使用する方法(Anal. Chem., 65, 1703, (1993); Bioconjugate Chem., 1, 114-122, (1990))が知られているものの、これらの方法においてその選択性のためには、基質であるタンパク質あるいはペプチドと修飾試薬との使用比率を厳密に制御する必要があった。

概要

タンパク質のN末端部分のアミノ酸配列を効率的に決定する方法およびタンパク質、ペプチド等のN末端アミノ基を選択的に修飾する方法を提供する。

(1)アミノ末端が修飾されたタンパク質を化学的または生化学的手段により切断する工程、(2)(1)の工程で得られるペプチドにpH5以下でカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下でイソシアネート化合物を作用させる工程、(3)(2)の工程の前後におけるペプチドの質量分析を行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されたタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法

目的

本発明の目的は、タンパク質のN末端部分のアミノ酸配列を効率的に決定する方法およびタンパク質、ペプチド等のN末端アミノ基を選択的に修飾する方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

(1)アミノ末端が修飾されたタンパク質化学的または生化学的手段により切断する工程、(2)(1)の工程で得られるペプチドにpH5以下で一般式〔1〕(R1CO)2O 〔1〕(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕R2NCO 〔2〕(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、(3)(2)の工程の前後におけるペプチドの質量分析を行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されたタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法

請求項2

(1)アミノ末端が修飾されていないタンパク質にpH5以下で一般式〔1〕(R1CO)2O 〔1〕(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕R2NCO 〔2〕(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、(2)(1)の工程の前後におけるタンパク質それぞれを化学的または生化学的手段により切断する工程、(3)(2)の工程で得られるペプチドの質量分析をそれぞれ行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されていないタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法。

請求項3

(1)アミノ末端が修飾されたタンパク質を化学的または生化学的手段により切断する工程、(2)(1)の工程で得られるペプチドにpH5以下で一般式〔1〕(R1CO)2O 〔1〕(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕R2NCO 〔2〕(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、および(3)(2)の工程の前後におけるペプチドの質量分析を行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されたタンパク質のアミノ末端由来のペプチドの特定方法

請求項4

(1)アミノ末端が修飾されていないタンパク質にpH5以下で一般式〔1〕(R1CO)2O 〔1〕(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕R2NCO 〔2〕(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、(2)(1)の工程の前後におけるタンパク質それぞれを化学的または生化学的手段により切断する工程、および(3)(2)の工程で得られるペプチドの質量分析をそれぞれ行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されていないタンパク質のアミノ末端由来のペプチドの特定方法。

請求項5

(1)の工程に先立ちアミノ末端が修飾されたタンパク質に還元アルキル化を行う請求項1または3に記載の方法。

請求項6

(1)の工程に先立ちアミノ末端が修飾されていないタンパク質に還元Sアルキル化を行う請求項2または4に記載の方法。

請求項7

タンパク質またはペプチドのアミノ末端α-アミノ基をpH5以下で一般式〔1〕(R1CO)2O 〔1〕(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させることを特徴とするタンパク質またはペプチドのアミノ末端α−アミノ基のアシル化方法

請求項8

タンパク質またはペプチドのアミノ末端α-アミノ基をpH6以下で一般式〔2〕R2NCO 〔2〕(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させることを特徴とするタンパク質またはペプチドのアミノ末端α−アミノ基のカルバモイル化方法。

請求項9

カルボン酸無水物〔1〕のR1がC1−6アルキル基である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。

請求項10

イソシアネート化合物〔2〕のR2がフェニル基またはC1−6アルキル基である請求項1〜6または8のいずれかに記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、タンパク質アミノ末端アミノ酸配列決定方法及び、タンパク質またはペプチドのアミノ末端アミノ基の選択的修飾方法に関する。

背景技術

0002

タンパク質のアミノ酸配列の決定は、タンパク質の構造を確認、同定する手段として重要である。特にタンパク質のアミノ末端部分のアミノ酸配列を決定することは、有用タンパク質をコードする遺伝子の取得などにおいて重要である。天然に存在するタンパク質にはそのアミノ末端(以下、N末端と記す。)が修飾されている場合と修飾されていない2種類のタンパク質が存在する。N末端が修飾されていないタンパク質(以下、N末端未修飾タンパク質と記す。)、即ちN末端アミノ基に置換基を有さないタンパク質のN末端アミノ酸配列決定には、例えば、エドマン分解法が利用されている。一方、N末端が修飾されたタンパク質(以下、N末端修飾タンパク質と記す。)、即ち末端アミノ基の水素原子アセチル基等により置換されたタンパク質のN末端アミノ酸配列決定にはエドマン分解法が利用できないので、その目的のために質量分析法等が使用されている。例えば、タンパク質を消化酵素等を用いて切断し、得られるペプチドをそれぞれタンデム質量分析することにより各ペプチドのアミノ酸配列が決定できる。

0003

N末端修飾タンパク質のN末端のアミノ酸配列を決定するためには、タンパク質の切断により生成するペプチドの中から、元のタンパク質のN末端由来のペプチドを特定し、このペプチドのアミノ酸配列を決定する必要がある。N末端修飾タンパク質のN末端由来のペプチドの特定方法としては、タンパク質の切断により生成するペプチド(以下、切断ペプチドと記す。)をBrCN活性セファロースカラム処理し、吸着されずに溶出されるペプチドを採取する方法(Anal. Biochem., 222, 210-216 (1994))や、切断ペプチドをアセチル化処理し、該アセチル化処理前後の試料逆相クロマトグラフィーにおける溶出位置を比較することにより元のタンパク質のN末端由来のペプチドを特定する方法(特開平8-27180)等が知られている。これらはいずれも切断ペプチドN末端α−アミノ基の他にリジン残基に由来するε−アミノ基が存在する。このリジン残基に由来するε−アミノ基も前記試薬等と同様に反応するので、タンパク質のN末端由来のペプチドを特定するためには、タンパク質のリジン残基のε−アミノ基を例えばスクシニル化等により予め修飾した上で、該タンパク質を切断し、切断ペプチドのN末端α−アミノ基を修飾し、特定することが必要とされていた。

0004

一方、タンパク質あるいは切断ペプチドのN末端α−アミノ基の選択的修飾方法としては、グルカゴンにおいて無水酢酸を用いるアセチル化方法(Eur. J. Biochem. 60, 335-347, (1975))や、切断ペプチドに無水ヨード酢酸カップリング試薬として使用する方法(Anal. Chem., 65, 1703, (1993); Bioconjugate Chem., 1, 114-122, (1990))が知られているものの、これらの方法においてその選択性のためには、基質であるタンパク質あるいはペプチドと修飾試薬との使用比率を厳密に制御する必要があった。

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の目的は、タンパク質のN末端部分のアミノ酸配列を効率的に決定する方法およびタンパク質、ペプチド等のN末端アミノ基を選択的に修飾する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

このような状況下、本発明者らはタンパク質のN末端アミノ酸配列の決定方法につき検討した結果、タンパク質または切断ペプチドに対する修飾剤の使用量を厳密に制御しなくとも比較的広い範囲で、ε−アミノ基共存下においてもN末端アミノ基を極めて選択性良く修飾できる方法を見出すとともに、この方法をタンパク質のN末端アミノ酸配列決定に適用することにより効率的にその目的が達成されることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、(1)アミノ末端が修飾されたタンパク質を化学的または生化学的手段により切断する工程、(2)(1)の工程で得られるペプチドにpH5以下で一般式〔1〕
(R1CO)2O 〔1〕
(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕
R2NCO 〔2〕
(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、(3)(2)の工程の前後におけるペプチドの質量分析を行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されたタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法および

0007

(a)アミノ末端が修飾されていないタンパク質にpH5以下で一般式〔1〕
(R1CO)2O 〔1〕
(式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカルボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式〔2〕
R2NCO 〔2〕
(式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わす。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工程、(b)(a)の工程の前後におけるタンパク質それぞれを化学的または生化学的手段により切断する工程、(c)(b)の工程で得られるペプチドの質量分析をそれぞれ行い、両者を比較してタンパク質のアミノ末端由来のペプチドを特定する工程、および(d)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むことを特徴とするアミノ末端が修飾されていないタンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の決定方法に関するものである。

発明を実施するための最良の形態

0008

以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてタンパク質とは、α−アミノ酸ペプチド結合により連結したポリペプチド鎖からなる高分子化合物を言い、通常は分子量4000以上を言う。ペプチドとは、2個以上のα−アミノ酸がペプチド結合により結合したものを言い、通常はアミノ酸数が50以下のものを言う。アミノ末端が修飾されたとは、タンパク質またはペプチドのアミノ末端のアミノ基の少なくとも1個の水素原子がアシル基等により置換されていることを言う。

0009

1.N末端修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法
(1)N末端修飾タンパク質の切断工程
N末端修飾タンパク質の切断方法は特に限定されず、例えば、A Practical Guide to Protein and Peptide Purification for Microsequencing, Second Edition, Academic Press, (1993)やMethodsin Enzymology, 193, 389-412, (1990)等に記載の化学的切断方法、消化酵素を用いた生化学的切断方法等をあげることができる。具体的には例えば、化学的切断方法としてはBrCNによる切断方法が挙げられ、消化酵素による生化学的切断方法としては、トリプシンキモトリプシンなどを用いた消化を挙げることができる。N末端修飾タンパク質を切断することにより、該タンパク質が切断された通常は分子量3000以下のペプチドが得られる。また、N末端修飾タンパク質がそれを構成するアミノ酸としてシステインを含む場合には、予め例えばヨードアセトアミドや4-ビニルピリジンなどにより還元Sアルキル化処理を行った後、前記タンパク質の切断を行うことが実用上好ましい。この還元Sアルキル化処理自体は公知であり、例えば、A Practical Guideto Protein and Peptide Purification for Microsequencing, Second Edition,Academic Press, (1993)等に記載の方法に準じて行うことができる。

0010

(2)ペプチドへのカルボン酸無水物またはイソシアネート化合物処理工程
i)カルボン酸無水物〔1〕処理
前記工程で得られるペプチドにpH5以下でカルボン酸無水物〔1〕を作用させることによりN末端が選択的にアシル化されたペプチドが得られる。カルボン酸無水物〔1〕におけるR1は直鎖または分岐アルキル基であり、好ましくはメチル基エチル基プロピル基ブチル基、ペンチル基ヘキシル基等のC1〜6の直鎖または分岐アルキル基を挙げることができ、具体的には、無水酢酸、プロピオン酸無水物酪酸無水物吉草酸無水物等を挙げることができる。

0011

本工程の反応はpH5以下、好ましくはpH2〜5の範囲、さらに好ましくはpH3〜5の範囲で行われる。本工程において、通常は前記pHを保持するための緩衝液溶媒として使用する。該溶媒としては、酢酸水溶液、ぎ酸水溶液ピリジン酢酸緩衝液トリフルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡便さの点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチドおよび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、カルボン酸無水物〔1〕またはそのテトラヒドロフラン等の溶液を添加することにより行われる。反応は、選択性の点から約10℃以下で、使用する溶媒が凍らない範囲の温度で行うことが好ましい。反応時間は通常、1〜60分程度である。カルボン酸無水物〔1〕の反応系内の濃度は反応系内の初期濃度として通常、pH5で反応を行う場合には、約10〜30mM程度、pH3.3で反応を行う場合には、約60〜300mM程度である。本工程において反応後、反応液からペプチドを回収する。例えば、反応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、反応液を減圧下に留去すればよい。不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合には、脱塩処理を行った後溶媒を減圧留去すればよい。本工程の処理を行うことにより、N末端のみが選択的に使用するカルボン酸無水物〔1〕に対応してアシル化されたペプチドを製造することができる。

0012

ii)イソシアネート化合物〔2〕処理
N末端修飾タンパク質の切断により得られるペプチドに、pH6以下でイソシアネート化合物〔2〕を作用させることにより、N末端アミノ基が選択的にカルバモイル化されたペプチドが得られる。イソシアネート化合物〔2〕におけるR2は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル基である。置換されていてもよいアルキル基としては、例えばフッ素原子塩素原子臭素原子、よう素原子等のハロゲン原子で置換されていても良いアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC1〜6アルキル基、クロロメチル基ヨードメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基ヨードエチル基等のC1〜6ハロアルキル基を挙げることができる。置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基としては、例えばフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基等のハロゲン置換フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のナフチル基、1−ヨードナフチル基、2−クロロナフチル基等のハロゲン置換ナフチル基、フルオレセイン基、ダンシルアミノフェニル基等の蛍光性の置換基を有するフェニル基等を挙げることができる。置換されていても良いピリジル基としては、例えば2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等のピリジル基や、2−クロロ−4−ピリジル基、3,5−ジフルオロ−2−ピリジル基等のハロゲン置換ピリジル基を挙げることができる。イソシアネート化合物〔2〕としては具体的には、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ナフチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、エチルイソシアネート、4−ピリジルイソシアネート、3−ピリジルイソシアネート、フルオレセインイソシアナート、ダンシルアミノフェニルイソシアナート等を挙げることができる。本工程の反応はpH6以下で行われ、好ましくはpH約3〜6の範囲、さらに好ましくはpH約5〜6で行われる。

0013

本工程において、通常は前記pHを保持するための緩衝液を溶媒として使用する。該溶媒としては、酢酸水溶液、ぎ酸水溶液、ピリジン−酢酸緩衝液、トリフルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡便さの点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチドおよび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、イソシアネート化合物〔2〕またはそのテトラヒドロフラン等の溶液を添加することにより行われる。反応は、例えば使用する溶媒が凍らない程度の低温から50℃程度の範囲を挙げることができる。反応時間は通常、1〜60分程度である。イソシアネート化合物〔2〕の反応系内の濃度は反応系内の初期濃度として通常、pH6で反応を行う場合には、約2〜300mM程度である。本工程の反応後、反応液からペプチドを回収する。例えば、反応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、反応液を減圧下に留去すればよい。不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合には、脱塩処理を行った後溶媒を減圧留去すればよい。本工程の処理を行うことにより、N末端のみが選択的に、使用するイソシアネート化合物〔2〕に対応してカルバモイル化されたペプチドを製造することができる。

0014

(3)タンパク質のアミノ末端由来のペプチドの特定工程
(2)の工程の前におけるペプチドの質量分析及び(2)の工程の後におけるペプチドの質量分析をそれぞれ行い、質量変化していないペプチドを特定することにより、これをN末端修飾タンパク質のN末端に由来するペプチドであるとすることができる。例えば、ペプチドを無水酢酸により処理した場合には、N末端修飾タンパク質のN末端を含むペプチドは該処理により質量変化はしないので、(2)の工程の前後で同じ質量のピークが検出されるのに対し、N末端修飾タンパク質のN末端を含まないペプチドにおいては、該ペプチドのN末端のα-アミノ基がアセチル化されることにより42の質量増加が検出される。また、例えば、イソシアン酸フェニルで処理した場合においては、N末端修飾タンパク質のN末端を含まないペプチドは119の質量増加が検出される。

0015

質量分析の方法としては、ペプチドの質量を分析できる方法であればよく、質量分析装置の種類やイオン化法は特に限定されない。例えば、二重収束型の質量分析装置を用いてFABイオン化法にて分析することができる。
(4)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程
かくして特定されたタンパク質のN末端由来のペプチドを、例えば、タンデム質量分析に供することにより、そのアミノ酸配列を決めることができる。タンデム質量分析の方法としては、(3)の工程で適用可能な方法を同様に用いることができる。

0016

2.N末端未修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法
(a)N末端未修飾タンパク質へのカルボン酸無水物またはイソシアネート化合物処理工程
i)カルボン酸無水物〔1〕処理
N末端未修飾タンパク質にpH5以下でカルボン酸無水物〔1〕を作用させることによりN末端が選択的に使用したカルボン酸無水物〔1〕に対応してアシル化されたタンパク質が得られる。本工程の処理においては、前記1.(2)i)の工程におけるペプチドに代えて、N末端未修飾タンパク質を用いる以外は1.(2)i)の工程の方法を同様に適用することができる。

0017

ii)イソシアネート化合物〔2〕処理
N末端未修飾タンパク質にpH6以下でイソシアネート化合物〔2〕を作用させることによりN末端が選択的に使用したイソシアネート化合物〔2〕に対応してカルバモイル化されたタンパク質が得られる。本工程の処理においては、前記1.(2) ii)の工程におけるペプチドに代えて、N末端未修飾タンパク質を用いる以外は1.(2) ii)の工程の方法を同様に適用することができる。また、N末端未修飾タンパク質がそれを構成するアミノ酸としてシステインを含む場合には、予め例えばヨードアセトアミドや4-ビニルピリジンなどにより還元Sアルキル化処理を行った後、前記タンパク質へのカルボン酸無水物〔1〕またはイソシアネート化合物〔2〕処理を行うことが実用上好ましい。この還元Sアルキル化処理も前記したN末端修飾タンパク質に対する処理と同様に行うことができる。

0018

(b)(a)の工程の前後におけるタンパク質の切断工程
(a)の工程の原料として用いられるN末端未修飾タンパク質および、(a)の工程により得られたタンパク質をれぞれを化学的または生化学的手段により切断することにより、それぞれのタンパク質が切断された通常は分子量3000以下のペプチドが得られる。該タンパク質の切断方法については、1.(1)の工程において用いたN末端修飾タンパク質に代えて、(a)の工程の原料として用いられるN末端未修飾タンパク質および、(a)の工程により得られたタンパク質を用いる以外は1.(1)の工程の方法を同様に適用することができる。

0019

(c)タンパク質のアミノ末端由来のペプチドの特定工程
(b)の工程で得られる、・(a)の工程の原料として用いられるN末端未修飾タンパク質を切断して得られるペプチドの質量分析および、・(a)の工程により得られたタンパク質を切断して得られるペプチドの質量分析を行い、両者を比較して質量変化が検出されるペプチドを特定することにより、これをタンパク質のN末端に由来するペプチドであると特定することができる。例えば、タンパク質を上記のようにN末端選択的なアセチル化処理した場合は、タンパク質のN末端を含まないペプチドにおいては、処理の前後で質量変化がないのに対し、タンパク質のN末端を含むペプチドにおいては、そのN末端のα-アミノ基のアセチル化により42の質量増加が検出される。また、例えば、イソシアン酸フェニルで処理した場合、タンパク質のN末端を含むペプチドは119の質量増加が検出される。ペプチドの質量分析の方法としてはペプチドの質量変化が分析できる方法であればよく、質量分析装置の種類やイオン化法は特に限定されない。例えば、二重収束型の質量分析装置を用いてFABイオン化法にて切断ペプチドの質量変化を検出することができる。

0020

(d)該特定されたペプチドのアミノ酸配列を決定する工程
かくして特定されたタンパク質のN末端由来のペプチドを、例えば、タンデム質量分析に供することにより、そのアミノ酸配列を決めることができる。タンデム質量分析の方法としては、(c)の工程で適用可能な方法を同様に用いることができる。尚、本発明のN末端修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法および、N末端未修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法については、電気泳動によって分離されたタンパク質をゲルに保持させた状態で適用することも可能である。

0021

本発明のN末端修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法および、N末端未修飾タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列決定方法は、多検体並列処理が可能であり、並列処理した多検体試料については質量分析法にて迅速に測定することができる。さらに、これらの工程は自動化が可能であるため、多検体を迅速に処理することができる。

0022

上記に示した方法により、多くのタンパク質のN末端配列を迅速に決定することが可能となり、例えばゲノム配列と対比することにより、開始コドン確定翻訳開始シグナルの同定が迅速にできる。

0023

さらに、タンパク質一般について、N末端α-アミノ基選択的な修飾処理を施し、該処理前後の質量を質量分析法で分析することにより、処理前後で質量の変化が検出されないタンパク質を元来そのN末端が修飾されているタンパク質であると判定することもでき、例えば、そのN末端アミノ酸配列の解析にあたって適当な方法を事前に選択することができる。また、タンパク質一般について、上記と同様にN末端α-アミノ基選択的な修飾処理を施し、該処理前後のタンパク質を等電点電気泳動法二次元電気泳動法で分析することにより、処理前後で等電点の変化が検出されないタンパク質を元来そのN末端が修飾されているタンパク質であると判定することもできる。

0024

以下、本発明を参考例および実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
リジンを含有し、かつ、N末端が修飾されていないペプチドとしてダイノルフィンA(アミノ酸配列;YGGFLRRIRPKLKWDNQ、ペプチド研究所製)100pmolを0.1Mピリジン-酢酸(pH6.0)、0.1Mピリジン-酢酸(pH5.0)、0.1%酢酸水溶液(pH3.3)および1%酢酸水溶液(pH2.7)各12μLにそれぞれ溶解し、上で1分間インキュベートした後、0.005M〜5Mの無水酢酸/無水テトラヒドロフランを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。該反応液から溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用試料とした。質量分析は二重収束型質量分析計日本電子型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用した。上記試料を水・メタノール・酢酸(50・50・1)2μLに溶解し、該試料溶液1μLをグリセロールチオグリセロール(1・1)1μLと混合して上記分析計に供し、FAB-MSおよびFAB-MS/MS測定を行った。無水酢酸処理後に原料のダイノルフィンAに比し質量が42増加したピークについてMS/MS分析を行ったところ、N末端α-アミノ基のみがアセチル化されたダイノルフィンAであることが確認できた。各pHおよび無水酢酸量条件におけるN末端のみアセチル化されたダイノルフィンAの選択率を表1に示す。

0025

表1中の記号の説明
N末端のみアセチル化されたダイノルフィンAの選択率
◎:75%超
○:70%超75%以下
△:60%超70%以下
×:60%以下

0026

0027

実施例2
リジンを含有し、かつ、N末端が修飾されていないペプチドとしてダイノルフィンA(アミノ酸配列;YGGFLRRIRPKLKWDNQ、ペプチド研究所製)100pmolを0.1Mピリジン-酢酸(pH6.0)、0.1Mピリジン-酢酸(pH5.0)および0.1%酢酸水溶液(pH3.3)各12μLにそれぞれ溶解し、氷上で1分間インキュベートした後、0.1Mイソシアン酸フェニル/無水テトラヒドロフランを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。該反応液から溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用試料とした。質量分析は二重収束型質量分析計(日本電子、型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用した。上記試料を水・メタノール・酢酸(50・50・1)2μLに溶解し、該試料溶液1μLをグリセロール・チオグリセロール(1・1)1μLと混合して上記分析計に供し、FAB-MSおよびFAB-MS/MS測定を行った。その結果、使用した全ての溶媒において原料のダイノルフィンAに比し質量が119増加したピークが検出された。MS/MS分析を行ったところ、該ピークがN末端α-アミノ基のみが修飾されたダイノルフィンAであることが確認できた。

0028

実施例3
(1)N末端が修飾されたタンパク質であるウマチトクロムc(シグマ社製)200μgを1%炭酸水素アンモニウム溶液200μLに溶解し、1mg/mLキモトリプシン4μLを添加し、37℃で18時間インキュベートした。
(2) 前記キモトリプシン消化物の反応液10μLを減圧濃縮し、残渣に0.1Mピリジン-酢酸(pH 5.0)を24μL添加し、半量をアセチル化用検体として以下の処理を行い、半量をアセチル化しないコントロール用検体として分取した。アセチル化検体は、氷上で1分間インキュベートした後、0.1M無水酢酸/無水テトラヒドロフランを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。反応後、溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用反応試料とした。別途前記コントロール用検体の溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用コントロール試料とした。質量分析は実施例1と同じ装置を使用し、各試料を水・メタノール・酢酸(50・50・1)2μLに溶解し、試料溶液1μLをグリセロール・チオグリセロール(1・1)1μLと混合して質量分析計に供し、FAB-MS測定を行った。図1にアセチル化処理前後の試料のFAB-MSスペクトルを示す。コントロール試料において検出されたウマチトクロムc由来のピークのうちm/z1162.5のピークはアセチル化処理後の試料においても検出されたが、それ以外のピークはアセチル化処理後の試料において検出されず、それぞれ質量が42増加したピークが検出された。従って、m/z1162.5のピークがウマチトクロムcのN末端由来のペプチドと特定できた。このm/z1162.5ピークのFAB-MS/MSスペクトルを取得し、N末端構造をAc-GDVEKGKKIFと決定した。尚、このN末端構造は既に知られているチトクロムcのN末端構造と一致していた。

0029

実施例4
実施例3の(1)で得られたキモトリプシン消化物の反応液2μLを減圧濃縮し、残渣に0.1Mピリジン-酢酸(pH 6.0)を24μL添加し、半量をイソシアン酸フェニル処理用検体として以下の処理を行い、半量をイソシアン酸フェニルで処理しないコントロール用検体として分取した。前記イソシアン酸フェニル処理用検体を氷上で1分間インキュベートした後、これに0.1Mイソシアン酸フェニル/無水テトラヒドロフランを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。反応後、溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用反応試料とした。別途前記コントロール用検体の溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用コントロール試料とした。質量分析は実施例1と同じ装置を使用し、試料を水・メタノール・酢酸(50・50・1)2μLに溶解し、試料溶液1μLをグリセロール・チオグリセロール(1・1)1μLと混合して質量分析計に供し、FAB-MS測定した。図2にイソシアン酸フェニル処理前後の試料のFAB-MSスペクトルを示す。コントロール試料において検出されたウマチトクロムc由来のピークのうちm/z1162.5のピークはイソシアン酸フェニル処理後の試料においても検出されたが、それ以外のピークはイソシアン酸フェニル処理後の試料において検出されず、それぞれ質量が119増加したピークが検出された。従って、m/z1162.5のピークがウマチトクロムcのN末端由来のペプチドと同定できた。

0030

実施例5
(1)N末端が修飾されていないタンパク質である組換えヒト成長ホルモン(以下、hGHと記す。)200pmolを0.1Mピリジン-酢酸(pH 5.0)12μLに溶解し、氷上で1分間インキュベートした後、0.1M無水酢酸/無水テトラヒドロフランを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。反応後、溶媒を減圧下に留去した。
(2) (1)で得られたN末端選択的アセチル化処理したhGH200pmolを100mM炭酸水素アンモニウム溶液50μLに溶解し、0.1mg/mLトリプシン5μLを添加し、37℃で18時間インキュベートした。前記トリプシン消化物の反応液を減圧濃縮し、反応試料を調製した。
(3)(1)で得られたN末端選択的アセチル化処理したhGHに代えて、(1)の原料として用いたhGHを用いた以外は(2)と同様の操作を行い、コントロール試料を調製した。
(4)質量分析は二重収束型質量分析計(日本電子、型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用した。反応試料、コントロール試料のそれぞれを水・メタノール・酢酸(50・50・1)4μLに溶解し、試料溶液1μLをグリセロール・チオグリセロール(1・1)1μLと混合して質量分析計に供し、FAB-MS測定した。
図3にアセチル化処理前後の試料(処理前:コントロール試料、処理後:反応試料)のFAB-MSスペクトルを示す。コントロール試料において検出されたhGH由来のピークのうちm/z930.4のピークは反応試料において質量が42増加したピークとなって検出された。従って、m/z930.4のピークがhGHのN末端由来のペプチドと特定できた。このm/z930.4ピークのFAB-MS/MSスペクトルを取得し、N末端構造をFPTIPLSRと決定した。尚、該構造は既に知られているhGHのN末端構造と一致した。

0031

実施例6
(1)N末端が修飾されていないタンパク質である組換えヒト成長ホルモン(以下、hGHと記す。)を試料として使用して電気泳動ゲル上のタンパク質のN末端の解析を行った。電気泳動はMultiphorIIシステムファルマシア)、SDS-PAGE用ゲルExcelGel SDS gradient 8-18(ファルマシア)を用い、hGH試料0.5μgを泳動した。泳動後のゲルはクーマシーブリリアントブルー(以下、CBBと記す。)を水/メタノール/酢酸(40・60・1)で0.1%濃度に調製した溶液で10分間浸して染色し、水/メタノール/酢酸(40・60・1)中で1時間浸して脱色を行った。CBB染色操作後、hGHに相当するバンド切り出した。
(2)システインの還元アルキル化処理を以下のように行った。ゲルを1.5mLのチューブに入れ、50μLの0.1M炭酸水素アンモニウム溶液と50μLのアセトニトリルを添加して30分浸透した。この操作を3回繰り返した後、10mMジチオスレイトール/0.1M炭酸水素アンモニウム溶液を添加して1時間56℃で保温した。溶液を廃棄した後、55mMヨードアセトアミド/0.1M炭酸水素アンモニウムを添加して室温で45分反応させた。溶液を廃棄した後、50μLの0.1M炭酸水素アンモニウム溶液と50μLのアセトニトリルを添加して30分浸透する操作を3回繰り返し、ゲルに含まれている溶媒を減圧下で留去した。
(3)前項により得られた二組の還元アルキル化処理したゲルを準備し、一つはイソシアン酸フェニルで処理し、もう一つはイソシアン酸フェニルで処理しないコントロールゲルとした。還元アルキル化処理したゲルに12μLの0.1Mピリジン−酢酸(pH6.0)と5μLの0.1M イソシアン酸フェニル/無水テトラヒドロフランを添加し、氷中で10分反応させた後、減圧下で溶媒を留去することでフェニルイソシアネート処理した。
(4) (3)で得られたイソシアン酸フェニル処理したゲルおよびコントロールゲルに0.1mg/mLのトリプシンを5μLと15μLの0.1M炭酸水素アンモニウムを添加して、37℃で18時間反応させることによってタンパク質を切断した。切断後、ゲルに水/アセトニトリル/ぎ酸(50・50・5)を50μL添加して40分間浸透させ、上清を集める操作を2回繰り返して、切断ペプチドを抽出し、溶媒を減圧下に留去した後、残渣を質量分析に供した。
質量分析は二重収束型質量分析計(日本電子、型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用した。グリセロール・チオグリセロール(1・1)を水・メタノール・酢酸(50・50・1)で20%に希釈したマトリックスを使用した。試料を水・メタノール・酢酸(50・50・1)1μLに溶解し、試料溶液1μLをマトリックス1μLと混合して質量分析計に供し、FAB-MS測定した。コントロール試料において検出されたhGH由来のピークのうちm/z930.4のピークはイソシアン酸フェニル処理後の試料において質量が119増加したピークが検出された。従って、m/z930.4のピークがhGHのN末端由来のペプチドと特定できた。このm/z930.4ピークのFAB-MS/MSスペクトルを取得し、N末端構造をFPTIPLSRと決定した。尚、この構造は既に知られているhGHのN末端構造と一致した。

0032

実施例7
実施例1において無水酢酸に代えて表2に記載のイソシアネート化合物〔2〕を用い、表2に記載した条件とした以外は実施例1と同様に実験を行った。結果を表2に示す。

0033

ID=000003HE=045 WI=092 LX=0590 LY=2350
*1:シアネート化合物添加量を添加したシアネート化合物/THF5μL中のシアネート化合物のモル濃度(mM)として表示する。
*2:N末端のみアセチル化されたダイノルフィンAの選択率
◎:75%超
○:70%超75%以下
△:60%超70%以下
×:60%以下

発明の効果

0034

本発明によれば、タンパク質のN末端アミノ酸配列を効率的に決定する方法を提供できる。また、タンパク質やペプチドのN末端アミノ基を効率的に修飾することが可能となる。

図面の簡単な説明

0035

図1ウマチトクロムcのキモトリプシン消化物について、N末端α-アミノ基選択的アセチル化処理前後の試料の質量スペクトルを対比して示す。上段はアセチル化処理前の試料の質量スペクトルであり、図中の●印をつけたピークがウマチトクロムcのキモトリプシン消化物に由来する。下段はアセチル化処理後の試料の質量スペクトルである。
図2 ウマチトクロムcのキモトリプシン消化物について、N末端α-アミノ基選択的なイソシアン酸フェニル処理前後の試料の質量スペクトルを対比して示す。上段はイソシアン酸フェニル処理前の試料の質量スペクトルであり、図中の●印をつけたピークがウマチトクロムcのキモトリプシン消化物に由来する。下段はイソシアン酸フェニル処理後の試料の質量スペクトルである。
図3 N末端α-アミノ基選択的アセチル化処理前後のhGHのトリプシン消化物について、質量スペクトルを対比して示す。上段はアセチル化処理前の試料の質量スペクトルであり、図中の●印をつけたピークがhGHのトリプシン消化物に由来する。下段はアセチル化処理後の試料の質量スペクトルである。

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