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技術 低硫黄含有共晶組成鉄およびその製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 川畑將秀吉田敏樹
出願日 1999年6月3日 (21年0ヶ月経過) 出願番号 1999-156022
公開日 2000年12月12日 (19年6ヶ月経過) 公開番号 2000-345277
状態 未査定
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼
主要キーワード 球状晶 スチール片 最小含有量 溶解原材料 炭素硫黄 粉粒状物 球状化処理後 球状化処理剤
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図面 (11)

課題

低硫黄含有共晶組成鉄およびその製造方法を提供すること。

解決手段

本発明の低硫黄含有共晶組成鉄は、重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、その他組成、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足し、その他組成のうちの硫黄含有量が0.002%以下であることを特徴とする。この低硫黄含有共晶組成鉄は、銑鉄または球状黒鉛鋳鉄である。また、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法は、共晶組成の溶湯球状化処理した後、該溶湯に攪拌を付与しながら1250〜1350℃の温度に所定時間保持することにより硫黄含有量を0.002重量%以下にすることを特徴とする。

概要

背景

硫黄溶解原材料中に元来含まれており、製造される金属材料不可避的に含有されてくる。硫黄は、金属材料の機械的強度脆弱にし、また鋳造欠陥発生原因ともなること等から、通常金属材料中のS含有量をできるだけ低く目標とする。機械切削性を重要視するために意図的にS含有量を高くした快削鋼、例えばAISI記号B1113ではS0.24〜0.33(%)、は特殊な例である。

JIS G 2202(鋳物用銑鉄化学成分規格)では1種〜3種で化学成分が規格化されている。この規格のうち3種1号Dでは、C:3.4以上、Si:1.81〜3.50、Mn:0.40以下、P:0.100以下、S:0.040以下、Cr:0.030以下、また同規格3種2号では、C:3.4以上、Si:3.50以下、Mn:0.50以下、P:0.150以下、S:0.045以下、Cr:0.035以下と規格化されている。Sについて言えば銑鉄ではS上限が0.045(%)と規格されている。

また、JIS G 2201(製鋼用銑鉄の化学成分規格)の3種1号は、砂鉄原料として電気炉によって製造される銑鉄で、Mnの値によってA及びBの2種類に分けられて規格化されている。この3種1号Aの化学成分は、C:3.50以上、Si:0.50以下、Mn:0.40以下、P:0.350以下、S:0.050以下、Cr:0.02以下と規格化されている。また3種1号Bの化学成分では、Mn:0.41以下との規格値以外の化学成分は3種1号Aでの規格値と同じである。以上のようにSについてみると、鋳物用銑鉄ではS上限値が0.045(%)、製鋼用銑鉄ではS上限値が0.050(%)と規格化されている。JISではS下限値は規格化はなされていないが、通常製造する金属材料へのSの悪影響がなくなる許され得る含有量まで作業性や経済性等を考慮して低くすることが行われている。

溶解材料の配合計算において、S含有量が極めて低い高純度銑鉄の配合量を増加すると、金属材料中のS含有量を低目、例えば0.01重量%以下、にすることができるが、製造コストが高くなり経済性に劣る。もっとも、S含有量が極めて低い高純度銑鉄は市場入手が困難になりつつあり、また非常に高価でもある。このような実情から、通常製造コストに見合った銑鉄の配合量(場合によっては、銑鉄の配合量をほとんどゼロとすることもありうる。)により溶解した溶融鉄(以下、「溶湯」と記す。)から脱硫して、目標とするS含有量とすることが行われている。例えば、球状黒鉛鋳鉄を製造する場合には、溶湯をMg系球状化処理剤で処理してMgSを生成、浮遊させて脱硫することが、通常行なわれており、鋳造欠陥発生防止や黒鉛球状化の確保の点から溶湯中S量を約0.030%以下とすることが好ましいとされている。溶湯からの脱硫率90%程度の完全ともいえる脱硫は従来から難しいところであるが、多くは球状黒鉛鋳鉄溶湯からの脱硫について各種各様の提案がなされている。

例えば、Mg系球状化処理剤を使用して、溶融鉄からの脱硫を行う従来技術として、特開昭50−44910号公報および特開昭50−35017号公報がある。まず、前記特開昭50−44910号公報には、マグネシウム含漬多孔性鉄系金属体を用いて溶融鉄の脱硫を行う技術を開示している。この開示技術では、マグネシウム含漬ブリケットを溶融鉄に使用した例として、初期硫黄含有量0.041%を含む溶融鉄を2650°F(換算値約1454℃)で180秒の反応処理をした結果、最終硫黄含有量0.013%(脱硫率を計算すると、約68%である。)となった、との記述がある。また、初期硫黄含有量0.03%を含む溶融鉄を2580°F(換算値約1416℃)で90秒の反応処理をした結果、最終硫黄含有量0.010%(脱硫率を計算すると、約67%である。)となった、との記述がある。

次に、前記特開昭50−35017号公報には、「Mg系黒鉛球状化剤を用いる球状黒鉛鋳鉄の製造において、溶湯の脱硫処理により生じ、かつ溶湯表面を覆うスラグが、黒鉛球状化処理時のMgの蒸散及び酸化を防止し得る厚さを有する層を形成するようにし、該スラグ層下の溶湯を攪拌すると共に、前記スラグより比重の大なるMg系黒鉛球状化剤をもって黒鉛球状化処理することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造法。」を開示している。

前記特開昭50−35017号公報の開示技術での実施例では、「C3.1〜3.8%、Si1.0〜2.0%、Mn0.2〜1.5%、Fe0.08%、S0.06%、残部実質的にFeの1420℃における溶湯に、カルシウムカーバイト(比重1.2)を1%添加し、攪拌機によって4分間攪拌脱硫してS0.004%とした。このときの脱硫滓層の厚みは50mmであった。これを除滓せず、攪拌機を回転させながら、1380℃でFe−Si−Mg合金(Mg5%、比重約4.8)を5%添加し(溶湯に対するMg量は0.025%)、1分間攪拌した。続いてFe−Siを0.5%接種し、除滓後Yブロック鋳込んで、残留Mg0.020%の球状黒鉛鋳鉄を得た。黒鉛球状化率は90%以上であった。」と記述されている。上記のように、1380℃でFe−Si−Mg合金添加、攪拌、続いてFe−Si接種した後の残留Mg0.020%の球状黒鉛鋳鉄を得たとの記述があるが、最終的なS%については記述されていない。前記特開昭50−35017号公報の開示技術は、溶湯の脱硫におけるスラグを利用し、溶湯を攪拌することにより、Mgの歩留り向上を図り、黒鉛球状化率を高め、しかも装置、操作も容易な球状黒鉛鋳鉄の製造法である。

さらに、取鍋または保持炉を利用して球状化処理を行う従来技術として、特開平3−502214号公報(球状黒鉛鋳鉄製造での取鍋内溶湯の球状化処理)および特開昭55−40066号公報(連続鋳造による球状黒鉛鋳鉄製造での保持炉内溶湯の球状化処理)がある。まず前記特開平3−502214号公報には、オープンタイプの取鍋中での球状黒鉛鋳鉄の製造方法を開示している。要約して述べると、「取鍋の底に、1:10〜1:20の割合よりなるマグネシウム(粒径は0.05〜0.3mm)とフェロシリコン(粒径は0.05〜2.0mm)の混合物を置き、該混合物にスチール片をかぶせて、溶融鋳鉄注ぐことにより球状黒鉛鋳鉄を製造する方法である。該混合物の組成が、質量%で、5〜9マグネシウム−10〜50マグネサイト−残りフェロシリコンである。処理方法は、溶融鋳鉄を、取鍋の空いているセクション中に、1300〜1460℃の温度で注ぐ、鋳鉄の最初の組成は、炭素3.0〜3.5;シリコン1.0〜2.0;マンガン0.2〜0.55;硫黄0.02〜0.1;クロム0.12〜0.20(%)である。改質プロセスの時間は、処理される鋳鉄のマスで変化する。例えば、5トンの鋳鉄を1380℃で改質するためには、4〜5分が必要である。温度は30〜40℃低下する。」との記載がある。上述の鋳鉄の最初の組成中の硫黄0.02〜0.1が、処理後にいかほどになったかは記述されていない。

また、前記特開昭55−40066号公報には、連続鋳造機による球状黒鉛鋳鉄の製造方法を開示している。すなわち、「鋳鉄連続鋳造機の保持炉において、保持炉内の溶湯に、黒鉛球状化剤、ないし接種剤を添加し、溶湯中の黒鉛の球状化の崩れを防止し、または、球状化を回復させて、鋳造する連続鋳造機による球状黒鉛鋳鉄の製造方法。」である。なお、溶湯中の硫黄含有量に関しては、「高純度銑を使用してS0.01%以下を目標とした。」との記述がある。また、保持炉内の溶湯保持時間に関しては、「保持炉は、バーナーで約1300℃保持保温される。」との記述がある。しかし、最終製品または処理後の溶湯の硫黄含有量の値については記述されていない。

さらに、Mgによる脱硫についての原理・効果等について開示した従来技術として、特開昭61−37907号公報および特開昭52−97318号公報がある。前記特開昭61−37907号公報には、「球状黒鉛を有する鋳鉄を転炉法により製造する場合、硫化マグネシウムの形でスラグが生成される。そして、1450〜1550℃の処理温度の場合は、空気酸素は、硫化マグネシウムを酸化することができ、Sが遊離して溶湯中に戻り極端な場合には球状晶子の劣化を導きうる。」旨を記述し、「溶鉄金属マグネシウムで処理することにより球状黒鉛を有する鋳鉄を製造する方法において、スラグ中に存在する硫黄を、溶湯中への硫黄の戻りを阻止するために添加剤により安定化する球状黒鉛鋳鉄の製造方法。添加剤による安定化は硫化マグネシウムから熱力学的に安定な硫化物、例えばCaS、CeSへのSの変換によって行われる。その添加剤としてはCaSiを溶湯中に導入する。CaSiの添加によって、不安定なMgSは、CaS+Mgとなってスラグ中に残留するのでSの戻りを阻止できる。添加剤としてはCaSi以外に、カルシウム+弗化セリウムおよび弗化マグネシウムカルシウム金属、カルシウム−アルミン酸カルシウム−CaCL2−スラグ、が適当である。なお、Sの戻りは、30分間で最大0.006〜0.008に減少する。」旨を開示している。

次に前記特開昭52−97318号公報には、溶鉄の脱硫および鋳鉄の黒鉛球状化処理に使用する溶鉄処理剤を開示している。すなわち、「マグネシウム、カルシウム、マグネシウム合金カルシウム合金または希土類元素の群から選らばれる低沸点金属細片および/または粉粒状物と、炭素質物質と、結合剤とからなる均質組成物造粒あるいは成形してなる溶鉄処理剤。また、該造粒物あるいは成形物炭素物質と結合剤とからなる組成物で被覆してなる溶鉄処理剤。」である。同公報中での脱硫の程度の記述の例を示すと、「処理前S含有率(%)0.036が処理後S含有率(%)0.004となり(脱硫率88.9%)、また処理前S含有率(%)0.045が処理後S含有率(%)0.005(脱硫率88.9%)となった。」との記載がある。

概要

低硫黄含有共晶組成鉄およびその製造方法を提供すること。

本発明の低硫黄含有共晶組成鉄は、重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、その他組成、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足し、その他組成のうちの硫黄含有量が0.002%以下であることを特徴とする。この低硫黄含有共晶組成鉄は、銑鉄または球状黒鉛鋳鉄である。また、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法は、共晶組成の溶湯を球状化処理した後、該溶湯に攪拌を付与しながら1250〜1350℃の温度に所定時間保持することにより硫黄含有量を0.002重量%以下にすることを特徴とする。

目的

前述のとおり、通常製造する金属材料へのSの悪影響がなくなる許され得る低い含有量まで溶湯から脱硫処理されており、各種各様の提案がなされているが、硫黄含有量が0.002重量%以下のような小数点3桁の位より低い硫黄含有量までの脱硫を簡単な手段で可能とする技術は提案されていない。本発明の課題は、非常に簡単な手段により硫黄含有量が0.002重量%以下の低硫黄含有量共晶鉄を製造することができる製造方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、その他組成、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足し、その他組成のうちの硫黄含有量が0.002%以下であることを特徴とする低硫黄含有共晶組成鉄。

請求項2

前記共晶組成鉄が、銑鉄または球状黒鉛鋳鉄であることを特徴とする請求項1記載の低硫黄含有共晶組成鉄。

請求項3

共晶組成の溶湯球状化処理した後、該溶湯に攪拌を付与しながら1250〜1350℃の温度に保持することにより硫黄含有量を0.002重量%以下にすることを特徴とする低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法。

請求項4

前記共晶組成の溶湯が、重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、Mn:0.30〜0.40%、Mg:0.035〜0.042%、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足する組成であることを特徴とする請求項3記載の低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法。

技術分野

0001

本発明は低硫黄含有共晶組成鉄およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

硫黄溶解原材料中に元来含まれており、製造される金属材料不可避的に含有されてくる。硫黄は、金属材料の機械的強度脆弱にし、また鋳造欠陥発生原因ともなること等から、通常金属材料中のS含有量をできるだけ低く目標とする。機械切削性を重要視するために意図的にS含有量を高くした快削鋼、例えばAISI記号B1113ではS0.24〜0.33(%)、は特殊な例である。

0003

JIS G 2202(鋳物用銑鉄化学成分規格)では1種〜3種で化学成分が規格化されている。この規格のうち3種1号Dでは、C:3.4以上、Si:1.81〜3.50、Mn:0.40以下、P:0.100以下、S:0.040以下、Cr:0.030以下、また同規格3種2号では、C:3.4以上、Si:3.50以下、Mn:0.50以下、P:0.150以下、S:0.045以下、Cr:0.035以下と規格化されている。Sについて言えば銑鉄ではS上限が0.045(%)と規格されている。

0004

また、JIS G 2201(製鋼用銑鉄の化学成分規格)の3種1号は、砂鉄原料として電気炉によって製造される銑鉄で、Mnの値によってA及びBの2種類に分けられて規格化されている。この3種1号Aの化学成分は、C:3.50以上、Si:0.50以下、Mn:0.40以下、P:0.350以下、S:0.050以下、Cr:0.02以下と規格化されている。また3種1号Bの化学成分では、Mn:0.41以下との規格値以外の化学成分は3種1号Aでの規格値と同じである。以上のようにSについてみると、鋳物用銑鉄ではS上限値が0.045(%)、製鋼用銑鉄ではS上限値が0.050(%)と規格化されている。JISではS下限値は規格化はなされていないが、通常製造する金属材料へのSの悪影響がなくなる許され得る含有量まで作業性や経済性等を考慮して低くすることが行われている。

0005

溶解材料の配合計算において、S含有量が極めて低い高純度銑鉄の配合量を増加すると、金属材料中のS含有量を低目、例えば0.01重量%以下、にすることができるが、製造コストが高くなり経済性に劣る。もっとも、S含有量が極めて低い高純度銑鉄は市場入手が困難になりつつあり、また非常に高価でもある。このような実情から、通常製造コストに見合った銑鉄の配合量(場合によっては、銑鉄の配合量をほとんどゼロとすることもありうる。)により溶解した溶融鉄(以下、「溶湯」と記す。)から脱硫して、目標とするS含有量とすることが行われている。例えば、球状黒鉛鋳鉄を製造する場合には、溶湯をMg系球状化処理剤で処理してMgSを生成、浮遊させて脱硫することが、通常行なわれており、鋳造欠陥発生防止や黒鉛球状化の確保の点から溶湯中S量を約0.030%以下とすることが好ましいとされている。溶湯からの脱硫率90%程度の完全ともいえる脱硫は従来から難しいところであるが、多くは球状黒鉛鋳鉄溶湯からの脱硫について各種各様の提案がなされている。

0006

例えば、Mg系球状化処理剤を使用して、溶融鉄からの脱硫を行う従来技術として、特開昭50−44910号公報および特開昭50−35017号公報がある。まず、前記特開昭50−44910号公報には、マグネシウム含漬多孔性鉄系金属体を用いて溶融鉄の脱硫を行う技術を開示している。この開示技術では、マグネシウム含漬ブリケットを溶融鉄に使用した例として、初期硫黄含有量0.041%を含む溶融鉄を2650°F(換算値約1454℃)で180秒の反応処理をした結果、最終硫黄含有量0.013%(脱硫率を計算すると、約68%である。)となった、との記述がある。また、初期硫黄含有量0.03%を含む溶融鉄を2580°F(換算値約1416℃)で90秒の反応処理をした結果、最終硫黄含有量0.010%(脱硫率を計算すると、約67%である。)となった、との記述がある。

0007

次に、前記特開昭50−35017号公報には、「Mg系黒鉛球状化剤を用いる球状黒鉛鋳鉄の製造において、溶湯の脱硫処理により生じ、かつ溶湯表面を覆うスラグが、黒鉛球状化処理時のMgの蒸散及び酸化を防止し得る厚さを有する層を形成するようにし、該スラグ層下の溶湯を攪拌すると共に、前記スラグより比重の大なるMg系黒鉛球状化剤をもって黒鉛球状化処理することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造法。」を開示している。

0008

前記特開昭50−35017号公報の開示技術での実施例では、「C3.1〜3.8%、Si1.0〜2.0%、Mn0.2〜1.5%、Fe0.08%、S0.06%、残部実質的にFeの1420℃における溶湯に、カルシウムカーバイト(比重1.2)を1%添加し、攪拌機によって4分間攪拌脱硫してS0.004%とした。このときの脱硫滓層の厚みは50mmであった。これを除滓せず、攪拌機を回転させながら、1380℃でFe−Si−Mg合金(Mg5%、比重約4.8)を5%添加し(溶湯に対するMg量は0.025%)、1分間攪拌した。続いてFe−Siを0.5%接種し、除滓後Yブロック鋳込んで、残留Mg0.020%の球状黒鉛鋳鉄を得た。黒鉛球状化率は90%以上であった。」と記述されている。上記のように、1380℃でFe−Si−Mg合金添加、攪拌、続いてFe−Si接種した後の残留Mg0.020%の球状黒鉛鋳鉄を得たとの記述があるが、最終的なS%については記述されていない。前記特開昭50−35017号公報の開示技術は、溶湯の脱硫におけるスラグを利用し、溶湯を攪拌することにより、Mgの歩留り向上を図り、黒鉛球状化率を高め、しかも装置、操作も容易な球状黒鉛鋳鉄の製造法である。

0009

さらに、取鍋または保持炉を利用して球状化処理を行う従来技術として、特開平3−502214号公報(球状黒鉛鋳鉄製造での取鍋内溶湯の球状化処理)および特開昭55−40066号公報(連続鋳造による球状黒鉛鋳鉄製造での保持炉内溶湯の球状化処理)がある。まず前記特開平3−502214号公報には、オープンタイプの取鍋中での球状黒鉛鋳鉄の製造方法を開示している。要約して述べると、「取鍋の底に、1:10〜1:20の割合よりなるマグネシウム(粒径は0.05〜0.3mm)とフェロシリコン(粒径は0.05〜2.0mm)の混合物を置き、該混合物にスチール片をかぶせて、溶融鋳鉄注ぐことにより球状黒鉛鋳鉄を製造する方法である。該混合物の組成が、質量%で、5〜9マグネシウム−10〜50マグネサイト−残りフェロシリコンである。処理方法は、溶融鋳鉄を、取鍋の空いているセクション中に、1300〜1460℃の温度で注ぐ、鋳鉄の最初の組成は、炭素3.0〜3.5;シリコン1.0〜2.0;マンガン0.2〜0.55;硫黄0.02〜0.1;クロム0.12〜0.20(%)である。改質プロセスの時間は、処理される鋳鉄のマスで変化する。例えば、5トンの鋳鉄を1380℃で改質するためには、4〜5分が必要である。温度は30〜40℃低下する。」との記載がある。上述の鋳鉄の最初の組成中の硫黄0.02〜0.1が、処理後にいかほどになったかは記述されていない。

0010

また、前記特開昭55−40066号公報には、連続鋳造機による球状黒鉛鋳鉄の製造方法を開示している。すなわち、「鋳鉄連続鋳造機の保持炉において、保持炉内の溶湯に、黒鉛球状化剤、ないし接種剤を添加し、溶湯中の黒鉛の球状化の崩れを防止し、または、球状化を回復させて、鋳造する連続鋳造機による球状黒鉛鋳鉄の製造方法。」である。なお、溶湯中の硫黄含有量に関しては、「高純度銑を使用してS0.01%以下を目標とした。」との記述がある。また、保持炉内の溶湯保持時間に関しては、「保持炉は、バーナーで約1300℃保持保温される。」との記述がある。しかし、最終製品または処理後の溶湯の硫黄含有量の値については記述されていない。

0011

さらに、Mgによる脱硫についての原理・効果等について開示した従来技術として、特開昭61−37907号公報および特開昭52−97318号公報がある。前記特開昭61−37907号公報には、「球状黒鉛を有する鋳鉄を転炉法により製造する場合、硫化マグネシウムの形でスラグが生成される。そして、1450〜1550℃の処理温度の場合は、空気酸素は、硫化マグネシウムを酸化することができ、Sが遊離して溶湯中に戻り極端な場合には球状晶子の劣化を導きうる。」旨を記述し、「溶鉄金属マグネシウムで処理することにより球状黒鉛を有する鋳鉄を製造する方法において、スラグ中に存在する硫黄を、溶湯中への硫黄の戻りを阻止するために添加剤により安定化する球状黒鉛鋳鉄の製造方法。添加剤による安定化は硫化マグネシウムから熱力学的に安定な硫化物、例えばCaS、CeSへのSの変換によって行われる。その添加剤としてはCaSiを溶湯中に導入する。CaSiの添加によって、不安定なMgSは、CaS+Mgとなってスラグ中に残留するのでSの戻りを阻止できる。添加剤としてはCaSi以外に、カルシウム+弗化セリウムおよび弗化マグネシウムカルシウム金属、カルシウム−アルミン酸カルシウム−CaCL2−スラグ、が適当である。なお、Sの戻りは、30分間で最大0.006〜0.008に減少する。」旨を開示している。

0012

次に前記特開昭52−97318号公報には、溶鉄の脱硫および鋳鉄の黒鉛球状化処理に使用する溶鉄処理剤を開示している。すなわち、「マグネシウム、カルシウム、マグネシウム合金カルシウム合金または希土類元素の群から選らばれる低沸点金属細片および/または粉粒状物と、炭素質物質と、結合剤とからなる均質組成物造粒あるいは成形してなる溶鉄処理剤。また、該造粒物あるいは成形物炭素物質と結合剤とからなる組成物で被覆してなる溶鉄処理剤。」である。同公報中での脱硫の程度の記述の例を示すと、「処理前S含有率(%)0.036が処理後S含有率(%)0.004となり(脱硫率88.9%)、また処理前S含有率(%)0.045が処理後S含有率(%)0.005(脱硫率88.9%)となった。」との記載がある。

発明が解決しようとする課題

0013

前述のとおり、通常製造する金属材料へのSの悪影響がなくなる許され得る低い含有量まで溶湯から脱硫処理されており、各種各様の提案がなされているが、硫黄含有量が0.002重量%以下のような小数点3桁の位より低い硫黄含有量までの脱硫を簡単な手段で可能とする技術は提案されていない。本発明の課題は、非常に簡単な手段により硫黄含有量が0.002重量%以下の低硫黄含有量共晶鉄を製造することができる製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、共晶組成の溶湯からの脱硫について鋭意研究した。その結果、まず共晶組成の溶湯を通常の手段で球状化処理を行い、その後球状化処理を行った溶湯を攪拌しながら1250〜1350℃に所定時間保持することにより、球状化処理により生成されたMgSの濃縮促進が図れるとの知見を得て本発明に想到した。

0015

すなわち、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄は、重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、その他組成、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足し、その他組成のうちの硫黄含有量が0.002%以下であることを特徴とする。また、該低硫黄含有共晶組成鉄が、銑鉄または球状黒鉛鋳鉄であることを特徴とする。

0016

また、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法は、共晶組成の溶湯を球状化処理した後、該溶湯に攪拌を付与しながら1250〜1350℃の温度に保持することにより硫黄含有量を0.002重量%以下にすることを特徴とする。そして、該共晶組成の溶湯が、重量%で、C:3.0〜4.5%、Si:0.1〜4.0%、Mn:0.30〜0.40%、Mg:0.035〜0.042%、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足する組成であることを特徴とする。

0017

以下、本発明における低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法についての限定理由について説明する。
(1)共晶組成の溶湯にまず球状化処理を行う:共晶組成の溶湯は4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足するものとする。C%+(Si%/4)の値が4.0%以下では溶湯の湯流れ性が劣る。一方、上限の値は実用性案して4.5%未満とする。まず4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足する共晶組成の溶湯に球状化処理を行うことにより、溶湯中の硫黄(S)をMgSとするのは従来技術と同様である。
(2)攪拌しながら、溶湯温度1250〜1350℃で保持:次いで球状化処理した溶湯に攪拌を付与しながら溶湯温度1250〜1350℃で所定時間たとえば15〜60分保持する。このことにより、球状化処理で生成されたMgSが濃縮し、炉壁に付着して脱硫が促進され、溶湯中に復硫しない。

発明を実施するための最良の形態

0018

本発明では、球状化処理した共晶組成の溶湯に誘導電流による攪拌を付与しながら、溶湯温度を1250〜1350℃に所定時間保持することにより、溶湯中のS含有量を0.001wt%付近まで低下させた共晶組成鉄を得ることができる。この脱硫現象は、球状化処理により生成されたMgSが、溶湯温度1250〜1350℃の温度範囲では溶湯攪拌により濃縮が促進されて炉の内壁に付着し、溶湯中への復硫を阻止できるためと考える。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明では、球状化処理後で共晶組成となるような元湯を高周波炉で溶解し、約1500℃で取鍋に出湯してサンドイッチ法により球状化処理を行った。取鍋内で球状化処理を行った後、ノロを除去し、高周波炉に戻した(この時の溶湯温度は1350℃)。そして、脱硫現象に及ぼす溶湯保持温度の影響(実施の形態その1:図1図4)、高周波炉のライニング材の影響(実施の形態その2:図5)、および高周波炉の誘導電流による溶湯攪拌の有無の影響(実施の形態その3:図6図7)等を調査、確認した。

0019

なお、サンドイッチ法による球状化処理は、取鍋の底に塊状の球状化剤(Fe−45Si−6Mg合金、添加量0.92wt%。)と粒径3〜10mmの接種剤(Fe−75Si−15Ca−2Al合金、添加量0.1wt%。球状化剤の上に載置。)を予め配置し、出湯流による急な浮揚を防止して徐々に反応するようにするために、球状化剤と接種剤の上を鋼のポンチ屑で覆った。また、使用した原材料配合比スチールスクラップ75〜55%、リターンスクラップ25〜30%、銑鉄0〜15%とし、適用した溶湯は、重量%で、C:3.0〜4.5、Si:0.1〜4.0、Mn:0.30〜0.40、P:0.01〜0.02、S:0.009〜0.013、Cu:0.03〜0.05、Cr:0.03〜0.05、Mg:0.035〜0.042、残部Feおよび不可避的不純物を含み、4.0<C+(Si/4)<4.5を満足する共晶組成よりなるものである。

0020

(実施の形態その1)実施の形態その1では、球状化処理剤としてFe−45%Si−6%Mg合金を使用し、サンドイッチ法により球状化処理した溶湯を高周波炉内で誘導電流により攪拌しながら各種所定温度に保持し、溶湯保持時間の経過による溶湯中のS量(%)の変化を調査した(実施の形態その1:図1図4)。縦軸に溶湯中のS量(%)を、横軸に出湯からの時間(秒)をとり、溶湯中のS量(%)の変化を黒丸で示す図1は、98〜99%SiO2よりなる酸性ライニング材でライニングされた高周波炉内で、電源をON(通電20KW)の状態にして誘導電流により、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯保持温度を1250℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。

0021

図1において、S量約0.010%を含有する球状化処理前溶湯を1500℃で出湯(横軸0秒の位置)し、取鍋を用いてサンドイッチ法により1400℃で球状化処理行い(図1中の1番左の黒丸印の位置)、ノロを除去した後球状化処理した1350℃の溶湯を高周波炉内に戻し(図1中の左から2番目の黒丸印の位置)、次いで高周波炉通電開始図1中の左から3番目の黒丸印の位置で、出湯後約600秒)して誘導電流により、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1250℃に保持した。共晶組成の溶湯であるので1250℃に保持した場合でも溶湯の流動性を維持でき、溶湯の攪拌は円滑に行われた。

0022

図1中に溶湯のS量を黒丸で示すように、高周波炉通電開始(出湯後約600秒)からすぐに脱硫がはじまり、高周波炉通電開始から約300秒(出湯後900秒、図1中の左から5番目の黒丸印の位置)にはS量0.004%にまで低下し、さらに時間の経過とともに脱硫が進行して、高周波炉通電開始から1400秒(出湯後2000秒、図1中の右から2番目の黒丸印の位置)にはS量は約0.001%以下まで脱硫された。高周波炉での溶湯面とほぼ同一位置の内壁には溶湯滴が多量に付着していた。炉内壁への付着物分析調査した結果、球状化処理前のS含有量の約20倍となっていた。なお、実施の形態その1〜実施の形態その5において、S量はLECO社製の炭素硫黄同時分析装置による測定値である。

0023

次に、図2は溶湯保持温度を1300℃とした以外は、図1に示す条件と同じにした場合の脱硫の変化を示す図である。図2(溶湯保持温度:1300℃)で示す脱硫の変化も図1(溶湯保持温度:1250℃)の場合と同様に、その脱硫の開始時期、変化および程度はほぼ同様で、顕著な脱硫を示している。特に、脱硫は高周波炉通電開始(図2中の左から3番目の黒丸印の位置で、出湯後450秒)して誘導電流により、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持後ただちに急速にはじまり、高周波炉通電開始から約150秒(出湯後600秒経過直後、図2中の左から5番目の黒丸印の位置)にはS量約0.004%にまで低下し、さらに時間の経過とともに脱硫が進行して、高周波炉通電開始から1650秒(図2の横軸で示す出湯後2100秒の位置)にはS量は約0.001%まで脱硫された。高周波炉での溶湯面とほぼ同一位置の内壁には溶湯滴が多量に付着していた。炉内壁への付着物を分析調査した結果、球状化処理前のS含有量の約20倍となっていた。

0024

次に、図3は溶湯保持温度を1350℃とした以外は、図1に示す条件と同じにした場合の脱硫の変化を示す図である。図3(溶湯保持温度:1350℃)で示す脱硫の変化および程度は、図1(溶湯保持温度:1250℃)と図2(溶湯保持温度:1300℃)の場合に比べると、それほど急速かつ顕著ではないが、S量0.002%近くまで脱硫された。詳述すると、脱硫は高周波炉通電開始(図3中の左から2番目の黒丸印の位置で、出湯後約200秒)して誘導電流により、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1350℃に保持後緩やかにはじまり、高周波炉通電開始から約1300秒(横軸で示す出湯後約1500秒の位置)経過時にはS量0.003%まで低下し、さらに脱硫が少し進行して、高周波炉通電開始から約1900秒(横軸で示す出湯後2100秒の位置)にはS量は0.002%近くまで脱硫された。

0025

次に、図4は溶湯保持温度を1400℃とした以外は、図1に示す条件と同じにした場合の脱硫の変化を示す図である。図4(溶湯保持温度:1400℃)では、高周波炉通電開始(図4中の左から2番目の黒丸印の位置)から約300秒経過までは(横軸で示す出湯後600秒経過直後の位置)、少しの脱硫が生じたが、それ以後脱硫現象は起こらず、時間の経過につれて逆にS量の増加がみられた。このS量の増加の原因は、球状化処理により生成されたMgSが、溶湯保持温度1400℃の影響を受けて分離し、Sが溶湯中に戻る復硫現象を生じたためと考えられる。なお、炉内壁への溶湯滴の付着はほとんど認められなかった。以上の図1図4に示す結果から、共晶組成溶湯の脱硫を効果ならしめる溶湯保持温度は1250〜1350℃であることがわかった。特に好ましい溶湯保持温度は1300℃であることがわかった。

0026

(実施の形態その2)前述の実施の形態その1においては、98〜99%SiO2よりなる酸性ライニング材でライニングされた高周波炉内で、電源をON(通電20KW)の状態にして、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯保持温度を1300℃に保持した場合が、最も急速かつ顕著な脱硫を達成できることが確認できた。そこで、次に実施の形態その2においては、脱硫現象に及ぼす高周波炉のライニング材の影響を確認するために、Al2O3(49%)・MgO(50%)よりなる中性ライニング材でライニングされた高周波炉を適用し、高周波炉の電源をON(通電20KW)の状態にして、球状化処理した共晶組成の溶湯を攪拌しながら溶湯保持温度を1300℃に保持した場合における脱硫の変化を調査した。図5は高周波炉のライニング材をAl2O3(49%)・MgO(50%)とした以外は、実施の形態その1での図2に示す条件と同じにした場合の脱硫の変化を示す図である。

0027

その結果、実施の形態その1での図2で示した場合と同様、図5において黒丸印で示すように、顕著な脱硫が急速に生じ、最終的S量は実施の形態その1での図2の場合とほとんど同様に非常に低レベルまで脱硫が行われた。このことから、ライニング材の種類は脱硫現象には影響を及ぼさないものと考えられる。因に、図5において詳述すると、脱硫は高周波炉通電開始(図5中の左から3番目の黒丸印の位置で、出湯後約300秒直後)して誘導電流により、球状化処理した溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持後急速にはじまり、高周波炉通電開始から約900秒(横軸で示す出湯後1200秒の位置)経過時には非常に低いS量0.0007%(7ppm)まで低下し、さらに脱硫が進行して、高周波炉通電開始から約1500秒(横軸で示す出湯後1800秒の位置)にはS量は0.0004%(4ppm)(図5中の右から2番目の黒丸印で示すS量である。)まで脱硫された。

0028

(実施の形態その3)実施の形態その3においては、高周波炉の電源をOFFの状態にして、高周波炉内の溶湯を攪拌しなくても、脱硫を進行できるかどうかを調査、確認した。図6は、実施の形態その1と同様に球状化処理を行った溶湯を高周波炉に戻し(この時の溶湯温度は1350℃)、高周波炉の電源をOFFの状態にして、高周波炉内の溶湯を静止状態(攪拌なし)にした場合の脱硫の変化を示した図である。

0029

その結果、図6に溶湯中のS量%を黒丸印で示すように、横軸で示す時間が経過してもS量の低下、即ち脱硫現象は認められなかった。なお、実施の形態その3において適用した高周波炉は、実施の形態その1での図2の場合に適用したのと同様に98〜99%SiO2よりなるライニング材でライニングされたものである。高周波炉に戻した溶湯温度1350℃(図6中の左から2番目の黒丸印の位置での溶湯温度)は、高周波炉の電源をOFFの状態としているために溶湯の攪拌は生じず、徐々に低下して出湯から900秒経過直後で1190℃まで下がり、溶湯表面に薄い酸化皮膜が生成した。尚、図6中の白丸印は、球状化処理前の共晶組成溶湯のS含有量約0.013wt%である。

0030

図7図6の場合に適用した98〜99%SiO2よりなるライニング材でライニングされた高周波炉に代えて、Al2O3(49%)・SiO2(40%)よりなる中性ライニング材でライニングした注湯取鍋を適用した場合の脱硫の変化を示した図である。その結果、図6中に黒丸印で示すように、横軸で示す時間が経過してもS量の低下、即ち脱硫現象は認められなかった。なお、球状化処理した溶湯を注湯取鍋に戻した時の溶湯温度1350℃(図7中の左から2番目の黒丸印の位置での溶湯温度)は、溶湯が静止状態(攪拌なし)のために出湯から約1400秒経過時に1220℃(図7中の1番右の黒丸印の位置での溶湯温度)まで下がり、溶湯表面に薄い酸化皮膜が生成した。尚、図7中の白丸印は、球状化処理前の共晶組成溶湯のS含有量0.010wt%である。

0031

実施の形態その3で説明したように、球状化処理した溶湯を静止(攪拌なし)の状態で保持した場合には脱硫現象が生じなかったこと、および前記実施の形態その1で高周波炉の電源ONにして誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯保持温度を1250℃〜1350℃とした場合には脱硫現象が生じたこと、とを比較してみると、脱硫の促進には球状化処理を行った溶湯の攪拌が不可欠であると考えられる。ここで言う攪拌とは、球状化処理を行った溶湯を誘導電流による攪拌について述べたが、たとえば金属製羽根鉄棒を溶湯中に入れて機械的方法で溶湯を攪拌してもよいことは当然である。

0032

(実施の形態その4)前記実施の形態その1においては、球状化処理剤としてFe−45%Si−6%Mg合金を使用したが、実施の形態その4においては、球状化処理剤としてFe−Si−Mg−Ca−REM合金を使用して、球状化処理剤が脱硫に及ぼす影響を調査、確認した。図8はC3.7%、Si2.3%、S0.01%、その他組成を含む共晶組成の溶湯をFe−Si−Mg−Ca−REM合金を使用してサンドイッチ法で球状化処理を行った後、高周波炉に戻し(図8中の左から2番目の黒丸印の位置、溶湯温度は1350℃)、出湯後約450秒に高周波炉に通電(20KW)(図8中の左から3番目の黒丸印の位置)して溶湯を攪拌させながら溶湯温度を1300℃に保持した場合の脱硫の変化を黒丸印で示したものである。その結果、図8に示すように、実施の形態その1での図2(溶湯を攪拌させながら溶湯温度を1300℃に保持)に示したのと同様、脱硫が急速に進行して、高周波炉通電開始から約1800秒(横軸で示す出湯後2300秒の位置)にはS量は0.001%レベル図8中の右から2番目の黒丸印で示すS量である。)まで脱硫された。前記実施の形態その1での図2と実施の形態その4での図8を比べてみると、球状化処理剤の違いによって脱硫の速度、程度等に関してはほとんど差異はないと考えられる。

0033

(実施の形態その5)実施の形態その5においては、C+(Si/4)=約4.3の共晶組成の溶湯ではあるが、低C・高Siの溶湯と高C・低Siの溶湯との脱硫に及ぼす影響を調査、確認した。図9は白丸印で示すS量約0.012%の低C・高Si(C3.7%、Si2.3%)の共晶組成の溶湯を、球状化処理剤Fe−Si−Mg−Ca−REM合金を使用して、サンドイッチ法により球状化処理(図9中の1番左の黒丸印の位置、溶湯温度は1400℃)し、高周波炉に戻し(図9中の左から2番目の黒丸印の位置、この時の溶湯温度は1350℃)、通電(20KW)して溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持した場合の溶湯中のS量を、出湯からの時間(秒)に対応して黒丸印で示したものである。

0034

図9に示した脱硫の調査に適用した低C・高Siの共晶組成の溶湯は、重量%で、C:3.7、Si:2.3、Mn:0.40、P:0.01、S:0.012、Cu:0.02、Cr:0.01、Mg:0.040、残部Feおよび不可避的不純物を含み、C+(Si/4)=4.27のものである。通電開始(図9中の左から3番目の黒丸印の位置、出湯から約450秒)して溶湯を攪拌すると、直ちに急速に脱硫が生じ、通電開始から約150秒(出湯から600秒)にはS量が0.004%に低下し、以後徐々に脱硫が進行して通電開始から約1850秒(出湯から2300秒)経過時にはS量が約0.001%まで脱硫された。なお、高周波炉は、実施の形態その1での図2の場合に適用したのと同様に98〜99%SiO2よりなるライニング材でライニングされたものである。

0035

図10はC+(Si/4)=4.32の高C・低Si(C4.2%、Si0.5%)および球状化処理前溶湯のS量0.014%の共晶組成の溶湯である以外は、図9に示すものと同様の条件で調査を行い、溶湯中のS量を出湯からの経過時間(秒)に対応して黒丸印で示したものである。球状化処理(図10中の左から2番目の黒丸印の位置)した溶湯を高周波炉に戻し、高周波炉通電開始(図10中の左から3番目の黒丸印の位置、出湯後約400秒)して溶湯を攪拌すると、直ちに急速に脱硫が生じ、通電開始から約800秒(出湯から1200秒)には溶湯中のS量が0.004%に低下し、以後時間が経過しても脱硫は進行せず、むしろS量が若干増加し、通電開始から約2200秒(出湯から約2650秒)経過時にはS量が約0.006%になった。

0036

球状化処理前のS量%はほとんど同じ共晶組成の溶湯ではあるが、低C・高Si(C3.7%、Si2.3%)の溶湯の脱硫の変化を示す図9と、高C・低Si(C4.2%、Si0.5%)の溶湯の脱硫の変化を示す図10とを比べてみると、両溶湯とも脱硫現象は発生している。そして、低C・高Si(C3.7%、Si2.3%)の溶湯の脱硫の程度が、高C・低Si(C4.2%、Si0.5%)の溶湯の脱硫の程度よりも顕著で、非常に低いS量約0.001%まで脱硫された。なお、日本金属学会会報によると、鉄鋼の分野でのS量の最小含有量は2ppmと示されている。この2ppmがどのような技術で達成されたかは分からないが、原価制約をやや緩めた場合の数値としている。以上の実施の形態その1〜実施の形態その5で詳細に説明したように、本発明によれば、球状化処理した共晶組成溶湯を攪拌しながら1250〜1350℃に所定時間保持するという非常に簡単な手段により著しい脱硫効果を達成することができる。

発明の効果

0037

以上詳細に説明のとおり、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄は、4.0%<C%+(Si%/4)<4.5%を満足し、硫黄含有量が0.002%以下である。このために銑鉄や球状黒鉛鋳鉄等に適用できる。また、本発明の低硫黄含有共晶組成鉄の製造方法は、共晶組成の溶湯を球状化処理した後、該溶湯に攪拌を付与しながら1250〜1350℃の温度に所定時間保持するという非常に簡単な手段により著しい脱硫効果が得られると共に、復硫を阻止することができ、硫黄含有量を0.002重量%以下にすることができる。このため、硫黄含有量の高い原材料でも使用できることから製造コストの低減にも寄与すること大である。

図面の簡単な説明

0038

図1球状化処理した溶湯を酸性ライニング材(SiO2)でライニングされた高周波炉内で、誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1250℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図2球状化処理した溶湯を酸性ライニング材(SiO2)でライニングされた高周波炉内で、誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図3球状化処理した溶湯を酸性ライニング材(SiO2)でライニングされた高周波炉内で、誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1350℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図4球状化処理した溶湯を酸性ライニング材(SiO2)でライニングされた高周波炉内で、誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1400℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図5球状化処理した溶湯を中性ライニング材(Al2O3(49%)・MgO(50%))でライニングされた高周波炉内で、誘導電流により溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図6球状化処理した溶湯を酸性ライニング材(SiO2)でライニングされた高周波炉内で、静止状態(攪拌なし)に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図7図7図6の場合に適用した98〜99%SiO2よりなるライニング材でライニングされた高周波炉に代えて、Al2O3(49%)・SiO2(40%)よりなる中性ライニング材でライニングされた注湯取鍋を適用した場合における脱硫の変化を示す図である。
図8図8はC3.7%、Si2.3%、S0.01%、その他組成を含む共晶組成の溶湯をFe−Si−Mg−Ca−REM合金を使用してサンドイッチ法で球状化処理を行った後、高周波炉に戻し、通電(20KW)して溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図9S含有量0.012wt%の低C・高Si(C3.7%、Si2.3%)の共晶組成の溶湯を、球状化処理剤Fe−Si−Mg−Ca−REM合金を使用して、サンドイッチ法により球状化処理を行った後、高周波炉に戻し、通電(20KW)して溶湯を攪拌しながら溶湯温度を1300℃に保持した場合における脱硫の変化を示す図である。
図10S含有量0.014wt%の高C・低Si(C4.2%、Si0.5%)の共晶組成の溶湯である以外は、図9に示すものと同様の条件で調査を行った場合における脱硫の変化を示す図である。

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0039

(なし)

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