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技術 永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法および製造装置

出願人 日立金属株式会社
発明者 冨澤浩之池上尚
出願日 1999年5月26日 (20年1ヶ月経過) 出願番号 1999-146048
公開日 2000年12月5日 (18年7ヶ月経過) 公開番号 2000-336406
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 金属質粉又はその懸濁液の製造
主要キーワード プログラム制御器 熱伝導度測定 減少過程 絶対真空 残存水素量 処理バッチ 真空排気弁 水冷システム
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課題

処理量処理装置等を変更した場合でも、被処理物含有水素量を安定させたHDDR処理を行うことができる永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法を提供する。

解決手段

HDDR処理における水素放出再結合反応工程の終了点を、処理雰囲気熱伝導率を測定することによって決定する。ここで、熱伝導率の変化はピラニ真空計の出力を用いて検知する。

概要

背景

希土類系永久磁石用合金粉末水素処理法には、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法と呼ばれるものがある。「HDDR処理」は、水素化・不均化反応および水素放出再結合反応を利用するプロセスを意味している。

HDDR法によって製造される永久磁石用希土類系合金粉末は、例えば特開平1−132106号公報に開示されており、その製造方法および製造条件は、例えば特開平2−4901号公報に開示されている。

HDDR処理では、まず、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)の合金塊または粉末H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって被処理物に水素を吸蔵させ、相分解を生じさせる。次に、H2分圧13Pa以下の真空雰囲気またはH2分圧13Pa以下の不活性ガス雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で水素放出(脱水素)処理をすると、被処理物は水素を放出しながら1μm以下の粒径結晶として再結合再結晶化)する。その後、被処理物を冷却することによって、合金磁石粉末を得ることができる。HDDR法によって得られる合金磁石粉末は、粉末状態でも永久磁石用として実用可能なレベル保磁力を有している。

特開平2−4901号公報は、所定時間のあいだ水素放出・再結合反応工程を行う方法を開示している。この方法では、水素放出処理を行った後の雰囲気の到達真空度が1.3×10-2Paに達したことを確認し、その時点を水素放出反応処理時間を決定するための指標としている。

しかし、10-2Pa程度の真空度を測定するために工業的に広く用いられている真空計は、電離真空計である。この電離真空計の感度は、雰囲気ガスの種類によって大幅に変化する。例えば、窒素に対する感度に比較すると、水素に対する感度は40%程度であり、アルゴンに対する感度は130%程度である(JIS−Z8752)。一方、HDDR処理における水素放出・再結合反応工程では、雰囲気を構成するガス組成が変化し続けるため、電離真空計等を用いて絶対真空度を測定することは事実上不可能である。従って、真空度の測定によって水素放出・再結合反応の終了を検知し、それによって処理時間を決定すると、処理条件によっては、水素放出(脱水素)が充分に行われないまま処理を終えてしまうことになる。このことは、被処理物の含有水素量を過大なものとし、磁気特性劣化を招くことになる。

特開平7−90308号公報は、真空度の変化率を制御することによって、被処理物の磁気特性を安定化させる方法を開示している。しかし、水素放出・再結合反応工程で真空度を測定することは、上述したように事実上不可能であるため、真空度の変化率を制御することは極めて困難である。

概要

処理量処理装置等を変更した場合でも、被処理物の含有水素量を安定させたHDDR処理を行うことができる永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法を提供する。

HDDR処理における水素放出・再結合反応工程の終了点を、処理雰囲気熱伝導率を測定することによって決定する。ここで、熱伝導率の変化はピラニ真空計の出力を用いて検知する。

目的

本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、HDDRの処理設備要因や処理量に関係なく、被処理物の含有水素量を安定させ、それによって磁気特性が均一な永久磁石用希土類系合金粉末を製造する方法を提供することにある。

本発明の他の目的は、上記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する方法や上記永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法に好適に用いられる水素処理装置を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガス熱伝導度を測定し、前記熱伝導度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することを特徴とする永久磁石合金粉末の製造方法。

請求項2

前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石合金粉末の製造方法。

請求項3

前記熱伝導度の時間変化率が毎分0.5%以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石合金粉末の製造方法。

請求項4

前記雰囲気ガスの熱伝導度の測定はピラニ真空計を用いて行い、前記ピラニ真空計の出力の変化率を前記熱伝導度の時間変化率とすることを特徴とする請求項2または3に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項5

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項6

前記終了点を検知した後、予め設定された付加時間が経過してから前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項7

請求項1から6の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する永久磁石の製造方法。

請求項8

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、予め前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定し、前記熱伝導度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することによって予め決定していた水素放出・再結合工程時間に基づいて、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項9

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であることを特徴とする請求項8に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項10

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記熱伝導度の時間変化率が毎分0.5%以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であることを特徴とする請求項8に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項11

前記付加時間を4時間以下にすることを特徴とする請求項9または10に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項12

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することを特徴とする請求項8から11の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項13

請求項8から12の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する永久磁石の製造方法。

請求項14

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行うことのできる水素処理装置であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定する熱伝導度測定器と、前記熱伝導度測定器の出力に基づいて前記水素放出・再結合反応工程を終了させる制御装置とを備えている水素処理装置。

請求項15

前記制御装置は、前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になったとき、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始するように構成されていることを特徴とする請求項14に記載の水素処理装置。

技術分野

0001

本発明は、各種モータアクチュエータ等に適した各種永久磁石に好適に用いられる希土類系合金粉末の製造方法に関する。また、本発明は、この製造方法に使用される水素処理装置および永久磁石の製造方法にも関している。

背景技術

0002

希土類系永久磁石用合金粉末水素処理法には、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法と呼ばれるものがある。「HDDR処理」は、水素化・不均化反応および水素放出再結合反応を利用するプロセスを意味している。

0003

HDDR法によって製造される永久磁石用希土類系合金粉末は、例えば特開平1−132106号公報に開示されており、その製造方法および製造条件は、例えば特開平2−4901号公報に開示されている。

0004

HDDR処理では、まず、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)の合金塊または粉末H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって被処理物に水素を吸蔵させ、相分解を生じさせる。次に、H2分圧13Pa以下の真空雰囲気またはH2分圧13Pa以下の不活性ガス雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で水素放出(脱水素)処理をすると、被処理物は水素を放出しながら1μm以下の粒径結晶として再結合再結晶化)する。その後、被処理物を冷却することによって、合金磁石粉末を得ることができる。HDDR法によって得られる合金磁石粉末は、粉末状態でも永久磁石用として実用可能なレベル保磁力を有している。

0005

特開平2−4901号公報は、所定時間のあいだ水素放出・再結合反応工程を行う方法を開示している。この方法では、水素放出処理を行った後の雰囲気の到達真空度が1.3×10-2Paに達したことを確認し、その時点を水素放出反応処理時間を決定するための指標としている。

0006

しかし、10-2Pa程度の真空度を測定するために工業的に広く用いられている真空計は、電離真空計である。この電離真空計の感度は、雰囲気ガスの種類によって大幅に変化する。例えば、窒素に対する感度に比較すると、水素に対する感度は40%程度であり、アルゴンに対する感度は130%程度である(JIS−Z8752)。一方、HDDR処理における水素放出・再結合反応工程では、雰囲気を構成するガス組成が変化し続けるため、電離真空計等を用いて絶対真空度を測定することは事実上不可能である。従って、真空度の測定によって水素放出・再結合反応の終了を検知し、それによって処理時間を決定すると、処理条件によっては、水素放出(脱水素)が充分に行われないまま処理を終えてしまうことになる。このことは、被処理物の含有水素量を過大なものとし、磁気特性劣化を招くことになる。

0007

特開平7−90308号公報は、真空度の変化率を制御することによって、被処理物の磁気特性を安定化させる方法を開示している。しかし、水素放出・再結合反応工程で真空度を測定することは、上述したように事実上不可能であるため、真空度の変化率を制御することは極めて困難である。

発明が解決しようとする課題

0008

水素放出・再結合反応工程には、被処理物の磁気特性および処理の効率の面からみて改良すべき点がある。それは、HDDRに供される被処理物の量、処理設備の有効内容積温度分布、雰囲気ガス供給能力、雰囲気排気能力等の要因が変動すると、処理後の合金磁石粉末の残存水素量差異が生じることである。このことは、磁気特性をばらつかせる原因の一つとなっている。

0009

また、水素放出・再結合反応工程は、HDDRの処理サイクルの効率を高めるためにできるだけ短時間で行うことが好ましい。しかし、その処理時間は、従来においては処理設備ごと、処理量ごとに実験的に決定する必要があった。

0010

水素放出・再結合反応工程の終了後における真空度を確認する方法は、実験室レベルの少量処理では特に問題は生じないが、前述のように、工業的な規模となれば、ガス種による真空計の感度差等が問題となる。時には、真空計の指示値は充分高い真空度を示していても、被処理物にはまだ多くの水素が含有していることがあり、このことが磁気特性のばらつきの原因となる。

0011

従来、水素放出工程に要する処理時間は、前述したように処理時間を経験的に設定するか、または水素放出処理終了時の真空度を測定して水素放出反応の終了を確認しているにすぎなかった。従って、被処理物の含有水素量を直接測定して水素放出・再結合反応が完了したことを毎回確認しているわけではない。このため、処理設備を変更したり、被処理物の量を変えたりするごとに、予備実験によって水素放出時間を決定するか、経験的に水素放出時間を設定する必要があった。このため、HDDR後の被処理物の水素含有量処理バッチごとに変化し、それによって得られる永久磁石用合金粉末の磁気特性が処理ごとに変動することがあった。また、必要以上に長い時間の水素放出処理を行うことによって、処理サイクルの効率を低下させる結果を招いていた。

0012

本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、HDDRの処理設備要因や処理量に関係なく、被処理物の含有水素量を安定させ、それによって磁気特性が均一な永久磁石用希土類系合金粉末を製造する方法を提供することにある。

0013

本発明の他の目的は、上記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する方法や上記永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法に好適に用いられる水素処理装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0014

本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程とを包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定し、前記熱伝導度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することを特徴とする。

0015

前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることが好ましい。

0016

前記熱伝導度の時間変化率が毎分0.5%以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点としてもよい。

0017

前記雰囲気ガスの熱伝導度の測定はピラニ真空計を用いて行い、前記ピラニ真空計の出力の変化率を前記熱伝導度の時間変化率とすることが好ましい。

0018

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することが好ましい。

0019

前記終了点を検知した後、予め設定された付加時間が経過してから前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始するようにしてもよい。

0020

本発明による永久磁石の製造方法は、上記何れかの永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する。

0021

本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、予め前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定し、前記熱伝導度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することによって予め決定していた水素放出・再結合反応時間に基づいて、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする。

0022

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であってもよい。

0023

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記熱伝導度の時間変化率が毎分0.5%以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であってもよい。

0024

前記付加時間を4時間以下にすることが好ましい。

0025

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することが好ましい。

0026

本発明による他の永久磁石の製造方法は、永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する。

0027

本発明による水素処理装置は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行うことのできる水素処理装置であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定する熱伝導度測定器と、前記熱伝導度測定器の出力に基づいて前記水素放出・再結合反応工程を終了させる制御装置とを備えている。

0028

前記制御装置は、前記熱伝導度の時間変化率が予め設定した値以下になったとき、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始するように構成されていることが好ましい。

発明を実施するための最良の形態

0029

本願発明者は、軽い気体ほど熱伝導率極度に高いことに着目し、水素放出・再結合反応工程における雰囲気の熱伝導率を測定することによって水素放出の進行を監視し、熱伝導率の変化が小さくなり安定化したときを水素放出反応の終了点として検知すれば、的確に水素放出・再結合反応工程を完了することができることを見いだし、本発明を想到するに至った。

0030

雰囲気の熱伝導率の測定は、たとえば、熱伝導率に基づいて真空度を測定する装置を用いて行うことができる。

0031

本発明によれば、熱伝導率の変化を観測することによって、雰囲気中の軽元素量をリアルタイムで検知することができるため、被処理物の組成や処理量が変動しても、確実に水素放出反応の終了時を検知することが可能である。また、雰囲気中にアルゴンなどの比較的に重い不活性ガスが混在している状態でも、水素放出反応の終了時を検知することができる。

0032

本発明では、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)のインゴットまたは粉末に対してHDDR処理を行う。以下、HDDR処理によって永久磁石用希土類系合金粉末を製造する方法の実施形態を詳細に説明する。

0033

まず、R−T−(M)−B系原料合金(以下、「R−T−B系合金」と略記する場合がある。)のインゴットを用意する。このインゴットをそのまま用いても良いが、より好ましくは、この原料合金のインゴットに対して、窒素以外の不活性ガス雰囲気中で1000〜1200℃、1〜8時間の均質化のための熱処理を行う。この熱処理によってR−T−B系合金インゴット中の元素の拡散が生じ、成分が均質化される。より詳細には、R−T−B系合金インゴットは主相であるR2Fe14B相とR−rich相とから主として構成されているが、R2Fe14B相にはα−Fe相およびR2Fe17相などが存在していることが多い。そのため、熱処理によって、R−T−B系合金インゴット中のα−Fe相およびR2Fe17相等を拡散してできるだけ消滅させて、実質的にR2Fe14B相とR−rich相の2相からなる組織にする。このような均質化処理によって平均結晶粒径は約100μm以上に粗大化する。平均結晶粒径の粗大化は、HDDR処理磁粉が大きな磁気的異方性を有するためには好ましい不活性ガス雰囲気として窒素を用いない理由は、窒素がR−T−B系合金と反応するためである。1100℃未満の温度では、R−T−B系合金中の元素拡散に時間がかかりすぎるため製造コスト引き上げ、また、別の相が形成されるために好ましくない。一方、熱処理温度が1200℃を超えると、合金の融解が生じるため好ましくない。より好ましい熱処理温度範囲は、1105℃〜1150℃である。 なお、熱処理時間が1時間未満の場合には元素拡散が不十分になるが、逆に48時間を越える長時間の処理を行う意義はない。

0034

次に、均質化処理済みの原料合金を0.05〜1.0MPaの水素雰囲気で5分〜10時間保持することによって、合金に水素を吸蔵させ、合金を脆化させる。原料合金は水素を吸蔵すると、自然崩壊を起こし、亀裂が生じる。このような水素粉砕は、R−T−B系インゴットを圧力容器中に入れた後、純度99.9%以上のH2ガスを50〜1000kPaまで導入し、次いでその状態を5分〜10時間保持することによって行うことができる。こうして、粒径1000μm以下の原料粉末を得る。

0035

なお、水素粉砕に代えて、あるいは水素粉砕後に機械粉砕を行っても良い。機械粉砕は、目的の粒度粗粉砕粉を得るために行う。機械粉砕は、フェザーミルボールミル、またはパワーミルなどの粉砕機を用いて行うことができる。粗粉砕粉の平均粒径は10〜500μmの範囲にあることが好ましい。

0036

こうして得た粗粉砕粉は、単一の結晶方位を有する粒子から構成されており、各粒子の中では磁化容易軸が一方向にそろっている。この結果、HDDR処理によって得られる永久磁石用希土類系合金粉末が異方性を示すことが可能になる。

0037

次に、粗粉砕粉となった原料粉末に対して、「水素化・不均化反応工程」、「水素放出・再結合反応工程」、および「冷却工程」を連続して実行する。これらの工程は、例えば図1に示す水素処理装置を用いて行うことができる。

0038

図1の装置は、ガス導入口1および排気口2を有する管状炉10を備え、排気口2は雰囲気ガスの放出口として機能する。炉内圧力真空引きする際の真空排気口と雰囲気ガスの放出口とが独立して設けられていても良い。炉10は、円筒状本体と、円筒状本体の両端に設けられた蓋体とを備えている。また、ヒータ13が、炉内の雰囲気ガスを加熱するように配置されている。

0039

水素ガスおよびアルゴンガスは、圧力調整弁3およびガス導入弁4を介して炉内に供給される。各ガスは、可能な限り不純物を含まないように清浄化されていることが好ましい。なお、水素ガスは、単独で、または他の不活性ガスとともに炉内に導入され得る。

0040

炉内の雰囲気ガスは、ガス放出口2およびガス放出弁5を介して炉外へ放出され、必要であれば、そこで回収される。一方、炉内雰囲気ガスの圧力を大気圧よりも低いレベルに減じる場合、雰囲気ガスは真空排気口およびロータリーポンプ等を介して排気される。炉内を高真空状態減圧する場合、炉内は真空排気口を介して拡散ポンプ等に接続される。

0041

図1では、ヒータ温度、ガス導入弁および放出弁を調節する制御装置20が示されている。炉内所定箇所の温度が検知され、その出力がプログラム制御器21を介して制御装置20に送られる。制御装置20およびプログラム制御器21の働きによって、検知温度設定温度範囲内に入るようにヒータ13を流れる電流の量や水冷システム(不図示)の動作が制御される。ヒータ13を流れる電流の量は、プログラム制御器21が電源22の出力を調整することによって制御される。

0042

また本実施形態で使用する水素処理装置には、上記の圧力計に加えて、ピラニ真空計(Pirani Gauge)30が設けられており、ピラニ真空計30の出力が微分回路23を介して制御装置20に送られるように構成されている。

0043

一般に気体の圧力が約1.3×104Pa以下になると、気体の熱伝導度はその圧力に比例するようになる。ピラニ真空計は検知部に白金フィラメントなどの熱線を有しており、気体分子熱伝導によって熱線から失われるエネルギを測定し、間接的に気体圧力を決定する真空計である。より詳細には、熱線の温度(フィラメント温度)を常に一定に保つように熱線に供給する電流が制御され、その電力の変化を圧力変化として検出することができる。この意味で、本実施形態のピラニ真空計は雰囲気ガスの熱伝導度を測定する装置として機能する。

0044

この種の真空計の感度は、原理上、測定対象となるガスの種類によって大きく変化する。特に、水素はアルゴンに比較して10倍程度の熱伝導度を持つため、雰囲気ガスに占める水素の量が比較的大きな量から徐々に減少してゆくと、その減少過程で検知される雰囲気ガスの熱伝導度も減少してゆくことになる。このため、水素放出・再結合反応工程において、ピラニ真空計の出力を用いて雰囲気ガスの熱伝導度を求めれば、結果として、雰囲気ガス中での水素量増減を検出することが可能になる。本実施形態では、このような知見に基づいて、水素放出・再結合反応の終了を検知することとしている。

0045

なお、上記水素処理装置は、本発明のHDDR処理を好適に動作させることのできる装置の一例に過ぎず、他の構成を有している装置を用いても良いことは言うまでもない。

0046

以下に、HDDR処理の各工程を詳細に説明する。

0047

<水素化・不均化反応工程>まず、前述の方法で作製した原料粉末をH2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気(水素分圧10〜1000kPa)中で温度650℃〜950℃に保持する。こうすることによって、上記原料粉末に水素を吸蔵させ、不均化反応を生じさせることができる。水素雰囲気中での昇温速度は10〜200℃/minとすることが好ましい。温度を例えば800℃まで昇温させる場合は、その温度で約15分〜約8時間保持することが好ましい。

0048

<水素放出・再結合反応工程>次に、H2分圧100Pa以下の真空雰囲気またはH2分圧100Pa以下の不活性ガス雰囲気中において温度650℃〜1000℃にて水素放出・再結合反応を生じさせる。この工程は、まず温度および炉内総圧を水素化・不均化反応工程のときの温度および炉内圧力とほぼ同レベルに維持したまま、水素ガスの供給を停止し、不活性ガスで炉内の水素ガスを置換することによって開始する。その後、炉内温度を上記温度範囲に維持したまま、不活性ガスを炉内に導入しながら炉内の雰囲気ガスをポンプで排気し、炉内の雰囲気ガス圧力をほぼ一定レベルに保持する。

0049

上述のように水素放出・再結合反応のために炉内温度を高温に保持する時間を、本明細書では「水素放出・再結合反応時間」と称することにする。

0050

本実施形態では、「水素放出・再結合反応時間」を予め設定せずに、水素放出・再結合反応工程における雰囲気ガスの熱伝導度を測定し、この熱伝導度に基づいて水素放出・再結合反応の終了を検出するようにしている。より具体的には、雰囲気ガスの熱伝導度の時間変化率を求め、この時間変化率が予め設定した値以下になったときを基準として、水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始する。

0051

以下、水素放出・再結合反応の終了を検出する方法を詳細に説明する。

0052

図2は、水素放出・再結合反応工程におけるピラニ真空計出力の時間変化を示している。図2から明らかなように、ピラニ真空計の出力は水素放出・再結合反応工程中に単調に減少し、その後、ある一定のレベルを保持し続ける。

0053

ピラニ真空計は、熱伝導率測定によって真空度を決定する機能を有しており、その出力(指示値)によって雰囲気ガスの熱伝導率変化を検知することができる。前述のように、気体の熱伝導率は気体の密度が小さいほど大きいため、雰囲気ガス中に含まれる水素分圧の増減を熱伝導率の変化に基づいて検出することが可能である。特に、水素放出・再結合反応の終期において、雰囲気ガス中の水素量が時間とともに減少するとき、水素濃度の低下を雰囲気ガスの熱伝導率低下として検知することが可能であるため、熱伝導率の低下がほぼ終了した時を水素放出・再結合反応の終了時とすることができる。

0054

ここでは、ピラニ真空計出力の時間変化、すなわち、雰囲気ガスの熱伝導率の時間変化が毎分0.5%以下に低下した時を、水素放出・再結合反応の終了時と判断する。言い換えると、ピラニ真空計出力の時間変化が毎分0.5%以下に減少したことを検知したならば、その検知直後、または検知時から所定時間の経過後に、水素放出・再結合反応を終了し、冷却工程の実行を開始する。

0055

ピラニ真空計出力の微分値が毎分0.5%以下に低下した時に水素放出・再結合反応を終了し、冷却工程の実行を開始した場合、得られた磁石特性は、ほぼ最高のレベル(飽和レベル)に近い値を示している。これに対して、ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下に低下する前に水素放出・再結合反応を終了し、冷却工程の実行を開始した場合は、得られた磁石特性が期待できる最良値よりも低くなっている。従って、ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下に低下した時を水素放出・再結合反応の終了時と決定することが合理的である。

0056

ただし、ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下に低下した時に直ちに水素放出・再結合反応を終了して冷却工程を開始する必要はない。ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下に低下したことを検知した後、予め設定した時間(例えば4時間、3時間、2時間、または1時間など)の経過後に水素放出・再結合反応を終了して冷却工程を開始してもよい。そうすれば、プロセスの変動によって水素放出・再結合反応が通常よりも遅くなった場合や、通常よりも多くの原料合金に対してHDDR処理を施す場合においても、水素放出・再結合反応を的確に完遂し、必要充分な磁石特性を確保することが可能になる。

0057

水素処理装置に設置するピラニ真空計の数は一個に限定されず、複数であってもよい。複数のピラニ真空計を装置に設ける場合、水素放出・再結合反応の終了は、各ピラニ真空計の出力変化率平均値などに基づいて決定しても良いし、また、複数のピラニ真空計の出力変化率のうちもっとも変化の遅い出力に関する変化率に基づいて決定しても良い。

0058

なお、水素化・不均化反応工程および水素放出・再結合反応工程において、保持温度が500℃より低いと、原料粉末の組織変化が充分に得られない。一方、保持温度が1000℃を超えると、原料粉末が互いに溶着してしまうとともに、組織変化の進行によって・再結合粒が粒成長をおこし、その結果、保磁力が低下してしまうおそれがある。

0059

<冷却工程>水素放出・再結合反応を終了した後、冷却工程を実行し、各種永久磁石の製造に用いることのできる合金磁石粉末を得ることができる。冷却工程においては、そのまま減圧状態を維持してもよいが、冷却効率を高めるため、真空排気を停止し、炉内にアルゴンガスを供給し、炉内圧力を大気圧に復帰させる。また、さらに大きな冷却速度を達成するため、アルゴンガスやヘリウムガス加圧してもよい。その後、HDDR処理を終えた粉末は水素処理装置の外部に取り出される。

0060

こうして得た合金磁石粉末は、上記処理の結果、正方晶R2Fe14B型化合物の再結合集合組織を有しており、この再結合集合組織の平均結晶粒径(1次粒子径)は、約0.1〜約0.5μmまでの範囲にある。この大きさは単磁区粒子の大きさに近いため、再結合集合組織を持つ各粉末粒子は高い保磁力を発揮することができる。また、再結合集合組織の結晶方位は一定の方位にそろっているため、磁化容易軸も一定の方位にそろっており、その結果、再結合集合組織を持つ粉末粒子は高い磁気異方性を示すことになる。

0061

こうして得た合金磁石粉末を本願明細書においては「HDDR粉末」と称するすることにする。

0062

なお、HDDR処理は、超急冷磁粉ホットプレスした後、熱間塑性加工および粉砕などの各種工程を経て磁粉を製造する方法に比較すると、プロセスが単純でコストを低く抑えることが可能である。

0063

次に、このHDDR粉末を用いて永久磁石を製造する方法の一例を説明する。

0064

永久磁石として異方性ボンド磁石を製造する場合は、例えば、上記HDDR粉末100重量部に対して2.5重量部の熱硬化型エポキシ樹脂を加えた混練物を形成し、これに対して0.1重量部の滑剤を混合することによってコンパウンドを作成する。このコンパウンドをフィーダカップによる摺り切りによってプレス装置金型キャビティ充填した後、例えばラジアル方向静磁界を形成し、HDDR粉末磁性磁界配向を実行する。粉末充填時、配向の際の磁界強度は、例えば0.9MA/mであり、その磁場印加時間は、2〜10秒程度である。磁界配向は反発磁界を用いて行うことができる。圧縮成形圧力としては、600〜1000MPa程度の圧力をコンパウンドに与えることが好ましい。成形方式としては、通常の圧縮成形やホットプレスが使用され得る。ホットプレスを使用すると、バインダの粘度が低下するため、粉末の配向度や粉末充填度が向上する。このことは、磁石の磁気特性向上に有効である。

0065

なお、異方性ボンド磁石を製造するために、HDDR粉末を成形する方法は、上述の成形方法に限定されず、他の成形方法(例えば射出成形法)を用いても良い。また、異方性ボンド磁石以外の磁石(例えば焼結磁石)を製造するために、本発明による製造方法で作製したHDDR粉末を好適に用いることができる。この場合、公知の焼結磁石製造工程を経て焼結磁石が製造される。

0066

(他の実施形態)上記実施形態では、各HDDR処理ごとに水素放出・再結合反応工程中の炉内雰囲気ガスの熱伝導度を測定し、その時間変化率を求める作業を行っている。その結果、HDDR処理毎に処理量が変動した場合でも、リアルタイムで水素放出・再結合反応時間を最適化することが可能である。

0067

しかし、水素放出・再結合反応時間が処理毎に大きく変動しない場合、または、現実の水素放出・再結合反応時間に比較的長い付加時間が含まれている場合には、各水素放出・再結合反応工程で常に雰囲気ガスの熱伝導度を測定する必要性は低くなる。そのような場合、前述の実施形態について説明した方法で水素放出・再結合反応時間を決定し、それ以降は、その水素放出・再結合反応時間に基づいて、水素放出・再結合反応工程の終了時を制御しても良い。その場合、水素放出・再結合反応工程毎に熱伝導度を測定する必要性が無くなる。

0068

(実施例1)本実施例では、Nd12.5Febal.Co5.0Ga1.0B6.0(各組成は原子%、「bal」は残部)の合金鋳塊を原料合金として用いた。この原料合金に対して、Ar雰囲気中で1100℃、40時間の均質化熱処理をした。この均質化処理は、平均結晶粒径を約100μm以上に粗大化させるために行う。均質化処理済みの原料合金を0.3MPaの加圧水素雰囲気で2時間保持して脆化させ、機械的に解砕した後、粒径425μmのふるいを通して粒径425μm以下の原料粉末を得た。

0069

この原料粉末を一回の処理量が500グラムとなるようにして、図1の水素処理装置で装填した。管状炉の内容積は20リットルであった。

0070

HDDR処理は以下の通りに実行した。

0071

まず、上記水素処理装置の炉内を真空排気した後、水素圧力が0.1MPaの水素雰囲気にて昇温速度を15℃/minとして800℃まで昇温し、この温度で3時間保持した。このとき、5l/minの流量で水素ガスを炉内に導入した。次に、温度および炉内総圧を維持したまま水素ガス流を停止し、5l/minの流量のArガスで5分間炉内の水素ガスを置換した。その後、温度を維持したままArガスを種々の流量で導入しつつロータリーポンプにより炉内を排気した(水素放出・再結合反応工程)。このとき、Arガス流量真空排気弁バルブ開度とを調整することによって最終的に炉内の総圧力を3kPaでバランスさせた。この状態に保持する時間を種々の値に設定し、その保持時間中に原料粉末内の水素ガスを放出させた。この間の炉内雰囲気の全体圧力マノメータによって測定した。水素放出・再結合反応工程の終了後、冷却工程を行った。

0072

図3は、本実施例について、ピラニ真空計出力の値の時間変化および前記出力の微分値の時間変化などの測定結果を示すグラフである。このグラフの横軸は、水素放出・再結合反応工程の開始時からの経過時間(水素放出・再結合反応時間:D.R.time)を示している。このグラフには、磁石特性の水素放出・再結合反応時間依存性も示されている。

0073

図3から、ピラニ真空計出力値は、時間の経過に従って単調に減少することがわかる。これに対して、ピラニ真空計出力値の微分値は、時間の経過に従って必ずしも単調には減少していないが、微分値が毎分1%以下になった時点以降は単調に減少している。

0074

図3のグラフでは、ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下になる時点を矢印Aで示している。図からわかるように、ピラニ真空計出力値の微分値が毎分0.5%以下になると、磁気特性は良好なレベル(ほぼ飽和レベル)に達する。

0075

(実施例2)本実施例では、Nd12.5Febal.Co10.0Ga1.0Zr0.1B6.0(各組成は原子%、「bal」は残部)の合金鋳塊を原料合金として用いた。この原料合金に対して、Ar雰囲気中で1100℃、40時間の均質化熱処理をした。この均質化処理は、平均結晶粒径を約100μm以上に粗大化させるために行う。均質化処理済みの原料合金を0.3MPaの加圧水素雰囲気で2時間保持して脆化させ、機械的に解砕し、粒径425μmのふるいを通して粒径425μm以下の原料粉末を得た。

0076

上記原料粉末に対してHDDR処理を施した。その際の処理量は、下記の表1に示す通りであり、内容積が約20リットルの外熱型管状炉に装填した。

0077

ID=000003HE=085 WI=161 LX=0245 LY=1800
HDDR処理は以下の通りに実行した。

0078

まず、炉内を真空置換した後、水素圧力が0.1MPaの水素雰囲気にて昇温速度を15℃/minとして800℃まで昇温し、この温度で3時間保持した。このとき、5l/minの流量で水素ガスを炉内に導入した。次に、温度および炉内総圧を維持したまま水素ガス流を停止し、5l/minの流量のArガスで5分間炉内の水素ガスを置換した。その後、温度を維持したままArガスを種々の流量で導入しつつロータリーポンプにより炉内を排気した(水素放出・再結合反応工程)。このとき、Arガス流量と真空排気弁のバルブ開度とを調整することによって平衡状態に達した時点での炉内の全圧を種々に変えた。炉内の全圧はマノメータで測定した。

0079

図4は、表1に示す試料のうちの一部について、水素放出・再結合反応工程におけるピラニ真空計の出力変化を示している。矢印B、C、D、E、およびFは、それぞれ、試料No.3、6、7、8、および10に関してピラニ真空計出力が0.5%/分となる時を示している。ピラニ真空計の出力変化が毎分0.5%以下の所定値になった時、冷却工程を開始した。冷却工程では、真空排気を停止し、炉内にアルゴンガスを導入し、炉内圧力を大気圧レベルまで復帰させた。

0080

その後、得られたHDDR粉末について、磁気特性や含有水素量の測定を行った。その結果は表1に示されている。表1から、何れの試料についても良好な磁気特性が得られたことがわかる。

0081

なお、表1においては、「到達圧力」はマノメータの指示値、「到達真空度」はピラニ真空計の指示値、「出力変化」はピラニ真空計の外部出力の変化率を示している。

0082

(比較例1)実施例2で用いた原料粉末と同一種類の原料粉末に対して、HDDR処理を施した。処理量は1kgとし、内容積が約20リットルの外熱型管状炉に装填した。

0083

実施例2と異なる点は、ピラニ真空計の出力時間変化率が毎分0.5%以下になる前に水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始した点にある。それ以外の点は、上記実施例2と同様である。水素放出・再結合反応終了時における真空計出力の時間変化率や得られた磁石特性を表2に示す。

0084

ID=000004HE=045 WI=161 LX=0245 LY=1250
表2においても、「到達圧力」はマノメータの指示値、「到達真空度」はピラニ真空計の指示値、「出力変化」はピラニ真空計の外部出力の変化率を示している。

0085

比較例1の測定結果を実施例2の測定結果(特に試料No.7〜10)と比較すると、比較例1に比較して実施例2の方が残留磁化Brや保磁力Hcjの値がはるかに高いことがわかる。これは、比較例1では、水素放出反応が完了する前に水素放出・再結合反応工程を終了していたため、永久磁石材料として不十分な磁気特性しか得られなかったためである。このことは、比較例1の合金粉末における水素含有量が大きいことからもわかる。

0086

(実施例3)本実施例では、表3に示す各種組成の原料合金を用いた。

0087

ID=000005HE=080 WI=155 LX=0275 LY=0300
これらの原料合金に対して、Ar雰囲気中で1100℃、40時間の均質化熱処理をした。この均質化処理は、平均結晶粒径を約100μm以上に粗大化させるために行う。均質化処理済みの原料合金を0.3MPaの加圧水素雰囲気で2時間保持して脆化させ、機械的に解砕した後、粒径425μmのふるいを通して粒径425μm以下の原料粉末を得た。

0088

上記原料粉末に対してHDDR処理を施した。その際、処理量が50キログラムの原料合金を内熱型炉に装填した。

0089

HDDR処理は以下の通りに実行した。

0090

まず、炉内を真空排気した後、水素圧力が0.2MPaの水素雰囲気にて昇温速度を15℃/minとして870℃まで昇温し、この温度で2時間保持した。このとき、流量が5l/minの水素ガスを炉内に導入した。次に、温度および炉内総圧を維持したまま水素ガス流を停止し、50l/minの流量のArガスで30分間炉内の水素ガスを置換した。その後、温度を維持したままArガスを種々の流量で導入しつつロータリーポンプにより炉内を排気した。このとき、Arガス流量とバルブ開度とを調整することによって平衡状態に達した時点での炉内の全圧を種々に変えた。炉内の全圧はマノメータで測定した。この状態に保持する時間を種々の値に設定し、その保持時間中に原料粉末内の水素ガスを放出させた。この間の炉内雰囲気の全体圧力はダイアフラム型圧力計によって測定した。

0091

本実施例では、炉内の複数の箇所にてピラニ真空計を配置し、その出力変化を測定した。出力変化の低下割合が最も遅いピラニ真空計の出力変化が毎分0.5%以下の所定値になった時、冷却工程を開始した。冷却工程では、真空排気を停止し、炉内にアルゴンガスを導入し、炉内圧力を大気圧レベルまで復帰させた。

0092

その後、得られたHDDR粉末について、磁気特性や含有水素量の測定を行った。その結果は下記表4に示されている。

0093

ID=000006HE=085 WI=161 LX=0245 LY=0300
表4から、何れの試料についても良好な磁気特性が得られたことがわかる。なお、表4においても、「到達圧力」はマノメータの指示値、「到達真空度」はピラニ真空計の指示値、「出力変化」はピラニ真空計の外部出力の変化率を示している。

0094

(比較例2)実施例3で用いた原料粉末と同一種類の原料粉末に対して、HDDR処理を施した。実施例3と異なる点は、出力変化の低下割合が最も遅いピラニ真空計の出力時間変化率が毎分0.5%以下になる前に水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始した点にある。それ以外の点は、上記実施例2と同様である。

0095

水素放出・再結合反応終了時における真空計出力の時間変化率や得られた磁石特性を表5に示す。

0096

ID=000007HE=085 WI=161 LX=0245 LY=1550
表5においても、「到達圧力」はマノメータの指示値、「到達真空度」はピラニ真空計の指示値、「出力変化」はピラニ真空計の外部出力の変化率を示している。

0097

比較例2の測定結果を実施例3の測定結果と比較すると、残留磁化Brや保磁力Hcjの値が、比較例2に比較して実施例3の方がはるかに高いことがわかる。これは、比較例2では、水素放出反応が完了する前に水素放出・再結合反応工程が終了させられているため、永久磁石材料として不十分な磁気特性しか得られなかったためである。このことは、比較例2の合金粉末における水素含有量が大きいことからもわかる。

0098

なお、本発明は、上記各実施例で用いた材料に限定されず、R−T−(M)−B系合金粉末(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)であれば、他の組成の材料にも広く適用できる。

0099

このような永久磁石用希土類系合金粉末においては、希土類元素Rとして、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luの少なくとも一種類の元素を含有する原料を用いる。充分な磁化を得るには、希土類元素Rのうちの50at%以上がPrまたはNdの何れかまたは両方によって占められることが好ましい。

0100

希土類元素Rが10at%以下では、α−Fe相の析出によって保磁力が低下する。また、希土類元素Rが20at%を超えると、目的とする正方晶Nd2Fe14B型化合物以外にRリッチの第2相が多く析出し、磁化が低下する。このため、希土類元素Rは全体の10〜20at%の範囲内にあることが好ましい。

0101

Tは鉄族元素であって、FeおよびCoを含む。Tが67at%未満の場合、保磁力および磁化ともに低い第2相が析出するため磁気特性が劣化する。Tが85at%を超えると、α−Fe相の析出によって保磁力が低下し、また角型性も低下する。このため、Tの含有量は67〜85at%の範囲内にあることが好ましい。

0102

なお、TはFeのみから構成されていても良いが、Coの添加によってキュリー温度が上昇し、耐熱性が向上する。Tの50at%以上はFeで占められることが好ましい。Feの割合が50at%を下回ると、Nd2Fe14B型化合物の飽和磁化そのものが減少するからである。

0103

Bは、正方晶Nd2Fe14B型結晶構造を安定的に析出するために必須である。Bの添加量が4at%未満ではR2T17相が析出するため保磁力が低下し、減磁曲線の角型性が著しく損なわれる。また、Bの添加量が10at%を超えると、磁化の小さな第2相が析出してしまう。従って、Bの含有量は4〜10at%の範囲であることが好ましい。

0104

粉末の磁気的な異方性をより高めるためには他の添加元素Mを付与する。添加元素Mとしては、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種類の元素が好適に使用される。これらの元素のうち、Ni、Ga、Zr、およびHfは、水素不均化時にR2T14B相を安定化する。また、Al、Ni、Ga、Zr、In、Sn、およびHfは、水素放出時に磁気異方性を付与する。Ti、Cu、V、Cr、Nb、Mo、Ta、およびWは、水素放出時に保磁力の低下を抑制する。このような添加元素Mは、全く添加されていなくても良いが、添加する場合は、添加量を10at%以下にすることが好ましい。添加量が10at%を超えると、強磁性ではなく第2相が析出して磁化が低下するからである。なお、添加量が0.1at%未満では特別の効果はほとんど発現しない。

発明の効果

0105

本発明によれば、雰囲気の熱伝導率に対して敏感な影響を与える水素放出反応の終了時を雰囲気ガスの熱伝導率を測定することによって検知する。このため、たとえHDDR処理を受ける原料粉末の処理量や水素処理装置の規模が変動したとしても、常に、HDDR処理の水素放出反応の終了時を的確に検知することが可能になる。その結果、磁石粉末中に含有される水素量の変動を抑制し、磁気特性に優れた磁石粉末ひいては永久磁石を製造することが可能になる。

0106

また、本発明の他の側面によれば、予め測定した熱伝導率に基づいて水素放出反応に要する時間を決定し、その時間またはその時間に付加時間を加えた時間だけ水素放出・再結合反応工程を実行するため、各HDDR処理毎にリアルタイムで熱伝導率を測定する必要が無くなる。

図面の簡単な説明

0107

図1本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法に用いられる水素処理装置の構成例を示す図である。
図2水素放出・再結合反応工程におけるピラニ真空計出力の時間変化を示すグラフである。
図3実施例1について、ピラニ真空計出力の値の時間変化および前記出力の微分値の時間変化などの測定結果を示すグラフである。このグラフの横軸は、水素放出・再結合反応工程の開始時からの経過時間(水素放出・再結合反応時間:D.R.time)を示している。
図4表1に示す試料のうちの一部について、水素放出・再結合反応工程におけるピラニ真空計の出力変化を示すグラフである。矢印B、C、D、E、およびFは、それぞれ、試料No.3、6、7、8、および10に関してピラニ真空計出力が0.5%/分となる時を示している。

--

0108

1ガス導入口
2排気口
3圧力調整弁
4ガス導入弁
5ガス放出弁
10 環状炉
13ヒータ
20制御装置
21プログラム制御器
22電源
23微分回路
30 ピラニ真空計

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