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技術 永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 冨澤浩之池上尚
出願日 1999年5月26日 (20年1ヶ月経過) 出願番号 1999-146045
公開日 2000年12月5日 (18年7ヶ月経過) 公開番号 2000-336405
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 金属質粉又はその懸濁液の製造
主要キーワード 警報端子 温度差計 中央段 温度変化パターン 温度低下幅 温度指示値 プログラムコントローラ 残存水素量
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図面 (8)

課題

処理量処理装置等を変更した場合でも、被処理物含有水素量を安定させたHDDR処理を行うことができる永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法を提供する。

解決手段

HDDR処理における水素放出再結合反応工程の終了点を、被処理物であるR−T−(M)−B系合金の温度を測定することによって決定する。ここで、RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロンである。

概要

背景

希土類系永久磁石用合金粉末水素処理法には、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法と呼ばれるものがある。

このような水素処理(以下、「HDDR処理」と称する。)を行うには、まず、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)の合金塊または粉末H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって被処理物水素吸蔵させ、相・不均化を生じさせる。次に、H2分圧の低い真空雰囲気または不活性ガス雰囲気中において温度500℃〜1000℃に保持し、水素放出脱水素)処理を行う。その後、被処理物を冷却することによって、求める合金磁石粉末を得ることができる。HDDR処理法によって得られる合金磁石粉末は、粉末状態でも永久磁石用として実用可能なレベル保磁力を有している。

HDDR処理の途中、被処理物の温度が大きく変化することがわかっている。これは、水素と被処理物との反応によって水素化時に発熱が生じ、また、水素放出時吸熱が生じるためである。被処理物の大きな温度変化は、磁気特性劣化させたり、変動させたりすると考えられていた。特に、水素放出時の吸熱反応による温度低下は被処理物の磁気特性に悪影響を与えるとされていた。

特開平2−4901号公報には、水素放出時の温度低下に着目せずに所定時間水素放出・再結合反応工程を行う方法が開示されている。この公報では、水素放出処理を行った後の雰囲気の到達真空度が1.3×10-2Paに達することが確認されている。

特開平3−146608号公報および特開平4−17604号公報には、水素放出時の吸熱反応による温度低下によって被処理物の磁気特性、特に保磁力が低下することが示されている。その対策として、蓄熱材を用いて処理を行うことによって、化学反応に伴う温度変化を小さく抑える方法が提案されている。

特開平5−163510号公報には、水素放出時の温度低下を50℃以内に抑えるために、外部のヒーター温度制御する熱処理炉の構造が提案されている。

特開平7−188713号公報には、HDDR処理中の被処理物の温度を均一化するための熱処理装置が開示されている。この装置は、複数の反応管に被処理物を分割して装填することによって、相互に反応熱の影響を及ぼしあわないように工夫されている。

特開平5−166616号公報には、水素化後、雰囲気を真空に保ちながら降温しつつ、水素放出を行う方法が開示されている。

また、特開平7−57910号公報には、均一な組織を得ることができる鋳造方法を開示しているが、原料合金の組織によって水素放出反応進行度にばらつきが生じ、それによってHDDR処理を行った材料の磁気特性が安定しないことが示されている。

一方、本願発明者は、種々の検討を行った結果、被処理物の磁気特性のばらつき原因が水素放出時の吸熱反応に伴う温度低下ではなく、むしろ水素化の条件に起因していることを見いだし、このことを特開平6−128610号公報や特開平7−54003号公報等に開示している。当該公報では、熱処理条件として、水素雰囲気での昇温速度を600℃〜750℃の温度域において10℃/min以上とするか、または750℃に到達するまでは真空中または不活性ガス中で昇温することで、大きな残留磁化と保磁力とを両立させることができ、安定して優れた磁気特性を得ることができることが示されている。

概要

処理量処理装置等を変更した場合でも、被処理物の含有水素量を安定させたHDDR処理を行うことができる永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法を提供する。

HDDR処理における水素放出・再結合反応工程の終了点を、被処理物であるR−T−(M)−B系合金の温度を測定することによって決定する。ここで、RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロンである。

目的

本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、HDDR処理の処理装置要因や処理量に関係なく、被処理物の含有水素量を安定させ、それによって磁気特性が均一な永久磁石用希土類系合金粉末を製造する方法を提供することにある。

本発明の他の目的は、上記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する方法や上記永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法に好適に用いられる水素処理装置を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度を測定し、前記温度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することを特徴とする永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項2

前記HDDR処理を行うための炉内の温度から前記合金の温度を引いた値が10℃以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項3

前記温度の時間変化率が予め設定した値以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項4

前記温度の時間変化率が毎分1.0℃/分以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項5

前記合金の温度を熱電対によって測定することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項6

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項7

前記終了点を検知した後、予め設定された付加時間が経過してから前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項8

前記付加時間を4時間以下にすることを特徴とする請求項7に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項9

前記合金の温度を複数箇所で測定し、前記複数点のうち最も温度変化時期が遅い箇所における測定値を基準として、前記終了点を決定することを特徴とする請求項1から8の何れかひとつに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項10

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程において、被処理物反応熱に伴う温度低下が生じ、その後、反応の収束とともに被処理物の温度が炉内設定温度回復するまで前記水素放出・再結合反応工程を続けることを特徴とする永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項11

請求項1から10の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する永久磁石の製造方法。

請求項12

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、予め前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度を測定し、前記温度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することによって予め決定していた水素放出・再結合反応工程時間に基づいて、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項13

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前炉内温度と合金温度との差が予め設定した値以下になった時までの経過時間と水素放出付加時間との合計であることを特徴とする請求項12に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項14

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記温度の時間変化率が毎分1.0℃/分以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であることを特徴とする請求項12に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項15

前記付加時間を4時間以下にすることを特徴とする請求項13または14に記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法。

請求項16

請求項12から15の何れか一つに記載の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する永久磁石の製造方法。

請求項17

R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行うことのできる水素処理装置であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程と、を包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度度を測定する温度測定器と、前記温度測定器の出力に基づいて前記水素放出・再結合反応工程を終了させる制御装置とを備えている水素処理装置。

技術分野

0001

本発明は、各種モータアクチュエータ等に適した各種永久磁石に好適に用いられる希土類系合金粉末の製造方法に関する。また、本発明は、この製造方法に使用される水素処理装置および永久磁石の製造方法にも関している。

背景技術

0002

希土類系永久磁石用合金粉末水素処理法には、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法と呼ばれるものがある。

0003

このような水素処理(以下、「HDDR処理」と称する。)を行うには、まず、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)の合金塊または粉末H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって被処理物水素吸蔵させ、相・不均化を生じさせる。次に、H2分圧の低い真空雰囲気または不活性ガス雰囲気中において温度500℃〜1000℃に保持し、水素放出脱水素)処理を行う。その後、被処理物を冷却することによって、求める合金磁石粉末を得ることができる。HDDR処理法によって得られる合金磁石粉末は、粉末状態でも永久磁石用として実用可能なレベル保磁力を有している。

0004

HDDR処理の途中、被処理物の温度が大きく変化することがわかっている。これは、水素と被処理物との反応によって水素化時に発熱が生じ、また、水素放出時吸熱が生じるためである。被処理物の大きな温度変化は、磁気特性劣化させたり、変動させたりすると考えられていた。特に、水素放出時の吸熱反応による温度低下は被処理物の磁気特性に悪影響を与えるとされていた。

0005

特開平2−4901号公報には、水素放出時の温度低下に着目せずに所定時間水素放出・再結合反応工程を行う方法が開示されている。この公報では、水素放出処理を行った後の雰囲気の到達真空度が1.3×10-2Paに達することが確認されている。

0006

特開平3−146608号公報および特開平4−17604号公報には、水素放出時の吸熱反応による温度低下によって被処理物の磁気特性、特に保磁力が低下することが示されている。その対策として、蓄熱材を用いて処理を行うことによって、化学反応に伴う温度変化を小さく抑える方法が提案されている。

0007

特開平5−163510号公報には、水素放出時の温度低下を50℃以内に抑えるために、外部のヒーター温度制御する熱処理炉の構造が提案されている。

0008

特開平7−188713号公報には、HDDR処理中の被処理物の温度を均一化するための熱処理装置が開示されている。この装置は、複数の反応管に被処理物を分割して装填することによって、相互に反応熱の影響を及ぼしあわないように工夫されている。

0009

特開平5−166616号公報には、水素化後、雰囲気を真空に保ちながら降温しつつ、水素放出を行う方法が開示されている。

0010

また、特開平7−57910号公報には、均一な組織を得ることができる鋳造方法を開示しているが、原料合金の組織によって水素放出反応進行度にばらつきが生じ、それによってHDDR処理を行った材料の磁気特性が安定しないことが示されている。

0011

一方、本願発明者は、種々の検討を行った結果、被処理物の磁気特性のばらつき原因が水素放出時の吸熱反応に伴う温度低下ではなく、むしろ水素化の条件に起因していることを見いだし、このことを特開平6−128610号公報や特開平7−54003号公報等に開示している。当該公報では、熱処理条件として、水素雰囲気での昇温速度を600℃〜750℃の温度域において10℃/min以上とするか、または750℃に到達するまでは真空中または不活性ガス中で昇温することで、大きな残留磁化と保磁力とを両立させることができ、安定して優れた磁気特性を得ることができることが示されている。

発明が解決しようとする課題

0012

しかしながら、水素放出・再結合反応工程には、被処理物の磁気特性および処理の効率の面からみて改良すべき点がある。それは、HDDR処理に供される被処理物の量、処理設備の有効内容積温度分布雰囲気ガス供給能力、および雰囲気ガス排気能力等の要因が変動すると、処理後の合金磁石粉末の残存水素量差異が生じることである。このことは、磁気特性をばらつかせる原因の一つとなっている。

0013

また、水素放出処理は、HDDR処理の処理サイクルの効率を高めるためにできるだけ短時間で行うことが好ましい。しかし、その処理時間は、従来においては処理設備ごと、処理量ごとに実験的に決定する必要があった。

0014

水素放出処理終了後の真空度を確認する方法は、実験室レベルの少量処理では特に問題は生じない。しかし、工業的な規模となれば、真空計設置場所、真空計のガス種による感度差等が問題となる。時には、真空計の指示値は充分高い真空度を示していても、被処理物にはまだ多くの水素が含有していることがある。このことは、磁気特性のばらつきの原因となる。

0015

水素放出処理時の温度変化を抑え、水素放出反応の効率を高める方法は種々提案されていが、断熱材を用いたり、熱処理装置の構造を変更する方法は、工業規模の処理を行うには設備容量が過大となったり、少量バッチの設備を多数並べる必要があり、現実的ではない。

0016

水素放出時の温度を徐々に下げて高い保磁力を得る方法は、被処理物の量が大きい場合には、水素放出反応が終了しないまま温度を低下させてしまう可能性が高い。このため、これを工業的に実施することは困難である。

0017

以上のように、水素放出・再結合反応工程の工夫によって磁気特性を安定化させたり、磁気特性の向上を図る提案が種々なされているが、いずれも被処理物の水素放出反応の進行度およびその終了点を検出することが考慮されていないため、残存水素量に差異が生じて磁気特性をばらつかせる可能性を有していた。

0018

従来、水素放出・再結合反応工程に要する処理時間は、前述したように処理時間を経験的に設定するか、または水素放出処理終了時の真空度を測定して水素放出反応の終了を確認しているにすぎなかった。従って、被処理物の含有水素量直接測定して水素放出・再結合反応が完了したことを毎回確認しているわけではない。そのため、処理設備を変更したり、被処理物の量を変えたりするごとに、予備実験によって水素放出時間を決定するか、経験的に水素放出時間を設定する必要があった。このため、HDDR処理後の被処理物の水素含有量処理バッチごとに変化し、それによって得られる永久磁石用合金粉末の磁気特性が処理ごとに変動することがあった。また、必要以上に長い時間の水素放出処理を行うことによって、処理サイクルの効率を低下させる結果を招いていた。

0019

本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、HDDR処理の処理装置要因や処理量に関係なく、被処理物の含有水素量を安定させ、それによって磁気特性が均一な永久磁石用希土類系合金粉末を製造する方法を提供することにある。

0020

本発明の他の目的は、上記永久磁石用希土類系合金粉末を用いて永久磁石を製造する方法や上記永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法に好適に用いられる水素処理装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0021

本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程とを包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度を測定し、前記温度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することを特徴とする。

0022

前記HDDR処理を行うための炉内の温度から前記合金の温度を引いた値が10℃以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点とすることが好ましい。

0023

前記温度の時間変化率が予め設定した値以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点としてもよい。

0024

前記温度の時間変化率が毎分1.0℃/分以下になったときを前記水素放出・再結合反応の終了点としてもよい。

0025

前記合金の温度を熱電対によって測定することが好ましい。

0026

前記水素化・不均化反応工程では、650℃以上950℃以下の温度にて水素分圧を10kPa以上1000kPa以下に保持し、前記水素放出・再結合反応工程では、650℃以上1000℃以下の温度にて水素分圧を100Pa以下に保持することが好ましい。

0027

前記終了点を検知した後、予め設定された水素放出付加時間が経過してから前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始してもよい。

0028

前記水素放出付加時間は4時間以下にすることが好ましい。

0029

前記合金の温度を複数箇所で測定し、前記複数点のうち最も温度変化時期の遅い箇所における測定値を基準として、前記終了点を決定してもよい。

0030

本発明による他の永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程とを包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程において、被処理物の反応熱に伴う温度低下が生じ、その後、反応の収束とともに被処理物の温度が炉内設定温度回復するまで前記水素放出・再結合反応工程を続けることを特徴とする。

0031

前記被処理物の反応熱に伴う温度低下は、100℃以下であることが好ましい。

0032

本発明による永久磁石の製造方法は、上記何れかの永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する。

0033

本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行う工程を包含する永久磁石合金粉末の製造方法であって、前記HDDR処理は、予め前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度を測定し、前記温度に基づいて前記HDDR処理における水素放出・再結合反応の終了点を検知することによって予め決定していた水素放出・再結合反応工程時間に基づいて、前記水素放出・再結合反応工程を終了し、前記冷却工程を開始することを特徴とする。

0034

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前炉内温度と合金温度との差が予め設定した値以下になった時までの経過時間と水素放出付加時間との合計であることが好ましい。

0035

前記水素放出・再結合反応時間は、前記水素放出・再結合反応工程の開始時から前記温度の時間変化率が毎分1.0℃/分以下になった時までの経過時間と付加時間との合計であってもよい。

0036

前記付加時間は4時間以下にすることが好ましい。

0037

本発明による永久磁石の製造方法は、上記何れかの永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法によって製造された永久磁石用希土類系合金粉末を用意する工程と、前記合金粉末を用いて永久磁石を製造する工程とを包含する。

0038

本発明による水素処理装置は、R−T−(M)−B系合金(RはYを含む希土類元素のうちの一種類以上、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)に対してHDDR処理を行うことのできる水素処理装置であって、前記HDDR処理は、水素化・不均化反応工程と、水素放出・再結合反応工程と、冷却工程とを包含しており、少なくとも前記水素放出・再結合反応工程における前記合金の温度度を測定する温度測定器と、前記温度測定器の出力に基づいて前記水素放出・再結合反応工程を終了させる制御装置とを備えている。

発明を実施するための最良の形態

0039

本発明者は、HDDR処理時の水素処理装置に起因する要因や処理量などの変動による影響を受けない水素放出処理の方法を種々検討した結果、被処理物の温度を測定することによって水素放出・再結合反応の終了点を検知すれば、被処理物の残存水素量を一定レベルに維持することができることを見いだし、本発明を想到するに至った。

0040

本発明では、R−T−(M)−B系原料合金(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)のインゴットまたは粉末に対してHDDR処理を行う。

0041

以下、HDDR処理によって永久磁石合金粉末を製造する方法の実施形態を詳細に説明する。

0042

まず、R−T−(M)−B系原料合金(以下、「R−T−B系合金」と略記する場合がある。)のインゴットを用意する。このインゴットをそのまま用いても良いが、より好ましくは、この原料合金のインゴットに対して、窒素以外の不活性ガス雰囲気中で1000〜1200℃、1〜48時間の均質化のための熱処理を行う。この熱処理によってR−T−B系合金インゴット中の元素拡散が生じ、成分が均質化される。より詳細には、R−T−B系合金インゴットは主相であるR2Fe14B相とR−rich相とから主として構成されているが、R2Fe14B相にはα−Fe相およびR2Fe17相などが存在していることが多い。そのため、熱処理によって、R−T−B系合金インゴット中のα−Fe相およびR2Fe17相等を拡散してできるだけ消滅させて、実質的にR2Fe14B相とR−rich相の2相からなる組織にする。このような均質化処理によって平均結晶粒径は約100μm以上に粗大化する。平均結晶粒径の粗大化は、HDDR処理磁粉が大きな磁気的異方性を有するためには好ましい。

0043

不活性ガス雰囲気として窒素を用いない理由は、窒素がR−T−B系合金と反応するためである。1000℃未満の温度では、R−T−B系合金中の元素拡散に時間がかかりすぎるため製造コスト引き上げ、また、別の相が形成されるために好ましくない。一方、熱処理温度が1200℃を超えると、合金の融解が生じるため好ましくない。より好ましい熱処理温度範囲は、1105℃〜1150℃である。 なお、熱処理時間が1時間未満の場合には元素拡散が不十分になるが、逆に48時間を越える長時間の処理を行う意義はない。

0044

次に、均質化処理済みの原料合金を0.05〜1.0MPaの水素雰囲気で5分〜10時間保持することによって、合金に水素を吸蔵させ、合金を脆化させる。原料合金は水素を吸蔵すると、自然崩壊を起こし、亀裂が生じる。このような水素粉砕は、R−T−B系インゴットを圧力容器中に入れた後、純度99.9%以上のH2ガスを50〜1000kPaまで導入し、次いでその状態を5分〜10時間保持することによって行うことができる。こうして、粒径1000μm以下の原料粉末を得る。

0045

なお、水素粉砕に代えて、あるいは水素粉砕後に機械粉砕を行っても良い。機械粉砕は、目的の粒度粗粉砕粉を得るために行う。機械粉砕は、フェザーミルボールミル、またはパワーミルなどの粉砕機を用いて行うことができる。粗粉砕粉の平均粒径は10〜500μmの範囲にあることが好ましい。

0046

こうして得た粗粉砕粉は、単一の結晶方位を有する粒子から構成されており、各粒子の中では磁化容易軸が一方向にそろっている。この結果、HDDR処理によって得られる永久磁石合金粉末が異方性を示すことが可能になる。

0047

次に、粗粉砕粉となった原料粉末に対して、「水素化・不均化反応工程」、「水素放出・再結合反応工程」、および「冷却工程」を連続して実行する。これらの工程は、後に説明する水素処理装置を用いて行うことができる。

0048

以下に、HDDR処理の各工程を詳細に説明する。

0049

<水素化・不均化反応工程>まず、前述の方法で作製した原料粉末をH2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気(水素分圧10〜1000kPa)中で温度650℃〜950℃に保持する。こうすることによって、上記原料粉末に水素を吸蔵させ、不均化反応を生じさせることができる。水素雰囲気中での昇温速度は10〜200℃/minとすることが好ましい。温度を例えば800℃まで昇温させる場合は、その温度で15分〜8時間保持することが好ましい。

0050

<水素放出・再結合反応工程>次に、H2分圧100Pa以下の真空雰囲気またはH2分圧100Pa以下の不活性ガス雰囲気中において温度650℃〜1000℃にて水素放出・再結合反応を生じさせる。この工程は、まず温度および炉内総圧を水素化・不均化反応工程のときの温度および炉内圧力とほぼ同レベルに維持したまま、水素ガスの供給を停止し、不活性ガスで炉内の水素ガスを置換することによって開始する。その後、炉内温度を上記温度範囲に維持したまま、不活性ガスを炉内に導入しながら炉内の雰囲気ガスをポンプ排気し、炉内の雰囲気ガス圧力をほぼ一定レベルに保持する。

0051

上述のように水素放出・再結合反応のために炉内温度を高温に保持する時間を、本明細書では「水素放出・再結合反応時間」と称することにする。

0052

本実施形態では、「水素放出・再結合反応時間」を予め設定せずに、水素放出・再結合反応工程における被処理物の温度を測定し、この温度に基づいて水素放出反応の終了を検出するようにしている。より具体的には、被処理物温度と設定温度との差、または被処理物温度の時間変化率を求め、これらの値が予め設定した値以下になったときを基準にして、水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始するようにしている。

0053

以下、被処理物の温度を測定することによって水素放出反応の終了点を検出できる理由などを詳細に説明する。

0054

水素放出・再結合反応時における被処理物の温度は、水素放出反応に伴う反応熱によって低下する。このため、被処理物の温度低下は、水素放出反応が進行していることを示す。すなわち、水素放出・再結合反応の吸熱に伴い、被処理物の温度は低下するが、水素放出反応が終了すれば、被処理物の温度は急速に上昇して炉内温度に近づく。従って、温度低下と水素放出反応との関係を利用すれば、被処理物の温度を測定することによって水素放出反応の進行状況を知ることができ、水素放出反応の終了点を容易に決定することができる。

0055

従来の技術では、被処理物の磁気特性を劣化させないという目的から、水素放出時における被処理物の温度変化を小さくする改良がなされていた。それゆえ、水素放出処理における被処理物の温度低下を積極的に利用することはなかった。また、一般に大きな反応熱を伴う化学反応では、反応熱によって反応速度が律せられてしまうため、化学反応に要する時間が増大する。従来技術によれば、被処理物の温度変化を制御することによって反応速度を大きく維持することができるため、処理時間を短縮できるという意味では効果がある。

0056

しかしながら、水素放出処理の水素放出速度は、水素放出反応と同時または引き続き起こる再結合反応のときに生成する再結合の粒径に影響を与えている可能性が高い。それゆえ、水素放出速度が一定でないと、再結合の粒径が一定でなくなり、被処理物の結晶組織が不均一になる可能性がある。

0057

本発明者は、被処理物の温度変化を抑制しなければ、反応熱によって水素放出速度が自然にほぼ一定になり、その結果、再結合反応によって生成する結晶組織が均一化しやすいことを見いだした。

0058

図1は、水素放出反応時(脱水素反応時)において被処理物が示す最大の温度低下量最大温度低下幅)と、得られた永久磁石用合金粉末の磁気特性(保磁力および残留磁化)との関係を示している。図1からわかるように、最大温度低下幅が大きくても必ずしも磁気特性が劣るわけではなく、最大温度低下幅が100℃以下ならば、磁気特性に問題は生じない。従って、100℃を超えるような大きな温度変化が生じない限り、この温度変化を小さく抑える必要はない。むしろ、温度変化が生じることによって水素放出反応の終了点を検出できることの方が利点が大きいと言える。

0059

従来、温度低下が大きいと、磁気特性が劣化すると考えられていたのは、水素放出・再結合反応が充分に終了しないうちに次の冷却工程へと進んでいたためと思われる。
[測温方法]被処理物の測温方法としては、熱電対、測温抵抗体、または放射温度計などを用いることが可能である。ただし、処理温度域が500℃〜1000℃であり、温度変化が急激に生じること等を考慮すると、現状の測温技術では熱電対を用いる測温方法が最も実用的であるため好ましい。これに対して、測温抵抗体は、測定精度に優れているけれども、500℃以上の温度範囲で安定して用いることができない。また、放射温度計は、雰囲気や測温用窓の汚れなどによって温度測定誤差を生じやすく、被処理物の表面温度しか検出できないという不都合もある。

0060

図2(a)は、被処理物の測温位置と温度変化との関係を示し、図2(b)は被処理物の測定位置を示している。図2(a)からわかるように、水素放出反応によって生じる温度低下は表面で小さく、内部では大きい。従って、被処理物の表面温度しか検出できない放射温度計を用いることは好ましくない。

0061

測温の場所は、被処理物の温度変化を検出しやすいという理由から被処理物の内部とすることが好ましい。従って、熱電対を被処理物内部に装入する方法が望ましい。
[水素放出時間の決定方法]水素放出・再結合反応工程の処理時間を必要充分な時間に設定することによって、被処理物の磁気特性の変動を小さく抑えることができる。また、被処理物中の残存水素量も安定化させることができる。

0062

前述のように被処理物の温度低下が水素放出反応の進行を示すので、水素放出・再結合反応工程に要する時間は、被処理物の実温度を測定することによって決定することができる。具体的には、いったん低下した被処理物の温度が再び上昇に転じ、設定温度に達したとき、または被処理物の温度変化率が設定した温度変化率に達したときを水素放出反応の終了点とすることができる。

0063

実際には、再結合反応が水素放出反応と同時または引き続き起こるため、この際にわずかながら元素の拡散が生じる。このため、拡散に要する時間が最低限必要となる。特に、被処理物が少量のときには水素放出が短時間で完了するため、合金元素拡散時間不足する。従って、水素放出反応の終了後も温度を維持した方が優れた磁気特性を得ることができる。

0064

図3(a)は、HDDR処理中の雰囲気に含まれる水素量時間変化を示している。図3(b)は、HDDR処理中の被処理物の温度変化を示している。水素化・不均化反応工程の開始時から水素放出・再結合反応工程の終了時までの設定温度は850℃で一定である。

0065

このHDDR処理では、水素化・不均化反応工程の終了後、雰囲気中の水素を追い出すことを主目的として、雰囲気をArガス掃気している。雰囲気ガスをArガスで掃気するとき、雰囲気ガスの水素分圧が低下するため、図3(b)に示すように、わずかながら被処理物から水素が放出され、被処理物の温度が低下する。水素放出・再結合反応工程では、水素放出反応によって時刻aから急激に低下した被処理物の温度が時刻bで徐々に増加し始める。その後、被処理物温度は、時刻cから急激に増加した後、やがて飽和し、設定温度に到達する。

0066

上記時刻cは、被処理物の温度が設定温度よりも十数℃低い状態に復帰する温度である。このため、被処理物の温度を設定温度から引いた値が10℃以下となるレベルにまで被処理物温度が上昇したとき、水素放出反応は終了したものと判断することができる。

0067

図3(b)において、設定温度から被処理物温度を差し引いた値が10℃に復帰するときを時刻d1とし、温度変化率が1℃/minとなるときを時刻d2とする。この場合、時刻cで水素放出反応はほぼ完了しているため、上記時刻d1または時刻d2を水素放出・再結合反応の終了点とすることができる。言い換えると、時間(d2−a)または時間(d1−a)を水素放出(脱水素)反応に要する時間とすることができる。

0068

なお、時刻d1と時刻d2との何れを基準点とするかは、図4(a)から(c)に示す種々の温度変化パターンに応じて観測しやすい方を選択して決めればよい。水素放出反応を完了させるという観点から、時刻d1および時刻d2のうち遅い方を選択してもよい。

0069

なお、図4(a)から(c)に示すような種々の測温パターンが得られる原因は、被処理物の温度変化が位置によって異なることの他、熱電対と被処理物との接触状況に基づく影響などが考えられる。
[水素放出付加時間]特に短時間で水素放出が完了するような条件では、前記基準点でただちに水素放出・再結合反応工程を終了することなく、予め設定した付加時間を経過した後に水素放出・再結合反応工程を終了することが好ましい場合がある。

0070

図5(a)は、水素化条件を一定にして種々の脱水素処理時間にて処理した合金粉末の水素含有量と、脱水素処理時間との関係を示している。図5(b)は、水素化条件を一定にして種々の脱水素処理時間にて処理した合金粉末の磁気特性と、脱水素処理時間との関係を示している。図5(b)からわかるように、水素放出反応が終了したあと、保磁力は実用的な値(例えば、約1.0MA/m)に達し、それ以降は徐々に低下する傾向を示している。

0071

付加時間をゼロ時間として処理することも可能である。しかし、短時間(例えば、10分程度)で水素放出反応が完了するような条件では、付加時間を設けることが保磁力向上をもたらすために好ましい。ただし、付加時間が4時間を超えると保磁力が低下し、また、HDDR処理のサイクル時間が長くなりすぎるため、好ましくない。従って、水素放出・再結合化反応時間に含める付加時間は4時間以下にすることが好ましい。

0072

なお、水素放出が長時間に及ぶ処理条件でも、0〜4時間の付加時間を加えることは可能である。水素放出が短時間の処理条件のものと比較すると、利点は小さいが磁気特性上の実害もない。
温度測定点の複数化]HDDR処理量が工業的な規模になると、水素処理装置の同一炉内においても場所によって温度差が生じる。また、雰囲気ガスの置換が不充分な場合、場所によって水素放出反応に差が生じる。これらの差が生じないような場合は、一箇所での測温で充分であるが、このような場合は少ない。多くの場合、種々の不確定要素によって測温点を1点に決定することが困難であるので、複数のポイントで測温することが好ましい。

0073

複数点で温度を測る場合、各測温点ごとに、温度変化の大きさが異なり、さらには水素放出反応の終了時点も異なることが多い。水素放出処理時間と磁気特性、あるいは水素含有量との関係は、水素放出処理時間が長い方には変化が小さい。一方、水素放出反応終了点の早い点を基準とすると、場所によって水素放出の不充分な部分が生じる。従って、複数点での測温時は、水素放出・再結合反応工程の終了点の最も遅い点を基準にすることが好ましい。
[水素処理装置]図6(a)および(b)を参照しながら、本発明による永久磁石合金粉末の製造方法を実施するための水素処理装置の構成を説明する。

0074

処理装置100は、図6(a)に示すように、ガス導入口1および排気口2を有する炉10と、炉10内に配置された処理容器3に装填される被処理物11の温度を測定する温度計20とを備えている。温度計20には、温度調節器30が接続されている。

0075

炉10には、断熱材6に覆われたヒータ5が設けられている。炉10の内部には、炉床4が設けられており、炉床4の上に処理容器3が配置される。

0076

温度調節器30は、タイマー31、プログラムコントローラ部32、およびSCR33を備えている。タイマー31およびSCR33は、プログラムコントローラ部32に接続されている。プログラムコントローラ部32は、炉10の外部に接続されている温度計8に接続されており、温度計8によって測定された温度の情報を受けとる。SCR33はヒータ5に接続されており、プログラムコントローラ部32からの指示によってヒータ5の温度を制御する。

0077

本実施形態では、温度計20として測温用熱電対を使用する。測温用熱電対としては、例えば、白金系のR熱電対、W−Re熱電対、K熱電対シース線などを用いることができる。

0078

白金系のR熱電対は、水素雰囲気で使用すると劣化するため、長期にわたる使用では温度指示値がずれる可能性がある。しかし、実用上はそれほど大きな誤差は生じないため、白金系のR熱電対を好適に用いることができる。また、白金系のR熱電対に対する劣化の影響は、適宜検定して温度補正をすることによって小さく抑えることができる。

0079

W−Re熱電対は水素雰囲気中で使用可能であり、本実施形態においてもW−Re熱電対を好適に用いることができる。ただし、入手容易性、取り扱いの容易性、および検定の容易性を考慮すると、W−Re熱電対でなくても、白金系のR熱電対で充分なことが多い。

0080

測温用熱電対として、K熱電対のシース線を用いることも可能である。K熱電対のシース線を高温で使用するときには、耐熱性を向上させるために比較的線径の大きい(例えば、線径3.2mmφ)K熱電対のシース線を用いることが多い。しかし、熱電対の線径を大きくすると、熱電対の熱容量が大きくなるため、温度変化に対する応答性の低下を招くおそれがある。また、R熱電対をアルミナ製等の保護管に挿入して使用する場合、温度変化に対する応答性の低下を招く。従って、応答性の低下を招かないように、適切な熱電対を選定し使用する必要がある。

0081

熱電対20の装入方法としては、例えば、図7(a)に示すように、処理容器3の蓋4に熱電対装入管5を取り付けて、管5の中に熱電対20を挿入する方法がある。また、図7(b)に示すように、熱電対20を固定した測温治具6を容器3の上に乗せ、そのまま装入してもよい。このような方法を採用すれば、同一処理容器を用いた場合、毎回一定の位置で測温することができる。

0082

なお、温度調節器30で設定した温度と炉10内の温度にある程度のずれが生じる可能性がある。このようなずれが生じる場合には、炉10内の温度が目的温度となるように予め測温して温度調節器30の内部で補正しておくことが好ましい。あるいは、ずれを予め考慮して温度調節器30の設定を行ってもよい。本明細書における「設定温度」とは、温度調節器30で設定した温度ではなく、炉10内の温度を意味することとする。

0083

さらに厳密に温度の管理をする場合には、炉10内に設けた被処理物の熱電対20とは別に炉内温度測定用熱電対を設置することが好ましい。この場合、炉内熱電対の温度と被処理物の熱電対20の温度との差を「温度低下幅」として測定することができる。図6(b)は、この場合の処理装置200を示している。炉内温度測定用熱電対は、被処理物の温度変化の影響を受けにくい架台等に接触させて測温することが好ましい。なお、2組の熱電対の温度差を検出する場合、定期的に熱電対2組を同時に校正しておくことが望ましい。

0084

また、水素放出・再結合反応工程の設定温度を一定としない場合は、温度差計40を用いた処理装置200が適している。

0085

再び、図6(a)を参照する。温度計20には警報端子等が備え付けられており、この警報端子は、被処理物11の温度を設定温度から差し引いた値が10℃以下になると信号を出力するように構成されている。被処理物11の温度と炉10内の温度との差を検出する場合には、被処理物の温度を炉10内の温度から差し引いた値が10℃以内の範囲になった時に警報端子から信号を出力するようにする。この信号は、温度計20に接続されている温度調節器30に送出され、温度調節器30中のプログラムコントローラ部32に入力される。プログラムコントローラ部32は、上記信号の入力に応答して内蔵プログラムを進行させる。このプログラムは、プログラムコントローラ部32が上記信号を受け取ると、水素放出・再結合反応工程を終了させ、冷却工程を開始させるように構成されている。なお、温度調節器30に付加時間を設定しておくこともできる。付加時間を設定している場合、前記温度計からの信号が温度調節器30に入力された時点では水素放出・再結合反応工程を終了させず、更に付加時間が経過した時点で水素放出・再結合反応工程を終了させ、冷却工程を開始させる。温度調節器32に付加時間を設定するには、例えば、予め付加時間をセットしたタイマー31に温度計20からの信号を与え、この信号によってタイマー31を作動させるようにすればよい。すると、信号入力後に動作を開始したタイマー31のタイムアップ時に水素放出・再結合反応工程を終了させ、冷却工程を開始させる。

0086

温度変化率に基づいて水素放出・再結合反応の終了点を決定する場合には、図6(b)に示すように、温度計20に代えて、温度差計40を備えた処理装置200を採用すればよい。この場合、温度差計40によって一定時間間隔で温度を記録し、一定時間内の温度差を温度変化率とみなして水素放出反応完了の基準点とすることができる。この場合、被処理物の温度変化率が例えば1.0℃/minになると、警報端子等から信号を発するようにする。他の構成は処理装置100と同様であるので説明を省略する。信号系統のON−OFFを逆にしてもよい。また、処理装置の構成は、上記の構成に限定されず、当業者に自明な範囲で適宜改変できる。

0087

なお、水素化・不均化反応工程および水素放出・再結合反応工程において、保持温度が500℃より低いと、原料粉末の組織変化が充分に得られない。一方、保持温度が1000℃を超えると、原料粉末が互いに溶着してしまうとともに、組織変化の進行によって・再結合粒が粒成長をおこし、その結果、保磁力が低下してしまうおそれがある。

0088

<冷却工程>以上説明した方法によって水素放出・再結合反応を終了した後、冷却工程を実行し、各種永久磁石の製造に用いることのできる合金磁石粉末を得ることができる。

0089

冷却工程においては、そのまま減圧状態を維持しても良いが、冷却効率を高めるため、真空排気を停止し、炉内にアルゴンガスを供給し、炉内圧力を大気圧に復帰させる。また、さらに大きな冷却速度を達成するために、アルゴンガスやヘリウムガス加圧しても良い。その後、HDDR処理を終えた粉末は水素処理装置の外部に取り出される。

0090

こうして得た合金磁石粉末(以下、「HDDR粉末」と称する)は、上記処理の結果、正方晶R2Fe14B型化合物再結晶集合組織を有しており、この再結晶集合組織の平均結晶粒径(1次粒子径)は、約0.1〜約0.5μmまでの範囲にある。この大きさは単磁区粒子の大きさに近いため、再結晶集合組織を持つ各粉末粒子は高い保磁力を発揮することができる。また、再結晶集合組織の結晶方位は一定の方位にそろっているため、磁化容易軸も一定の方位にそろっており、その結果、再結晶集合組織を持つ粉末粒子は高い磁気異方性を示すことになる。

0091

なお、HDDR処理は、超急冷磁粉ホットプレスした後、熱間塑性加工および粉砕などの各種工程を経て磁粉を製造する方法に比較すると、プロセスが単純でコストを低く抑えることが可能である。

0092

次に、このHDDR粉末を用いて永久磁石を製造する方法の一例を説明する。

0093

永久磁石として異方性ボンド磁石を製造する場合は、例えば、上記HDDR粉末100重量部に対して2.5重量部の熱硬化型エポキシ樹脂を加えた混練物を形成し、これに対して0.1重量部の滑剤を混合することによってコンパウンドを作成する。このコンパウンドをフィーダカップによる摺り切りによってプレス装置金型キャビティ充填した後、例えばラジアル方向静磁界を形成し、HDDR粉末磁性磁界配向を実行する。粉末充填時、配向の際の磁界強度は、例えば0.9MA/mであり、その磁場印加時間は、2〜10秒程度である。磁界配向は反発磁界を用いて行うことができる。圧縮成形圧力としては、600〜1000MPa程度の圧力をコンパウンドに与えることが好ましい。成形方式としては、通常の圧縮成形やホットプレスが使用され得る。ホットプレスを使用すると、バインダの粘度が低下するため、粉末の配向度や粉末充填度が向上する。このことは、磁石の磁気特性向上に有効である。

0094

なお、異方性ボンド磁石を製造するために、HDDR粉末を成形する方法は、上述の成形方法に限定されず、他の成形方法(例えば射出成形法)を用いても良い。また、異方性ボンド磁石以外の磁石(例えば焼結磁石)を製造するために、本発明による製造方法で作製したHDDR粉末を好適に用いることができる。この場合、公知の焼結磁石製造工程を経て焼結磁石が製造される。

0095

上記実施形態では、水素放出反応の進行に伴い、いったん低下した被処理物温度が再び上昇し、設定温度またはそれに近い温度レベルでほぼ飽和しつつある状態をとらえて、水素放出反応の終了点を検知している。しかし、本発明はこの方法に限定されない。たとえば、いったん低下した被処理物温度が再び上昇し始めるときを基準時とし、その基準時から一定の付加時間だけ経過した後に水素放出・再結晶化反応工程を終了するようにしてもよい。本発明において重要な点は、水素放出反応の進行具合を被処理物の温度測定によって観測し、被処理物の温度に基づいて水素放出・再結合反応の終了点を検知することにある。

0096

(他の実施形態)上記実施形態では、各HDDR処理ごとに水素放出・再結合反応工程中の被処理物の温度を測定し、被処理物温度と設定温度との差や、被処理物温度の時間変化率を求める作業を行っている。その結果、HDDR処理毎に被処理物の量が変動した場合でも、リアルタイムで水素放出・再結合反応時間を最適化することが可能である。

0097

しかし、水素放出・再結合反応時間が処理毎に大きく変動しない場合、または、現実の水素放出・再結合反応時間に比較的長い付加時間が含まれている場合には、各水素放出・再結合反応工程で常に被処理物の温度を測定する必要性は低くなる。そのような場合、前述の実施形態について説明した方法で水素放出・再結合反応時間を決定し、それ以降は、その水素放出・再結合反応時間に基づいて、水素放出・再結合反応工程の終了時を制御しても良い。その場合、水素放出・再結合反応工程毎に被処理物の温度を測定する必要性が無くなる。

0098

[実施例1]まず、原料合金として、Nd12.5Febal.Co10.0Ga1.0Zr0.1B6.0(単位:原子%。但し、bal.は残部)の組成合金インゴットを用意した。この合金インゴットに対して、Ar雰囲気中にて1100℃で40時間の均質化熱処理を行った。その後、合金インゴットを0.3MPaの水素雰囲気中で2時間保持することによって、合金インゴットに水素を吸蔵させ、合金インゴットを脆化させた。次いで合金インゴットを機械的に解砕した後、目開き425μmのふるいで整粒し、粒径425μm以下の原料粉末を得た。

0099

この原料粉末を表1に示す種々の処理量にて内容積およそ20リットルの外熱型管状炉に装填した。この時に、被処理物の中央にR熱電対を装入した。

0100

次に、炉内を真空置換した後、H2ガスを大気圧(0.1MPa)まで導入した後、その圧力条件で5リットル/minの流量でH2ガスを流しながら、15℃/minの昇温速度で800℃まで昇温した。その後、その雰囲気のまま800℃で3時間保持した。

0101

次に、その温度を維持したままH2ガスの導入を停止し、その後Arガスを5リットル/minの流量で5分間流すことによって、炉内のH2ガスの大半を追い出す雰囲気置換を行い、次いで水素放出・再結合反応工程としてArガスを2リットル/minの流量で流しながら炉内をロータリーポンプで真空排気した。この時、平衡状態に達した時点での炉内の圧力は、処理量に依存せずにどの処理量の場合でも、およそ1kPaであった。

0102

次に、この工程における被処理物の温度を監視した。一旦温度が低下した後、設定温度に対して−10℃の温度(すなわち790℃)に再び達するのに要した時間を計測した。この時間に水素放出付加時間を加えて水素放出処理を行った。その後、冷却すると共に真空排気を停止し、炉内をArガスで大気圧まで戻した。

0103

こうして得られた被処理物についての所定温度への到達所要時間、水素放出付加時間、水素放出時間、磁気特性および含有水素量を表1に示す。

0104

ID=000003HE=090 WI=161 LX=0245 LY=0300
表1から、得られる被処理物の磁気特性が高い値で安定していることがわかる。また、水素含有量も低い値で安定していることがわかる。
[実施例2]実施例1で用いた原料粉末と同様の粉末を表2に示す処理量にて内容積およそ20リットルの外熱型管状炉に装填した。このときに、被処理物の中央にR熱電対を装入した。

0105

炉内を真空置換した後、H2ガスを大気圧(0.1MPa)まで導入した。次いで、その圧力条件で5リットル/minの流量でH2ガスを流しながら、15℃/minの昇温速度で800℃まで昇温した後、その雰囲気のまま800℃で3時間保持した。

0106

次に、その温度を維持したままH2ガスの導入を停止した後、Arガスを5リットル/minの流量で5分間流すことによって、炉内のH2ガスの大半を追い出す雰囲気置換を行った。その後、水素放出・再結合反応工程として、Arガスを2リットル/minの流量で流しながら炉内をロータリーポンプで真空排気した。この時、平衡状態に達した時点での炉内の圧力は、処理量に依存せず、どの処理量の場合でも、およそ1kPaであった。

0107

次に、この工程における被処理物の温度を監視し、一旦温度が低下した後、昇温時の温度変化が1.0℃/min以下となるまでに要した時間を計測した。この時間に対して付加時間を加えた時間のあいだ、水素放出・再結合反応工程を行った。その後、冷却工程を開始するとともに真空排気を停止し、炉内をArガスで大気圧まで戻した。

0108

表2は、こうして得られた被処理物についての所定温度変化率への到達所要時間、水素放出付加時間、水素放出時間、磁気特性、および含有水素量を示す。

0109

ID=000004HE=080 WI=161 LX=0245 LY=0300
表2から、得られる被処理物の磁気特性が高い値で安定していることがわかる。また、水素含有量も低い値で安定していることがわかる。
[比較例1]本比較例は、実施例1の水素放出・再結合反応工程の時間を変更したものである。より詳細には、水素放出・再結合反応工程において、被処理物の温度が一旦低下した後、設定温度に対して−10℃の温度(すなわち790℃)に再び達するのに要した時間を計測した。この時間に対して−5分〜−1分または250分〜300分の付加時間を加えた時間を算出し、この算出した時間のあいだ水素放出・再結合反応工程を行った。その後、冷却すると共に真空排気を停止し、炉内をArガスで大気圧まで戻した。

0110

表3は、こうして得られた被処理物についての所定温度への到達所要時間(推定を含む)、水素放出付加時間、水素放出時間、磁気特性、および含有水素量を示す。

0111

ID=000005HE=085 WI=161 LX=0245 LY=1600
表3からわかるように、付加時間の値が0より小さい場合には、表1の結果と比較して水素含有量が多く、磁気特性が劣化している。また、付加時間の値を240分よりも長くしても、磁気特性が向上していないことがわかる。
[比較例2]本比較例は、実施例2にて示した水素放出・再結合反応工程の時間を変更したものである。上記実施例2に示した水素放出・再結合反応工程において、一旦温度が低下した後、昇温時の温度変化が0.5℃/min以下となるまでに要した時間を計測した。この時間に対して−10分〜−5分または250分〜300分の時間を加えた時間を算出し、この算出した時間のあいだ水素放出処理を行った。その後、冷却すると共に真空排気を停止し、炉内をArガスで大気圧まで戻した。

0112

こうして得られた被処理物についての処理量、所定温度変化率への到達所要時間(推定を含む)、水素放出付加時間、水素放出時間、磁気特性および含有水素量を表4に示す。

0113

ID=000006HE=050 WI=161 LX=0245 LY=0450
表4からわかるように、付加時間の値が0より小さい場合には、表2の結果と比較して水素含有量が多く、磁気特性が劣化している。また、付加時間の値を240分よりも長くしても、磁気特性が向上していないことがわかる。
[比較例3]実施例1で用いた原料粉末と同様の粉末を表5に示す処理量で内容積およそ20リットルの外熱型管状炉に装填した。

0114

炉内を真空置換した後、H2ガスを大気圧(0.1MPa)まで導入した。次いで、その圧力条件で5リットル/minの流量でH2ガスを流しながら、15℃/minの昇温速度で800℃まで昇温した後、その雰囲気のまま800℃で3時間保持した。

0115

次に、その温度を維持したままH2ガスの導入を停止した後、Arガスを5リットル/minの流量で5分間流すことによって、炉内のH2ガスの大半を追い出す雰囲気置換を行った。その後、水素放出・再結合反応工程としてArガスを2リットル/minの流量で流しながら炉内をロータリーポンプで真空排気した。平衡状態に達した時点での炉内の圧力は、処理量に依存せずにどの処理量の場合でも、およそ1kPaであった。

0116

次に、処理時間を30分間として水素放出・再結合反応工程を行った。その後、冷却すると共に真空排気を停止し、炉内をArガスで大気圧まで戻した。

0117

こうして得られた被処理物についての処理量、水素放出時間、磁気特性および含有水素量を表5に示す。

0118

ID=000007HE=055 WI=130 LX=0400 LY=1700
表5から、処理量が増えるごとに水素含有量が増大し、磁気特性が劣化していることがわかる。
[実施例3]実施例1で用いた原料粉末を、内容積およそ1m3の内熱型熱処理装置に50kg装填した。原料粉末は5kg単位で処理容器に入れ、上下に5段重ね、これを2組装填した。被処理物測温用熱電対は、シース型のK熱電対を用いた。このK熱電対を、最上段中央段最下段の処理容器にそれぞれ端部と中央部の2ヶ所、計6ヶ所に装入した。

0119

次に、炉内を真空置換した後、H2ガスを0.15MPaまで導入した。次いでその圧力を維持しながら、15℃/minの昇温速度で850℃まで昇温した後、その雰囲気のまま850℃で2時間保持した。

0120

次に、Arガスを50リットル/minの流量で30分間流すことによって、炉内のH2ガスの大半を追い出す雰囲気置換を行いながら、温度を830℃に下げた。この温度で次の水素放出処理を行った。

0121

水素放出・再結合反応工程としてArガスを5リットル/minの流量で流しながら炉内をロータリーポンプで真空排気した。この時炉内の圧力は、初期には約3kPaであったが、最終的にはおよそ1kPaに達した。

0122

なお、この工程における被処理物の温度を監視し、一旦温度が低下した後、設定温度に対して−10℃の温度(すなわち820℃)に再び達するのに要した時間を計測した。計測された時間のうち最も長い時間を基準とし、この基準時間に所定の係数を乗じて水素放出時間を算出した。その時間が経過した時を水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始した。冷却工程の開始とともに真空排気を停止した後、炉内の圧力をArガスで大気圧レベルまで復帰させた。

0123

こうして得られた被処理物についての所定温度への到達所要時間、水素放出付加時間、合計水素放出時間、磁気特性および含有水素量を表6に示す。

0124

ID=000008HE=055 WI=161 LX=0245 LY=0650
表6から、得られた被処理物の磁気特性がどの測定位置でも高い値で安定していることがわかる。また、水素含有量も低い値で安定していることがわかる。
[比較例4]本比較例では、複数計測点から得られた水素放出反応終了点のうち最も速い時点を基準とした点を除いて、実施例3の方法と同様な方法で処理を行った。ここでは、水素放出・再結合反応工程の処理時間を決定するに際して、820℃に達するのに要した時間を計測し、計測された時間のうち最も短い時間を基準とし、この基準時間に所定の係数を乗じて水素放出・再結合反応時間を算出した。その時間が経過した時で水素放出・再結合反応工程を終了し、冷却工程を開始した。冷却工程の開始とともに真空排気を停止した後、炉内の圧力をArガスで大気圧レベルにまで復帰させた。

0125

表7は、こうして得られた被処理物についての所定温度への到達所要時間、水素放出付加時間、合計水素放出時間、磁気特性、および含有水素量を示す。

0126

ID=000009HE=060 WI=161 LX=0245 LY=1700
表7からわかるように、得られた被処理物の磁気特性が測温位置ごとに異なる。また、水素含有量も一定でないことがわかる。
[実施例4]原料合金として、Nd12.5Dy0.5Febal.Co15.0Ga0.5Zr0.1B6.0(単位:原子%。但し、bal.は残部)の組成の合金インゴットを用意し、実施例1で示した条件と同様の条件のもとで前処理を行い、粒径425μm以下の原料粉末を得た。

0127

この原料粉末を、内容積およそ1m3の内熱型熱処理装置に50kg装填した。より詳細には、原料粉末を5kg単位で処理容器に入れ、この処理容器を上下に5段重ねたものを2組装置内に装填した。被処理物測温用熱電対は、シース型のK熱電対を用い、中央段の処理容器の中央部に装入した。

0128

次に、炉内を真空置換した後、H2ガスを0.2MPaまで導入した。次に、その圧力を維持しながら、15℃/minの昇温速度で870℃まで昇温した後、その雰囲気のまま870℃で2時間保持した。

0129

次に、Arガスを50リットル/minの流量で30分間流すことによって、炉内のH2ガスの大半を追い出す雰囲気置換を行いつつ、温度を830℃に低下させた。この温度で水素放出・再結合反応工程を行った。この水素放出・再結合反応工程では、Arガスを5リットル/minの流量で流しながら炉内をロータリーポンプで真空排気した。この時、炉内の圧力は、初期には約3kPaであったが、最終的にはおよそ1kPaに達した。

0130

なお、この工程における被処理物の温度を監視し、一旦温度が低下した後、設定温度に対して−10℃の温度(すなわち820℃)に再び達するのに要した時間を計測した。計測された時間に所定の係数を乗じて水素放出時間を算出した。その時間が経過した時を水素放出処理の終了点として、冷却すると共に真空排気を停止した後、炉内をArガスにて大気圧まで戻した。

0131

表8は、こうして得られた被処理物についての所定温度への到達所要時間、水素放出付加時間、水素放出時間、磁気特性、および含有水素量を示す。

0132

ID=000010HE=040 WI=161 LX=0245 LY=0800
表8から、得られる被処理物の磁気特性が高い値で安定していることがわかる。また、水素含有量も低い値で安定していることがわかる。

0133

上記の各実施例では、Nd12.5Febal.Co10.0Ga1.0Zr0.1B6.0およびNd12.5Dy0.5Febal.Co15.0Ga0.5Zr0.1B6.0(単位:原子%。但し、bal.は残部)を原料合金として用いた。しかし、本発明は、この材料に限定されず、R−T−(M)−B系合金粉末(RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロン)であれば、他の組成の材料にも広く適用できる。

0134

このような希土類系磁石粉末においては、希土類元素Rとして、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luの少なくとも一種類の元素を含有する原料を用いる。充分な磁化を得るには、希土類元素Rのうちの50at%以上がPrまたはNdの何れかまたは両方によって占められることが好ましい。

0135

希土類元素Rが10at%以下では、α−Fe相の析出によって保磁力が低下する。また、希土類元素Rが20at%を超えると、目的とする正方晶Nd2Fe14B型化合物以外にRリッチの第2相が多く析出し、磁化が低下する。このため、希土類元素Rは全体の10〜20at%の範囲内にあることが好ましい。

0136

Tは鉄族元素であって、FeおよびCoを含む。Tが67at%未満の場合、保磁力および磁化ともに低い第2相が析出するため磁気特性が劣化する。Tが85at%を超えると、α−Fe相の析出によって保磁力が低下し、また角型性も低下する。このため、Tの含有量は67〜85at%の範囲内にあることが好ましい。

0137

なお、TはFeのみから構成されていても良いが、Coの添加によってキュリー温度が上昇し、耐熱性が向上する。Tの50at%以上はFeで占められることが好ましい。Feの割合が50at%を下回ると、Nd2Fe14B型化合物の飽和磁化そのものが減少するからである。

0138

Bは、正方晶Nd2Fe14B型結晶構造を安定的に析出するために必須である。Bの添加量が4at%未満ではR2T17相が析出するため保磁力が低下し、減磁曲線の角型性が著しく損なわれる。また、Bの添加量が10at%を超えると、磁化の小さな第2相が析出してしまう。従って、Bの含有量は4〜10at%の範囲であることが好ましい。

0139

粉末の磁気的な異方性をより高めるためには他の添加元素Mを付与する。添加元素Mとしては、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種類の元素が好適に使用される。これらの元素のうち、Ni、Ga、Zr、およびHfは、水素不均化時にR2T14B相を安定化する。また、Al、Ni、Ga、Zr、In、Sn、およびHfは、水素放出時に磁気異方性を付与する。Ti、Cu、V、Cr、Nb、Mo、Ta、およびWは、水素放出時に保磁力の低下を抑制する。このような添加元素Mは、全く添加されていなくても良いが、添加する場合は、添加量を10at%以下にすることが好ましい。添加量が10at%を超えると、強磁性ではなく第2相が析出して磁化が低下するからである。なお、添加量が0.1at%未満では特別の効果はほとんど発現しない。

発明の効果

0140

本発明によれば、水素放出反応の終了時を被処理物の温度を測定することによって検知するため、たとえHDDR処理を受ける原料粉末の処理量やHDDR処理装置の規模が変動したとしても、常に、HDDR処理における水素放出反応の終了時を的確に検知することが可能になる。その結果、磁石粉末中に含有される水素量の変動を抑制し、磁気特性に優れた磁石粉末ひいては永久磁石を製造することが可能になる。

0141

また、本発明の他の側面によれば、予め測定した温度変化に基づいて水素放出・再結合反応に要する時間を決定し、その時間またはその時間に付加時間を加えた時間だけ水素放出・再結合反応工程を実行するため、HDDR処理毎にリアルタイムで被処理物温度を測定する必要が無くなる。

図面の簡単な説明

0142

図1水素放出・再結合反応工程において生じる温度低下幅と、被処理物の磁気特性との関係を示すグラフである。
図2(a)は、被処理物の測温位置と温度変化との関係を示すグラフであり、(b)は、被処理物の測温位置を示す断面図である。
図3(a)は、HDDR処理中の被処理物の水素含有量の変化を模式的に示すグラフであり、(b)は、HDDR処理中の被処理物の温度の変化を模式的に示すグラフである。
図4(a)〜(c)は、水素放出・再結合反応工程における被処理物の温度変化パターンを模式的に示すグラフである。
図5(a)は、水素放出・再結合反応工程における被処理物の残存水素含有量の変化を示すグラフであり、(b)は、水素放出・再結合反応工程における被処理物の保磁力の変化を示すグラフである。
図6(a)および(b)は、本発明による永久磁石用希土類系合金粉末の製造方法を実施するために使用される水素処理装置を示す図である。
図7(a)および(b)は、被処理物の測温方法の例を示す図である。

--

0143

1ガス導入口
2排気口
3処理容器
4 蓋
5熱電対装入管
6 測温治具
10 炉
11被処理物
20温度計
30温度調節器
31タイマー
32プログラムコントローラ部
33SCR
100処理装置
200 処理装置

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